(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コアを囲むポリマーシェルで構成されるカプセルの水性分散物であって、前記コアはオリゴマーブロックドイソシアネートを含み、該ブロックドイソシアネートは、イソシアネート末端オリゴ−エーテル、イソシアネート末端オリゴ−エステル、イソシアネート末端オリゴ−カーボネート、イソシアネート末端ブタジエンオリゴマー、イソシアネート末端イソプレンオリゴマー、イソシアネート末端シリコーンおよびそれらの組み合わせの群から選択される二−、三−または四−官能性イソシアネート末端オリゴマーから誘導され、分散基がポリマーシェルに共有結合しており、前記分散基は、カルボン酸もしくはその塩、スルホン酸もしくはその塩、リン酸エステルもしくはその塩、ホスホン酸もしくはその塩、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、四級化三級アミン、N−四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウムおよびホスホニウムとからなる群から選択される、ことを特徴とする、水性分散物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.ナノカプセル
A.1.オリゴマーブロックドイソシアネート
ブロックドイソシアネートの合成は当業者によく知られており、そしてWicks D.A.and Wicks Z.W.Jr.(Progress in Organic
Coatings,36,148−172(1999))およびDelebecq et al.(Chem;Rev.,113,80−118(2013))により総説され
た。古典的なブロックドイソシアネートは、熱処理で前駆体からイソシアネートを形成することができる化学成分と定義されている。一般にこの反応は以下のスキーム1に与えるようにまとめることができる。
スキーム1:
【化1】
LVは脱離基を表す
【0019】
活性化温度は脱ブロッキング(deblocking)温度とも呼ばれるが、脱離基に依存し、そして応用に依存して選択される。100℃から180℃の間の可変脱ブロッキング温度を有する適切なイソシアネート前駆体を以下に与える。
【化2】
【0020】
ブロック化剤としての活性メチレン化合物は、古典的なブロックドイソシアネートの代替として広く使用され、Progress in Organic Coatings,36,148−172(1999),段落3.8に開示されているように、別の反応経路を介して操作して、中間体イソシアネートは生じないがエステル形成を介して系を架橋する。適切な活性メチレン基ブロックドイソシアネートの例を以下に与える:
【化3】
【0021】
好適な実施態様では、本発明による前記オリゴマーブロックドイソシアネートは、5000以下の、より好ましくは4000未満の、そして最も好ましくは3000未満の数平均分子量を有する。
【0022】
好適な実施態様では、ブロッキング基は、マロネート基、ピラゾール基およびカプロラクタム基からなる群から選択され、マロネート基が特に好適である。
【0023】
最も好適な実施態様では、前記ブロックドイソシアネートは一般構造Iによる構造を有する。
【化4】
式中
R
1は、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アルカリール基、および、置換もしくは非置換アリールまたはヘテロアリール基からなる群から選択される。
【0024】
Aは、オリゴ−エーテル、オリゴ−エステル、オリゴ−カーボネート、ブタジエンオリゴマー、水素化ブタジエンオリゴマー、イソプレンオリゴマー、シリコーンオリゴマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される二官能性オリゴマー基を表す。
【0025】
さらに一層好適な実施態様では、R
1がアルキル基を表し、C1からC4アルキル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0026】
好適な実施態様では、前記ポリ−エーテルオリゴマーは、好ましくは3から50の単複単位、より好ましくは5から40の反復単位、そして最も好ましくは6から30の反復単位を含む。前記ポリ−エステル系オリゴマーは、好ましくは2から20の反復単位、より好ましくは3から15の反復単位、そして最も好ましくは4から10の反復単位を含む。前記ポリシロキサン系オリゴマーは、好ましくは3から40の反復単位、より好ましくは5から30の反復単位、そして最も好ましくは6から20の反復単位を含む。前記ポリカーボネート系オリゴマーは、好ましくは3から30の反復単位、より好ましくは4から20の反復単位、そして最も好ましくは5から15の反復単位を含む。前記ポリブタジエン、水素化ポリブタジエンおよびポリイソプレン系オリゴマーは、好ましくは3から50の反復単位、5から40の反復単位、そして最も好ましくは6から30の反復単位を含む。異なるオリゴマーの反復単位を含むオリゴマーは、好ましくは60以下の反復単位、より好ましくは50以下の反復単位、そして最も好ましくは30以下の反復単位を含む。
【0027】
本発明によるオリゴマーブロックドイソシアネートの一般例を以下に与えるが、それらに限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【0028】
A.2.カプセル化技術
本発明によるナノカプセルは、オリゴマーブロックドイソシアネートをカプセル化するためのカプセル化法により作製される。
【0029】
カプセル化法は、とても小さい(tiny)粒子または液滴がシェルに囲まれて小さなカプセルを与える方法である。カプセル内の物質は、コアまたは内相と呼ばれ、一方、シェルは壁と呼ばれることがある。この技法は様々な技術分野、例えば、自己治癒組成物(Blaiszik et al.,Annual Review of Materials,40,179−211(2010))、テキスタイル処理(Marinkovic et al.,CI&CEQ 12(1),58−62(2006);Nelson G.,International Journal of Pharmaceutics
,242,55−62(2002)、Teixeira et al.,AIChE Journal,58(6),1939−1950(2012))、建物の熱エネルギー貯蔵および放出(Tyagi et al.,Renewable and Sustainable Energy Reviews,15,1373−1391(2011))、印刷および記録技術(Microspheres, Microcapsules and Liposomes:Volume 1:Preparation and Chemical Applications,editor R.Arshady,391−417 and ibid.,420−438,Citus Books,London,1999)、パーソナルケア、医薬品、栄養、農薬(Lidert Z.,Delivery System Handbook for Personal Care and Cosmetic Products,181−190,Meyer R.Rosen(ed.),William Andrew,Inc.2005;Schrooyen et al.,Proceedings of the Nutrition Society,60,475−479(2001))および電子的応用(Yoshizawa H.,KONA,22,23−31(2004))に応用されてきた。
【0030】
マイクロカプセルは化学的および物理的の両方法を使用して調製することができる。カプセル化法には複雑なコアセルベーション、リポソーム形成、噴霧乾燥および沈殿および重合法を含む。技術的応用について、界面重合法が特に好適な技術であり、これは最近、Zhang Y.and Rochefort D.(Journal of Microencapsulation, 29(7), 636−649(2012)、およびSalaun F.(in Encapsulation Nanotechnologies,Vikas Mittal (ed.),chapter 5,137−173(Scrivener Publishing LLC(2013))により総説された。
【0031】
本発明では、重合法がカプセルの設計において最高の制御を可能にするので、重合法を使用することが好ましい。より好ましくは界面重合法を使用して本発明で使用するカプセルを調製する。この技術は周知であり、そして最近、Zhang Y.および Rochefort D.(Journal of Microencapsulation,29(7),636−649(2012)およびSalitin(in Encapsulation Nanotechnologies,Vikas Mittal(ed.),chapter 5,137−173(Scrivener Publishing LLC(2013))により総説された。
【0032】
界面重合法は本発明によるカプセルの調製に特に好適な技術である。界面縮重合のような界面重合法では、2つの反応物質がエマルション液滴の界面で会い、そして迅速に反応する。
【0033】
一般に、界面重合法には水性の連続相中に親油性相の分散またはその逆を必要とする。各相は他の相に溶解している別のモノマー(第2シェル成分)と反応することができる少なくとも1つの溶解したモノマー(第1シェル成分)を含む。重合で、水性および親油性相の両方に不溶性のポリマーが形成される。その結果、形成したポリマーは親油相と水性相との界面で沈殿する傾向を有し、これにより分散された相の回りにシェルが形成し、これはさらに重合で成長する。本発明によるカプセルは、水性の連続相中での親油性分散物の形成から調製されることが好ましい。
【0034】
A.3.ポリマーシェル
界面重合により形成される本発明によるカプセルの典型的なポリマーシェルは、一般に第1シェル成分としてジ−またはオリゴアミン、そして第2シェル成分としてジ−または
ポリ−酸クロライドから調製されるポリアミド、一般に第1シェル成分としてジ−またはオリゴアミン、そして第2シェル成分としてジ−またはオリゴイソシアネートから調製されるポリウレア、一般に第1シェル成分としてジ−またはオリゴアルコール、そして第2シェル成分としてジ−またはオリゴイソシアネートから調製されるポリウレタン、一般に第1シェル成分としてジ−またはオリゴアミン、そして第2シェル成分としてジ−またはオリゴスルホクロライドから調製されるポリスルホンアミド、一般に第1シェル成分としてジ−またはオリゴアルコール、そして第2シェル成分としてジ−またはオリゴ−酸クロライドから調製されるポリエステル、および一般に第1シェル成分としてジ−またはオリゴアルコール、そして第2シェル成分としてジ−またはオリゴ−クロロホルメートから調製されるポリカーボネートからなる群から選択される。シェルはこれらポリマーの組み合わせを含む場合がある。
【0035】
さらなる実施態様では、第1シェル成分としてゼラチン、キトサン、アルブミンおよびポリエチレンイミンのようなポリマーを、第2シェル成分としてジ−またはオリゴ−イソシアネート、ジ−またはオリゴ−酸クロライド、ジ−またはオリゴ−クロロホルメート、およびエポキシ樹脂と組み合わせて使用することができる。
【0036】
特に好適な実施態様では、シェルはポリウレタン、ポリウレアまたはそれらの組み合わせを含む。さらに好適な実施態様では、水非混和性溶媒を分散工程に使用し、これはシェルの形成前もしくは後に溶媒ストリッピングにより除去される。特に好適な実施態様では、水非混和性溶媒は常圧で100℃未満の沸点を有する。エステルは水非混和性溶媒として特に好適である。
【0037】
最も好適な実施態様では、カプセルは自己分散(self dispersing)カプセルである。カプセルを自己分散させるために、カルボン酸またはそれらの塩のようなアニオン性分散基(dispersing groups)、またはカチオン性分散基は、分散安定性を確保するためにカプセルのポリマーシェルに共有結合で結合されなければならない。
【0038】
アニオン性の安定化基をナノカプセルのポリマーシェルに包含するための好適な方法は、イソシアネートと反応することができるカルボン酸官能化反応性界面活性剤を使用する。これにより少なくとも部分的に二級または一級アミンを含有する両性型の界面活性剤を導く。スルホン酸またはその塩か、リン酸エステルまたはその塩か、ホスホン酸またはその塩かで官能化された他の反応性界面活性剤を使用することができる。
【0039】
部分的に二級アミンを有するが、三級アミンも含む界面活性剤の混合物である数種の両性界面活性剤が市販されている。市販の両性界面活性剤を使用することにより作製されるナノカプセルを基材としたインクジェットインクでは、インクジェットプリンターで、禁止されている気泡の形成に遭遇した。気泡はインク供給そしてまたインクから気泡を除くための脱気でも問題を生じ、したがって信頼性がない噴射を導いた。したがって国際公開第WO2016/165970号パンフレットの式(I)による界面活性剤が、オリゴマーブロックドイソシアネートのカプセル化工程中に使用されることが好ましい。
【0040】
カチオン性安定化基をナノカプセルのポリマーシェルに包含するための別の好適な方法は、一級または二級アミン基の少なくとも1つと、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、四級化三級アミン、N−四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウムおよびホスホニウムから選択される少なくとも1つの基とを含む界面活性剤を、シェルのイソシアネートモノマーと反応させることによる、カチオン性分散基を持つ界面活性剤の本発明によるナノカプセルのシェルへのカップリングを使用する。より一層好適な実施態様では、前記界面活性剤が式IIの界面活性剤である。
【化5】
式中
R
1が置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基および置換もしくは非置換アルキニル基からなる群から選択されるが、ただしR
1は少なくとも8個の炭素原子を含み;
R
2、R
3およびR
4は、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アルカリール基、および置換もしくは非置換(ヘテロ)アリール基からなる群から独立して選択され;
L
1は8個以下の炭素原子を含む二価の連結基を表し;
Xはアンモニウム基の正電荷を補うための対イオンを表す。
【0041】
カプセルは、動的レーザー回折法により測定した時、4μm以下の平均粒子サイズを有する。インクジェットプリントヘッドのノズルの直径は通常、20から35μmである。信頼性のあるインクジェット印刷は、カプセルの平均粒子サイズがノズルの直径の1/5より小さい場合に可能である。4μm以下の平均粒子サイズは、20μmの最少ノズル直径を有するプリントヘッドによる噴射を可能にする。さらに好適な実施態様では、カプセルの平均粒子サイズはノズルの直径の1/10より小さい。従って平均粒子サイズは、好ましくは0.05〜2μm、より好ましくは0.10〜1μmである。カプセルの平均粒子サイズが2μmより小さい場合、経時的に優れた解像および分散安定性が得られる。
【0042】
さらなる実施態様では、本発明の分散物の水性媒質は前記熱的反応化学物質を活性化するための触媒をさらに含む場合がある。触媒は好ましくは、ブロンステッド酸、ルイス酸、および熱酸発生剤からなる群から選択される。前記触媒は、水性連続相、カプセルのコアまたは分離した分散相中に存在する場合がある。
【0043】
A.4.溶剤
本発明によるカプセルは、水性媒質に分散される。水性媒質は水からなるが、好ましくは1もしくは複数の水溶性有機溶剤を含む場合がある。
【0044】
1もしくは複数の有機溶剤を様々な理由で加えることができる。例えば少量の有機溶剤を加えて、前処理液または調製することになるインクジェットインク中の化合物の溶解を改善することが有利となり得る。水溶性有機溶剤は、ポリオール(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、および2−メチル1,3−プロパンジオール)、アミン(例えば、エタノールアミン、および2−(ジメチルアミノ)エタノール)、一価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、およびブタノール
)、多価アルコールのアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、2,2’チオジエタノール、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、複素環式化合物(例えば、2−ピロリドンおよびN−メチル−2−ピロリドン)、およびアセトニトリルであることが好ましい。
【0045】
B.カプセル化オリゴマーブロックドイソシアネートの分散物を含む水性配合物
B.1.テキスタイル印刷用の前処理液
布にインクを含む水性着色剤を印刷する前に、テキスタイルを処理するための水性前処理液は、本発明のカプセル化オリゴマーブロックドイソシアネートの分散物を含む場合がある。この水性媒質は水を含むが、1もしくは複数の水溶性有機溶剤を含んでもよい。適切な有機溶剤はA.4節に記載されている。前処理液中に存在するならば、ナノカプセルはインクの総重量に基づき、好ましくは30重量%以下、5から25重量%の間の量であることが好ましい。カプセル化オリゴマーブロックドイソシアネートから、カチオン性分散基を含むポリマーシェルを有するものが特に好適である。
【0046】
前処理液は保湿剤も含む場合がある。保湿剤は、この液体がインクジェットまたはバルブジェットのような噴射(jetting)技術により適用されなければならない場合に、前処理液に含まれることが好ましい。保湿剤はノズルの詰まりを防ぐ。この防止は、前処理液、特に液体中の水、が蒸発する速度を下げる能力による。保湿剤は、好ましくは、水より高い沸点を有する有機溶剤である。適切な保湿剤には、トリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセロール、尿素、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア、およびジアルキルチオウレア、ジオール(エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、およびヘキサンジオールを含む)、グリコール(プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含む)、およびそれらの混合物および誘導体がある。好適な保湿剤はグリセロールである。
【0047】
保湿剤は液体の総重量に基づき、0.1から20重量%の量で液体配合物に加えられることが好ましい。
【0048】
多価金属イオンは、凝集剤として前処理液に含める場合がある。適切な例は、2以上の原子価の金属カチオン、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウムおよびアルミニウム、およびアニオン、例えばフッ化物イオン(F
−)、塩化物イオン(Cl
−)、臭化物イオン(Br
−)、硫酸イオン(SO
42−)、硝酸イオン(NO
3−)、および酢酸イオン(CH
3COO
−)から形成される水溶性金属塩である。
【0049】
このような多価イオンは、インクジェットインク中の顔料表面上、またはインクに含まれるナノカプセルの分散したポリマー上のカルボキシル基に作用することによりインクを凝集する機能を有する。その結果、インクはテキスタイルの表面上に留まり、発色性を改善する。したがってインク中の顔料表面および/またはインクに含まれるナノカプセルの分散したポリマーがカルボキシル基を有することが好ましい。
【0050】
前処理は、凝集剤として有機酸を含むこともできる。有機酸の好適な例には、限定するわけではないが酢酸、プロピオン酸および乳酸がある。
【0051】
前処理液はさらに、凝集剤として樹脂エマルションを含む場合がある。樹脂の例は、例えばトウモロコシおよび小麦由来のデンプン;セルロース材料、例えばカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシメチルセルロース;多糖、例えばアルギン酸ナトリウム、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラント(trant)ガム、グアガム、およびタマリンド種子;タンパク質、例えばゼラチンおよびカゼイン;水溶性の天然ポリマー、例えばタンニンおよびリグニン;および合成の水溶性ポリマー、例えばポリビニルアルコールを含むポリマー、ポリエチレンオキシドを含むポリマー、アクリル酸モノマーから形成されたポリマー、および無水マレイン酸モノマーから形成されたポリマーを含むが、これらに限られない。非常に適切な樹脂は、欧州特許第2362014号明細書[0027−0030]に記載されたアクリル系ポリマーである。樹脂含量は、好ましくは、前処理液の総質量(100質量%)に対して20重量%以下である。
【0052】
前処理液は界面活性剤を含む場合がある。任意の既知の界面活性剤を使用できるが、好ましいのはグリコール界面活性剤および/またはアセチレンアルコール界面活性剤である。アセチレングリコール界面活性剤および/またはアセチレンアルコール活性剤の使用は、さらにブリードを低減して印刷の品質を改善し、そしてまた印刷での乾燥特性も改善して高速印刷を可能にする。
【0053】
アセチレングリコール界面活性剤および/またはアセチレンアルコール界面活性剤は、好ましくは2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、および2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキシド付加物、および2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキシド付加物から選択される1もしくは複数である。これらは例えばエアープロダクツ(Air Products(GB))からOlfine(登録商標)104シリーズおよびEシリーズ、例えばOlfine E1 010として、またはニッシンケミカルインダストリー(Nissin Chemical Industry)からSurfynol(登録商標)465およびSurfynol61として販売されている。
【0054】
また前処理液は、顔料を含む場合がある。濃い色のテキスタイル上の印刷に特に有用であるのは、白色顔料を含有する前処理液である。水溶性前処理液インクに好適な顔料は、二酸化チタンである。本発明に有用な二酸化チタン(TIO
2)顔料は、ルチルまたはアナターゼ結晶形の場合がある。TiO
2の作成法は、“The Pigment Handbook”,Vol.I,2nd Ed.,John Wiley&Sons,NY(1988)により詳細に記載され、その関連する開示は、全ての目的に関して全体が記載されているかのように引用により本明細書に編入する
【0055】
二酸化チタン粒子は、前処理液の所望する最終的な使用目的に依存して約1ミクロン以下の広い種類の平均粒子サイズを有する場合がある。高い隠蔽力(hiding)または装飾性の印刷の応用が要求される応用には、二酸化チタン粒子は好ましくは、約1μm未満の平均サイズを有することが好ましい。好ましくは粒子は約50から約950nm、より好ましくは約75から約750nm、そしてさらに一層好ましくは約100から約500nmの平均粒子サイズを有する。
【0056】
ある程度の透明性を持つ白色が要求される応用には、顔料には「ナノ」二酸化チタンが好ましい。「ナノ」二酸化チタン粒子は、一般に約10から約200nm、好ましくは約20から約150nm、そしてより好ましくは約35から約75nmの範囲の平均サイズを有する。ナノ二酸化チタンを含むインクは、改善された彩度および透明性を提供できると同時に、光退色に対する良好な耐性および適切な色相角を維持する。市販されている非
被覆ナノ級二酸化チタンの例は、デガッサ(Degussa)(ニュージャージー州、パーシッパニー)から入手できるP−25である。
【0057】
さらに多種粒子サイズで、不透明性およびUV保護のような独自の利点を実現することができる。これら多種サイズは、顔料性およびナノ級TIO
2の両方を加えることにより達成することができる。
【0058】
二酸化チタンは、好ましくはスラリー濃縮組成物を介して前処理配合物に配合される。スラリー組成物中の二酸化チタンの量は、スラリー総重量に基づき約15重量%から約80重量%であることが好ましい。
【0059】
また二酸化チタン顔料は、1もしくは複数の金属酸化物の表面コーティングを有する場合がある。これらのコーティングは当業者に既知の技術を使用して適用することができる。金属酸化物コーティングの例は、とりわけケイ素、アルミナ、アルミナシリカ、ボリアおよびジルコニアを含む。これらのコーティングは、二酸化チタンの光反応性を低減することを含む改善された特性を提供することができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリアおよびジルコニアの金属酸化物コーティングは、TiO
2顔料に正の荷電表面をもたらし、したがって顔料の追加表面処理が必要でないので、本発明のカチオン性の安定化カプセルとの組み合わせに特に有用である。
【0060】
そのような被覆二酸化チタンの市販されている例は、R700(デラウエア州、ウィルミントンのイー.アイ.デュポン ヌムール(E.I.DuPont deNemours)から販売されているアルミナ−コーティング)、RDI−S(フィンランド、ヘルシンキのケミラ インダストリアル ケミカルズ(Kemira Industrial Chemicals)から販売されているアルミナ−コーティング)、R706(デラウエア州、ウィルミントンのデュポンから販売されている)、およびW−6042 (日本、大阪のタイコ コーポレーション(Tayco Corporation)から販売されているシリカアルミナ処理ナノ級二酸化チタン)がある。
【0061】
殺生物剤も前処理液に加えて望ましくない微生物の増殖を防ぐことができ、これは液体中で生じる場合がある。殺生物剤は単独で、または組み合わせて使用することができる。本発明のインクジェットインクに適切な殺生物剤は、デヒドロ酢酸ナトリウム、2−フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、ナトリムピリジンチオン−1−オキシド、エチルp−ヒドロキシベンゾエートおよび1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびそれらの塩がある。
【0062】
好適な殺生物剤は、アーチ ユーケー バイオサイズ(ARCH UK BIOCIDES)から入手できるProxel(商標)GXLおよびProxel(商標)Ultra 5、およびコグニス(COGNIS)から入手できるBronidox(商標)である。
【0063】
殺生物剤は、インク液体に基づき、好ましくはそれぞれ0.001から3重量%、より好ましくは0.01から1.0重量%の量で水性媒質に加えられる。
【0064】
前処理液は、さらに液体の粘性制御のために、少なくとも1つの増粘剤を含む場合がある。適切な増粘剤は、尿素または尿素誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、誘導化キチン、誘導化デンプン、カラギーナン、プルラン、タンパク質、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(スチレン−コ−マレイン酸無水物)、ポリ(アルキルビニルエーテル−コ−マレイン酸無水物)、ポリアクリルアミド、部分加水分解ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニル
アルコール)、部分加水分解ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリビニルピロリドン、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)を含む。
【0065】
増粘剤は、液体に基づき好ましくは0.01から20重量%、より好ましくは0.1から10重量%の量で加えられる。
【0066】
前処理液は少なくとも1つのpH調整剤を含む場合がある。適切なpH調整剤は、有機アミン、NaOH、KOH、NEt
3、NH
3、HCl、HNO
3およびH
2SO
4を含む。好適な実施態様では、前処理液は7より低いpHを有する。7以下のpHは、特にナノキャップ(nanocap)の分散基がアミンである時、カプセルの静電的安定化に有利な影響を及ぼすことができる。
【0067】
また前処理液は光熱変換物質を含むことができ、これは赤外線光源による波長範囲の発光を吸収する任意の適切な化合物でよい。光熱変換物質は赤外線吸収染料(infrared dye)であり、これはインクジェットインク中の容易な取り扱いを可能にするので好ましい。赤外線吸収染料は、水性媒質中に含まれる場合があるが、好ましくはカプセルのコアに含まれる。後者では通常、熱変換が大変効果的である。
【0068】
赤外線吸収染料の適切な例は、国際公開第2015158649号パンフレットの[0179]に開示されている。1もしくは複数の光熱変換物質が、前処理液の総重量に基づき0.1から10重量%の範囲で存在することが好ましい。
【0069】
B.2.インクジェットインク
また本発明のナノキャップを含む分散物は、顔料を含有する水性インクジェットインクに包含されることも適切である。ナノカプセルは、インクジェットインク中にインクの総重量に基づき、好ましくは30重量%以下、5から25重量%の間の量で存在することが好ましい。
【0070】
B.2.1.溶剤
インクの水性媒質は水を含むが、好ましくは1もしくは複数の水溶性有機溶剤を含むこともできる。適切な溶剤はA.4節に記載されている。
【0071】
B.2.2.顔料
インクの顔料は、ブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物等でよい。色顔料は、HERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.3rd edition.Wiley−VCH,2004.ISBN 3527305769に開示されているものから選択することができる。
【0072】
適切な顔料は国際公開第2008/074548号パンフレットの段落[0128]ないし[0138]に開示される。
【0073】
顔料粒子は、ポリマー分散物、アニオン性界面活性剤を使用して水性媒質中に分散されるが、好ましくは自己分散性顔料が使用される。後者は、顔料の分散安定性が、カプセルに採用された静電的安定化と同じ技術により達成されるので、ポリマー分散物とインクジェットインクに含まれ得るカプセルの分散基との相互作用を防ぐ(以下参照)。
【0074】
自己分散性顔料は、その表面に共有結合したアニオン性親水性基、例えば造塩基またはカプセルに使用された分散基と同じ基を有する顔料であり、これらの基は、界面活性剤または樹脂を使用せずに顔料が水性媒質中に分散できるようにする。
【0075】
自己分散性顔料を作製するための技術は周知である。例えば欧州特許第1220879A号明細書は、結合したa)少なくとも1つの立体基と、b)少なくとも1つの有機イオン基および少なくとも1つの両親媒性対イオンとを有する顔料を開示し、ここで両親媒性対イオンはインクジェットインクに適当な有機イオン基の電荷と反対の電荷を有する。また欧州特許第906371A号明細書は、1もしくは複数のイオン基またはイオン化できる基を含む結合した親水性有機基を有する適切な表面修飾着色顔料を開示する。適切な市販の自己分散性着色顔料は、例えばカボット(CABOT)からのCAB−O−JET(商標)インクジェット着色剤である。
【0076】
インクジェットインク中の顔料粒子は、特に発射ノズルでインクジェット印刷装置を通るインクの自由な流れを可能にするために十分に小さくなるべきである。また、最大の色濃度のために小さい粒子を使用すること、および、沈降を遅くすることが望ましい。
【0077】
平均顔料粒子サイズは、好ましくは0.050から1μmの間、より好ましくは0.070から0.300μmの間、そして特に好ましくは0.080から0.200μmの間である。最も好ましくは数平均顔料粒子サイズは、0.150μm以下の大きさである。顔料粒子の平均粒子サイズは、動的光散乱の原理に基づきブロックヘブンインスツルメンツ(Brookhaven Instruments)の粒度計BI90plusで測定される。インクは酢酸エチルにより0.002重量%の顔料濃度に希釈される。BI90plus測定の設定は、23℃、角度90°、波長635nm、およびグラフィックス=補正関数(correction function)で5回実施した。
【0078】
しかしホワイト顔料のインクジェットインクについて、ホワイト顔料の数平均粒子径は、B.1節に記載したものと同じである。
【0079】
適切なホワイト顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレットの[0116]、表2に与えられている。ホワイト顔料は好ましくは、1.60より大きい屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料は単独または組み合わせて使用することができる。好ましくは二酸化チタンが1.60より大きい屈折率を有する顔料として使用される。適切な二酸化チタン顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレットの[0117]および[0118]に開示されたものである。
【0080】
また特別な着色剤、例えば衣類に特別な効果を及ぼす蛍光顔料、そして豪華な見かけのシルバーおよびゴールド色をテキスタイルに印刷するための金属顔料を使用することができる。
【0081】
顔料の適切なポリマー分散物は2つのモノマーのコポリマーであるが、それらは3、4、5個またはそれ以上のモノマーを含んでよい。ポリマー分散物の特性は、モノマーの性質およびポリマー中でのそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散物は以下のポリマー組成を有することが好ましい。
・統計的に重合したモノマー(例えば、モノマーAおよびBがABBAABABに重合した)、
・交互に重合したモノマー(例えば、モノマーAおよびBがABABABABに重合した)、
・グラジエント(テーパー型)に重合したモノマー(例えば、モノマーAおよびBがAAABAABBABBBに重合した)、
・ブロックコポリマー(例えば、モノマーAおよびBがAAAAABBBBBBに重合した)、ここで各ブロックのブロック長(2,3,4,5またはさらにそれ以上)はポリマー分散物の分散能に重要である、
・グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは骨格に結合したポリマー側鎖を持つポリマー骨格からなる)、および
・これらのポリマーの混合形、例えばブロッキィ(blocky)グラジエントコポリマー。
【0082】
適切な分散物はビーワイケイ ケミ(BYK CHEMIE)から入手可能なDISPERBYK(商標)分散物、ジョンソン ポリマーズ(JOHNSON POLYMERS)から入手可能なJONCRYL(商標)分散物、およびゼネカ(ZENECA)から入手可能なSOLSPERSE(商標)分散物である。非ポリマーならびに幾つかのポリマー分散物の詳細な一覧は、MC CUTCHEON.Functional Materials, North American Edition.Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990.p.110−129により開示されている。
【0083】
ポリマー分散物は、500と30000との間、より好ましくは1500と10000との間の数平均分子量Mnを有することが好ましい。
【0084】
ポリマー分散物は、100,000未満、より好ましくは50,000未満、そして最も好ましくは30,000未満の重量平均分子量Mwを有することが好ましい。
【0085】
顔料は、インクジェットインクの総重量に基づきそれぞれ0.01ないし20重量%の範囲、より好ましくは0.05ないし10重量%の範囲、そして最も好ましくは0.1ないし5重量%の範囲で存在することが好ましい。ホワイトインクジェットインクに関しては、ホワイト顔料はインクジェットインクの3重量%ないし40重量%、そしてより好ましくは5重量%ないし35重量%の量で存在することが好ましい。3重量%未満の量では十分な被覆力を達成することができない。
【0086】
B.2.3.樹脂
本発明のインクジェットインク組成物は、さらに樹脂を含む場合がある。樹脂はしばしばインクジェットインク配合物に加えられて顔料のテキスタイルの繊維への良好な接着を達成する。樹脂はポリマーであり、そして適切な樹脂はアクリル系樹脂、ウレタン−修飾ポリエステル樹脂またはポリエチレンワックスの場合がある。
【0087】
ポリウレタン樹脂は分散物としてインク配合物に含まれることになり、そして例えば、脂肪族ポリウレタン分散物、芳香族ポリウレタン分散物、アニオン性ポリウレタン分散物、非イオン性ポリウレタン分散物、脂肪族ポリエステルポリウレタン分散物、脂肪族ポリカーボネートポリウレタン分散物、脂肪族アクリル修飾ポリウレタン分散物、芳香族ポリエステルポリウレタン分散物、芳香族ポリカーボネートポリウレタン分散物、芳香族アクリル修飾ポリウレタン分散物または上記の2以上の組み合わせからなる群から選択される場合がある。
【0088】
本発明のインク中の分散物として使用されることになる好適なウレタン樹脂は、ウレタン結合を含む構造単位を含むポリエステル樹脂である。そのような樹脂の中で、水溶性または水分散性ウレタン−修飾ポリエステル樹脂が好適である。ウレタン−修飾ポリエステル樹脂は、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)に由来する少なくとも1つの構造単位と、有機ポリイソシアネートに由来する少なくとも1つの構造単位とを含むことが好ましい。
【0089】
さらにヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂は、少なくとも1つの多塩基酸成分と少なくとも1つの多価アルコール成分との間のエステル化反応またはエステル交換化反応により形成される樹脂である。
【0090】
本発明のインクに含まれることになる好適なポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、アニオン性基を含有するポリオール、および、ポリイソシアネートを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂である。特に好適なポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、アニオン性基を含有するポリオール、および、ポリイソシアネートを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂であり、ここでポリエステルポリオールは、芳香族ポリカルボン酸とポリオールを反応させることにより得られる。適切なポリウレタン樹脂の例およびそれらの調製は、公開されていない特許出願である欧州特許第16196224.6号明細書に開示されている。
【0091】
適切なポリウレタン分散物の幾つかの例は例えば、NEOREZ R−989、NEOREZ R−2005、およびNEOREZ R−4000(ディーエスエム ネオレジン:DSM NeoResins);BAYHYDROL UH 2606、BAYHYDROL UH XP2719、BAYHYDROL UH XP2648、およびBAYHYDROL UA XP2631(バイエル マテリアル サイエンス:Bayer
Material Science);DAOTAN VTW 1262/35WA、DAOTAN VTW 1265/36WA、DAOTAN VTW 1267/36WA、DAOTAN VTW 6421/42WA、DAOTAN VTW 6462/36WA(カリフォルニア州アナハイムのサイテック エンジニアリング マテリアルズ社:Cytec Engineered Materials Inc.,Anaheim
CA);および、SANCURE2715、SANCURE20041、SANCURE2725(ルビズオール コーポレーション:Lubrizol Corporation)、または、上記の2以上の組み合わせである。
【0092】
アクリル系樹脂には、アクリルモノマーのポリマー、メタクリルモノマーのポリマーおよび前記モノマーと他のモノマーとのコポリマーがある。これらの樹脂は、約30nmないし約300nmの平均直径を有する粒子の懸濁液として存在する。アクリルラテックスポリマーは、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマー残基から形成される。アクリルラテックスポリマーのモノマーの例は、例示のために、例えばアクリル酸エステル、アクリルアミドおよびアクリル酸のようなアクリルモノマー、ならびに例えばメタクリル酸エステル、メタクリルアミドおよびメタクリル酸のようなメタクリルモノマーを含む。アクリルラテックスポリマーは、アクリルモノマーと、がスチレン、スチレンブタジエン、p−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびジビニルナフタレンを含むがこれらに限定されない、例えばビニル芳香族モノマーのような別のモノマーとのホモポリマーまたはコポリマーの場合がある。
【0093】
適切なアクリルラテックスポリマー懸濁液の幾つかの例は、JONCRYL537およびJONCRYL538(テキサス州、ポートアーサーのビーエイエスエフ コーポレーション:BASF Corporation);CARBOSET GA−2111、CARBOSET CR−728、CARBOSET CR−785、CARBOSET CR−761、CARBOSET CR−763、CARBOSET CR−765、CARBOSET CR−715およびCARBOSET GA−4028(ルビズオールコーポレーション);NEOCRYL A−1110、NEOCRYL A−1131、NEOCRYL A−2091、NEOCRYL A−1127、NEOCRYL XK−96およびNEOCRYL XK−14(DSM);およびBAYHYDROL AH
XP2754、BAYHYDROL AH XP2741、BAYHYDROL A2427およびBAYHYDROLA2651(バイエル:Bayer)であり、例えばまたは前記の2以上の組み合わせである。
【0094】
本発明のインクジェットインク中の樹脂の濃度は、少なくとも1(重量)%、そして好ましくは30(重量)%未満、より好ましくは20(重量)%未満である。
【0095】
B.2.3.添加物
水性インクジェットインクは、さらに界面活性剤、保湿剤、殺生物剤および増粘剤を添加剤として含むことができる。これらの適切な添加剤はB.1節に記載されている。
【0096】
C.インクジェット印刷法
テキスタイル印刷用の前処理液か、基材上にカラー印刷するための水性インクジェットインクのような、液体を使用する印刷法は少なくとも:a)本発明によるカプセルの分散物を含む液体を基材に適用し;そしてb)熱をかけてカプセル中のオリゴマーブロックドイソシアネートを活性化する工程を含む。
【0097】
本発明のデジタルテキスタイル印刷法では、使用するテキスタイルが1種の繊維か、綿、麻、レーヨン繊維、酢酸繊維、絹、ナイロン繊維およびポリエステル繊維からなる群から選択される2以上の混紡繊維かから作られている。布は上に述べた繊維の任意の形、例えば織物、編物、または不織布の場合がある。
【0098】
デジタルテキスタイル印刷法の第1段階では、凝集剤を含む前処理液が噴霧、コーティングまたはパッド印刷により繊維上に適用されることが好ましい。あるいは前処理液は、インクジェットヘッドまたはバルブジェットヘッドを使用して繊維に適用することもできる。これら後者の前処理液の適用手段は、必要とされる前処理液の量が他の適用法よりも実質的に少ない利点を有する。インクジェットヘッドにより、画像が印刷されるべき場所の繊維面積に前処理液を適用することが可能である。
【0099】
好ましくは前処理液は、本発明によるナノカプセルの分散物を含む。より好ましくは、ポリマーシェルがカチオン性分散基を含むナノカプセルは前処理液に使用されることになる。前処理剤がインクジェットヘッドを用いて繊維に適用される場合、ナノカプセルの粒子径は、光散乱法で測定した時に50nmないし1μmの範囲であることが好ましい。1μmより大きい粒子径は、インクジェットヘッドからの噴射の安定性に悪化を引き起こす傾向がある。粒子径は、より好ましくは500nm以下である。前処理液を適用するために適切なインクジェットヘッドの種類は、圧電型、連続型、サーマルプリントヘッド型またはバルブジェット型である。好ましいカプセルは、熱反応性架橋剤を含み、そしてカチオン性分散基で安定化されたコアを有するものである。
【0100】
前処理液が適用された繊維は、乾燥され、そして場合により熱処理を受けた後、引き続き着色剤含有インクを用いた噴射工程にかけることができる。熱処理は、好ましくは110から200℃、より好ましくは130から160℃である。110℃以上の加熱は、ナノ粒子のコア中の熱反応性架橋剤を布の繊維に固着することを可能にする。加熱法の例は、熱プレス、常圧蒸気処理、高圧蒸気処理よびTHERMOFIXを含むが、これらに限定されない。任意の熱源を加熱法に使用でき、例えば赤外線ランプが使用される。
【0101】
テキスタイルに前処理液を適用した後、着色された画像に顔料を含有する水性インクジェットインクを噴射することができる。好ましくは、インクジェットインクはさらに本発明によるナノカプセルの分散物を含む場合がある。
【0102】
インクジェット工程後、印刷された繊維は乾燥そして加熱される。前処理後の加熱工程が実行されなければ(前記参照)、印刷された繊維の加熱工程が必要である。乾燥工程は空気で行うことができるが、加熱工程は熱源を使用して行わなければならない。熱源の例は、強制風乾と、NIR−およびCIR照射を含むIR−照射のような輻射加熱と、伝導加熱と、高周波乾燥と、マイクロ波乾燥とに用いるための装置を含む。布の乾燥工程は、好ましくは150℃未満、より好ましくは100℃未満、最も好ましくは80℃未満の温度で行われる。加熱工程は、好ましくは110から200℃、より好ましくは130から160℃で行われる。
【0103】
本発明によるインクジェット印刷法の別の実施態様は、a)着色剤および本発明のナノカプセルの分散物を含むインクジェットインクを、基材上に噴射する工程と、b)熱をかけてカプセル中のオリゴマーブロックドイソシアネートを活性化する工程を少なくとも含む。適切な基材は、テキスタイル、革、ガラス、セラミック、金属、ガラス、木材、紙またはポリマー表面である。また基材は、例えばホワイトインクにより下塗りすることもできる。
【0104】
基材は、例えば、テキスタイル、紙および厚紙基材のような孔質か、例えばポリエチレンテレフタレート表面を有するプラスチック基材かのような実質的に非吸収性基材でよい。
【0105】
好適な基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルクロライド、ポリエステル様ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリラクチド(PLA)およびポリイミドの表面を含む。
【0106】
また基材は、紙基材、例えば普通紙か、樹脂を被覆した紙、例えばポリエチレンもしくはポリプロピレン被覆紙かでもよい。紙の種類に真の制限はなく、新聞用紙と、雑誌用紙と、オフィス用紙と、壁紙と、またより高い秤量の通常はボール紙と呼ばれている紙、例えば裏白チップボール(white lined chipboard)、段ボール、および、包装用ボール(packaging board)とを含む。
【0107】
基材は、透明、半透明または不透明の場合がある。好適な不透明基材には、アグファ−ゲバート(Agfa−Gevaert)からのSynaps(商標)級のような所謂合成紙があり、これは1.10g/cm
3以上の密度を有する不透明なポリエチレンテレフタレートシートである。
【0108】
インクジェット印刷システム用の好適なインクジェットヘッドは、圧電インクジェットヘッドである。圧電インクジェット噴射は、電圧がかけられた時の圧電セラミックトランスデューサの移動に基づく。電圧をかけるとプリントヘッド中の圧電セラミックトランスデューサの形が変わり空間ができ、次いでここにインクが満たされる。電圧が再び除かれると、セラミックは元の形に広がり、インク滴をインクジェットヘッドから噴出する。しかし本発明によるインクの噴射は、圧電インクジェット印刷に限定されない。他のインクジェット印刷用ヘッドを使用でき、そして連続型、感熱印刷ヘッド型およびバルブジェット型のような様々な種類を含む場合がある。
【0109】
光熱変換物質が本発明のナノカプセルに存在する場合、加熱手段は適切な光源でよい。光熱変換物質が1もしくは複数の赤外染料からなる場合、赤外線光源が使用される。発光した少なくとも一部が熱活性化架橋剤を活性化するために適切である限り、任意の赤外線光源を使用することができる。赤外線硬化手段には、赤外線レーザー、赤外線レーザーダイオード、赤外線LEDまたはそれらの組み合わせを含む場合がある。
【実施例】
【0110】
1.材料
・Lakeland ACP70は、レーキランドラボラトリーズLTD(Lakeland Laboratories LTD)により供給される両イオン性界面活性剤である。
・Desmodur N75 BAは、バイエルAGにより供給される三官能性イソシアネートである。
・Trixene BI7963は、バックスエンデン ケミカルズLTD(Baxenden Chemicals LTD)により供給されるマロネートブロックドイソシアネートである。
・Alkanol XCは、デュポンにより供給されるアニオン性界面活性剤である。
・TDI末端ポリ(プロピレンオキシド)(Mn=2300、NCO−含量:3.6重量%)はアルドリッチ(Aldrich)により供給された。
・Desmodur XP2617は、コベストロ(Covestro)により供給された。
・Desmodur VPLS2371はコベストロにより供給された。
・Polurcast PE95A01、Polurcast PET88A01およびPolurcast PET85A01は、サピシ(Sapici)により供給された。・Cab−o−Jet 465Mは、カボットにより供給されるマゼンタ顔料分散物である。
・Cab−o−Jet 465Cは、カボットにより供給されるシアン顔料分散物である。
・Cab−o−Jet 470Yは、カボットにより供給されるイエロー分散物である。・Cab−O−Jet 300は、カボットにより供給されるブラック分散物である。
・Cab−O−Jet 740Yは、カボットにより供給されるイエロー分散物である。・Diamond D75Cは、ダイアモンド ディスパージョンズ(Diamond Dispersions)により供給されるシアン分散物である。
・Diamond D75Mは、ダイアモンド ディスパージョンズにより供給されるマゼンタ分散物である。
・Diamond D75Yは、ダイアモンド ディスパージョンズにより供給されるイエロー分散物である。
・Diamond D75Kは、ダイアモンド ディスパージョンズにより供給されるブラック分散物である。
・Diamond D71Y155は、ダイアモンド ディスパージョンズにより供給されるイエロー分散物である。
【0111】
2.測定法
2.1.平均粒子サイズ
平均粒子サイズは、Zetasizer(商標)Nano−S(メルベルン インスツルメンツ、ゴフィン メイビス:Malvern Instruments, Goffin Meyvis)を使用して測定した。
【0112】
2.2.触感
触感の試験は、本発明と比較の両方の布サンプルを、5名のパネルにより評価し、0から5の触感で採点した。0は印刷されていない布と固体領域との間に感知できる差がないことを意味する。5は大変硬い感じを意味する。採点は平均した。
【0113】
2.3.安定性
インクの安定性は、数値的および視覚的に評価した。インクの相対的粘度が60℃で7日間保存した後に40%より高く上昇した場合、インクは不安定であると評する。インク
が固化する場合、または相分離が見える場合は、インクは不安定であると評する。
【0114】
3.本発明のナノカプセルの合成
3.1.共反応性(co−reactive)カチオン性界面活性剤の合成
CATSURF−1の合成
CATSURF−1は、以下の反応に従い調製した。
【化6】
29g(0.105モル)の(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(水中75重量%で供給された)を、150gのイソプロパノールに溶解する。26.9g(0.1モル)のオクタデシルアミンおよび15g(0.148モル)のトリエチルアミンを加え、そして混合物を80℃に24時間加熱した。溶媒を減圧下で除去した。CATSURF−1は、さらに精製せずにナノカプセルの合成に使用した。
【0115】
CATSURF−2の合成
CATSURF−2は、以下の反応に従い調製した。
【化7】
【0116】
29g(0.105モル)の(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(水中75重量%で供給された)は、150gのイソプロパノールに溶解する。26.7g(0.1モル)のオレイルアミンおよび15g(0.148モル)のトリエチルアミンを加え、そして混合物を80℃で24時間加熱した。溶媒を減圧下で除去した。Surf−5はさらに精製せずに以下に記載するナノカプセル合成に使用した。
【0117】
3.2.オリゴマーブロックドイソシアネートの合成
TDI末端ポリプロピレンオキシド系マロネートブロックドイソシアネート(ISO−1)の合成
【化8】
【0118】
17.6g(0.11モル)のマロン酸ジエチルを、450mlのTHFに溶解した。12.3g(0.11モル)のカリウムtert−ブトキシドを加え、そして混合物を30分間撹拌した。カリウムtert−ブトキシドを加えると、マロン酸ジエチルのカリウム塩が媒質から沈殿した。添加中、温度が40℃まで上昇した。混合物を20℃に冷却し、そして115gのTDI末端ポリ(プロピレンオキシド)(Mn=2300、NCO−含量:3.6重量%)を加えた。反応を室温で16時間続行した。溶媒を減圧下で蒸発させ、そして300ml塩化メチレンを加えた。塩化メチレン溶液を、11gの濃塩酸溶液(500mlの水中)に加えた。有機画分を単離し、そして200mlのtert−ブチルメチルエーテルを加えた。有機画分を250mlのブラインで3回抽出し、MgSO
4で乾燥し、そして減圧下で蒸発させた。129gのマロネートエンドキャップ化ポリマーを単離した。オリゴマーブロックドイソシアネートは、さらに精製せずに使用した。
【0119】
HDI末端ポリプロピレンオキシド系マロネートブロックドイソシアネート(ISO−13)の合成
【化9】
23.8g(0.149モル)のマロン酸ジエチルを、450mlのTHFに溶解した。16.7g(0.149モル)のカリウムtert−ブトキシドを加え、そして混合物を30分間撹拌した。カリウムtert−ブトキシドの添加で、マロン酸ジエチルのカリウム塩が媒質から沈殿した。添加中、温度が40℃に上昇した。混合物を20℃に冷却し、そして50gのHDI末端ポリ(プロピレンオキシド)(Desmodur XP2617、NCO−含量:12.5重量%)を加えた。反応は室温で16時間続けた。溶媒を減圧下で除去し、そして200mlの酢酸エチルおよび300mlのメチルtert−ブチルエーテルを残渣に加えた。混合物を400mlの14.9g濃塩酸溶液(25重量%の塩化ナトリウム溶液中)で抽出した。有機画分を単離し、400mlの25重量%塩化ナトリウム溶液で2回抽出し、そしてMgSO
4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、そしてオリゴマーブロックドイソシアネートISO−13をさらに精製せずにカプセル化に使
用した。
【0120】
IPDI末端ポリプロピレンオキシド系マロネートブロックドイソシアネート(ISO−14)の合成
【化10】
14.1g(0.0881モル)のマロン酸ジエチルを、300mlのTHFに溶解した。16.7g(0.0881モル)のカリウムtert−ブトキシドを加え、そして混合物を30分間撹拌した。カリウムtert−ブトキシドの添加で、マロン酸ジエチルのカリウム塩が媒質から沈殿した。添加中、温度が40℃まで上昇した。混合物を20℃に冷却し、そして100gのIPDI末端ポリ(プロピレンオキシド)(Desmodur
VPLS、NCO−含量:3.7重量%)を加えた。反応は16時間、室温で続行した。溶媒を減圧下で除去し、そして300mlのメチルtert−ブチルエーテルを残渣に加えた。混合物を8.8gの濃塩酸溶液(400mlの水中)で抽出した。有機画分を単離し、500mlの25重量%塩化ナトリウム溶液で2回抽出し、そしてMgSO
4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、そしてオリゴマーブロックドイソシアネートISO−14をさらに精製せずにカプセル化に使用した。
【0121】
TDI末端エチレングリコールアジピン酸ポリエステル系マロネートブロックドイソシアネート(ISO−15、IO−16)の合成
【化11】
15.5g(0.097モル)のマロン酸ジエチルを、400mlのTHFに溶解した。10.9g(0.097モル)のカリウムtert−ブトキシドを加え、そして混合物を30分間撹拌した。カリウムtert−ブトキシドの添加で、マロン酸ジエチルのカリウム塩が媒質から沈殿した。添加中、温度が40℃に上昇した。混合物を20℃に冷却し、そして100gのPolurcast PET88A01、NCO−含量:3.9重量%)を加えた。反応は16時間、室温で続行した。溶媒を減圧下で除去し、そして200
mlの酢酸エチルおよび300mlのメチルtert−ブチルエーテルを残渣に加えた。混合物を400mlの14.9g濃塩酸溶液(25重量%の塩化ナトリウム溶液中)で抽出した。有機画分を単離し、400mlの25重量%塩化ナトリウム溶液で2回抽出し、そしてMgSO
4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、そしてオリゴマーブロックドイソシアネートISO−15をさらに精製せずにカプセル化に使用した。
【0122】
ISO−16は、ISO−15と同様に作製したが、13.9g(0.087モル)のマロン酸ジエチルを、15.5gの代わりに使用した。Polurcast PET85のNCO−含量は3.5重量%であった。
【0123】
TDI末端ポリTHF系マロネートブロックドイソシアネート(ISO−3)の合成:
【化12】
23.8g(0.149モル)のマロン酸ジエチルを、450mlのTHFに溶解した。16.7g(0.149モル)のカリウムtert−ブトキシドを加え、そして混合物を30分間撹拌した。カリウムtert−ブトキシドの添加で、マロン酸ジエチルのカリウム塩が媒質から沈殿した。添加中、温度が40℃に上昇した。混合物を20℃に冷却し、そして100gのPolurcast PE95A01、NCO−含量:6.0重量%を加えた。反応は16時間、室温で続行した。溶媒を減圧下で除去し、そして200mlの酢酸エチルおよび300mlのメチルtert−ブチルエーテルを残渣に加えた。混合物を400mlの14.9g濃塩酸溶液(25重量%の塩化ナトリウム溶液中)で抽出した。有機画分を単離し、400mlの25重量%塩化ナトリウム溶液で2回抽出し、そしてMgSO
4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、そしてオリゴマーブロックドイソシアネートISO−3をさらに精製せずにカプセル化に使用した。
【0124】
コアはオリゴマーブロックドイソシアネートを含有し、周囲のシェルはアニオン性分散基を含有する、ナノカプセルの合成
ナノ−アニオン−1
(36.5gの酢酸エチル中)22gのDesmodur N75 BAおよび17gのオリゴマーブロックドイソシアネートISO−1の溶液を調製し、そしてこの溶液を、8gのLakeland ACP 70、2gのL−リジンおよび0.9gの33重量%水酸化ナトリウム溶液(58gの水中)に加えながら、18000rpmの回転速度でUltra−Turraxを使用して5分間撹拌した。追加の75mlの水をエマルションに加え、そして酢酸エチルを65℃にて減圧下で蒸発させながら、真空度を500mbarから120mbarへ徐々に上げた。酢酸エチルが完全に蒸発したら、さらに60mlの水を蒸発させた。水を加えて分散物の重量を145gの総重量に調整した。分散物を65℃で16時間撹拌した。分散物を室温に冷却し、そして分散物を1.6μmのフィルターでろ過した。
【0125】
ナノ−アニオン−2
(36.5gの酢酸エチル中)22gのDesmodur N75 BA、2gのLakeland ACP 70および18gのオリゴマーブロックドイソシアネートISO
−3の溶液を調製し、そしてこの溶液を、5.5gのLakeland ACP 70、2gのL−リジンおよび2.5gのトリエタノールアミン溶液(58gの水中)に加えながら、18000rpmの回転速度でUltra−Turraxを使用して10分間撹拌した。追加の100mlの水をエマルションに加え、そして酢酸エチルを65℃にて減圧下で蒸発させながら、真空度を500mbarから120mbarへ徐々に上げた。酢酸エチルが完全に蒸発したら、さらに55mlの水を蒸発させた。水を加えて分散物の重量を145gの総重量に調整した。分散物を65℃で16時間撹拌した。分散物を室温に冷却し、そして分散物を1.6μmおよび1μmのフィルターで連続的にろ過した。
【0126】
ナノ−アニオン−3
ナノ−アニオン−3は、ナノ−アニオン−2と同様に作製したが、ISO−3の代わりにISO−15を用いた。
【0127】
ナノ−アニオン−4
ナノ−アニオン−4は、ナノ−アニオン−2と同様に作製したが、ISO−3の代わりにISO−16を用いた。
【0128】
コアはオリゴマーブロックドイソシアネートを含有し、周囲のシェルはカチオン性分散基を含有する、ナノカプセルの合成
ナノ−カチオン−1
(36.5gの酢酸エチル中)22gのDesmodur BAおよび22gのオリゴマーブロックドイソシアネートISO−1の溶液を調製し、そして6.5gのカチオン性界面活性剤CATSURF−2および30gのグリセロール溶液(55gの水中)に加えながら18000rpmの回転速度でUltra−Turraxを使用して5分間撹拌した。80gの水を加え、そして酢酸エチルを65℃にて減圧下で蒸発させながら、真空度を500mbarから120mbarへ徐々に上げた。酢酸エチルが完全に蒸発したら、さらに60mlの水を蒸発させた。分散物に水を加えて145gの総重量にした。分散物を65℃で16時間撹拌した。分散物を室温に冷却し、そして5μmおよび2.7μmのフィルターで連続的にろ過した。
【0129】
平均粒子サイズは190nmであった。
【0130】
ナノ−カチオン−2
(36gの酢酸エチル中)22gのDesmodur N75 BAおよび18gのオリゴマーブロックドイソシアネートISO−14の溶液を調製し、そしてこの溶液を6gのカチオン性界面活性剤CATSURF−1(45mlの水中)および25gのグリセロールの溶液に加えながら、18000rpmの回転速度でUltra−Turraxを使用して5分間撹拌した。95ml水を分散物に加え、そして酢酸エチルを65℃にて減圧下で蒸発させながら、真空度を500mbarから120mbarへ徐々に上げた。酢酸エチルが完全に蒸発したら、さらに60mlの水を蒸発させた。水を加えて分散物の重量を145gの総重量に調整した。分散物を65℃で16時間撹拌した。分散物を室温に冷却した。分散物は60μmのフィルターで連続的にろ過して、沈殿したポリマーの小画分を取り出した。
【0131】
平均粒子サイズは200nmであった。
【0132】
ナノ−カチオン−3
ナノ−カチオンは、ナノ−アニオン−2と同様に作製したが、ISO−14の代わりに18gのオリゴマーブロックドイソシアネートISO−13を用いた。
【0133】
平均粒子サイズは175nmであった。
【実施例1】
【0134】
本実施例は、本発明によるカプセル化オリゴマーブロックドイソシアネートを使用した時のインクの増加した保存期限安定性を具体的に説明する。
【0135】
比較インクCOMP−1および本発明のインクINV−1からINV−4は、表2による成分を混合することにより調製した。すべての重量パーセントはインクジェットインクの総重量に基づく。
【表2】
【0136】
比較ナノカプセル比較−アニオン−1の合成
(36.5gの酢酸エチル中)22gのDesmodur N75 BAおよび23gのTrixene BI7963の溶液を調製した。この溶液を8gのLakeland
ACP70、2gのL−リジンおよび1gの水酸化ナトリウム33重量%溶液の溶液(75ml水中)に加えながら、18000rpmの回転速度でUltra−Turraxを使用して5分間撹拌した。酢酸エチルを65℃にて減圧下で蒸発させながら、真空度を500mbarから120mbarへ徐々に上げた。酢酸エチルが完全に蒸発したら、さらに60mlの水を蒸発させた。水を加えて分散物を145gの総重量にした。分散物を65℃で16時間撹拌した。分散物を室温に冷却した。分散物は1μmのフィルターでろ過した。
【0137】
平均粒子サイズは180nmであった。
【0138】
本発明のインクINV−1からINV−4、および比較インクCOMP−1の安定性測定の結果を、表3にまとめる。
【表3】
【0139】
表3から、本発明によるカプセル化されたオリゴマーブロックドイソシアネートは、標準的なブロックドイソシアネートに比べて保存期限の安定性に劇的な上昇を与えることが明らかになる。
【実施例2】
【0140】
この実施例は、異なる顔料分散物を含むカプセル化オリゴマーブロックドイソシアネートの広い範囲の適合性を具体的に説明する。
【0141】
本発明のインクINV−5からINV−14は、表4による成分を混合することにより調製した。すべての重量パーセントは、インクジェットインクの総重量に基づく。
【0142】
本発明のインクINV−5からINV−14を60℃で人工的に劣化(aged)させた。粘度の変化は時間の関数で監視した。すべてのインクが60℃で7日より長い保存期限を有することが示され、カプセル化されたオリゴマーブロックドイソシアネートが広い範囲の顔料分散物と適合性があることを示す。
【表4】
【実施例3】
【0143】
この実施例は、標準的なブロックドイソシアネートに比べてカプセル化されたオリゴマーブロックドイソシアネートを使用することにより、印刷された布の触った感じを調整す
る能力を具体的に説明する。
【0144】
アニオン性インクINV−15および比較インクCOMP−2は、表5による成分を混合することにより調製した。すべての重量パーセントは、インクジェットインクの総重量に基づく。
【表5】
混合物は5分間撹拌し、そして5μmのフィルターでろ過した。
【0145】
本発明のインクINV−15および比較インクCOMP−2の固体領域が、未処理の綿テキスタイル上に、標準Dimatix(商標)10plプリントヘッドを備えたDimatix(商標)DMP2831システムを使用して印刷された。インクは22℃で5kHzの発射周波数、25Vの発射電圧および標準波形を使用して噴射した。本発明のサンプル、および比較サンプルを乾燥し、続いて160℃で5分間、熱固着した。
【0146】
触感の試験を行った。本発明のインクは平均で1と採点され、一方比較インクは平均3と採点され、オリゴマー法を使用することにより明らかに改善された触感を示した。
【実施例4】
【0147】
この実施例は、カプセル化されたオリゴマーブロックドイソシアネートを含む噴射可能な前処理液で綿布を処理することにより、印刷された布の触った感じを調整する能力を示す。
【0148】
前処理液INKCAT−1:
前処理液INKCAT−1は、表6による成分を混合することにより調製した。すべての重量パーセントは、液体の総重量に基づく。
【表6】
【0149】
比較サンプルおよび本発明のサンプル
本発明のサンプルは以下のように印刷された。固体領域は未処理綿布に前処理液INKCAT−1を用いて、実施例3と同じインクジェットシステムを使用して印刷された。印刷された固体領域に、比較インクCOMP−2を、実施例3と同じインクジェットシステムで噴射した。本発明のサンプルを乾燥し、続いて160℃で5分間、熱固着した。
【0150】
比較サンプルは以下のように印刷された。固体領域は未処理綿布に比較インクCOMP−2を用いて、実施例3と同じインクジェットシステムを使用して印刷された。比較サンプルを乾燥し、続いて160℃で5分間、熱固着した。
【0151】
触感の試験を行った。カプセル化されたオリゴマーブロックドイソシアネートの分散物を含む前処理液で前処理した布は、平均で1.5と採点され、一方前処理無しの布は平均3.5と採点され、布の前処理にオリゴマー法を使用することにより明らかに改善された触感が示された。