【文献】
The Lancet Oncology,2014年,Vol.15/No.13,P.1503-1512,Summary, Table1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
別段に定義しない限りは、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書で使用する用語は、別段に定義しない限り、以下で定義する意味に一致しなければならない。
【0008】
「治療」とは、更なる腫瘍増殖を予防または阻害する、また同様に、腫瘍または腫瘍量の収縮を引き起こし、より長い生存期間をもたらすための、治療法の使用を意味しなければならない。治療はまた、腫瘍の転移予防を含むことを意図する。癌または腫瘍の少なくとも1つの症状(応答性/非応答性、進行時間、または当該技術分野において公知のインジケーター及び本明細書で記載されるインジケーター)が緩和される、終了する、遅効する、最小化される、または予防される場合に、腫瘍は「阻害」または「治療」される。
【0009】
本明細書で使用する場合、「治療レジメン」とは、分子単独、または別の分子と組み合わせての治療を意味する。治療レジメンは、投与量、投与頻度、及び、1つの分子または分子の組み合わせが投与される時間の回数もまた意味する。
【0010】
本明細書で使用する場合、「好ましい」アウトカムまたは予後とは、長期間の生存、長期間の無増悪期間(TTP)、及び/または良好な応答を意味する。逆に、「好ましくない」アウトカムまたは予後とは、短期間の生存、短い無増悪期間(TTP)、及び/または不十分な応答を意味する。
【0011】
本明細書で使用する場合、「長い無増悪期間」、「長いTTP」、及び「短い無増悪期間」、「短いTTP」とは、治療により安定した病気が、活性の病気に転換するときまでの時間量を意味する。時折、治療により、良好な応答でも、不十分な応答でもない安定した病気(例えばMR;病気は一定期間単に悪化せず、例えば進行性の病気にもならない)がもたらされる。この期間は少なくとも4〜8週間、少なくとも3〜6ヶ月、または6ヶ月超であることができる。
【0012】
用語「生存」とは、患者が生きたままであることを意味し、無増悪生存期間(PFS)、及び全生存期間(OS)を含む。生存はカプランマイヤー法により推定することができ、生存におけるあらゆる差異を、層別log−rank試験を使用して計算する。
【0013】
用語「無増悪生存期間(PFS)」とは、治療(または無作為化)から、最初の病気の進行または死までの期間を意味する。例えば、無増悪生存期間とは、治療開始、または最初の診断から、患者が癌から回復せずに生きたままとなる期間(例えば、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、3ヶ月半、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、約1年、約2年、約3年、約5年、約10年、約15年、約20年、約25年等の、規定された期間)である。無進行生存は多発性骨髄腫において、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準を用いることにより測定することができる。
【0014】
用語「全生存期間」とは、治療開始、または最初の診断から規定の期間(例えば約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約10年、約15年、約20年、約25年等)生きたままである患者を意味する。
【0015】
用語「プロテアソーム介在性疾患」とは、プロテアソーム発現または活性の増加により引き起こされる、またはこれらを特徴とする、あるいはプロテアソーム活性を必要とする任意の疾患、疾病または状態を意味する。用語「プロテアソーム介在性疾患」は、プロテアソーム活性の阻害が有益である任意の疾患、疾病または状態もまた含む。プロテアソーム阻害剤とは、プロテアソーム、タンパク質(p53タンパク質等)を破壊する細胞複合体の作用をブロックする薬剤である。プロテアソーム阻害剤は、癌、特に多発性骨髄腫の治療に関して研究されている。プロテアソーム阻害剤の例としては、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン−3−ガラート、サリノスポラミド(salinosporamid)A、ONX0912、CEP−18770、及びエポキソミシンがある。
【0016】
用語「約」は本明細書において、およそ(approximately)、ほぼ、おおよそ、またはおよそ(around)を意味するように使用される。用語「約」を数値の範囲と組み合わせて使用する場合、この単語は、説明する数値の上下範囲を拡大することにより、その範囲を修正する。一般に、用語「約」は本明細書において、数値を、記述した値の上下10%分散で修正するために使用される。
【0017】
用語「含む」とは、「を含むがこれらに限定されない」を意味する。
【0018】
用語「製薬上許容できる担体」は本明細書において、レシピエント対象、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトと適合性があり、作用物質の活性を終了させることなく、標的部位に活性剤を送達するのに適している材料を意味するように使用される。存在する場合、担体に関係する毒性または悪影響は、活性剤の使用目的に関して、合理的な危険性/受益性比率に見合っているのが好ましい。
【0019】
用語「経口(の)」とは、服用を目的としている組成物を投与することを意味する。経口形態の例としては、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、溶液または懸濁液、及びドロップが挙げられるが、これらに限定されない。このような形態は、全てが飲み込まれてよく、または咀嚼可能な形態であってもよい。
【0020】
用語「患者」とは、本明細書で使用する場合、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを意味する。
【0021】
「細胞遺伝変異」とは、染色体内での欠失、重複、または転座等の染色体の変化である。
【0022】
「キット」とは、本開示の1つ以上の細胞遺伝変異を特異的に検出するための、少なくとも1種の試薬(例えばプローブ)を含む任意の製品(例えばパッケージまたは容器)である。例えば患者から入手したサンプルにおいて、本開示の方法を例えばin vitroで実施するためのユニットとして販売されるために、製品を促進、分配、販売、または提供してよい。このようなキットに含まれる試薬は、1つ以上の細胞遺伝変異を検出するのに使用するためのプローブ/プライマー、及び/または抗体を含むことができる。さらに、本開示のキットは、好適な検出アッセイを説明する、取扱説明書を含有することができる。このようなキットを、例えば臨床試験設定または契約試験設定において便利に使用して、記録、保管、転送、または受信して、多発性骨髄腫の症状を示す患者の診断、評価、または治療を可能にする情報を生成することができる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「患者を評価すること」とは、患者の細胞遺伝変異を受け取る行為、または分析する行為を意味する。評価は、患者からサンプル(例えば、体液からのサンプル(例えば血液サンプル、血清サンプル、尿サンプル、滑液サンプル、涙サンプル、唾液サンプル)、または組織サンプル(例えば、生検から入手される皮膚サンプルもしくは組織サンプル))を入手すること、またはin vivoでサンプルを分析すること;サンプルをアッセイし、またはサンプルを使用してアッセイをリクエストし、患者の細胞遺伝変異に関する遺伝情報を入手すること;サンプル及び/または患者の診療記録を用いて実施した分析結果を用いて、患者の情報を確認すること、の1つ以上を更に含むことができる。次に、患者の情報(例えば患者の細胞遺伝変異における遺伝情報または値)を、所望により参照基準(例えば一般に入手可能な(参照集団に対する)情報)と比較して、その患者に対する治療オプションに関して、インフォームドデシジョンを行うことができる。
【0024】
用語「ボロン酸エステル(boronate ester)」及び「ボロン酸エステル(boronic ester)」は同じ意味で用いられ、−B(Z
1)(Z
2)部位を含有する化合物を意味し、式中、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は、多発性骨髄腫を有する患者の治療方法であって、
(i)患者が染色体17に細胞遺伝変異を有するか否かを測定することと、
(ii)患者が染色体17に細胞遺伝変異を有する場合、治療を必要とする患者に、式(I)
【化1】
の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンを投与することと、を含み、式中、
環Aは
【化2】
であり、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、上記方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)
【化3】
または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を特徴とし、式中、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、多発性骨髄腫を有する患者の治療方法であって、
(i)患者が染色体17に細胞遺伝変異を有するか否かを測定することと、
(ii)患者が染色体17に細胞遺伝変異を有する場合、治療を必要とする患者に、式(Ia)
【化4】
の化合物または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンを投与することと、を含み、式中、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、上記方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)
【化5】
または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を特徴とし、式中、
環Aは上で定義されており、R
1及びR
2は独立して−(CH
2)
p−CO
2Hであり、式中、カルボン酸の一方は所望により、ホウ素原子と更なる結合を形成し、nは0または1であり、pは0または1である。
【0029】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(III)
【化6】
または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を特徴とし、式中、環Aは上で定義されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IIIa)
【化7】
または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を特徴とする。
【0031】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IV)
【化8】
またはそのエステルもしくは製薬上許容できる塩を特徴とする。
【0032】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IIIa)を特徴とする。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IV)を特徴とする。いくつかの実施形態では、式(Ia)の化合物は、式(IIIa)を特徴とする。いくつかの実施形態では、式(Ia)の化合物は、式(IV)を特徴とする。
【0033】
イキサゾミブとしても知られる式(IV)の化合物は、Millennium Pharmaceuticals,Inc.により開発されたペプチドボロン酸である。イキサゾミブは、プロテアソームを強力に、可逆的に、そして選択的に阻害する生物学的に活性な分子である。式(IIIa)の化合物は、イキサゾミブのクエン酸エステルであり、本明細書においてはイキサゾミブシトレートと呼ばれる。イキサゾミブシトレートは、血漿または水溶液と接触したときにイキサゾミブを急速に加水分解する。
【0034】
いくつかの実施形態では、式(I)、(Ia)、(II)、(III)、(IIIa)、または(IV)の化合物は経口投与される。いくつかの実施形態では、式(I)、(Ia)、(II)、(III)、(IIIa)、または(IV)の化合物は、固体投薬形態で投与される。いくつかの実施形態では、固体投薬形態はカプセルである。いくつかの実施形態においては、カプセルは、式(IIIa)の化合物または製薬上許容できるその塩、微結晶セルロース、タルク、及びステアリン酸マグネシウムの混合物を含む。いくつかの実施形態では、カプセルは、式(IIIa)の化合物、微結晶セルロース、タルク、及びステアリン酸マグネシウムの混合物を含む。
【0035】
式(I)、(Ia)、(II)、(III)、(IIIa)、及び(IV)の化合物、ならびにその医薬組成物を調製するための合成方法は例えば、米国特許第7,442,830号、同第7,687,662号、同第8,003,819号、同第8,530,694号、及び国際特許公開第2009/154737号に記載されており、これらは具体的に、そして明細書全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目にそれぞれ投与される。いくつかの実施形態では、式(Ia)の化合物は28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目にそれぞれ投与される。いくつかの実施形態では、式(IIIa)の化合物は28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目にそれぞれ投与される。いくつかの実施形態では、式(IV)の化合物は28日サイクルの1日目、8日目、及び15日目にそれぞれ投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、投与される式(IV)の化合物の量は4mg、3mg、または2.3mgである。いくつかの実施形態では、投与される式(IV)の化合物の量は4mgである。いくつかの実施形態では、投与される式(IV)の化合物の量は3mgである。いくつかの実施形態では、投与される式(IV)の化合物の量は2.3mgである。いくつかの実施形態では、カプセルに含まれる式(IIIa)の化合物の量は、式(IV)の化合物の4mgに対して5.7mg当量である。いくつかの実施形態では、カプセルに含まれる式(IIIa)の化合物の量は、式(IV)の化合物の3mgに対して4.3mg当量である。いくつかの実施形態では、カプセルに含まれる式(IIIa)の化合物の量は、式(IV)の化合物の2.3mgに対して3.3mg当量である。
【0038】
いくつかの実施形態では、治療レジメンは、追加の治療薬を更に含む。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は免疫調節剤である。免疫調節剤の例としては、レナリドマイド及びポマリドミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫調節剤はレナリドマイドである。いくつかの実施形態では、投与されるレナリドマイドの量は25mgである。いくつかの実施形態では、レナリドマイドは28日サイクルの1〜21日目のそれぞれに投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬はステロイドである。ステロイドの例としては、デキサメタゾン及びプレドニゾンが挙げられる。いくつかの実施形態では、追加の治療薬はデキサメタゾンである。いくつかの実施形態では、投与されるデキサメタゾンの量は40mgである。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは28日サイクルの1日目、8日目、15日目、及び22日目のそれぞれに投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬はレナリドマイド及びデキサメタゾンである。いくつかの実施形態では、レナリドマイドは28日サイクルの1〜21日目のそれぞれに投与され、デキサメタゾンは28日サイクルの1日目、8日目、15日目、及び22日目のそれぞれに投与される。
【0041】
いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫を患う患者は新しく、多発性骨髄腫と診断されている。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫を患う患者は再発した多発性骨髄腫、及び/または不応性多発性骨髄腫を有する。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫を患う患者は再発した多発性骨髄腫を有する。いくつかの実施形態では、多発性骨髄腫を患う患者は不応性骨髄腫を有する。
【0042】
多発性骨髄腫の開始及び進行は、様々な経路での、及び形質細胞の遺伝子における、複数の変異により影響を受ける場合がある。病気の進行、及び治療耐性を有する病気をもたらす複数の遺伝事象が存在する可能性がある。一次的な遺伝事象としてはIgH転座及び高二倍体が挙げられ、一方、二次的な遺伝事象としては、コピー数異常、DNA低メチル化、及び後天性変異が挙げられる。Biran et al.,Risk Stratification in Multiple Myeloma,Part 1,Characterization of High−Risk Disease,Hematology and Oncology,11,Aug 2013(8)page 489−503。
【0043】
国際骨髄腫作業部会のガイドラインは、診断時、及び再発時における、全ての患者での包括的細胞遺伝評価を支持している。これらの推奨基準としては、精製形質細胞中での間期FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)による細胞遺伝変異の検出、または、軽鎖拘束形質細胞の免疫蛍光検出(cIg−FISH)と組み合わせた細胞遺伝変異の検出が挙げられる。
【0044】
多発性骨髄腫において、FISHにより検出可能な細胞遺伝変異としてはt(4:14)、t(14:16)、及びdel(17)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
Del(17p)
染色体17欠失の大部分はヘミ接合である、またはpアーム全体に影響を及ぼす。この遺伝事象は、新規の骨髄腫発症の約10%において観察され、病気の段階が後になるにつれ、頻度は増加する(Fonseca et al.,Blood.2003 Jun 1;101(11):4569−75;Tiedemann et al.,Leukemia(2008)22,1044−1052)。del(17p)で発現異常となる、関係のある遺伝子は、癌抑制因子遺伝子、腫瘍タンパク質p53(TP53)(例えば、Genbankアクセッション番号NM_000546に関係する遺伝子)と考えられており、これは、非欠失サンプルと比較して、単一対立遺伝子性17p欠失を含む骨髄腫サンプルが、著しく少ないTP53を発現することを遺伝子発現プロファイリング(GEP)が示しているからである(Walker et al.,Blood.2010 Oct 14;116(15):e56−65)。したがって、いくつかの細胞においては、del 17p欠失の結果として、TP53遺伝子が欠失している場合がある。del(17p)を含まない場合では、TP53の変異率は1%未満であるが、del(17p)を含む場合においては、この変異率は25〜37%まで増加する(Lode et al.,Haematologica 11/2010;95(11):1973−6)。結果は、単一対立遺伝子性17p欠失が、残りの対立遺伝子の破壊に寄与しているといういくつかの証拠を提供している。TP53遺伝子は17p13にマッピングされており、細胞周期停止、DNA修復、及びDNA損傷に応答したアポトーシスに影響を及ぼす転写制御因子として機能することが知られている。del(17p)は、多発性骨髄腫の予後判定のための、最も重要な分子的発見であり、これは、del(17p)が攻撃的な病気の表現型、より大規模な延髄外疾患、及び短くなった生存と関係しているからである(Fonseca et al.,Blood.2003 Jun 1;101(11):4569−75,Avet−Loiseau et al.,Blood.2007 Apr15;109(8):3489−95)。
【0046】
t(4:14)及びt(14:16)
IGH転座は、多発性骨髄腫(MM)患者の約40%において検出可能である。MMで検出される転座の大部分は、細胞周期制御の変化をもたらし、これは、MMの初期病因における一体的な事象である(Bergsagel et al.,Blood,2005;106(1):296−303)。t(4:14)転座は、患者の約15%において検出される。t(4:14)は、2つの遺伝子の多発性骨髄腫SETドメイン(MMSET、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群候補1、WHSC1としても知られている)、及び、受容体型チロシンキナーゼである線維芽細胞増殖因子3(FGFR3)の上方制御をもたらす。MMSETタンパク質はヒストンメチル化活性を有し、その活性に影響を受けるいくつかの遺伝子の中には、いくつかの細胞周期関連遺伝子、例えばサイクリンE2、E2F転写因子2(E2F2)、腫瘍タンパク質p53誘発性核タンパク質1(Tp53INP1)、及び細胞分裂周期25A(CDC25A)が存在する。
【0047】
転座t(14:16)は多発性骨髄腫患者の約6%において見られ、多発性骨髄腫の好ましくない予後ともまた関係している。これはMAF転写因子ファミリーを含有し、この転座の結果として上方制御される(Bergsagel et al.,Blood.2005;106(1):296−303)。
【0048】
いくつかの態様では、本開示は、上述した細胞遺伝変異の1つ以上を有する患者における、多発性骨髄腫の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異は染色体17における欠失である。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はdel(17)である。本明細書で使用する場合、用語del(17)及びdel(17p)は同じ意味で用いられる。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はdel(17p13)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他の細胞遺伝変異が存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他の細胞遺伝変異はt(4:14)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの他の細胞遺伝変異はt(14:16)である。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの他の細胞遺伝変異が存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの他の細胞遺伝変異はt(4:14)及びt(14:16)である。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はdel(17)、t(4:14)、またはt(14:16)のうちの少なくとも1つである。
【0049】
いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はdel(17)及びt(4:14)である。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はdel(17)及びt(14:16)である。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はdel(17)、t(4:14)、及びt(14:16)である。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はt(4:14)である。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はt(14:16)である。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異はdel(17)、及びt(4:14)とt(14:16)とのうち少なくとも1つである。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示は、多発性骨髄腫を有する患者の治療方法であって、
(i)患者を、染色体17に細胞遺伝変異を有する上記患者を基準にして選択することと、
(ii)式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンを上記患者に投与することと、を含み、式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいはZ
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、上記方法に関する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示は、
i)患者が染色体17に細胞遺伝変異を有するか否かを決定するステップと、
ii)染色体17における細胞遺伝変異の有無を記録するステップと、
iii)染色体17における細胞遺伝変異の有無に基づき、適切な治療レジメンを決定、推奨、または選択するステップと、
を含む、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンに対する、多発性骨髄腫を有する患者の応答性の評価方法に関し、式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいはZ
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する。
【0052】
いくつかの実施形態では、工程iii)は、染色体17における細胞遺伝変異の存在に基づき、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンを開始するか、または継続するか否かを決定することを含む。
【0053】
多発性骨髄腫を患う患者は式(Ia)の化合物を含む治療レジメンに対する臨床的応答性を有するという、細胞遺伝変異間の相関関係の識別は、式(Ia)の化合物を含む治療レジメンに応答するそれらの個体を予測する診断方法を設計するための基準となり得る。あるいは、このような方法を使用して、式(Ia)の化合物を含む治療レジメンに応答する個体と、式(Ia)の化合物を含まない治療レジメンに応答する個体もまた予測することができる。
【0054】
式(Ia)の化合物を含む治療レジメンに対する応答性、または非応答性に関する、多発性骨髄腫を有する患者の評価方法は、患者の細胞遺伝変異状態に関係するパラメータの値を記録する、追加のステップを含むことができる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「記録すること」とは、後日アクセス可能な、または参照可能な記録を作成する行為またはプロセスを意味する。一実施形態では、記録は書面で行われる。一実施形態では、記録は紙になされ(例えば、患者の診療記録に記入される、もしくはバッチ記録に記入される)、または、記録は電子媒体になされる(例えば、記録はコンピューターに入力される、例えば、記録は電子版の患者の診療記録に入力される、もしくは記録はデータベースに入力される)。別の実施形態では、記録は声を記録することにより、音声的になされる。一実施形態では、音声記録は、例えばテープまたはコンパクトディスクで行われる。一実施形態では、記録された情報は、参照基準値(複数可)を含有する。
【0056】
式(Ia)の化合物を含む治療レジメンに対する応答性、または非応答性に関する、多発性骨髄腫を有する患者の評価方法は、適切な治療レジメンを決定、推奨、または選択する更なるステップを含むことができる。
【0057】
本明細書で使用する場合、「適切な治療レジメンを決定すること」とは、患者の遺伝子型を確認する行為またはプロセス、ならびに所望により、(例えば特定の種類の薬剤に対するアレルギーもしくは不耐性に関する、または薬剤不適合性に関する)患者の病歴を確認するプロセス、及び、患者が所与の治療レジメンに応答する可能性を評価するプロセスを意味する。
【0058】
いくつかの実施形態では、患者が細胞遺伝変異を有するか否かを決定することとは、例えば患者のサンプルにおいて、細胞遺伝変異を検出することを意味する。いくつかの実施形態では、細胞遺伝変異を検出した後に、本明細書に記載した治療を続けることができる。
【0059】
本明細書で使用する場合、「適切な治療レジメンを推奨すること」とは、例えば患者、患者の家族もしくは介護人、または医療関係者(例えば患者の主治医)に、患者にとって好ましいと認知されている治療レジメンを提案する行為またはプロセスを意味する。本明細書で使用する場合、推奨は文字の、または音声の推奨であることができる。
【0060】
本明細書で使用する場合、「適切な治療レジメンを選択すること」とは、患者に対して、他の治療レジメンオプションから治療レジメンを選び取る、または選択する行為またはプロセスを意味する。一実施形態では、選択は、i)患者の遺伝子型、ならびに/またはii)(例えば、特定の種類の薬剤に対するアレルギーもしくは不耐性に関する、薬剤不適合性及び治療履歴に関する)患者の病歴、ならびに、患者が所与の治療レジメンに応答する可能性を評価するプロセスを確認して行われる。別の実施形態では、選択は推奨に基づいて行われる。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示は、多発性骨髄腫を有する患者の治療方法であって、
(iii)患者が細胞遺伝変異t(4:14)に細胞遺伝変異を有するか否かを決定することと、
(iv)患者が細胞遺伝変異t(4:14)を有する場合、治療を必要とする患者に、式(I)
【化9】
の化合物または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンを投与することと、を含み、式中、
環Aは
【化10】
であり、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、上記方法を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示は、多発性骨髄腫を有する患者の治療方法であって、
(i)患者が細胞遺伝変異t(4:14)を有するか否かを決定することと、
(ii)患者がt(4:14)における細胞遺伝変異を有する場合、治療が必要な患者に、式(Ia)
【化11】
または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態の化合物を含む治療レジメンを投与することと、を含み、
式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいはZ
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、上記方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示は、多発性骨髄腫を有する患者を治療するための、式(Ia)の化合物の使用を提供し、使用は、
(i)患者が染色体17に細胞遺伝変異を有するか否かを決定することと、
(ii)前記患者が染色体17における細胞遺伝変異を有する場合、式(Ia)
【化12】
の化合物または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンの投与のために前記患者を選択することと、を含み、式中、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示は、多発性骨髄腫を有する患者の治療方法であって、
(i)患者を、細胞遺伝変異t(4:14)を有する上記患者に基づいて選択することと、
(ii)式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンを上記患者に投与することと、を含み、式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいはZ
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、上記方法に関する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示は、
i)式(Ia)
【化13】
の化合物または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンの投与のために患者を、染色体17における細胞遺伝変異を有する上記患者に基づいて選択することを含む、多発性骨髄腫を有する患者を治療するための、式(Ia)の化合物の使用に関し、式中、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示は、
(i)患者が細胞遺伝変異t(4:14)を有するか否かを決定することと、
(ii)細胞遺伝変異t(4:14)の有無を記録することと、
(iii)細胞遺伝変異t(4:14)の有無に基づき、適切な治療レジメンを決定、推奨、または選択することと、
を含む、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンに対する、多発性骨髄腫を有する患者の応答性の評価方法に関し、式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいはZ
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する。
【0067】
いくつかの実施形態では、工程iii)は、細胞遺伝変異t(4:14)の存在に基づいて、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む治療レジメンを開始するか、または継続するか否かを決定することを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、患者が細胞遺伝変異を有するか否かを決定することは、
(i)患者から骨髄吸引サンプルを得るステップと、
(ii)サンプルからCD138陽性形質細胞を単離するステップと、
(iii)CD138濃縮陽性形質細胞においてFISH分析を実施するステップと、を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、サンプルは骨髄吸引サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは血液である。いくつかの実施形態では、蛍光活性化細胞選別を使用して、CD138陽性形質細胞をサンプルから単離する。いくつかの実施形態では、磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して、CD138陽性形質細胞をサンプルから単離する。磁気ビーズ、または免疫磁気ビーズは、Miltenyi Biotec(CA,USA)またはStem Cell Technologies(Vancouver,Canada)を含む多数の民間供給元から入手することができる。
【0070】
予後アッセイの一般原則は、適切な条件下で、そしてマーカー及びプローブが相互作用して結合し、反応混合物中から除去できる、及び/または反応混合物中で検出可能な複合体を形成することが可能となるのに十分な時間の間で、マーカーまたは細胞遺伝変異、及びプローブを含有し得るサンプル、または反応混合物を準備することを伴う。これらのアッセイは、様々な方法で実施することができる。例えば、このようなアッセイを実施するための一方法は、マーカーまたはプローブを、基質とも呼ばれる固相支持体上に固定することと、反応終了時に、固相上に固定した標的マーカー/プローブ複合体を検出することと、を伴う。このような方法の一実施形態において、マーカーの存在及び/または濃度についてアッセイされる予定の、対象からのサンプルを、担体または固相支持体上に固定することができる。別の実施形態では、逆の状況も可能であり、この場合、プローブを固相に固定することができ、対象からのサンプルを、アッセイの非固定成分として反応させることができる。このような実施形態の一例としては、サンプルの発現分析のために固定した、予測マーカー、またはマーカーセットを含有するアレイまたはチップの使用が挙げられる。
【0071】
アッセイ成分を固相に固定するための確立された方法が、多く存在する。これらには、ビオチン及びストレプトアビジンの結合によって固定されたマーカー、染色体、またはプローブ分子が含まれる。このようなビオチン化アッセイ用成分は、当該技術分野において既知の技術(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals,Rockford,IL)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製することが可能であり、ストレプトアビジンでコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定することができる。特定の実施形態において、固定されたアッセイ成分を有する表面を事前に準備し、保管することができる。
【0072】
このようなアッセイ用の他の好適な担体、または固相支持体としては、マーカー、染色体、またはプローブが属する分子の部類を結合することができる任意の材料が挙げられる。支持体または担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロース及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、ならびにマグネタイトが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は抗体または抗原を結合するための他の好適な担体を知っていてよく、本開示での使用のために、そのような支持体を適合することができる。例えば、細胞から単離したタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、ニトロセルロース等の固相支持体上に固定することができる。次いで、支持体を好適な緩衝液で洗浄し、検出可能に標識された抗体で処理する。次いで、固相支持体を第2の時間緩衝液で洗浄し、未結合の抗体を除去することができる。次いで、固体支持体上での結合標識の量を従来の手段により検出することができる。
【0073】
上述したアプローチを用いてアッセイを実施するために、固定されていない成分を固相に添加し、この際に第2の成分をアンカリングする。反応の終了後、形成したあらゆる複合体が固相上に固定されたままとなる条件下にて、複合体を形成していない成分を(例えば洗浄により)除去することができる。固相に固定したマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書で概説した多数の方法で成し遂げることができる。
【0074】
一実施形態では、プローブは、固定されていないアッセイ成分である場合、アッセイの検出及び読取りの目的のために、本明細書で論じ、当業者に周知の検出可能な標識を用いて、直接または間接的に標識することができる。プローブ(例えば核酸または抗体)に関する用語「標識された」とは、検出可能な物質をプローブにカップリング(即ち物理的結合)することにより、プローブを直接標識すること、及び、直接結合した別の試薬との反応性により、プローブを間接的に標識することを包含することを目的とする。間接的な標識の一例としては、蛍光標識した二次抗体を用いた一次抗体の検出が挙げられる。例えば、蛍光エネルギー移動の技術(FET、例えばLakowicz et al.、米国特許第5,631,169号、Stavrianopoulos,et al.、同第4,868,103号を参照)を用いていずれかの成分(マーカーまたはプローブ)を更に操作または標識することなく、マーカー/プローブ複合体形成を直接検出することも、また可能である。第1の「ドナー」分子上のフルオロフォア標識は、適切な波長の光による励起の際に、放出される蛍光エネルギーが第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収され、これにより、吸収されたエネルギーによって蛍光を発することが可能となるように選択される。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は単純に、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用してもよい。「アクセプター」分子標識が、「ドナー」分子標識と異なるように、異なる波長の光を放出する標識を選択する。標識間でのエネルギー移動の効率は、分子同士を隔てる距離に関係するため、分子間の空間関係を評価することができる。分子間に結合が生じる状況において、アッセイにおける「アクセプター」分子標識の蛍光放出は最大でなければならない。FET結合の事象は、当該技術分野において周知の標準的な蛍光定量的検出手段により(例えば蛍光計を用いて)便利に測定することができる。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「ハイブリダイズする」とは、互いに著しく同一または相同であるヌクレオチド配列が、互いにハイブリダイズしたままとなるときにハイブリダイゼーション及び洗浄するための条件を説明することを目的としている。いくつかの実施形態では、条件は、後の増幅及び/または検出のために、互いに少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、90%、または95%同一の配列が互いにハイブリダイズしたままとなるものである。ストリンジェントな条件は、関係するヌクレオチド配列の長さに応じて変化するが当業者に周知であり、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.(1995)の第2節、第4節、及び第6節の教示に基づいて見出す、または決定することができる。追加のストリンジェントな条件、及びこのような条件を決定するための式は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)の第7節、第9節、及び第11節に見出すことができる。長さが少なくとも10個の塩基対であるハイブリッドのための、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定例としては、約65〜70℃における、4X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション(または、約42〜50℃における4XSSC、加えて50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)、続いて、約65〜70℃における、1XSSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。このようなハイブリッドのための、非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定例としては、約65〜70℃における、1XSSC中でのハイブリダイゼーション(または、約42〜50℃における1XSSC、加えて50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)、続いて、約65〜70℃における、0.3XSSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。このようなハイブリッドのための、ストリンジェンシ−が低下したハイブリダイゼーション条件の非限定例としては、約50〜60℃における、4XSSC中でのハイブリダイゼーション(あるいは、約40〜45℃における、6XSSC、加えて50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)、続いて、約50〜60℃における、2XSSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。上で列挙した値(例えば65〜70℃、または42〜50℃)の中間の範囲もまた、本開示により包含されることを目的としている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、約45℃における、6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、続いて、50〜65℃における、0.2XSSC、0.1%SDS中における1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション用の緩衝液は、1MNaCl、50mM2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.5)、0.5%サルコシンナトリウム、及び30%ホルムアミドである。ハイブリダイゼーション及び洗浄緩衝液中のSSC(1xSSCは、0.15MNaCl及び15mMクエン酸ナトリウムである)を、SSPE(1xSSPEは0.15MNaCl、10mM、NaH
2PO
4、及び1.25mMEDTA、pH7.4である)と置き換えることができる。ハイブリダイゼーションの完了後、洗浄をそれぞれ15分間行った。長さが50塩基対未満であることが予想されるハイブリッドに対するハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(T
m)より5〜10℃低くなければならず、ここで、T
mは以下の式に従い決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドに関しては、T
m(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。長さが18〜49塩基対ハイブリッドに関しては、T
m(℃)=81.5+16.6(log
10[Na
+])+0.41(G+Cの割合)−(600/N)であり、ここで、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、[Na
+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1xSSCにおける[Na
+]=0.165M)。ブロック剤(例えばBSAまたはサケもしくはニシン精子キャリアDNA)、界面活性剤(例えばSDS)、キレート剤(例えばEDTA)、Ficoll、ポリビニルピロリドン(PVP)等を含むがこれらに限定されない、追加の試薬をハイブリダイゼーション及び/または洗浄緩衝液に添加して、膜(例えばニトロセルロース膜またはナイロン膜)に対する核酸分子の非特異的ハイブリダイゼーションを低下させることもまた、当業者により認識される。特にナイロン膜を使用する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の更なる非限定例は、約65℃における、0.25〜0.5MNaH
2PO
4、7%SDS中でのハイブリダイゼーション、続いて、65℃における、0.02MNaH
2PO
4、1%SDS(あるいは、0.2XSSC、1%SDS)における1回以上の洗浄であり、例えば、Church and Gilbert(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1991−1995を参照のこと。検出方法において、プライマーまたは核酸プローブを単独で使用することができる、または、検出方法において、あるプライマーを、少なくとも1つの別のプライマーまたは核酸プローブと共に使用することができる。プライマーを使用して、核酸の少なくとも一部分を増幅することもまたできる。本開示の核酸プローブは、対象の領域にハイブリダイズして、更に伸長しない核酸を意味する。例えば、核酸プローブは、バイオマーカーの変異領域に特異的にハイブリダイズする核酸であり、患者のDNAへのハイブリダイゼーションの有無、または形成したハイブリッドの種類が、バイオマーカーにおける変異の存在もしくは同一性、またはマーカー活性の量を示すことができる。
【0076】
一形態において、例えば、アガロースゲル上で単離RNAを動かし、RNAをゲルから膜(例えばニトロセルロース)に移動させることにより、RNAは固体表面上に固定され、プローブと接触する。代替の形態において、固体表面上に核酸プローブ(複数可)を固定し、治療アウトカムを示す少なくとも1種のマーカーを含むマーカーセットを使用して、例えばAFFYMETRIX(登録商標)遺伝子チップアレイ、またはSNPチップ(Santa Clara,CA)、またはカスタマイズしたアレイの中で、RNAをプローブ(複数可)と接触させる。当業者は、本開示のマーカーの量を検出するのに使用するための、既知のRNA及びDNA検出方法を速やかに適合させることができる。例えば、高密度マイクロアレイまたは分岐DNAアッセイは、以前のセクションに記載した通り、改変して腫瘍細胞を単離したサンプル等のサンプル中におけるより高濃度の腫瘍細胞から恩恵を受けることができる。関連する実施形態において、サンプルから入手した転写ポリヌクレオチドの混合物を、マーカー核酸の一部(例えば、少なくとも7個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、100個、500個もしくはそれ以上のヌクレオチド残基、または10〜50個、15〜40個、もしくは15〜30個の連続した残基)の少なくとも一部に相補的である、または相同であるポリヌクレオチドを固定した基質と接触させる。マーカーに相補的、またはマーカーと相同であるポリヌクレオチドが基質上で別に検出可能である(例えば、異なる発色団もしくはフルオロフォアを使用して検出可能である、または、選択された別の位置に固定される)場合、複数のマーカーの発現量は、1つの基質(例えば、選択された位置に固定される、ポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を使用して同時に評価することができる。ある核酸と別の核酸とのハイブリダイゼーションを伴うマーカー発現の評価方法を使用する実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下にてハイブリダイゼーションを実施する。
【0077】
一実施形態では、マーカー中の変異は、核酸、例えば、マーカー遺伝子と相関するDNA、RNA、cDNA、ゲノムDNA、またはタンパク質を配列決定することにより識別することができる。核酸を配列決定するための当該技術分野において既知の方法は複数存在する。プライマーを、変異の可能性のある部位を含む領域に結合するように設計することができる、または、野生型配列ではなく、変異配列と相補的になるように設計することができる。マーカー遺伝子中に潜在的な変異を含む領域を挟むように、プライマー対を設計することができる。マーカー遺伝子に対応するDNA鎖の1つ、または両方を配列決定するために、プライマーまたはプライマー対を使用することができる。プライマーをプローブと共に使用して、マーカー遺伝子中の変異を検出するために、配列決定をして配列の量を増加させる前に、対象の領域を増幅することができる。配列決定可能な領域の例としては、遺伝子全体、遺伝子の転写物、及び、遺伝子または転写物の断片、例えば、1つ以上のエクソンまたは非翻訳領域が挙げられる。プライマー選択、及び配列分析または組成分析のために、標的化する変異の例は、COSMIC及びdbGaP等の、変異情報を集めた公的データベースに見出すことができる。
【0078】
一実施形態では、DNA、例えば野生型マーカーまたは変異マーカーに対応するゲノムDNAを、当該技術分野において既知の方法を使用して、生体サンプル中でin situ形態及びin vitro形態の両方で分析することができる。DNAをサンプルから直接単離することができる、または、別の細胞成分(例えばRNAもしくはタンパク質)を単離した後に単離することができる。DNAの単離用のキット、例えばQIAAMP(登録商標)DNA Micro Kit(Qiagen,Valencia,CA)が利用可能である。このようなキットを使用してもまた、DNAを増幅することができる。
【0079】
一実施形態では、患者サンプルの細胞からmRNA/cDNA(即ち、転写ポリヌクレオチド)を準備し、マーカー核酸に相補的である参照ポリヌクレオチド、またはその断片を用いてmRNA/cDNAをハイブリダイズすることにより、マーカーの発現を評価する。参照ポリヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションの前に、様々なポリメラーゼ連鎖反応方法のいずれかを使用して、cDNAを所望により増幅することができる。定量PCRを使用して、1種以上のマーカーの発現を同様に検出し、マーカー(複数可)の発現量を評価することができる。mRNA量の測定の使用の一例は、マーカー遺伝子中の不活性化変異が、細胞中のmRNAの量の変化をもたらすことである。この量は、フィードバックシグナル伝達タンパク質産生によって、非機能性タンパク質もしくは不在タンパク質の観点から上方制御することができる、または、変化したmRNA配列の不安定性によって下方制御することができる。あるいは、本開示のマーカーの変異またはバリアント(例えば一塩基多型、欠失等:上述)を検出する既知の方法のいずれかを使用して、患者のマーカー遺伝子中の変異の発生を検出することができる。
【0080】
直接測定の例は、転写物の定量化である。本明細書で使用する場合、発現量(level or amount of expression)とは、マーカーによりコードされたmRNAの発現の絶対量、または、マーカーによりコードされたタンパク質の発現の絶対量を意味する。選択されたマーカーの絶対量に基づく決定の実施に代えて、正規化した発現量に基づいて決定を行ってよい。発現量は、例えば、構造的に発現するハウスキーピングの役割において、マーカーでない対照マーカーの発現に対して、マーカーの発現を比較する際にマーカーの絶対発現量を補正することによって正規化することができる。正規化のための好適なマーカーとしては、アクチン遺伝子またはβ−2マイクログロブリン等のハウスキーピング遺伝子も更に挙げられる。データの正規化を目的とする参照マーカーとしては、遍在的に発現する、かつ/または発現が癌遺伝子により制御されないマーカーが挙げられる。構造的に発現する遺伝子は当技術分野において既知であり、関係する組織、ならびに/または患者の状況、及び分析方法に従って識別及び選択することができる。このような正規化により、あるサンプルと、別のサンプル(例えば、異なる時間または異なる対象からのサンプル同士間)における発現量の比較が可能となる。更に、発現量を相対発現量として提供することができる。ゲノムDNAサンプルのベースライン、例えば二倍体コピー数を、腫瘍を有しない対象からの細胞、または患者からの非腫瘍細胞における量を測定することにより、決定することができる。マーカーまたはマーカーセットの相対量を決定するために、少なくとも1つ、もしくは2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のサンプル、例えば7個、10個、15個、20個、もしくは50個またはそれ以上のサンプルに関して、ベースラインを確立するために、問題のサンプルに関して発現量を決定する前に、マーカーまたはマーカーセットの量を測定する。ベースラインの測定を確立するために、多数のサンプルにおいてアッセイするマーカーまたはマーカーセットのそれぞれの、平均量(mean amount or level)を決定し、これを、問題のバイオマーカーまたはバイオマーカーセットに関する、ベースラインの発現量として使用する。次に、試験用サンプルに関して決定したマーカーまたはマーカーセットの量(例えば、発現の絶対量)を、そのマーカーまたはマーカーセットに関して得たベースラインの値により除する。これにより相対量が求められ、マーカータンパク質の活性における異常量を識別するのに役立つ。
【0081】
本開示の核酸分子配列に基づくプローブを使用して、本開示の1種以上のマーカーに対応する転写物またはゲノム配列を検出することができる。プローブは、結合した標識基、例えば放射性同位体、蛍光性化合物、酵素、または酵素補因子を含むことができる。このようなプローブは、例えば、対象の細胞サンプル内でタンパク質をコードする核酸分子の量を測定する、例えば、mRNAの量を検出する、または、タンパク質をコードする遺伝子が変異している、もしくは欠失しているか否かを決定することにより、タンパク質を発現する細胞または組織を識別するための診断試験キットの一部として使用することができる。
【0082】
プライマーまたは核酸プローブは、特定のマーカー、またはその変異領域に相補的なヌクレオチド配列を含み、マーカー遺伝子、またはマーカー遺伝子と結合した核酸と選択的にハイブリダイズするのに充分な長さを有する。プライマー及びプローブを使用して、マーカー核酸の単離及び配列決定を補助することができる。一実施形態では、プライマーまたは核酸プローブ(例えば、実質的に精製されたオリゴヌクレオチド)は、ストリンジェントな条件下において、約6個、8個、10個、12個、もしくは15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、75個、100個、またはそれ以上の、連続したマーカー遺伝子のヌクレオチド、あるいは細胞遺伝変異を有することが疑われる染色体にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する領域を含む。例えば、プライマーまたは核酸プローブは、マーカー遺伝子または染色体の少なくとも約15個の連続したヌクレオチドのヌクレオチド配列、少なくとも約25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、または、約15〜約20個の連続したヌクレオチド、10〜50個の連続したヌクレオチド、12〜35個の連続したヌクレオチド、15〜50個の連続したヌクレオチド、20〜100個の連続したヌクレオチド、50〜500個の連続したヌクレオチド、または、100〜1000個の連続したヌクレオチドから得るヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、プライマーまたは核酸プローブは、200個、500個、750個、1000個、1500個、または2000個未満の、染色体の連続したヌクレオチドからなる細胞遺伝変異を検出するための、染色体の少なくとも約15個の連続したヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。ハイブリダイゼーション用の結合部位として、核酸類似体を使用することができる。好適な核酸類似体の例としては、ペプチド核酸がある(例えば、Egholm et al.,Nature 363:566 568(1993);米国特許第5,539,083号を参照のこと)。
【0083】
結合エネルギー、塩基組成、配列の複雑性、交差ハイブリダイゼーション結合エネルギー、及び二次構造を考慮に入れたアルゴリズムを使用して、プライマーまたは核酸プローブを選択することができる(Friend et al.,International Patent Publication WO01/05935,published Jan.25,2001;Hughes et al.,Nat.Biotech.19:342−7(2001)を参照のこと)。本開示の有用なプライマーまたは核酸プローブは、各転写物に対して一意的である配列、例えば標的変異領域に結合し、その特定の核酸(例えば転写物または変異転写物)のみを増幅、検出、及び配列決定するためのPCRで使用することができる。当業者は、当該技術分野における技術、例えば、プライマーまたは核酸プローブ中の縮退またはGC含量を操作することにより、標準配列、変異またはアレリックバリアントに結合するプライマーまたは核酸プローブの能力を調整する技術を使用して、本明細書にて開示したマーカー、または、類似の特性を有する関連したマーカー(例えば、染色体遺伝子座上のマーカー)、もしくは、本明細書で記載されるのと同じマーカー遺伝子の異なる領域における変異を有するマーカー用のプライマー及び核酸プローブを設計することができる。必要な特異性、及び最適な増幅特性を備えるプライマーの設計において、Oligo(バージョン5.0)(National Biosciences,Plymouth,MN)等の、当該技術分野において周知のコンピュータプログラムが有用である。本明細書で記載されるマーカー及びその変異、多型、または対立遺伝子を検出するために、完全に相補的な核酸プローブ及びプライマーを使用することができるが、逸脱が、分子の標的部位への特異的ハイブリダイゼーションを妨げない場合において、完全な相補性からのそのような逸脱が考慮される。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、5’末端に非相補性断片を有してよく、プライマーの残りの部分は標的部位に相補的である。あるいは、得られるプローブまたはプライマーが依然として、標的部位に特異的にハイブリダイズ可能であるならば、非相補性ヌクレオチドが核酸プローブまたはプライマー内に分散してよい。
【0084】
FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)は、染色体上で特定のDNA配列の有無を検出し局在化するために使用される、1980年代初頭に生物医学研究者により開発された細胞遺伝技術である。例えば、Speicher and Carter,Nat.Rev.Genet.2005 Oct;6(10)782−792を参照のこと。FISHは、高い配列相補性度を示す染色体の部分のみに結合する蛍光プローブを用いる。IMWGは、精製した形質細胞の細胞核で、多発性骨髄腫患者をFISH試験することを推奨している(Shi et al.,Acta Medica International,Jul−Dec 2015 2(2),page 168−174)。
【0085】
細胞遺伝変異del(17)、t(4:14)、及びt(14:16)用のプローブは、例えば、Empire Genomics,(Buffalo,NY),Kreatech Inc.,(part of Leica Biosystems,Illinois,USA)及びBiocare Medical(CA,USA)を含む、様々な民間の供給元から入手可能である。蛍光顕微鏡を使用して、どこで蛍光プローブが染色体に結合しているかを見出すことができる。細胞を固定し、その後透過処理して標的へのアクセスを可能にする。標的特異的プローブ(例えば、20個のオリゴヌクレオチド対で構成されるプローブ)は、標的RNA(複数可)またはDNAにハイブリダイズする。別の、しかし適合性のあるシグナル増幅システムにより、マルチプレックスアッセイ(1アッセイあたり3つ以上の標的、例えば4つ、6つ、8つ、またはそれ以上の標的)が可能となる。一続きの逐次的ハイブリダイゼーションステップにより、シグナル増幅は達成される。アッセイの最後で、色素を励起することができ、色素からの発光を検出することができ、所望により画像を記録することができる蛍光顕微鏡または機器の元で、サンプルを可視化する。
【0086】
準備及びハイブリダイゼーションプロセス:まず、プローブを構築する。プローブは、その標的と特異的にハイブリダイズするのに十分長くないといけないが、ハイブリダイゼーションプロセスを阻害するほど長くてはいけない。プローブをフルオロフォア、抗体用標的、またはビオチンにより、直接標識する。標識は様々な方法、例えばニックトランスレーション、または、標識したヌクレオチドを用いるPCRで行うことができる。
【0087】
次に、間期染色体または中期染色体の調製を行う。染色体は基質、通常ガラスにしっかりと付着している。DNAの短い断片をサンプルに添加することにより、反復DNA配列をブロックしなければならない。次に、プローブを染色体DNAに適用し、ハイブリダイゼーションしながら約12時間インキュベーションする。複数の洗浄工程により、ハイブリダイゼーションしていないプローブ、または部分的にハイブリダイゼーションしたプローブを全て除去する。顕微鏡検出のために、次いで色素を励起し、画像を記録することができる顕微鏡を使用して、結果を可視化及び定量化する。
【0088】
蛍光シグナルが弱い場合、顕微鏡の検出閾値を超えるために、シグナルを増幅することが必要となる場合がある。蛍光シグナル強度は、多くの因子、例えばプローブ標識効率、プローブの種類、及び色素の種類に依存する。蛍光標識した抗体またはストレプトアビジンは、色素分子に結合する。強力なシグナルを有するので、これらの二次構成成分を選択される。蛍光シグナルを増幅するための1つの方法は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を用いるトリアミドベースのシグナル増幅技術を使用して、プローブハイブリダイゼーションの部位において高密度の蛍光標識を生み出すことである。
【0089】
del(17)用の市販されているプローブに関するノイズレベルの決定に基づいて、100個あたり5個の細胞(5%)のカットオフ値を使用して、del(17)を有するものとして個体を分類した。いくつかの実施形態では、5%のカットオフ値が、del(17)を有するものとして個体を分類する。いくつかの実施形態では、20%のカットオフ値が、del(17)を有するものとして個体を分類する。いくつかの実施形態では、60%のカットオフ値が、del(17)を有するものとして個体を分類する。
【0090】
医薬組成物
本明細書にて開示した化合物及び医薬組成物は、皮内、皮下、経口、動脈内、または静脈内を含む任意の経路により投与することができる。一実施形態では、投与は静脈内経路により行われる。非経口投与はボーラスで、または注射によりもたらされることができる。
【0091】
製薬上許容できる混合物中の、開示される化合物の濃度は、投与される化合物の用量、用いる化合物(複数可)の薬物動態的特性、及び投与経路等の複数の因子に応じて変化するであろう。作用物質は単回投与、または反復投与で投与することができる。治療薬は、患者の全体的な健康、ならびに、選択した化合物(複数可)の配合及び投与経路等の多数の因子に応じて毎日、またはより頻繁に投与されてよい。
【0092】
本開示の化合物の製薬上許容できる塩がこれらの組成物で使用される場合、塩は無機酸もしくは有機酸、または塩基に由来するのが好ましい。好適な塩の概要に関しては、例えば、Berge et al,J.Pharm.Sci.66:1−19(1977) and Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed.A.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000を参照のこと。
【0093】
好適な酸付加塩の非限定例としては、以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩(lucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、及びウンデカン酸塩。
【0094】
好適な塩基添加塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)、有機塩基(ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、及びコリン等)との塩、ならびにアミノ酸(アルギニン、リジン等)との塩が挙げられる。
【0095】
また、低級アルキルハライド(メチル、エチル、プロピル、及びブチル塩化物、臭化物、及びヨウ化物等)、ジアルキルサルフェート(ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミルサルフェート等)、長鎖ハライド(デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステアリル塩化物、臭化物、及びヨウ化物等)、アラルキルハライド(ベンジル及びフェネチル臭化物その他等)等の作用物質を用いて塩基性窒素含有基を四級化してよい。それによって、水溶性もしくは脂溶性、または水分散性もしくは油分散性生成物を得る。
【0096】
用語「製薬上許容できる担体」は本明細書において、レシピエント対象、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトと適合性があり、作用物質の活性を終了させることなく、標的部位に活性剤を送達するのに適している材料を意味するように使用される。存在する場合、担体に関係する毒性または悪影響は、活性剤の使用目的に関して、合理的な危険性/受益性比率に見合っているのが好ましい。
【0097】
用語「担体」、「アジュバント」、または「ビヒクル」は、本明細書では同じ意味で用いられ、所望の特定の投薬形態に適した全ての溶媒、希釈剤、及び他の液状ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等を含む。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed.A.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000は、製薬上許容できる組成物の配合に用いられる様々な担体、及びそれらの調製のための既知の技術について開示している。例えば望ましくない生物学的効果を生み出すこと、または別の場合、製薬上許容できる組成物の任意の他の成分(複数可)と有害な相互作用を行うことにより、任意の従来の担体媒体が、本開示の化合物と非適合性である場合を除き、担体媒体の使用は、本開示の範囲内であると考えられる。製薬上許容できる担体として機能することができる材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミン等)、緩衝物質(リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウム等)、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、発熱性物質除去水、塩または電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、及び亜鉛塩等)、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックコポリマー、羊毛脂、糖類(ラクトース、グルコース、スクロース等)、デンプン(コーンスターチ及びバレイショデンプン等)、セルロース及びその誘導体(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロース、トラガント粉末)、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(カカオバター及び坐剤蝋等)、油類(ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油等)、グリコール(プロピレングリコール及びポリエチレングリコール)、エステル(オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等)、寒天、アルギン酸、等張食塩水、リンゲル液、アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、及びグリセロール)、シクロデキストリン、潤滑剤(ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等)、石油炭化水素(鉱油及びワセリン等)が挙げられるが、これらに限定されない。着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味・香味及び芳香剤、防腐剤、ならびに酸化防止剤もまた、配合者の判断に従って組成物中に存在することができる。
【0098】
本開示の医薬組成物は、とりわけ、従来の粒状化、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、または乳化プロセス等の当該技術分野において既知の方法により製造することができる。組成物は、顆粒、沈殿物もしくは微粒子、粉末(フリーズドライ、回転乾燥、もしくはスプレー乾燥粉末、非晶質粉末等)、錠剤、カプセル、シロップ、座薬、注射液、エマルション、エリキシル剤、懸濁液、または溶液を含む様々な形態で製造してよい。配合物は所望により、所望の特定の投薬形態に適した溶媒、希釈剤、及び他の液状ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、pH調整剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、安定剤及び防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等を含有してよい。
【0099】
別の実施形態によれば、本開示の組成物は、哺乳類、好ましくはヒトへの薬学的投与のために配合される。本開示のこのような医薬組成物は経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、口腔投与、膣内投与されてよい、または埋め込み型リザーバーを介して投与されてよい。本明細書で使用する場合、用語「非経口」とは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内、及び頭蓋内注射または点滴技術を含む。組成物は経口投与、静脈内投与、または皮下投与されるのが好ましい。本開示の配合物は短時間作用、即時放出、または長時間作用のものとなるように設計することができる。また更に、化合物は全身的方法ではなく局所に投与されてよい(腫瘍部位への、例えば注射による投与)。
【0100】
経口投与用の液体投薬形態としては、製薬上許容できるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物に加え、液体投薬形態は、当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、シクロデキストリン、ジメチルホルムアミド、油類(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物等の可溶化剤ならびに乳化剤等を含有してよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味・香味及び芳香剤等の補助剤もまた含むことができる。
【0101】
注射可能な調合剤、例えば無菌注射可能な水性または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を使用して既知の技術に従って配合してよい。無菌注射可能な調合剤はまた、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、無菌注射可能な溶液、懸濁液またはエマルション、例えば1,3−ブタンジオールの溶液であってもよい。使用してよい許容できるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液、U.S.P.及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の不揮発性油を溶媒または懸濁媒として通常使用する。この目的のために、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む無刺激性の不揮発性油を用いることができる。加えて、オレイン酸等の脂肪酸を注射液の調製に使用する。注射可能な配合物は例えば、細菌捕捉性濾過器を通す濾過により、または使用前に滅菌水もしくは他の無菌注射可能な媒体中に溶解もしくは分散させることができる無菌固体組成物の形態で、滅菌剤を導入することにより、滅菌することができる。非経口的投与用に配合した組成物を、ボーラス注射により、もしくは時限式プッシュにより注射することができる、または、連続点滴により投与することができる。
【0102】
経口投与用の固体投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、丸薬、粉末、及び顆粒が挙げられる。このような固体投薬形態では、活性化合物を、少なくとも1種の不活性な製薬上許容できる賦形剤または担体(例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸ニカルシウム)、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコースマンニトール、及びケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、及びアカシア等の結合剤、c)グリセロール等の湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶解遅延剤、f)四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)湿潤剤(例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート等)、h)カオリン及びベントナイト粘土等の吸収剤、ならびにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物等の潤滑剤と混合する。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、投薬形態はホスフェートまたはカーボネート等の緩衝剤もまた含んでよい。
【0103】
このような賦形剤をラクトース(即ち乳糖)として使用し、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等も使用することで、類似タイプの固体化合物もまた、ソフトゼラチンカプセル及びハードゼラチンカプセルの充填剤として使用してよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体投薬形態は、腸溶性コーティング、及び製剤技術分野において既知の他のコーティング等のコーティング及びシェルにより調製することができる。これらは所望により乳白剤を含有してもよく、かつこれらは、有効成分(複数可)のみを、または好ましくは、腸管の特定部分において、所望により遅れて放出することができる組成物とすることができる。使用可能な埋め込み組成物の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。このような賦形剤をラクトース(即ち乳糖)として使用し、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等も使用することで、類似タイプの固体化合物もまた、ソフトゼラチンカプセル及びハードゼラチンカプセルの充填剤として使用してよい。
【0104】
活性化合物はまた、上記の1つ以上の賦形剤と共にマイクロカプセル化形態であることができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体投薬形態は腸溶性コーティング、放出制御コーティング及び製剤技術分野において既知の他のコーティング等のコーティング及びシェルにより調製することができる。このような固体投薬形態では、活性化合物はスクロース、ラクトース、またはデンプン等の少なくとも1つの不活性希釈剤と混合してよい。このような投薬形態はまた、通常の慣行どおり、不活性希釈剤以外の追加物質、例えば打錠潤滑剤、ならびにステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロース等の他の打錠助剤を含んでもよい。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、投薬形態は更に緩衝剤を含んでもよい。これらは所望により乳白剤を含有してもよく、かつこれらは、有効成分(複数可)のみを、または好ましくは、腸管の特定部分において、所望により遅れて放出することができる組成物とすることができる。使用可能な埋め込み組成物の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。
【0105】
本開示の化合物を局所または経皮投与するための投薬形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入薬または貼付剤が挙げられる。活性成分を滅菌状態下にて、製薬上許容できる担体、及び必要とされうる任意の防腐剤または緩衝剤と混合する。眼用製剤、点耳剤、及び点眼剤もまた、本開示の範囲内にあると考えられる。更に、本開示は化合物を身体に制御しながら送達することをもたらす、更なる利点を有する経皮貼付剤の使用を考慮する。このような投薬形態は、化合物を適切な溶媒中に溶解または分配することにより作製することができる。化合物の皮膚での流動化を高めるために、吸収促進剤を使用することもできる。速度制御膜を付与すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させることのいずれかにより、速度を制御することができる。
【0106】
投与を容易にし、用量を均一にするために、本開示の方法で使用するための組成物を、単位投薬形態に配合してよい。本明細書で使用する場合、表現「単位投薬形態」とは、治療する患者にとって適切な、物質的に別々の単位の作用物質を意味する。しかし、本開示の化合物及び組成物の毎日の総合的な使用法は、医学的良識の範囲内で主治医により決定されることが理解されるであろう。非経口的投与のための単位投薬形態は、アンプル内、または複数投与のための容器内にあってよい。
【0107】
製品
いくつかの実施形態では、本開示は、
i)式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態であって、式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態、ならびに、
ii)患者が染色体17における細胞遺伝変異を有するか否かを決定することにより、前記組成物の使用の適切さを決定するための取扱説明書を含む、
製品に関係する。
【0108】
いくつかの実施形態では、本開示は、
i)患者が染色体17における細胞遺伝変異を有するか否かを決定するための試薬、及び
ii)前記決定に基づいて、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む医薬組成物の使用の適切さを決定するための取扱説明書
を含み、式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、製品に関係する。
【0109】
いくつかの実施形態では、本開示は、
i)式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む医薬組成物であって、式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む医薬組成物、
ii)患者が染色体17における細胞遺伝変異を有するか否かを決定するための試薬、ならびに
iii)前記決定に基づいて、式(Ia)の化合物、または製薬上許容できる塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態を含む医薬組成物の使用の適切さを決定するための取扱説明書を含み、
製品に関係する。
【0110】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者が細胞遺伝変異を有するか否かを識別することと、患者が細胞遺伝変異を有する場合に、化合物で患者を治療することを決定することと、を含む、患者が染色体17における細胞遺伝変異を有するか否かを決定するための試薬の使用であって、式(Ia)の化合物、または薬剤として許容されるその塩、立体異性形態、もしくは互変異性形態(式中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立してヒドロキシルである、あるいは、Z
1及びZ
2は合わさって、2〜20個の炭素原子、及び所望によりN、S、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する環状ボロン酸エステルを形成する)を含む医薬組成物の使用の適切さを決定するためのキットの製造における、前記決定に基づく試薬の使用に関する。
【実施例】
【0111】
C16010臨床治験
この試験は、再発した多発性骨髄腫、及び/または不応性多発性骨髄腫を有する成人患者における、病気の進行または許容できない毒性が阻害されるまで投与される、2つの治療レジメン(イキサゾミブ+レナリドマイド+デキサメタゾン、プラセーボ+レナリドマイド+デキサメタゾン)の有効性及び安全性を比較するために設計された、国際共同の無作為化二重盲検プラセーボ対照臨床治験である。
【0112】
この試験に含まれる対象は、多発性骨髄腫の診断が確認され、1〜3種類の事前治療を受け、他の適格性基準を満たしている。事前のレナリドマイドまたはプロテアソーム阻害剤ベースの治療に不応性の患者を除外する。一次エンドポイントは、IMWG基準ごとの、治療に対して盲検である独立した確認委員会により評価される無進行生存(PFS)である。
【0113】
下表1は、各患者群に対する状態及び介入情報を示す。
【表1】
【0114】
サンプル処理:
骨髄サンプルを得、磁気ビーズ分類技術を使用して、CD138陽性形質細胞を単離する。次いで、任意の細胞遺伝変異を識別するための特異的なFISHプローブを使用して、10,000個のCD138陽性濃縮形質細胞を細胞遺伝試験に使用する。FISHプローブは民間の供給元から入手可能であり、メーカーの取扱説明書に従って分類及び使用する(二重カラー/二重融合、または二重もしくは三重カラープローブのいずれか)。
(i)ATM−p53DNAプローブ(ASR)[del(17)];Kreatech,Inc.(カタログ番号11Q001I495;17P001I550)
(ii)4;14DNAプローブ(ASR)[t(4:14)]Kreatech,Inc.(カタログ番号04P001I495,14Q001I550)
(iii)14;16DNAプローブ(ASR)[t(14:16)]Kreatech,Inc.(カタログ番号16Q001I49,14Q001I550)
【0115】
各プローブに関して、蛍光顕微鏡を使用して、2人の技術者により合計で100個の細胞核を通常カウントする。技術者のスコアが一致しない場合、第3の技術者が更に細胞核をカウントする。以下のカットオフを使用してスライドを異常(細胞遺伝変異に関して陽性)とスコアリングする。
(i)ATM/p53del(17)>5
(ii)4;14DNAプローブ[t(4:14)]>3
(iii)14;16DNAプローブ[t(14:16)]>3
【0116】
結果(試験C16010)
最初の暫定的な分析では、722人の患者を無作為化した。360人がイキサゾミブ群であり、362人がプラセーボコンパレーター群であった。細胞遺伝分析結果は、患者の76%で入手可能であった。主に中央研究室の評価に基づくと(97%)、患者の19%は、FISHによる高リスクの細胞遺伝[del(17)、t(4:14)、または10%のdel(17)を含むt(14;16)]を有すると決定された。高リスクの細胞遺伝を有する患者のうち、75人はイキサゾミブ群に属し、62人はプラセーボ群に属した。イキサゾミブ及びプラセーボ群において、36人と33人の患者はそれぞれ、del(17p)のみを有する、またはt(4;14)及びt(14;16)のいずれかまたは両方を組み合わせて有し、36人と25人の患者はそれぞれt(4;14)のみを有し、3人及び4人の患者はそれぞれ、t(14;16)のみを有した。
【0117】
少なくともdel(17)により定義される患者の分析では、イキサゾミブ群の患者とプラセーボ群の患者に関して、中央PFSの改善を示した(21.4ヶ月と9.7ヶ月、HR=0.596)。3つの高リスク細胞遺伝変異del(17)、t(4:14)、及びt(14:16)のいずれかにより定義される患者の分析では、イキサゾミブ群とプラセーボ群に関して、PFSの改善を示した(21.4ヶ月と9.7ヶ月、HR=0.543)。寛解率についての更なるデータを以下で表2に示す。
【表2】
*レジメンどうしの比較に関して、p<0.05。
†単独、またはt(4;14)もしくはt(14;16)との組み合わせ;ORR=全体の寛解率、VGPR=非常に良好な部分寛解、CR=完全寛解。
a95%信頼区間、0.321、0.918;
b95%信頼区間、0.29、1.24;
c95%信頼区間、0.25、1.66。
【0118】
上述のとおり、100個あたり5個の細胞(5%)のカットオフ値を使用して、del(17)を有する患者を分類した。20%及び60%のカットオフを使用した、データの更なる分析を下表3に示す。
【表3】
【0119】
上述のとおり、100個あたり3個の細胞(3%)のカットオフ値を使用して、t(4:14)のみを有する患者を分類した。10%及び20%のカットオフを使用した、データの更なる分析を下表4に示す。
【表4】