(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態のモータについて図面に基づいて説明する。
図1に示すように、モータ1は、ステータ3と、ステータ3に対して回転するロータ2と、ステータ3にロータ2を連結する一対のベアリング4と、を備えている。ロータ2は、回転軸11と、一対のエンドサポート12と、シュラウド13と、複数のコイル14と、複数の絶縁体15と、複数のヒートパイプ構造体20Aと、を有している。ステータ3は、ハウジング5と、磁石6と、を有している。モータ1は、例えば自動車に搭載されて、自動車の車輪などに動力を供給することができる。
【0015】
(方向定義)
本実施形態では、回転軸11の軸方向を、単に軸方向という。また、軸方向における一方側を+X側といい、他方側を−X側という。軸方向から見て、回転軸11の中心軸線O回りに周回する方向を周方向といい、中心軸線Oに交差する方向を径方向という。
【0016】
一対のベアリング4は、軸方向において間隔を空けて配置されている。各ベアリング4の内輪4aは回転軸11に固定されており、外輪4bはハウジング5に固定されている。
ハウジング5は軸方向に延びる円筒状に形成されており、磁石6はハウジング5の内周面に固定されている。
図2に示すように、磁石6は、周方向に間隔を空けて配置されている。なお、ハウジング5や磁石6の形状は適宜変更してもよい。
【0017】
回転軸11は中空に形成されており、内部空間11aは、冷媒の流路となっている。回転軸11の両端部には、冷媒を循環させるための不図示のチューブが接続される。
図1の例では、冷媒は+X側から−X側に向けて流れる。このため、回転軸11の+X側の端部に接続されたチューブは冷媒の往路となり、回転軸11の−X側の端部に接続されたチューブは冷媒の復路となる。これらのチューブは、コイル14の熱によって加熱された冷媒を冷却させるための放熱装置(例えばラジエータなど)に接続される。したがって、回転軸11の内部空間11aには、放熱装置を経て循環した冷媒が供給される。なお、モータ1を自動車などに搭載して冷媒を循環させるのではなく、水源から冷媒を供給して、モータ1で加熱された冷媒を単に排水してもよい。
【0018】
回転軸11には、複数の貫通孔11bが形成されている。複数の貫通孔11bは、ヒートパイプ構造体20Aを、回転軸11の外側から内側へと挿通させるために用いられる。従って、複数の貫通孔11bは、ヒートパイプ構造体20Aの位置および形状に合わせて形成されている。より詳しくは、
図1に示すように、1つのヒートパイプ構造体20Aの第1端部21および第2端部22の位置に合わせて、2つの貫通孔11b(貫通孔11bの対)が、軸方向に間隔を空けて形成されている。また、ヒートパイプ構造体20Aは周方向に間隔を空けて配置されているため、貫通孔11bの対も周方向に間隔を空けて形成されている(図示は省略)。
【0019】
図1に示すように、一対のエンドサポート12は、軸方向に間隔を空けて配置され、回転軸11に固定されている。一対のエンドサポート12は、軸方向において、一対のベアリング4同士の間に配置されている。一対のエンドサポート12は、シュラウド13および複数のコイル14を軸方向において間に挟んでいる。一対のエンドサポート12は、コイル14を軸方向の外側から支持しており、これによってコイル14がシュラウド13から脱落することが抑制されている。エンドサポート12は、軸方向から見て六角形状に形成されている。ただし、エンドサポート12の形状は適宜変更してもよい。
【0020】
図2に示すように、複数のコイル14は、周方向に間隔を空けて配置されている。各コイル14には不図示の電源が接続されている。電源から各コイル14に電流が供給されることで、コイル14から磁界が生じる。この磁界と磁石6との間に生じる磁力が、モータ1の駆動力となる。絶縁体15は、各コイル14を囲うように配置されている。絶縁体15により、コイル14とその他の部材とが電気的に絶縁される。
【0021】
シュラウド13は、金属などにより形成されている。コイル14、絶縁体15、およびヒートパイプ構造体20Aの一部は、シュラウド13の内部に収容されている。より詳しくは、シュラウド13には軸方向に延びる複数の貫通孔が形成されており、複数の貫通孔は周方向に間隔を空けて配置されている。シュラウド13の各貫通孔の内側に、コイル14、絶縁体15、およびヒートパイプ構造体20Aの一部が配置されている。シュラウド13は、軸方向から見て六角形状に形成されている。ただし、シュラウド13の形状は適宜変更してもよい。
【0022】
複数のヒートパイプ構造体20Aは、周方向に間隔を空けて配置されている。
図3に示すように、ヒートパイプ構造体20Aは、中空のコンテナCと、コンテナC内に封入された作動流体(不図示)と、を有している。コンテナCの材質としては、銅などの金属を好適に用いることができる。作動流体の材質としては、水、アルコール類、アンモニア水などを用いることができる。ただし、コンテナCおよび作動流体の材質は適宜変更してもよい。
【0023】
図1に示すように、本実施形態にけるヒートパイプ構造体20Aは、第1端部21および第2端部22を有する線状に形成されている。軸方向に沿う断面において、ヒートパイプ構造体20Aは径方向内側に向けて開いたC字状に形成されている。ヒートパイプ構造体20Aは、第1端部21と第2端部22との間に位置する中間部23を有している。中間部23は、回転軸11の外側において軸方向に沿って延びる直線部と、直線部から径方向内側に向けて曲げられた湾曲部と、を有している。湾曲部は、軸方向における直線部の両端に設けられており、第1端部21および第2端部22に連なっている。中間部23の直線部が、ヒートパイプ構造体20Aにおいて、コイル14から熱を受け取って液相の作動流体が蒸発する蒸発部となっている。
【0024】
第1端部21および第2端部22は、回転軸11の貫通孔11bを通して、回転軸11の内部空間11aに向けて突出している。この第1端部21および第2端部22が、ヒートパイプ構造体20Aにおいて、冷媒に冷却されて気相の作動流体が蒸発する
蒸発部となっている。なお、貫通孔11bの内側にはシール部16が設けられている。シール部16は、ヒートパイプ構造体20Aに固定された金属スリーブと、金属スリーブと貫通孔11bとの間に挟まれたOリングと、を有している。Oリングは、金属スリーブの外周面に形成された環状の溝に嵌められている。また、Oリングの外周面は貫通孔11bの内面に接している。シール部16によって、ヒートパイプ構造体20Aと貫通孔11bとの間の隙間がシールされており、冷媒が漏れ出てしまうことが抑制されている。なお、冷媒をシールすることができれば、シール部16の構成を適宜変更してもよい。
【0025】
図1〜
図3に示すように、ヒートパイプ構造体20Aは、中間部23の一部(直線部)において平坦な形状に潰されている。これにより、
図2に示すように、中間部23と絶縁体15との接触面積を大きくすることができる。中間部23では、作動流体が絶縁体15を介してコイル14から熱を受け取る。そして、中間部23と絶縁体15との接触面積が大きいほど、より効率よく作動流体が熱を受け取ることができる。
【0026】
次に、本実施形態のモータ1の製造方法の一例を説明する。
まず、ヒートパイプ構造体20Aとなる直線状のヒートパイプを用意する。この直線状のヒートパイプを2か所で曲げることでC字状とする。また、中間部23の一部を潰して平坦な形状とする。これにより、ヒートパイプ構造体20Aが得られる。
次に、ヒートパイプ構造体20Aの第1端部21および第2端部22の近傍に、それぞれシール部16を取り付ける。そして、ヒートパイプ構造体20Aの第1端部21および第2端部22を、シール部16ごと、回転軸11の2つの貫通孔11bに挿入する。
【0027】
上記のような工程を、モータ1が備えるヒートパイプ構造体20Aの数(本実施形態では6つ)だけ繰り返す。
そして、エンドサポート12、シュラウド13、コイル14、絶縁体15などの残りの部材を配置する。これにより、モータ1を製造することができる。なお、シュラウド13を複数の部材に分割し、その部材同士を接合することで、コイル14やヒートパイプ構造体20Aの中間部23をシュラウド13の内部に収容することができる。
なお、上記の製造方法は一例に過ぎず、適宜変更してもよい。例えば回転軸11またはその他の構成部材を複数の部材に分割し、その部材同士を接合してもよい。
【0028】
次に、以上のように構成されたモータ1の作用について説明する。
【0029】
コイル14に電流が流されることで、コイル14は発熱する。この熱は、絶縁体15を介して、ヒートパイプ構造体20Aの蒸発部(中間部23の直線部)に伝わる。蒸発部では、液相の作動流体が熱を受け取って蒸発する。蒸発に伴って作動流体の体積が膨張し、中間部23の直線部におけるコンテナC内の圧力が高まるため、気相の作動流体は第1端部21または第2端部22に向けて、コンテナC内を流動する。
【0030】
ヒートパイプ構造体20Aの第1端部21および第2端部22は、回転軸11の内部空間11aを流れる冷媒によって冷却されている。このため、第1端部21および第2端部22(凝縮部)において、気相の作動流体は冷却されて凝縮する。ここで、ヒートパイプ構造体20Aはロータ2の一部であり、中心軸線O回りに回転している。液相の作動流体は、ヒートパイプ構造体20Aが中心軸線O回りに回転することで生じる遠心力によって、第1端部21および第2端部22から蒸発部へと戻される。
【0031】
遠心力によって蒸発部に戻された液相の作動流体は、コイル14から再び熱を受け取って蒸発する。以上の作用により、ヒートパイプ構造体20Aは、コイル14の熱を冷媒へと継続して輸送することができる。
なお、中間部23において蒸発した気相の作動流体にも遠心力が作用する。しかしながら、気体は密度が小さいため、気体に作用する遠心力は極めて小さい。このため、気相の作動流体は、中間部23でのコンテナC内の圧力の上昇によって、遠心力に逆らって第1端部21および第2端部22へと流動することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のモータ1は、磁石6を有するステータ3と、ステータ3に対して回転するロータ2と、を備えている。ロータ2は、中空の回転軸11と、電流が流されることで発熱するコイル14と、コンテナCおよびコンテナC内に封入された作動流体を有するヒートパイプ構造体20Aと、コイル14を軸方向における外側から支持する一対のエンドサポート12と、を有している。そして、軸方向におけるヒートパイプ構造体20Aの位置が、一対のエンドサポート12の軸方向における外側の各端面12a同士の間に位置している。このような構造により、モータ1がコンパクトになり、モータ1を収容するために必要な空間の体積を小さくすることができる。
【0033】
さらに、ヒートパイプ構造体20Aは、コイル14から熱を受け取って液相の作動流体が蒸発する蒸発部(中間部23の直線部)と、回転軸11の内部空間11aを流動する冷媒に冷却されて気相の作動流体が凝縮する凝縮部(第1端部21、第2端部22)と、を有している。これにより、コイル14から冷媒へと効率よく熱を輸送し、コイル14を効率よく冷却することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態のヒートパイプ構造体20Aは、第1端部21および第2端部22を有する線状に形成されており、第1端部21および第2端部22が、回転軸11の内部空間11aに位置して冷媒に接触する凝縮部となっている。このような構成により、ヒートパイプ構造体20Aの形状をシンプルにしつつ、効率よく作動流体から冷媒へと熱を受け渡すことができる。
【0035】
なお、
図1のヒートパイプ構造体20AはC字状であるが、例えばL字状のヒートパイプ構造体を用いてもよい。この場合、第1端部21および第2端部22のうち、一方を回転軸11の内部空間11aに位置する凝縮部とし、他方を回転軸11の外側に位置する蒸発部とすることで、上記の作用効果を得ることができる。つまり、第1端部21および第2端部22のうち、少なくとも一方が、回転軸11の内部空間11aに位置して冷媒に接触する凝縮部であってもよい。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0037】
図4に示すように、本実施形態のヒートパイプ構造体20Bは、筒状部24と、線状部25と、を有している。
図6に示すように、筒状部24はコンテナC1を有しており、線状部25はコンテナC2を有している。コンテナC1、C2の内部には、共通の作動流体が封入されている。コンテナC1およびコンテナC2の内部空間は連なっており、作動流体が行き来できるようになっている。
【0038】
図4〜
図6に示すように、筒状部24のコンテナC1は、中心軸線Oと同軸の円筒状に形成されており、回転軸11の内側に嵌合されている。線状部25のコンテナC2は、第1端部25aと、第2端部25bと、第1端部25aおよび第2端部25bの間に位置する中間部25cと、を有している。
【0039】
図4に示すように、第1端部25aは回転軸11の外側に位置しており、絶縁体15に接している。第2端部25bは筒状部24の外周面に接続されている。中間部25cは、軸方向に沿って延びる直線部と、直線部から径方向内側に向けて曲げられた湾曲部と、を有している。本実施形態では、第1端部25aおよび中間部25cの一部(直線部)が蒸発部となっており、絶縁体15に接している。また、筒状部24が凝縮部となっている。
【0040】
線状部25は、回転軸11の貫通孔11bを通して、回転軸11の外側から筒状部24へと導入されている。線状部25の第2端部25bと貫通孔11bとの間の隙間は、ロウ付けにより閉塞されている。これにより、冷媒が漏れ出ることが抑制されている。
本実施形態の線状部25も、第1実施形態におけるヒートパイプ構造体20Aと同様に、蒸発部(第1端部25aおよび中間部25cの直線部)において平坦な形状に潰されている。これにより、
図5に示すように、線状部25と絶縁体15との接触面積を大きくすることができる。
【0041】
図5に示すように、線状部25は、各コイル14に対応する位置に配置されている。すなわち、複数の線状部25が、周方向に間隔を空けて配置されている。各線状部25の第2端部25bは、1つの筒状部24に接続されている。このように、ヒートパイプ構造体20Bは、1つの筒状部24と、複数の線状部25と、を有している。
図4に示すように、本実施形態のモータ1では、上記のような構成の2つのヒートパイプ構造体20Bが、軸方向に間隔を空けて配置されている。2つのヒートパイプ構造体20B同士の間には、軸方向の隙間が設けられている。ただし、2つのヒートパイプ構造体20B同士が接触していてもよい。
【0042】
次に、本実施形態のモータ1の製造方法の一例を説明する。
まず、筒状部24となる円筒状のコンテナと、線状部25となる直線状のコンテナと、を用意する。筒状のコンテナには、直線状のコンテナを接続するための開口を予め設けておく。また、直線状のコンテナにも、筒状のコンテナに接続するための開口を予め設けておく。
【0043】
次に、筒状のコンテナを回転軸11の内側に嵌合させる。このとき、筒状のコンテナの開口の位置を、回転軸11の貫通孔11bの位置に合わせる。
次に、回転軸11の貫通孔11bおよび筒状のコンテナの開口を通して、筒状のコンテナの内部に作動流体を充填する。
次に、直線状のコンテナを貫通孔11bに挿通させて、直線状のコンテナの開口と筒状のコンテナの開口とを位置合わせしてロウ付けし、これらの開口を閉塞する。そして、直線状のコンテナを曲げ、一部を平坦な形状に潰して、線状部25の形状とする。
【0044】
そして、エンドサポート12、シュラウド13、コイル14、絶縁体15などの残りの部材を配置する。これにより、モータ1を製造することができる。なお、シュラウド13を複数の部材に分割し、その部材同士を接合することで、コイル14や線状部25をシュラウド13の内部に収容することができる。
【0045】
なお、上記の製造方法は一例に過ぎず、適宜変更してもよい。例えば回転軸11またはその他の構成部材を複数の部材に分割し、その部材同士を接合してもよい。
【0046】
次に、本実施形態におけるモータ1の作用について、第1実施形態とは異なる点を説明する。
【0047】
蒸発部(第1端部25aおよび中間部25cの直線部)で蒸発した気相の作動流体は、第2端部25bを経て、筒状部24内に流入する。筒状部24は冷媒によって冷却されているため、筒状部24の内部において、気相の作動流体が凝縮する。液相の作動流体は、ロータ2が中心軸線O回りに回転することで生じる遠心力によって、蒸発部に戻される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のヒートパイプ構造体20Bは、筒状に形成された筒状部24と、筒状部24に接続され、線状に形成された線状部25と、を有している。そして、筒状部24の少なくとも一部が凝縮部であり、線状部25の少なくとも一部が蒸発部となっている。このように、筒状に形成された表面積の広い筒状部24を凝縮部として用いることで、作動流体から冷媒への熱の受け渡しをより効率よく行うことができる。したがって、より効率よく、コイル14の熱を冷媒へと輸送することができる。
【0049】
また、凝縮部である筒状部24が、冷媒に接触している。これにより、さらに効率よく作動流体から冷媒へと熱を受け渡すことができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0051】
図7に示すように、本実施形態のヒートパイプ構造体20Cは、筒状部24と、線状部25と、を有している。
図9に示すように、筒状部24はコンテナC1を有しており、線状部25はコンテナC2を有している。コンテナC1、C2の内部には、共通の作動流体が封入されている。コンテナC1およびコンテナC2の内部空間は連なっており、作動流体が行き来できるようになっている。
【0052】
図7〜
図9に示すように、筒状部24のコンテナC1は、中心軸線Oと同軸の円筒状に形成されており、回転軸11の内側に嵌合されている。線状部25のコンテナC2は、第1端部25aと、第2端部25bと、第1端部25aおよび第2端部25bの間に位置する中間部25cと、を有している。
【0053】
図7に示すように、第1端部25aおよび第2端部25bはそれぞれ、筒状部24の外周面に接続されている。中間部25cは、軸方向に沿って延びる直線部と、直線部から径方向内側に向けて曲げられた湾曲部と、を有している。本実施形態では、中間部25cの一部(直線部)が蒸発部となっており、絶縁体15に接している。また、筒状部24が凝縮部となっている。
【0054】
線状部25は、回転軸11の2つの貫通孔11bを通して、回転軸11の外側から筒状部24へと導入されている。線状部25の第1端部25aと貫通孔11bとの間の隙間、および第2端部25bと貫通孔11bとの間の隙間は、ロウ付けにより閉塞されている。これにより、冷媒が漏れ出ることが抑制されている。
本実施形態の線状部25も、第1実施形態におけるヒートパイプ構造体20Aと同様に、蒸発部(中間部25cの直線部)において平坦な形状に潰されている。これにより、線状部25と絶縁体15との接触面積を大きくすることができる。
【0055】
図8に示すように、線状部25は、各コイル14に対応する位置に配置されている。すなわち、複数の線状部25が、周方向に間隔を空けて配置されている。各線状部25は、1つの筒状部24に接続されている。このように、本実施形態のヒートパイプ構造体20Cは、1つの筒状部24と、複数の線状部25と、を有している。
【0056】
図9に示すように、線状部25のコンテナC2の内部にはウイックW1(第1ウイック)が封入されており、筒状部24のコンテナC1の内部にはウイックW2(第2ウイック)が封入されている。ウイックW1、W2は、液相の作動流体に対して毛細管力を作用させる多数の細孔を有している。ウイックW1、W2は、例えば、複数の細線を格子状に編み込んだメッシュや、多孔質の焼結体などを用いることができる。
【0057】
ウイックW1は、線状部25における蒸発部に配置されている。より詳しくは、ウイックW1は、線状部25のコンテナC2のうち、軸方向に沿って延びている部分の径方向外側の壁面に接するように配置されている。つまり、線状部25のコンテナC2が絶縁体15と接している側の壁面に接するようにウイックW1は配置されている。ウイックW1の細孔には、液相の作動流体が含浸している。ウイックW1とコンテナC2の径方向内側の壁面との間には、隙間S1が形成されている。隙間S1は、軸方向に沿って延びている。隙間S1は、蒸発部において蒸発した作動流体が、筒状部24に向けて流動するための蒸気流路となる。
【0058】
ウイックW2は、筒状部24のコンテナC1のうち、径方向内側の壁面に接するように配置されている。ウイックW2とコンテナC1の径方向外側の壁面との間には、隙間S2が形成されている。つまり、回転軸11の内側を流動する冷媒と接している側の筒状部24のコンテナC1の壁面に接するようにウイックW2は配置されている。隙間S2は、軸方向に沿って延びている。ウイックW2は、コンテナC1の軸方向における全長にわたって配置されている。なお、ウイックW2は、凝縮部の軸方向における一部分にのみ配置されていてもよい。同様に、ウイックW1は、蒸発部の軸方向における一部分にのみ配置されていてもよい。
【0059】
本実施形態のモータ1も、コンテナC1、C2の内部に予めウイックW1、W2を設けておけば、第2実施形態で説明した方法と同様の製造方法を用いて製造することができる。
【0060】
次に、本実施形態におけるモータ1の作用について、第1実施形態とは異なる点を説明する。
【0061】
蒸発部(中間部25cの直線部)にはウイックW1が配置されており、ウイックW1の細孔には液相の作動流体が含浸している。コイル14が発する熱によって、コンテナC2の壁面およびウイックW1が加熱される。このため、コンテナC2の壁面およびウイックW1の表面から作動流体が蒸発する。ウイックW1の内部では、細孔が生じさせる毛細管力によって、液相の作動流体が偏りなく広がる。また、ウイックW1の表面から作動流体が蒸発しても、その表面には液相の作動流体が毛細管力によって適宜供給される。したがって、ウイックW1の特定の部位がドライアウトすることが抑制される。
【0062】
蒸発部で蒸発した気相の作動流体は、蒸気流路である隙間S1を通って第1端部25aおよび第2端部25bに向かい、筒状部24内に流入する。筒状部24では、冷媒によって、コンテナC1およびウイックW2が冷却されている。このため、コンテナC1の壁面およびウイックW2の表面において作動流体が凝縮する。液相の作動流体は、ロータ2が中心軸線O回りに回転することで生じる遠心力によって、蒸発部に戻される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のヒートパイプ構造体20Cは、筒状に形成された筒状部24と、筒状部24に接続され、線状に形成された線状部25と、を有している。そして、筒状部24の少なくとも一部が凝縮部であり、線状部25の少なくとも一部が蒸発部となっている。このように、筒状に形成された表面積の広い筒状部24を凝縮部として用いることで、作動流体から冷媒への熱の受け渡しをより効率よく行うことができる。したがって、より効率よく、コイル14の熱を冷媒へと輸送することができる。
【0064】
また、凝縮部である筒状部24が、冷媒に接触している。これにより、さらに効率よく作動流体から冷媒へと熱を受け渡すことができる。
また、線状部25が、第1端部25aおよび第2端部25bの2箇所において筒状部24に接続されている。この構成により、蒸発部と凝縮部との間で作動流体をより確実に流動させることが可能となる。
【0065】
また、蒸発部としての線状部25にウイックW1が配置されていることで、蒸発部の一部分に偏って液相の作動流体が存在することが抑制され、より効率よく作動流体を蒸発させることができる。
また、凝縮部としての筒状部24にウイックW2が配置されていることで、作動流体の凝縮に用いられる表面積が増大し、より効率よく作動流体を凝縮させることができる。
【0066】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0067】
例えば、第1実施形態のシール部16に代えて、回転軸11の貫通孔11bとヒートパイプ構造体20Aとをロウ付けなどにより一体化させることで、冷媒の漏れを抑制してもよい。
また、前記第1実施形態では、第1端部21および第2端部22が回転軸11の内部空間11aに位置していたが、第1端部21または第2端部22が回転軸11の外側に位置してもよい。すなわち、第1端部21または第2端部22は冷媒に接触しなくてもよい。この場合でも、回転軸11を介して冷媒に冷却される位置に第1端部21または第2端部22を配置すれば、第1端部21または第2端部22を作動流体の凝縮部とすることができる。
【0068】
また、前記第2・第3実施形態では、筒状部24が回転軸11の内部空間11aに位置していたが、筒状部24は回転軸11の外側に位置してもよい。すなわち、筒状部24は冷媒に接触しなくてもよい。この場合でも、回転軸11を介して冷媒に冷却される位置に筒状部24を配置すれば、筒状部24を作動流体の凝縮部とすることができる。
また、前記第3実施形態では、蒸発部および凝縮部の双方にウイックW1、W2が設けられていたが、ウイックW1およびウイックW2のうち一方のみが設けられていてもよい。あるいは、このようなウイックW1、W2を設けなくてもよい。
【0069】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0070】
例えば、第3実施形態で説明したようなウイックW1を、第1実施形態におけるヒートパイプ構造体20Aの蒸発部(中間部23の直線部)に設けてもよい。あるいは、ウイックW1を、第2実施形態におけるヒートパイプ構造体20Bの蒸発部(第1端部25aおよび中間部25cの直線部)に設けてもよい。
【0071】
また、第3実施形態で説明したようなウイックW2を、第1実施形態におけるヒートパイプ構造体20Aの凝縮部(第1端部21、第2端部22)に設けてもよい。あるいは、ウイックW2を、第2実施形態におけるヒートパイプ構造体20Bの凝縮部(筒状部24)に設けてもよい。