特許第6875419号(P6875419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875419冷却ダクトを装備した燃料要素を備える原子炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875419
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】冷却ダクトを装備した燃料要素を備える原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/02 20060101AFI20210517BHJP
   G21C 15/06 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   G21C1/02 200
   G21C15/06 E
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2018-557827(P2018-557827)
(86)(22)【出願日】2017年5月4日
(65)【公表番号】特表2019-515295(P2019-515295A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】IB2017052607
(87)【国際公開番号】WO2017191594
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2020年4月15日
(31)【優先権主張番号】102016000045609
(32)【優先日】2016年5月4日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516312660
【氏名又は名称】ハイドロミン ニュクレアル エネルジー ソシエテ ア レスポンサビリテ リミティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ルチャーノ チノッティ
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−176692(JP,A)
【文献】 特開平11−133172(JP,A)
【文献】 特公昭35−014181(JP,B1)
【文献】 特開昭59−150381(JP,A)
【文献】 特開昭62−177487(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0155059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/02
G21C 15/06
G21C 3/52
G21C 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心(4)を収容する容器(2)を具備する原子炉(1)であって、前記炉心は、燃料要素(12)の束を具備し、前記炉心の一次冷却流体(F)に浸漬される原子炉において、
前記燃料要素(12)は、それぞれの長手方向平行軸(A)に沿って延び、前記燃料要素(12)の頭部(16)が、前記燃料要素(12)の活性部分(13)全体の中心に延在する管状構造体(26)に液圧によって接続され、
前記管状構造体(26)は、下端部(28)にて液圧によって封止され、前記燃料要素(12)の前記活性部分(13)に対応する全長に沿う複数の孔(27)を備える、ことを特徴とする、原子炉。
【請求項2】
前記管状構造体(26)は、前記管状構造体(26)に作成される肩部(30)と共に、前記燃料要素(12)の下部格子(31)の係止システムを構成する栓(29)によって、前記下端部(28)にて閉鎖される、請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
燃料交換機の把持部と前記燃料要素(12)の前記頭部(16)との間の液圧による封止結合によって、燃料交換作業中に、冷却ガスを、前記管状構造体(26)の前記孔(27)を通して前記燃料要素(12)の前記活性部分(13)内に噴射することができる、請求項1に記載の原子炉。
【請求項4】
燃料交換作業中に、燃料棒(24)の上部支持格子(23)の孔(25)を通して、前記燃料要素(12)から冷却ガスを逃がすことができる、請求項1に記載の原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉、特に液体金属または溶融塩で冷却される原子炉に関し、新しい概念の燃料交換の実施中にシステムを冷却することを特徴とする多数の燃料要素から構成される。
【背景技術】
【0002】
原子炉の通常運転中、燃料要素の活性部分は冷却流体中に完全に浸漬され、場合によっては不活性頭部のみがホットマニホールドの高さより上に出現する。
【0003】
燃料交換の実施中に、排出された要素は、原子炉の液体金属または溶融塩から補助水プールに移送される。この動作は、原子炉から排出された燃料要素の抽出と、補助水プールへの全移送期間中の強制的なガス循環を介した燃料要素の冷却と、を必要とする。この循環は、燃料要素の頭部に接続される燃料移送機の把持部を介して燃料移送機の補助回路に燃料要素を連結することによって実施される。冷却ダクトが、燃料要素の頭部から延び、箱状構造体に収容された燃料棒に達する。箱状構造体は、原則として燃料要素の下方活性端部を越えて延び、燃料要素の脚部と液圧によって導通し、次にダクトを備える。このダクトを通って、通常の原子炉運転中に一次冷却流体が流入し、補助冷却ガスが燃料交換状況で流出する。
【0004】
冷却は、輸送経路に沿った任意の位置での燃料要素の一時的な閉塞などの予期せぬ事態も考慮して、常に確保されなければならない。
【0005】
明らかに、最も危機的な状況は、一次冷却流体から部分的または全体的に抽出された燃料要素の活性部分によって閉塞が発生しうることである。このとき、要素の脚部は依然として一次冷却流体に浸漬され、脚部が未だ部分的に浸漬される一次冷却流体による循環ダクトの閉塞によって補助冷却ガスの循環が阻止される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的の1つは、既知の解決策の指摘された欠点を克服し、さらに構造上および安全上の利点を有する原子炉を提供することである。
【0007】
このため、本発明は、添付の請求項1に定義されるような原子炉であって、その補助的な特性およびプラントの構成に関しては、従属請求項に記載される原子炉に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、以下の非限定的な実施形態において、添付図面の図を参照して説明される。
図1】本発明による原子炉の縦断面での概略全体図。
図2図1の原子炉の炉心の活性部分の縦断面での拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1、特に液体金属冷却原子炉または溶融塩冷却原子炉1の例を参照すると、原子炉1は、実質的にカップ形状またはプール形状の容器2と、容器2の上に配置された閉鎖構造体3と、を備える。容器2は、炉心4と、ホットマニホールド6と炉心4の一次冷却流体Fが循環するコールドマニホールド7とを区切る液圧分離構造体5と、を収容する。一次流体Fは、原子炉1の通常運転ではマニホールド6および7内の異なる高さH1およびH2にある自由表面を有する。容器2は、一次流体Fのための循環ポンプ8と、流体Fが通過し、炉心4内で発生した動力を二次流体に伝達する熱交換器9のほか、図示しない他の公知の構成要素を収容する。
【0010】
燃料要素12のための固定構造体11が液圧分離構造体5の上部10の内部に挿入される。
【0011】
さらに図2を参照すると、燃料要素12は、それぞれの長手方向平行軸線(A)に沿って延び、燃料要素の底部及び頂部にそれぞれ脚部15及び頭部16を備えるそれぞれの活性部分13ならびにそれぞれのサービス部分14と、活性部分13と頭部16との間の接続シャフト17とを有する。
【0012】
シャフト17は、ある程度の機械的可撓性を有し、その上部18が燃料要素4の頭部16内の空の円筒形容積に挿入される。この上部18は、現在の技術であるため詳細には説明されない球状カップリング19によって頭部16に機械的に連結され、頭部の最先端に位置する。
【0013】
燃料要素12の脚部15は、互いに接触しており、全体として、液圧分離構造体5の底部の開口21の内側リム20によって半径方向に拘束された束を構成する。
【0014】
燃料要素12の頭部16は、燃料要素12を互いに固定構造体11に拘束する支持装置22を収容する。
【0015】
通常の原子炉運転条件では、燃料要素12の頭部16は、ホットマニホールド内の一次流体の高さH1より高いのに対し、それぞれの活性部分13は完全に浸漬されて、一次冷却流体の循環による冷却を可能にする。一次冷却流体は、コールドマニホールド7からそれぞれの脚部15を介して燃料要素12に流入し、孔25が設けられた燃料棒24の上部支持格子23を通ってホットマニホールド6内に流出する。
【0016】
シャフト17は、中空であり、燃料要素12の活性部分13の全体の中心に延在する管状構造体26に液圧によって接続される。
【0017】
管状構造体26は、燃料要素12の活性部分13に対応する全長に沿って複数の小孔27を備えることを特徴とする。管状構造体26は、都合のよいことには、栓29との螺合によって下端部にて閉じられる。この栓は、管状構造体26上に作成された肩部30と共に、燃料要素12の下部格子73の係止システムを構成する。
【0018】
既知の解決策であるため本発明の範囲内で説明されない、燃料交換機の把持部と燃料要素12の頭部16との間の液圧によって封止された結合によって、さらに頭部16からシャフト17を通って延びて燃料要素の管状構造体26を送る液圧ダクトによって、燃料交換作業中に管状構造体26の孔27を通って燃料要素12の活性部分13の内側に冷却ガスを注入することが可能である。
【0019】
ほかにも、同じような可能性が、シャフト17を設けないが、上部格子23に直接接続された頭部を設けるなど、燃料要素12のための異なる構造上の解決策でも存在する。
【0020】
本発明の利点は、上記の説明から明らかである。
‐燃料要素12の活性部分13の全体の軸方向輪郭に沿って冷却ガスを噴射するシステムが利用可能であることにより、交換作業中の仮想上の偶発的な状況であっても、要素の活性部分を冷却することができる。このとき、燃料要素12は、要素12の活性部分13のみ、あるいは活性部分の一部のみが一次冷却流体の高さH1より上に出て、活性部分13全体を通る冷却ガスの循環が、脚部15を通る冷却ガスの排出を防止する一次冷却流体によって遮断される位置で、閉塞された状態を維持する。この場合、一次冷却流体から突出する部分は、出現した活性部分13に対応して小孔27から逃げ、燃料要素12を孔25を介して上部格子23に保持するガスによって冷却される。
‐活性部分13の内側からの冷却ガスの噴射は、外側の燃料棒とは異なり、活性部分13から外側への照射によって効率的に冷却することができない内側の燃料棒の冷却に特に有利である。
‐燃料要素12の活性部分13の全体にわたって延在する管状構造体26は、都合のよいことには、下部格子のための支持体として、必要であれば燃料棒の中間格子のための支持体としても使用することができる。
‐燃料要素12の活性部分13全体に延びる管状構造体26は、都合のよいことには、炉心4の制御棒、ガス噴射を冷却する液圧ダクトとして管状構造体26を使用するために燃料要素12の取り出しの前に除去される棒を収容するのに使用することができる。
【0021】
最後に、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された原子炉に関して多数の改変および変形が可能であることが理解される。
図1
図2