(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抽気供給源から抽気する抽気蒸気の圧力を設定する抽気圧力設定器からの抽気圧力設定値と、抽気蒸気の圧力測定器からの抽気圧力信号との偏差に基づいて抽気加減弁の開度を調整する抽気圧力制御回路を有する蒸気供給プラントの抽気制御装置であって、
抽気流量を設定する抽気流量設定器を具備し、前記抽気流量設定器からの抽気流量設定値と抽気蒸気の流量測定器からの抽気流量信号との偏差に基づいて、前記抽気流量信号が前記抽気流量設定値より小さい場合には前記抽気圧力設定器の抽気圧力設定値を増側に変更し、前記抽気流量信号が前記抽気流量設定値より大きい場合には前記抽気圧力設定器の抽気圧力設定値を減側に変更する制御回路を有することを特徴とする蒸気供給プラントの抽気制御装置。
複数の前記抽気供給源のうちの一部が運転を停止した際に、他の前記抽気供給源の前記抽気流量分配比を変更してトータル抽気流量を維持することを特徴とする請求項7に記載の蒸気供給プラントの抽気制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る蒸気供給プラントの抽気制御装置及び抽気制御方法を、図面を参照して説明する。
【0010】
先ず、抽気供給源からの抽気蒸気圧力を制御する従来の抽気制御装置及び抽気制御方法について、
図8、
図9を参照して説明する。
【0011】
蒸気供給プラント、例えば
図8に示すように、抽気タービン101によって発電機102を回転させて発電を行う蒸気発電プラント100では、抽気タービン101に接続された抽気配管110によって、抽気タービン101内の蒸気の一部を抽気して抽気蒸気利用先にこの抽気蒸気を送る。
【0012】
抽気タービン101に蒸気を送る主蒸気配管103には、主蒸気加減弁104が介挿されており、この主蒸気加減弁104によって、抽気タービン101に送る蒸気の制御を行う。
【0013】
また、抽気配管110には、抽気加減弁111が介挿されている。抽気配管110の抽気加減弁111の下流側には、圧力発信器(圧力検出器)112が設けられており、圧力発信器112からの抽気圧力信号1は、タービン制御装置113の抽気圧力制御回路114に入力される。そして、抽気圧力制御回路114は、圧力発信器112からの抽気圧力信号1に基づき、この抽気圧力が所定の設定値になるように、抽気加減弁開度指令信号2を生成し、抽気加減弁111の開度を調整する。
【0014】
図9に示すように、タービン制御装置113の抽気圧力制御回路114は、抽気圧力設定器120を具備している。そして、減算器にて算出される、抽気圧力設定器120から出力される抽気圧力設定値と、圧力発信器112からの抽気圧力信号1との偏差に基づいて、PID制御等によって、抽気圧力が抽気圧力設定値となるように、抽気加減弁開度指令信号2を出力して抽気加減弁111の開度を調整する。
【0015】
次に、
図1、
図2を参照して実施形態に係る抽気制御装置及び抽気制御方法について説明する。なお、
図8、
図9に示した構成と対応する構成については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、実施形態の蒸気発電プラント200では、抽気配管110の抽気加減弁111及び圧力発信器(圧力検出器)112の下流側には、抽気流量を検出するための流量発信器(流量検出器)201及び抽気ヘッダー圧力を検出するための圧力発信器(圧力検出器)202が設けられている。
【0017】
また、蒸気発電プラント200は、抽気制御回路204を有する抽気制御装置203を具備している。そして、流量発信器201からの抽気流量信号3と、圧力発信器202からの抽気ヘッダー圧力信号4は、抽気制御装置203の抽気制御回路204に入力される。そして、抽気制御回路204からは、圧力設定増信号5、圧力設定減信号6が出力され、これらの信号が抽気圧力制御回路114に入力される構成になっている。
【0018】
図2は、本実施形態における抽気制御回路204及び抽気圧力制御回路114の概略構成を示す図である。同図に示すように、抽気制御回路204は、抽気流量設定器205を具備している。抽気流量設定器205は、抽気流量の設定値を変更可能としており、指定された抽気流量の設定値を出力する。また、抽気制御回路204には、前述した流量発信器201からの抽気流量信号3が入力され、減算器にて抽気流量設定値との偏差が算出される。
【0019】
減算器にて算出された上記偏差は、負側偏差検出器206及び正側偏差検出器207に入力される。そして、上記偏差が負、即ち抽気流量信号3が設定値よりも小さい場合は、負側偏差検出器206から圧力設定増信号5が出力され、上記偏差が正、即ち抽気流量信号3が設定値よりも大きい場合は正側偏差検出器207から圧力設定減信号6が出力される。なお、負側偏差検出器206及び正側偏差検出器207は、不感帯が設定できるようになっている。
【0020】
また、前述したとおり、抽気制御回路204には、圧力発信器202からの抽気ヘッダー圧力信号4が入力される。抽気ヘッダー圧力信号4は、下限圧力検出器208及び上限圧力検出器209に入力される。そして、抽気ヘッダー圧力信号4が下限圧力以下の場合は圧力設定増信号5が出力され、抽気ヘッダー圧力信号4が上限圧力以上の場合は圧力設定減信号6が出力される。
【0021】
抽気ヘッダー圧力信号4が、下限圧力及び上限圧力の何れをも超えていない場合(下限圧力と上限圧力の間の圧力値の場合)は、抽気流量設定器205からの抽気流量設定値と抽気流量信号3との偏差に基づいて生成された、圧力設定増信号5及び圧力設定減信号6が、抽気圧力制御回路114に入力される。そして、所望の抽気流量が得られるように、抽気圧力設定器120の圧力設定値が変更される。
【0022】
一方、抽気ヘッダー圧力信号4が、使用下限圧力以下又は使用上限圧力以上の場合は、負側偏差検出器206からの圧力設定増信号5及び正側偏差検出器207からの圧力設定減信号6はAND回路にて遮断される。そして、使用下限圧力検出器208からの圧力設定増信号5、又は使用上限圧力検出器209からの圧力設定減信号6が、抽気圧力制御回路114に入力されて抽気圧力設定器120の圧力設定値が変更される。この場合、抽気ヘッダー圧力が、使用下限圧力と使用上限圧力との間の範囲内となるように、抽気圧力設定器120の圧力設定値が変更されて圧力制御が行われる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、抽気流量設定器205からの抽気流量設定値と抽気流量信号3との偏差に基づいて、抽気圧力制御回路114の抽気圧力設定器120の圧力設定値を変更することにより、抽気流量の制御を行うことができる。この場合、既設のプラント等においても、新たに制御弁等を設けることなく、流量発信器201及び抽気制御装置203(抽気制御回路204)等の制御系の追加のみで抽気流量の制御を容易に実現することができる。
【0024】
また、上記実施形態の抽気制御方法は、抽気蒸気の圧力を設定する抽気圧力設定器120からの抽気圧力設定値と、圧力発信器112からの抽気圧力信号1との偏差に基づいて抽気加減弁111の開度を調整する抽気圧力制御ステップ。及び、抽気流量を設定する抽気流量設定器205からの抽気流量設定値と、流量発信器201からの抽気流量信号3との偏差に基づいて、抽気圧力設定器120の抽気圧力設定値を変更する抽気流量制御ステップを有する。これによって、既設のプラント等においても、新たに制御弁等を設けることなく、抽気流量の制御を容易に実現することができる。
【0025】
次に、
図3、
図4を参照して、上述した蒸気供給プラントの抽気制御方法及び抽気制御装置を、複数の蒸気発電プラント200a,200b,200cの抽気タービン101a,101b,101cからの抽気制御に適用した場合について説明する。なお、
図3、
図4において、
図1、
図2に示した構成と対応する部分には、同一の符号が付してある。この場合、各蒸気発電プラント200a,200b,200cの夫々の抽気配管110a,110b,110cに、圧力発信器(圧力検出器)112a,112b,112c及び流量発信器(流量検出器)201a,201b,201cが設けられている。また、蒸気発電プラント200a,200b,200cからの抽気が合流する共通ヘッダーに、ここの圧力を検出するための圧力発信器(圧力検出器)202が設けられている。この圧力発信器202の抽気ヘッダー圧力信号4は、各抽気制御回路部204a,204b,204cに入力される。なお、
図3、
図4においては、簡略化するため、3台の抽気タービン101a,101b,101cから抽気する場合について示してあるが、抽気蒸気源の数は、3に限定されるものではなく、2又は4以上であってもよい。
【0026】
図4は、
図3に示した蒸気供給プラントにおける制御系の構成を模式的に示すものである。
図4に示すように、この制御系は、抽気タービン101a,101b,101cに対応して、抽気圧力制御回路114a,114b,114c及び抽気制御回路部204a,204b,204cを具備している。この他に、全体の抽気量を制御するための共通抽気制御部300を具備している。すなわち、この制御系では、各抽気タービン101a,101b,101c毎に設けられた抽気制御回路部204a,204b,204cと、共通抽気制御部300とによって抽気制御装置が構成されている。なお、
図4中縦に記載された破線の左側が抽気制御装置の構成を示しており、右側がタービン制御装置の構成を示している。
【0027】
共通抽気制御部300は、抽気タービン101a,101b,101cからのトータルの抽気流量を所望の値に設定するためのトータル抽気流量設定器301を具備している。このトータル抽気流量設定器301から出力されるトータル抽気流量設定値には、夫々分配比P1,P2,P3が乗じられ、抽気タービン101a,101b,101cの夫々の抽気流量設定値7が算出され、これらが抽気制御回路部204a,204b,204cに入力される。
【0028】
そして、前述した実施形態の場合と同様に、抽気制御回路部204a,204b,204cは、共通抽気制御部300から入力された、夫々の分配比P1,P2,P3が乗じられた抽気流量設定値7に基づいて、抽気圧力制御回路114a,114b,114cの抽気圧力設定器120a,120b,120cの圧力設定値を増減し、夫々の抽気加減弁開度示指令信号2により抽気加減弁111a,111b,111cの開度を調整して抽気タービン101a,101b,101cからの抽気蒸気流量を調整する。これによって、抽気タービン101a,101b,101cからのトータル抽気流量が設定値となるように制御が行われる。
【0029】
次に、
図5を参照してユニット分配比自動補正回路について説明する。前述したとおり、複数の抽気供給源からの抽気蒸気のトータル抽気流量が所定量になるよう制御する場合、予め設定された分配比に基づいて、各抽気供給源からの抽気流量が制御される。ユニット分配比自動補正回路は、このような状態において、例えば抽気タービンの一つがトリップしてここからの抽気蒸気が得られなくなったような場合に、残りの各抽気供給源に対する分配比を自動補正して、抽気蒸気のトータル抽気流量を維持できるようにするためのものである。
【0030】
図5では、総数がmのユニット(抽気供給源)1,2,3…mから抽気を行っている場合の、ユニット1に設けられたユニット分配比自動補正回路500について示してあるが、この場合、他のユニット2,3…mについても、同様な構成のユニット分配比自動補正回路が設けられる。
【0031】
図5に示す例において、ユニット1の初期分配比はA1であり、ユニット分配比自動補正回路500は、m−1個の選択スイッチT2,3…mを具備している。選択スイッチT2,3…mは、夫々加算器に接続されており、選択スイッチT2,3…mからの出力が、初期分配比A1に加算される。これらの選択スイッチT2,3…mには、他のユニット2,3…mから運転中であるか否かを示す信号が入力され、運転中の場合、各加算器に対して0が出力される。したがって、ユニット1の分配比は、初期分配比A1が維持された状態で運転される。
【0032】
一方、運転中から運転停止状態になったユニットがある場合、運転停止状態になったユニットについては、対応する選択スイッチT2,3…mが作動し、補正分配比であるS2,3…mが加算器に対して出力されるようになる。例えば、ユニット2の抽気タービンがトリップしてここからの抽気蒸気が得られなくなった場合、選択スイッチT2が作動し、選択スイッチT2から補正分配比S2が加算器に対して出力される。この、補正分配比S2が初期分配比A1に対して加算され、これがユニット1の補正後の分配比P1となる。
【0033】
ここで、
図5に示す補正分配比S2,3…mは、当該ユニット(2,3…m)が停止した際の抽気量バックアップ用補正値である。なお、最終段の選択スイッチTmの後段に、増減変化率の上限を設定する変化率制限器501が設けられており、増減変化率の上限が制限される。
【0034】
ユニットYが停止した場合の、ユニット番号Xでの補正分配比S(Y)は、以下の算出式で算出される(X,Yはユニット番号)。
S(Y)=A(Y)×A(X)/(1−A(Y))
例えば、ユニット1におけるS2は、以下の算出式で算出される。
S2=A2×A1/(1−A2)
【0035】
なお、上記説明では、ユニット1の補正後の分配比P1について説明したが、運転停止となったユニット2以外の他のユニット3…mにおいても、同様にして補正後の分配比P3…mが算出される。
【0036】
図6は、大規模蒸気供給プラントの系統構成の一例を示す図である。同図に示すように、大規模蒸気供給プラントにおいては、例えば、ゴミ焼却施設1からの抽気、複数の抽気復水タービン1〜mからの抽気、複数の抽気背圧タービン1〜nからの抽気、地熱タービンの熱交換器からの抽気が集められる。そして、集められた蒸気が、例えば、造水プラント(C−1)、工場送気(C−2)、地域供給(C−3)等に送られて使用される。
【0037】
なお、上記抽気供給源のうち、抽気背圧タービン1〜n及び地熱タービンは、抽気流量が一定の抽気一定運用とされる。一方、ゴミ焼却施設(T1抽気流量設定値7)、抽気復水タービン1(T2抽気流量設定値7)……抽気復水タービンm(Tm抽気流量設定値7)の抽気流量は、抽気需要流量によって変動させる抽気変動運用とされている。
【0038】
このような抽気一定運用及び抽気変動運用を行う際に、上述した実施形態における蒸気供給プラントの抽気制御装置及び抽気制御方法を用いれば、各抽気供給源からの抽気を、流量制御によって行うことができる。なお、各抽気供給源には、流量発信器(流量検出器)FT−T1,FT−T2,FT−T3,FT−Tm,FT−T4,FT−Tn,FT−T5等を設けておく必要がある。流量発信器FT−T1,FT−T2,FT−T3,FT−Tmでは、抽気流量信号(変動運用ユニット分)3が検出される。また、流量発信器FT−T4,FT−Tn,FT−T5では、抽気流量信号(固定運用ユニット分)8が検出される。また、抽気蒸気を使用する造水プラント(C−1)、工場送気(C−2)、地域供給(C−3)にも、流量発信器(流量検出器)FT−C1,FT−C2,FT−C3を設けておく必要がある。流量発信器FT−C1,FT−C2,FT−C3では、抽気流量信号(需要分)9が検出される。
【0039】
上述したように、各抽気供給源からの抽気を、流量制御によって行うことができるので、抽気流量と抽気を行った時間とから、各蒸気源から抽気した蒸気量を求めることができる。これによって、例えば、各蒸気源を運営する事業者に、抽気蒸気量に応じた料金の支払いが必要とされる場合等にも対応することができる。
【0040】
図7は、
図6に示したような大規模蒸気供給プラントの系統構成において、抽気量を制御する抽気制御装置の概略構成を示すものであり、抽気制御装置は共通抽気制御部700と、各抽気制御回路部1(204a)、抽気制御回路部2(204b)、……抽気制御回路部m(204m)とから構成されている。すなわち、
図7中縦に記載された破線の左側が抽気制御装置の構成を示しており、右側がタービン制御装置の構成を示している。なお、
図7では、各抽気供給源に設けられた抽気制御回路部のうち、簡略化して3つの抽気制御回路部1,2,mのみ図示してある。
【0041】
図7に示すように、抽気蒸気を使用する造水プラント(C−1)、工場送気(C−2)、地域供給(C−3)等から送信される抽気流量信号(需要分)9は、共通抽気制御部700の加算器701にて合算され、最高値と最低値を制限する制限器702を介して出力される。
【0042】
そして、この出力信号と、トータル抽気流量設定器703から出力されている現在のトータル抽気流量設定値との偏差が算出される。この偏差が負側偏差検出器704及び正側偏差検出器705に入力される。そして、偏差が負の場合は、負側偏差検出器704からトータル抽気流量設定器703へ流量設定増信号10が出力される。一方、偏差が正の場合は、正側偏差検出器705から流量設定減信号11が出力される。このようにして、抽気流量信号(需要分)9に応じてトータル抽気流量設定器703のトータル抽気流量設定値が変更される。
【0043】
トータル抽気流量設定器703から出力されるトータル抽気流量設定値から、抽気一定運用の蒸気供給源の抽気総流量(T−4,T−n,T−5)が減算器にて減算され、抽気変動運用の蒸気供給源の抽気総流量が算出される。そして、これに各抽気供給源の分配比P1,2…mが乗算され、抽気流量設定値7として各抽気供給源の抽気制御回路部1,2…mに入力される。
【0044】
各抽気制御回路部1,2…mでは、入力された抽気流量設定値7と、
図6に示した流量発信器(流量検出器)FT−T1,FT−T2,…FT−Tmにて測定される抽気流量信号3との偏差に基づいて、抽気圧力設定器120a,120b…120mの抽気圧力設定値を変更して前述したように、抽気蒸気流量を制御する。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。