(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の工作機械では、ノズルから高圧液体の噴射を開始する際、タンクバルブを閉じて供給バルブを開ける。また、ノズルからの高圧液体の噴射を停止する際、タンクバルブを開けて供給バルブを閉じる。液体加圧手段は、ノズルが液体を噴射するか否かに関わらず、運転されている。そのため、高圧シフトバルブの異常動作により、不意にノズルから高圧液体が噴射する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、ポンプ装置であって、
扉を有する噴射室と、
前記噴射室内に配置されたノズルと、
前記ノズルと接続され、液体を吐出するポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記扉が閉じていることを検出する扉センサと、
前記扉センサと通信可能な制御装置であって、前記扉が閉じていることを前記扉センサが検出したときにのみ、前記モータに駆動電力を供給するモータ回転部、を有する制御装置と、を有する。
本発明の第2の側面は、ポンプの運転方法であって、
ノズルが配置された噴射室の扉を閉じ、
前記扉を閉じたまま、ポンプを駆動するモータを回転し、
前記扉を閉じたまま、前記モータを停止し、
前記ポンプの回転速度を検出し、
前記ポンプを停止している間、前記回転速度が、前記ポンプの吐出圧が安全圧力以下となる前記モータの回転速度である閾値以下であることを監視し、
前記回転速度が前記閾値以下である場合に前記扉を開け、
前記回転速度が前記閾値を超える場合に緊急停止する。
【0005】
本発明は、例えば、洗浄機や工作機械に適用される。洗浄機は、高圧液体噴流を利用したバリ取り機を含む。噴射室は、例えば、洗浄室や加工室である。ノズルは、工作機械の刃物を含んで良い。
【0006】
1つ又は複数のノズルが、噴射室に配置されてよい。ノズルは、ノズルを切り替える選択装置に配置されてよい。選択装置は、例えば、タレット、ノズル切替弁や自動工具交換装置である。
【0007】
モータは、望ましくは、永久磁石式同期モータ(PMSM)である。ポンプの運転サイクルが10秒〜5分(両端含む)の場合には、PMSMが特に好適である。モータは、誘導型モータでもよい。
【0008】
ポンプは、例えば、ピストンポンプ、ギヤードポンプ、渦巻きポンプである。ポンプの吐出圧は、例えば、5〜200MPaである。永久磁石式同期モータや誘導型モータは、いずれのポンプと組み合わせても良い。
【0009】
回転速度計は、例えば、エンコーダやレゾルバである。回転速度計は、ポンプに配置して良い。回転速度計は、モータに内蔵しても良い。例えば、エンコーダを内蔵したサーボモータを利用できる。
モータ回転部は、例えば、インバータ、サーボアンプである。
【0010】
扉は、例えば、自動扉や点検扉である。扉は、例えば、対象物の搬入出扉を含む。
【0011】
ポンプの吐出圧に応じた流速及び流量で、ノズルから液体が噴出する。安全圧力は、ノズルから発生した噴流が、人体に危害を加えない圧力として設定される。好ましくは、回転速度の閾値は、ポンプの休止状態の回転速度よりも僅かに大きい。
【0012】
ポンプ回転部が噴射時にのみモータを回転させる場合、ポンプをノズル又は選択装置へ直接接続してよい。つまり、ポンプとノズル又は選択装置との間に洗浄弁及び戻し弁を設けなくても良い。
ポンプ回転部が噴射時にのみモータを回転させる場合、好ましくは、ポンプ装置は、給液ポンプ及び給液弁を更に備える。給液ポンプは、ポンプを回転させる前にあらかじめ回転させておく。ポンプを停止した後に、給液弁を閉じる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不意にノズルから高圧液体が噴射されることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1のポンプ装置10は、タンク11、洗浄室(噴射室)31、扉33、扉センサ34、洗浄弁24、戻し弁22、洗浄配管19、ポンプ(主ポンプ)13、モータ16、ノズル27及び制御装置51を有する。ポンプ装置10は、回転速度計17、移動装置32、タレット(選択装置)25、圧力センサ21及び安全弁23を有しても良い。
【0016】
洗浄室31は、複数の開口36を有する。各開口36には、扉33が配置される。各扉33には、扉センサ34が配置される。扉センサ34は、電子錠でも良い。扉センサ34は、扉33が閉まっていることを検出し、制御装置51へ通信する。
【0017】
対象物35は、開口36から洗浄室31内に搬入され、搬出される。対象物35は、一つ又は複数の洗浄対象部位を持つ。洗浄対象部位は洗浄されるべき部位であり、例えば、雌ねじ、油穴、水穴、取り付け面やピン穴である。対象物35は、例えば燃料噴射ノズル、ABSボディ、シリンダヘッド、シリンダブロック、クランクシャフト、ケーストランスアクスル、自動車用バルブボディである。
【0018】
ノズル27は、洗浄室31の内部に配置される。ノズル27は、選択装置であるタレット25に配置されても良い。一つ又は複数のノズル27が、洗浄室31の内部に配置される。ポンプ装置10がタレット25を有する場合、複数の種類のノズル27が洗浄室31の内部に配置される。ノズル27は、例えば、ストレートノズル、アングルノズルやランスである。
タレット25は、移動装置32に配置される。タレット25は、入口26、複数の出口18、複数の選択弁28及びローラフォロア29を有し、旋回モータ30を有しても良い。ノズル27は、選択弁28に接続する。選択弁28は、入口26と接続する。例えば、タレットの旋回に伴い、ローラフォロア29により割り出されたタレット面に配置されたノズル27に対応する選択弁だけが開く。その他の選択弁28は閉じている。そして、タレット25が選択したノズル27のみが入口26と接続し、その他のノズル27は入口26と接続しない。タレット25は、特定の位相に割出された一つのノズル27をローラフォロア29により開き、洗浄液12を噴射できるようにする。入口26は、吐出口15と洗浄配管19で接続される。旋回モータ30は、タレット25を旋回する。タレット25は、例えば、特許第6147623号や特許第5704997号に示される。
【0019】
移動装置32は、例えば、コラムトラバース機構である。移動装置32は数値制御されて、ノズル27やタレット25を移動する。
【0020】
タンク11は、例えば、2槽式のタンクである。タンク11は、洗浄液12を貯留する。洗浄液12は、例えば、塩基性や中性洗浄液などの水系洗浄液である。
【0021】
ポンプ13は、給液口14と吐出口15を有する。給液口14は、タンク11に接続する。吐出口15は、洗浄配管19、洗浄弁24及びタレット25を介してノズル27に接続する。モータ16は、ポンプ13に接続し、ポンプ13を回転する。モータ16は、制御装置51によって運転される。ポンプ13の回転によって、吐出圧Pが生じる。モータ16は、回転速度計17を有して良い。
【0022】
洗浄配管19は、分岐20を有する。分岐20は、洗浄弁24と吐出口15の間に配置される。分岐20は、戻し弁22と接続され、タンク11に接続する。洗浄弁24及び戻し弁22は、2方弁である。洗浄弁24は、常時閉の電磁弁である。戻し弁22は、常時開の電磁弁である。
【0023】
圧力センサ21は、洗浄弁24とノズル27の間に配置される。圧力センサ21は、洗浄配管19内の圧力を検出し、検出した圧力を制御装置51へ送る。
【0024】
図2に示すように、制御装置51は、演算装置52、記憶装置53、入出力ポート54、入力部55、出力部56及びバス57を有する。バス57は、演算装置52、記憶装置53、入出力ポート54、入力部55及び出力部56を通信可能に接続する。
【0025】
記憶装置53は、主記憶装置や外部記憶装置を有しても良い。記憶装置53は、閾値53aを記憶する。記憶装置53は、設定速度53bを記憶しても良い。設定速度53bは、ポンプ又はモータの設定速度である。設定速度53bは、ノズル毎に定められて良い。設定速度53bは、例えば回転速度、加速度、PIDパラメータである。
【0026】
入出力ポート54は、扉センサ34、圧力センサ21、洗浄弁24、戻し弁22、モータ16、移動装置32及びタレット25と接続する。
【0027】
入力部55は、例えば、キーボードやポインティングデバイスである。入力部55は、ソフトウェアキーボードやタッチパネルでも良い。出力部56は、例えば、モニターである。
【0028】
演算装置52は、数値制御部52a、モータ回転部52b、速度監視部52cを有する。演算装置52は、動力遮断部(モータ動力遮断部)52d、施錠部52e及びフィードバック制御部52fを有しても良い。
【0029】
数値制御部52aは、移動装置32を数値制御する。数値制御部52aは、洗浄プログラムに沿って、ポンプ13、洗浄弁24、戻し弁22、扉センサ34、旋回モータ30を制御する。
【0030】
モータ回転部52bは、インバータやサーボアンプを有する。モータ回転部52bは、モータ16を回転又は停止する。また、モータ回転部52bは、モータ16の回転速度を決定する。モータ回転部52bは、扉33が閉じていることを扉センサ34が検出したときにのみ、モータ(16)へ駆動電力を供給してもよい。モータ回転部52bは、設定速度53bに従って、モータ16を回転させる。モータ回転部52bは、速度監視部52c、動力遮断部52d及びフィードバック制御部52fを内蔵して良い。
【0031】
速度監視部52cは、ポンプ13の回転速度が閾値以下か否かを監視する。扉33が閉じていることを検知されず、かつ、ポンプ13が閾値を超えて回転した場合、速度監視部52cは、ポンプ装置10を緊急停止させる。速度監視部52cは、ポンプ13の速度に代えて、ポンプ13が回転しているか否かを監視しても良い。
【0032】
動力遮断部52dは、モータ回転部52bがモータ16への駆動電力の供給を遮断する。例えば、動力遮断部52dは、モータ16とモータ回転部52bとを接続する電力線に配置された接点(不図示)を遮断する。接点は、例えば、電磁接触器や電磁開閉器である。動力遮断部52dは、ノズル27が噴射しないときに、モータ16への駆動電力を遮断する。
【0033】
フィードバック制御部52fは、圧力センサ21が検出した圧力Pをフィードバックして、圧力Pと設定圧力との差異が0に近づくように、モータ16の回転速度を制御する。例えば、フィードバック制御部52fは、PID制御によりモータ16を制御する。このとき、フィードバック制御部52fは、圧力Pの移動平均を設定圧力と比較して良い。
【0034】
施錠部52eは、扉センサ34によって、扉33を施錠し、又は開錠する。施錠部52eは、モータ16へ駆動電力が供給される間、電子錠により扉33を施錠する。
【0035】
図3に従って、ポンプの制御方法を順に説明する。
搬送装置(不図示)又は作業者により、対象物35が洗浄室31に搬入される。制御装置51又は作業者により、扉33が閉まる(S1)。
施錠部52eにより、扉センサ34が扉33を施錠する(S2)。
モータ回転部52bは、モータ16を回転させる(S3)。
回転速度計17は、モータ16又はポンプ13の回転速度を検出する(S4)。
数値制御部52aは、旋回モータ30を回転し、タレット25を旋回させる。そして、一つのノズル27が割り出され、割り出されたノズル27に対応する選択弁28を開く(S5)。
数値制御部52aは、洗浄弁24を開き、戻し弁22を閉じる(S6)。洗浄液12は、洗浄弁24、洗浄配管19及びタレット25を通ってノズル27に流れ、ノズル27から噴流が噴出する。数値制御部52aは、移動装置32によって、ノズル27を対象物35に対して相対的に移動させ、洗浄液12の噴流を対象物35に当てる。
数値制御部52aは、洗浄弁24を閉じ、戻し弁22を開ける(S7)。洗浄液12は分岐20を通ってタンク11へ戻る。ノズル27からの洗浄液12の噴射が停止する。そして、洗浄弁24からノズル27までの圧力が大気圧まで低下する。
数値制御部52aは洗浄が終了するまで、ステップS5〜S7を繰り返す(S8)。
洗浄が終わった後、モータ回転部52bは、モータ16を回転できる状態で制御停止する(S9)。結果として、モータ16は休止状態にある。
速度監視部52cは、回転速度が閾値以下であることを監視する(S10)。
速度監視部52cは、回転速度が閾値を超えた場合、ポンプ装置10を緊急停止する(S11)。
速度監視部52cが、回転速度が閾値以下であることを確認した後、施錠部52eは扉33を開錠する(S12)。
制御装置51又は作業者により、扉33が開く(S13)。ロボット又は作業者により、対象物35を洗浄室31から搬出する。
動力遮断部52dは、モータ回転部52bがモータ16に供給する駆動電力を遮断する(S14)。駆動電力の遮断は、例えば、電磁接触器の制御レベルで行われる。
制御装置51又は作業者により、扉33が閉まる(S15)。
【0036】
ステップS10は、ステップS11〜S15を実行している間、継続して実行される。つまり、扉33が閉まっていることを扉センサ34が検出しない間、速度監視部52cは回転速度が閾値以下であることを常に監視する。
【0037】
さらに、扉33が閉まっていることを扉センサ34が検出しない間、動力遮断部52dは、モータ16の駆動電力を遮断する。
【0038】
ポンプ装置10がタレット25を有さない場合、ステップS5は省く。ポンプ装置10が動力遮断部52dを有さない場合、ステップS14は省く。ポンプ装置10が施錠部52eを有さない場合、ステップS2、S12は省く。
【0039】
扉33が開いている間、速度監視部52cは閾値以下であることを監視する。そのため、たとえ洗浄弁24が完全に洗浄液12を封止できない場合であっても、ノズル27からの高圧噴流の噴出を抑制できる。
【0040】
更に、動力遮断部52dを設けた場合には、扉33が開いている間、モータ16への駆動電力が供給されない。したがって、安全監視レベルが向上する。
【0041】
(実施形態2)
図4に示すように、実施形態2のポンプ装置100は、給液ポンプ66及び給液弁70を有し、洗浄弁24、戻し弁22及び分岐20を有さない。その他は、実施形態1のポンプ装置10と実質的に同じである。
【0042】
給液ポンプ66は、例えば、渦巻きポンプである。給液ポンプ66は、吸入口67、吐出口68及びモータ69を有する。吸入口67は、タンク11と接続される。
【0043】
給液弁70は、常時閉の2方電磁弁である。給液弁70は、吐出口68と給液口14の間に配置される。
【0044】
吐出口15は、洗浄配管19によって、ノズル又は選択装置へ直接接続される。
【0045】
図5に従って、本実施形態の洗浄方法を説明する。
ステップS2実行後に、制御装置51は、給液ポンプ66を運転する(S21)。
制御装置51は、給液弁70を開く(S22)。洗浄液12は、ポンプ13に供給される。
ステップS5を実行する。
数値制御部52aは、モータ回転部52bにモータ16を回転させる(S23)。ポンプ13が回転し、洗浄液12が給液ポンプ66、ポンプ13、洗浄弁24、洗浄配管19及びタレット25を通って給液弁70、ノズル27から噴出する。
ステップS3を実行する。
数値制御部52aは、モータ回転部52bにモータ16を回転できる状態で制御停止させる(S24)。ポンプ13が休止する。ノズル27から噴出する噴流は、給液ポンプ66の吐出圧力に低下する。
洗浄が終了するまで、ステップS5、S23、S3、S24を繰り返す(S25)。
洗浄終了後、給液弁70を閉じる(S26)。ノズル27が噴出を停止する。
【0046】
本実施形態のポンプ装置100は、ポンプ13がノズル27に直結しているため、ノズル27が洗浄液12を噴射する時間のみ、ポンプ13を運転する。本実施形態によれば、ポンプ13の余剰な運転時間がないため、電力消費量を削減できる。また、洗浄弁24及び戻し弁22の操作時間が不要になる。そのため、噴射を開始するときの圧力の立ち上がり時間が短くなる。
【0047】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。