特許第6875430号(P6875430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875430高ガンマプライムニッケル基超合金、その使用、及びタービンエンジン構成要素を作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875430
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】高ガンマプライムニッケル基超合金、その使用、及びタービンエンジン構成要素を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/05 20060101AFI20210517BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20210517BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20210517BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20210517BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20210517BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20210517BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20210517BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20210517BHJP
   B23K 10/02 20060101ALI20210517BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20210517BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210517BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20210517BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20210517BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20210517BHJP
   C22F 1/10 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   C22C19/05 L
   C22C19/07 H
   B22F1/00 M
   B22F3/16
   B22F3/105
   C22C1/04 B
   B23K26/21 Z
   B23K26/34
   B23K10/02 501A
   B23K15/00 501B
   B33Y10/00
   B33Y80/00
   B33Y70/00
   !C22F1/00 612
   !C22F1/00 621
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 630M
   !C22F1/00 640B
   !C22F1/00 611
   !C22F1/00 614
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 687
   !C22F1/00 694B
   !C22F1/10 H
   !C22F1/10 J
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-12276(P2019-12276)
(22)【出願日】2019年1月28日
(65)【公開番号】特開2020-70487(P2020-70487A)
(43)【公開日】2020年5月7日
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】201811268989.9
(32)【優先日】2018年10月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519031988
【氏名又は名称】リバーディ エンジニアリング リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ビー.ゴンチャロフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー リバーディ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ローデン
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−057182(JP,A)
【文献】 特開2007−162041(JP,A)
【文献】 米国特許第06444057(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0002785(US,A1)
【文献】 特表2016−508070(JP,A)
【文献】 米国特許第05240491(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00−19/07
B22F 1/00
B22F 3/105
B22F 3/16
B23K 10/02
B23K 15/00
B23K 26/21
B23K 26/34
B33Y 10/00
B33Y 70/00
B33Y 80/00
C22C 1/04
C22F 1/00
C22F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で:
― 9.0から10.5%までのクロム、
0から22%までのコバルト、
― 1.0から1.4%までのモリブデン、
― 5.0から5.8%までのタングステン、
― 2.0から6.0%までのタンタル、
― 3.0から6.5%までのアルミニウム、
― 0.2から1.5%までのハフニウム、
― 0から1.0%までのゲルマニウム、
から0.2%までのイットリウム、
― 0から1.0%までのケイ素、
0.01から0.015%までのホウ素、
― 0.01から0.16%までの炭素、
― 1.5から3.5%までのレニウム、及び
― 不純物を伴う差引のニッケルからなる、48.5〜49.5体積%のガンマプライム相を有する高ガンマプライムニッケル基超合金。
【請求項2】
ゲルマニウム及びケイ素の全含有量が0.9〜1.1重量%の範囲である、請求項1に記載の高ガンマプライムニッケル基超合金。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか一項に記載の高ガンマプライムニッケル基超合金を、溶接ワイヤ、溶接粉末、又はタービンエンジン構成要素の材料として使用する方法。
【請求項4】
請求項1又は2の何れか一項に記載の高ガンマプライムニッケル基超合金を使用するステップを含む、タービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項5】
a) 鋳造、
b) 2190〜2290F(約1198.89〜1254.44℃)で1〜2時間のアニーリング、
c) 1500〜1800F(約815.56〜982.22℃)での塑性変形による熱間成形
d) 1975〜2050F(約1079.44〜1121.11℃)で2〜4時間の一次時効処理、及び
e) 1300〜1500F(約704.44〜815.56℃)で16〜24時間の二次時効処理、の中から選択される一つ又は複数のステップを含む、請求項4に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項6】
2190F(約1198.89℃)から2290F(約1254.44℃)までの温度範囲で1〜2時間のアニーリングb)、1975F(約1079.44℃)から2050F(約1121.11℃)までの温度範囲で2〜4時間の一次時効処理d)、及び1300F(約704.44℃)から1500F(約815.56℃)までの温度範囲で16〜24時間の二次時効処理e)の中から選択される熱処理を含む、請求項5に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項7】
1500〜1800F(約815.56〜982.22℃)の温度で熱間成形する前記ステップc)を含み、そのステップc)に先立って、2200〜2290F(約1204.44〜1254.44℃)の温度、15〜20KSI(約103.45〜137.93MPa)の圧力で2〜6時間の高温静水圧処理のさらなるステップを含む、請求項5に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項8】
5〜80%の塑性変形による熱間成形c)を含む、請求項5に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項9】
前記一次時効処理d)を含み、その温度が前記タービンエンジン構成要素の使用温度超から選択される、請求項5に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項10】
a) それぞれ(70〜80)重量%及び(20〜30)重量%の量の少なくとも二つの異種のニッケル基粉末及びコバルト基粉末を含む粉末混合物の、溶接プール中での溶融及び堆積により溶融溶接するステップであって:
前記ニッケル基粉末が、重量%で:
− 6から8%までのクロム、
− 11から12%までのコバルト、
− 1.3から1.6%までのモリブデン、
− 4.5から5%までのタングステン、
− 2.0から6.4%までのタンタル、
− 3.0から6.5%までのアルミニウム、
− 0.2から1.5%までのハフニウム、
− 2.5から3%までのレニウム、
− 0から1.0%までのゲルマニウム、
− 0から1%までのケイ素、
− 0から0.2%までのイットリウム、
− 0.01から0.015%までのホウ素、
− 0.01から0.23%までの炭素、及び
− 不純物を伴う差引のNiを含み、そして
前記コバルト基粉末が、重量%で:
− 14から18%までのニッケル、
− 19から21%までのクロム、
− 8から10%までのタングステン、
− 3から6.5%までのアルミニウム、
− 0から1.0%までのゲルマニウム、
− 0から1%までのケイ素、
− 0から0.45%までのイットリウム、
− 0から1.5%までのハフニウム、及び
― 不純物を伴う差引のCoを含むステップと;
b) 予めプログラムされた溶接経路のとおりに前記溶接プールを徐々に凝固、移動させて、請求項1に記載の高ガンマプライムニッケル基超合金と同一化学組成を有する溶接ビーを形成するステップとを含む、請求項4に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項11】
前記溶融溶接が、レーザビーム、プラズマアーク、マイクロプラズマ、電子ビーム溶接の中から選択される、請求項10に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項12】
静水圧処理、アニーリング、時効処理、又はアニーリング及び時効処理の組み合わせの中から選択される溶接後熱処理をさらに含む、請求項10に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項13】
溶接後熱処理の後に、要求される幾何学構造に加工するステップをさらに含む、請求項12に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項14】
非破壊試験のステップをさらに含む、請求項13に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項15】
前記粉末混合物が、ニッケル基粉末及びコバルト基粉末を含むプレアロイ粉末配合物の形態、又は溶接の最中に前記溶接プール中で直接混合される異種のニッケル基粉末及びコバルト基粉末の形態である、請求項10に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【請求項16】
前記タービンエンジン構成要素が3D付加製造法により製造される、請求項10〜15の何れか一項に記載のタービンエンジン構成要素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の高ガンマプライム(γ’)ニッケル基超合金は、鋳造及び熱間形成による、タービンエンジン構成要素及びその他の物品の製造にだけでなく、レーザビーム(LBW)、プラズマ(PAW)、マイクロプラズマ(MPW)、電子ビーム(EBW)溶接、及び3D付加製造に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
航空用及び工業用タービンエンジンの大部分のタービンブレードは、酸化特性及びクリープ特性の独自の組み合わせを有するニッケル基高ガンマ−プライム(γ’)超合金から製造されている。しかしながら、高γ’超合金の顕著な特性にもかかわらず、エンジン構成要素は、タービンエンジンの動作の最中に生じるクリープ及び熱機械的疲労による亀裂、酸化、及び高温腐食損傷に起因して様々な溶接修復が必要となることが多い。異種のコバルト基マール72(Merl 72)(M72)、ニッケル基ルネ142(Rene 142)(R142)、及びルネ80(R80)溶接材料は、1980年代から高(HPT)及び低(LPT)圧タービンブレードの修復に使用されてきたが、これは、ゴンチャロフら(A. Gontcharov et al, GT2018−75862, “Advanced Welding Materials and Technologies for Repair of Turbine Engine Components manufactured of High Gamma Prime Nickel Based Superalloys”, Proceedings of ASME Turbo Expo 2018: Turbine Technical Conference and Exposition, GT2018, June 11−15, 2018, Oslo, Norway (さらにGT2018−75862))を参照されたい。
【0003】
コバルト基M72は、優れた溶接性、延性、及び耐酸化性を有するものの、GT2018−75862及び実施例1に示されているとおり、≧1800°F(約982.22℃)の温度でクリープ特性が低く、この結果として、早期のHPTブレード故障、及び計画にないエンジン撤去が生じていた。低いクリープ特性は、大部分のコバルト基合金、及び高いコバルト含有量を有するニッケル基超合金に典型的である。その一方、高γ’ニッケル基R142溶接ワイヤで、6.8重量%のCr―12重量%のCo―1.5重量%のMo―4.9重量%のW―6.4重量%のTa―6.1重量%―1.5重量%のHf―2.8重量%のReを含むものが、アール・W・ロス(Earl W. Ross)及びケビン・S・オハラ(Kevin S. O’Hara)(“Rene 142: High Strength, Oxidation Resistance DS Turbine Airfoil Alloy”, Superalloys 1992, pp. 257 − 265)により開示され、そして米国特許第4,169,742号明細書のとおりの、10〜13重量%のCo、3〜10重量%のCr、0.5〜2重量%のMo、3〜7重量%のW、0.5〜10重量%のRe、5〜6重量%のAl、5〜7重量%のTa、0.5〜2重量%のHf、0.01〜0.15重量%のC、0.005〜0.05重量%のB、0〜0.1重量%のZrと、差引のニッケルを含む高ガンマプライムニッケル基超合金を基にして作り出されているが、これは、優れたクリープ特性を有するものの、溶接性は極端に貧弱である。R142を用いたタービンエンジン構成要素の限定的な溶接修復が、エンジン構成要素を高温に予熱して行われており、これは、ディクラン・A・バルハンコら(Dikran A. Barhanko et al, “Development of Blade Tip Repair for SGT−700 Turbine Blade Stage 1, With Oxidation Resistant Weld Alloy”, Proceedings of ASME Turbo Expo 2018, Turbomachinery Technical Conference and Exposition, GT2018, June 11−15, 2018, Oslo, Norway)、及び先に引用したGT2018−75862の論文においてアレクサンドル・ゴンチャロフら(Alexandre Gontcharov et al)により示されているとおりである。しかしながら、予熱をもってしても、R142溶接部は、3D付加製造にR142を使用するには不可能となるような、貧弱な延性及び微小亀裂への高い性向を示した。
【0004】
Ni−15%のCr−9.5%のCo−5%のTi−4%のW−4%のMo−3%のAl−0.17%のCを含む、米国特許第3,615,376号明細書のとおりの化学組成を有するニッケル基超合金R80は、さらに良好な溶接性を有するが耐酸化性は貧弱であり、R142及びM72を置き換えることはできない。
【0005】
Co含有量を20〜30%にまで高めた、中国特許第105492639号明細書、加国特許第28004402号明細書、米国特許第4,288,247号明細書、米国特許第7,014,723号明細書、米国特許第8,992,669号明細書、及び米国特許第8,992,700号明細書に開示されたニッケル基超合金も、潜在的にさらに良好な溶接性にもかかわらず、≧1800°F(約982.22℃)で機械的特性が不充分であることに起因して、高ガンマプライムR142超合金を置き換えることはできない。
【0006】
それゆえ、タービンエンジン構成要素の修復及び3D AM向けに、亀裂のない溶接部を周囲温度で単結晶(SX)材料上に生成することのできる、新しい、高い耐酸化性、高い強度、及び延性の高ガンマプライムニッケル基超合金を開発することに本質的な要望が存在する。
【発明の概要】
【0007】
発明者らは、重量%で:9.0から10.5%までのCr、20から22%までのCo、1.0から1.4%までのMo、5.0から5.8%までのW、2.0から6.0%までのTa、3.0から6.5%までのAl、0.2から1.5%までのHf、0.01から0.16%までのC、0から1.0%までのGe、0から1.0重量%までのSi、0から0.2重量%までのY、0から0.015重量%までのB、1.5から3.5重量%までのRe、及び不純物を伴う差引のニッケルを含む高ガンマプライムニッケル基超合金が、周囲温度での優れた溶接性、機械的特性と酸化特性との良好な組み合わせを有し、溶融溶接によるタービンエンジン構成要素の様々な修復に、そして3D AM、鋳造、及び熱間形成によるタービンエンジン構成要素の製造に使用できることを見出した。
【0008】
高ガンマプライムニッケル基超合金の別の好ましい実施形態は、0.9から1.1重量%までの範囲にあるゲルマニウム及びケイ素の全量を含む。
【0009】
現在の超合金の好ましい実施形態は、溶接ワイヤ、溶接粉末、等軸又は一方向凝固したタービンエンジン構成要素、修復されたタービンエンジン構成要素、及び熱間形成により製造された物品の中から選択される。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、タービンエンジン構成要素を製造する方法が提供され、この方法は、本発明の高ガンマプライムニッケル基超合金を使用するステップを含む。
【0011】
本明細書では、「タービンエンジン構成要素を製造する」とは、原材料から製造すること、及び/又は古いタービンエンジン構成要素を修復してそれを新品として使用できるようにすることを指す。
【0012】
好ましい化学組成を有する本発明の超合金から製造されたタービンエンジン構成要素及びその他の物品は、熱処理に通したものであり、この処理は、R142超合金の熱処理とは異なっていて、2190F(約1198.89℃)から2290F(約1254.44℃)までの温度範囲で1〜2時間のアニーリング、1975F(約1079.44℃)から2050F(約1121.11℃)までの温度範囲で2〜4時間の一次時効処理、及び1300F(約704.44℃)から1500F(約815.56℃)までの温度範囲で16〜24時間の二次時効処理を含んでおり、γ’相の析出が生じる時効処理により、開発された超合金の機械的特性を最大にすることを目的としている。
【0013】
鋳造によりタービンエンジン構成要素を製造する好ましい実施形態は、アニーリングに先立って、2200〜2290F(約1204.44〜1254.44℃)の温度、15〜20KSI(約103.45〜137.93MPa)の圧力で2〜6時間、インゴットを高温静水圧処理するさらなるステップを含む。
【0014】
別の好ましい実施形態のとおりのタービンエンジン構成要素の製造は、2190oF(約1198.89℃)から2290°F(約1254.44℃)までの1〜2時間のインゴットのアニーリングに続いて、1500°F(約815.56℃)から1800°F(約982.22℃)までの温度範囲を用いた5〜80%の塑性変形による熱間形成と、1975〜2050°F(約1079.44〜1121.11℃)で2〜4時間のタービンエンジン構成要素の一次時効処理、及び1300〜1500°F(約704.44〜815.56℃)で16〜24時間の二次時効処理を含む最終的な熱処理との、少なくとも二つの引き続くステップを含む。
【0015】
熱間形成により製造されたタービンエンジン構成要素の再結晶化を回避するためには、これらのタービンエンジン構成要素の使用温度は、一次時効処理の温度未満から選択される。
【0016】
その他の好ましい実施形態に準拠して、タービンエンジン構成要素を製造する方法は、溶接プール中にそれぞれ(70〜80)重量%及び(20〜30)重量%の量の少なくとも二つの異種のニッケル基粉末及びコバルト基粉末を含む粉末混合物の溶融及び堆積による、レーザビーム、プラズマアーク、マイクロプラズマ、及び電子ビーム溶接の中から好ましくは選択された溶融溶接のステップであって、ニッケル基粉末が、重量%で:
− 6から8%までのクロム、
− 11から12%までのコバルト、
− 1.3から1.6%までのモリブデン、
− 4.5から5%までのタングステン、
− 2.0から6.4%までのタンタル、
− 3.0から6.5%までのアルミニウム、
− 0.2から1.5%までのハフニウム、
− 2.5から3までのレニウム%、
− 0から1.0%までのゲルマニウム、
− 0から1%のケイ素、
− 0から0.2%のイットリウム、
− 0から0.015%までのホウ素、及び
− 不純物を伴う差引のNiを含み、そして
コバルト基粉末が、重量%で:
− 14から18%までのニッケル、
− 19から21%までのクロム、
− 8から10%までのタングステン、
− 3から6.5%までのアルミニウム、
− 0から1.0%までのゲルマニウム、
− 0から1%までのケイ素、
− 0から0.45%までのイットリウム、
− 0から1.5%までのハフニウム、及び
− 不純物を伴う差引のCo;
を含むステップと、予めプログラムされた溶接経路のとおりに溶接プールを徐々に移動、凝固させ、これにより、本発明の超合金と同一の化学構成を有する溶接ビーズを形成するステップと;高静水圧、アニーリング、時効処理、又はアニーリングと時効処理との組み合わせの中から選択された溶接後熱処理のステップと;要求される幾何学構造への加工、及び非破壊試験のステップと、を含む。
【0017】
上記の好ましい実施形態を実行するために、粉末混合物は、異種のニッケル基粉末及びコバルト基粉末を含むプレアロイ粉末配合物、又は溶接の最中に溶接プール中で直接混合されるニッケル基粉末及びコバルト基粉末の中から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はアニールされたそして時効処理された条件での本発明の鋳造超合金の微小構造であり: a) 凝固の最中にジグザク状の結晶粒界の形成; b) 時効熱処理の最中の立方体状γ’相の析出を示す。
図2図2は時効処理された条件での押出された棒の微小構造であり: a) 押出及び一次再結晶の最中の真っ直ぐな粒界を有する等軸結晶粒の形成; b) 時効熱処理の最中のγ’相の析出を示す。
図3図3は室温で製造されたLBW溶接部の微小構造であり: a) 1700〜1800F(約926.67〜982.22℃)への予熱とともにGTAW溶接を使用して溶接生成されたルネ142における微小亀裂の形成; b) 本発明の超合金から製造された溶接粉末を用いLBWを使用して周囲温度で生成された欠陥のない多層溶接肉盛りを示す。
図4図4はPWA1484 SX基材(基金属)上に周囲温度でLBWを使用して生成された欠陥のない多層溶接肉盛りの微小構造であり: a) 溶接されたままの条件での溶接金属と基金属との亀裂のない溶融; b) PWHT時効熱処理の後の溶接金属におけるγ’相の析出を示す。
図5図5は溶接金属から製造された引張試験試料におけるいくつかの合金元素の破壊及びEDSマッピング(分布)であって、微細な立方体状Ta−Hf基金属間粒子の樹間析出を示しており: a) SEMを使用して製造された溶接金属引張試験試料の延性破壊; b) タンタルの分布; c) ハフニウムの分布である。
図6図6は本発明の超合金のゲルマニウムを含まない実施形態から製造された破面検査引張試験試料であり: a) 引張試験試料の延性ディンプル(dimple)破壊及びディンプルの底部での立方体状Ta−Hf基金属間粒子を示す破面写真; b) a)と同一であるがさらに高倍率であり、EDS用に典型的な粒子(スペクトル1及び2)の選択及び印付けをしてあるもの; c) スペクトル1と印付けされた粒子の化学分析結果及び46.5%のTa―37.3%のHf―9.5%のNi―4.1%のCo―1.8%のCrを含む選択された粒子の化学組成である。
図7図7はルネ80基材上に本発明の超合金を使用して製造された溶接の微小構造であり: a) 「溶接されたままの」条件で溶接部に形成された樹状構造; b) 好ましい実施形態のとおりのアニーリング及び時効処理PWHT後の溶融線に隣接する溶接金属及び基材料の微小構造である。
図8図8は周囲温度で曲げ試験に通した溶接金属試験試料の破面写真であり、試料の延性破壊を示す。
図9図9は0.85重量%のゲルマニウムから成る本発明の超合金の本発明の実施形態から製造し、1800F(約982.22℃)での引張試験に通した溶接試料の破面写真であり: a) Ta−Hf基金属間粒子の形態の交替; b) a)と同一であるがさらに高倍率であり、EDS用に典型的なTa−Hf粒子を選択してあるもの; c) 図9aにマップデータ19と印付けされた粒子の表面上のTa及びHfのマッピングであって、この粒子にTa及びHfが顕著に濃集しているのを示すもの、を示す。
図10図10は異種のニッケル基粉末及びコバルト基粉末を含む粉末配合物を使用して製造されたLBW溶接部の微小構造であり: a) 溶接プールの凝固の最中の樹状構造の形成; b) 好ましい実施形態のとおりの均質化アニーリングとその後の時効処理の最中のデンドライトの溶解を示す。
【0019】
標準的な頭字語及び主要な定義
ASTM ― 米国試験材料協会
HPT ― 高圧タービン
LPT ― 低圧タービン
NDT ― 非破壊試験
NGV ― ノズル・ガイド・ベイン(Nozzle Gide Vane)
PWHT ― 溶接後熱処理
UTS ― 最大抗張力
SRT ― 応力破壊試験
LBW ― レーザビーム溶接
MPW ― マイクロプラズマ溶接
GTAW ― ガスタングステンアーク溶接
EBW ― 電子ビーム溶接
PAW ― プラズマアーク溶接
SX ― 単結晶材料
BM ― 基材料
3D AM ― 三次元付加製造
SEM ― 走査型電子顕微鏡
EDS ― エネルギー分散型X線分光法
IPM ― インチ毎分(約2.54cm/分)
FPI ― 蛍光浸透探傷検査
【0020】
ニッケル基超合金 ― タービンエンジン構成要素、並びに優れた機械的強度及び溶融温度の0.9倍までの高温でのクリープ(応力下でゆっくりと移動又は変形する固体材料の傾向)耐性;良好な表面安定性、酸化腐食耐性を発揮するその他の物品の製造に使用される、金属性材料である。析出強化超合金は典型的には、ニッケル―アルミニウム又はチタン―アルミニウム基γ’相の析出を伴うオーステナイト系面心立方晶格子を有するマトリクスを有する。超合金は、タービンエンジン構成要素の製造に使用されることがほとんどである。
【0021】
熱間形成 ― 熱間形成は、熱間加工としても公知であり、材料が充分な延性を有するかなりの高温で圧力下、金属を成形する工程である。
【0022】
高ガンマプライムニッケル基超合金 ― アルミニウム若しくはチタンの何れかの合金元素を、又はアルミニウム及びチタンの合金元素全体を、3重量%から12重量%まで含むニッケル基超合金である。
【0023】
レーザビーム(電子ビーム、ガスタングステンアーク、及びプラズマアーク)溶接 ― 溶接材料とともに又は溶接材料なしに、継ぎ目又は基材料上に衝突する集中したコヒーレント光ビーム(電子ビーム、又は電気アークをそれぞれ)を当てることから得られる熱を用いて材料の合体を生成する溶接工程である。
溶接性 ― 課された条件下で材料が溶接されて、特定の好適な構造になる、そしてその意図された用途に対して満足にふるまう能力。
構造的なタービンエンジン構成要素 ― 仕様条件においてエンジン完全性を保証する、様々な筐体、フレーム、ノズル・ガイド・ベイン・リング(nozzle guide vane ring)、及びその他のステータ(stator)部品。
基材料 ― エンジン構成要素及び試験試料の材料である。
エネルギー分散型X線分光法(EDS) ― 試料の元素分析又は化学特性評価に使用される分析技術である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の材料は、析出強化高γ’超合金に属し、高量のアルミニウムを含んでおり、アルミニウムは周知のガンマプライム形成元素である。
【0025】
強度、延性、耐酸化性、及び溶接性の独自の組み合わせは、オーステナイト系延性γ相マトリクスにおける、大体積の高強度γ’金属間NiAl相及びTa−Hf立方体状金属間粒子の析出に帰され、このマトリクスは、ニッケル中、Co、Cr、Mo、W、Reの固溶体であって、すべての合金元素の比が最適化されているものである。開発された超合金のγ’相の分率体積は、時効処理された条件で48.5から49.5体積%まで変動することが見出された。
【0026】
本発明の超合金の機械的特性を評価するためのインゴットを、アルゴン中でのトリプル・アーク・リメルト(triple arc re−melt)に続いて、好ましい実施形態のとおりのアニーリング及び時効熱処理により、生成した。
【0027】
溶接ワイヤを、温度1600〜1800F(約871.11〜982.22℃)でのインゴットのマルチステップ押出に続いて、表面酸化物を除去する酸洗いにより、製造した。
【0028】
直径45μmの溶接粉末を、アルゴン中、インゴットのガス原子化により生成した。
【0029】
本発明の析出強化超合金の機械的特性を最大化することを目的として、2190F(約1198.89℃)から2290F(約1254.44℃)までの温度範囲で1〜2時間の均質化アニーリング、続いて1975F(約1079.44℃)から2050F(約1121.11℃)までの温度範囲で2〜4時間の一次時効処理、及び1300F(約704.44℃)から1500F(約815.56℃)までの温度範囲で16〜24時間の二次時効処理を含む、特別な熱処理を開発した。この熱処理は、R142超合金の熱処理に頻繁に使用される熱処理とは異なっており、ルネ142についてはW・ロス及びケビン・S・オハラ(“Rene 142: High Strength, Oxidation Resistance DS Turbine Airfoil Alloy”, Superalloys 1992, pp. 257 − 265)を参照されたい。
【0030】
タービンエンジン構成要素のPWHT熱処理用パラメータは用途に依存する。HPT、LPT、NGV、ならびに鋳造及び3D AMにより製造されたタービンエンジンのその他の非回転構成要素についての最適な熱処理パラメータが、2250〜2290F(約1232.22〜1254.44℃)の温度範囲で2時間のアニーリング、続いて、1100〜1120F(約593.33〜604.44℃)で2時間の一次時効処理、及び1480〜1500F(約804.44〜815.56℃)の温度で24時間の二次時効処理を含むことが見出された。
【0031】
単結晶超合金から製造された、及び/又は本発明の溶接ワイヤ又は溶接粉末を使用して溶接により修復されたHPT及びLPTタービンブレードの熱処理用のPWHTパラメータは、基材料の再結晶化を回避するために、それぞれ、1975F(約1079.44℃)から1995F(約1090.56℃)で4時間、及び1300F(約704.44℃)から1325F(約718.33℃)までの温度範囲で16時間の一次及び二次時効処理を含む。熱間形成により本発明の超合金から製造されたタービンエンジン構成要素の熱処理はまた、基材料の再結晶化を防止するための上に開示されたパラメータを使用する、一次及び二次時効処理のみを含む。
【0032】
熱間形成により本発明の超合金から製造されたタービンエンジン構成要素の使用温度は、一次時効処理温度未満から選択したが、これは、使用条件での基材料の再結晶化及び機械的特性の劣化を排除するのを目的としていた。
【0033】
押出の前の、又は好ましい実施形態のとおりの鋳造によるタービンエンジン構成要素の製造の後のインゴットのアニーリングが、均質化を生じさせ、その一方で時効処理が、γ’相の析出に起因する優れた強度の形成に極めて重要な役割を果たす。さらに、実施例により、好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【0034】
実施例1
開発された超合金の高い強度及び延性の独自の組み合わせを実証するために、表1に示された、ルネ(R142)及びマール72(M72)、好ましい実施形態を用いた本発明の超合金(4275A、4275B、4275C、及び4275Dと印付けされた試料)、並びに好ましい実施形態から逸脱した化学組成を有する超合金(427Xと印付けされた試料)から製造された試料を、アルゴン中、トリプル・アーク・リメルトに続いて、2215〜2230F(約1212.78〜1221.11℃)で2時間の均質化アニーリング、2035〜2050F(約1112.78〜1121.11℃)で2時間の一次時効処理、及び1155〜1170F(約623.89〜632.22℃)で24時間の二次時効処理により生成した。
【0035】
直径0.255〜0.275インチ(約0.648〜0.699cm)の試験見本をインゴットから加工し、ASTM E192−04のとおり放射線試験に通した。サイズが0.002インチ(約0.00508cm)を超える線状欠陥磁粉模様及び孔は許容しなかった。ゲージ径0.176〜0.180インチ(約0.447〜0.457cm)、及び長さ1.8インチ(約4.572cm)の小型試験試料を、ASTM E−8のとおり加工した。引張試験を、最高1800F(約982.22℃)の温度でASTM E−21のとおり実行した。
【0036】
【表1】
【0037】
インゴットが凝固した結果、図1aに示されたジグザク状の結晶粒界が形成されたが、これは、開発された超合金の機械的特性を増強するものである。溶接後(PWHT)時効熱処理の結果、図1bに示された高体積のγ’相の析出が生じる。
【0038】
延性オーステナイト系マトリクスにおいて大体積の高強度γ’相が析出することで、高い強度及び延性の所望の組み合わせが形成される結果となり、これは表2に示されるとおりである。本発明の超合金の延性(延び)は、標準のR142試料の延性より優れていると同時に、強度はM72より優れている。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例2
低γ’鍛造AMS 5664インコネル718(Inconel 718)(IN718)及びAMS 5704ワスパロイ(Waspaloy)超合金は、1200F(約648.89℃)に達する温度での高い強度、及び良好な作業性に起因して、構造的なタービンエンジン構成要素の製造に使用されてきた。しかしながら、IN718及びワスパロイを1800F(約982.22℃)までさらに加熱すると、これらの超合金の強度及び応力破壊特性(SRT)は劇的に減少し、これは表3に示されるとおりである。
【0041】
開発された高ガンマプライム超合金の1800F(約982.22℃)に達する温度での強度と作業性との良好な組み合わせに起因して、開発された高ガンマプライム超合金が、熱間形成工程を利用して構造的なタービンエンジン構成要素を製造するための標準的な鍛造超合金を置き換えるには最も卓越していることが見出されている。鍛造された(熱間形成された)条件での本発明の超合金の機械的特性を見積もるために、インゴットを、好ましい実施形態のとおりに押出して、直径0.225インチ(約0.572cm)の棒を生成し、これをさらに1950F(約1065.56℃)の温度で4時間の一次時効処理及び1300F(約704.44℃)で24時間の二次時効処理に通した。
【0042】
長さ1.8インチ(約4.572cm)でゲージ径0.158〜0.162インチ(約0.401〜0.411cm)の小型試験試料を、ASTM E−8のとおりに加工した。引張試験を、70F(約21.11℃)でASTM E−8とおりに、そして1200F(約648.89℃)及び1800F(約982.22℃)でASTM E−21のとおりに実行した。応力破壊試験を、ASTM E−139のとおりに1200F(約648.89℃)、1350F(約732.22℃)、及び1800F(約968.33℃)の温度で実行した。
【0043】
高温で本発明の超合金を押出した結果、図2aに示された真っ直ぐな結晶粒界を有する等軸構造が形成されたが、これらの結晶粒界は、図1aに示された、インゴットの凝固の最中に形成されたジグザク状の粒界とは異なるものであった。一次時効熱処理の結果、図2bに示されたγ’相の析出が生じた。
【0044】
実験により見出されたとおり、開発された超合金のUTS及びSRT特性は、1800F(約982.22℃)まで、インコネル718及びワスパロイのUTS及びSRTより優れていたが、これらはそれぞれ、表3及び4に示すとおりである。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0048】
本発明の超合金は、高い強度、延性、及び作業性の組み合わせのおかげで、熱間形成によるタービンエンジン構成要素の製造に最も卓越したものとなる。
【0049】
実施例3
手作業でのGTAW及び自動のLBW溶接を使用して単結晶材料から製造されたタービンエンジン構成要素の修復をシミュレートするために試験試料を生成したが、これは、開発された超合金をそれぞれ溶接ワイヤ及び溶接粉末の形態で使用して、そして1700〜1800F(約926.67〜982.22℃)への予熱を用いたGTAW、及び周囲温度でのLBWについては、標準のルネ142溶接ワイヤを使用して、行った。
【0050】
予熱を、ルネ142溶接ワイヤを用いるGTAWに使用して、引張試験及びSRT試験用の試料を生成したが、その理由は、周囲温度での溶接の結果、図3aに示されたとおり、ルネ142溶接部の広範な亀裂が形成される結果となったためである。
【0051】
本発明の超合金から製造された溶接粉末を用いたマルチパスLBW(multi pass LBW)、及び本発明の超合金から製造された溶接ワイヤを用いたGTAWを周囲温度で実行して、LBW4275及びGTAW4275と印付けされた溶接試料を生成するようにした。溶接部には亀裂がなかった。これらの試料の典型的な微小構造を、図3b及び図4aに示す。
【0052】
溶接部の溶接後熱処理は、PWA1484 SX材料から製造されたHPTブレードの再結晶化を排除するため、2200F(約1204.44℃)で2時間の均質化アニーリング、続いて、1975〜1995F(約1079.44〜1090.56℃)で4時間の一次時効処理、及び1300〜1320F(約704.44〜715.56℃)で16時間の二次時効処理を含んでいた結果、分率体積が49.2体積%の、図4bに示されたγ’相の析出が生じた。
【0053】
厚さ0.050インチ(約0.127cm)の平坦な小型「全溶接金属」試料を、ASTM E−8のとおりに生成し、ASTM E−21のとおりに1800F(約982.22℃)で引張試験に、そしてASTM E−139のとおりに1800F(約968.33℃)、22KSI(約151.72MPa)の応力でSRTに通した。
【0054】
【表5】
【0055】
表5から、以下のとおり、本発明の超合金から生成されたLBW及びGTAW溶接部の延性及びSRT特性は、基準のルネ142溶接部の特性より優れていた。
【0056】
ルネ142溶接部の低い引張及びSRT特性は、図3aに示された微小亀裂の形成に帰された。
【0057】
開発された超合金の良好な延性及び溶接性だけでなく高い引張及びクリープ特性は、図5及び6に示された、ガンママトリクスの延性Ni―Cr―Co―Re―W―Mo固溶体における高体積の高強度立方体状γ’相の析出、及び微細な立方体状Ta−Hf基金属間粒子の樹間析出に帰された。
【0058】
実施例4
ゲルマニウムは、米国特許第2901374号明細書のとおりにNi―(5〜40)重量%のCr―(15〜40)重量%のGeを含むニッケル基ロウ付け材料が1954年に発明されたにもかかわらす、Ni基超合金の製造には使用されてこなかった。ゲルマニウムは、高温での強度に影響するはずの融点降下剤であるにもかかわらず、我々は、表1において4275Cと印付けされた本発明の超合金にゲルマニウムを0.85重量%まで添加すると溶接性が改善し、図7に示されたとおり、欠陥のない溶接部がルネ80上に生成されたことを見出した。
【0059】
試験試料の溶接は、75〜80Aの溶接電流、9〜10Vの電圧、及び1〜1.2ipm(インチ/分)(約2.54〜3.05cm/分)の溶接スピードで、手作業で行った。溶接後、試料は、2190F(約1198.89℃)で2時間のアニーリング、1975F(約1079.44℃)で2時間の一次時効処理、続いて、1550F(約843.33℃)で16時間の二次時効処理を含む熱処理に通した。試験用の引張試験試料は、基材料及び溶接部からASTM E−8のとおりに加工し、1800F(約982.22℃)での引張試験に通した。
【0060】
溶接金属を、周囲温度でASTM E−190のとおり半型曲げ試験にも通した。
【0061】
上記に加えて、ルネ80及び本発明の超合金から製造された円柱状試料を、2050F(約1121.11℃)で500時間のサイクル酸化試験に通した。各サイクルの持続期間は、2050F(約1121.11℃)で50分間の曝露、続いて、10分間の、約700F(約371.11℃)への冷却と2050F(約1121.11℃)への再加熱とを含む、1時間であった。
【0062】
実験により見出されたとおり、溶接された継ぎ目及び溶接金属の強度及び耐酸化性は、ルネ80基材料より優れていたが、これは表6A及び6Bに示されるとおりである。
【0063】
【表6A】
【0064】
【表6B】
【0066】
溶接金属から製造された曲げ試験試料は、およそ90°で破壊して、図8に示された本発明の超合金の特有の延性を示しており、これは、公知の高γ’超合金上に生成されたいずれの溶接部についても報告されていないものであった。実験により見出されたとおり、ゲルマニウムは、Ta−Hf金属間粒子の間の結合を増強させ、これらの粒子の形態を変化させるが、これは、それぞれ図6a及び図9aに示されるとおりである。EDS分析により、粒子がTa−Hf基金属間化合物により生成されたことを確認したが、これは、図9b及び9cを参照されたい。この効果は知られていなかったが、その理由は、化学元素の同一IVA族に属するSiとは対照的に、指定された範囲のゲルマニウムでは、Si担持ニッケル基超合金の機械的特性に影響する粒間及び樹枝間Ni−Ge基共晶が形成される結果にはならないからである。
【0067】
それゆえ、高含有量のγ’相と、図9aに示された延性Ni―Cr―Co―Re―Mo―W基マトリクスに密着した接合をともなう微細Ta−Hf基金属間粒子による結晶粒界及びデンドライト境界の強化との組み合わせにより、本発明の超合金のGe担持の実施形態の優れた機械的特性が実現され、さらには、異種のニッケル基粉末及びコバルト基粉末を溶接プール中でともに溶融させてから凝固させることにより溶接プールの凝固の特異性が生成されることで、不均質な溶接粉末及びワイヤを使用して生成された溶接部の特性よりも優れた溶接部の特性が生成される。Cr、Al、Siの含有量を、本発明の超合金のGe及びすべてのその他の合金元素と組み合わせて最適化することにより、耐酸化性が強化された。
【0068】
試験結果に基づいて、本発明の超合金から製造された溶接ワイヤ及び粉末が、HPT及びLPTブレードの先端部修復に最も卓越しており、分解整備から分解整備までの間の全エンジンサイクルを通じて、タービンエンジンのブレードの先端部とステータ(stator)との間の最適なあそび、低い燃料消費、及び高い効率を保証することが見出された。
【0069】
実施例5
タービンエンジン構成要素を製造する3D AM工程を実証するため、長さ4インチ(約10.16cm)、高さ1インチ(約2.54cm)、及び厚さ0.125インチ(約0.318cm)の試料を、1kWのIPGレーザと二つの粉末供給装置とを備えたLAWS1000レーザ溶接システムを使用して生成したが、このシステムは、プレアロイ粉末配合物を使用して溶接を実行するだけでなく、溶接プール中で二つの異種のニッケル及びコバルト基異種粉末を直接混合することができるものである。
【0070】
以下の実施例に、75重量%のニッケル基粉末及び25重量%のコバルト基粉末を含むプレアロイ粉末配合物を用いた溶接を示す。ニッケル基粉末は、6.8重量%のCr、12重量%のCo、1.5重量%のMo、4.9重量%のW、6.3重量%のTa、6.1重量%のAl、1.2重量%のHf、2.8重量%のRe、0.1重量%のSi、0.12重量%のC、0.015重量%のB、及び差引のNiを含む。コバルト基粉末は、17重量%のNi、20重量%のCr、3重量%のTa、9重量%のW、4.4重量%のAl、0.45重量%のY、0.1重量%のSi、及び差引のCoを含む。
【0071】
試料を生成するために使用した溶接パラメータを、以下に提供する:
― レーザビーム出力 ― 480W(ワット)
― 堆積速度 ― 3.8g/分(グラム毎分)
― 溶接スピード ― 3.5ipm(インチ毎分)(約8.89cm/分)
― 溶接にわたるビーム振動スピード ― 40imp(約101.6cm/分)
― 不活性ガス ― アルゴン
【0072】
マルチパス溶接堆積の最中には、溶接プールを、予めプログラムされた経路のとおりに3.5ipm(8.89cm/分)のスピードで徐々に移動させたが、この結果、凝固に起因して、本発明の超合金と同一の好ましい化学組成を有する溶接ビーズが形成される。4275Eと印付けされた溶接金属試料の化学組成を表1に提供する。
【0073】
溶接試験の後、試料は、2035〜2050F(約1112.78〜1121.11℃)で2時間の一次時効処理、及び1155〜1170F(約623.89〜632.22℃)で24時間の二次時効処理、要求される幾何学構造への加工、続いて、AMS 2647のとおりFPIと、ASTM E192−04のとおり放射線検査とを含む非破壊試験に通した。サイズが0.002インチ(約0.00508cm)を超過する溶接不連続性は、許容しなかった。
【0074】
小型試験試料を、ASTM E−8のとおり溶接部から生成し、ASTM E−21のとおり1775F(約968.33℃)での引張試験に通した。
【0075】
溶接の結果、図10aに示されるとおり、エピタキシャル結晶粒成長をともなう樹状構造の形成が生じた。溶接部は、亀裂及びその他の溶接不連続性がなかった。
【0076】
溶接後の均質化及び時効熱処理の結果、図10bに示されるとおり、大体積のガンマ相の析出が生じた。
【0077】
【表7】
【0078】
表7から、以下のとおり、溶接試料は、溶接金属中、5.7重量%というAlのバルク(balk)含有量にもかかわらず、1775F(約968.33℃)の温度で優れた強度及び良好な延性を示している。
【0079】
5.7重量%のアルミニウムを含む本発明の超合金の優れた溶接性、強度、及び延性が、異種のニッケル基粉末及びコバルト基粉末により生成された溶接プールの凝固の特異性により実現された。
【0080】
5.7重量%のAlを含む公知のニッケル基超合金は、周囲温度で溶接可能ではないが、その一方で、異種粉末の混合物、及び/又は粉末配合物を使用したLBW溶接は、溶接の凝固に起因して、本発明の超合金の化学組成に対応するバルク(balk)化学組成を有する溶接プールを形成し、高い機械的特性を有する確実な溶接部を生成する。
【0081】
本発明を好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明のその他の形態が当業者によって採用され得ることは明らかである。それゆえ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10