(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の冷蔵庫10について図面に基づき説明する。なお図面では、説明のために、部材の大きさ等が誇張されて描かれている場合がある。
【0010】
本実施形態の冷蔵庫10は、冷気を発生させる冷却サイクル装置と、マイクロコンピュータ等の制御部とを備える。制御部は、冷却サイクル装置を制御するとともに、冷却サイクル装置で発生した冷気を貯蔵室へ送り、貯蔵室内を低温に保持する。貯蔵室の奥には、冷気の貯蔵室内への吹き出し口が設けられている。
【0011】
冷蔵庫10の本体は、冷蔵庫10の外郭を形成する外箱と、貯蔵室が形成された内箱とが組み合わされ、外箱と内箱との間に断熱材が詰められて構成されている。外箱と内箱との間には、箱体の内部にグラスウール等が充填された上で排気された真空断熱パネルが設けられていても良い。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫10の本体には複数の貯蔵室が設けられ、各貯蔵室の前方の開口部が扉により開閉可能となっている。貯蔵室の数や種類は限定されないが、例えば
図1の冷蔵庫10では、上から順に冷蔵室及び野菜室が設けられ、その下に製氷室と小冷凍室が左右に並べて設けられ、一番下に冷凍室が設けられている。
【0013】
冷蔵室の開口部は、左右2枚の冷蔵室扉11、12で閉塞されている。左側の冷蔵室扉11の左端部は冷蔵室10本体の左端部にヒンジにより取り付けられている。右側の冷蔵室扉12の右端部は冷蔵室10本体の右端部にヒンジにより取り付けられている。この構造のため、左右2枚の冷蔵室扉11、12は観音開き可能となっている。野菜室、製氷室、小冷凍室、冷凍室は、それぞれ、引き出し式の野菜室扉13、製氷室扉14、小冷凍室扉15、冷凍室扉16で閉塞されている。
【0014】
これらの扉の少なくとも一部には、静電容量式センサを備える操作部50が設けられている。操作部50が設けられる扉や操作部50により操作可能な事項は限定されないが、本実施形態の場合は、冷蔵室扉11、12の下方の部分にそれぞれ開扉のための操作部50aが設けられ、さらに、一方の冷蔵室扉12の上下方向の中央部に冷却サイクルの制御等のための操作部50bが設けられている。前記制御部はこれらの操作部50での操作に基づき冷蔵室10を制御する。
【0015】
冷蔵庫10の扉の断面構造の例として、冷蔵室扉12の操作部50が設けられている場所での前後方向の断面構造を
図2に示す。冷蔵室扉12の外郭は、庫外側(冷蔵庫前側)に設けられた扉前面板30と、庫内側(冷蔵庫後側)に設けられた扉内板31とが、前後から組み合わされて形成されている。扉前面板30は透光性を有する。一般的には扉前面板30は無色透明であり、例えば厚さ3mm程度のガラスでできている。なお、透明ABS樹脂、アクリル樹脂等の透明な樹脂材料を使用してもよい。扉前面板30と扉内板31との間には断熱材32が設けられている。断熱材32の材料は限定されない。断熱材32の材料として、例えば、発泡ウレタンや、発泡ポリスチレンや、グラスウール等が挙げられる。扉前面板30と断熱材32との間には操作部50が設けられている。また、扉前面板30と操作部50との間には、後述する寄生容量の小さい金属膜が設けられている。この金属膜の設けられ方は限定されないが、本実施形態の場合は、金属膜がフィルム40の
一部として積層され、このフィルム40が扉前面板30と操作部50との間に設けられている。操作部50は静電容量式センサを備えるものであれば良く、その構造は限定されない。本実施形態の場合は、
図2に示すように、操作部50は、第1基板54と、第1基板54上に設けられた複数の静電容量式センサの電極52とを備える。また第1基板54の庫内側(後ろ側)には、マイコン57やLED等の光源56を備える第2基板55が設けられている。マイコン57は静電容量式センサの電極52の容量の変化を検出したり光源56を点灯させたりする。第1基板54と第2基板55とは、それぞれのコネクタ51及び中継束線53を介して電気的に接続されている。光源56の光は第1基板54に設けられた孔58を通過し、操作部50より庫外側にあるフィルム40を庫内側から照らす。後述するようにフィルム40は透光性のある部材から出来ているため、フィルム40に印刷されている文字等が庫外から見える。
【0016】
本実施形態の静電容量式センサは自己容量方式の静電容量式センサである。扉前面板30の静電容量式センサの電極52の庫外側の部分に人の指等の導体が接近又は接触すると、その導体と静電容量式センサの電極52との間に静電容量が発生し、静電容量式センサの電極52に溜まる電荷量が変化して、マイコン57が導体の接近又は接触を検出する。特に、静電容量式センサは、扉前面板30のその静電容量式センサの電極52の庫外側の部分に導体が接近したことを検出する近接センサであることが望ましい。検出可能な接近の程度は限定されないが、例えば扉前面板30における静電容量式センサの電極52の庫外側の部分から扉前面板30に垂直な方向に10〜20cm離れた場所まで接近した場合に検出可能とする。ただし、静電容量式センサは、扉前面板30のその静電容量式センサの電極52の庫外側の部分に導体が接触して初めてそのことを検出するタッチセンサであっても良い。また、静電容量式センサは、近接センサとして働く近接モードとタッチセンサとして働くタッチモードとの切替えが可能なものであっても良い。近接センサはタッチセンサよりも高い感度を必要とする。フィルム40はシート状の基材41を備える。基材41は、透光性を有するものであり、無色透明であることがより望ましい。基材41の材質は限定されないが、合成樹脂が望ましく、特にポリエチレンテレフタレートが外観品質の点から望ましい。図示するように、基材41の庫内側の面には凹凸形状が設けられていることが望ましい。また、基材41の庫内側の面に文字等が印刷されて印刷層42が形成されていても良い。印刷方法としては、紫外線硬化型インキで描かれた柄等に紫外線を当ててこれを瞬間硬化させるUV印刷等が挙げられる。
【0017】
基材41の庫内側(基材41の庫内側の面に印刷層42が形成されている場合はそれよりも庫内側)には寄生容量が小さい金属膜が積層されている。寄生容量が小さいとは、その寄生容量が、静電容量式センサの電極52を備える基板の寄生容量より小さいこと、又は扉前面板30の寄生容量より小さいことを意味する。また寄生容量が静電容量式センサの電極52を備える基板の寄生容量より小さいとは、本実施形態のように静電容量式センサの電極52を備える第1基板54にマイコン57を備える第2基板55が電気的に接続されている場合は、接続された状態での第1基板54の寄生容量より小さいことを意味する。ここで、基板の寄生容量とは基板に配したグランドなどの配線パターンと電極52の金属との間で発生する寄生容量や、基板に搭載した静電容量式センサのマイコンなどの素子と電極52との間の寄生容量など電極52に対して影響を及ぼす寄生容量を合計したものであり、基板に配線パターンや素子が実装された状態での基板全体での寄生容量を意味する。なお、静電容量式センサは電極と人の指との間に発生する静電容量を検知するものであり、基板の寄生容量や金属膜の寄生容量などの寄生容量は、静電容量式センサによる静電容量の検知を阻害することになるため小さい方が望ましい。
【0018】
寄生容量が小さい金属膜として様々なものが挙げられるが、本実施形態では、寄生容量が小さい金属膜の一例として、不連続蒸着膜43を採用する。不連続蒸着膜43とは金属粒子間が結合されていないために非伝導性を示し小さな寄生容量を有する金属膜のことで
ある。不連続蒸着膜43は公知の金属蒸着法により形成される。なお、金属蒸着法と表現するとき、その中には真空蒸着法はもちろんのことスパッタリング等も含まれるものとする。不連続蒸着膜43に用いられる金属の種類は限定されない。ただし錫又は錫を含む合金である錫合金は、公知の金属蒸着法により金属粒子の周りに酸化層ができて容易に不連続蒸着膜43となる。不連続蒸着膜43は透光性を有する。基材41の庫内側の面に凹凸形状が設けられている場合、不連続蒸着膜43にも凹凸形状が設けられることになる。不連続蒸着膜43における凹部と凸部の各頂点間の冷蔵室扉12の前後方向の長さを凹凸形状の高さとすると、凹凸形状の高さは数μm〜数mm程度である。
【0019】
不連続蒸着膜43の庫内側の面はシート状の保護層45により覆われていても良い。保護層45は接着剤を含む接着層44を介して不連続蒸着膜43に接着されている。保護層45の材質は限定されない。ただし断熱材32が発泡ウレタンを含むもの(すなわち、発泡ウレタンからなるものや、発泡ウレタンに他の材料が添加されたもの)である場合は、保護層45はポリ塩化ビニルからなることが望ましい。
【0020】
基材41の庫外側には透光性を有する着色層46が設けられていても良い。着色層46の材質や形成方法は限定されないが、例えば基材41の庫外側の面にUV印刷等で印刷されて形成される。着色層46の庫外側の面には、フィルム40と扉前面板30との貼り付けに用いられる接着層47が形成されていても良い。接着層47は透光性を有する。接着層47は固まった状態で無色透明であることが望ましい。接着層47はUV硬化剤(紫外線が照射されるとラジカル重合やカチオン重合が起こり硬化する樹脂)からなることが望ましい。接着層47がUV硬化剤からなる場合、扉前面板30にフィルム40の接着層47側の面を当てて扉前面板30側から紫外線を照射することにより、扉前面板30とフィルム40とを接着させることができる。また、扉前面板30の庫内側の面にシルクスクリーン等の方法によりロゴ等が印刷されていても良い。
【0021】
なおフィルム40における上記各層は密着している。このようなフィルム40が、例えば、冷蔵室扉12の扉前面板30の後側全体に設けられている。
【0022】
以上の構造の冷蔵室扉12の製造方法の一例を示す。まず、以上に例示された方法により基材41に各層を積層してフィルム40を製造する。次に、フィルム40を扉前面板30に接着させる。次に、フィルム40が貼り付けられた扉前面板30と扉内板31とを扉キャップに嵌めることにより組み合わせる。次に、扉キャップ等に予め設けられている開口部から操作部50をスライドさせて冷蔵室扉12内に挿入し、操作部50を冷蔵室扉12内に固定し、その後前記開口部を閉じる。最後に、扉前面板30又は扉内板31に開けられている孔から、扉前面板30と扉内板31との間の空間に、断熱材を注入する。また、扉内板31の庫内側の面に貯蔵物を収納する収納容器を固定する。このようにして完成した冷蔵室扉12をヒンジ等で冷蔵庫10の本体に取り付ける。
【0023】
以上の構造を備える本実施形態の冷蔵庫10では、冷蔵室扉12において、操作部50の前方部分では扉前面板30と操作部50との間に、また操作部50の前方以外の部分では扉前面板30と断熱材32との間に、金属の不連続蒸着膜43が設けられているため、冷蔵室扉12全体が外観上金属光沢のあるものとなっている。しかも扉前面板30と静電容量式センサの電極52との間の不連続蒸着膜43の寄生容量が小さいため、扉前面板30に人の指等の導体が接近又は接触したときに、静電容量センサがそのことを不連続蒸着膜43により阻害されることなく検出することができる。そのため静電容量式センサによる操作性が良好である。
【0024】
不連続蒸着膜43等の金属膜の寄生容量が静電容量式センサの電極52を備える基板の寄生容量より小さい場合は、金属膜の凹凸形状や金属膜の厚さを変更するなどしてデザイ
ンを変更した場合であっても、同じ基板を使用できる。このため、デザインを変更する度に基板を変更する必要がなく扉のデザインバリエーションを容易に増やすことができる。
【0025】
不連続蒸着膜43等の金属膜の寄生容量が扉前面板30の寄生容量より小さい場合は、静電容量式センサの電極52に対して影響を与える扉前面板30と金属膜との内、寄生容量の大きな扉前面板30を静電容量式センサの電極52から遠い位置に配置し寄生容量の影響を抑えることで、静電容量センサによる検出を精度よく行うことができる。
【0026】
特に、静電容量式センサが近接センサである場合、静電容量式センサの感度が高いことが必要である。本実施形態では扉前面板30と静電容量式センサの電極52との間の金属が寄生容量の小さい不連続蒸着膜43であるため、近接センサとして必要な感度が保たれる。
【0027】
ここで、不連続蒸着膜43が錫又は錫合金からなるものであれば、不連続蒸着膜43が製造し易く、しかも不連続蒸着膜43の寄生容量が小さいため静電容量式センサの操作性が良好となる。また、錫又は錫合金等の一部の金属は、ガラス製の扉前面板30には蒸着させにくい。しかし本実施形態では、不連続蒸着膜43が、扉前面板30の裏面に直接積層されているのではなく、扉前面板30と静電容量式センサの電極52との間に設けられたフィルム40の基材41に積層されているため、ガラス製の扉前面板30への蒸着が困難な金属であっても、扉前面板30と静電容量式センサの電極52との間に不連続蒸着膜43として設けることができる。
【0028】
また、不連続蒸着膜43が、扉前面板30の裏面に直接積層されているのではなく、扉前面板30と静電容量式センサの電極52との間に設けられたフィルム40の基材41に積層されているため、フィルム40の詳細な構造に変化を加えることにより、庫外側からの扉の見え方のバリエーションを増やすことができる。
【0029】
例えば、基材41の庫内側の不連続蒸着膜43に凹凸形状が設けられている場合、基材41及び扉前面板30は透光性を有するため、庫外から金属光沢のある凹凸形状が見える。そして、凹凸形状による視覚効果により、冷蔵庫10に立体感を持たせることができる。
【0030】
また、基材41の庫内側の面に不連続蒸着膜43が積層され、基材41の庫外側の面に透光性を有する着色層46が積層されている場合、庫外から見たときに着色層46の裏側に不連続蒸着膜43が透けて見え、扉が金属光沢に由来するツヤを有ししかも着色されて見える。
【0031】
また、扉の製造工程において扉前面板30と扉内板31との間に流体の断熱材が注入されたときに、断熱材と不連続蒸着膜43とが接触し、その後断熱材が収縮すると、不連続蒸着膜43に皺が生じるおそれがある。しかし不連続蒸着膜43の庫内側に保護層45が設けられている場合、断熱材と不連続蒸着膜43とが接触することを防ぐことができ、不連続蒸着膜43に皺が生じることを防ぐことができる。さらに、断熱材32が発泡ウレタンを含むものである場合に、保護層45がポリ塩化ビニルからなるものであれば、断熱材32とフィルム40との密着性が良くなる。
【0032】
また、不連続蒸着膜43を備えるフィルム40が冷蔵室扉12の扉前面板30の後側(庫内側)全体に設けられていれば、冷蔵室扉12全体の外観が優れたものとなる。さらに、不連続蒸着膜43を備えるフィルム40が冷蔵庫10の全ての扉の扉前面板の後側に設けられていれば、冷蔵庫10全体の外観が優れたものとなる。
【0033】
以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。以下に変更例を列挙する。
【0034】
(変更例1)
扉前面板30と操作部50との間にフィルムが設けられる場合、そのフィルムは少なくともシート状の基材とそこへ積層された寄生容量が小さい金属膜とを備えていれば良い。従って、フィルムは、基材と寄生容量が小さい金属膜のみからなるものであっても良いし、上記実施形態に記載の層とは別の層を備えるものであっても良い。また寄生容量が小さい金属膜は基材の庫外側に設けられていても良い。
【0035】
(変更例2)
寄生容量が小さい金属膜は少なくとも静電容量式センサを備える扉に設けられていれば良い。そのため、例えば、静電容量式センサを備える扉には寄生容量が小さい金属膜を備えるフィルムが設けられ、それ以外の扉には寄生容量が大きい金属(例えばアルミニウム又はアルミニウムを含む合金であるアルミニウム合金)の膜を備えるフィルムが設けられていても良い。
【0036】
(変更例3)
凹凸形状が設けられた寄生容量が小さい金属膜(ここでは例として不連続蒸着膜とする)が複数枚(例えば全て)の扉に設けられている場合は、それらのうちの一部の扉は、不連続蒸着膜に設けられた凹凸形状の高さが、その他の扉と異なっていても良い。つまり、不連続蒸着膜に設けられた凹凸形状の高さが、一部の扉とその他の扉とで異なっても良い。例えば、人の目の高さにある扉である冷蔵室扉11、12では、不連続蒸着膜の凹凸形状の高さが低く、それ以外の扉では、凹凸形状の高さがそれより高くなっていても良い。
【0037】
ここで、扉の立体感を出すためには、不連続蒸着膜の凹凸形状の高さが高い方が望ましい。しかし凹凸形状の高さが高いと光の干渉縞が発生し易くなり、美感が損なわれるおそれがある。ここで、干渉縞は人が扉をその法線方向から見たときに発生し易い。つまり干渉縞は人の目の高さで発生し易い。
【0038】
そこで上記の例示のように、人の目の高さにある扉である冷蔵室扉11、12において不連続蒸着膜の凹凸形状の高さが低ければ、人が干渉縞を視認するおそれが低減される。そしてそれ以外の扉において凹凸形状の高さが高ければ、冷蔵庫全体として立体感が出る。
【0039】
また、扉は、不連続蒸着膜に設けられた凹凸形状の高さが異なる複数の領域を有していても良い。つまり、1枚の扉の中に、不連続蒸着膜の凹凸形状の高さが異なる複数の領域が設けられていても良い。例えば、冷蔵室扉12において、人の目の高さにある扉中央部及び扉下部(例えば扉の下方2/3の部分)では不連続蒸着膜の凹凸形状の高さが低く、人の目の高さより高い位置にある扉上部(例えば扉の上方1/3の部分)では不連続蒸着膜の凹凸形状の高さがそれより高くなっていても良い。この場合も、人が干渉縞を視認するおそれが低減され、しかも冷蔵庫全体として立体感が出る。
【0040】
(変更例4)
静電容量式センサの電極52を備える第1基板54の寄生容量より小さい寄生容量を有する金属膜の別の例を
図3に示す。
【0041】
図3のフィルム140aは、上記のフィルム40と同じく扉前面板30と操作部50との間に設けられるものである。このフィルム140aでは、シート状の基材141の片面上で、複数のドット状金属部143aが並べられて金属膜となっている。ドット状金属部
143aの材質は限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金とする。1つのドット状金属部143aの直径pは500μm以下で、最寄りの2つのドット状金属部143a同士の間隔qは100μm以下であることが望ましい。また基材141の面積に対する全てのドット状金属部143aの合計面積の割合が80%以上であることがより望ましい。このような金属膜は例えば公知の写真技術を用いて作製することができる。フィルム140aには、基材141及び金属膜の他に、上記実施形態のフィルム40と同様に着色層や保護層等が設けられていても良い。
【0042】
この金属膜は、1つのドット状金属部143aの直径pが例えば500μm以下と小さくしかもドット状金属部143a同士が結合されていないため、非伝導性を示ししかもその寄生容量が静電容量式センサの電極52を備える第1基板54の寄生容量より小さい。そのため、上記実施形態の場合と同じく、扉前面板30に人の指等の導体が接近又は接触したときにそのことを金属膜が阻害することなく静電容量式センサが検出することができる。この複数のドット状金属部143aが並んだ金属膜であれば、金属粒子間が連続した状態では寄生容量が大きくなりがちなアルミニウム又はアルミニウム合金のような金属であっても、扉前面板30と操作部50との間に設ける寄生容量の小さい金属膜の材料とすることができる。
【0043】
また、最寄りの2つのドット状金属部143a同士の間隔qが例えば100μm以下と狭くしかも全てのドット状金属部143aの合計面積が広いため、人の視覚では金属がドット状になっていることがわからない。そのため冷蔵室扉12が上記実施形態の場合と同じく外観上金属光沢のあるものとなる。
【0044】
また、
図4のフィルム140bも、上記のフィルム40と同じく扉前面板30と操作部50との間に設けられるものである。このフィルム140bでは、シート状の基材141の片面上で、複数の帯状金属部143bがストライプ状に並べられて金属膜となっている。帯状金属部143bの材質は限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金とする。1つの帯状金属部143bの幅rは500μm以下で、隣り合う2つの帯状金属部143b同士の間隔sは100μm以下であることが望ましい。また基材141の面積に対する全ての帯状金属部143bの合計面積の割合は80%以上であることがより望ましい。このような金属膜は例えば公知の写真技術を用いて作製することができる。フィルム140bには、基材141及び金属膜の他に、上記実施形態のフィルム40と同様に着色層や保護層等が設けられていても良い。
【0045】
図4の金属膜も、静電容量式センサによる導体の検出を阻害せず、しかも冷蔵室扉12の外観を優れたものとする。
【0046】
(変更例5)
少なくとも静電容量式センサの電極52の前方部分に、静電容量式センサの電極52を備える第1基板54の寄生容量より小さい寄生容量を有する金属膜が設けられている場合において、静電容量式センサの電極52の前方以外の部分に、前記金属膜よりも寄生容量の大きい金属層が設けられていても良い。
【0047】
その一例を
図5に示す。なお
図2と
図5とで共通する部分には同じ符号が付されている。この変更例では、静電容量式センサの電極52を備える第1基板54の寄生容量より小さい寄生容量を有する金属膜243aの前方に、それよりも寄生容量の大きい金属層243bが積層されている。金属膜243aも金属層243bも扉前面板30の後側で広範囲(望ましくは扉前面板30の後側全体)にわたって設けられている。ただし金属層243bの静電容量式センサの電極52の前方部分は切り抜かれている。切り抜かれる部分は、静電容量式センサの電極52の前方部分だけでも良いし、静電容量式センサの電極52の前方部分及びその周辺部分(例えば操作部50の前方の部分全体)でも良い。金属層243bの材質は限定されない。なお、
図5では、上記実施形態の印刷層42に相当する層が省かれているが、実際には印刷層42が存在しても良い。
【0048】
この変更例の場合、静電容量式センサの電極52の前方以外の部分に、寄生容量が大きいが外観上好ましい金属(例えばアルミニウムやアルミニウム合金)の層を金属層243bとして設け、冷蔵室扉12を外観上優れたものとすることができる。一方で、静電容量式センサの電極52の前方部分には、寄生容量が大きい金属層243bが設けられず、寄生容量の小さい金属膜243aのみが設けられているため、扉前面板30に人の指等の導体が接近又は接触したときにそのことを金属層243bにより阻害されることなく静電容量式センサで検出することができる。
【0049】
別の例を
図6に示す。なお
図2と
図6とで共通する部分には同じ符号が付されている。この変更例では、静電容量式センサの電極52を備える第1基板54の寄生容量より小さい寄生容量を有する金属膜343aと、金属膜343aより寄生容量が大きい金属層343bとが、同一平面上に設けられている。詳細には、寄生容量が小さい金属膜343aが静電容量式センサの電極52の前方部分(静電容量式センサの電極52の前方部分だけでも良いし、静電容量式センサの電極52の前方部分とその周辺部分とを合わせた部分でも良い)に設けられ、それ以外の部分には金属膜343aより寄生容量が大きい金属層343bが設けられている。そして金属膜343aと金属層343bとが同一面上にある。つまり、同一平面上で、金属膜343aの部分と金属層343bの部分とが区分けされている。
【0050】
この変更例の場合も、静電容量式センサの電極52の前方以外の部分に、寄生容量が大きいが外観上好ましい金属(例えばアルミニウムやアルミニウム合金)の層を金属層343bとして設け、冷蔵室扉12を外観上優れたものとすることができる。一方で、静電容量式センサの電極52の前方部分には、寄生容量が大きい金属層343bが設けられず、寄生容量の小さい金属膜343aのみが設けられているため、扉前面板30に人の指等の導体が接近又は接触したときにそのことを金属層343bにより阻害されることなく静電容量式センサで検出することができる。また
図5の場合と比較して金属膜343aの使用量を抑えることができる。
【0051】
なお、同じ金属でも厚みにより寄生容量が異なるため、金属膜343aと金属層343bとを、同じ金属からなり厚みが異なるものとしても良い。
【0052】
なお、
図5及び
図6では、小さい寄生容量を有する金属膜等に凹凸が形成されていないが、
図2の実施形態と同じく凹凸が形成されていても良い。
【0053】
(変更例6)
操作部50の基板(第1基板54や第2基板55)の周りは空気層となっているため、貯蔵室内の低温が基板にまで伝わると、基板が結露し操作部50が誤作動を起こすおそれがある。そこで基板の結露を防ぐ工夫がなされていても良い。このような工夫の例を
図7〜
図9に示す。なお
図7〜
図9において、その他の図と同じ部分には同じ符号が付されている。
【0054】
図7の例では、操作部50の庫内側に真空断熱パネル432が設けられている。真空断熱パネル432は、箱体の内部にグラスウール等が充填された上で排気されたものである。真空断熱パネル432の前後方向の厚みは20mm以上あることが望ましい。この例の場合、操作部50の庫内側に真空断熱パネル432が設けられていることにより、貯蔵室内の低温が操作部50の基板にまで伝わりにくくなり基板が結露しにくくなる。
【0055】
別の例を
図8に示す。この例では、扉内の操作部50を収納する部分に、熱伝導性の良い金属部材532が配されている。詳細には、操作部50の庫内側の面に接するように金属部材532(例えばアルミニウム箔のような金属箔や、金属板)が設けられている。金属部材532はさらに操作部50を庫内側から包むように庫外側に向かって延びている。この例の場合、庫外側の熱が金属部材532を伝わり、金属部材532と接する操作部50の庫内側の面が比較的高温に保たれる。そのため操作部50内の基板が低温になりにくく、基板が結露しにくくなる。
【0056】
別の例を
図9に示す。この例では扉にヒータ601が設けられている。ヒータ601が設けられる場所は限定されないが、例えば、回転仕切り体602(左の冷蔵室扉11の右側部に設けられ、扉閉状態で右の冷蔵室扉12の左側部に密着し、これにより左右の冷蔵室扉11、12の密着状態を保持する部材)の内部や、扉内の操作部50に近い場所である。この例では、ヒータ601の熱により基板が比較的高温に保持されるため、基板が結露しにくくなる。なお、ヒータ601が操作部50から離れている場合は、ヒータ601から操作部50にかけて金属部材(例えばアルミニウム箔のような金属箔や、金属板)が設けられても良い。これによりヒータ601の熱が有効に操作部50の基板に伝わり、操作部50の基板が結露しにくくなる。ヒータ601と操作部50とが近い場合はこのような金属部材は無くても良い。
【0057】
操作部50の後方に貯蔵室内への冷気の吹き出し口がある場合は、操作部50が低温になりやすいため、以上のような工夫が特に有効である。以上の3つの例のうち2つ以上の構成が組み合わされていても良い。
【0058】
このように基板の結露を防ぐことと、扉前面板30と静電容量式センサの電極52との間に寄生容量が小さい金属膜が設けられていることとの相乗効果により、操作部50は誤作動が少なくさらに操作性が良好なものとなる。
【0059】
(変更例7)
冷蔵庫の扉は、何度も開閉され、開閉の度に衝撃を受けることになる。そのため操作部50の第1基板54が当初の位置からずれ、静電容量式センサの電極52がフィルム40に対してずれるおそれがある。その場合、フィルム40にボタンの表示がされていても、ボタン表示の位置と静電容量式センサの電極52の位置とがずれるため、ボタン表示に人の指等が接近又は接触しても静電容量式センサが反応しないおそれがある。そこで対策として、静電容量式センサの電極52のずれを防ぐ工夫がなされていても良い。
【0060】
このような工夫の一例を
図10に示す。この例では、操作部50及びそこに設けられている静電容量式センサの電極52が扉前面板30及びフィルム40に向かって押し付けられて、フィルム40に対してずれないようになっている。押し付けるための構造は限定されないが、
図10の例では弾性手段703が用いられている。この例では冷蔵室扉12の内部に収納部材701が固定されている。収納部材701は、冷蔵室扉12の内部(例えば冷蔵室扉12の上下左右の端部に設けられ扉前面板30と扉内板31とを一体化させている扉キャップ702)に固定されている。操作部50は、冷蔵室扉12の内部でこの収納部材701に囲われている。
【0061】
そして、バネやゴム等の弾性手段703の一端部が収納部材701に固定され、弾性手段703の他端部が操作部50の一部に固定されている。そして弾性手段703の力により、操作部50及びこれに固定された静電容量式センサの電極52が扉前面板30及びフィルム40に向かって押し付けられている。
【0062】
これにより、操作部50に設けられた静電容量式センサの電極52がフィルム40に対してずれにくくなり、ボタン表示に人の指等が接近又は接触した場合にそのボタンに対応した静電容量式センサが正しく反応することになる。
【0063】
また、弾性手段703とは異なる手段により、静電容量式センサの電極52が扉前面板30及びフィルム40に向かって押し付けられていても良い、例えば、操作部50を冷蔵室扉12内部に挿入するための開口が扉キャップ702に設けられており、開口から冷蔵室扉12内部の操作部50の固定位置にかけて、操作部50を移動させるためのレール等のガイド手段が設けられていても良い。そして、操作部50をガイド手段に沿って移動させると、操作部50は、徐々に扉前面板30の方向へ押されて行き、操作部50の固定位置まで到達するとフィルム40に押し付けられるように構成されていても良い。
【0064】
以上の変更例の他に、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更、置換、省略等を行うことができる。以上は例示であり発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態やその変更例は、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等の範囲に含まれるものである。