(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータを有し、前記モータの駆動によって回動する関節を複数備える多関節アームと、前記多関節アームを支持する基台とを有するロボットを制御する制御装置により実行されるグリース冷却方法であって、
複数の前記関節の各々の温度情報を取得する温度情報取得ステップと、
取得された複数の前記関節の各々の温度情報に基づき、冷却が必要な前記関節を特定する関節特定ステップと、
特定された前記関節より基台側に前記関節が存在する場合に、基台側に存在する少なくとも1つの前記関節を選択する関節選択ステップと、
選択された前記関節の前記モータを制御して、特定された前記関節に風が当たるように、選択された前記関節を所定時間回動させるモータ制御ステップと、
を含む、グリース冷却方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る制御装置、グリース冷却方法および管理装置について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係るロボット制御システム10の構成の概略を例示する図である。ロボット制御システム10は、ロボット12、およびロボット12を制御する制御装置14等を備える。
【0013】
ロボット12は、多関節アーム16、および、多関節アーム16を支持する基台18等を備える。多関節アーム16は、モータ20の駆動によって回動する関節22を複数有する。制御装置14は、必要に応じてモータ20を駆動し、関節22を回動させる。
【0014】
関節22は、モータ20、不図示の減速機、不図示のベアリング、およびベアリングを潤滑に動作させるための不図示のグリース(潤滑剤)等を含む。モータ20は、正転と逆転が可能であり、減速機に対し動力を伝達し、これにより、関節22が回動する。モータ20には、回転位置を計測するエンコーダ21等が設けられている。なお、多関節アーム16に含まれる関節22を、基台18の側から順に、関節22A、関節22B、関節22C、関節22Dとする。
【0015】
グリースは、モータ20の駆動により温度が上昇するが、温度上昇により劣化の進行度合いが大きくなる。またグリースの劣化により、ベアリングの摩耗の度合いが大きくなる。
【0016】
制御装置14は、上昇したグリースの温度を低下させるための処理を行う。
図2は、本実施形態に係る制御装置14の機能ブロックを例示する図である。制御装置14は、所定温度以上のグリースの冷却のために、温度情報取得部24、センサ群25、関節特定部26、関節選択部28、記憶部30、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、およびモータ制御部36等を備える。
【0017】
温度情報取得部24は、関節22の温度を算出等により取得する。関節22の温度には、モータ20等の温度が含まれる。関節22の温度とグリースの温度とは相関関係にあり、関節22の温度が上昇していればグリースの温度も上昇している。このため、本実施形態に係る温度情報取得部24は、関節22の温度を取得し、関節22の温度上昇からグリースの温度上昇を推定するものとし、以下の処理では関節22の温度を算出して用いるものとする。温度情報取得部24は、グリースの温度を直接取得してもよい。
【0018】
温度情報取得部24は、センサ群25における各種センサから、関節22の温度の取得のための各種情報を取得する。この情報は、例えば、ロボット12が設置されている室温T
0に係る情報、モータ20の電流値I
Mの情報、モータ20の回転速度S
Mの情報、モータ20の摩擦トルクTの情報、および多関節アーム16の姿勢の変化に伴う関節22の移動の速度S
Rの情報等である。
【0019】
温度情報取得部24は、電流値I
M、回転速度S
M等を用いてモータ20からの発熱量を算出する。温度情報取得部24は、回転速度S
M、摩擦トルクT等を用いて摩擦による発熱量を算出する。温度情報取得部24は、速度S
R等を用いて空冷放熱量を算出する。温度情報取得部24は、モータ20からの発熱量、摩擦による発熱量、および空冷放熱量等を用いて関節22の温度を算出することにより取得する。以下では、関節22の温度を示す情報を温度情報とも記載する。温度情報には、グリースの温度を示す情報、モータ20の温度を示す情報等が含まれてもよい。
【0020】
なお、温度情報取得部24は、上記温度情報の取得以外にも、関節22に設けられた温度センサにより関節22の温度、モータ20の温度、またはグリースの温度を直接取得してもよい。
【0021】
関節特定部26は、温度情報取得部24が取得した温度情報に基づいて、冷却が必要な所定温度以上の関節22を特定する。
【0022】
関節選択部28は、関節特定部26が特定した関節22より基台18の側の関節22を選択する。例えば、関節特定部26が特定した関節22より基台18の側の関節22が複数ある場合には、関節選択部28は、この中から少なくとも1つの関節22を選択する。この選択処理は、1つの関節22が選択されるものであっても、複数の関節22が選択されるものであってもよい。またこの選択処理は、ランダムに関節22を選択するものであっても、前回選択された関節22以外の関節22を選択するものであっても、順番に関節22を選択するものであってもよい。
【0023】
図1を参照して説明すると、関節特定部26により特定された関節22が、例えば関節22Cであるとすると、関節選択部28は、関節22Aと関節22Bのうちの少なくとも一方を選択する。
【0024】
関節選択部28は、例えば、グリースの劣化度合いに基づいて、関節22を選択してもよい。関節選択部28は、関節特定部26により特定された関節22よりも基台18の側の関節22のうち、例えば、劣化度合いが基準値未満のグリースを含む関節22、劣化度合いが最小のグリースを含む関節22、または、劣化度合いが基準値未満かつ最小のグリースを含む関節22を選択してもよい。この場合において関節選択部28は、グリースの劣化度合いを、当該グリースを含む関節22のモータ20の使用時間や回転速度等に応じて算出してもよい。
【0025】
記憶部30は、多関節アーム16の動作許可領域を示す情報を記憶する。動作許可領域は、多関節アーム16が動作を許可された範囲の領域であり、例えば、ロボット12の周囲に干渉物が設置されている場合には、多関節アーム16が干渉物と干渉しない範囲の領域である。
【0026】
回転位置取得部32は、各モータ20に設けられたエンコーダ21から、各モータ20の回転位置を示す情報を取得する。
【0027】
姿勢・角度範囲算出部34は、回転位置取得部32が取得した各モータ20の回転位置を示す情報から、多関節アーム16の姿勢を示す情報を算出する。
【0028】
姿勢・角度範囲算出部34は、動作許可領域を示す情報と姿勢を示す情報とに基づいて、多関節アーム16が動作許可領域以外の領域で動作しないように、関節選択部28が選択した関節22のモータ20の回転角度の範囲を算出する。
【0029】
モータ制御部36は、関節選択部28が選択した関節22のモータ20を、姿勢・角度範囲算出部34が算出した回転角度の範囲において所定時間駆動して回転させる。これにより、関節特定部26が特定した関節22に所定時間、風があたる。従って、関節特定部26が特定した関節22に含まれるグリースが冷却される。当該所定時間は、全てのモータ20に対し一律に定められていてもよく、あるいは各モータ20の回転速度等に応じて異なっていてもよい。また、当該所定時間は、特定された関節22の温度によって変えられてもよい。
【0030】
モータ制御部36は、関節選択部28が選択した関節22のモータ20を駆動する所定時間、関節特定部26が特定した関節22のモータ20の駆動を禁止してもよい。これにより、関節特定部26が特定した関節22のグリースの温度上昇を抑えることができる。
【0031】
制御装置14は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、温度等の情報の取得用やモータ20の制御用等の各種インターフェース等により構成することができる。メモリは、記憶部30の機能を実現する。プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムや各種情報を用いて処理を実行することにより、温度情報取得部24、関節特定部26、関節選択部28、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、およびモータ制御部36の各機能を実現することができる。
【0032】
以下、
図3に示すフローチャートを用いて本実施形態に係る制御装置14の動作について説明する。ステップS1において、温度情報取得部24は、関節22の温度情報を取得する。ステップS2において、関節特定部26は、ステップS1において取得された温度情報に基づき、冷却が必要なグリースを含む関節22を特定する。
【0033】
ステップS3において関節選択部28は、ステップS2で特定された関節22よりも基台18の側に関節22が存在するか否かを判定する。特定された関節22よりも基台18の側に関節22が存在しない場合(ステップS3:NO)、制御装置14によるグリース冷却処理は終了する。
【0034】
特定された関節22よりも基台18の側に関節22が存在する場合(ステップS3:YES)、ステップS4において関節選択部28は、関節特定部26により特定された関節22よりも基台18の側の関節22を選択する。
【0035】
ステップS5において、姿勢・角度範囲算出部34は、回転位置取得部32が取得した各モータ20の回転位置から、多関節アーム16の姿勢を示す情報を算出する。
【0036】
ステップS6において、姿勢・角度範囲算出部34は、動作許可領域を示す情報と姿勢を示す情報とに基づいて、関節選択部28により選択された関節22のモータ20の回転角度の範囲を算出する。
【0037】
ステップS7において、モータ制御部36は、関節選択部28により選択された関節22のモータ20を制御して、姿勢・角度範囲算出部34により算出された回転角度の範囲において所定時間回転させる。
【0038】
本実施形態に係る制御装置14によれば、複数の関節22の各々に冷却装置等を設けなくとも、温度の高い関節22よりも基台18の側の関節22を回動させて温度の高い関節22に風をあてることにより、当該関節22を冷却することができる。従って、温度の高い関節22に含まれるグリースを冷却することができ、グリースの劣化を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る制御装置14によれば、グリースの劣化度合いを算出し、算出された劣化度合いが基準値未満、最小の少なくとも一方であるグリースを含む関節22を選択し回動させることにより、関節22のグリースの劣化を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る制御装置14によれば、ロボット12の周辺に干渉物が存在する場合等において、ロボット12の姿勢を示す情報を算出し、動作許可領域を示す情報と姿勢を示す情報とに基づき算出された回転角度の範囲において各モータ20を回転させることにより、多関節アーム16と干渉物との間の干渉を抑制することができる。
【0041】
[変形例]
上記実施形態について、以下の変形が可能である。
【0042】
(変形例1)
上記実施形態においては、動作許可領域を示す情報は予め定められている。しかし、ロボット12の周囲にそれまで無かった干渉物が配置されたような場合には、動作許可領域は変更されるため、多関節アーム16と干渉物との間で干渉が生じる虞がある。このような干渉防止のため、本変形例に係る制御装置14は、
図4に示されるように、更に干渉物情報取得部38および領域算出部40等を備える。なお、上記実施形態に係る制御装置14の構成要素と同一の構成要素には同じ符号を付し、異なる構成要素について以下説明する。
【0043】
干渉物情報取得部38は、ロボット12、ロボット12の周囲、ロボット12の上の天井等に設けられた不図示のカメラ等から、ロボット12の周囲に存在する干渉物の大きさ、位置、および形状等を示す干渉物情報を取得する。
【0044】
領域算出部40は、干渉物情報に基づいて動作許可領域を示す情報を算出する。領域算出部40は、算出した動作許可領域を記憶部30に記憶する。
【0045】
本変形例に係る制御装置14によれば、ロボット12の周辺状況の変化に応じ、干渉等を抑制しながらグリースの冷却を行うことができる。
【0046】
(変形例2)
上述した変形例1に係る制御装置14は、1つの領域算出部40を備え、これにより動作許可領域を示す情報が算出されていた。しかし、この1つの領域算出部40が誤った動作許可領域を示す情報を算出した場合には、多関節アーム16と干渉物との間に干渉が生じる虞がある。本変形例における制御装置14は、動作許可領域を示す情報の算出において支障が生じた場合において、多関節アーム16と干渉物との間の干渉を抑制する。
【0047】
本変形例に係る制御装置14は、上記領域算出部40を複数備える。姿勢・角度範囲算出部34は、複数の領域算出部40の各々が算出した動作許可領域を示す情報が等しい場合には、算出された動作許可領域を示す情報を用いて、選択された関節22のモータ20の回転角度の範囲を算出する。
【0048】
姿勢・角度範囲算出部34は、複数の領域算出部40の各々が算出した動作許可領域を示す情報が異なる場合には、選択された関節22のモータ20の回転角度の範囲を算出せず、モータ制御部36に対し、多関節アーム16の全てのモータ20の駆動を禁止するよう指示する。モータ制御部36は、姿勢・角度範囲算出部34からの指示に従い、多関節アーム16の全てのモータ20の駆動を禁止する。
【0049】
なお、姿勢・角度範囲算出部34は、複数の領域算出部40の各々が算出した動作許可領域を示す情報が異なる場合には、予め記憶部30に記憶された動作許可領域を示す情報を用いて、モータ20の回転角度の範囲を算出してもよい。当該動作許可領域を示す情報は、領域算出部40の異常の際に用いられるものとして予め設定されている。この場合、モータ制御部36は、姿勢・角度範囲算出部34が算出した回転角度の範囲において、選択された関節22のモータ20を所定時間回転させる。
【0050】
あるいは、姿勢・角度範囲算出部34は、複数の領域算出部40の各々が算出した動作許可領域を示す情報が異なる場合には、モータ20の回転角度の範囲を算出せず、モータ制御部36に対し、予め記憶部30に記憶された各モータ20の回転角度の範囲においてモータ20を駆動するよう指示してもよい。この予め記憶部30に記憶された回転角度の範囲は、領域算出部40の異常の際に用いられるものとして予め設定されている。この場合、モータ制御部36は
、選択された関節22のモータ20または多関節アーム16の全てのモータ20を所定時間回転させる。
【0051】
本変形例に係る制御装置14によれば、動作許可領域を示す情報の算出処理において問題が生じた場合において、多関節アーム16と干渉物との間の干渉を抑制することができる。
【0052】
(変形例3)
上述した制御装置14は、1つの姿勢・角度範囲算出部34を備え、これによりロボット12の姿勢を示す情報とモータ20の回転角度の範囲が算出されていた。しかし、姿勢・角度範囲算出部34が誤った角度範囲を算出した場合には多関節アーム16と干渉物との間に干渉が生じてしまう虞がある。本変形例における制御装置14は、姿勢を示す情報や、回転角度の範囲の算出において問題が生じた場合において、多関節アーム16と干渉物との間の干渉を抑制する。
【0053】
本変形例に係る制御装置14は、上記姿勢・角度範囲算出部34を複数備える。モータ制御部36は、複数の姿勢・角度範囲算出部34の各々が算出した姿勢を示す情報が等しく、複数の姿勢・角度範囲算出部34の各々が算出した回転角度の範囲が等しい場合において、関節選択部28が選択したモータ20を、算出された回転角度の範囲において所定時間回転させる。
【0054】
モータ制御部36は、複数の姿勢・角度範囲算出部34の各々が算出した姿勢を示す情報が異なる場合には、多関節アーム16の全てのモータ20の駆動を禁止する。モータ制御部36は、複数の姿勢・角度範囲算出部34の各々が算出した回転角度の範囲が異なる場合には、多関節アーム16の全てのモータ20の駆動を禁止する。
【0055】
なお、モータ制御部36は、複数の姿勢・角度範囲算出部34の各々が算出した姿勢を示す情報が異なる場合、または複数の姿勢・角度範囲算出部34の各々が算出した回転角度の範囲が異なる場合には、予め記憶部30に記憶された回転角度の範囲において、選択された関節22のモータ20または多関節アーム16の全てのモータ20を所定時間回転させてもよい。この予め記憶部30に記憶された回転角度の範囲は、姿勢・角度範囲算出部34の異常の際に用いられるものとして予め設定されている。
【0056】
本変形例に係る制御装置14によれば、姿勢を示す情報や回転角度の範囲の算出処理において問題が生じた場合においても、多関節アーム16と干渉物との間の干渉を抑制することができる。
【0057】
(変形例4)
図5は、変形例4に係るロボット制御システム10の構成の概略を例示する図である。上記実施形態に係るロボット制御システム10の構成要素と同等の構成要素については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】
本変形例に係るロボット制御システム10は、複数のロボット12、複数の制御装置14および管理装置50を有する。
【0059】
図5に例示するロボット制御システム10では、複数の制御装置14の各々に対して1つのロボット12が接続されるが、複数の制御装置14の少なくとも1つに対して複数のロボット12が接続されていてもよい。
【0060】
複数の制御装置14の少なくとも1つに対して複数のロボット12が接続される場合、複数のロボット12が接続された制御装置14は、複数のロボット12の各々を個別に制御する。なお、複数のロボット12の各々を制御する制御内容は、複数のロボット12に共通したものであってもよく、複数のロボット12ごとに異なったものであってもよい。
【0061】
管理装置50は、複数のロボット12を管理するものである。この管理装置50は、ネットワーク52を介して、複数のロボット12の各々に接続される制御装置14と各種の情報を授受することで、複数のロボット12を管理する。
【0062】
管理装置50は、上記実施形態の温度情報取得部24、関節特定部26、関節選択部28、記憶部30、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、および、モータ制御部36を有する。なお、上記実施形態のセンサ群25は、複数のロボット12の各々と、複数の制御装置14の各々との少なくとも一方に設けられる。また、モータ制御部36の制御に従って、モータ20を駆動するサーボアンプは、複数のロボット12の各々に設けられる。
【0063】
温度情報取得部24、関節特定部26、関節選択部28、記憶部30、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、および、モータ制御部36は、上記実施形態で詳細に説明したため、ここでは簡単に説明する。
【0064】
温度情報取得部24は、複数のロボット12ごとに、複数の関節22の各々の温度情報を取得する。関節特定部26は、複数のロボット12ごとに、複数の関節22の各々の温度情報に基づいて冷却が必要な関節22を特定する。関節選択部28は、複数のロボット12ごとに、複数の関節22の各々のグリースの劣化度合いを算出し、劣化度合いが基準値未満または最小のグリースを有するロボット12の関節22を選択する。
【0065】
記憶部30は、複数のロボット12ごとに、多関節アーム16の動作許可領域を示す情報を記憶する。回転位置取得部32は、複数のロボット12ごとに、多関節アーム16における複数の関節22の各々を回動させるためのモータ20の回転位置を示す情報を取得する。
【0066】
姿勢・角度範囲算出部34は、関節特定部26で特定されたロボット12の関節22より基台18側の関節22のモータ20の回転角度の範囲を算出する。姿勢・角度範囲算出部34は、具体的には、関節特定部26で特定されたロボット12の多関節アーム16の姿勢を示す情報と、当該多関節アーム16の動作許可領域を示す情報とに基づいて、回転角度の範囲を算出する。
【0067】
モータ制御部36は、複数のロボット12ごとに、複数の関節22の各々のモータ20を、サーボアンプを介して制御する。モータ制御部36は、関節特定部26によって冷却が必要な関節22が特定された場合には、特定されたロボット12の関節22より基台18側の関節22のモータ20を制御して、当該基台18側の関節22を所定時間回動させる。
【0068】
このように変形例4に係るロボット制御システム10では、管理装置50が、複数のロボット12ごとに多関節アーム16のなかで冷却が必要な関節22
より基台18側の関節22を回動させることで、複数のロボット12に対するグリースの劣化を一括して抑制することができる。また、複数のロボット12ごとに、冷却が必要になり易い関節22、および、冷却が必要な関節22を冷却するための関節22を回転させるモータ20の回転角度の範囲などを一括して管理することができる。
【0069】
(変形例5)
図6は、変形例5に係るロボット制御システム10の構成の概略を例示する図である。上記変形例4に係るロボット制御システム10の構成要素と同等の構成要素については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0070】
変形例5に係るロボット制御システム10の管理装置50は、温度情報取得部24、関節特定部26、関節選択部28、記憶部30、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、および、モータ制御部36に加えて、代替制御部60を有する。
【0071】
代替制御部60は、モータ制御部36により関節22が回動されているロボット12に割り当てられた作業を、当該モータ制御部36により関節22が回動されていない他のロボット12が代替するように、他のロボット12を制御するものである。なお、作業としては、例えば、スポット溶接などが挙げられる。
【0072】
代替制御部60は、関節特定部26によって冷却が必要な関節22が特定された場合、その関節22を有するロボット(以下、特定のロボットと称する)12に割り当てられる作業を実行するためのプログラムを、特定のロボット12から読み出す。
【0073】
また、代替制御部60は、関節特定部26によって冷却が必要な関節22が特定された場合、特定のロボット12に割り当てられる作業を代替させる他のロボット12を決定する。代替させる他のロボット12は、冷却動作中のロボット12以外のロボット12であれば、停止中のロボット12であってもよく、稼働中のロボット12であってもよい。なお、冷却動作中のロボット12は、冷却が必要な関節22より基台18側の関節22を回動させるロボット12である。
【0074】
代替制御部60は、特定のロボット12から読み出したプログラムを、特定のロボット12に割り当てられる作業を代替させるロボット12として決定した他のロボット12に出力する。これにより他のロボット12では、特定のロボット12のプログラムに基づいて、当該特定のロボット12に割り当てられる作業が実行される。
【0075】
このように代替制御部60は、特定のロボット12から読み出したプログラムを他のロボット12に出力することで、特定のロボット12に割り当てられる作業を代替するように他のロボット12を制御する。従って、特定のロボット12の冷却動作中に本来実行しなければならない作業が停滞することを抑制することができる。
【0076】
(変形例6)
変形例4または変形例5では、温度情報取得部24、関節特定部26、関節選択部28、記憶部30、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、および、モータ制御部36の全てを管理装置50が有していた。しかし、温度情報取得部24、関節特定部26、関節選択部28、記憶部30、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、および、モータ制御部36の一部を、複数のロボット12に接続される制御装置14の各々が有していてもよい。また、変形例5では、代替制御部60を管理装置50が有していた。しかし、複数のロボット12に接続される制御装置14の各々が代替制御部60を有していてもよい。
【0077】
また、複数のロボット12のうち、1つのロボット12が管理装置50として機能してもよい。この場合、管理装置50として機能する1つのロボット12に接続された制御装置14が、温度情報取得部24、関節特定部26、関節選択部28、記憶部30、回転位置取得部32、姿勢・角度範囲算出部34、モータ制御部36、および、代替制御部60を有する。なお、モータ制御部36の制御に従って、モータ20を駆動するサーボアンプは、複数のロボット12の各々に設けられる。
【0078】
(変形例7)
変形例4または変形例5では、1つのロボット12に対して1つの制御装置14が直接的に接続された。しかし、複数のロボット12に対して1つの制御装置(以下、統括用の制御装置と称する)14がネットワーク52を介して接続されていてもよい。統括用の制御装置14は、ネットワーク52を介して、複数のロボット12の各々を個別に制御する。
【0079】
複数のロボット12の各々を制御する制御内容は、上記のように、複数のロボット12に共通したものであってもよく、複数のロボット12ごとに異なったものであってもよい。なお、統括用の制御装置14は、管理装置50に組み込まれていてもよく、当該管理装置50とは別に設けられていてもよい。ただし、管理装置50のモータ制御部36の制御に従って、モータ20を駆動するサーボアンプは、複数のロボット12の各々に設けられる。
【0080】
[実施形態から得られる技術的思想]
上記実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0081】
<第1の技術的思想>
モータ(20)を有し、モータ(20)の駆動によって回動する関節(22)を複数備える多関節アーム(16)と、多関節アーム(16)を支持する基台(18)とを有するロボット(12)を制御する制御装置(14)は、複数の関節(22)の各々の温度情報を取得する温度情報取得部(24)と、取得された複数の関節(22)の各々の温度情報に基づき、冷却が必要な関節(22)を特定する関節特定部(26)と、複数の関節(22)の各々のモータ(20)を制御するものであって、関節特定部(26)によって関節(22)が特定された場合には、特定された関節(22)より基台(18)側の関節(22)のモータ(20)を制御して、特定された関節(22)より基台(18)側の関節(22)を所定時間回動させるモータ制御部(36)と、を備える。
【0082】
これにより、複数の関節(22)の各々に冷却装置等を設けなくとも、温度の高い関節(22)より基台(18)の側の関節(22)を回動させることで、温度の高い関節(22)に風をあて、当該関節(22)に含まれるグリースを冷却することができ、グリースの劣化を抑制することができる。
【0083】
温度情報は、関節(22)の温度、モータ(20)の温度、または関節(22)に含まれるグリースの温度を示す情報であってもよい。これにより、冷却が必要なグリースを含む関節(22)をより正確に特定できる。
【0084】
温度情報は、関節(22)に含まれるグリースの温度を示す情報であって、温度情報取得部(24)は、関節(22)の温度、またはモータ(20)の温度からグリースの温度を推定することにより温度情報を取得してもよい。これにより、冷却が必要なグリースを含む関節(22)をより正確に特定できる。
【0085】
制御装置(14)におけるモータ制御部(36)は、関節特定部(26)によって関節(22)が特定された場合には、特定された関節(22)のモータ(20)の駆動を所定時間禁止してもよい。これにより、温度が高い関節(22)の更なる温度上昇を抑制でき、当該関節(22)に含まれるグリースを効率よく冷却できる。
【0086】
制御装置(14)は、複数の関節(22)の各々のグリースの劣化度合いを算出し、劣化度合いが基準値未満のグリースを有する関節(22)を選択する関節選択部(28)を備え、モータ制御部(36)は、選択された関節(22)のモータ(20)を駆動してもよい。これにより、関節(22)におけるグリースの劣化を抑制することができる。
【0087】
制御装置(14)は、複数の関節(22)の各々のグリースの劣化度合いを算出し、劣化度合いが最小のグリースを有する関節(22)を選択する関節選択部(28)を備え、モータ制御部(36)は、選択された関節(22)のモータ(20)を駆動してもよい。これにより、関節(22)におけるグリースの劣化を抑制することができる。
【0088】
制御装置(14)における関節選択部(28)は、モータ(20)の使用時間と回転速度の少なくとも一方に基づいて劣化度合いを算出してもよい。これにより、グリースの劣化度合いを、より正確に算出することができる。
【0089】
制御装置(14)は、複数のモータ(20)の回転位置を示す情報を取得する回転位置取得部(32)と、複数のモータ(20)の回転位置に基づいて多関節アーム(16)の姿勢を示す情報を算出し、多関節アーム(16)が動作を許可された動作許可領域を示す情報と姿勢を示す情報とに基づいて、特定された関節(22)より基台(18)側の関節(22)のモータ(20)の回転角度の範囲を算出する姿勢・角度範囲算出部(34)と、を備え、モータ制御部(36)は、特定された関節(22)より基台(18)側の関節(22)のモータ(20)を、算出された回転角度の範囲において所定時間回転させてもよい。これにより、多関節アーム(16)と干渉物との間の干渉を抑制することができる。
【0090】
<第2の技術的思想>
モータ(20)を有し、モータ(20)の駆動によって回動する関節(22)を複数備える多関節アーム(16)と、多関節アーム(16)を支持する基台(18)とを有するロボット(12)を制御する制御装置(14)により実行されるグリース冷却方法は、複数の関節(22)の各々の温度情報を取得する温度情報取得ステップと、取得された複数の関節(22)の各々の温度情報に基づき、冷却が必要な関節(22)を特定する関節特定ステップと、関節特定ステップにおいて関節(22)が特定された場合には、特定された関節(22)より基台(18)側の関節(22)のモータ(20)を制御して、特定された関節(22)より基台(18)側の関節(22)を所定時間回動させるモータ制御ステップと、を含む。
【0091】
これにより、複数の関節(22)の各々に冷却装置等を設けなくとも、温度の高い関節(22)より基台(18)の側の関節(22)を回動させることで、温度の高い関節(22)に風をあて、当該関節(22)に含まれるグリースを冷却することができ、グリースの劣化を抑制することができる。
【0092】
温度情報は、関節(22)の温度、モータ(20)の温度、または関節(22)に含まれるグリースの温度を示す情報であってもよい。これにより、冷却が必要なグリースを含む関節(22)をより正確に特定できる。
【0093】
温度情報は、関節(22)に含まれるグリースの温度を示す情報であって、温度情報取得ステップは、関節(22)の温度、またはモータ(20)の温度からグリースの温度を推定することにより温度情報を取得してもよい。これにより、冷却が必要なグリースを含む関節(22)をより正確に特定できる。
【0094】
グリース冷却方法における関節特定ステップにおいて関節(22)が特定された場合には、モータ制御ステップは、特定された関節(22)のモータ(20)の駆動を所定時間禁止してもよい。これにより、温度が高い関節(22)の更なる温度上昇を抑制でき、当該関節(22)に含まれるグリースを効率よく冷却できる。
【0095】
グリース冷却方法は、複数の関節(22)の各々のグリースの劣化度合いを算出し、劣化度合いが基準値未満のグリースを有する関節(22)を選択する関節選択ステップを含み、モータ制御ステップは、選択された関節(22)のモータ(20)を駆動してもよい。これにより、関節(22)におけるグリースの劣化を抑制することができる。
【0096】
グリース冷却方法は、複数の関節(22)の各々のグリースの劣化度合いを算出し、劣化度合いが最小のグリースを有する関節(22)を選択する関節選択ステップを含み、モータ制御ステップは、選択された関節(22)のモータ(20)を駆動してもよい。これにより、関節(22)におけるグリースの劣化を抑制することができる。
【0097】
グリース冷却方法における関節選択ステップは、モータ(20)の使用時間と回転速度の少なくとも一方に基づいて劣化度合いを算出してもよい。これにより、グリースの劣化度合いを、より正確に算出することができる。
【0098】
<第3の技術的思想>
モータ(20)、モータ(20)の駆動によって回動する関節(22)を複数備える多関節アーム(16)および多関節アーム(16)を支持する基台(18)を含む複数のロボット(12)を管理する管理装置(50)は、複数のロボット(12)ごとに、複数の関節(22)の各々の温度情報を取得する温度情報取得部(24)と、複数のロボット(12)ごとに、複数の関節(22)の各々の温度情報に基づいて冷却が必要な関節(22)を特定する関節特定部(26)と、複数のロボット(12)ごとに、複数の関節(22)の各々のモータ(20)を制御するものであって、関節特定部(26)によって冷却が必要な関節(22)が特定された場合には、特定されたロボット(12)の関節(22)より基台(18)側の関節(22)のモータ(20)を制御して、特定されたロボット(12)の関節(22)より基台(18)側の関節(22)を所定時間回動させるモータ制御部(36)と、を備える。
【0099】
これにより、複数のロボット(12)の各々における複数の関節(22)ごとに冷却装置等を設けなくとも、温度の高い関節(22)より基台(18)の側の関節(22)を回動させることで、温度の高い関節(22)に風をあて、当該関節(22)に含まれるグリースを冷却することができ、グリースの劣化を抑制することができる。
【0100】
温度情報は、関節(22)の温度、モータ(20)の温度、または関節(22)に含まれるグリースの温度を示す情報であってもよい。これにより、冷却が必要なグリースを含む関節(22)をより正確に特定できる。
【0101】
温度情報は、関節(22)に含まれるグリースの温度を示す情報であって、温度情報取得部(24)は、関節(22)の温度、またはモータ(20)の温度からグリースの温度を推定することにより温度情報を取得してもよい。これにより、冷却が必要なグリースを含む関節(22)をより正確に特定できる。
【0102】
管理装置(50)におけるモータ制御部(36)は、関節特定部(26)によって冷却が必要な関節(22)が特定された場合には、特定されたロボット(12)の関節(22)のモータ(20)の駆動を所定時間禁止してもよい。これにより、温度が高い関節(22)の更なる温度上昇を抑制でき、当該関節(22)に含まれるグリースを効率よく冷却できる。
【0103】
管理装置(50)は、複数のロボット(12)ごとに、複数の関節(22)の各々のグリースの劣化度合いを算出し、劣化度合いが基準値未満のグリースを有するロボット(12)の関節(22)を選択する関節選択部(28)を備え、モータ制御部(36)は、選択されたロボット(12)の関節(22)のモータ(20)を駆動してもよい。これにより、関節(22)におけるグリースの劣化を抑制することができる。
【0104】
管理装置(50)は、複数のロボット(12)ごとに、複数の関節(22)の各々のグリースの劣化度合いを算出し、劣化度合いが最小のグリースを有するロボット(12)の関節(22)を選択する関節選択部(28)を備え、モータ制御部(36)は、選択されたロボット(12)の関節(22)のモータ(20)を駆動してもよい。これにより、関節(22)におけるグリースの劣化を抑制することができる。
【0105】
管理装置(50)における関節選択部(28)は、モータ(20)の使用時間と回転速度の少なくとも一方に基づいて劣化度合いを算出してもよい。これにより、グリースの劣化度合いを、より正確に算出することができる。
【0106】
管理装置(50)は、複数のロボット(12)ごとに、複数のモータ(20)の回転位置を示す情報を取得する回転位置取得部(32)と、複数のモータ(20)の回転位置に基づいて、特定されたロボット(12)の多関節アーム(16)の姿勢を示す情報を算出し、特定されたロボット(12)の多関節アーム(16)が動作を許可された動作許可領域を示す情報と姿勢を示す情報とに基づいて、特定されたロボット(12)の関節(22)より基台(18)側の関節(22)のモータ(20)の回転角度の範囲を算出する姿勢・角度範囲算出部(34)と、を備え、モータ制御部(36)は、特定されたロボット(12)の関節(22)より基台(18)側の関節(22)のモータ(20)を、算出された回転角度の範囲において所定時間回転させてもよい。これにより、多関節アーム(16)と干渉物との間の干渉を抑制することができる。
【0107】
管理装置(50)は、モータ制御部(36)により関節(22)が回動されているロボット(12)に割り当てられた作業を、モータ制御部(36)により関節(22)が回動されていない他のロボット(12)が代替するように、他のロボット(12)を制御する代替制御部(60)を備えてもよい。これにより、モータ制御部(36)により関節(22)が回動されているロボット(12)の冷却動作中に本来実行しなければならない作業が停滞することを抑制することができる。