【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を作製および使用する方法を当業者に記述するために提供され、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図しない。特記しない限り、温度はセルシウスで示され、圧力は、大気圧またはその近傍である。
【0111】
実施例1 内因性シグナル調節タンパク質(SIRP)遺伝子のヒト化
この実施例は、げっ歯類(例えば、マウス)などの非ヒト哺乳動物においてシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)をコードする内因性遺伝子をヒト化する例示的な方法を示す。ヒトSIRPαは、少なくとも10の対立遺伝子形態で存在することが公知である。この実施例に記載される方法は、任意のヒト対立遺伝子、または所望によりヒト対立遺伝子(または対立遺伝子断片)の組合せを使用して、非ヒト動物の内因性SIRPα遺伝子をヒト化するために使用され得る。この実施例では、ヒトSIRPαバリアント1が、マウスの内因性SIRPα遺伝子をヒト化するために使用される。
【0112】
SIRP(例えば、SIRPα)遺伝子の細胞外領域のヒト化のための標的化ベクターを、VELOCIGENE(登録商標)テクノロジーを使用して構築した(例えば、米国特許第6,586,251号およびValenzuelaら(2003年)High−throughput engineering of the mouse genome coupled with high−resolution expression analysis、Nature Biotech. 21巻(6号):652〜659頁を参照のこと)。
【0113】
簡潔に述べると、マウス細菌人工染色体(BAC)クローンbMQ−261H14を改変して、内因性SIRPα遺伝子のエクソン2〜4を含有する配列を欠失させ、ヒトBACクローンCTD−3035H21を使用してヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4を挿入した。内因性SIRPα遺伝子のエクソン2〜4に対応するゲノムDNA(約8555bp)を、BACクローンCTD−3035H21由来のヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4を含有する約8581bpのDNA断片によって、BACクローンbMQ−261H14において置き換えた。BACクローンCTD−3035H21中に含有されるヒトSIRPα対立遺伝子の配列分析により、ヒトバリアント1に対応する対立遺伝子が明らかになった。loxP部位が隣接するネオマイシンカセットを、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4を含有する約8581bpのヒトDNA断片の最後に添加した(
図1)。
【0114】
上流および下流の相同性アームを、それぞれエクソン2および4の5’および3’の位置においてマウスBAC DNAから取得し、約8581bpのヒト断片−ネオマイシンカセットに付加して、内因性SIRPα遺伝子のヒト化のための最終的な標的化ベクターを創出し、このベクターは、内因性SIRPα遺伝子のエクソン2の5’側の19kbのマウスDNAを含有する5’相同性アーム、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4を含有する約8581bpのDNA断片、loxP部位が隣接するネオマイシンカセット、および内因性SIRPα遺伝子のエクソン4の3’側の21kbのマウスDNAを含有する3’相同性アームを、5’側から3’側へと含有していた。標的化ベクターの標的化された挿入は、エクソン4とエクソン5との間のマウスSIRPα遺伝子の5番目のイントロン中にネオマイシンカセットを位置付けた。この標的化ベクターを、SwaIで消化することによって線状化し、次いで、細菌細胞における相同組換えにおいて使用して、マウスSIRPα遺伝子中のエクソン2〜4の、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4による標的化された置き換えを達成した(
図1)。
【0115】
標的化されたBAC DNA(上記)を使用して、マウスES細胞をエレクトロポレーションして、内因性マウスSIRPα遺伝子中のエクソン2〜4の、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4を含むゲノム断片による置き換えを含む、改変されたES細胞を創出した。ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4を含むゲノム断片を含有する陽性ES細胞を、TAQMAN(商標)プローブを使用する定量的PCRによって同定した(LieおよびPetropoulos、1998年. Curr. Opin. Biotechnology 9巻:43〜48頁)。上流の挿入点を横断するヌクレオチド配列は、その挿入点に存在するヒトSIRPαゲノム配列と連続して連結された挿入点の上流の内因性マウス配列(以下の括弧内に含有される)を示す、以下を含んでいた:
【0116】
【化1】
【0117】
ネオマイシンカセットの5’末端における下流の挿入点を横断するヌクレオチド配列は、挿入点の下流のカセット配列と連続したヒトSIRPαゲノム配列(イタリックのloxP配列と共に以下の括弧内に含有される)を示す、以下を含んでいた:
【0118】
【化2】
【0119】
ネオマイシンカセットの3’末端における下流の挿入点を横断するヌクレオチド配列は、内因性SIRPα遺伝子のエクソン4の3’側のマウスゲノム配列(以下の括弧内に含有される)と連続したカセット配列を示す、以下を含んでいた:
【0120】
【化3】
【0121】
次いで、陽性ES細胞クローンを使用して、VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、米国特許第7,294,754号およびPoueymirouら 2007年、F0 generation mice that are essentially fully derived from the donor gene−targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses Nature Biotech. 25巻(1号):91〜99頁を参照のこと)を使用して、雌性マウスに植え込み、マウスの内因性SIRPα遺伝子中へのヒトSIRPα遺伝子のエクソン2〜4の挿入を含有する同腹仔を生成した。
【0122】
上記標的化したES細胞をドナーES細胞として使用し、8細胞段階のマウス胚中に、VELOCIMOUSE(登録商標)法(上記)によって導入した。内因性SIRPα遺伝子のエクソン2〜4のヒト化を保有するマウスを、ヒトSIRPα遺伝子配列の存在を検出する対立遺伝子アッセイ(Valenzuelaら、上記)の改変を使用して遺伝子型決定することによって同定した。
【0123】
ヒト化SIRPα遺伝子構築物(即ち、マウスSIRPα遺伝子中にヒトSIRPαのエクソン2〜4を含有する)を保有するマウスは、例えば、ES細胞段階または胚において、除去されていない、標的化ベクターによって導入された任意のlox化ネオマイシンカセットを除去するために、Cre deletorマウス系統(例えば、国際特許出願公開番号WO2009/114400を参照のこと)と交配させることができる。任意選択で、このネオマイシンカセットは、マウスにおいて保持される。
【0124】
仔を遺伝子型決定し、ヒト化SIRPα遺伝子構築物についてヘテロ接合性の仔を、特徴付けのために選択した。
【0125】
実施例2 非ヒト動物におけるヒト化SIRPαの発現
この実施例は、内因性SIRPα遺伝子座において実施例1に記載したヒト化SIRPα遺伝子構築物を含有するように操作された非ヒト動物由来の細胞の表面上でのSIRPαタンパク質の特徴的発現を示す。
【0126】
簡潔に述べると、脾臓を、野生型(WT)およびヒト化SIRPα遺伝子についてヘテロ接合性のマウスから単離した。次いで、脾臓を、コラゲナーゼD(Roche Bioscience)で灌流し、赤血球を、製造業者の仕様書に従ってACK溶解緩衝液を用いて溶解させた。マウスおよびヒトSIRPαの細胞表面発現を、蛍光色素結合体化抗CD3(17A2)、抗CD19(1D3)、抗CD11b(M1/70)、抗ヒトSIRPα(SE5A5)および抗マウスSIRPα(P84)を使用するFACSによって分析した。フローサイトメトリーを、BD LSRFORTESSA(商標)を使用して実施した。CD11b+単球の表面上で検出されるヒトおよびマウスのSIRPαの例示的な発現を、
図2に示す。
【0127】
図2に示すように、マウスSIRPαおよびヒト化SIRPαの両方の発現は、ヘテロ接合性のマウス由来のCD11b
+単球の表面上で明らかに検出可能であった。
【0128】
実施例3 ヒト化SIRP非ヒト動物におけるヒト細胞生着
この実施例は、ヒト化SIRPα遺伝子を有する本発明の非ヒト動物におけるヒト造血幹細胞の改善された生着を示す。
【0129】
簡潔に述べると、ヒト化SIRPα遺伝子を有するまたは有さないRag2 KO IL2Rγ
ヌルマウスを、病原体フリーの条件下で飼育した。新生仔マウス(2〜5日齢)に、240cGyを照射し、1×10
5のCD34
+ヒト造血幹細胞を肝内注射した。これらのマウスを、生着後10〜12週間採血し、血液を、蛍光色素結合体化抗ヒトCD45(HI30)、抗ヒトCD3(SK7)、抗ヒトCD19(HIB19)および抗マウスCD45(30−F11)を使用するFACSによって分析して、ヒト免疫系の再構成についてチェックした。このマウスの遺伝的背景は、BALB/cTa×129/SvJaeである。
【0130】
野生型、ヒト化SIRPαについてヘテロ接合性のマウス、ヒト化SIRPαについてホモ接合性のマウスおよびBALB−Rag2
−/−IL2Rγc
−/−(DKO)マウスにおけるヒトCD34
+細胞の例示的な百分率を、
図3〜5に示す。
【0131】
この実施例で示すように、ヒト化SIRPα遺伝子についてホモ接合性のマウスは、試験した他の系統と比較して、末梢(例えば、血液)において最も高い百分率のヒトCD34+細胞を提供することによって、ヒトCD34
+細胞の改善された生着を実証している。
【0132】
まとめると、これらのデータは、ヒト化SIRPαが、マウス中の細胞の表面上での発現を介して本明細書に記載されるマウスにおいて機能的であり、ヒトCD34
+造血幹細胞の生着を支持することが可能になり始めることを実証している。
【0133】
実施例4 BRGマウスにおけるRajiリンパ腫腫瘍成長に対するAb1の効力の評価
概要
Ab1は、T細胞受容体(TCR)複合体と会合するT細胞抗原CD3ならびに正常B細胞およびいくつかのB細胞系譜の悪性疾患上に存在するB細胞表面抗原CD20に結合する、二重特異性抗体(bsAb)である。Ab1は、TCRのCD3サブユニットへの結合によって、CD20発現細胞を細胞傷害性T細胞と架橋し、CD20指向性のポリクローナルT細胞死滅を生じるように設計される。CD20は、免疫療法のための臨床的に検証された標的である;キメラ抗体リツキシマブは、非ホジキンリンパ腫(NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の処置のために承認されている。患者は、リツキシマブに対して無反応性になり得るが、CD20の発現の喪失は、典型的には観察されない。従って、CD20陽性腫瘍細胞を細胞傷害性T細胞と架橋する二重特異性抗体は、潜在的な抗腫瘍戦略を提示する。
【0134】
この研究では、ヒトB細胞リンパ腫(Raji)腫瘍成長に対するCD20×CD3 bsAb Ab1を用いた処置の効果を、マウス腫瘍モデルにおいて試験した。このモデルは、SIRPαについてヒト化された、hCD34+を生着させたBALB/c−Rag2ヌル IL2rγヌル(BRG)マウスを利用した。ヒトT細胞、B細胞およびNK細胞、ならびに顆粒球、単球および樹状細胞(DC)を有するこれらのマウスを、1週間に2回Ab1で処置したところ、ビヒクル対照および非結合対照mAb、対照Ab5と比較して、Raji腫瘍成長の有意な抑制を生じた。Ab1処置は、処置期間を通じて、ビヒクル対照群よりも高い有意性で、0.4mg/kgおよび0.04mg/kgの両方において、腫瘍成長を抑制した(p<0.0001)。いずれの処置群でも、有意な体重減少は観察されなかった。これらの結果は、Ab1が、ヒト免疫細胞を有するマウスにおいてRaji腫瘍を標的化し、有意な腫瘍抑制を生じることを示している。
【0135】
材料および方法
材料
試験化合物および対照抗体
試験化合物:Ab1
対照抗体:対照Ab5。
【0136】
試薬
【0137】
【表4】
【0138】
試験系
この報告において提示される腫瘍研究は、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)遺伝子についてヒト化した、24〜32週齢の雄性および雌性BALB/c−Rag2ヌル IL2rγヌル(BRG)免疫不全マウスを使用した。これらは、胚性幹(ES)細胞標的化によって、Regeneronにおいて生成した(Strowigら、Proc Natl Acad Sci U S A、108巻(32号):13218〜13223頁(2011年))。CD47の認識の際に、SIRPαは、マクロファージによるCD47陽性細胞のクリアランスを阻害する。以前の研究は、ヒトSIRPα導入遺伝子を発現するBRGマウスが、ヒトHSCの生着を増強したことを示している(Strowigら、Proc Natl Acad Sci U S A、108巻(32号):13218〜13223頁(2011年))。
【0139】
新生仔SIRPα BRG仔に照射し、胎児肝臓から誘導したhCD34+造血前駆細胞を生着させた(Traggiaiら、Science、304巻(5667号):104〜107頁(2004年))。これらのヒトHSCは、ヒトT細胞、B細胞およびNK細胞、ならびに顆粒球、単球および樹状細胞(DC)を生じる。低いレベルの循環ヒトB細胞に起因して、低いレベルの循環ヒトIgGが存在する。さらに、これらのマウスは、胚中心を発達させず、リンパ節を欠き、T細胞およびB細胞が枯渇した場合、制限されたこれらの細胞の補充を有する。マウスの単球、DCおよび顆粒球も同様に存在し続ける。免疫細胞の組成を、血液のフローサイトメトリーによって確認し、マウスを、腫瘍研究における使用の前に、%ヒトCD45生着によってランダム化した。マウスに、0日目にRaji腫瘍細胞を植え込み、4週間にわたる、Ab1が腫瘍成長を遮断する能力を試験した。体重および腫瘍体積を、植え込みの3、6、9、13、16、20、23、27、30および34日後に記録した。
【0140】
実験設計
SIRPα BRGマウスにおけるヒト免疫系の再構成
免疫不全BALB/c Rag2 /−γc−/−(BRG)ヒトSIRPアルファ(SIRPα BRG)マウスを、Regeneron動物施設において、無菌隔離飼育器において飼育した。新生仔マウスを、ヒト胎児肝臓から単離されたヒトCD34+造血幹細胞(HSC)の注射の8〜24時間前に、300cGreyの1回の線量で照射した。生着を、12〜16週間発達させ、生着した細胞の数を、フローサイトメトリーによって定期的に評価した。実験の持続時間全体について、動物を、食物および水への自由なアクセスと共に、12時間の昼/夜リズムの標準的な条件下で、Regeneron動物施設において収容した。ケージ当たりの動物の数を、最大5匹のマウスに制限した。
【0141】
マウス血液を分析して、研究を開始する前のパーセント生着レベルを決定した。全血を、2%EDTA(エチレンジアミン四酢酸;15mg/mL)150uLを含有する2つの毛細管チューブ中に収集した。赤血球を、ACK溶解緩衝液を使用して3分間溶解させ、緩衝液を、PBS(カルシウムもマグネシウムも含まない)で中和した。細胞を、Fc Blockで4℃で5分間ブロックし、次いで、ヒトCD45、NKp46、CD19、CD3およびCD14で4℃で30分間染色した。試料を、5レーザーフローサイトメトリー(BD Fortessa)によって分析した。パーセント生着を、総細胞の%ヒトCD45+細胞として決定した。
【0142】
SIRPα BRGマウスにおけるRaji腫瘍研究手順
0日目に、5匹のSIRPα BRGマウスの群に、2×10
6のRaji腫瘍細胞を皮下投与した。同じ日に、マウスを、Ab1(0.4または0.04mg/kg)、0.4mg/kgの用量の非結合対照mAb対照Ab5(これは、ヒトCD20またはCD3との交差反応性なしに、ネコ抗原に結合する)またはビヒクル単独のいずれかの、腹腔内(IP)用量によって処置した。マウスは引き続いて、4週間にわたり2用量の抗体/週を受けた。腫瘍成長を、3、6、9、13、16、20、23、27、30および34日目にノギスを用いて測定した。研究群を表5にまとめる。
【0143】
【表5】
【0144】
具体的手順
試薬の調製
Ab1および対照Ab5を、各々、ビヒクル(10mMヒスチジン、5%スクロース、pH5.8)中で所望の濃度になるように希釈した。Raji細胞は、Regeneronコア施設から取得し(継代4)、培養培地(RPMI 1640+10%FBS+Pen Strep−L−Glu+メルカプトエタノール)中で維持した。Raji細胞を、培地中で所望の濃度になるように希釈した。
【0145】
統計分析
統計分析を、GraphPadソフトウェアPrism5.0(MacIntosh Version)を利用して実施した。統計的有意性を、Tukeyの多重比較事後検定を用いた二元配置ANOVAによって決定した。読み出しの各々からのデータを、処置群にわたって比較した。p<0.05の閾値を、統計的に有意とみなし、
*によって示した。研究の終了前に死亡したマウスは、二元配置ANOVAによって分析するために、示されるような、組み合わせた腫瘍成長曲線(個々のマウスの成長曲線ではない)グラフおよび統計分析から除去した。
【0146】
結果
Ab1は、hCD34+を生着させたSIRPα BRGマウスにおけるRaji腫瘍細胞成長を抑制する
Ab1は、hCD34+を生着させたSIRPα BRGマウスにおいて、ビヒクル対照および非結合対照と比較して、Raji腫瘍成長を抑制した(
図6)。新生仔SIRPα BRG仔に照射し、ヒトT細胞、B細胞およびNK細胞、ならびに顆粒球、単球およびDCを生じる造血前駆細胞(Traggiaiら、Science、304巻(5667号):104〜107頁(2004年))のように、hCD34+胎児肝臓細胞を生着させた。0日目に、hCD34+を生着させたSIRPα BRGマウスに、2×10
6のRaji腫瘍細胞を皮下投与した。同じ日に、マウスを、Ab1(0.4または0.04mg/kg)もしくは非結合対照mAb対照Ab5、またはビヒクル対照のいずれかの腹腔内(IP)用量で処置し、その後、研究を通じて1週間に2回の用量で処置した。
【0147】
ビヒクル対照群および非結合対照群と比較して、0.04mg/kg(p<0.0001)または0.4mg/kg(p<0.0001)の用量で投与したAb1は、腫瘍植え込みの34日後に、Raji腫瘍の増殖を有意に抑制した(
図7)。さらに、Ab1処置の効果は、用量依存的であり、0.4mg/kgのAb1は、30日目までに腫瘍成長を完全に抑制した0.04mg/kgのAb1と比較して、研究を通じて成長を完全に抑制した。Ab1も非結合対照mAbも、研究を通じて、マウス体重に対して有意な影響を有さなかった(
図8)。
【0148】
結論
Raji腫瘍成長に対する、Ab1、CD20×CD3 bsAbによる処置の影響を、マウスモデルにおいて試験した。Ab1は、ヒトT細胞、B細胞およびNK細胞、ならびに顆粒球、単球およびDCを有する、hCD34+を生着させたSIRPα BRGマウスにおける腫瘍成長抑制において有効であった。Ab1による1週間に2回の処置は、ビヒクル対照および非結合対照と比較して、RajiヒトB細胞リンパ腫腫瘍成長の有意かつ用量依存的な抑制を生じた。いずれの処置群でも、有意な体重減少は観察されなかった。これらの結果は、Ab1が、ヒト免疫細胞を有するマウスにおいてRaji腫瘍を標的化し、有意な腫瘍成長抑制を生じることを示している。
【0149】
等価物
本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様をこうして記載してきたが、種々の変更、改変および改善が当業者に容易に想起されることが、当業者によって理解される。かかる変更、改変および改善は、本開示の一部であることが意図され、本発明の精神および範囲の内であることが意図される。従って、前述の説明および図面は、例としてに過ぎず、本発明は、以下の特許請求の範囲によって詳細に記載される。
【0150】
請求項の要素を修飾するための、特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用は、それ自体、方法の動作が実施される別の順序または一時的な順序を超える、1つの請求項要素の任意の優先度、優先性または順序を含意しないが、請求項要素を識別するために、同じ名称を有する別の要素(ただし序数用語の使用のため)から、ある特定の名称を有する1つの請求項要素を識別するための標識としてのみ使用される。
【0151】
冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、逆を明らかに示さない限り、複数形の指示対象を含むと理解すべきである。群の1または複数のメンバー間に「または」を含む請求項または記述は、逆を示さない限り、または文脈から他の方法で明らかでない限り、群メンバーのうちの1つ、1つよりも多く、または全てが、所与の産物もしくはプロセス中に存在する場合、かかる産物もしくはプロセスにおいて使用される場合、またはかかる産物もしくはプロセスと他の方法で関連する場合に、満たされるとみなされる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが、所与の産物もしくはプロセス中に存在する、かかる産物もしくはプロセスにおいて使用される、またはかかる産物もしくはプロセスと他の方法で関連する実施形態を含む。本発明はまた、1つよりも多い群メンバーまたは群メンバー全体が、所与の産物もしくはプロセス中に存在する、かかる産物もしくはプロセスにおいて使用される、またはかかる産物もしくはプロセスと他の方法で関連する実施形態も含む。さらに、特記しない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、本発明は、列挙した請求項のうち1または複数からの1または複数の限定、要素、条項、記述的用語などが同じ基本請求項(または適切な場合、任意の他の請求項)に従属する別の請求項中に導入される、全てのバリエーション、組合せおよび並べ替えを包含することを、理解すべきである。要素が(例えば、マーカッシュ群または類似の形式において)リストとして提示される場合、それらの要素の各下位群もまた開示され、任意の要素(複数可)がこの群から除去され得ることを、理解すべきである。一般に、本発明、または本発明の態様が、特定の要素、特徴などを含むと言われる場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、かかる要素、特徴などからなるまたは本質的になることを、理解すべきである。簡潔性を目的として、これらの実施形態は、全ての場合において、本明細書で非常に多くの単語で具体的に示されているわけではない。本発明の任意の実施形態または態様は、具体的な排除が明細書中に列挙されているか否かに関わらず、特許請求の範囲から明示的に排除され得ることもまた、理解すべきである。
【0152】
当業者は、本明細書に記載されるアッセイまたは他のプロセスにおいて取得された値に起因する典型的な標準偏差または誤差を理解する。
【0153】
本発明の背景を記載するためおよびその実施に関するさらなる詳細を提供するために本明細書で参照される刊行物、ウェブサイトおよび他の参照材料は、参照により本明細書に組み込まれる。
(項目1)
ヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分およびマウスSIRPαタンパク質の細胞内部分を含むSIRPαポリペプチドを発現するマウス。
(項目2)
ヒトSIRPαタンパク質の上記細胞外部分が、表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の残基28〜362に対応するアミノ酸を含む、項目1に記載のマウス。
(項目3)
ヒトSIRPαタンパク質の上記細胞外部分が、表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の対応する細胞外部分と少なくとも50%のパーセント同一性を共有する、項目1または2に記載のマウス。
(項目4)
表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の対応する細胞外部分との共有された上記パーセント同一性が、少なくとも60%である、項目1または2に記載のマウス。
(項目5)
表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の対応する細胞外部分との共有された上記パーセント同一性が、少なくとも70%である、項目1または2に記載のマウス。
(項目6)
表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の対応する細胞外部分との共有された上記パーセント同一性が、少なくとも80%である、項目1または2に記載のマウス。
(項目7)
ヒトSIRPαタンパク質の上記細胞外部分が、表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分と少なくとも90%同一である配列を有する、項目1または2に記載のマウス。
(項目8)
ヒトSIRPαタンパク質の上記細胞外部分が、表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分と少なくとも95%同一である配列を有する、項目1または2に記載のマウス。
(項目9)
ヒトSIRPαタンパク質の上記細胞外部分が、表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分と同一である配列を有する、項目1または2に記載のマウス。
(項目10)
表3中に現れる配列を有するマウスSIRPαタンパク質をも発現しない、上記項目のいずれか一項に記載のマウス。
(項目11)
マウスSIRPαプロモーターに作動可能に連結したヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含むSIRPα遺伝子を含むマウス。
(項目12)
上記SIRPα遺伝子が、内因性SIRPα遺伝子のエクソン1、5、6、7および8を含む、項目11に記載のマウス。
(項目13)
項目12に記載のマウスの遺伝子によってコードされるSIRPαポリペプチド。
(項目14)
単離されたマウス細胞または組織であって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含む、単離されたマウス細胞または組織。
(項目15)
上記SIRPα遺伝子が、マウスSIRPαプロモーターに作動可能に連結している、項目14に記載の単離された細胞または組織。
(項目16)
上記SIRPα遺伝子が、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含む、項目14に記載の単離された細胞または組織。
(項目17)
マウス胚性幹細胞であって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含む、マウス胚性幹細胞。
(項目18)
上記SIRPα遺伝子が、マウスSIRPαプロモーターに作動可能に連結したヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含む、項目17に記載のマウス胚性幹細胞。
(項目19)
項目17または18に記載の胚性幹細胞から生成されたマウス胚。
(項目20)
内因性SIRPα遺伝子座からSIRPαタンパク質を発現するマウスを作製する方法であって、上記SIRPαタンパク質はヒト配列を含み、上記方法は、以下:
(a)ヒトSIRPαタンパク質を全体的にまたは部分的にコードするヌクレオチド配列を含むゲノム断片を用いてマウスES細胞において内因性SIRPα遺伝子座を標的化するステップ;
(b)(a)のヒト配列を含む内因性SIRPα遺伝子座を含む改変されたマウスES細胞を取得するステップ;および
(c)(b)の改変されたES細胞を使用してマウスを創出するステップ
を含む、方法。
(項目21)
上記ヒトヌクレオチド配列が、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
上記ヒトヌクレオチド配列が、ヒトSIRPαタンパク質のアミノ酸残基28〜362をコードする、項目20に記載の方法。
(項目23)
項目20〜22のいずれか一項に記載の方法から取得可能なマウス。
(項目24)
マウスであって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含むマウスを提供する方法であって、マウスの上記ゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の上記細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の上記細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含むように上記ゲノムを改変し、それによって、上記マウスを提供するステップを含む、方法。
(項目25)
上記SIRPα遺伝子が、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
ヒト細胞をマウス中に生着させる方法であって、
(a)マウスであって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含むマウスを提供するステップ;および
(b)1または複数のヒト細胞を上記マウス中に移植するステップ
を含む、方法。
(項目27)
(c)上記マウスにおける1または複数の上記ヒト細胞の生着をアッセイするステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
アッセイする上記ステップが、1または複数の上記ヒト細胞の上記生着を、1もしくは複数の野生型マウスにおける生着、または1もしくは複数のマウスであって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含まない1もしくは複数のマウスにおける生着と比較することを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記SIRPα遺伝子が、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含む、項目26〜28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
ヒトSIRPαタンパク質の上記細胞外部分が、表3中に現れるヒトSIRPαタンパク質の残基28〜362に対応するアミノ酸を含む、項目26〜28のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
上記ヒト細胞が造血幹細胞である、項目26〜30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
上記ヒト細胞が静脈内移植される、項目26〜31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
上記ヒト細胞が腹腔内移植される、項目26〜31のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
上記ヒト細胞が皮下移植される、項目26〜31のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
以下:
(a)1または複数の細胞であって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含む1または複数の細胞を提供するステップ;
(b)ステップ(a)の1または複数の細胞を、標識された基質と共にインキュベートするステップ;および
(c)ステップ(b)の1または複数の細胞による標識された上記基質の食作用を測定するステップ
を含む、方法。
(項目36)
ステップ(a)の細胞がマウス細胞である、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記SIRPα遺伝子が、マウスSIRPαプロモーターに作動可能に連結している、項目35または36に記載の方法。
(項目38)
上記SIRPα遺伝子が、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含む、項目35〜37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
上記基質が、蛍光標識されている、項目35〜38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
上記基質が、抗体で標識されている、項目35〜38のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
上記基質が、1または複数の赤血球である、項目35〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
上記基質が、1または複数の細菌細胞である、項目35〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
以下:
(a)マウスであって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含むマウスを提供するステップ;
(b)上記マウスを抗原に曝露させるステップ;および
(c)上記マウスの1または複数の細胞による上記抗原の食作用を測定するステップ
を含む、方法。
(項目44)
上記SIRPα遺伝子が、マウスSIRPαプロモーターに作動可能に連結している、項目43に記載の方法。
(項目45)
上記SIRPα遺伝子が、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3および4を含む、項目43または44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
曝露させる上記ステップが、蛍光標識された抗原に上記マウスを曝露させることを含む、項目43〜45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
曝露させる上記ステップが、上記抗原を含む1または複数の細胞に上記マウスを曝露させることを含む、項目43〜45のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
曝露させる上記ステップが、上記抗原を含む1もしくは複数のヒト細胞、または上記抗原を含む1もしくは複数の細菌細胞に上記マウスを曝露させることを含む、項目47に記載の方法。
(項目49)
ヒト細胞を標的化する薬物の治療効力を評価する方法であって、上記方法は、以下:
マウスであって、そのゲノムが、マウスSIRPαタンパク質の細胞内部分に連結したヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分をコードするSIRPα遺伝子を含むマウスを提供するステップ;
1または複数のヒト細胞を上記マウス中に移植するステップ;
薬物候補を上記マウスに投与するステップ;および
上記マウス中の上記ヒト細胞をモニタリングして、上記薬物候補の治療効力を決定するステップ
を含む、方法。
(項目50)
上記ヒト細胞ががん細胞であり、上記薬物候補が抗がん薬物候補である、項目49に記載の方法。
(項目51)
上記薬物候補が抗体である、項目49に記載の方法。
(項目52)
上記マウスが、ヒト免疫細胞をさらに含む、項目50に記載の方法。
(項目53)
上記薬物候補が、上記ヒト免疫細胞上の抗原および移植された上記ヒトがん細胞上の抗原に結合する二重特異性抗体である、項目52に記載の方法。