(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875581
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】自己修復材料で形成された電気系統で用いられる電気装置及び電気部品
(51)【国際特許分類】
F16L 3/12 20060101AFI20210517BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20210517BHJP
C08G 18/24 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
F16L3/12 G
C08G18/32 028
C08G18/24
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-81256(P2020-81256)
(22)【出願日】2020年5月1日
(62)【分割の表示】特願2017-537401(P2017-537401)の分割
【原出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2020-122580(P2020-122580A)
(43)【公開日】2020年8月13日
【審査請求日】2020年5月11日
(31)【優先権主張番号】62/104,385
(32)【優先日】2015年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598098928
【氏名又は名称】トーマス・アンド・ベッツ・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ガオ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ドレイン
(72)【発明者】
【氏名】コン・タン・ディン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ラビン・デ・ラ・ボルボッラ
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−506630(JP,A)
【文献】
特開2006−083464(JP,A)
【文献】
特開2009−078263(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0321828(US,A1)
【文献】
特開2013−216854(JP,A)
【文献】
特開2005−099474(JP,A)
【文献】
特開2012−121985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/12
C08G 18/24
C08G 18/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体と、テール部と、ロック機構を備えたヘッド部と、
前記テール部及び前記ロック機構に配置された自己修復ポリマーを含む外側層又はコーティングと、
を有するケーブルファスナーであって、
前記テール部上の前記自己修復ポリマーが前記ロック機構上の前記自己修復ポリマーと堅固に自己融着する態様で前記テール部上の前記自己修復ポリマーが前記ロック機構上の前記自己修復ポリマーと接触するように、前記テール部が前記ロック機構に挿入されるように構成されている、ケーブルファスナー。
【請求項2】
前記自己修復ポリマーが、変性ポリウレタン、変性ポリ尿素、変性ポリアミド、又は、変性ポリエステルである、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【請求項3】
前記自己修復ポリマーが、イソシアナート官能基を有する第1のモノマーと、アミン官能基を有する第2のモノマーと、を含む変性ポリ尿素材料である、請求項2に記載のケーブルファスナー。
【請求項4】
前記変性ポリ尿素材料が、さらに、架橋剤及び/又は触媒を含んでいる、請求項2又は3に記載のケーブルファスナー。
【請求項5】
前記変性ポリ尿素材料が、さらに、架橋剤としてトリエチルアミン(TEA)及びテトラエチレングリコール(TEG)と、触媒としてジブチルスズジアセタートとを含んでいる、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【請求項6】
TEAの、前記第1のモノマー、TEG、前記第2のモノマーに対するモル比が、1:12:6.8:4である、請求項5に記載のケーブルファスナー。
【請求項7】
前記ケーブルファスナーは自己修復ポリマーを含む材料から形成されている、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【請求項8】
前記テール部及び前記ヘッド部が、前記自己修復ポリマーから形成されているか、又は、前記自己修復ポリマーによってコーティングされている、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【請求項9】
前記ケーブルファスナーを形成する前記自己修復ポリマーが、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、又は、ポリエステルを含む、請求項7に記載のケーブルファスナー。
【請求項10】
前記自己修復ポリマーの2つの部分が、化学結合によって接合される前に、幾何学的特徴が、物理的表面接触を開始及び維持するために供給される、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【請求項11】
前記ロック機構は、前記テール部が前記ロック機構に挿入された際に前記テール部と機械的に係合するツメを含む、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【請求項12】
前記ツメは、前記ロック機構上の前記自己修復ポリマーが前記ロック機構上の前記自己修復ポリマーと自己融着する際に前記テール部と機械的に係合するように配置されている、請求項11に記載のケーブルファスナー。
【請求項13】
前記ヘッド部は、前記テール部が前記ヘッド部に挿入された際に前記テール部と締まりばめになるように寸法決めされたテーパ上の通路を含む、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【請求項14】
前記自己融着が前記テール部(16,216)と前記ヘッド部(218)とを接合して1つの固体片を形成する、請求項1に記載のケーブルファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年1月16日出願の、米国仮出願第62/104385号に基づく優先権を主張するものである。その内容全体は、参照することによって本出願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、自己修復ポリマー材料であり、当該自己修復ポリマー材料は、成形、押出加工が可能であるか、又は、電気系統で用いられる電気装置及び電気部品のためのコーティング材料として使用可能である。特に、本発明は、電気系統で使用される電気装置及び電気部品に関連して、結合材、シール材、又は、コーティング材として用いられる自己修復ポリマー材料に関する。
【背景技術】
【0003】
自己修復ポリマー及び繊維強化ポリマー複合材(ここでは「スマート」ポリマー又は材料とも呼ばれる)は、損傷が材料に生じた場合は、場所と時間とにかかわらず、損傷に反応して修復する能力を有している。損傷は、疲労、衝撃、穿刺、又は、腐食によって引き起こされ得る。これらのポリマーは、2つの種類に分類される:クラックをポリマー自身によって修復できる、内在性の自己修復ポリマーと、修復剤を材料に前もって組み込まなければならない外在性のポリマーと、である。通常の使用によって引き起こされた損傷を内在的に修復することができる、これらのスマート材料は、寿命の延長によって、メンテナンス及びダウンタイムの減少によって、経年劣化に起因する非効率性の減少によって、及び、損傷した材料に起因する取り替え費用の減少によって、多くの異なる産業プロセスの費用を減少させることが期待されている。
【0004】
分子の観点からは、従来のポリマーは、ポリマー内の共有結合の開裂によって損傷する。最新のポリマーは、別の方法で得ることができるが、従来のポリマーは、典型的には、ホモリティック結合開裂(分子の断片のそれぞれが、元々結合された電子の内1つを保持する)又はヘテロリティック結合開裂(元々の分子結合に関係する両方の電子が、片方の断片とのみ留まる)を通じて得られる。ポリマー結合を切断するために必要なエネルギーは、運動エネルギー、電気エネルギー、力学的エネルギー、化学エネルギー、放射エネルギー及び熱エネルギーを含む様々な形で供給され得る。例えば、ポリマーの損傷に影響を与え得る要因は、以下を含んでいる:ストレスの種類、ポリマーの分子構造、重合材料によって示されるマクロレベルの特性、溶媒和(溶媒の分子が溶質の分子又はイオンを吸引し、結合するプロセス)を含む外部励起のレベル及び種類、放射、及び、温度。
【0005】
高分子(通常、より小さいサブユニットの重合によって形成される非常に大きな分子)の観点からは、分子レベルでの損傷を誘発するストレスは、マイクロクラックと呼ばれる、より大規模な損傷につながる。マイクロクラックは、隣接するポリマー鎖が近接近において損傷を受けた箇所に形成され、最終的には、ポリマー材料全体としての弱化につながる。
【0006】
現在用いられているプラスチック製のケーブルタイ(ここでは「ケーブルファスナー」とも呼ばれる)は、2つの一般的な形態を有している:ツーピースのケーブルタイ及びワンピースのケーブルタイである。典型的なツーピースのケーブルタイは、プラスチック製のストラップとスチール製のバーブとを含み得る。ワイヤ束の周囲に締結される際、スチール製のバーブは、ストラップに係合し、ケーブルファスナーをロックし、その解除を防止する。完全にプラスチックから構成されたワンピースのケーブルタイは、プラスチック製のツメを含むことが可能であり、当該ツメは、ケーブルタイが締結された後にケーブルタイを固定するために、ストラップのジグザグ表面でロックする。スチール製のバーブは、ツーピースのケーブルタイの1つの主要な弱点であり、当該ケーブルタイの故障の一因となる。プラスチック製のストラップに関して設計強度が到達される前に、スチール製のバーブを、後方に曲げて、ストラップを解除する(製品の故障)ことが知られている。ワンピースのケーブルタイのプラスチック製のツメも、主要な弱点である。プラスチック製のツメは、プラスチック製のストラップを解除するために、その位置から剥ぎ取られ得る。取り外されたプラスチック製のツメは、潜在的な粒子汚染物質となる。
【0007】
電線管は、金属材料又は非金属材料から形成されている。存在する接続部は、ネジ切りであるか、又は、管をフィッティングに固定するために、位置決めネジ又は他のロック機構を用いる。プラスチック製又は非金属製の接続部も、接着剤、Oリング、シール材、又は、溶媒を用いて封止され得る。現在の手法の欠点は、ネジ山又は機械的接続部が、経年によって緩む可能性があるということ、又は、ネジ山又は機械的接続部が、不正確に取り付けられる可能性があるということである。溶媒、Oリング、シール材、又は、接着剤は、使用するには不便であり、良好な接着を得るためには、正しく用いなければならない。
【0008】
現在用いられている重防食電線管及びフィッティングは、典型的には、金属管及びポリマーコーティングを施された表面から製造される。現在のコーティング材料は、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル誘導体、及び、これらのポリマーの変性物を含んでいる。電線管又はフィッティングの輸送、取り付け及び動作の間、電線管及びフィッティングが損傷を受け、小さなクラック又は切れ目をプラスチック表面に生じさせる可能性がある。これらの小さなクラックや切れ目に、金属管の腐食といった、より深刻な問題が生じる前に気付くことは難しい。損傷が認識された後、修理のために、人間が損傷個所に赴き、手動で電線管又はフィッティングの表面を取り換える、又は、修理する必要がある。従来の、コーティングされた電線管及びフィッティングは、製品の耐用期間の間、大規模なメンテナンスを必要とする。
【0009】
現在用いられている、防爆性及び/又は危険な場所用のフィッティングは、典型的には、シール材として、2成分系エポキシパテ材料を用いている。このような、現在用いられている充填材の1つは、Crouse−Hindsによって販売されているCHICO(登録商標)SS2 Speed Seal(登録商標)防爆複合材である。充填エポキシは、爆発に対する耐性が高いので、人気の熱硬化性樹脂である。エポキシパテシール材を取り付けるために、2つのパテ材料が、機械的に混合され、均一な組成が得られる。混合された材料は、次に、重合化した形に硬化され、シール材として機能する。典型的に、2つの部分を混合し、混合された材料を硬化させるためには、25℃以上の周囲温度が必要である。この温度要求は、低温の屋外環境に取り付けられたフィッティング製品にとっては、大きな課題となる。1つのシナリオでは、温度要求を満たすために、温められたテントが、低温状況において用いられる。2つのパテ材料を手で混合することは、取り付けにおいて、別の労働集約型ステップである。結果として生じるシール材の性能に影響を与える、混合物の均一性は、2つのパテ材料に関しては得るのが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、自己修復ポリマーから成る、又は、自己修復ポリマーでコーティングされた電気装置が供給される。当該電気装置は、金属基板と、外側層又は外側コーティングと、を有し得る。自己修復ポリマーは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド及びポリエステルを含む変性ポリマーから形成され得る。好ましい自己修復ポリマーは、イソシアナート官能基を有する第1のモノマーと、アミン官能基を有する第2のモノマーと、を含む変性ポリ尿素材料である。変性ポリ尿素材料は、1つ若しくは複数の架橋剤、及び/又は、1つ若しくは複数の触媒も含み得る。当該架橋剤は、トリエチルアミン(TEA)及びテトラエチレングリコール(TEG)であり、当該触媒は、ジブチルスズジアセタートであり得る。好ましい態様では、TEAの、第1のモノマー、TEG、第2のモノマーに対するモル比は、1:12:6.8:4である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
長尺体と、テール部と、ロック機構を含むヘッド部と、を有するケーブルタイファスナーは、自己修復ポリマーから形成され得るか、少なくとも、ヘッド部及びテール部が自己修復ポリマーでコーティングされ得る。自己融着テープ、又は、少なくとも当該テープの1つの外側表面層は、自己修復ポリマーから、好ましくは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド又はポリエステルを含む自己修復ポリマーから形成され得る。
【0012】
別の態様は、外側表面及び内側表面を有する少なくとも1つの電線管と、外側表面及び内側表面を有する少なくとも1つのフィッティングと、を含む電線管システムである。当該フィッティングは、フィッティングの内側表面が、電線管の外側表面に接触するように、電線管を受容する。電線管及びフィッティングは、自己修復ポリマーから、好ましくは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド若しくはポリエステルを含む自己修復ポリマーから形成されるか、又は、電線管の外側表面及びフィッティングの内側表面は、自己修復ポリマー、好ましくは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド若しくはポリエステルを含む自己修復ポリマーでコーティングされる。
【0013】
コネクタのハウジング内部に取り付けられる防爆性のシール材は、自己修復ポリマー、好ましくは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド又はポリエステルを含む自己修復ポリマーから形成され得る。
【0014】
ポリマー材料から形成された電線管又はフィッティングは、自己修復ポリマー、好ましくは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド又はポリエステルを含む自己修復ポリマーを含むカプセル化材料を含み得る。
【0015】
本発明に係る、自己修復ポリマーから形成された、又は、自己修復ポリマーでコーティングされた装置の好ましい態様と、本発明のその他の対象、特徴及び利点とは、添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】自己修復ポリマーが、ケーブルタイのテール部及びロック機構へのコーティングとして用いられている態様を示す図である。
【
図2A】自己修復ポリマーがテープである態様を示す図である。
【
図2B】自己修復ポリマーがテープである態様を示す図である。
【
図3】テーパ状のロック機構を有するケーブルファスナーが、自己修復ポリマーから形成されている態様を示す図である。
【
図4】締まりばめ式ロック機構を有するケーブルファスナーが、自己修復ポリマーから形成されている態様を示す図である。
【
図5】ケーブルファスナーが、自己修復ポリマーから形成されており、端部が不規則な幾何学的表面を有している態様を示す図である。
【
図6】不規則な幾何学的表面を有する端部が重複している、
図5Bに示されたケーブルファスナーを示す図である。
【
図7】自己修復ポリマーが、電線管及びフィッティングへのスリーブ継手として用いられる態様を示す図である。
【
図8】
図7に示された電線管及びフィッティングが接続された後の状態を示す図である。
【
図9】スタブコネクタに接続された電線管の横断面図である。
【
図10】スタブコネクタに接続されたテーパ状の端部を有する電線管の横断面図である。
【
図11】スタブコネクタに接続されたリテーナクリップを有する電線管の横断面図である。
【
図12】シール材として自己修復材料を使用するコネクタを示す図である。
【
図13】自己修復ポリマーの切れ目が修復するステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、電気装置を形成するか、又は、電気装置をコーティングするための自己修復ポリマー材料である。自己修復可能又は自己融着可能なポリマー材料は、変性ポリウレタン、変性ポリ尿素、変性ポリアミド、又は、変性ポリエステルであり得る。好ましくは、当該材料は、損傷を受けた、又は、切断された後に自身を完全に修復する、永続的に架橋されたポリ(尿素‐ウレタン)エラストマー網目構造である。好ましい一態様では、自然には室温で交換が行われる、芳香族ジスルフィドのメタセシス反応は、再生を引き起こす。変性ポリ尿素材料は、イソシアナート官能基を有する第1のモノマーと、アミン官能基を有する第2のモノマーとの、架橋剤及び触媒の存在下における反応を通じて得られる。変性ポリ尿素材料は、接着、シールのために用いられるか、又は、例えばケーブルファスナー(すなわちケーブルタイ)又は電線管コネクタ等の装置のコーティングとして、又は、加工処理して当該装置を形成するために用いられる。異なる材料組成及び/又はプロセスを、異なる用途に用いても良い。
【0018】
ここで用いられているように、「自己修復」及び「自己修理」という用語は、材料、好ましくはポリマーの、損傷を自動的及び自律的に、すなわち外部からの介入無しに、修復(すなわち、回復/修理)する能力として定義されている。これらの用語は、表面同士が接触し、少なくとも1psigである最小限の圧力が加えられた場合に、カ氏40度を超える温度で結合するポリマーを表現するためにも用いられる。
【0019】
自己融着行動は、結果として生じるポリ尿素ポリマーの、モノマーを形成する逆反応の能力に基づいている。正反応と逆反応とは、小さなクラックを生じている箇所において同時に行われるので、材料は、クラックを封止する状態に再構成される。正反応(重合)と逆反応(解離)との動釣り合いは、要求される自己融着力が供給されるように設計される。ケーブルタイのヘッド部は、ケーブルタイが締結される(使用される)際に、ツメ(paw)とヘッド部内のストラップとの間における表面接触を最大化するように設計されている。ケーブルタイは、ツメとヘッド部との構成の力学的な形状によって、適所に保たれるが、自己修復材料は、接触面で結合する。ケーブルタイは、より強くなり、ケーブルタイの構造は、一体化される。それによって、ケーブルタイが壊れる際に、小さな部品(例えばツメ等)が除外される。小さい部品を除去することは、例えば航空産業で使用されるケーブルタイのように、多くの用途にとって利点を提供する。
【0020】
一態様では、第1のモノマーはヘキサメチレンジイソシアナートであり、第2のモノマーはN,N’‐ジ‐t‐ブチルエチレンジアミンであり、架橋剤はトリエチルアミン(TEA)及びテトラエチレングリコール(TEG)である。TEAの、第1のモノマー、TEG、第2のモノマーに対するモル比は、1:12:6.8:4である。当業者は理解しているであろうが、成分のモル比を変更し、結合反応時間及び結合強度といった、異なる特性を有する自己修復ポリマーを供給しても良い。触媒は、好ましくは、ジブチルスズジアセタートである。結果として生じる変性ポリ尿素は、少なくとも1MPaのヤング率の弾性を有する。変性ポリ尿素材料は、ケーブルタイに成形されるか、又は、コーティング材料において用いられる。好ましい態様では、変性ポリ尿素材料は、機械ですりつぶして粉末にされる。
【0021】
別の態様では、自己修復ポリウレタンエラストマーは、合成によって、及び、アルコキシアミンベースのジオールと、ヘキサメチレンジイソシアナートの三官能性ホモポリマー(tri‐HDI)及びポリエチレングリコール(PEG)との反応によって生成される。アルコキシアミンは、結果として生じるポリウレタンの架橋剤として作用するので、アルコキシアミン部分におけるC‐ON結合の熱可逆的な分裂/再結合は、一定温度でのポリウレタン鎖の架橋結合及び分解の繰り返しを可能にする。結果として、ポリウレタンエラストマーは自己修復性を有する。ポリウレタンエラストマーの試験によって、可逆的に架橋されたポリウレタンは、断裂した部分を再結合し、機械的強度を回復させることが可能であることが確認された。ポリウレタンエラストマーの自己修復特性は、分子構造及び成分組成の関数であり、様々な用途の必要に合わせて調整され得る。
【0022】
自己融着可能な材料を、ケーブルファスナーに用いる場合、先行技術に係るケーブルファスナーに対して、いくつかの利点が得られる。ロック機構の結合は、典型的には、ロック機構が故障した場合に故障するという、ケーブルタイの主な弱点を除去する。自己融着可能な材料は、より信頼度の高いケーブルファスナーを供給するので、安全面の要素を保証するために、多数のケーブルファスナーを用いる必要はない。加えて、自己融着可能な材料から形成されたケーブルファスナーは、動作機構に干渉した場合に危険を生じ得る、緩んだ端部(loose ends)を有していない。
【0023】
好ましい自己修復ポリマーは、自己修復能力及びその他の機械的性能、熱的性能、難燃性及び工程能力に関する要求における目標性能の必要を満たすポリ尿素製剤である。その他の自己修復ポリマー組成物も用いることが可能であり、2003年3月4日に発行されたDryによる米国特許第6527849号明細書、2003年4月15日に発行されたKaltenborn等による米国特許第6548763号明細書、2006年5月9日に発行されたLamola等による米国特許第7041331号明細書、2006年9月19日に発行されたSkipor等による米国特許第7108914号明細書、2007年3月20日に発行されたSarangapani等による米国特許第7192993号明細書、2007年10月23日に発行されたParrishによる米国特許第7285306号明細書、2011年11月22日に発行されたBukshpun等による米国特許第8063307号明細書、2008年6月26日に公開されたStephenson等による米国特許出願公開第2008/0152815号明細書、に記載された自己修復ポリマー組成物が含まれる。その内容の全ては、参照することによって組み込まれる。
【0024】
コーティングとして利用可能な代替的な自己修復材料は、マイクロカプセル化自己修復材料及びpH値誘導自己修復材料を含んでいる。あるマイクロカプセル化自己修復材料は、エポキシ樹脂に基づいており、修復剤及び触媒は、材料内部のマイクロカプセルに貯蔵される。マイクロカプセルを開封するクラックが存在する場合、修復剤及び触媒が放出され、重合反応を行い、固体を形成し、当該固体によってクラックが封止される。pH値誘導自己修復材料は、ヒドロゲル材料に基づいている。当該ヒドロゲル材料は、周囲のpHが変化した場合に逆転させることが可能である化学結合を通じて架橋される。クラックが存在する場合、周囲のpH値の変化によって、材料がそのポリマー構造を再編し、クラックを封止することが可能になるであろう。
【0025】
本発明の好ましい態様は、ポリマーを用いたケーブルファスナー装置(ここでは「ケーブルタイ」とも呼ばれる)を対象にしており、当該ケーブルファスナー装置が、ケーブル/ワイヤ束の周囲に巻き付けられ、ロック機構で締結された後、当該ロック機構は融合(又は自己融着)する。本発明は、自己融着ポリマー材料と、ケーブルファスナー装置及びロック機構の構造と、当該製品を製造するプロセスと、を含んでいる。自己融着ポリマー材料は、同じポリマーから形成された2つの部分が、一定時間に亘って表面が接触した後に、結合することを可能にする。ケーブルファスナー装置は、連動及び/又は締まりばめロック機構を含むように設計されている。これらの連動又は干渉面は、自己融着を開始するために必要な長さの時間に亘って接触する。
【0026】
自己修復可能なポリマー材料又はポリマーコーティングは、ケーブルファスナー装置の間における確実で永続的な接続を供給するために用いられる。永続的かつ取り外し不可能であることが目指されている。ケーブルファスナー装置の場合、装置全体は、自己修復可能なポリマーから成形され得るか、又は、当該装置は、ポリマー材料でコーティングされ得る。
【0027】
以下の構想は、自己融着可能なポリマーから形成された、自己融着可能なファスナー装置の明確に異なる態様を示している。この自己融着可能なポリマーは、ポリマーから形成された、ポリマーでコーティングされた、又は、ポリマーを含む外側層を有する2つの部分が、少なくともカ氏40度、好ましくは少なくともカ氏50度、及び、最も好ましくは少なくともカ氏60度で、一定時間に亘って表面が接触するように保持される場合に結合することを可能にする。
図1から
図6は、はめ合い装置のいくつかの態様を示しており、これらのはめ合い装置は、表面接触のために表面で係合しており、自己融着ポリマーが表面で結合する場合、堅固にかみ合っている。
【0028】
構想1
ポリマーコーティングの塗布:
図1に示された本態様では、既存のケーブルファスナー装置10において、特定の表面12(すなわち、ケーブルタイテール部16及びストラップ14によって接続されたロック機構18の表面)か、又は、装置全体が、製造プロセスの間の第2の工程として、製品を出荷する前に、自己修復可能なポリマー材料によってコーティングされている。ケーブルタイ10が使用され、ケーブルタイのテール部16がロック機構18に挿入されると、コーティング12は結合され、テール部16をロック機構18に固定する。
【0029】
構想2
自己融着可能なワイヤハーネステープ:本態様では、テープロール110が、自己修復可能なポリマー材料112から形成されている。これらのテープロール110は、非接着性材料の分離層114を間に巻き込んでおり(
図2Aに示されているように)、それによって、最終消費者が貼付又は使用する前の自己融着が防止される。よく知られた、テープ110の貼付手法が使用可能である。分離層114を取り除いた後、自己融着可能なテープ110を、ケーブル及び/又はワイヤ束190の周囲及び上に巻き付けることが可能である(
図2Bに示されているように)が、巻き付けは、テープを過度に引き伸ばし、重複させる動きによって行われ、それによって、適切な量の重複したテープ112の表面領域に、セクション間の十分な摩擦/圧力が与えられ、その結果、自己融着が開始する。テープ112が、表面190を保護又は修理するために、当該表面の周囲に巻き付けられた後、自己修復機能は、巻き付けられたテープ112の重複部分を融合させ、より永続的な修理を行う。テープ112上の接着性のコーティングは、自己修復材料を含んでおり、当該自己修復材料は、巻き付けられた材料が共に「修復する」まで、初期接着を供給する。
【0030】
構想3
締まりばめヘッド部を有するケーブルタイ:本態様では、ケーブルタイ締結装置210は、自己修復可能なポリマー材料212から、標準的な成形プロセスを用いて製造されている。
図3Aは、所定のストラップ214の厚さを有する、典型的なケーブルタイ210を示している。ケーブルタイヘッド部218の構造は、
図3Bに示されているように、締まりばめ構造を含んでおり、当該構造は、テーパ状の通路213及び内側表面組織を組込み、ケーブルタイテール部216がケーブルタイヘッド部218に挿入される際に、締まりばめを供給する。
図4Aは、ケーブルタイのテール部216が挿入され、テーパ状の通路213を通じてケーブルタイ210のヘッド部218に引き込まれた際(すなわちロック機構)に、どのように締まりばめが行われるかを示している。ケーブルタイ210のテール部216が通路213を通過すると、通路213の高さは減少し、これは、通路213のヘッド部のテーパ状の内側表面と、テール部216の反対側の表面との間におけるプレテンションを含んでいる。
図4Bは、ケーブルタイ210が、それぞれのワイヤ束の周囲に締結された後に、どのようにして、ストラップ214及びヘッド部218を、1つの固体片に接合する自己融着が開始するかを示している。
【0031】
構想4
不規則な表面形状を有する連動ストラップを備えたケーブルタイ:本態様では、不規則な(又は複雑な)表面形状312a〜312cを有するケーブルタイ締結装置310は、自己修復可能なポリマー材料から、標準的な成形手法を用いて製造される。
図5A〜
図5Cは、不規則な表面形状312a〜312cを有する連動ストラップ314a〜314cの例を示しており、これらの表面形状は、表面積全体を増大させることを目的としている。連動幾何学的表面312a〜312cは、連動ストラップ314a〜314cの一定の長さに沿って加えられる摩擦/圧力下で接触し、ポリマーは、ケーブルタイ310のテール部をロック機構318に接着させるように反応する。
図6は、テール部端316が挿入された/ケーブルタイヘッド部318を通るように引き込まれた(ロック機構)後の、ストラップ314bの接着した部分を示している。自己融着は、幾何学的連動表面312bが、圧力下で接触した際に開始する。
【0032】
図7から
図11は、電線管及びフィッティングに関して確実で永続的な接続部410を供給するために用いられる自己修復可能なポリマー又はポリマーコーティングを示している。この結合は、永続的かつ取り外し不可能であるよう意図されている。非金属製電線管の場合、電線管及びフィッティングの長さ全体は、自己修復可能なポリマーの成形又は押出加工によって製造され得る。電線管とフィッティングとが、金属製及び非金属製である場合、自己修復可能なポリマーコーティングは、電線管及びフィッティングの製造中に、接続領域のあわせ面に塗布され得る。
図7及び
図8に示されているように、フィッティング414が電線管416、418上に取り付けられる場合、隣接する表面上の自己修復可能なポリマー412、413は結合し、封止された接続部を形成する。これによって、非金属製電線管及びフィッティングを接合するために現在用いられている溶媒及び接着剤は不要になる。電線管418は、シールが形成される間に、カップリング414を電線管418上に保持するために、スナップフィット420(
図8を参照)も供給され得る。
【0033】
代替的な構成は、ストレートフィット、テーパフィット、及び、スナップフィット接続を含んでいる。ネジ山にコーティングを使用し、永続的な結合を形成することも可能である(
図12を参照)。電線管のフィッティングは、圧入又は螺入であり得る。自己修復材料を用いることによって、長期間持続可能で強い、封止された接続部が供給される。フィッティングは互いに結合し、外れることはない。
【0034】
対象とする構想は、自己修復可能な表面コーティング及び対応するコーティング手法を有する電線管及びフィッティングを含んでいる。当該電気装置は、その内側表面及び外側表面にポリマー材料がコーティングされた金属製の電線管及びフィッティングを含んでいる。当該ポリマーコーティング材料は、電線管又はフィッティング装置の輸送、取り付け、及び動作によって引き起こされた表面の小さなクラックを、単独で修理することが可能である。当該コーティング材料は、金属製の電線管又はフィッティングを、腐食及び衝撃から保護する。
図9及び
図10は、接続部510を示しており、ここでは、電線管518が、挿入ストッパー520を有するフィッティング516に挿入される。当該挿入ストッパーは、電線管518がどこまでフィッティング516に挿入可能であるかを制限する。フィッティング516の内側表面512上の自己修復ポリマーは、電線管518の外側表面513上の自己修復ポリマーに接触し、自己修復ポリマー同士が結合し、永続的な接続を形成する。
図10では、電線管518はテーパ状であり、フィッティング516の内径は、開口端に向かって増大しており、電線管518とフィッティング516との間で圧入が供給される。
【0035】
図11は、接続部610を示しており、ここでは、電線管618は、挿入ストッパー620を有するフィッティング616に接続されており、フィッティング616には、部材624が供給されており、部材624は、電線管618内の溝622に係合し、スナップ式の特徴を供給する。電線管618がフィッティング616に挿入された後、フィッティング616の内側表面612上の自己修復ポリマーは、電線管618の外側表面613上の自己修復ポリマーに接触する。スナップ式の特徴は、電線管618をフィッティング616内に固定し、表面612、613上の自己修復ポリマーは、結合し、電線管618とフィッティング616とを永続的に接続する。
【0036】
本発明は、小さなクラック及び切れ目を自動的に修理するポリマーコーティング材料から形成された、又は、当該材料でコーティングされた電気装置と、当該装置を形成及びコーティングする方法と、を対象としている。当該コーティング材料には、いくつか利点がある。ポリマーの自己修復又は自己修理能力は、数年間の間で複数回、小さなクラック及び切れ目を自身で修理することを可能にする。変性ポリ尿素熱硬化性コーティング材料は、リサイクル可能なので、環境にも、より適合している。当該ポリマーは、電線管及び/又はフィッティングの維持費用も削減する。自己修復可能なコーティング材料は、耐食性であり、熱的に安定しており、難燃性で、絶縁性を提供し、電線管及びフィッティングを機械的に強化し、処理が容易である。
【0037】
別の態様では、自己修復可能なポリマーは、シール材として用いられ、電気的フィッティングのようなフィッティングに低温で塗布され得る。ポリマーのシール材は、粉末状であり、粉末の粒子は、ポリマーと混合され、バルク材を形成する。当該バルク材は、フィッティング内に取り付けられ、シールとして作用し、有害な液体又は気体の漏れが、フィッティングを通って、爆発の危険のある場所に流入することを防止する。形成されたシール材は、マイクロクラックを自身で修復することができる。当該シール材は、0℃以下の温度で、電気的フィッティングのようなフィッティングのために、適切な機械的圧縮を加えることによって、機能的なシールを形成することができる。
【0038】
この低温のポリマーシール材は、変性ポリ尿素材料であり得る。変性ポリ尿素材料は、イソシアナート官能基を有するモノマーとアミン官能基を有するモノマーとの、架橋剤及び触媒の存在下における反応によって形成される。次に、変性ポリ尿素材料は、粉末状にされる。この粉末状の材料は、ケーブル又は電線管に接続されたフィッティングに塗布される。フィッティングの空間に存在する粉末は、フィッティングが締結されると、機械的圧縮によって活性化する。圧縮された変性ポリ尿素粉末粒子は、バルク材を形成し、当該バルク材は、シールを形成する。組み込まれたシール材は、その寿命の間に経験するマイクロクラックを自身で修復することが可能である。
【0039】
自己修復可能なポリマー粉末712は、
図12に示されているように、接続部710に塗布される。
図12には、カップリング720によって接続された2つの電線管716、718が示されている。自己修復材料712は、電線管716、718のネジ山及び/又はカップリング720の内側ネジ山に塗布される。カップリング720が締結される際、自己修復材料712は、圧縮し、電線管716、718とカップリング720との間に結合を形成する。自己修復材料712は、電線管716、718とカップリング720との間における隙間領域を充填する。
【0040】
自己修復材料は、変性ポリ尿素から形成され、フィッティング内でシール材として使用され得る。シール材が、フィッティング内部の空間を充填するために用いられた後、ナットがフィッティングアセンブリに対してねじ込まれ、接続が固定され、ポリ尿素粉末が押しつぶされる。圧縮されたポリ尿素粉末は、材料のブロックに組み込まれ、接続部を封止する。組み込まれたシール材は、装置の動作中に生じ得るマイクロクラックを自身で修復することもできる。このような低温のシール材の利点は、(1)シール材の低温での形成、(2)マイクロクラックからのシール材の自己修復、(3)取り付け費用の削減、を含んでいる。
【0041】
粉末粒子の、低温での融合能力と、バルク材810の自己修復能力とは、
図13A〜
図13Dに示されているように、変性ポリ尿素ポリマーの、2つの部分812、813に切断又は分離された後に、そのモノマー形態に逆反応させる能力に基づいている。正反応及び逆反応は、粉末粒子が接触する位置、又は、小さなクラックの場所において、同時に行われる。それによって、材料が、隣接する粉末粒子を組み込むか、又は、クラックを封止する状態に再構成される。正反応(重合)と逆反応(解離)との動釣り合いは、隣接するポリ尿素の部分が統合されるように設計される。
【0042】
以上、本発明の好ましい態様を記載してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、別の態様を形成することが可能であると理解するであろうし、記載された請求項の真実の範囲内で行われる、さらなる修正及び変更を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0043】
10 ケーブルタイ
12 表面
14 ストラップ
16 テール部
18 ロック機構
110 テープロール
112 テープ
114 分離層
190 ケーブル及び/又はワイヤ束
210 ケーブルタイ
212 ポリマー材料
213 通路
214 ストラップ
216 テール部
218 ヘッド部
310 ケーブルタイ
312a〜312c 表面形状
314a〜314c 連動ストラップ
316 テール部端
318 ロック機構
410 接続部
412、413 自己修復可能なポリマー
414 カップリング
416、418 電線管
420 スナップフィット
510 接続部
512 内側表面
513 外側表面
516 フィッティング
518 電線管
520 挿入ストッパー
610 接続部
612 内側表面
613 外側表面
616 フィッティング
618 電線管
620 挿入ストッパー
622 溝
624 部材
710 接続部
712 自己修復材料
716、718 電線管
720 カップリング
810 バルク材
812、813 部分