特許第6875520号(P6875520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875520吸入器用の蒸発器ユニット及び蒸発器ユニットを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875520
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】吸入器用の蒸発器ユニット及び蒸発器ユニットを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20210517BHJP
   A24F 40/57 20200101ALI20210517BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20210517BHJP
【FI】
   A24F40/46
   A24F40/57
   A24F47/00
【請求項の数】24
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-522986(P2019-522986)
(86)(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公表番号】特表2019-533462(P2019-533462A)
(43)【公表日】2019年11月21日
(86)【国際出願番号】EP2017077459
(87)【国際公開番号】WO2018083007
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年6月24日
(31)【優先権主張番号】102016120803.5
(32)【優先日】2016年11月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595112018
【氏名又は名称】ハウニ・マシイネンバウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・レーネ
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー・マルク
(72)【発明者】
【氏名】カライジエン・カレン
(72)【発明者】
【氏名】チエウ・ホック・キエム
(72)【発明者】
【氏名】ボーネ・スヴェン
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0238424(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/145072(WO,A1)
【文献】 特開2010−208062(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/096780(WO,A1)
【文献】 実開昭51−095834(JP,U)
【文献】 特開平06−315366(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0217068(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/46
A24F 40/57
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化基体(60)を有する吸入器のための蒸発器ユニット(20)であって、この気化基体(60)が、1つの流入側(61)と、1つの流出側(64)と、複数のマイクロチャネル(62)と、1つの基板(63)と、前記複数のマイクロチャネル(62)を経て運ばれた液体を蒸発させるための抵抗加熱要素(65)とを備え、
―前記複数のマイクロチャネル(62)がそれぞれ、前記流入側(61)から前記流出側(64)まで前記基板(63)を通って延在し、
―前記基板(63)が、導電性であり、
―前記抵抗加熱要素(65)が、前記基板(63)から形成されている、当該蒸発器ユニット(20)において、
前記複数のマイクロチャネル(62)はそれぞれ、前記基板(63)によって周方向に包囲されおり、前記マイクロチャネル(62)によって、全周面加熱器が形成されていることを特徴とする蒸発器ユニット(20)。
【請求項2】
前記複数のマイクロチャネル(62)に通流する液体の流れを制御する流れ制御装置(66)が、前記基板(63)の前記流入側(61)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸発器ユニット。
【請求項3】
前記流れ制御装置(66)は、流れ制御層(69)を通って延在する複数の貫通孔(68)を有する前記流れ制御層(69)であることを特徴とする請求項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項4】
液体と一つ又は各貫通孔(68)の内壁との間の接触角が、電圧源を用いて発生可能な電圧を印加することによって可変であることを特徴とする請求項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項5】
絶縁層(70)を貫通して延在する複数の貫通開口部(67)を有する絶縁層(70)は、前記流れ制御層(69)と前記基板(63)との間に設けられていることを特徴とする請求項又はに記載の蒸発器ユニット。
【請求項6】
一つ又はそれぞれのマイクロチャネル(62)の平均直径は、5〜100μm、は10〜50μm、は20〜40μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項7】
前記複数のマイクロチャネル(62)の数は、4〜100個の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項8】
前記複数のマイクロチャネル(62)は、アレイ状に、又は行列状に配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項9】
行の数sが、2〜50行、若しくは3〜20行の範囲内にあり、及び/又は、列の数zが、2〜50列、若しくは3〜20列の範囲内にあることを特徴とする請求項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項10】
一つ又はそれぞれのマイクロチャネル(62)の長さは、100〜500μm、は150〜400μm、は180〜370μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項11】
一つ又はそれぞれのマイクロチャネル(62)の長さは、前記基板の厚さに相当することを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項12】
相互に隣接する複数のマイクロチャネル(62)の中心軸に対する相互に隣接する複数のマイクロチャネル(62)間の間隔は、1つのマイクロチャネル(62)の直径の1.3〜5倍の範囲内、は1.5〜4.5倍の範囲内、は2〜4倍の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項13】
積層体が、前記基板(63)と前記流れ制御層(69)及び/又は前記絶縁層(70)及び/又は少なくとも一つの他の層によって形成されていることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項14】
前記マイクロチャネル(62)の縦軸が、積層体に対して直角に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸発器ユニット。
【請求項15】
前記積層体の複数の又はすべての層は、異なる若しくは同一の層厚を有し、又は500μm以下の層厚をそれぞれ有することを特徴とする請求項1又は1に記載の蒸発器ユニット。
【請求項16】
使用される液体混合物に適合された電圧曲線Uh(t)が、前記蒸発器ユニット(20)のデータメモリ(53;59)内に格納されていることを特徴とするデータメモリ(53;59)を含む請求項1〜1に記載の蒸発器ユニット。
【請求項17】
前記蒸発器ユニット(20)は、単一の微小電気機械システムであることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項18】
マイクロチャネル(62)の総数K1、貫通開口部(67)の総数K2及び/又は貫通孔(68)の総数K3は相違すること、及び/又は、ただ一つの貫通開口部(67)及び/又はただ一つの貫通孔(68)が、K1個以下のグループ総数G1を有する一群のマイクロチャネル(62)に割り当てられていることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット。
【請求項19】
請求項1〜1のいずれか一項に記載の蒸発器ユニット(20)を有する吸入器(10)。
【請求項20】
請求項1〜1記載の蒸発器ユニット(20)を制御するための方法。
【請求項21】
加熱電圧曲線Uh(t)は、使用される液体混合物に適合されて設定され、基板(63)の加熱温度が、それぞれの液体混合物の気化特性にしたがって気化工程にわたって時間制御されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項22】
一部の液体が、気化基体(60)に送られ、複数のマイクロチャネル(62)が、流入側(61)から流出側(64)まで延在するこれらのマイクロチャネルの長さにわたって、前記液体の一部の一部分を有するこれらのマイクロチャネルの数に応じて液体で充填され、前記流入側(61)で十分に閉鎖され、前記流体の一部が、電圧を基板(63)に印加することによって気化され、
蒸気が、前記流出側(64)で流出し、当該気化が、経時時間にわたって且つ異なって設定された温度によって段階的に実行されることを特徴とする請求項2又は2記載の方法。
【請求項23】
最初に、前記液体の容易に沸騰する成分が、第1の温度Aによって第1の気化間隔内に気化され、次いで、前記液体のより高い温度で沸騰する成分が、第2の気化間隔内に前記温度Aを超える第2の温度Bによって気化されることを特徴とした請求項2記載の方法。
【請求項24】
気化基体(60)内に送られている一部の液体が、1Hz〜50kHzの範囲内の、は30Hz〜30kHzの範囲内の、は100Hz〜25kHzの範囲内の、前記基板(63)を加熱する駆動周波数で段階に気化されることを特徴とした請求項2〜2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化基体を有する吸入器のための蒸発器ユニットであって、この気化基体が、1つの流入側と、1つの流出側と、複数のマイクロチャネルと、1つの基板と、前記複数のマイクロチャネルを経て運ばれた液体を蒸発させるための抵抗加熱要素とを備える当該蒸発器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイックコイルの原理に基づいて組み立てる現在の電子タバコは、特許文献1に一例として記載されているように、いくつかの欠点を有している。第一に、液体の気化及び液体のドーズは、互いに分離されていない。第二に、蒸気量と加熱温度は、直接の関連があり、即ち高蒸気量は、高い加熱容量若しくは蒸発器温度が原因である。第三に、局所的な液体加熱及び液体有害物質発生の危険を伴う蒸発器の領域において/領域内で不均一の温度範囲になる。第四に、それぞれ個別の気化プロセス若しくはタバコを吹かすか吸い込みかの間の液体構成要素の濃度変化になるため、蒸発器領域内での芯の表面/螺旋部の表面に隣接する温度は、芯の中心温度から外れる。この濃度変化は、その上液体保存部にある液体の組成の漸次変化のほかにも行われる。即ち放出される活性物質量もまた均一でなく、吸い込みから吸い込みへと変化する。
【0003】
特許文献2で既知の蒸発器ユニットは、一部分に形成されている基板内とキャップの片方の部分にマイクロ穿孔を付けた毛細管マイクロチャネル及び液体保存部と蒸発器空間からなる基板から形成されている気化基体を有し、平面的に広がるMEMSベースの加熱器が、基板に配置されている。液体保存部と蒸発器空間の間に延在する薄膜被覆方法で形成された毛管マイクロチャネルは、輸送要素としての弁を設け、薄膜被覆層に対して平行に基板の長手方向延長部に対して各々配置されている。使用時には、液体は、蒸発器空間の流入側に対して毛管マイクロチャネルを経て流体貯蔵部から毛管力という条件で運ばれ、MEMSベースの加熱器の蒸発器空間で蒸発し、及び蒸発器空間の流出側にマイクロ穿孔を含むキャップを経て排出される。平面的に広がるMEMSベースの加熱器は、限定範囲でしか液体を蒸発することができず、その後、これに関して達成可能な蒸発機能は比較的に低い。基板内の蒸発器空間と液体貯蔵部を含む構造は複雑であり、比較的大きな空間を必要とする。基板内に形成されたキャップを含む部分的な毛管マイクロチャネルの覆いは、密閉の問題を引き起こすだけでなく、毛管マイクロチャネルの間でさえも、同様に製造コストが増大する。
【0004】
特許文献3で既知の蒸発器ユニットは、プリント回路基板と回路基板上に配置されMEMS蒸発器チップとして形成された気化基体とハウジング部分とから組み立てられている。保存空間に残留した液体のためのMEMS蒸発器チップを担持する回路基板がハウジング縁部の端部を含むハウジング部分に組み込まれているMEMS蒸発器チップは、薄膜技術の多層膜で組み立てられているシリコン基板から出ており、毛細管と薄膜によって覆われたマイクロチャネル装置と抵抗加熱器と抵抗温度センサとを含み、薄膜は薄膜のマイクロチャネル装置の回避される側上に配置されており、マイクロチャネル装置の断片は覆われる。マイクロチャネル装置のマイクロチャネルは、薄膜に対して平行にその長手方向軸に配置されており、シリコン基板内の一部分に対して及び別の一部分に対して薄膜の形態のキャップによっても形成されている。マイクロチャネル装置の双方の端部には、空洞は気化流出空間としてそれぞれ空洞が形成されており、及びもう片方の空洞はハウジング部分の内壁と協働する保存空間として又は液体のための液体保存部として使用する。使用中には、液体は毛細管現象下でマイクロチャネル装置に連続して運ばれ、抵抗加熱器を用いて蒸発される。その後、液体運搬と液体蒸発は互いに分離して制御可能ではなく、互いに依存している。これは、蒸発の精密な制御又は原則を妨げる。チャンネル内部および液体から薄膜上の外側に間隔を置いて配置された全体的な抵抗加熱器は、限定範囲でしか液体を蒸発することができない。その後、これに関して達成可能な蒸発機能は比較的低い。この構造は熱的に不活性であり、複数層とで複雑である。基板に部分的に形成された、最初は開いた溝状のマイクロチャネルの膜での被覆は、マイクロチャネル間でさえも、それに関するシーリングの問題、ならびに製造コストの上昇をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0021930号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0262454号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0007653号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、既知の蒸発器ユニットを様々な点で改良することで、特に蒸発器ユニットを向上させること、構造の複雑さを減らすこと、空間を狭くすること及び/又はシーリングの問題を減らすことであり、並びに簡単で信頼性があり再現可能な動作をする吸入器のための蒸発器ユニットを提供することである。その際、上記の欠点を克服し、所望の特性を有する蒸気量は、量及び組成などに従って提供することができ、適合した制御方法を示すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、請求項1に記載の:
気化基体(60)を有する吸入器のための蒸発器ユニット(20)であって、この気化基体(60)が、1つの流入側(61)と、1つの流出側(64)と、複数のマイクロチャネル(62)と、1つの基板(63)と、前記複数のマイクロチャネル(62)を経て運ばれた液体を蒸発させるための抵抗加熱要素(65)とを備える当該蒸発器ユニット(20)において、
―前記複数のマイクロチャネル(62)がそれぞれ、前記流入側(61)から前記流出側(64)まで前記基板(63)を通って延在し、
―前記基板(63)が、導電性であり、
―前記抵抗加熱要素(65)が、前記基板(63)から形成されていることによって解決される。
【0008】
本発明によれば、抵抗加熱要素は、加熱電流が基板自体に直接流れるように基板から形成されている。従来技術とは対照的に、加熱電圧は基板自体に印加される。加熱された基板は、マイクロチャネルに含有する液体を直接蒸発させることができる。液体へのこの即時の熱伝達は、個別の金属加熱要素を用いた既知の加熱として、著しく効果的で早い。
【0009】
好ましくは、マイクロチャネルはそれぞれ周方向において基板に囲まれている。その方法に応じて、効果的な蒸発をコンパクトな構造方式で保証し得る。マイクロチャネルは、簡単な方法で、ある意味最適な可変の全周面加熱器を提供し得、及びシーリングの問題の原因となる被覆は、既知の気化基体に利用される場合と同様に回避される。
【0010】
好ましくは、マイクロチャネルを通る液体の流れを制御する流れ制御装置が、基板の流入側に設けられている。この流れ制御装置は、蒸発する液体の正確なドーズを蒸発体のマイクロチャネルで可能とする。それに加えて、吸い込みにつき一定のエアロゾル品質、特に蒸気組成と液滴スペクトルとが保証され、及び不均一な構成要素の蒸発のために液体保存部への反応は十分に防止され得る。マイクロチャネルは、液体の正確な量定の部分に満たすことができる。該部分は、マイクロチャネル内で逆流防止を維持し、部分的に正確な完全蒸発のために提供され得る。流れ制御装置は、例えば、一つ若しくは複数のポンプ及び/又は一つ若しくは複数の弁の形状で形成され得る。
【0011】
有利な実施形態では、流れ制御装置は、流れ制御層を経て延在する貫通孔を有する流れ制御層である。この場合、特に有利には、液体と一つ又は各貫通孔の内壁との間の接触角が、電圧源を用いて発生可能な電圧、若しくは電圧から発生可能な電場の印加を経て可変である。これによって、有利には貫通孔を経た流れは可変であり、特に停止可能であり及び/又は、特に電圧の低下若しくはスイッチを切ることで解除可能である。このようにして、マイクロチャネル内の液体の一部の正確な搬送と測定、及び逆流防止と部分的に正確かつ完全な蒸発を実現することができる。この場合、好ましくは電気的の濡れ効果(電気濡れ)が利用される。
【0012】
有利には、絶縁層を貫通して延在する貫通開口部を有する絶縁層は、流れ制御層と基板の間に設けられている。このようにして、液体保存部内若しくは流れ制御層内と局所流入孔内での液体の意図しない気化を効果的に防止され得る。同様に、流体保存部内での望ましくない熱伝達は回避される。言い換えれば基板内への入熱は最適化され、及び基板での望ましくない加熱又は完全な蒸発は、上流の液体を含む部分で確実に防止し得る。特に有利には、利用可能な液体混合物に適合された電圧曲線Uh(t)が情報メモリに保存されている。高電圧曲線Uh(t)は、利用可能な液体混合物に適合されて設定されており、及び基板の加熱温度は、それぞれの液体混合物の正確で既知の蒸発の運動に従い、蒸発プロセスを介して制御され得る。このようにして、液体の最適な蒸発は、適合されたそれらの成分を確保し得、及び望ましくない分解生成物の発生を確実に防止し得る。
【0013】
加熱温度は、一時的に蒸発プロセスを介して高周波で制御され得又は調節され得る。
【0014】
本発明の更なる態様によれば、前述の蒸発器ユニットを制御する方法が提供される。この場合有利には、高電圧曲線Uh(t)は、利用可能な液体混合物に適合し設定され、及び従って、基板の加熱温度がそれぞれの液体混合物の蒸発運動に基づいた気化プロセスについて一時的に制御される。このようにして、液体の最適な蒸発は、適合されたそれらの成分を確保し得、及び望ましくない分解生成物の発生を確実に防止し得る。このように構成された蒸発体で、液体に基板からの熱流入を最適化し得る。液体とマイクロチャネルの壁との間の境界層の構成は、熱伝達を妨げ得、又は局所的な加熱の危険を示す蒸気の泡の形状の状態で確実に減少し得る。蒸発を介してその時限りで調整された一定の温度を有する既知の気化基体のための既知の操作の場合には、高沸点成分の蒸発に応じた一定の温度に設定され及び調整される。その液体の完全な蒸発に関して確保することは、最高温度を適用する場合に、低沸点成分がいいずれにしても蒸発する結果になる。
【0015】
既知の動作モードは、多成分で存在する液体の気化気泡のそれぞれの低沸点成分自体危険をはらんでおり、及びそれと同時にマイクロチャネルの壁との間に境界層を形成するために入熱を妨げ得る。蒸発器ユニットの温度を制御することのために、この既知の方法からの転換には提案された方法を含み、特にその更なる実施形態において境界層形成を最小限に抑えること及び最適な入熱が達成され得る。
【0016】
この場合、異なる温度の場合の個々の蒸発ステップの期間及び/又は液体の個々の部分の個々の成分の蒸発は非常に短く保ち得、及び/又は消費者による段階的な蒸発は認識されておらず、それでも大部分が均質であることは駆動周波数で達成でき、再現可能で正確なエアロゾル形成を保証し得る。特に、有利には、第1の温度Aで第1の蒸発間隔内で液体の低沸点成分を蒸発させ、及び次いで温度Aを超える第2の温度Bで第2の蒸発間隔内で液体の高沸点成分を蒸発させることである。
【0017】
好ましくは、気化基体60内に運ばれている液体の一部の蒸発は、1Hz〜50kHzの範囲内、好ましくは30Hz〜30kHzの範囲内、特に好ましくは100〜25kHzの範囲内で段階的に基板63の加熱の駆動周波数で生じる。
【0018】
添付の図面を参照し、好ましい実施形態に基づいて本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における電子タバコ製品の断面図である。
図2】電子タバコ製品のためのカートリッジの断面図である。
図3】蒸発器ユニットの斜視図である。
図4A図3に従った気化プロセスの異なる様態の蒸発器ユニットである。
図4B図3に従った気化プロセスの異なる様態の蒸発器ユニットである。
図4C図3に従った気化プロセスの異なる様態の蒸発器ユニットである。
図4D図3に従った気化プロセスの異なる様態の蒸発器ユニットである。
図4E図3に従った気化プロセスの異なる様態の蒸発器ユニットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
電子タバコ製品10は、基本的には棒状又は円柱状のハウジング11を含む。ハウジング11には、空気チャネル30が少なくとも一つの空気流入開口部31とタバコ製品10の吸い口32の間に設けられている。たばこ製品10の吸い口32はその端部を示し、消費者は端部に接して吸入の目的で吸引し、及び陰圧のたばこ製品10によって作用し、及び空気流路30の空気の流れ34が発生する。少なくとも一つの空気流入開口部31は、ハウジング11の被覆側に配置され得る。追加の又は選択的に少なくとも一つの空気流入開口部31Aは、たばこ製品10の離れた端部33に配置され得る。たばこ製品10の離れた端部33は、吸い口32にたばこ製品10の反対の端部を示す。
【0021】
一つ又は双方の空気流入部31、31Aに続いて空気の流れ34の空気経路には、有利には空気加熱装置37が、流入する空気の加熱若しくは予備加熱のために配置されている。これによって、エアロゾル形成は最前の状態にできる。空気加熱装置37は、例えば隣接した電力供給ユニット14に配置され得、及び/又はハウジング11の被覆内側周りの周方向に配備する。
【0022】
空気流入開口部31を経て吸入される空気は、空気チャネル30に、必要があれば接点若しくは分離面57を介して蒸発器ユニット20へ導かれる。蒸発器ユニット20は、液体保存部18から液体50を追加部40として、霧/エアロゾルのような小さい液滴の形態及び/又は蒸気の形で空気流34内に供給する。液体保存部18の有利な容積は、0.1〜5ml、とりわけ0.5〜3ml、更にとりわけ0.7〜2ml又は1.5mlの範囲内にある。
【0023】
たばこ製品10は、有利にはたばこ製品10の離れた端部33に、電力エネルギー貯蔵ユニット14と電力/電気的ユニット15を持つ電力供給装置12を含む。エネルギー貯蔵ユニット14は、特に、電気化学的使い捨てバッテリー又は再利用可能電気化学蓄電池、例えば、Liイオン蓄電池となり得る。たばこ製品10は、有利にはたばこ製品10の吸い口32に、液体保存部18を持つ消費ユニット17、電気的ユニット19及び蒸発器ユニット20を含む。
【0024】
別々の電気的/電子ユニット15、19の代わりに、均一の電気的/電子ユニットとして設けられ得、電力供給装置ユニット12か又は消費ユニット17かどちらかに配置され得る。全体のたばこ製品10の電気的/電子ユニットは、以下に述べるように制御装置29として特徴づけられる。
【0025】
ハウジング11には、有利にはセンサ、例えば圧力センサ又は圧力スイッチもしくは流速スイッチが配置されている。その際、センサから出力されたセンサ信号に基づいた制御装置は、吸い込むことのために消費者の吸い口32をたばこ製品に引き寄せ、たばこ製品10の動作状態を固定し得る。この動作状態では、液体保存部18から液体50を追加部40として、霧/エアロゾルのような小さい液滴の形態及び/又は蒸気の形で空気流34内に供給するために、制御装置29が蒸発器ユニット20を装着する。
【0026】
液体保存部18に貯蔵されている注入するための液体(即ち、液体の成分混合物)は、例えば、1,2―プロピレングリコール、グリセリン、及び/又は水からの混合物であり、例えばニコチンのような一つ又は複数の香料(フレーバー)及び/又は作用成分が、混合され得る。
【0027】
消費ユニット17は、有利には消費者によって交換可能なカートリッジ21、即ち、使い捨て部分として、実施されている。たばこ製品10の特にエネルギー消費ユニット14に含まれている残余は、有利には消費者により再利用可能な基礎部分56として、即ち、余剰手段部分として実施されている。カートリッジ21は、消費者によって基礎部分56と結合可能であり、及び基礎部分56から取り外し可能に形成されている。即ち、カートリッジ21と再利用可能な基礎部分56の間には、分離面若しくは接点57が形成されている。カートリッジハウジング58は、たばこ製品10のハウジング11の一部分を形成でき得る。
【0028】
図2を参照する他の場合の実施形態では、消費ユニット17がカートリッジ21として実施されており、カートリッジ21は、消費者を介してたばこ製品10の再利用可能な基礎部分56に装填可能であり、及びこのカートリッジから取り出し可能である。カートリッジハウジング58は、この場合に、たばこ製品10のハウジングから分離したハウジングである。
【0029】
カートリッジ21は、少なくとも液体保存部18を含む。カートリッジ21は、図2に示されるように、電気的/電子ユニット19が含まれ得る。他の場合の実施形態には、電気的/電子ユニット19が、基礎部分56の全体又は部分的に固定の備蓄部分である。同じように、蒸発器ユニット20は、カートリッジ21の部分又は基礎部分56に配置され得る。それ故、カートリッジ21は、多くの実施形態で、基本的にはただ液体保存部18としてだけ存在し、及び必要であればカートリッジハウジングとして存在し、個々のカートリッジハウジング58が不要になるようにカートリッジハウジング58は、選択的に液体保存部18のハウジングから形成され得る。
【0030】
カートリッジ21は、棒状のたばこ製品10の隣で、他の場合の吸入器、例えば電子パイプ、水タバコ(Shisha)、他には加熱非燃焼製品、又は医療用の吸入器もまた使用され得る。エネルギー貯蔵部14は、通例では、カートリッジ21の一部ではなく、再利用可能な基板部分56である。
【0031】
消費ユニット17若しくはカートリッジ21は、有利には消費ユニット17若しくはカートリッジ21の情報若しくはパラメータ、例えばEEPROM、RFID又は他方で適切な形状としての仕様で保存するための非揮発性の情報メモリ53(図1参照)を含む。情報メモリ53は、電気的/電子ユニット19の部分又は分離したその部分を形成され得る。情報メモリ53には、有利には内容物即ち、液体保存部18に保存されている液体の構成物に対する情報が保存されている。そして、プロセスプロファイルに関する情報は、特に性能制御/温度制御;条件モニタリング若しくはシステムテスト、好ましくはリークテストに関するデータ;当該コピープロテクト及び偽造防止、特に広範囲に及ぶ消費ユニット17若しくはカートリッジ21の明らかな証明になる身分証明書のデータ;シリアルナンバー、製造日、及び/又は有効期限;及び/又は吸い込み回数(消費者による吸い込み回数の総数)若しくは利用時間である。情報メモリ53は、有利には、接触及び/又は伝導を介して基板部分56の制御装置15と結合されている又は結合可能である。
【0032】
本発明による蒸発器ユニット20の有利な実施形態は、図3に示されている。蒸発器ユニット20は、電気伝導性の材料、好ましくは、シリコン、他の元素をドープしたセラミックス、金属―セラミクス、フィルタ―セラミックス、半導体特にゲルマニウム、グラファイト、半金属及び/又は金属などの上にブロック形状の基板63を含む気化基体60を備える。基板63は複数のマイクロチャネル62に提供されており、基板63の流入側61は、流出側64と流動的に接合されている。流入側61は、液体保存部18と流動的に接合されている。これについては、以下で詳細に説明した。
【0033】
マイクロチャネル62の平均の直径は、好ましくは5μm〜100μmの範囲内にあり、さらに好ましくは、10μm〜50μmの範囲内にあり、さらにいっそう好ましくは、20μm〜40μmの範囲内にあり、例えば30μmである。それらの調整に基づいて、有利には、毛細管現象が発生する。その結果、マイクロチャネル62内の流入側61には、マイクロチャネル62を通って浸潤した液体が上昇するにしたがって、マイクロチャネル62が液体で充填される。
【0034】
マイクロチャネル62の総数は、好ましくは4〜100個の範囲内にある。このような方法で、基板の熱流入は最善の状態にされ、及び保証される高い気化パフォーマンスと十分に大きい蒸気流出面が実現する。
【0035】
マイクロチャネル62は、図3に明示されているように、正方形、三角形、多角形、円形、楕円形、又は他の形状の配列の形状に配置されている。この配列は、と列zを含むマトリックスの形状に形成され得る。その際に、sは有利には2〜5及びさらに有利には3〜20の範囲内、及び/又はzは有利には2〜5及びさらに有利には3〜20の範囲内にある。このような方法で、効率的で簡単な方法でのマイクロチャネル62の製造可能な配列は、高い気化パフォーマンスを実現する。
【0036】
マイクロチャネル62の断面は正方形、三角形、多角形、円形、楕円形およびほかの形状であり得、及び/又は部分ごとに長手方向で変更し、特に拡大し、縮小し、又は一定のままである。
【0037】
一つ又は各マイクロチャネル62の長さは、好ましくは100〜500μmの範囲内、さらに好ましくは150〜400μmの範囲内、その上さらに好ましくは180〜370μmの範囲内及び例えば300μmに達する。このような方法で、最適の液体吸収及び部分形成は、マイクロチャネル62への基板63の十分に最適な熱流入により実現する。
【0038】
二つのマイクロチャネル62の距離は、好ましくはマイクロチャネル62の流水の横断の少なくとも1.3倍に達する。その際、距離は二つのマイクロチャネル62の中心軸に関連付けられている。距離は、マイクロチャネル62の流水の横断の、好ましくは1.5〜5倍、さらに好ましくは2〜4倍に達し得る。このような方法で、基板の最適な熱流入は、マイクロチャネルと十分に安定した配列及びマイクロチャネルの壁厚が実現される。
【0039】
蒸発器ユニット20は、好ましくは制御ユニット19から制御可能な加熱電圧源71を備えており、加熱電圧源71は、電極72を経由して、基板63の反対で当接する面上でそれらが結合されている。その結果、加熱電圧源71から発生した電圧Uhは、基板63を通った電流の流れへ誘導する。基板63のオーム抵抗に基づき、電流の流れは、基板63の加熱にひいてはマイクロチャネル62に含有する液体の気化に合わせて誘導する。このような方法で発生した蒸気及び/又はエアロゾルは、マイクロチャネル62から流出側64へ出、及び空気の流れ34の追加する蒸気40として混合され、これは図1を参照のこと。より具体的には、消費者の吸引によって引き起こされる空気チャネル30を通る空気流34の検出をする場合には、制御装置29が加熱電圧源71を駆動させる。その際、自発的な加熱を介して、マイクロチャネル内にまだある液体は、蒸気及び/又はエアロゾル40の形態でマイクロチャネル62から移動される。発生した蒸気若しくはエアロゾル40は、気化基体60の流出開口部76のこの外側を通過して流れることによって、選択的に予熱された空気の流れ34に供給される(図1および図3参照)。
【0040】
好ましくは、カートリッジ21の情報メモリ53内又は基板部分56の情報メモリ59内に、利用可能な液体混合物に適合した電圧曲線Uh(t)が保存される。これにより、利用可能な液体の電圧曲線Uh(t)を適合して設定する。その結果、ブロック若しくは基板63の加熱温度、及びそれと同時に毛細管のマイクロチャネル62の温度も、それぞれの液体の正確な既知の蒸発速度に基づいて、一時的な蒸発プロセスを介して制御され得る。これにより、最適な蒸発結果が達成可能である。蒸発温度は、好ましくは100℃〜400℃、さらに好ましくは150℃〜350℃、その上さらに好ましくは190℃〜290℃の範囲内にある。
【0041】
基板60の流入側61には、マイクロチャネル62を通る流体の流れを制御する流れ制御装置66が設けられている。流れ制御装置66は、好ましい実施形態には、流れ制御層69を通って延在する貫通孔68を含む流れ制御層である。
【0042】
特に有利には、流れ制御層66において、液体と貫通孔68の内壁との間の接触角に影響を与えるための液体に電界が印加可能である。その際に、好ましくは電気的の濡れ効果(電気濡れ)が利用される。この目的のために、蒸発器ユニット20は、好ましくは制御ユニット19から制御可能なEW(電気濡れ)電源74を備え、該電源74は流量制御層69の反対側の電極75を介してこれらと結合されている。その結果、EW電源74から発生可能な電圧Uewは、貫通孔68内の液体中の電荷担体の移動を誘導する。このような方法で、液体と貫通孔68の内壁との間の接触角は、親水性(適切な電圧の印加)と疎水性(無電圧)との間で変化され得る。貫通孔68内の接触角が親水性に設定されている時、液体保存部18からの液体は、貫通孔68内へと毛細管輸送され、及び毛細管の運搬効果に基づいて貫通孔67内へ、及び更にマイクロチャネル62内へ上昇し得る。貫通孔68における接触角が疎水性に設定されている時、液体保存部18から貫通孔68を介する貫通孔67及びマイクロチャネル62内への液体の上昇は抑制されている。その毛細管の搬送効果が起こらないので、液体は液体保存部18内に留まる。従って、流れ制御層69の機能は、貫通孔68を通る自由な液体流路と貫通孔68を通る液体流路の遮断との間の切り替えを可能にすることである。従って、流れ制御層69は、スイッチング層とも呼ばれ得る。上記において、流れ制御層69は、気化基体60内のマイクロチャネル62の充填プロセスを制御するために働く。
【0043】
流れ制御装層69は、有利にはEWOD層(誘電体上の電気濡れ)と同様に又は追加のEWOD層(誘電体上の電気濡れ)として実行され得る。その際に、流入壁の表面は、適切な誘電体を貫通孔68にコーティングする。そのような誘電体は、有利には自己組成化単分子膜(SAM)として形成されており、自己組成化単分子膜を有する流体と流入壁の接触角は、別に又は追加に貫通孔68に影響をおよぼし得る。
【0044】
流れ制御装置69と基板63の間には、有利には絶縁層70が、絶縁材料、例えばガラス又はセラミックスとして、絶縁層70を経て延在する還流開口部67に設置されている。絶縁層70は、特に蒸発の間の液体貯蔵部18内の液体の望ましくない高い加熱及び/又は蒸気形成を防止するために、蒸発部60を液体貯蔵部18から断熱するのに役立つ。絶縁層70は、流れ制御層69から基板63を電気的に絶縁するのにも役立ち得る。それによって、蒸発及び/又は加熱は、流れ制御から切り離され得る。貫通開口部67は、好ましくはマイクロチャネル62及び/又は貫通孔68と対応する。その結果、連続するマイクロチャネルが、液体保存部18から基板63の流出側64の流出開口部76まで作られる。
【0045】
マイクロチャネル62、貫通開口部67及び/又は貫通孔68は、好ましくはそれらの長手方向軸が層69、70を横切るように配置されている。一般に、基板63及び流れ制御層69及び/又は絶縁層70及び/又は少なくとも一つのほかの層によって積層体が形成されている場合、有利にはマイクロチャネル62軸が積層体に対して直角に配置されている。このようにして、基板63からマイクロチャネル62への最適な入熱を実現し得、及びマイクロチャネル62はシーリングの問題からほとんど解放される。さらに、積層体複数又はすべての層は、有利には異なる又は同一の層厚、つまりより好ましくはそれぞれの場合に500μm以下の層厚を有する。このようにして、基板63からマイクロチャネル62への最適な入熱を実現し得、及びマイクロチャネル62はシーリングの問題からほとんど解放される。この場合有利には、気化基体60が一般的な層厚を備える薄膜層技術を用いたウェハの部分から製造され得る。
【0046】
マイクロチャネル62、貫通開口部67及び/又は貫通孔68は、等しい又は互いに離れて異なった貫通分離断面を有し得る。マイクロチャネル62の総数K1、貫通開口部67の総数K2及び/又は貫通孔68の総数K3は、互いに離れて区別され得る。特に、K1はK2よりも大きく及び/又はK3よりも大きい。K2はK3よりも大きい。マイクロチャネル62の一群は、特にK1以下のグループ数G1を含み、唯一の貫通開口部67及び/又は唯一の貫通孔68を割り当てることができる。その際、その横断面がマイクロチャネル62の一群の横断面と一致し、それは、特に相当するか又はそれを超える。
【0047】
このようにして、より少ない数の還流開口部67を有する複数のマイクロチャネル62の一群は、選択的に係止及び/又は解放し得、簡単な製造を実現することができる。このようにして、より少ない数の貫通孔68を有する複数のマイクロチャネル62の一群は、流体の供給と簡単な製造を実現し得る。図3に示す例示的な実施形態とは対照的に、例えば、3〜10個のマイクロチャネル62のグループ番号G1を有するグループに、共通の還流開口部67及び/又は共通の貫通孔68を割り当てることができる。その上還流開口部67及び/又は貫通孔68は、3〜10個のマイクロチャネル62を覆って係合する。
【0048】
電気濡れ効果の利用の代わりに、もう一方の流体制御要素と同様、流体制御層69又は一般的な流れ制御装置66に、例えば一つ又は複数のスロットル及び/又は一つ又は複数の制御可能な(マイクロ)弁が、設けられている。マイクロチャネル62、還流開口部67及び/又は貫通孔68の毛細管現が気化基体60内の液体保存部18からの十分な流体量の促進に不十分ならば、追加の又は選択的な供給機構を、例えば圧力を介し一つ又は複数の(マイクロ)ポンプ又は以下のように設け得る。
【0049】
気化ユニット29は、有利には液体量は1μl〜20μl、さらに有利には2μl〜10μl、その上さらに有利には3μl〜5μlの範囲内で、消費者の吸い込み毎に通常は4μl追加されるように調整されている。有利には気化ユニット29は、吸い込み毎の液体量に関して調整可能である。
【0050】
ドーズ/気化の組み合わせは、有利には主に0.05μm〜5マイクロmの範囲内、好ましくは0.1μm〜3μmの範囲内の直径を持つ液滴が生じるように調整され得る。液滴サイズは、0.05〜5MMADの間(空気動力学的中央粒子径)、有利には0.1〜3MMADの間、更に有利には0.5〜2MMAD、その上さらに有利には0.7〜1.5MMAD、例えば約1MMADの範囲内で最適であり得る。MMADは、EU規格に相当し及びμmで指定される。
【0051】
その流れ制御装置66の電圧源74と気化基体60の電圧源71は、別々の制御配列29と電気的に結合されており、及び互いに離れて別々に駆動され、有利には機能的な切断が、一方で促進/ドーズと他方で気化との間で実現されている。
【0052】
気化プロセスの経過は、以下に図4Aから4Eに基づいて説明される。
【0053】
図4Aに示した初期状態には、電圧源74が充填プロセスのために圧力を開放し、液体と貫通孔68の内壁の間の接触角が疎水性である。その結果、液体は貫通孔を経て移動し得ない。
【0054】
図4Bは、充填プロセスを示す。充填プロセスのための電圧源74は有効であり、液体と貫通孔68の内壁の間の接触角は親水性である。その結果、液体は、貫通孔68及び気化部60のマイクロチャネル62内の貫通開口部68を経た毛細管を流れる。
【0055】
充填プロセスは、すべてのマイクロチャネル62が気化部60の流出側64まで満たされているときに閉じられている(図4C)。充填状態では運搬効果が終了し、これは流出側64に到達しても毛細管搬送力はさらに加えられないからである。マイクロチャネル62は、流れ制御装置69の適切な駆動を経て同様に部分的に充填され得る。
【0056】
従って、それぞれ蒸発する量は、形状、特にマイクロチャネル62の長さ若しくは基板63の厚さ及び/又は流れ制御装置69の駆動を経て設定され得る。一般的にマイクロチャネル62の長さは、平均直径と比べて大きく、特に少なくとも3倍、例えば3〜30倍の範囲内、好ましくは5〜20倍の間、例えば10倍大きい。これによって、本発明は、既知の格子又は格子状部(メッシュと呼ばれる)に対して定義可能である。
【0057】
一つ若しくは異なった吸入器の異なる厚みの基板63を含む気化基体60を、気化プロセス/吸い込みにつき多かれ少なかれ蒸気の発生のために使用する若しくは制御することが考えられる。
【0058】
次に、充填プロセスにおける気化基体60のための電圧源71が有効になる(加熱プロセス,図4D)。即ち電圧Uhは、基板63上のマイクロチャネル62の気化温度を案内される。その結果、気化温度は、使用される液体混合物の個々の気化反応に適合されて設定される。その上、液体に対してチャネル内壁が広い表面のため、局所的な加熱の危険及びこれによる液体有害物質発生を妨げる。
【0059】
すべての液体が気化されるやいなや、加熱電圧源71は無効になる。その液体特性及び液体量は、有利には正確に知られており、これらのタイミングは非常に詳細に制御し得る。従って、このような蒸発器ユニット20のエネルギー吸収は、既知の方法に対して減少され得、その必要な気化エネルギーは、多くのドーズで及びそれと同時に精密に取り入れられ得る。
【0060】
その気化プロセスの間、流れ制御層69は無効になる。それは液体保存部18に残余液体を含む反応がないことであり、即ち、液体保存部18に濃度変化が生じない。それ故に、気化若しくは作用成分ドーズは、すべての吸い込みを経由して十分に同じであり、液体は常に、同様の組成で気化される。
【0061】
加熱プロセスの終了後(図4E)、マイクロチャネル62は空になる。絶縁層70の還流開口部67で残留する可能性のある液体残余は、層63,69,70の厚さ比率を介して構成的に還元され得、若しくは吸い込みにつき蒸発する液体量は相対的に無視可能である。従って、次の気化プロセスを含み、定義された一定の液体組成は図4Aで再び開始される。
【0062】
電圧源71,74は、有利には適切な駆動周波数、典型的にはHz又はkHzの範囲内で、及び好ましくは1Hz〜50kHzの範囲内、好ましくは30Hz〜30kHzの範囲内、特に好ましくは100Hz〜25kHzの範囲内で電気的に駆動する。代替的な実施形態では、電圧源74のための駆動周波数は、5Hz〜50Hzの範囲内、好ましくは10Hz〜40Hzの範囲内にある。
【0063】
蒸発器ユニット20は、好ましくはMEMS技術に基づいて製造されており、及びそれ故に微小気機械システムで有利である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E