(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図6を参照して、実施の形態における装置について説明する。本実施の形態では、装置の例として工作機械を取り上げて説明する。本実施の形態の装置は、駆動機の駆動状態を伝送するためのデータ伝送機構を備える。
【0013】
図1は、本実施の形態の工作機械のブロック図である。工作機械1は、ワークに対する工具の相対位置を変化させながらワークを加工する。工作機械1は、ワークに対する工具の相対位置を変化させる送り軸を有する。例えば、送り軸は、3つの直動軸(X軸、Y軸およびZ軸)により構成されている。工作機械1の送り軸としては、この形態に限られず、任意の直動軸または回転軸から構成することができる。
【0014】
工作機械1は、送り軸に沿ってワークおよび工具のうち少なくとも一方を移動する移動装置5を備える。移動装置5は、それぞれの送り軸に対応して配置された送り軸モータ12を含む。工作機械1は、工具を保持ながら工具を回転する主軸ヘッド4を備える。主軸ヘッド4は、工具を支持する主軸と、主軸を回転させる主軸モータ11とを含む。
【0015】
工作機械1は、送り軸モータ12および主軸モータ11を制御する制御装置としての機械制御装置2を備える。本実施の形態の機械制御装置2は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)を含む演算処理装置(コンピュータ)により構成されている。機械制御装置2は、CPUにバスを介して互いに接続されたRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を有する。
【0016】
本実施の形態の工作機械1は、数値制御式である。工作機械1を動作させる加工プログラム7は、作業者により予め生成されている。機械制御装置2は、加工プログラム7および判定範囲等の加工に関する情報を記憶する記憶部21と、加工プログラム7に基づいてモータの動作指令を生成する指令生成部22とを含む。工作機械1は、送り軸モータ12および主軸モータ11に電気を供給するための電気回路を有するモータ駆動装置3を含む。モータ駆動装置3は、指令生成部22にて生成された動作指令に基づいて、送り軸モータ12および主軸モータ11に電気を供給する。モータ駆動装置3が電気を供給することにより、送り軸モータ12および主軸モータ11が駆動する。
【0017】
図2に、本実施の形態におけるデータ伝送機構の概略図を示す。
図2に示す例では、装置の構成部材を駆動する駆動機として、モータ31が示されている。
図1および
図2を参照して、モータ31は、例えば、移動装置5の送り軸モータ12である。送り軸モータ12としては、例えば、ワークが固定されるテーブルを移動するモータ、または、主軸ヘッド4が固定された部材を移動するモータである。本実施の形態では、テーブルを移動するモータを例に取り上げて説明する。
【0018】
装置の構成部材を駆動する駆動機としては、モータに限られず、装置の構成部材を移動したり回転させたりする任意の機械を採用することができる。例えば、駆動機としては、モータの他に、空気圧または油圧にて駆動するシリンダーを例示することができる。
【0019】
本実施の形態の工作機械1は、駆動機の駆動状態に関する変数を取得するセンサーを含む。ここでの例では、モータ31の回転速度に関する変数を検出するための第1のセンサー32a、第2のセンサー32b、および第3のセンサー32cが配置されている。複数のセンサー32a,32b,32cの出力値に基づいて、駆動機の駆動状態が判定される。
【0020】
駆動機の駆動状態に関する変数を検出するために、互いに種類の異なるセンサーを配置することができる。本実施の形態においては、それぞれのセンサー32a,32b,32cは、モータ31の回転速度に関する変数を取得する。センサーとしては、例えば、モータの回転シャフトに取り付けられ、回転シャフトの回転数を検出するエンコーダを採用することができる。また、テーブルを移動するためのレールに沿って配置され、テーブルの位置を検出するリニアスケール、または光にてテーブルの位置を検出する非接触式のセンサー等を採用することができる。
【0021】
または、第1のセンサー32a、第2のセンサー32b、および第3のセンサー32cは、同一の種類のセンサーを採用しても構わない。例えば、モータ31の回転速度を検出するための3個のエンコーダを、モータ31の回転シャフトに取り付けても構わない。それぞれのセンサー32a,32b,32cは、互いに独立して、モータ31の回転速度に関する変数を取得することができる。そして、取得した値からモータ31の回転速度を算出することができる。
【0022】
なお、駆動機の駆動状態としては回転速度に限られず、温度、圧力、振動の大きさ、トルク、または音の大きさなどの任意の駆動状態を採用することができる。駆動機の駆動状態に関する変数を取得するセンサーとしては、駆動機の駆動状態を検出できる任意のセンサーを用いることができる。センサーとしては、エンコーダおよびリニアスケール等の位置検出器の他に、駆動機の所定の部分の温度を検出する温度センサーを例示することができる。更に、センサーとしては、駆動機が油圧または空気圧にて駆動するときの圧力を検出する圧力センサー、駆動機を駆動しているときの振動を検出する振動センサー、駆動機が出力するトルクを検出するトルクセンサー、および駆動機が発する異常音を検出する音量センサーなどを例示することができる。
【0023】
本実施の形態の工作機械1は、互いに独立した3個以上のデータ伝送機構を有する。複数のデータ伝送機構は、通信データを互いに独立して伝送する。
図2に示す例では、第1のデータ伝送機構30a、第2のデータ伝送機構30b、および第3のデータ伝送機構30cが配置されている。それぞれのデータ伝送機構は、モータの回転速度に関する変数を取得するセンサーと、センサーの出力に基づいて取得されたデータを送信する送信部としての送信プロセッサと、送信プロセッサにて送信されたデータを受信する受信プロセッサとを含む。第1のデータ伝送機構30aは、第1のセンサー32aと、第1の送信プロセッサ33aと、第1の受信プロセッサ34aとを含む。第2のデータ伝送機構30bは、第2のセンサー32bと、第2の送信プロセッサ33bと、第2の受信プロセッサ34bとを含む。第3のデータ伝送機構30cは、第3のセンサー32cと、第3の送信プロセッサ33cと、第3の受信プロセッサ34cと含む。
【0024】
それぞれの送信プロセッサ33a,33b,33cは、それぞれのセンサーの出力を予め定められた変数に変換する機能を有していても構わない。例えば、テーブルの位置を検出するリニアスケールから得られる位置の信号をモータの回転速度に変換する機能を有していていも構わない。ここでの例では、送信プロセッサ33a,33b,33cは、センサー32a,32b,32cの出力に基づいてモータ31の回転速度を取得し、モータ31の回転速度をデータとして送信する。
【0025】
それぞれの送信プロセッサ33a,33b,33cは、センサー32a,32b,32cの出力から取得されるデータに誤りを検出する符号を付与して送信する。例えば、送信プロセッサ33a,33b,33cは、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号またはパリティビット等のデータに誤りがあるか否かを判定するための誤り検出符号を付与する。
【0026】
それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cは、送信プロセッサ33a,33b,33cにて生成され、誤りを検出するための誤り検出符号が付与されたデータを受信する。第1の受信プロセッサ34aは、第1の送信プロセッサ33aに通信線にて接続されている。また、第2の受信プロセッサ34bは、第2の送信プロセッサ33bに通信線にて接続されている。第3の受信プロセッサ34cは、第3の送信プロセッサ33cに通信線にて接続されている。本実施の形態においては、受信部は、通信線にて送信部と接続されているが、この形態に限られない。送信部と受信部とが無線にて通信するように形成されていても構わない。
【0027】
このように、本実施の形態のデータ伝送機構は、1つのセンサーの出力に基づく変数が受信プロセッサに到達するまでに、1つの経路にて構成されている。それぞれのデータ伝送機構では、独立した経路を通ってセンサーから受信プロセッサまでデータが伝送される。そして、1つの駆動状態に関するデータを送信する3個以上のデータ伝送機構が配置されている。
【0028】
本実施の形態における送信部および受信部は、プロセッサを含むが、この形態に限られない。送信部は、データに誤りを検出する符号を付与することができる任意の装置を採用することができる。また、受信部は、誤りを検出する符号が付与されたデータを受信できる機能を有していれば構わない。例えば、送信部および受信部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路にて構成されていても構わない。
【0029】
図2に示すデータ伝送機構を備える工作機械では、送信部としての送信プロセッサ33a,33b,33cは、単一の第1のプリント基板41に配置されている。第1のプリント基板41は、例えば、第1のセンサー32a、第2のセンサー32b、および第3のセンサー32cの近傍に配置されている。受信部としての受信プロセッサ34a,34b,34cは、単一の第2のプリント基板42に配置されている。第2のプリント基板42は、例えば、機械制御装置2の内部に配置されている。
【0030】
誤り検出符号は、データと関連性を有するように形成される。それぞれの送信プロセッサ33a,33b,33cは、送信するデータに基づいて、予め定められた規則により誤り検出符号を生成する。
図2に示す例では、それぞれのデータ伝送機構30a,30b,30cにおいて、送信プロセッサ33a,33b,33cからデータとして「0x1234」が送信される。ここでの例では、例えば、モータの回転速度を示すデータが送信される。また、誤り検出符号として「0x56」がデータに付与されて送信される。なお、モータ31の駆動状態が正常である場合には、それぞれの送信プロセッサ33a,33b,33cから送信されるデータは、互いに同一の値または非常に近い値である。
【0031】
本実施の形態における機械制御装置2は、データ伝送機構30a,30b,30cにて伝送されたデータに誤りが有るか否かを判定するデータ判定部24を有する。データ判定部24は、送信プロセッサ33a,33b,33cから送信されたデータが、ノイズ等の影響により破損しているか否かを判定する。データ判定部24は、データと誤り検出符号との関係性が予め定められた規則に一致するか否かを判定する比較部25を含む。比較部25は、データと誤り検出符号との関係性が予め定められた規則に一致しない場合に、データが誤っていると判定する。
【0032】
本実施の形態においては、それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cは、データ判定部24として機能する。特に、受信プロセッサ34a,34b,34cは、データ判定部24の比較部25として機能する。データ判定部としては、この形態に限られない。データを受信するプロセッサの他に、データを判定する機能を有するプロセッサまたは集積回路等が配置されていても構わない。
【0033】
図2に示す例においては、第1の送信プロセッサ33aから送信された誤り検出符号が付与されたデータと、第1の受信プロセッサ34aが受信した誤り検出符号が付与されたデータとは同一である。第1の受信プロセッサ34aは、受信したデータと誤り検出符号との関係性が規則に一致していると判定する。第1の送信プロセッサ33aから第1の受信プロセッサ34aまでの伝送経路において、ノイズ等の影響により、データが破損していないと判定することができる。第2の受信プロセッサ34bにおいても、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致しており、データは誤っていないと判定する。
【0034】
一方で、第3の送信プロセッサ33cから送信されたデータは、第3の送信プロセッサ33cから第3の受信プロセッサ34cまでの伝送経路において破損している。例えば、ノイズの影響を受けてデータの一部が破損している。第3の受信プロセッサ34cが受信したデータ「0x1534」は、第3の送信プロセッサ33cにて送信されたデータ「0x1234」とは異なっている。比較部25として機能する第3の受信プロセッサ34cは、データと誤り検出符号とを比較し、データと誤り検出符号との関係性が予め定められた規則に一致していないと判定する。第3の受信プロセッサ34cは、データに誤りが有ると判定する。
【0035】
また、データ判定部24としての受信プロセッサ34a,34b,34cは、データが予め定められた判定範囲内であるか否かを判定する機能を有する。受信プロセッサ34a,34b,34cは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致した場合に、データが予め定められた判定範囲内であるか否かを判定する。ここでの例では、受信プロセッサ34a,34b,34cは、モータ31の回転速度が予め定められた回転速度の判定範囲内であるか否かを判定する。第1の受信プロセッサ34aおよび第2の受信プロセッサ34bは、データが判定範囲内であると判定する。データの判定範囲は、記憶部21に記憶されている。なお、データが判定範囲内であるか否かを判定する制御は、運転判定部23が行っても構わない。
【0036】
機械制御装置2は、データ判定部24による判定結果に基づいて、駆動機の運転を継続するか否かを判定する運転判定制御を実施する運転判定部23を含む。本実施の形態においては、第1の受信プロセッサ34aが運転判定部23として機能する。運転判定部としては、この形態に限られない。駆動機の運転を継続するか否かを判定するプロセッサまたは集積回路等の装置が受信プロセッサとは別に配置されていても構わない。
【0037】
運転判定部23としての第1の受信プロセッサ34aは、第2の受信プロセッサ34bおよび第3の受信プロセッサ34cから、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致しているか否かの判定結果と、データが判定範囲内であるか否かの判定結果とを受信する。
【0038】
図2に示す例では、第3の受信プロセッサ34cからの出力には、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致していないという情報が含まれる。この場合に、第1の受信プロセッサ34aは、第3の受信プロセッサ34cから受信した情報を使用しない制御を実施する。第1の受信プロセッサ34aは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致しないデータが存在する場合に、データと誤りを検出する符号との関係性が規則に一致するデータが2個以上であり、2個以上の全てのデータが予め定められた判定範囲内である時に、運転を継続すると判定する。ここでの例では、第1の受信プロセッサ34aおよび第2の受信プロセッサ34bが受信した2個のデータは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致し、かつデータが判定範囲内である。このために、第1の受信プロセッサ34aは、モータ31の運転を継続すると判定する。
【0039】
運転判定部23として機能する第1の受信プロセッサ34aは、現在の運転状態を継続する指令を、指令生成部22に送信する。指令生成部22は、加工プログラム7に基づいて工作機械1の運転を継続する。
【0040】
図3に、本実施の形態におけるデータ伝送機構の他の概略図を示す。
図3に示す例においては、第1の受信プロセッサ34aおよび第2の受信プロセッサ34bにて受信したデータは、データと誤り検出符号との関連性が規則に一致し、かつデータが判定範囲内である。一方で、第3の受信プロセッサ34cにて受信した誤り検出符号が付与されたデータは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致している。ところが、第3のセンサー32cにて取得された変数に基づいて算出されたデータ(回転速度)が判定範囲を逸脱している。また、第3のデータ伝送機構30cに異常は生じていない。この場合には、第3の送信プロセッサ33cにて送信された誤り検出符号が付与されたデータと、第3の受信プロセッサ34cにて受信した誤り検出符号が付与されたデータとは等しくなる。第3の受信プロセッサ34cは、受信したデータに誤りがないと判定する。また、第3の受信プロセッサ34cは、データが判定範囲を逸脱していると判定する。
【0041】
運転判定部23としての第1の受信プロセッサ34aは、データ判定部24として機能する第2の受信プロセッサ34bおよび第3の受信プロセッサ34cの判定結果を受信する。第1の受信プロセッサ34aは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致するデータのうち、少なくとも1つのデータが判定範囲を逸脱している時に、モータ31を停止すると判定する。
図3に示す例においては、2個のデータ伝送機構30a,30bにて伝送されたそれぞれのデータは判定範囲内である。一方で、1個のデータ伝送機構30cにて伝送されたデータは、判定範囲を逸脱するために、第1の受信プロセッサ34aは、データ伝送機構30a,30b,30cの異常は生じておらず、モータ31に異常が生じていると判定する。第1の受信プロセッサ34aは、モータ31を停止する指令を指令生成部22に送信する。指令生成部22は、対象となる送り軸モータ12を停止する指令を送信して、送り軸モータ12を停止する。または、指令生成部22は、工作機械1に配置された主軸モータ11および全ての送り軸モータ12を停止する。すなわち、工作機械1を停止する。
【0042】
このように、本実施の形態における運転判定制御では、一部のデータ伝送機構においてデータに誤りがあると判定されても、2個以上のデータ伝送機構にて受信したデータに誤りが無く、かつデータが判定範囲内であれば、モータ31の駆動状態は正常であると判定する。一部のデータ伝送機構において異常が生じていると判定し、駆動機の運転を継続する。
【0043】
従来の技術においては、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致するか否かに関わらずに、少なくとも1個のデータが判定範囲を逸脱した場合に、駆動機を停止する制御を行っていた。このために、一部のデータ伝送機構に異常が生じた場合に、駆動機を停止する場合があった。これに対して、本実施の形態においては、複数のデータ伝送機構のうち一部のデータ伝送機構に異常が生じていると判定することができる。この結果、駆動機の運転を継続して、駆動機の稼働率の低下を抑制することができる。
【0044】
また、本実施の形態の運転判定制御では、複数のデータ伝送機構にて受信したデータが正常であることを運転の継続の条件にしているために、駆動機の駆動状態が正常であることを確実に判定することができる。なお、運転判定部の判定においては、一部のデータ伝送機構においてデータと誤り検出符号との関連性が規則に一致していない場合においても、1個のデータ伝送機構にて受信したデータが正常であれば、運転を継続しても構わない。
【0045】
一方で、本実施の形態の運転判定制御では、少なくとも1個のデータにおいて、データと誤り検出符号との関連性が規則に一致し、かつデータが判定範囲を逸脱している場合に駆動機を停止する。このデータは誤りがないと判定することができる。このように、駆動機に異常が生じている可能性がある場合に、駆動機を停止することができる。
【0046】
上記の運転判定制御は、それぞれのセンサーの出力に基づいて、モータの回転速度を取得する毎に実施することができる。本実施の形態においては、3個のデータ伝送機構30a,30b,30cが配置されているが、この形態に限られず、4個以上のデータ伝送機構が配置されていても構わない。この場合においても、前述の運転判定制御を実施することができる。例えば、4個のデータ伝送機構が配置されている場合に、2つのデータ伝送機構にて伝送されたデータと誤り検出符号との関連性が規則に一致しない場合においても、他の2つのデータ伝送機構にて伝送されたデータが、符号との関係性が一致しており、かつ、判定範囲内である場合には、運転を継続することができる。
【0047】
図4に、本実施の形態における制御のフローチャートを示す。
図4に示す制御は、予め定められた時間間隔ごとに繰り返して実施することができる。
【0048】
図2から
図4を参照して、ステップ71においては、それぞれのセンサー32a,32b,32cは、モータ31の回転速度に関する変数を検出する。それぞれの送信プロセッサ33a,33b,33cは、それぞれのセンサー32a,32b,32cの出力を用いて、データとしての回転速度を取得する。ステップ72において、送信プロセッサ33a,33b,33cは、データに誤り検出符号を付与する。ステップ73において、送信プロセッサ33a,33b,33cは、誤り検出符号が付与されたデータを送信する。
【0049】
ステップ74において、それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cは、誤り検出符号が付与されたデータを受信する。ステップ75において、それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cは、データと誤り検出符号との関連性が予め定められた規則に一致するか否かを判定する。また、それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cは、データが判定範囲内であるか否かを判定する。そして、第2の受信プロセッサ34bおよび第3の受信プロセッサ34cは、第1の受信プロセッサ34aに判定結果を送信する。
【0050】
ステップ76において、第1の受信プロセッサ34aは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致しないデータがあるか否かを判定する。ステップ76において、全てのデータについて、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致する場合に、制御はステップ77に移行する。
【0051】
ステップ77において、第1の受信プロセッサ34aは、複数のデータのうち判定範囲を逸脱するデータが有るか否かを判定する。ステップ77において、判定範囲を逸脱するデータが1個でもある場合には、制御はステップ78に移行する。ステップ78において、第1の受信プロセッサ34aは、工作機械1を停止すると判定する。第1の受信プロセッサ34aは、工作機械1を停止する指令を指令生成部22に送信して、工作機械1を停止する。
【0052】
ステップ77において、判定範囲を逸脱するデータがない場合に、制御はステップ82に移行する。ステップ82において、第1の受信プロセッサ34aは、運転を継続すると判定する。第1の受信プロセッサ34aは、運転を継続する指令を指令生成部22に送信する。指令生成部22は、加工プログラム7に基づく工作機械1の運転を継続する。
【0053】
ステップ76において、データと誤り検出符号との関連性が規則に一致しないデータがある場合に、制御はステップ79に移行する。ステップ79において、第1の受信プロセッサ34aは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致するデータが2個以上あるか否かを判定する。ステップ79において、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致するデータが2個未満の場合に、制御はステップ80に移行する。ステップ80において、第1の受信プロセッサ34aは、ステップ78と同様に、工作機械1を停止する。
【0054】
ステップ79において、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致するデータが2個以上ある場合に、制御はステップ81に移行する。ステップ81において、第1の受信プロセッサ34aは、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致するデータのうち、判定範囲を逸脱するデータがあるか否かを判定する。ステップ81において判定範囲を逸脱するデータがある場合に、制御はステップ80に移行する。第1の受信プロセッサ34aは、工作機械1を停止する。
【0055】
ステップ81において、データと誤り検出符号との関係性が規則に一致するデータのうち、判定範囲を逸脱するデータがない場合に、制御はステップ82に移行する。この場合に、第1の受信プロセッサ34aは、モータ31の駆動状態は正常であり、一部のデータ伝送機構が異常であると判定することができる。ステップ82において、第1の受信プロセッサ34aは、運転を継続すると判定し、指令生成部22に判定結果を送信する。指令生成部22は、加工プログラム7に基づいて工作機械1の運転を継続する。なお、運転判定部23は、モータ31の駆動状態は正常であり、一部のデータ伝送機構が異常であると判定した場合に、表示パネル等の表示部に一部のデータ伝送機構の異常の情報を表示しても構わない。
【0056】
本実施の形態の制御では、駆動機の駆動状態が正常であり、データ伝送機構が異常である場合に、駆動機または駆動機を備える装置の運転を停止することを抑制することができる。この結果、駆動機または駆動機を備える装置の稼働率の低下を抑制することができる。
【0057】
上記の実施の形態においては、送信部としての送信プロセッサ33a,33b,33cは、データの誤りを検出する誤り検出符号を付与していたが、この形態に限られない。送信プロセッサ33a,33b,33cは、データの誤りを検出すると共に誤りを訂正するための訂正符号を付与してデータを送信することができる。訂正符号としては、ECC(Error Correction Code)またはハミング符号を例示することができる。
【0058】
図5に、本実施の形態における他のデータ判定部のブロック図を示す。データ判定部27は、比較部25に加えて、訂正部26を含む。比較部25は、データと訂正符号との関係性が規則に一致するか否かを判定する。比較部25にて訂正符号とデータとの関係性が規則に一致しないと判定した場合に、訂正部26は、訂正符号に基づいてデータを訂正する。
【0059】
図2を参照して、本実施の形態においては、それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cが訂正部26として機能する。それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cは、データと訂正符号との関係性が規則に一致しない場合にデータを訂正する。機械制御装置2は、訂正部26がデータを完全に訂正できた場合に、訂正した後のデータを用いて制御を実施することができる。例えば、訂正した後のデータを用いて、本実施の形態における運転判定制御を実施することができる。
【0060】
ところが、訂正符号に基づいて訂正をしても完全にデータを訂正できない場合がある。訂正符号を用いる訂正では、ある程度の大きさの誤りを訂正することが可能である。例えば、散発的に少ない誤りが生じるランダム誤りは、容易に訂正することができる。しかしながら、短い期間に多数の誤りが生じるバースト誤りは、訂正符号に基づいて訂正をしても全ての誤りを訂正できない場合がある。
【0061】
それぞれの受信プロセッサ34a,34b,34cは、データを訂正した場合に、データが完全に訂正されているか否かを判定する。例えば、受信プロセッサ34a,34b,34cは、訂正後のデータと誤り符号との関係性が規則に一致しているか否かを判定する。運転判定部23としての第1の受信プロセッサ34aは、第2の受信プロセッサ34bおよび第3の受信プロセッサ34cから判定結果を受信する。
【0062】
第1の受信プロセッサ34aは、完全に訂正されていないデータが有る場合に、前述の運転判定制御を実施することができる。完全に訂正されていないデータは、データと訂正符号との関係性が規則に一致しないデータであると見做して、運転判定制御を実施する。本実施の形態においては、データと誤りを検出するための符号の関係性が規則に一致しない場合には、そのデータを用いずに制御を実施することができる。
【0063】
本実施の形態における運転判定制御は、装置の周りに存在する作業者の安全性を確保したり、装置の周りに配置される物に損傷を与えたりしないようにする時に有用である。例えば、工作機械のテーブルは、予め定められた速度以上で移動すると、作業者に衝突する虞がある。このような構成部品を移動するモータの制御に本実施の形態の運転判定制御は好適である。
【0064】
本実施の形態においては、装置として工作機械を例に取り上げたが、この形態に限られず、任意の装置に適用することができる。例えば、多関節ロボットなどの所定の作業を行うロボット、ワークまたはロボットなどを移動するために、地面を走行する走行台車等を例示することができる。このような装置では、例えば、緊急停止を実施する場合がある。緊急停止を実施するためのデータ伝送機構に、本実施の形態の機構を適用することができる。
【0065】
前述の
図2および
図3においては、送信プロセッサと受信プロセッサとが通信線にて接続されているが、この形態に限られない。無線にてデータの伝送を行う場合にも、ノイズ等の影響によりデータに誤りが生じる場合がある。このような無線にてデータの伝送を行う装置にも本実施の形態の制御を適用することができる。
【0066】
図6に、本実施の形態における他のデータ伝送機構を説明する概略図を示す。前述の
図2および
図3に示す形態においては、送信部としての送信プロセッサ33a,33b,33cと、受信部としての受信プロセッサ34a,34b,34cは、互いに異なるプリント基板41,42に配置されている。
図6に示すデータ伝送機構では、送信プロセッサ33a,33b,33cおよび受信プロセッサ34a,34b,34cは、共通のプリント基板43に配置されている。送信プロセッサ33a,33b,33cから受信プロセッサ34a,34b,34cまでのデータの伝送経路は、プリント基板43の表面に形成された配線になる。この場合においても、配線が断線したり、ノイズの影響を受けたりする場合がある。例えば、プリント基板に配置されているコンデンサーまたは電気回路に存在する浮遊容量の影響などにより、データがノイズの影響を受ける場合がある。この場合においても、本実施の形態の運転判定制御を実施することができる。
【0067】
上述のそれぞれの制御においては、機能および作用が変更されない範囲において適宜ステップの順序を変更することができる。
【0068】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。