(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御器は、前記複数の回転角センサが検知する回転角に基づいて、i)前記操作部の位置を算出し、ii)算出した前記操作部の位置を手術マニピュレータに出力し、且つ、iii)前記アーム部及び前記リスト部の姿勢が重力によって変化しないように前記複数のモータの動作を制御するように構成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の操作装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医療用のロボットとして、手術マニピュレータが知られている。手術マニピュレータの入力装置には、操作者が軽く動かすことができることが要求される場合がある。一方、モータと入力装置のリンクとの間には一般に減速機が設けられる。従って、手術マニピュレータに上述の技術を単純に適用して、入力装置のリンクをモータで駆動すると、減速機のせいで操作者が入力装置を軽く動かすことができなくなる。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、操作者が軽く動かすことが可能な入力装置を備えた手術マニピュレータの操作装置およびロボット支援手術システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決する方策を、鋭意検討した。
【0007】
その結果、以下の知見を得た。
【0008】
すなわち、アーム部とアーム部の先端部に連結されたリスト部とリスト部の先端部に設けられた操作部とを備える手術マニピュレータの入力装置(以下、単に入力装置という場合がある)では、減速比が0.5以上30以下であれば、操作者が軽く動かすことができることが判った。また、減速比が小さくなると、手術マニピュレータを所定距離動かすのに必要な操作部の操作距離が大きくなるが、上記範囲内であれば、この点に関して支障が生じないことも判った。また、リスト部の減速機は、アーム部の減速機に比べると小さくて済むので、摩擦による抗力が小さい。そのため、入力装置を軽く動かすことができる減速比は、リスト部では、アーム部に比べて大きくてもよいことが判った。さらに、アーム部では、減速比が1以上2以下であることが好ましく、リスト部では、減速比が20以上30以下であることが、好ましいことが判った。
【0009】
そこで、本発明のある形態(aspect)に係る手術マニピュレータの操作装置は、入力装置と制御器とを備えており、前記入力装置は、
複数の関節を有するアーム部と、前記アーム部の先端部に連結された、
複数の関節を有するリスト部と、前記リスト部の先端部に設けられた、操作者が操作する操作部と、前記アーム部の
複数の関節及び前記リスト部の
複数の関節をそれぞれ駆動する複数のモータと、前記複数のモータの回転角又は前記関節の回転角をそれぞれ検知する複数の回転角センサと、を備えており、前記制御器は、前記複数の回転角センサが検知する回転角に基づいて前記モータの動作を制御するように構成されており、
前記リスト部における前記複数のモータから前記複数の関節にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比
より前記アーム部における前記複数のモータから前記複数の関節にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比が小さくなるように構成されており、前記アーム部における前記減速比が1以上2以下であり、前記リスト部における前記減速比が20以上30以下である。
【0012】
この構成によれば、減速機の摩擦による抗力がリスト部より大きいアーム部の減速比がリスト部の減速比より小さいので、操作者が入力装置を、より軽く動かすことができる。
また、アーム部における減速比が好ましい範囲にあるので、操作者が入力装置を、より一層軽く動かすことができる。さらに、リスト部における減速比が好ましい範囲にあるので、操作者が入力装置を、より一層軽く動かすことができる。
【0017】
前記アーム部の1以上の関節又は前記リスト部の1以上の関節のうちの所定の関節に設けられ、前記アーム部又は前記リスト部の自重によって前記所定の関節に発生するトルクの一部を打ち消すトルクを発生する補助バネをさらに備え、前記制御器は、前記複数の回転角センサが検知する回転角、又は前記回転角と前記補助バネが発生する前記トルクとに基づいて、前記アーム部及び前記リスト部の姿勢が重力によって変化しないように前記複数のモータの動作を制御するよう構成されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、アーム部及びリスト部の姿勢が重力によって変化しないように関節を駆動するモータの負担を低減することができ、当該モータを小型化することができる。
【0019】
前記アーム部は、3つ又は4つの関節を有し、前記リスト部は3つの関節を有してもよい。
【0020】
この構成によれば、アーム部及びリスト部の自由度が6又は7になり、入力装置の操作性が良くなる。
【0021】
前記リスト部の3つの関節が有する3つの関節軸は、1点で交差してもよい。
【0022】
この構成によれば、リスト部の3つの関節がジンバル機構を構成し、操作者が操作する操作部の姿勢を変化させることなく、操作部を任意の方向に移動させることができる。
【0023】
前記制御器は、前記複数の回転角センサが検知する回転角に基づいて、i)前記操作部の位置を算出し、ii)算出した前記操作部の位置を手術マニピュレータに出力し、且つ、iii)前記アーム部及び前記リスト部の姿勢が重力によって変化しないように前記複数のモータの動作を制御するように構成されてもよい。
【0024】
この構成によれば、制御器がアーム部及びリスト部の姿勢が重力によって変化しないように複数のモータの動作を制御するので、操作者が操作部に対する操作を止めた位置に操作部がとどまる。
【0025】
また、本発明のある形態に係るロボット手術支援システムは、先端部に手術ツールが着脱可能に取り付けられる手術マニピュレータと、前記手術マニピュレータを操作するための入力装置および制御器を備えた遠隔操作装置と、を備えており、前記入力装置は、
複数の関節を有するアーム部と、前記アーム部の先端部に連結された、
複数の関節を有するリスト部と、前記リスト部の先端部に設けられた、操作者が操作する操作部と、前記アーム部の
複数の関節及び前記リスト部の
複数の関節をそれぞれ駆動する複数のモータと、前記複数のモータの回転角又は前記関節の回転角をそれぞれ検知する複数の回転角センサと、を備えており、前記制御器は、前記複数の回転角センサが検知する回転角に基づいて前記モータの動作を制御するように構成されており、
前記リスト部における前記複数のモータから前記複数の関節にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比
より前記アーム部における前記複数のモータから前記複数の関節にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比が小さくなるように構成されており、前記アーム部における前記減速比が1以上2以下であり、前記リスト部における前記減速比が20以上30以下である。
【0026】
この構成によれば、操作者が入力装置を介して手術マニピュレータを操作する際に操作者が入力装置を軽く動かすことができる。
また、アーム部における減速比が好ましい範囲にあるので、操作者が入力装置を、より一層軽く動かすことができる。さらに、リスト部における減速比が好ましい範囲にあるので、操作者が入力装置を、より一層軽く動かすことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、操作者が軽く動かすことが可能な入力装置を備えた手術マニピュレータの操作装置およびロボット支援手術システムを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0030】
なお、以下の図は、本発明を説明するための図であるので、それらの図において本発明に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、複数の図において、互いに対応する要素が一致しない場合等がある。
【0031】
また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0033】
[構成]
{ハードウェアの構成}
図1は、本発明の実施形態1に係る手術マニピュレータを含むロボット支援手術システムの一例の概要を示す模式図である。
図2は、
図1のロボット支援手術システムが備える遠隔操作装置の一例の外観の概要を示す模式図である。以下では、
図1及び
図2の上下方向をロボット支援手術システムの使用環境(使用空間)における上下方向として説明する。
【0034】
図1及び
図2を参照すると、ロボット支援手術(RAS:Robotically-Assisted Surgical)システム200は、ポジショナ201と、手術マニピュレータ202と、遠隔操作装置100と、を備える。
【0035】
<ロボット支援手術システム200>
図1を参照すると、例えば、手術室に手術台203が配置され、手術台203の上に患者204が横たえられる。手術台203の近傍にポジショナ201が配置される。ポジショナ201は、適宜な置台(不図示)の上に載置される。ポジショナ201は、例えば多関節ロボットで構成される。ポジショナ201の先端部にはベース201aが設けられている。ベース201aに多関節ロボットで構成される手術マニピュレータ202が取り付けられている。手術マニピュレータ202は、例えば、基部と、アーム部401と、アーム部401に着脱可能に取り付けられるエンドエフェクタ部とを有し、基部がベース201aに固定され、基部とリンク404、リンク404同士が複数の関節によって連結されている。基部には、複数(ここでは、例えば、4本)のアーム部401が連結されている。複数のアーム部401の先端には、エンドエフェクタ部として、それぞれ、手術ツール402が取り付けられる。手術ツール402は、例えば、鉗子、内視鏡等を含む。
【0036】
ポジショナ201は、手術マニピュレータ202を、当該手術マニピュレータ202が患者204に手術を施すのに適した位置に搬送する。そして、ポジショナ201はベース201aを水平状態に保持する。なお、ベース201aを水平状態から傾けてもよい。
【0037】
<遠隔操作装置100>
図2には、遠隔操作装置100の概要が示されている。なお、
図2は、遠隔操作装置100の概念を判り易く示す図であり、そのため、
図2には、特に入力装置2の細部の構造が、後述する
図3〜
図8に示される具体的な構造と異なって示されている。
【0038】
図2を参照すると、遠隔操作装置100は、操作者(手術する医師)が手術マニピュレータ202の動作を制御して手術を行うための装置である。遠隔操作装置100は、ポジショナ201及び手術マニピュレータ202と、有線又は無線により、電気的に接続されている。遠隔操作装置100は、例えば、手術台の近傍又は別室に配置される。
【0039】
遠隔操作装置100は、ここでは、本体1と、入力装置2と、複数のペダル4と、表示部5と、ビュアー(不図示)と、を備える。
【0040】
本体1は、側面から見て略L字状に形成されており、本体1の、当該本体1に向かって右側及び左側の部分に、それぞれ、右入力装置2A及び左入力装置2Bが設けられている。右入力装置2A及び左入力装置2Bは、操作者が、それぞれ、右手及び左手で操作するためのものである。右入力装置2A及び左入力装置2Bは、それぞれ、スレーブロボットとしての手術マニピュレータ202の各アーム部401に対するマスター入力装置として機能する。
【0041】
本体1の上部には、前方に突出するようにU字状の支持部材3が設けられている。支持部材3の前端部の中央部に表示部5が設けられている。表示部5は、例えば、タッチパネルで構成されていて、操作者が遠隔操作装置100に各種の設定を行うための情報を表示又は入力するための画面として機能する。ビュアー(不図示)は、遠隔操作装置100の上部に設けられるが、ビュアーの構成及び機能は良く知られているので、
図2では、入力装置2を見易くするために、図示を省略している。ビュアーには、手術マニピュレータ202のアーム部401の先端にエンドエフェクタ部として取り付けられた内視鏡(手術ツール402)によって撮像された画像が表示される。
【0042】
本体1の下部には、前方に突出するように複数(ここでは4本)のペダル4が設けられている。複数のペダル4は、右入力装置2A及び左入力装置2Bと手術マニピュレータ202の各アームとの接続の切り替え、モニタ5に表示される画像のズーム等を行うものである。
【0043】
操作者は、例えば、遠隔操作装置100の前に配置された椅子に腰かけた状態で、ビュアーに表示される患者204の体内の画像を見ながら、右入力装置2A及び左入力装置2Bをそれぞれ右及び左の手で操作して手術を行う。
【0044】
<入力装置2>
図3は、
図2に示す入力装置2の概要を模式的に示す側面図である。
図3には、入力装置2の構成が簡略化されて示されている。入力装置2の具体的な構造例は、
図4〜
図8を参照されたい。
図3には、右入力装置2Aが示されている。左入力装置2Bは、右入力装置2Aの左右方向の構造を逆にしただけである。従って、左入力装置2Bの説明を省略する。以下では、便宜上、
図3の上下方向を及び左右方向を、それぞれ、右入力装置2Aの上下方向及び前後方向とする。右入力装置2Aは、初期状態において、
図3に示す基準姿勢を取る。
【0045】
図3を参照すると、右入力装置2Aは、側面視において、略L字状の基準姿勢を取る。以下、右入力装置2Aの基準姿勢を単に「基準姿勢」という場合がある。右入力装置2Aは、アーム部11とリスト部12とを備える。なお、特許請求の範囲及び明細書において、関節JT1〜JT7が有する回動軸線A1〜A7を「関節軸」と呼ぶ場合がある。
【0046】
{アーム部11}
アーム部11は、例えば、基体21と、第1リンク22と、第2リンク23と、第3リンク24とを備える。基体21は遠隔操作装置100の本体1に固定されている。基体21の上下方向における一方の端部(ここでは下端部)に、第1リンク22の一方の端部(ここでは上端部)が、第1関節JT1を介して、上下方向に延びる第1回動軸線A1の周り回動自在に連結されている。第1リンク22の他方の端部(ここでは下端部)に、第2リンク23の一方の端部(ここでは上端部)が、第2関節JT2を介して、第1回動軸線A1に直交し且つ左右方向に延びる第2回動軸線A2の周り回動自在に連結されている。第2リンク23の他方の端部(ここでは下端部)に、第3リンク24の一方の端部(基準姿勢における後端部)が、第3関節JT3を介して、第2回動軸線A2に平行に延びる第3回動軸線A3の周り回動自在に連結されている。また、第1リンク22の他方の端部には、揺動部材25の一方の端部が第2回動軸線A2の周りに回動自在に設けられている。揺動部材25の他方の端部には、補助リンク26の一方の端部(ここでは、上端部)が第9回動軸線A9の周りに回動自在に連結されている。第9回動軸線A9は、第2回動軸線A2に平行で且つ第2回動軸線から所定距離だけ離れて延在する。補助リンク26の他方の端部(ここでは下端部)は、第3リンクの一方の端部に第10回動軸線A10の周りに回動自在に連結されている。第10回動軸線A10は、第3回動軸線A3に平行で且つ第3回動軸線から第3リンク24の一方の端向かう方向に上記所定距離だけ離れて延在する。つまり、補助リンク26及び第2リンク23は、平行リンクを構成している。
【0047】
第3リンク24の他方の端部(基準姿勢における前端部)には、リスト部12が、第4関節JT4を介して、第4回動軸線A4の周りに回動自在に連結されている。第4回動軸線A4は、第3回動軸線A3及び第10回動軸線A10を含む平面に直交するように延在する。
【0048】
図4は、
図3の入力装置のアーム部11のうちの肩部の縦断面を示す断面図である。
図4を参照すると、肩部は基体21で構成され、基体21は、枠体状に形成されている。基体21には、第1モータM1が下向きに設けられている。具体的には、第1モータM1は、主軸S1が第1回動軸線A1と同軸になるように設けられている。第1モータM1には、第1モータM1の回転角を検知する第1回転角センサE1が設けられている。第1回転角センサE1は、回転角を検知できるものであればよく、例えば、エンコーダ、回転計等で構成される。「回転角センサ」は、関節に設けられて関節の回転角を検知してもよい。このことは、後述する第2乃至第7回転角センサE2〜E7にも当て嵌まる。第1回転角センサE1は、ここでは、第1モータM1の主軸S1に直結されたエンコーダで構成される。主軸S1は、円筒状の連結部材62を用いて、第1リンク22の第1回転軸R1(
図5参照)と同軸に突き合わせ接続されている。詳しくは、第1モータM1の主軸S1と第1回転軸R1とは、双方の端面同士が突合せ接合するように接続されている。
【0049】
図5は、
図3の右入力装置2Aのアーム部11のうちの上腕部の縦断面を示す断面図である。
図5を参照すると、アーム部11の上腕部は、第1リンク22、第2リンク23、及び補助リンク26を含む。第1リンク22は、枠体状に形成されている。第1リンク22の一方の端部(ここでは、上端部)には、第1回転軸R1が設けられている。上述のように、第1回転軸R1は、第1モータM1の主軸S1と同軸に接続されている。この第1回転軸R1及び第1モータM1によって、第1関節JT1が構成されており、これにより、第1リンク22が、基体21に対し、第1回動軸線A1の周りに自在に回動することが可能であり、第1リンク22の回動による第1モータM1の回転角を第1回転角センサE1によって検知することが可能であり、且つ、第1モータM1によって第1回転軸R1を
回転駆動することが可能である。
【0050】
第2リンクは、中空の棒状に形成されている。第2リンク23の一方の端部(上端部)には、第2回転軸R2が設けられている。この第2回転軸R2が、軸受51を介して、第1リンク22の他方の端部(下端部)に、第2回動軸線A2の周りに回動自在に取り付けられている。この第2回転軸R2及び軸受51によって、第2関節JT2が構成されており、これにより、第2リンク23が、第1リンク22に対し、第2回動軸線A2の周りに自在に回動することが可能である。
【0051】
第2回転軸R2には、従動プーリー33が設けられている。一方、第1リンク22には、主軸S2の中心軸が第2回動軸線A2に平行になるように、第2モータM2が設けられている。第2モータM2には、第2モータM2の回転角を検知する第2回転角センサE2が設けられている。第2回転角センサE2は、回転角を検知できるものであればよく、例えば、エンコーダ、回転計等で構成される。第2回転角センサE2は、ここでは、第2モータM2の主軸S2に直結されたエンコーダで構成される。
【0052】
第2モータM2の主軸S2には、駆動プーリー32が設けられている。この駆動プーリー32と従動プーリー33とにベルト34が巻き掛けられている。これにより、第2リンク23の回動による第2モータM2の回転角を第2回転角センサE2によって検知することが可能であり、且つ、第2モータM2によって第2回転軸R2を回転駆動することが可能である。
【0053】
さらに、第2リンク23の適所(ここでは中央部)と第1リンク22との間に引張コイルバネ(補助バネ)SP1が設けられている。この引張コイルバネSP1は、中心軸が第2回動軸線A2と第3回動軸線A3とに直交するように設けられている。また、この引張コイルバネSP1は、第2リンク23が基準姿勢から回動すると、その回動方向に所定のトルクを第2回転軸R2に対して作用させるように設計されている。この所定のトルクは、アーム部11の第2リンク23から先の部分及びリスト部12の自重によって第2回転軸R2に発生するトルク(以下、重力トルクという場合がある)の一部を打ち消すようなトルクに設定されている。これにより、第2回転軸R2に発生する重力トルクの一部が引張コイルバネSP1によって打ち消される。
【0054】
第3リンク24は、棒状の箱体に形成されていて、内部に主要な要素が収容されている。第3リンク24の一方の端部(後端部)には、第3回転軸R3が設けられている。この第3回転軸R3が、軸受52を介して、第2リンク23の他方の端部に、第3回動軸線A3の周りに回動自在に取り付けられている。この第3回転軸R3及び軸受52によって、第3関節JT3が構成されており、これにより、第3リンク24が、第2リンク23に対し、第3回動軸線A3の周りに自在に回動することが可能である。
【0055】
一方、揺動部材25は細長い板状に形成されていて、この揺動部材25の一方の端部に、第11回転軸R11が設けられている。この第11回転軸R11が、軸受53を介して、第1リンク22の他方の端部に第2回動軸線A2の周りに回動自在に取り付けられている。
【0056】
また、揺動部材25の他方の端部に第9回転軸R9が設けられている。この第9回転軸R9が、軸受(不図示)を介して、補助リンク26の一方の端部に第9回動軸線A9の周りに回動自在に連結されている。
【0057】
また、第3リンク24の一方の端と第3関節JT3との間の部分に第10回転軸R10が設けられている。この第10回転軸が、軸受(不図示)を介して、補助リンク26の他方の端部に第10回動軸線A10の周りに回動自在に連結されている。なお、上述のように、補助リンク26と第2リンク23とは平行リンクを構成している。
【0058】
さらに、第11回転軸R11には、従動プーリー44が設けられている。一方、第1リンク22の適宜な位置に、主軸S3の中心軸が第11回動軸線A11に平行になるように、第3モータM3が設けられている。第3モータM3には、第3モータM3の回転角を検知する第3回転角センサE3が設けられている。第3回転角センサE3は、回転角を検知できるものであればよく、例えば、エンコーダ、回転計等で構成される。第3回転角センサE3は、ここでは、第3モータM3の主軸S3に直結されたエンコーダで構成される。
【0059】
第3モータM3の主軸S3には、駆動プーリー42が設けられている。この駆動プーリー42と従動プーリー33とにベルト34が巻き掛けられている。
【0060】
以上の補助リンク26に関連する構成によれば、第3リンク24が回動すると、補助リンク26が第2リンク23に平行に移動し、それによって揺動部材25が揺動し、この揺動部材25の揺動に応じて、従動プーリー44、駆動プーリー42、及び第3モータM3が順に回転する。従って、この一連の動作により、第3リンク24の回動による第3モータM3の回転角を第2回転角センサE2によって検知することが可能である。また、この一連の動作の逆の動作により、第3モータM3によって第3回転軸R3を回転駆動することが可能である。
【0061】
さらに、揺動部材25と第1リンク22との間に圧縮コイルバネ(不図示)が設けられている。この圧縮コイルバネは、常時、揺動部材を下方に回動させるトルクを発生するように設計されている。このトルクは、アーム部11の第3リンク24及びリスト部12の自重によって第9回転軸R9に発生する重力トルクの一部を打ち消すようなトルクに設定されている。これにより、第9回転軸R9に発生する重力トルクの一部がこのコイルバネによって打ち消される。
【0062】
{リスト部12}
図6は、
図3の入力装置のリスト部12の外観を示す斜視図である。
図6は、基準姿勢にあるリスト部12を示している。
図6を参照すると、リスト部12は、例えば、第4リンク71と、第5リンク72と、第6リンク73と、第7リンクとしての操作部74とを備える。第4リンク71、第5リンク72、第6リンク73、及び操作部74は、3軸(自由度3)のジンバルを構成している。具体的には、第5リンク72が、第4リンク71に対し、第5回動軸線A5の周りに回動自在であり、第6リンク73が、第5リンク72に対し、第5回動軸線A5に直交する第6回動軸線A6の周りに回動自在であり、操作部74が、第6リンク73に対し、第5回動軸線A5及び第6回動軸線A6に直交する第7回動軸線A7の周りに回動自在である。従って、操作者は、操作部74を、これら3つの回動軸線A5〜A7の交点を中心に回動させて、任意の方向に向けることができる。
【0063】
図3及び
図6を参照すると、第4リンク71はL字状に形成されていて、この第4リンク71の一方の端部(基準姿勢における前端部)が、第4関節JT4を介して、第4回動軸線の周りに回動自在に第3リンク24(
図3参照)の他方の端部(基準姿勢における前端部)に連結されている。第4回動軸線A4は、第3回動軸線A3及び第10回動軸線A10を含む平面に直交する。
【0064】
図6を参照すると、第4リンク71の他方の端部(基準姿勢における後端部)に、第5リンク72の一方の端部(基準姿勢における後端端部)が、第5関節JT5を介して、第4回動軸線A4に直交する第5回動軸線A5の周り回動自在に連結されている。第5リンク72は、第4リンク71より一回り小さいL字状に形成されている。第5リンク72の他方の端部(基準姿勢における前端部)に、第6リンク73の一方の端部(基準姿勢における右端部)が、第6関節JT6を介して、第6回動軸線A6の周り回動自在に連結されている。第6リンク73は、第5リンク72より一回り小さいL字状に形成されている。第6リンク73の他方の端部(基準姿勢における左端部)に、操作部74の一方の端部(基準姿勢における左端部)が、第7関節JT7を介して、第7回動軸線A7の周り回動自在に連結されている。操作部74は、棒状の本体と、この本体に設けられた一対の円筒状の指挿入部74aとを備える。一対の指挿入部74aは、操作者がこれらに親指と人差し指とを挿入し、親指と人差し指とで、あたかも物をつまんだり放したりするように一対の指挿入部74aを操作することができるように構成されている。
【0065】
次に、リスト部12の詳細な構造の一例を説明する。
【0066】
図7は、
図6のリスト部12の第4リンク71及び第5リンク72の縦断面を示す断面図である。
図8は、
図6のリスト部12の第6リンク73及び操作部74の縦断面を示す断面図である。
図7はリスト部12を、第5回動軸線A5及び第6回動軸線A6を含む平面で切断した断面を示し、
図8はリスト部12を、第6回動軸線A6及び第7回動軸線A7を含む平面で切断した断面を示す。
【0067】
図7を参照すると、第4リンク71は、L字状の箱体に形成されていて、主要な要素が箱体の内部に収容されている。第4リンク71の一方の端部(前端部)には、第4回転軸R4が設けられている。この第4回転軸R4が、軸受81を介して、第3リンク24の他方の端部(前端部)に、第4回動軸線A4の周りに回動自在に取り付けられている。この第4回転軸R4及び軸受81によって、第4関節JT4が構成されており、これにより、第4リンク71が、第3リンク24に対し、第4回動軸線A4の周りに自在に回動することが可能である。
【0068】
また、第3リンク24の内部には、第4モータM4が、主軸S4の中心軸が第4回動軸線A4と直交するように設けられている。第4モータM4には、第4モータM4の回転角を検知する第4回転角センサE4が設けられている。第4回転角センサE4は、回転角を検知できるものであればよく、例えば、エンコーダ、回転計等で構成される。第4回転角センサE4は、ここでは、第4モータM4の主軸S4に直結されたエンコーダで構成される。第4モータM4の主軸S4は、ベベルギア機構G1を介して第4回転軸R4に接続されている。これにより、第4リンク71の回動による第4モータM4の回転角を第4回転角センサE4によって検知することが可能であり、且つ、第4モータM4によって第4回転軸R4を回転駆動することが可能である。
【0069】
第5リンク72は、L字状の箱体に形成されていて、主要な要素が箱体の内部に収容されている。第5リンク72の一方の端部(後端部)には、第5回転軸R5が設けられている。この第5回転軸R5が、軸受82を介して、第4リンク71の他方の端部(後端部)に、第5回動軸線A5の周りに回動自在に取り付けられている。この第5回転軸R5及び軸受82によって、第5関節JT5が構成されており、これにより、第5リンク72が、第4リンク71に対し、第5回動軸線A5の周りに自在に回動することが可能である。
【0070】
また、第4リンク71の内部には、第5モータM5が、主軸S5の中心軸が第5回動軸線A5と直交するように設けられている。第5モータM5には、第5モータM5の回転角を検知する第5回転角センサE5が設けられている。第5回転角センサE5は、回転角を検知できるものであればよく、例えば、エンコーダ、回転計等で構成される。第5回転角センサE5は、ここでは、第5モータM5の主軸S5に直結されたエンコーダで構成される。第5モータM5の主軸S5は、ベベルギア機構G2を介して第5回転軸R5に接続されている。これにより、第5リンク72の回動による第5モータM5の回転角を第5回転角センサE5によって検知することが可能であり、且つ、第5モータM5によって第5回転軸R5を回転駆動することが可能である。
【0071】
さらに、第4リンク71の適所(ここでは基準姿勢における後端部の下端部)と第5回転軸R5との間に圧縮コイルバネSP2(補助バネ)が設けられている。この圧縮コイルバネSP2は、中心軸が第4回動軸線A4に平行で且つ第5回動軸線A5に直交するように設けられている。また、この圧縮コイルバネSP2は、第5リンク72が基準姿勢から回動すると、その回動方向に所定のトルクを第5リンク72に対して作用させるように設計されている。この所定のトルクは、リスト部12の第5リンクから先の部分の自重によって第5回転軸R5に発生する重力トルクの一部を打ち消すようなトルクに設定されている。これにより、第5回転軸R5に発生する重力トルクの一部が圧縮コイルバネSP2によって打ち消される。
【0072】
図7及び
図8を参照すると、第6リンク73は、L字状の箱体に形成されていて、主要な要素が箱体の内部に収容されている。第6リンク73の一方の端部(右端部)には、第6回転軸R6が設けられている。この第6回転軸R6が、軸受83を介して、第5リンク72の他方の端部(前端部)に、第6回動軸線A6の周りに回動自在に取り付けられている。この第6回転軸R6及び軸受83によって、第6関節JT6が構成されており、これにより、第6リンク73が、第5リンク72に対し、第6回動軸線A6の周りに自在に回動することが可能である。
【0073】
また、第5リンク72の内部には、第6モータM6が、主軸S6の中心軸が第6回動軸線A6と直交するように設けられている。第6モータM6には、第6モータM6の回転角を検知する第6回転角センサE6が設けられている。第6回転角センサE6は、回転角を検知できるものであればよく、例えば、エンコーダ、回転計等で構成される。第6回転角センサE6は、ここでは、第6モータM6の主軸S6に直結されたエンコーダで構成される。第6モータM6の主軸S6は、ベベルギア機構を介して第6回転軸R6に接続されている。これにより、第6リンク73の回動による第6モータM6の回転角を第6回転角センサE6によって検知することが可能であり、且つ、第6モータM6によって第6回転軸R6を回転駆動することが可能である。
【0074】
図8を参照すると、操作部74の一方の端部(左端部)には、第7回転軸R7が設けられている。この第7回転軸R7が、軸受84を介して、第6リンク73の他方の端部(左端部)に、第7回動軸線A7の周りに回動自在に取り付けられている。この第7回転軸R7及び軸受84によって、第7関節JT7が構成されており、これにより、操作部74が、第6リンク73に対し、第7回動軸線A7の周りに自在に回動することが可能である。
【0075】
また、第6リンク73の内部には、第7モータM7が、主軸S7の中心軸が第7回動軸線A7と直交するように設けられている。第7モータM7には、第7モータM7の回転角を検知する第7回転角センサE7が設けられている。第7回転角センサE7は、回転角を検知できるものであればよく、例えば、エンコーダ、回転計等で構成される。第7回転角センサE7は、ここでは、第7モータM7の主軸S7に直結されたエンコーダで構成される。第7モータM7の主軸S7は、ベベルギア機構G4を介して第7回転軸R7に接続されている。これにより、操作部74の回動による第7モータM7の回転角を第7回転角センサE7によって検知することが可能であり、且つ、第7モータM7によって第7回転軸R7を回転駆動することが可能である。
【0076】
<減速比>
以上のように構成された入力装置2では、第1乃至第7モータM1〜M7から第1乃至第7関節JT1〜JT7にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比が0.5以上30以下に設計される。
【0077】
図3及び
図5を参照すると、第1モータM1から第1関節JT1に至る動力伝達経路は、第1モータM1の主軸S1及び第1回転軸R1で構成される。第2モータM2から第2関節JT2に至る動力伝達経路は、第2モータM2の主軸S2、駆動プーリー32、ベルト34、従動プーリー33、及び第2回転軸R2で構成される。第3モータM3から第3関節JT3に至る動力伝達経路は、第3モータM3の主軸S3、駆動プーリー42、ベルト45、従動プーリー44、第11回転軸R11、揺動部材25、第9回転軸R9、補助リンク26、第10回転軸R10、第3リンク24、及び第3回転軸R3で構成される。
【0078】
図7を参照すると、第4モータM4から第4関節JT4に至る動力伝達経路は、第4モータM4の主軸S4、べベルギア機構G1、及び第4回転軸R4で構成される。第5モータM5から第5関節JT5に至る動力伝達経路は、第5モータM5の主軸S5、べベルギア機構G2、及び第5回転軸R5で構成される。第6モータM6から第6関節JT6に至る動力伝達経路は、第6モータM6の主軸S6、べベルギア機構G3、及び第6回転軸R6で構成される。
図8を参照すると、第7モータM7から第7関節JT7に至る動力伝達経路は、第7モータM7の主軸S7、べベルギア機構G4、及び第7回転軸R7で構成される。
【0079】
減速比が30以下であれば、操作者が入力装置2を軽く動かすことができる。一方、減速比が小さくなると、手術マニピュレータ202を所定距離動かすのに必要な操作部74の操作距離が大きくなるが、減速比が0.5以上であれば、この点に関して支障が生じない。
【0080】
また、入力装置2では、アーム部11における減速比が、リスト部12における減速比より小さく設計される。一般に、アーム部11の減速機の摩擦による抗力は、リスト部12の減速機の摩擦による抗力より大きい。従って、このように、アーム部11の減速比をリスト部12の減速比より小さくすると、操作者が入力装置2を、より軽く動かすことができる。
【0081】
アーム部11における減速比は1以上2以下であることが好ましい。減速比をこのように設計すると、操作者が入力装置2を、より一層軽く動かすことができる。
【0082】
また、リスト部12における減速比は、20以上30以下であることが好ましい。減速比をこのように設計すると、操作者が入力装置2を、より一層軽く動かすことができる。
【0083】
上述の構成例では、例えば、第1乃至第3モータM1〜M3から第1乃至第3関節JT1〜JT3にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比は1である。また、例えば、第4乃至第7モータM4〜M7から第4乃至第7関節JT4〜JT7にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比は28である。
【0084】
{制御系統の構成}
図9は、遠隔操作装置100及び手術マニピュレータ202の制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0085】
図9を参照すると、遠隔操作装置100は、右入力装置2Aを制御するための入力装置制御器C1を備える。入力装置制御器C1は、例えば、右入力装置2A及び左入力装置2Bに共通に設けられている。入力装置制御器C1による両者の制御は同様であるので、ここでは、右入力装置2Aに関する制御のみ説明し、左入力装置2Bに関する制御の説明を省略する。なお、右入力装置2A及び左入力装置2Bを制御するために、それぞれ、入力装置制御器C1を設けてもよい。入力装置制御器C1は、例えば、制御部(不図示)とサーボアンプ(不図示)とを備える。制御部は、集中制御を行う単独の制御器又は分散制御をする複数の制御器で構成される。制御部は、ここでは、集中制御を行う単独の制御器で構成される。制御部は、例えば、プロセッサとメモリとを備える。制御部は、メモリに格納された所定の動作プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、右入力装置2Aの動作を制御する。制御部は、具体的には、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等で構成される。
【0086】
右入力装置2Aでは、第1乃至第7関節JT1〜JT7にそれぞれ対応する第1乃至第7モータM1〜M7の回転角を、それぞれ、第1乃至第7回転角センサE1〜E7が検知し、検知した第1乃至第7モータM1〜M7の回転角を、それぞれ、入力装置制御器C1に出力する。入力装置制御器C1では、制御部が、入力された第1乃至第7モータM1〜M7の回転角に基づいて、操作部74の位置を算出し、算出した操作部74の位置(位置指令信号)を手術マニピュレータ202のマニピュレータ制御器C2に出力する。また、制御部は、入力された第1乃至第7モータM1〜M7の回転角に基づいて、アーム部11及びリスト部12の姿勢が重力によって変化しないような電流指令値を算出し、算出した電流指令値をサーボアンプに出力する。サーボアンプは、入力された電流指令値に対応する電流を第1乃至第7モータM1〜M7に出力する。これにより、アーム部11及びリスト部12の姿勢が、重力によって変化しないように制御される。この際、第1乃至第7回転角センサE1〜E7が検知する回転角が、アーム部11及びリスト部12の姿勢をフィードバック制御するために用いられる。
【0087】
マニピュレータ制御器C2は、例えば、制御部(不図示)とサーボアンプ(不図示)とを備える。制御部は、集中制御を行う単独の制御器又は分散制御をする複数の制御器で構成される。制御部は、ここでは、集中制御を行う単独の制御器で構成される。制御部は、例えば、プロセッサとメモリとを備える。制御部は、メモリに格納された所定の動作プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、手術マニピュレータ202の動作を制御する。制御部は、具体的には、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等で構成される。
【0088】
手術マニピュレータ202では、リンク404及び手術ツール402を連結する1以上の関節にそれぞれ対応する1以上のモータM202の回転角を、それぞれ、1以上の回転角センサE202が検知し、検知した1以上のモータM202の回転角を、それぞれ、マニピュレータ制御器C2に出力する。マニピュレータ制御器C2では、制御部が、入力装置制御器C1から入力された操作部74の位置(位置指令信号)に基づいて、手術ツール402が操作部74の位置に対応する位置に位置するような1以上のモータM202の電流指令値を算出し、算出した電流指令値をサーボアンプに出力する。サーボアンプは、入力された電流指令値に対応する電流を1以上のモータM202に出力する。これにより、手術ツール402が操作部74の位置に対応する位置に位置するようにリンク404の動作が制御される。この際、1以上の回転角センサE202が検知する回転角が、手術ツール402の位置をフィードバック制御するために用いられる。
【0089】
なお、入力装置2Aの操作部74の姿勢及び動作が、別途、適宜なセンサ(不図示)により検知され、入力装置制御器C1を経由してマニピュレータ制御器C2に入力される。マニピュレータ制御器C2は、手術ツール402が、入力装置2Aの操作部74の姿勢に対応する姿勢を取るとともに入力装置2Aの操作部74の動作に対応する動作を行うよう手術ツール402を制御する。
【0090】
[動作]
まず、右入力装置2A及び手術マニピュレータ202の動作を説明する。
【0091】
図3及び
図6を参照すると、操作者は、例えば、右入力装置2Aの操作部74の一対の指挿入部74aに親指と人差し指とを挿入する。そして、操作者が、操作部74を左右に動かすと、アーム部11が、第1関節JT1の第1回動軸線A1を中心に左右に回動する。操作者が操作部74を前後に動かすと、アーム部11が、第2関節JT2の第2回動軸線A2を中心に前後に回動する。操作者が、操作部74を上下に動かすと、アーム部11が、第3関節JT3の第3回動軸線A3を中心に上下に回動する。操作者が、リスト部12を左右に回転させると、リスト部12が、第4関節JT4の第4回動軸線A4を中心に左右に回転する。操作者が、操作部74の向き(姿勢)を変えるように操作部74を操作すると、操作部74がその変えようとする向きに動く(姿勢を取る)。従って、操作者は、入力装置2Aを意図するように操作することができる。
【0092】
右入力装置2Aの操作部74が操作されると、この操作が入力装置制御器C1によって位置指令信号に変換され、マニピュレータ制御器C2が、この位置指令信号に従って、手術マニピュレータ202の選択されたアーム部401の手術ツール402が操作部74に対応する位置に位置するように当該選択されたアーム部401の動作を制御する。これにより、手術マニピュレータ202選択されたアーム部401が、操作者による右入力装置2Aの操作に従って動作する。アーム部401の選択は、遠隔操作装置100のペダル4を操作することによって行われる。なお、左入力装置2Bの動作もこれと同様である。
【0093】
次に、右入力装置2Aの重力打消し制御を説明する。
図10は、
図9の入力装置制御器C1の重力打消し制御の一例を示すフローチャートである。
【0094】
図10を参照すると、入力装置制御器C1の制御部は、アーム部11及びリスト部12の制御モデルに基づいて、リアルタイムで以下の制御を行う。
【0095】
まず、入力装置制御器C1の制御部は、各関節JT1〜JT7に対応する各モータM1〜M7の回転角を取得する(ステップST1)。
【0096】
次いで、入力装置制御器C1の制御部は、得られた各関節JT1〜JT7に対応する各モータM1〜M7の回転角に基づいて、アーム部11及びリスト部12の姿勢を演算する(ステップST2)。
【0097】
次いで、入力装置制御器C1の制御部は、得られた姿勢によって各関節JT1〜JT7の各回転軸R1〜R7に発生する重力トルクを打ち消す重力打消しトルクを演算する(ステップST3)。具体的には、制御部は、得られた姿勢から回転軸R1〜R7毎に定まる重力トルクをそれぞれ演算する。そして、コイルバネが設けられている関節JT2、JT3、JT5においては、重力トルクからコイルバネが発生するトルクを差し引いたトルクと反対方向のトルクを重力打消しトルクとし、コイルバネが設けられていない関節JT1、JT4、JT6、JT7においては、重力トルクと反対方向のトルクを重力打消しトルクとする。
【0098】
次いで、入力装置制御器C1のサーボアンプは、得られた姿勢維持トルクに対応する電流を各関節JT1〜JT7に対応する各モータM1〜M7に出力する(ステップST4)。
【0099】
これにより、アーム部11及びリスト部12における重力トルクが打ち消されるので、操作者は、右入力装置2Aの操作部74を重力による抗力を感じることなく操作することができ、且つ、操作者が操作部74の操作を止めると、操作部74が、操作を止めた位置に操作を止めた姿勢で停止する。
【0100】
以上に説明したように、本実施形態の入力装置2によれば、入力装置制御器C1がアーム部11及びリスト部12の姿勢が重力によって変化しないように複数の関節JT1〜JT7に対応する複数のモータM1〜M7の動作を制御するので、操作者が操作部74に対する操作を止めた位置に、操作を止めた姿勢で、操作部74がとどまる。
【0101】
また、複数のモータM1〜M7から複数の関節JT1〜JT7にそれぞれ至る動力伝達経路における減速比が0.5以上30以下であるので、操作者が入力装置2を軽く動かすことが可能である。
【0102】
さらに、所定の関節JT2、JT3、JT5に、アーム部11又は12リスト部の自重によって所定の関節JT2、JT3、JT5に発生するトルクの一部を打ち消すトルクを発生する補助バネSP1〜SP3をさらに備えるので、アーム部11及びリスト部12の姿勢が重力によって変化しないように関節を駆動するモータM2、M3、M5の負担を低減することができ、当該モータM2、M3、M5を小型化することができる。
【0103】
(その他の実施形態)
実施形態1では、アーム部11の関節が3つであったが、アーム部11の関節は1以上であればよい。
【0104】
実施形態1では、リスト部12の関節が4つであったが、アーム部11の関節は1以上であればよい。
【0105】
実施形態1では、リスト部12における減速比よりアーム部における減速比が小さいが、リスト部12における減速比に比べて、アーム部における減速比が同じ又は大きくてもよい。
【0106】
実施形態1では、第3関節JT3が補助リンク機構(25、26)を備えるが、補助リンク機構(25、26)を省略してもよい。
【0107】
実施形態1では、第2関節JT2、第3関節JT3、及び第5関節JT5にコイルバネが設けられているが、コイルバネを省略してもよい。また、全ての関節にコイルバネを設けてもよい。また、コイルバネに代えて、他の付勢手段を用いてもよい。
【0108】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。