【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、細長い支持部材と、該支持部材の先端に長手軸方向に移動可能に支持され
、ステープルを押し出す押出部材であるエンドエフェクタと、該エンドエフェクタに固定され前記長手軸に直交する第1軸線回りに回転可能に支持された第1牽引プーリと、基端が牽引されることにより、前記第1軸線を挟んだ前記第1牽引プーリの両側において略同一方向の張力を前記第1牽引プーリに作用させるように前記第1牽引プーリに巻き掛けられた第1ワイヤと
、前記支持部材の先端に長手軸方向に移動可能に支持され、前記押出部材によって前記長手軸方向先端側に押し出された前記ステープルを変形させるアンビルと、該アンビルに固定され前記長手軸に直交する第2軸線回りに回転可能に支持された第2牽引プーリと、基端が牽引されることにより、前記第2軸線を挟んだ前記第2牽引プーリの両側において前記長手軸方向基端側に向かう張力を前記第2牽引プーリに作用させるように前記第2牽引プーリに巻き掛けられた第2ワイヤと、前記アンビルを前記支持部材に対して前記長手軸方向先端側に牽引するアンビル牽引手段とを備え
、前記第2ワイヤの牽引により前記アンビルを前記長手軸方向基端側に移動させる力が、前記第1ワイヤの牽引により前記押出部材を前記長手軸方向先端側に移動させる力以上であり、前記アンビル牽引手段が、基端側に牽引することにより前記アンビルを先端側に牽引する第3ワイヤを備え、該第3ワイヤの基端および前記第2ワイヤの基端をそれぞれ巻き掛ける巻き掛け部を有し、各該巻き掛け部の回転により前記第2ワイヤおよび前記第3ワイヤにそれぞれ牽引力を付与するアンビル操作部を備え、該アンビル操作部の各前記巻き掛け部が、前記アンビルの移動量に対する前記第2ワイヤおよび前記第3ワイヤの牽引長さの比率に比例する周速で同期して回転する医療用マニピュレータである。
【0006】
本態様によれば、細長い支持部材の先端を目的部位の近傍に配置して、第1ワイヤの基端を基端側に牽引するように力を加えると、第1ワイヤによって張力が伝達されて第1牽引プーリの第1軸線を挟んだ両側に略同一方向の張力が作用する。これにより、第1牽引プーリの第1軸線には、張力の略2倍の力が作用し、第1牽引プーリの第1軸線が固定されたエンドエフェクタが支持部材の先端において長手軸方向に移動させられる。これにより、加えた力の略2倍の力で、支持部材の先端においてエンドエフェクタを移動させることができ、エンドエフェクタの作動に必要な操作力量を低減することができる。
【0007】
上記態様においては、前記支持部材に、前記第1牽引プーリの車軸を長手軸方向に移動可能に支持するスリットを備えていてもよい。
このようにすることで、第1ワイヤに張力が発生すると、第1牽引プーリの車軸が支持部材に設けられたスリットによって案内されて、第1牽引プーリが支持部材の長手軸方向に移動させられる。
【0008】
また、上記態様においては、前記第1牽引プーリおよび前記第1ワイヤを2組以上備えていてもよい。
このようにすることで、各組の第1ワイヤと第1牽引プーリとによって、第1ワイヤに加えた力をそれぞれ略2倍に増幅することができ、さらに小さい操作力量でエンドエフェクタを作動させることができる。
【0009】
また、上記態様においては、前記エンドエフェクタが、ステープルを押し出す押出部材であ
る。
このようにすることで、第1ワイヤの基端に加えた操作力量が増幅されてエンドエフェクタを構成する押出部材に伝達され、ステープルを大きな力で押し出すことができる。これにより、ステープルによって組織を接合する際に必要な操作力量を低減することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記支持部材の先端に長手軸方向に移動可能に支持され、前記押出部材によって前記長手軸方向先端側に押し出された前記ステープルを変形させるアンビルと、該アンビルに固定され前記長手軸に直交する第2軸線回りに回転可能に支持された第2牽引プーリと、基端が牽引されることにより、前記第2軸線を挟んだ前記第2牽引プーリの両側において前記長手軸方向基端側に向かう張力を前記第2牽引プーリに作用させるように前記第2牽引プーリに巻き掛けられた第2ワイヤとを備えてい
る。
【0011】
このようにすることで、第2ワイヤの基端を基端側に牽引すると第2ワイヤが巻き掛けられた第2牽引プーリの第2軸線を挟んだ両側に張力が作用し、第2牽引プーリの第2軸線が固定されているアンビルが基端側に牽引される。一方、上述したように、第1ワイヤの基端を基端側に牽引すると第1ワイヤが巻き掛けられた第1牽引プーリの第1軸線を挟んだ両側に張力が作用し、第1牽引プーリの第1軸線が固定されている押出部材が先端側に押し出され、ステープルを先端側に押し出す。
【0012】
押出部材とアンビルとの間に接合すべき組織を配置して、アンビルおよび押出部材を作動させることにより、組織を貫通したステープルをアンビルによって変形させ、組織を接合することができる。
この場合に、押出部材およびアンビルのいずれにかかる力もワイヤと牽引プーリとの組合せによって増幅されるので、小さい操作力量で組織を接合できる。
【0013】
また、上記態様においては、前記第2牽引プーリおよび前記第2ワイヤを2組以上備えていてもよい。
このようにすることで、各組の第2ワイヤと第2牽引プーリとによって、第2ワイヤに加えた操作力量をそれぞれ略2倍に増幅することができ、さらに小さい操作力量でアンビルを牽引することができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記第2ワイヤの牽引により前記アンビルを前記長手軸方向基端側に移動させる力が、前記第1ワイヤの牽引により前記押出部材を前記長手軸方向先端側に移動させる力以上であ
る。
このようにすることで、アンビルによって押出部材からの力を安定して受けることができ、ステープルによる安定した接合を行うことができる。
【0015】
また、上記態様においては、前記第2牽引プーリにおける前記第2ワイヤの巻き数が、前記第1牽引プーリにおける前記第1ワイヤの巻き数以上であってもよい。
このようにすることで、第1ワイヤおよび第2ワイヤに同じ操作力量を加えた場合でも、アンビルを牽引する力が押出部材を押し出す力より大きくなり、アンビルによって押出部材からの力を安定して受けることができて、ステープルによる安定した接合を行うことができる。
【0016】
また、上記態様においては、前記アンビルを前記支持部材に対して前記長手軸方向先端側に牽引するアンビル牽引手段を備えてい
る。
このようにすることで、アンビルと押出部材との間に組織を挟む際、あるいは、接合した組織をアンビルと押出部材との間から解放する際に、アンビル牽引手段を作動させてアンビルを押出部材から離れた位置に戻すことができる。
【0017】
また、上記態様においては、前記アンビル牽引手段が、基端側に牽引することにより前記アンビルを先端側に牽引する第3ワイヤを備え、該第3ワイヤの基端および前記第2ワイヤの基端をそれぞれ巻き掛ける巻き掛け部を有し、各該巻き掛け部の回転により前記第2ワイヤおよび前記第3ワイヤにそれぞれ牽引力を付与するアンビル操作部を備え、該アンビル操作部の各前記巻き掛け部が、前記アンビルの移動量に対する前記第2ワイヤおよび前記第3ワイヤの牽引長さの比率に比例する周速で同期して回転
する。
【0018】
このようにすることで、アンビル操作部を操作して第2ワイヤを基端側に牽引すると、アンビルが基端側に移動させられる一方、第3ワイヤを基端側に牽引すると、アンビルが先端側に移動させられる。アンビルを基端側に移動させる牽引力と先端側に移動させる牽引力とを異ならせる場合に、アンビルの移動量に対する第2ワイヤおよび第3ワイヤの牽引長さが相違する。したがって、各巻き掛け部をアンビルの移動量に対する第2ワイヤおよび第3ワイヤの牽引長さの比率の周速で同期して回転させることにより、第2ワイヤおよび第3ワイヤの一方に牽引力を作用させるときに他方に発生する弛みを抑制して操作性を向上することができる。
【0019】
また、上記態様においては、前記アンビル操作部は、各前記巻き掛け部の直径の比率が、前記アンビルの移動量に対する前記第2ワイヤおよび前記第3ワイヤの牽引長さの比率に等しい2段プーリからなり、前記第2ワイヤおよび前記第3ワイヤが逆方向に巻き掛けられていてもよい。
このようにすることで、アンビル操作部を構成する2段プーリを一方向に回転させると第2ワイヤが牽引され、他方向に回転させると第3ワイヤが牽引される。これにより、アンビルを基端側に移動させる牽引力と先端側に移動させる牽引力とを異ならせても、第2ワイヤおよび第3ワイヤの一方に牽引力を作用させるときに他方に発生する弛みを抑制して操作性を向上することができる。
【0020】
また、上記態様においては、前記アンビル操作部は、各前記巻き掛け部が備えられた2つのプーリと、該プーリを前記アンビルの移動量に対する前記第2ワイヤおよび前記第3ワイヤの牽引長さの比率に等しい周速で同期して回転させる減速機構とを備えていてもよい。
このようにすることで、一方のプーリを回転させると、減速機構によって他方のプーリが異なる周速で回転させられる。これにより、アンビルを基端側に移動させる牽引力と先端側に移動させる牽引力とを異ならせても、第2ワイヤおよび第3ワイヤの一方に牽引力を作用させるときに他方に発生する弛みを抑制して操作性を向上することができる。
【0021】
本発明の他の態様は、細長い支持部材と、該支持部材の先端に長手軸方向に移動可能に支持され、ステープルを押し出す押出部材であるエンドエフェクタと、該エンドエフェクタに固定され前記長手軸に直交する第1軸線回りに回転可能に支持された第1牽引プーリと、基端が牽引されることにより、前記第1軸線を挟んだ前記第1牽引プーリの両側において略同一方向の張力を前記第1牽引プーリに作用させるように前記第1牽引プーリに巻き掛けられた第1ワイヤと、前記支持部材の先端に長手軸方向に移動可能に支持され、前記押出部材によって前記長手軸方向先端側に押し出された前記ステープルを変形させるアンビルと、該アンビルに固定され前記長手軸に直交する第2軸線回りに回転可能に支持された第2牽引プーリと、基端が牽引されることにより、前記第2軸線を挟んだ前記第2牽引プーリの両側において前記長手軸方向基端側に向かう張力を前記第2牽引プーリに作用させるように前記第2牽引プーリに巻き掛けられた第2ワイヤと、前記押出部材を前記支持部材に対して前記長手軸方向基端側に牽引する押出部材牽引手段を備え
、前記第2ワイヤの牽引により前記アンビルを前記長手軸方向基端側に移動させる力が、前記第1ワイヤの牽引により前記押出部材を前記長手軸方向先端側に移動させる力以上であり、前記押出部材牽引手段が、基端側に牽引することにより前記押出部材を基端側に牽引する第4ワイヤを備え、該第4ワイヤの基端および前記第1ワイヤの基端をそれぞれ巻き掛ける巻き掛け部を有し、各該巻き掛け部の回転により前記第1ワイヤおよび前記第4ワイヤにそれぞれ牽引力を付与する押出部材操作部を備え、該押出部材操作部の各前記巻き掛け部が、前記押出部材の移動量に対する前記第1ワイヤおよび前記第4ワイヤの牽引長さの比率に比例する周速で同期して回転
する医療用マニピュレータである。
【0022】
また、上記態様においては、前記押出部材操作部は、該押出部材操作部の各前記巻き掛け部の直径の比率が、前記押出部材の移動量に対する前記第1ワイヤおよび前記第4ワイヤの牽引長さの比率に等しい2段プーリからなり、前記第1ワイヤおよび前記第4ワイヤが逆方向に巻き掛けられてい
る。
【0023】
本発明の参考例としての発明の態様は、前記押出部材操作部は、該押出部材操作部の各前記巻き掛け部が備えられた2つのプーリと、該プーリを前記押出部材の移動量に対する前記第1ワイヤおよび前記第4ワイヤの牽引長さの比率に等しい周速で同期して回転させる減速機構とを備えていてもよい。