(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875485
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】性能制限構造を備えたバット機構およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 59/50 20150101AFI20210517BHJP
A63B 102/18 20150101ALN20210517BHJP
【FI】
A63B59/50
A63B102:18
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-193832(P2019-193832)
(22)【出願日】2019年10月24日
(65)【公開番号】特開2020-65935(P2020-65935A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2020年1月28日
(31)【優先権主張番号】62/749,759
(32)【優先日】2018年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 航平
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ルウェリン
(72)【発明者】
【氏名】トゥ・バン・グエン
(72)【発明者】
【氏名】リー・チ−フン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・レンチン
【審査官】
田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第205460788(CN,U)
【文献】
特表2013−514858(JP,A)
【文献】
特開2004−073842(JP,A)
【文献】
特開2005−305146(JP,A)
【文献】
特開平11−276652(JP,A)
【文献】
実開昭62−180475(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A63B59/50−59/59
A63B69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バットであって、
中空バレルと、
前記中空バレル内に配置された内部アセンブリとを備え、前記内部アセンブリは、
前記中空バレル内に長手方向に配置された複数の剛性ロッドと、
位置合わせインサートとを含み、前記位置合わせインサートは、
前記中空バレルの内径にほぼ等しい外径と、
複数の貫通穴とを含み、前記複数の貫通穴は各々が、(i)前記位置合わせインサートを貫通して軸方向に延在しており、(ii)前記位置合わせインサートの中心軸から共通の半径分だけずらされて、前記複数の貫通穴が前記共通の半径に対応する円周に沿って等距離に配置されるように位置決めされており、(iii)対応する剛性ロッドの一部分を収容するように構成されており、前記内部アセンブリはさらに、
変形可能なリングを含み、前記変形可能なリングは、
前記中空バレルの前記内径よりも小さな外径を有する外壁と、
前記共通の半径に対応する前記円周を中心として等距離に配置された複数の穴と、中空の内側部分とを含み、前記穴の各々は、対応する剛性ロッドを少なくとも部分的に収容するように構成されており、前記バットはさらに、
前記中空バレルの端部内に嵌まり込むように構成されたエンドキャップを備え、前記エンドキャップは、前記共通の半径に対応する前記円周を中心として等距離に配置された複数の窪みを有し、前記複数の窪みの各々は対応する剛性ロッドの端部を収容するように構成されており、
前記エンドキャップおよび前記位置合わせインサートは、前記バットの静止時に前記複数の剛性ロッドを予め定められた構成で維持するように構成されており、前記予め定められた構成は平行な前記複数の剛性ロッドの各々に対応しており、
前記複数の剛性ロッドは、前記バットの静止時に、前記変形可能なリングの前記外壁に沿った各々の個所が前記中空バレルの内面から予め定められた隙間距離を空けて配置されるように、前記変形可能なリングを、前記中空バレル内で予め定められた浮かせた位置で維持するように構成される、バット。
【請求項2】
物体とのインパクトから力を受けるのに応じて、前記中空バレルは、前記中空バレルの前記内面が前記変形可能なリングの前記外壁と接触するように、内側に屈曲するように構成される、請求項1に記載のバット。
【請求項3】
前記中空バレルは、前記インパクトからの前記力のうち少なくともいくらかを前記変形可能なリングに伝えるように構成されており、
前記変形可能なリングは、
前記インパクトからの前記力のうち前記少なくともいくらかを受けると元の形状から変形した形状に少なくとも部分的に変形し、
前記変形した形状から前記元の形状に戻るように構成される、請求項2に記載のバット。
【請求項4】
前記変形可能なリングはさらに、前記変形可能なリングが前記変形した形状から前記元の形状に戻るのに応じて、前記中空バレルに反発力を伝えるように構成される、請求項3に記載のバット。
【請求項5】
前記位置合わせインサートは複数のローブを有する、請求項1に記載のバット。
【請求項6】
前記位置合わせインサートはEVA発泡体を含む、請求項1に記載のバット。
【請求項7】
前記バットは複数の変形可能なリングを含む、請求項1に記載のバット。
【請求項8】
前記変形可能なリングはアルミニウムを含む、請求項1に記載のバット。
【請求項9】
前記変形可能なリングは複数の内側ローブを含み、前記複数の穴の各々は、前記複数の内側ローブのうち対応する内側ローブ内に少なくとも部分的に配置される、請求項1に記載のバット。
【請求項10】
前記複数の剛性ロッドのうち少なくともいくつかは炭素を含む、請求項1に記載のバット。
【請求項11】
前記複数の剛性ロッドのうち少なくともいくつかは中空である、請求項1に記載のバット。
【請求項12】
前記複数の剛性ロッドのうち少なくともいくつかは実質的に中実である、請求項1に記載のバット。
【請求項13】
前記エンドキャップは、前記中空バレルのノッチ内に少なくとも部分的に嵌まり込むように構成された突起を含み、前記ノッチは、前記中空バレルのうち、前記中空バレルの遠位端に近接する内壁上に配置されており、前記突起と前記ノッチとは噛み合うように構成される、請求項1に記載のバット。
【請求項14】
バットを製造するための方法であって、
中空バレルを設けるステップと、
内部アセンブリを組立てるステップとを備え、前記内部アセンブリを組立てるステップは、
前記中空バレルの内径とほぼ等しい外径を有する位置合わせインサートにおける複数の貫通穴のうち対応する貫通穴に複数の剛性ロッドの各々を挿入するステップによって実行され、前記複数の貫通穴の各々は、(i)前記位置合わせインサートを貫通して軸方向に延在しており、(ii)前記位置合わせインサートの中心軸から共通の半径分だけずらされて、前記複数の貫通穴が前記共通の半径に対応する円周に沿って等距離に配置されるように位置決めされており、前記内部アセンブリを組立てるステップはさらに、
前記中空バレルの前記内径よりも小さな外径を有する外壁を含む変形可能なリングにおける複数の穴のうち対応する穴に前記複数の剛性ロッドの各々を挿入するステップによって実行され、前記複数の穴は、前記共通の半径に対応する前記円周を中心として等距離に配置されており、前記変形可能なリングは中空の内側部分を含み、前記内部アセンブリを組立てるステップはさらに、
エンドキャップにおける複数の窪みのうち対応する窪みに前記複数の剛性ロッドの各々の端部を挿入するステップによって実行され、前記複数の窪みは、前記共通の半径に対応する前記円周を中心として等距離に配置されており、前記内部アセンブリを組立てるステップはさらに、
前記中空バレルの端部に前記エンドキャップを挿入するステップによって実行される、方法。
【請求項15】
前記内部アセンブリを組立てるステップは、前記バットの静止時に前記複数の剛性ロッドが予め定められた構成となるように前記複数の剛性ロッドを位置決めするステップを含み、前記予め定められた構成は、平行な前記複数の剛性ロッドの各々に対応している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記内部アセンブリを組立てるステップは、前記バットの静止時に、前記変形可能なリングの前記外壁に沿った各々の個所が前記中空バレルの内面から予め定められた隙間距離を空けて配置されるように、前記変形可能なリングを前記中空バレル内で予め定められた浮かせた位置に位置決めするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
一般に、バットの性能は、インパクト時にバットがボールに力を与えることができる効率に関係している。バットの製造業者は、しばしば、バットの性能を測定するためにバットの反発係数(coefficient of restitution:COR)を評価する。従来より、バットの製造業者は、典型的には、CORを高めるためにバットの性能を改善しようと努めてきた。しかしながら、今日では、バットの製造業者は、典型的には、実現可能な最高性能をもたらすバットを製造することに関心を持っているが、さまざまな競技連盟の最大性能測定基準や、競技についての他の系統化された形式に勝るものはない。
【0002】
一般に、ボールとのインパクト時にバットが被る変形が大きくなるのに相応してバットのCORが高くなる。既存のバット設計の中には、バットとボールとのインパクト時にバットが変形するのを制限することによって、課されているCOR限度をバットが上回るのを防ぐことを目的としているものもある。たとえば、バーガー(Burger)による米国特許第8,632,428号に開示されているバットは、バレル内に同軸に位置決めされた中心パイプと、ボールとのインパクト時にバットの変形を制限するための1つ以上の剛性の「ワッシャ状の」制限部材とを備える。ワッシャ状の制限部材は、バレルの内壁がワッシャ状の制限部材に接触するまでバレルを変形させることができるように、バレルの内径よりも小さい外径を有する。このため、起こり得る変形の量を制御することによって、インパクト時にバットが変形する量を制御し、これにより、バットによってもたらされる最大CORを制限することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8,632,428号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような設計はバットによってもたらされる最大CORを十分に制限し得る一方で、低インパクト力でのバットの性能を必要以上に低下させてしまう恐れがある。すなわち、より弱い力(たとえば、より低いスイング速度またはより低いボール速度)では、バットが最大COR限度を上回るのを防ぐようにバットの変形を制限することは不要であるが、ワッシャ状の制限部材の剛性および非圧縮性が高ければ、より弱い力の時にバットのバレルの変形が阻止される可能性があるので、より弱い力の時のバットの性能が不必要に低下してしまう。より特定的には、このようなバットは、3つのボール速度範囲内で実質的にさまざまに機能し得る。低速インパクト(たとえば、低速範囲)では、バレルだけが屈曲し得る。より高速(たとえば、中速範囲)では、バレルのうち1つの側面(たとえば、バレルのうちボールに当たる部分)がワッシャ状の制限部材に係合し得る。さらにより高速(たとえば、高速範囲)では、バレルのうち2つの側面(たとえば、バレルのうちボールに当たる部分およびバレルのうちインパクト位置とは正反対側にある部分)がワッシャ状の制限部材に係合し得る。高速範囲でのインパクトの場合、ワッシャ状の制限部材が持つ圧縮不可能な性質により、ワッシャ状の制限部材およびバレル機構が全体的に屈曲するのが妨げられる可能性がある。これは、特に強い力でのインパクト(たとえば、高速範囲でのボールとのインパクト)時にはバット性能にとって好ましくない可能性がある。
【0005】
したがって、高いインパクト力で所定のガイドライン設定の範囲内で性能を最大限にするとともに、同時に、より弱いインパクト力でもバットの絶対的性能を最大限にするように設計されたバットが必要とされている。本発明の実施形態が主として意図しているのはこのようなバットである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本発明の実施形態は、野球またはソフトボールのバットに関する。当該バットは、中空バレルと、1つ以上の変形可能なリングとを有する。1つ以上の変形可能なリングは、中空バレル内に長手方向に位置決めされた複数のロッドによって中空バレル内で浮かんでいる。複数のロッドの各々は、中空バレルの中心軸から共通の半径分だけずらされ得る。変形可能なリングは、中空バレルの内径よりも小さい直径を有する実質的に円形の外壁を有し得る。変形可能なリングはまた、共通の半径に対応する円周を中心として等距離に位置決めされた複数の穴を有し得る。各々の穴は、3つ以上のロッドのうち1つのロッドを少なくとも部分的に収容している。このため、変形可能なリングは、バットの静止時に中空バレルと同軸に位置合わせされるように位置決めすることができる。実施形態はまた、エンドキャップを含み得る。エンドキャップは、その内部を部分的に貫通して延在する複数の穴を有する。各々のエンドキャップ穴はロッドの端部を少なくとも部分的に収容している。
【0007】
開示された技術に従うと、バットは、中空バレルと、中空バレル内に配置された内部アセンブリとを含み得る。内部アセンブリは、中空バレル内に長手方向に配置された複数の剛性ロッドと、位置合わせインサートと、変形可能なリングと、エンドキャップとを含み得る。位置合わせインサートは、中空バレルの内径にほぼ等しい外径と、複数の貫通穴とを有し得る。複数の貫通穴は各々、(i)位置合わせインサートを貫通して軸方向に延在しており、(ii)位置合わせインサートの中心軸から共通の半径分だけずらされて、複数の貫通穴が共通の半径に対応する円周に沿って等距離に配置されるように位置決めされており、(iii)対応する剛性ロッドの一部分を収容するように構成されている。変形可能なリングは、中空バレルの内径よりも小さな外径を有する外壁と、共通の半径に対応する円周を中心として等距離に配置された複数の穴とを含み得る。変形可能なリングの穴の各々は、対応する剛性ロッドを少なくとも部分的に収容するように構成され得る。エンドキャップは、中空バレルの端部内に嵌まり込むように構成され得る。エンドキャップは、共通の半径に対応する円周を中心として等距離に配置された複数の窪みを有し得る。各々の窪みは、対応する剛性ロッドの端部を収容するように構成され得る。エンドキャップおよび位置合わせインサートは、バットの静止時に複数の剛性ロッドを予め定められた構成で維持するように構成され得る。予め定められた構成は、平行な複数の剛性ロッドの各々に対応し得る。複数の剛性ロッドは、バットの静止時に、変形可能なリングの外壁に沿った各々の個所が中空バレルの内面から予め定められた隙間距離を空けて配置されるように、変形可能なリングを中空バレル内で予め定められた浮かせた位置で維持するように構成され得る。
【0008】
中空バレルは、中空バレルの内面が変形可能なリングの外壁と接触するように、物体とのインパクトから力を受けるのに応じて内側に屈曲するように構成され得る。
【0009】
中空バレルは、インパクトから受ける力のうち少なくともいくらかを変形可能なリングに伝えるように構成され得る。変形可能なリングは、インパクトからの力のうち少なくともいくらかを受けると元の形状から変形した形状に少なくとも部分的に変形するように構成され得る。変形可能なリングは、変形した形状から元の形状に戻るように構成され得る。
【0010】
変形可能なリングは、変形可能なリングが変形した形状から元の形状に戻るのに応じて、中空バレルに反発力を伝えるように構成され得る。
【0011】
位置合わせインサートは複数のローブを有し得る。
位置合わせインサートはEVA発泡体を含み得る。
【0012】
バットは複数の変形可能なリングを含み得る。
変形可能なリングはアルミニウムを含み得る。
【0013】
変形可能なリングは複数の内側ローブを含み得る。変形可能なリングの複数の穴の各々は、複数の内側ローブのうち対応する内側ローブ内に少なくとも部分的に配置され得る。
【0014】
変形可能なリングは中空の内側部分を含み得る。
複数の剛性ロッドのうち少なくともいくつかは炭素を含み得る。
【0015】
複数の剛性ロッドのうち少なくともいくつかは中空であり得る。
複数の剛性ロッドのうち少なくともいくつかは実質的に中実であり得る。
【0016】
エンドキャップは、中空バレルのノッチ内に少なくとも部分的に嵌まり込むように構成された突起を含み得る。ノッチは、中空バレルのうち、当該中空バレルの遠位端に近接する内壁上に配置され得る。突起とノッチとは噛み合うように構成され得る。
【0017】
開示された技術に従うと、バットを製造するための方法は、中空バレルを設けるステップと、内部アセンブリを組立てるステップとを含み得る。内部アセンブリを組立てるステップは、中空バレルの内径とほぼ等しい外径を有する位置合わせインサートにおける複数の貫通穴のうち対応する貫通穴に複数の剛性ロッドの各々を挿入するステップを含み得る。複数の貫通穴の各々は、位置合わせインサートを貫通して軸方向に延在し得るとともに、位置合わせインサートの中心軸から共通の半径分だけずらされて、複数の貫通穴が共通の半径に対応する円周に沿って等距離に配置されるように位置決めされ得る。内部アセンブリを組立てるステップはさらに、中空バレルの内径よりも小さな外径を有する外壁を含む変形可能なリングにおける複数の穴のうち対応する穴に複数の剛性ロッドの各々を挿入するステップを含み得る。複数の穴は、共通の半径に対応する円周を中心として等距離に配置され得る。内部アセンブリを組立てるステップはさらに、エンドキャップにおける複数の窪みのうち対応する窪みに複数の剛性ロッドの各々の端部を挿入するステップを含み得る。エンドキャップにおける複数の窪みは、共通の半径に対応する円周を中心として等距離に配置され得る。内部アセンブリを組立てるステップはさらに、中空バレルの端部にエンドキャップを挿入するステップを含み得る。
【0018】
内部アセンブリを組立てるステップは、バットの静止時に複数の剛性ロッドが予め定められた構成となるように複数の剛性ロッドを位置決めするステップを含み得る。予め定められた構成は、平行な複数の剛性ロッドの各々に対応し得る。
【0019】
内部アセンブリを組立てるステップは、バットの静止時に、変形可能なリングの外壁に沿った各々の個所が中空バレルの内面から予め定められた隙間距離を空けて配置されるように、変形可能なリングを中空バレル内で予め定められた浮かせた位置に位置決めするステップを含み得る。
【0020】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面に関連付けて以下の明細書を読むことでより明らかになるだろう。
【0021】
図面の簡単な説明
ここで、添付の図面を参照するが、これらは必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】開示された技術のいくつかの実施形態に従った、明瞭さのために透過的に描かれたバレルを備えたバットを示す等角図である。
【
図2】開示された技術のいくつかの実施形態に従った、バットの線図を示す分解図である。
【
図3】開示された技術のいくつかの実施形態に従った、バットの部分的な側断面図である。
【
図4A】開示された技術のいくつかの実施形態に従った、変形可能なリングを示す等角図である。
【
図4B】開示された技術のいくつかの実施形態に従った、
図4Aに示された変形可能なリングの線図である。
【
図4C】開示された技術のいくつかの実施形態に従った変形可能なリングを示す線図である。
【
図4D】開示された技術のいくつかの実施形態に従った変形可能なリングを示す線図である。
【
図5A】開示された技術のいくつかの実施形態に従った変形可能なリングを示す断面図である。
【
図5B】開示された技術のいくつかの実施形態に従った変形可能なリングを示す断面図である。
【
図6A】ここで開示される技術の或る実施形態を援用したバットの性能を、先行技術の2本のバットの性能と比較して示すグラフである。
【
図6B】ここで開示される技術の或る実施形態を援用したバットの性能を、先行技術の2本のバットの性能と比較して示すグラフである。
【
図7】開示された技術のいくつかの実施形態に従った、先行技術の剛性ワッシャと変形可能なリングとについての圧縮および変位の比較を例示するグラフである。
【
図8】開示された技術のいくつかの実施形態に従った、中空バレル内の変形可能なリングを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
この開示の全体にわたって、特定の実施形態の例は、複数のロッドと変形可能なリングとを含むバットに関して記載されている。開示された技術のいくつかの実施形態は、添付の図面に関連付けて以下においてより十分に記載されるだろう。しかしながら、この開示された技術は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、ここに記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。開示された技術のさまざまな要素を構築するものとして以下に記載される構成要素は、限定的ではなく例示的なものとして意図されている。以下に記載される構成要素と同じまたは同様の機能を実行するであろう多くの好適な構成要素は、開示された電子機器および方法の範囲内で採用されるように意図されている。ここに記載されないこのような他の構成要素は、たとえば、開示された技術の開発後に開発された構成要素を含み得るが、これらに限定されない。
【0024】
以下の記載においては複数の具体的な詳細が述べられている。しかし、開示された技術の実施形態がこれらの具体的な詳細なしでも実施され得ることが理解されるはずである。他の場合には、周知の方法、構造および技術がこの記載についての理解を曖昧にするのを避けるために、詳細には示されない。「一実施形態」、「或る実施形態」、「実施形態の例」、「いくつかの実施形態」、「特定の実施形態」、「さまざまな実施形態」などと言及している場合、それらは、そのように記載される開示技術の実施形態が特定の特徴、構造または特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造または特性を含んでいるとは限らないことを示している。さらに、「一実施形態における」という句を繰返し使用しているが、これは、同じ実施形態を指している場合もあるが、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。
【0025】
明細書および請求項全体にわたって、以下の語は、文脈が明確に規定した場合を除き、少なくとも、この明細書中において明示的に関連付けられた意味を採るものとする。「または」という語は包括的な「または」を意味するように意図されている。さらに、不定冠詞「a」または「an」および定冠詞「the」は、特に規定のない限り、または単数形を指していることが文脈から明らかにならない限り、1つ以上を意味するように意図されている。
【0026】
特に規定のない限り、共通の物体を説明するために順序を示す形容詞「第1の」、「第2の」、「第3の」などを使用する場合、これは、単に、同様の物体の別の例を指しており、そのように記載された物体が、時間的に、空間的に、順位付けて、または他の態様で所与の順序であるべきことを示唆するようには意図されたものではないことを示しているに過ぎない。
【0027】
いくつかの実施形態に従うと、開示された技術は、野球用バットまたはソフトボール用バットなどのバットに関する。いくつかの実施形態においては、バットは、中空バレルおよび内部アセンブリを含み得る。内部アセンブリは、たとえば、中空バレルの変形(特に、ボールとのインパクト時における中空バレルの変形)に抵抗するように構成されている。特定の実施形態においては、内部アセンブリは、中空バレルの内壁が変形可能なリングの外側端縁または表面と接触したときのバットの変形に抵抗するが、この変形を完全には妨げないように構成され得る。特定の実施形態においては、内部アセンブリは、中空バレル内に長手方向に延在する複数のロッドによって中空バレル内で浮かされている変形可能なリングを含み得る。
【0028】
図1は、開示された技術のいくつかの実施形態に従ったバット100を示す等角図である。バット100はバレル110を含み得る。バレル110は、バット100の内部構成要素を明確に示すために
図1において透過的に示されている。いくつかの実施形態においては、バット100は内部アセンブリ120を含み得る。内部アセンブリ120は、1つ以上の変形可能なリング130および複数のロッド140を含み得る。変形可能なリング130は、比較的強いインパクト力でバレルが屈曲するのを制限する(が妨げない)一方で、バレル110が比較的弱いインパクト力でも自由に屈曲することを可能にするように構成され得る。特定の実施形態においては、変形可能なリング130は、バレル110の長さに沿った、バット100の最高性能機能に対応する位置に、またはバットの「スイートスポット」に、配置することができる。いくつかの実施形態は単一の変形可能なリング130を含んでいてもよく、他の実施形態は、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ以上の変形可能なリング130を含み得る。変形可能なリング130の数を増やすことにより、ボールとのインパクト時の中空バレル110の変形をより一定に制御することが可能になるが、変形可能なリング130の数を増やすことにより、バット100の全重量が増えてしまう可能性もある。これは、バット100の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。バット100の外側直径周りの変形を均一にするために、いくつかの実施形態は3つ以上のロッド140を含み得る。たとえば、いくつかの実施形態は、3つ、4つ、5つまたは6つ以上のロッド140を含み得る。使用される変形可能なリング130の数と同様に、ロッド140の数を増やすと、変形可能なリング130の位置的安定性を高めることができるが、ロッド140の数を増やすと、バット100の全重量が増えてしまう可能性がある。これは、バット100の性能に悪影響を及ぼす恐れがある。したがって、いくつかの実施形態は、わずかに2つのロッド140を含み得る。これにより、バット100の全重量を減らすことができるが、こうすることによって、バット100の外側直径周りの変形の均一性が犠牲になる可能性がある。いくつかの実施形態はまた、位置合わせインサート150を含み得る。位置合わせインサート150は、中空バレル110の変形を制限し得るか、または中空バレル110の変形に影響を及ぼし得ない。いくつかの実施形態に従うと、ロッド140は中実であり得る。いくつかの実施形態においては、ロッド140は、
図2に示されるように、実質的に中空であってもよい。いくつかの実施形態に従うと、ロッド140はカーボンチューブを含み得る。特定の実施形態においては、ロッド140は、金属、樹脂、炭素またはそれらの何らかの混合物を含み得る。いくつかの実施形態においては、各々のロッド140は、約1mmから約50mmの範囲内の直径を有し得る。たとえば、いくつかの実施形態は、約5mmから約30mmの範囲内の直径を有するロッド140を含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態においては、位置合わせインサート150は中空バレル110の内側形状を反映した形状を有し得る。たとえば、位置合わせインサート150は実質的に円筒形状を有し得る。代替的には、位置合わせインサート150は円錐台形状を有し得る。位置合わせインサート150は、中空バレル110の内側直径と実質的に等しい外側直径を有し得る。位置合わせインサート150はその内部を軸方向に貫通して延在する複数の穴を有し得る。位置合わせインサート150の各穴は、位置合わせインサート150の中心から共通の半径に位置決めされ得る。特定の実施形態においては、これらの穴はこの共通の半径に対応する円周を中心として等距離に位置決めされ得る。位置合わせインサート150の各穴は、対応するロッド140を収容するような寸法にすることができる。位置合わせインサート150は、軸方向に延在する複数のスリットを含み得る。各々のスリットは、位置合わせインサート150の対応する穴と位置合わせすることができる。したがって、位置合わせインサート150の各穴は、各ロッド140がスリット内を通過し径方向内側に向かって対応する穴に通されるように、スリットを通じてロッド140を収容するように構成され得る。
【0030】
位置合わせインサート150は他の形状を有し得る。たとえば、位置合わせインサート150は、
図1に示されるように、隣接する窪み同士の間に形成された複数のローブを有し得る。各々の窪みは内部アセンブリ120のロッド140に対応し得る。各々の窪みは対応するロッド140のうち少なくとも一部分を収容するように構成され得る。いくつかの実施形態においては、形状にかかわらず、位置合わせインサート150は、予め定められた配列および/または位置でロッド140を実質的に維持するように構成され得る。加えて、位置合わせインサート150はまた、ボールを打つバット100の音に関する主観的な利点を提供し得る(すなわち、位置合わせインサート150を備えたバット100でボールを打つ音は、位置合わせインサート150のないバット100でボールを打つ音よりも一般の観客にとってより心地よいものとなり得る)。いくつかの実施形態においては、位置合わせインサート150は軽量であるが頑丈な材料を含み得る。いくつかの実施形態においては、位置合わせインサート150は、ポリマー、コポリマーおよび/または発泡体、たとえばEVA発泡体、を含み得る。位置合わせインサート150は、(たとえば
図1に示されるような)中心穴を含み得る。これにより、位置合わせインサート150の重量(およびこれにより、バット100の全重量)を減らすことができる。中心穴は、内部アセンブリ120の他の構成要素および/またはバット100の他の構成要素と位置合わせされたロッド140を維持するために必要とされる位置合わせインサート150の所要の剛性に悪影響を及ぼすことなく重量が減らされるような寸法にすることができる。特定の実施形態は位置合わせインサート150を省くこともできる。いくつかの実施形態においては、バット100はエンドキャップ160を含み得る。以下により十分に記載されるように、いくつかの実施形態においては、エンドキャップ160は、バレル110の遠位端にしっかりと嵌まり込むように構成され得るとともに、複数のロッド140の各々の端部を収容して、各ロッド140の端部を予め定められた配列および/または位置で維持するように構成され得る。
【0031】
図2を参照すると、変形可能なリング130は円形の外壁232および複数の穴234を含み得る。この場合、各々の穴234は少なくとも部分的にロッド140を収容するように構成されている。いくつかの実施形態においては、円形の外壁232は、中空バレル110の内径よりも小さい外径を有しているため、中空バレル110とボールとのインパクト時に、中空バレル110が、予め定められた量または予め定められた距離だけ変形してから変形可能なリング130の円形の外壁232と接触することが可能となる。いくつかの実施形態に従うと、変形可能なリング130は、中空バレル110と変形可能なリング130の円形の外壁232との接触による中空バレル110とボールとのインパクトから得られる力を受けると、少なくとも部分的に変形するように構成されている。いくつかの実施形態においては、変形可能なリング130は変形後にその元の形状に戻るように構成され得る。
【0032】
特定の実施形態に従うと、変形可能なリング130は、変形可能なリング130全体を貫通して延在する1つ以上の穴234を含み得る。各々の穴234は、(たとえば
図4A〜
図4Dに示されるように)変形可能なリング130の対応する内側ローブ436に配置され得る。いくつかの実施形態においては、変形可能なリング130の各穴234は、変形可能なリング130の中心から共通の半径に位置決めされ得る。特定の実施形態においては、複数の穴234は、この共通の半径に対応する円周を中心として等距離に位置決めされ得る。変形可能なリング130のそれぞれの穴234の位置は、位置合わせインサート150のそれぞれの穴に対応し得るとともに、位置合わせインサート150のそれぞれの穴と位置合わせされ得る。共通の半径に対応する円周が円形の外壁232の円周に必ずしも対応するわけではないことが理解されなければならない。いくつかの実施形態においては、穴234がロッド140を収容すると、変形可能なリング130は、バット100の静止時(たとえばバット100がボールを打っていない時)に、中空バレル内で浮かんだ状態で中空バレル110と同軸に位置合わせされるように、位置決めされ得る。以下においてより十分に説明されるように、変形可能なリング130の外径(すなわち、円形の外壁232の直径)が中空バレル110のうち変形可能なリング130に隣接している部分の内側直径未満であり得るので、変形可能なリング130と中空バレル110との間に隙間を形成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態においては、エンドキャップ160は、エンドキャップ160内に部分的に延在する複数の穴262を含み得る。いくつかの実施形態においては、各々の穴262はロッド140に対応し得る。
図2および
図3に示されるように、いくつかの実施形態においては、エンドキャップ160は、エンドキャップ160の内面から延在する複数の突起を含み得る。各々の突起は部分的な穴262を含み得る。これにより、エンドキャップ160を構成する材料の量を比較的より少なくすることが可能となり得る。これによりバット100の全重量を減らすことができる。
【0034】
変形可能なリング130の穴234と同様に、いくつかの実施形態においては、エンドキャップ160の各穴262は、エンドキャップ160の中心から共通の半径に位置決めされ得るとともに、特定の実施形態においては、複数の穴234は、この共通の半径に対応する円周を中心として等距離に位置決めされ得る。特定の実施形態においては、変形可能なリング130に対する共通の半径は、各ロッド140が実質的に互いと平行になるように、エンドキャップ160および/または変形可能なリング130の穴234を基準として共通の半径と実質的に等しくなり得る。いくつかの実施形態においては、各ロッド140が変形可能なリング130からエンドキャップ160に向かって長手方向に延在するのに応じて、各ロッド140が径方向外側へとますます延びるように、変形可能なリング130に対する共通の半径はエンドキャップ160に対する共通の半径よりも小さくなっていてもよい。いくつかの実施形態においては、この構成は、中空バレル110の外径が近位端から遠位端に向かって大きくなっている場合に、中空バレル110の外壁と実質的に平行な複数のロッド140を提供し得る。但し、ロッド140のこのような構成が、中空バレル110の直径が変化する実施形態に限定されないことが理解されなければならない。
【0035】
特定の実施形態においては、エンドキャップ160はまた突起264を含み得る。突起264は、中空バレル110の遠位端に近接して位置するノッチ212に対応し得る。いくつかの実施形態においては、エンドキャップ160は、恒久的に中空バレル110に取付けられ得る。特定の実施形態においては、エンドキャップは、にかわまたはエポキシなどの接着剤で中空バレルに取付けられ得る。特定の実施形態においては、エンドキャップ160は、中空バレル110に取外し可能に取付けることができる。取外し可能に取付け可能であるエンドキャップ160を含む実施形態は、複数の内部アセンブリ120およびエンドキャップ160を単一の中空バレル110に挿入することを可能にし得る。これにより、バットのさまざまな最高性能測定基準を必要とするルールによって管理されている複数の競技連盟で単一のバット100を使用することが可能となり得る。このため、内部アセンブリ120、エンドキャップ160および/またはそれらのいずれかの組合わせのさまざまな構成要素が、ここに記載される他のすべての構造とは別個に設けられるものとして企図されていることが認識されるはずである。たとえば、変形可能なリング130のさまざまな実施形態がここに記載される他のすべての構成要素とは別個に設けられ得ることが企図されている。
【0036】
図全体に示されるように、ここに開示される設計は、(たとえば、バレル110の中心軸に沿って位置する)単一のチューブまたはロッドとは対照的に複数のロッド140を利用している。このような設計は、インパクト時に変形可能なリング130をバレル110内でより均等に変位させること(すなわち、バレル110内における変形可能なリング130の並進移動)を可能にし得る。変形可能なリング130のこのような均等な変位は、高速インパクト(たとえば、インパクト位置付近のバレル110の内壁が変形可能なリング130と接触して、変形可能なリング130をバレル110のうちインパクト位置とは反対側の内壁と接触させるように、バレル110をインパクト位置で内側に屈曲させるのに十分な力のインパクト)の場合を除いて、(たとえば、剛性ワッシャ設計とは対照的に)性能低下を抑制するのに役立ち得る。したがって、このような設計は、高速インパクトでのバレル110の屈曲(およびバット100のCOR)を制限し得るとともに、より低速でのバレル110の自由な屈曲を可能にすることで、より低速時にバット100の性能を最大限にし得る。
【0037】
図4Aおよび
図4Bは、いくつかの実施形態に従った変形可能なリング130を、円形の外壁232および穴234とともにより明確に示す。いくつかの実施形態においては、ロッドの端部だけが穴234内に延在し得るように、穴234の1つ以上が変形可能なリング130内に部分的にのみ延在し得る。いくつかの実施形態は、完全な(すなわち、変形可能なリング130を完全に貫通して形成された)穴234と、部分的な(すなわち、変形可能なリング130を部分的にのみ貫通して形成された)穴234との組合わせを含み得る。
図4Cおよび
図4Dを参照すると、特定の実施形態においては、変形可能なリングは、変形可能なリング130の第1の側(たとえば上側)内に部分的に延在する1つ以上の穴234を含み得るとともに、変形可能なリング130の第2の側(たとえば底側)内に部分的に延在する1つ以上の穴234を含み得る。これにより、第1のロッド140の端部を変形可能なリング130の第1の側に挿入することができるとともに、第2のロッド140の端部を変形可能なリング130の第2の側に挿入することができるようになる。いくつかの実施形態においては、変形可能なリング130の両側にあるロッド140の1つ以上を、
図4Cに示されるように、互いに対して軸方向に位置合わせすることができる。特定の実施形態においては、変形可能なリング130の両側にあるロッド140の1つ以上が、
図4Dに示されるように、互いに対して軸方向にずらされ得る。
【0038】
図5Aおよび
図5Bを参照すると、いくつかの実施形態においては、複数の変形可能なリング130が提供され得るとともに、いくつかの実施形態に従うと、各々の変形可能なリング130の外径は同じである。したがって、複数の変形可能なリング130の各々は、同じ中空バレル110と使用することができる。いくつかの実施形態においては、複数の穴234の直径は変形可能なリング130とは異なる直径にすることができるので、異なる直径を有する複数のロッド140が使用可能となり、これは、変形可能なリング130の変形可能性に影響を及ぼし得る。特定の実施形態においては、すべての変形可能なリング130のために複数の同じロッド140を使用することができるように、複数の穴234の直径をすべての変形可能なリング130の間で同じにすることができる。いくつかの実施形態においては、変形可能なリング130の内径は、異なる剛性と、これにより異なる変形可能性とを持つ中空バレル110をもたらして、最終的に異なる性能特徴を持つバット100を提供するように調節することができる。たとえば、
図5Aは、外径および内径ID
1を有する変形可能なリング130Aを示しており、
図5Bは、変形可能なリング130Aと同じ外径を有するとともに変形可能なリング130Aの内径ID
1より大きい内径ID
2を有する変形可能なリング130Bを示している。変形可能なリング130Aおよび130Bが同じ外径を有しており、かつ、変形可能なリング130Aが変形可能なリング130Bの内径ID
2よりも小さい内径ID
1を有しているので、変形可能なリング130Aは変形可能なリング130Bよりも大きな壁厚を有している。したがって、変形可能なリング130Aは、変形可能なリング130Bよりも剛性が高く、これにより、変形可能なリング130Bよりも変形可能性が低い。
【0039】
いくつかの実施形態においては、変形可能なリング130は、約1mmから約50mmの範囲内の厚さ(たとえば高さ)を有し得る。たとえば、いくつかの実施形態においては、変形可能なリング130は約1mmから約20mmの範囲内の厚さ(たとえば高さ)を有し得る。特定の実施形態においては、変形可能なリング130は、約1mmから約50mmの範囲内の径方向厚さ(たとえば、変形可能なリングの側壁の最小厚さ)を有し得る。たとえば、いくつかの実施形態においては、変形可能なリング130は、約5mmから約30mmの範囲内の径方向厚さを有し得る。いくつかの実施形態においては、変形可能なリングは、アルミニウム、樹脂、1つ以上の複合材料または他の適切な任意の材料を含み得る。
【0040】
図6Aおよび
図6Bは3つのタイプのバットの性能を示すグラフである。3つのタイプのバットは、剛性のワッシャ状リングを有するバット(先行技術)と、如何なる種類の内部リング構造をも備えない複合材料バット(先行技術)と、ここに開示されている技術を含むバットとである。図からわかるように、ここに開示されているバットがもたらす打球速度は、より低速では、通常の複合材料バットによる速度より高く、ワッシャ状リングを含むバットによる速度とほとんど同じくらい高く、中速では、ワッシャ状リングを含むバットによる速度よりも高く、通常の複合材料バットによる速度とほとんど同じくらい高い。より高速では、ここで開示されているバットがもたらす打球速度は、ワッシャ状リングを含むバットによる速度よりもはるかに高い。このため、ここで開示されているものは、目標の力を上回る力で高レベルの性能を維持しつつ、(たとえば、統括支配的なルールおよび規則に準拠するために)目標の力でバット性能を高めることができる。変形可能なリング130を用いたバットの性能全体の向上は、開示された技術によって与えられる圧縮と変位との特有のバランスに少なくとも部分的に起因し得る。
図7を参照すると、先行技術バットの剛性ワッシャがバットバレルの圧縮に応じてバット内で変位され得るのは、当該剛性ワッシャがバレルのインパクト側およびその反対側の両方に接触するまでに過ぎず、この時点ではさらなる変位は起こり得ない。対照的に、開示された技術の変形可能なリング130は同様に変位可能であるが、バレルのインパクト側および反対側の両方に接触した後も変形することができる。
図7からも分かるように、変形可能なリング130の圧縮度合いは、変形可能なリング130の内径に基づいて(一定の外径であると想定して)変更することができる。言い換えれば、変形可能なリング130の外壁の厚さは、変形可能なリング130の圧縮度合いに影響を及ぼす可能性がある。
【0041】
図8に示されるように、変形可能なリング130は、変形可能なリング130の円形の外壁232と中空バレル110の内面との間に隙間が形成されるように、中空バレル110内に浮かしておくことができる。この隙間の大きさ(すなわち、距離D
gap)は、さまざまな打球速度で予め定められた性能を達成するように変更することができる。認識され得るように、変形可能なリング130の外面および/またはバレル110の内面は、製造上の制限または他の理由から、完全に円形でない可能性もある。したがって、隙間距離D
gapは、変形可能なリング130の外面とバレル110の内面との間の平均隙間距離D
gapを指し得る。
【0042】
以下の表1は、開示された技術の例を用いて行なわれた実験の結果得られたデータを参照している。これらの例は、異なる壁厚および同じ外径を有する(すなわち、異なる内径を有する)リングを有する2つのサンプルと、異なる外径を有する3つのサンプルとを含む。各々のサンプルは同じ中空バレル110でテストされた。これは、中空バレル110の内径と各サンプルの変形可能なリング130の外径との間の差が、結果として、対応する隙間距離D
gapをもたらすようにするためである。これらのサンプルをテストするのに用いられたバレル110は、約50mmの内径を有していた。このため、一例として、36mmの外径を有するリング130を含むサンプルAについての隙間距離D
gapは、約7mmであった(すなわち、(バレル110の50mmの外径−変形可能なリング130の36mmの外径)÷2=サンプルAについての7mmのD
gap)。表1の力の値は、各サンプルのバレル110を一定の予め定められた量だけ圧縮するのにどれだけの力が必要であったかを示している。これらの実験のために、バレル110の圧縮に起因する予め定められた変位は、0.050±0.001インチ(1.3±0.025mm)であった。リング壁厚は、変形可能なリング130の外径と最大内径(たとえば、
図5Aおよび5Bを参照)との間の差を指しており、リング高さは、各々の変形可能なリング130の厚さの高さを指しており、リング位置は、バットのバレルのキャップ端に対する各々の変形可能なリング130の位置を指している(すなわち、サンプルの各々は、バレル110のキャップ端から7インチの場所に位置していた)。各々のサンプルは、低速、中速および高速でロボット打者を用いてテストされた。
【0044】
以下の表2は、インパクト前に3つの異なる速度(低速:55km/h)、中速:80km/h、および高速:125km/h)で進んでいたボールと上記サンプルバットのうちのいくつかのバットとのインパクトに起因する打球速度を示す。このデータ中の打球速度を判断するために、(バットキャノンではなく)スイングロボットを用いてテストされた。また、ボールの出口速度が測定された。データから分かるように、低速および中速ではサンプルAとサンプルBとサンプルCとの間に性能の差はほとんどない。しかしながら、高速では、最大の隙間で最高性能が得られた。これは、バレル110と変形可能なリング130との間の接触が比較的遅れることにより、バレル110がさらに屈曲してさらに跳ね返ってくることが可能になるからであり得る。
【0046】
以下の表3は、インパクト前に3つの異なる速度(低速:55km/h、中速:80km/h、および高速:105km/h)で進んでいたボールと上記サンプルバットのうちのいくつかのバットとのインパクトに起因する打球速度を示している。上述のように、このデータ中の打球速度は、(バットキャノンではなく)スイングロボットを用いるテスト中にボールの出口速度を測定して、判断された。ここで、データは、より剛性の低い(たとえば、より薄い壁を有する)変形可能なリング130が比較的高い性能をもたらすことを示しているように見える。
【0048】
開示された技術の特定の実施形態を、現在最も実用的な実施形態であるとみなされているものに関連付けて記載してきたが、開示された技術が開示された実施形態に限定されるべきではなく、逆に、添付の特許請求の範囲内に含まれるさまざまな変形例および同等の構成例を包含するように意図されていることが理解されるはずである。特定の用語がこの明細書中で用いられているが、それらは、一般的および記述的な意味でのみ用いられているのであって、限定を目的として用いられているものではない。
【0049】
ここに記載された説明は、いくつかの例を用いて、最良モードを含む開示された技術の特定の実施形態を開示するとともに、当業者が、任意の装置またはシステムを製造および使用すること、ならびに援用された任意の方法を実行することを含めて、開示された技術の特定の実施形態を実施することを可能にしている。開示された技術の特定の実施形態の特許可能な範囲は、請求項において規定されており、当業者が想到する他の例を含み得る。このような他の例は、これら例が有する構造要素が請求項の文字どおりの語と相違のない場合、または、それら例が請求項の文字どおりの語とは非実質的に異なる同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内に収まるように意図されている。
【符号の説明】
【0050】
100 バット、110 中空バレル、120 内部アセンブリ、130 変形可能なリング、140 ロッド、150 位置合わせインサート。