特許第6875583号(P6875583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875583
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ポンプユニット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20210517BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20210517BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61M5/142 520
   A61M5/168 506
   A61M39/22
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-123393(P2020-123393)
(22)【出願日】2020年7月20日
(62)【分割の表示】特願2017-525462(P2017-525462)の分割
【原出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2020-179220(P2020-179220A)
(43)【公開日】2020年11月5日
【審査請求日】2020年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-128972(P2015-128972)
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591117413
【氏名又は名称】株式会社菊池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100180080
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 幸男
(72)【発明者】
【氏名】水谷 道
(72)【発明者】
【氏名】岡本 憲彦
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0280430(US,A1)
【文献】 特開2001−190689(JP,A)
【文献】 特開2013−117211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/168
A61M 39/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤容器に充填された液状の薬剤を患者に投与するための投薬機構に用いられ、薬剤を前記薬剤容器から吸引して患者へと吐出するポンプと、薬剤を前記薬剤容器から前記ポンプに導くポンプ入口側流路と、薬剤を前記ポンプから患者に導くポンプ出口側流路と、を備えるポンプユニットであって、
前記ポンプ入口側流路、前記ポンプ出口側流路、及び一方が前記ポンプ入口側流路に連通し他方が前記ポンプ出口側流路に連通するバイパス流路が内蔵されるブロック体と、前記バイパス流路を開閉するバイパス開閉弁とを更に備え、
前記ブロック体が、薬剤の流路となる孔を形成した複数の単位体が組み合わされて配置されることにより、前記ポンプ及び前記バイパス開閉弁が該ブロック体に一体に形成されている、ポンプユニット。
【請求項2】
前記各単位体が板状体であり、前記ブロック体が、前記複数の単位体が厚さ方向に積層されて形成されている、請求項1に記載のポンプユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、日本国特願2015−128972号に基づく優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【0002】
本発明は、薬剤容器に充填された液状の薬剤を患者に投与するためのポンプユニット、ポンプユニットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
薬剤容器に充填された液状の薬剤(薬液)を患者に投与するための投薬機構として、例えば特許文献1に記載の輸液量調整装置がある。この装置は、ポンプ室の膨張・収縮により送液を行うポンプ(マイクロポンプ)を備えている。
【0004】
特許文献1に記載の装置を組み込んだ輸液システムでは、ポンプの吐出側に接続されたチューブに閉塞が生じた場合でも、ポンプの構成上、逆流が起こらないことから、ポンプの駆動が継続してポンプから閉塞箇所までの区間に多量の薬液が滞留することがある。
【0005】
ところが、チューブに閉塞が発生しても、装置サイドでは何らの対処もされない(なお、特許文献1には異常事態の発生を検知する制御手段が記載されているが、チューブ閉塞に関しての記載はない)。このため、看護師等の医療従事者が閉塞を解除すると、チューブに滞留していた多量の薬液が一気に患者に投与されてしまうおそれがあるため、好ましくなかった。
【0006】
また、この投薬機構は例えば患者の身体に取り付けて用いられることがあるため、コンパクト化が要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特開2011−177411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、チューブ等の配管に閉塞が生じた場合でも、閉塞解除の際に過剰な薬液が一気に患者に投与されてしまうことを抑制でき、しかも投薬機構のコンパクト化に貢献できるポンプユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、薬剤容器に充填された液状の薬剤を患者に投与するための投薬機構に用いられ、薬剤を前記薬剤容器から吸引して患者へと吐出するポンプと、薬剤を前記薬剤容器から前記ポンプに導くポンプ入口側流路と、薬剤を前記ポンプから患者に導くポンプ出口側流路と、を備えるポンプユニットであって、前記ポンプ入口側流路、前記ポンプ出口側流路、及び一方が前記ポンプ入口側流路に連通し他方が前記ポンプ出口側流路に連通するバイパス流路が内蔵されるブロック体と、前記バイパス流路を開閉するバイパス開閉弁とを更に備え、前記ブロック体が、薬剤の流路となる孔を形成した複数の単位体が組み合わされて配置されることにより、前記ポンプ及び前記バイパス開閉弁が該ブロック体に一体に形成されている、ポンプユニットである。
【0010】
また、本発明のポンプユニットは、前記各単位体が板状体であり、前記ブロック体が、前記複数の単位体が厚さ方向に積層されて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポンプユニットによれば、投薬機構におけるチューブ等の配管に閉塞が生じた場合でも、閉塞解除の際に過剰な薬液が一気に患者に投与されてしまうことを抑制でき、しかも投薬機構のコンパクト化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明における一実施形態の投薬経路を示す概略図である。
図2A】本実施形態の、蓋部を除去した状態の本体とポンプユニットを示す正面図である。
図2B】本実施形態の、蓋部を除去した状態の本体とポンプユニットを示す右側面図である。
図2C】本実施形態の、蓋部を除去した状態の本体とポンプユニットを示す、図2AのA−A矢視の縦断面図である。
図2D】本実施形態の、蓋部を除去した状態の本体とポンプユニットを示す背面図である。
図3】本実施形態のポンプユニットにおけるブロック体とポンプとを示す縦断面図である。
図4A】本実施形態のポンプユニットにおけるブロック体とポンプの、通常の投薬時の薬液の流れを示す縦断面図である。
図4B】本実施形態のポンプユニットにおけるブロック体とポンプの、バイパス開閉弁を開放した場合の薬液の流れを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。本実施形態の投薬機構1は、本体2と、本体2に着脱できるポンプユニット3とを備える。この投薬機構1は、図1に示すように、輸液バッグ等の薬剤容器F1から患者Pへと至る投薬経路Fの途中に取り付けられる。
【0014】
図2A図2Dに示すように、本体2はポンプユニット3を保持して、種々の検知、制御、管理を行うための部分である。本体2に保持されたポンプユニット3には、図1に示すように薬剤容器側チューブF2と患者側チューブF5とが接続される。なお、説明の都合上図示を省略しているが、本体2の正面側には開閉可能な蓋部を備えている。この蓋部は閉じた際に後述するポンプユニット3の吸引側チューブ33及び吐出側チューブ34の側面に当接する。なお、図2A図2Dに示された上方側が投薬機構1の使用時における薬剤容器F1側(吸引側)であり、同下方側が使用時における患者P側(吐出側)となる。
【0015】
本体2は、ポンプユニット3を嵌められる凹部であるポンプユニット配置凹部22を備えている。ポンプユニット配置凹部22の底面には本体側電気接点(図示していない)が設けられている。このポンプユニット配置凹部22にポンプユニット3を嵌めた際に、この本体側電気接点からポンプユニット3へと、ポンプ31を駆動するための電力を供給できる。図2A図2Dにおける、ポンプユニット配置凹部22の上下には、ポンプユニット3の吸引側チューブ33及び吐出側チューブ34を配置するチューブ配置溝23が形成されている。
【0016】
本体2には、ポンプユニット3の送液状況を検知できるセンサが設けられている。このセンサとして本実施形態では、圧力センサ24と気泡センサ25とが設けられている。圧力センサ24は、本体2における薬剤容器F1側と患者P側との2箇所に設けられている。ただし、薬剤容器F1側または患者P側の1箇所にだけ設けられることもできる。
【0017】
各圧力センサ24は、本体2に取り付けられたポンプユニット3における吸引側チューブ33及び吐出側チューブ34に対応する位置に設けられている。この圧力センサ24は、チューブ内の圧力が上昇するとチューブが膨張することでチューブの径寸法が拡大し、チューブ内の圧力が低下するとチューブが収縮することでチューブの径寸法が縮小する現象を利用し、吸引側チューブ33及び吐出側チューブ34の径寸法変化により各チューブ33,34内の圧力変化を検出するものである。
【0018】
具体的に、各圧力センサ24には、図2A及び図2Cに示すように、チューブ33,34が嵌る溝を有する可動ブロック241が正面側と背面側との間で移動可能に設けられている。この可動ブロック241の背面側には、受けた荷重に引例して電圧を出力できる素子242が、可動ブロック241に当接して配置されている。チューブ33,34は本体2の蓋部(図示しない)により正面側への移動が規制されている。このため、チューブ33,34の拡大・縮小に応じて可動ブロック241が移動し、前記素子242にかかる荷重に応じて前記素子242から出力される電圧が変化することにより、各チューブ33,34内の圧力変化を検出できる。
【0019】
もし、チューブが折り曲げられたこと等により投薬経路Fの途中区間で閉塞が生じた場合、ポンプユニット3におけるポンプ31よりも上流側の閉塞では、薬剤容器F1側から薬液が流れにくい状態のままポンプ31が吸引を行うため、ポンプ31の駆動の継続により、内部が負圧になって吸引側チューブ33が収縮する。一方、ポンプ31よりも下流側の閉塞では、患者P側に薬液が流れにくい状態でポンプ31が吐出するため、ポンプ31の駆動の継続により、内部が正圧になって吐出側チューブ34が膨張する。このため、圧力センサ24の検知により閉塞発生を把握できる。なお、閉塞解除後に不都合が生じないよう、本実施形態のポンプユニット3には、閉塞時に生じる過剰な薬液を逃がすための逃がし流路として、バイパス流路35とバイパス開閉弁36とが設けられている(図3参照)。この逃がし流路については後述する。
【0020】
これらの他、本体2には、例えばポンプユニット3のポンプ制御及び各センサの検知結果の処理及び記憶等を行う制御部261、電池を配置する内部電源部262、外部電源入力ジャック263、薬剤容器F1よりも患者P側に位置する、図示しない点滴筒に取り付けられた、滴下量等を検出する流量センサの検出値を入力する流量ジャック264、投薬履歴データやセンサ検知結果の出力等を行う通信用ジャック265を備えていてもよい。また、図示していないが、アラーム音等を発するためのスピーカーやアラーム表示等を行うLEDランプ、蓋部が開放されたことを検知するセンサ、種々の情報を表示する液晶表示部を備えていてもよい。また、患者Pの身体に本体2を装着するためのバンド等を取り付けるための部分、医療機関で用いられる点滴スタンド等に取り付けるための部分を備えることもできる。
【0021】
ポンプユニット3は、図1に示すように、薬液を薬剤容器F1から吸引して患者Pへと吐出するポンプ31と、薬液を前記薬剤容器からポンプ31に導くポンプ入口側流路と、薬液をポンプ31から患者Pに導くポンプ出口側流路と、ポンプ31の非駆動時に、前記ポンプ入口側流路において生じた薬剤圧力によって前記ポンプ出口側流路を閉鎖するフリーフロー防止弁32と、一方がポンプ入口側流路に連通し、他方が前記ポンプ出口側流路に連通するバイパス流路35と、バイパス流路35を開閉するバイパス開閉弁36とを備える。
【0022】
更にこのポンプユニット3は、吸引側チューブ(吸引側配管)33、吐出側チューブ(吐出側配管)34を備える。ポンプ31、フリーフロー防止弁32、バイパス流路35、バイパス開閉弁36は一体に形成されている。このため、ポンプユニット3の本体2への着脱が容易である。なお、ブロック体37と吸引側チューブ(吸引側配管)33、ブロック体37と吐出側チューブ(吐出側配管)34の間には継手を設けることもできる。
【0023】
フリーフロー防止弁32、バイパス流路35、バイパス開閉弁36は、ブロック体37に内蔵されている。ポンプ31はブロック体37に一体となるよう取り付けられている。このため、ポンプユニット3をコンパクトに形成できる。ポンプユニット3をコンパクトに形成したことにより、滅菌処理の効率化、輸送コスト低減、保管スペース低減、廃棄量低減ができる。特に廃棄量低減により廃棄物処理費用が抑制できる。また、例えばケース内にポンプや配管を収納した構成に比べて、ポンプユニット3内における流路を短小化できるので、デッドスペースを縮小できる。また、流路の短小化により、流路への残留薬液の量を低減できる。このため、希少疾患向け等の高価な薬剤や、疼痛管理向け麻薬等の管理が必要な薬剤を投与する場合の、薬剤(薬液)の無駄が低減でき、管理負荷も低減できる。
【0024】
また、例えば、フリーフロー防止弁32と、バイパス流路35及びバイパス開閉弁36とを別体に形成しておき、各々を接続して用いる構成に比べると、液漏れ発生の可能性がある箇所を削減できる。
【0025】
ブロック体37は、このブロック体37に内蔵される各構成要素となる、薬剤の流路となる孔(例えば貫通孔または凹部)が形成された複数(本実施形態では5個)の単位体37a〜37eを組み合わせることにより形成される。この構成によると、複数の単位体37a〜37eの組み合わせで簡単にブロック体37を形成できる。本実施形態の各単位体は板状体からなる。そして、各単位体の形状は前記各構成要素に適したものに設定されている。そして、複数の単位体37a〜37eを厚さ方向に積層することによりブロック体37を形成することができる。複数の単位体37a〜37eは接着や凹凸嵌合により一体化される。なお、前記積層に当たって、ブロック体37の内部流路からの液漏れやブロック体37の外部への液漏れを抑制するため、適宜ガスケットやOリングが挟み込まれる。以上の構成によると、単位体37a〜37eが板状体であるため、組み立て容易であり、単位体がかさばりにくいので、ポンプユニット3の構成部品の管理が容易となる。
【0026】
ブロック体37の内部には、ポンプ入口側流路の一部である入口側主流路371、ポンプ出口側流路の一部である出口側主流路372及びポンプ連結流路373、バランス流路374、バイパス流路35の一部である入口側バイパス流路375及び出口側バイパス流路376が形成されている。また、フリーフロー防止弁32のダイヤフラム321やバイパス開閉弁36の構成要素が配置される空間部が形成されている。
【0027】
図示していないが、ブロック体37の側面、またはポンプ31には、本体側電気接点(図示していない)に接続できるポンプユニット側電気接点が形成されている。よって、ブロック体37を本体2のポンプユニット配置凹部22に配置し、本体側電気接点とポンプユニット側電気接点とを電気的に接続することにより、ポンプ31に通電して駆動可能な状態にすることができる。
【0028】
ポンプ31は、液状の薬剤(薬液)を薬剤容器F1から吸引して患者Pへと吐出することができる。本実施形態ではダイヤフラム式のポンプが用いられている。ポンプ31としてダイヤフラム式のポンプを採用することで、モータが不要になるため、モータが必要なポンプに比べてポンプを小型化できる。このため、ポンプユニット3も小型化できるので投薬機構1を軽量化できる。よって、患者Pが投薬機構1を携帯する際の負担が小さくなり、特に薬液の常時投与が必要な患者Pにとってメリットが大きい。また、ダイヤフラム式のポンプでは薬液吐出量の制御を高精度で行える。
【0029】
本実施形態のポンプ31には、集積化デバイスに関するMEMS技術を利用したポンプであって、例えば日本国特開2013−117211号公報に記載されたマイクロポンプが用いられる。
【0030】
なお、薬液の投与量によって必要なポンプ31の容量が異なるため、容量を識別するためのマークをブロック体37に表示したり、ブロック体37の形状を異なるようにしたりすることもできる。
【0031】
また、ポンプ31の容量によって本体2(制御部261)におけるポンプ31の制御内容が異なるため、前記のように、ポンプ31の容量によりブロック体37に表示されたマークやブロック体37の形状が異なる場合、マークやブロック体の形状を本体2が認識し、この認識によって制御内容を自動的に変更するように構成することもできる。更に、ブロック体37にICチップ等の識別子を設け、本体2に識別子の読取手段を設けておくことにより、本体2へポンプユニット3を装着するだけで制御内容を自動的に変更するように構成することもできる。なお、このように識別子を設けた場合には、識別子にポンプユニット3の使用履歴を記録しておき、使用後に取り外したポンプユニット3を再利用できないようにすることもできる。
【0032】
フリーフロー防止弁32は、ポンプ31が駆動していない場合に、重力により生じる薬液の圧力により、ポンプ31を通過する薬液に意図しない流れが生じることを防止するため設けられている。このフリーフロー防止弁32は、ポンプ入口側流路(本実施形態では入口側主流路371)において生じた薬剤圧力によってポンプ出口側流路(本実施形態ではポンプ連結流路373と出口側主流路372との接続部分)を閉鎖する。
【0033】
フリーフロー防止弁32には、図3に示すように、ダイヤフラム321の一面側(図示上側)にポンプ連結流路373(ポンプ31の吐出口312に接続されている)と出口側主流路372とが設けられており、他面側(図示下側)にバランス流路374(入口側主流路371に接続されている)が形成されている。ポンプ連結流路373と出口側主流路372との間の流れは、ダイヤフラム321が移動した際にだけ起こるよう構成されている。つまり、薬剤容器F1からの薬液の圧力だけがダイヤフラム321にかかっている場合は、ポンプ連結流路373とバランス流路374との圧力が均衡しているため、ダイヤフラム321が静止していてフリーフロー防止弁32に流れが起きない。一方、ポンプ31の駆動中は、ポンプ31により押し出された薬液の圧力がバランス流路374内部の圧力よりも大きくなるため、図4Aに示すように、ダイヤフラム321がバランス流路374の側に変形する(撓む)。これにより、ポンプ連結流路373と出口側主流路372とが連通することになるので、ポンプ連結流路373から出口側主流路372への流れが生じる。このようにフリーフロー防止弁32が設けられているため、ポンプ31の駆動中にのみポンプユニット3に薬液の流れが生じるようにでき、患者Pへの意図しない薬液の投与を防止できる。
【0034】
吸引側チューブ33は、ポンプ31から薬剤容器F1側へ延びるチューブである。吐出側チューブ34は、ポンプ31から患者P側へ延びるチューブである。これらチューブ33,34は、例えばシリコンゴム等の軟質樹脂から形成されている。これらチューブ33,34の径寸法変化が本体2の圧力センサ24で検知されるため、材質(樹脂の配合、密度等)、管厚、管径につき、少なくとも圧力センサ24に配置される部分ではあらかじめ定められた誤差範囲内で形成されている必要がある。なお、本実施形態と異なり、配管を用いて圧力変化を検出しない場合には、ポンプユニット3に軟質のチューブを用いずに硬質のパイプを用いることもできる。
【0035】
各チューブ33,34の先端にはコネクタ331,341を備える。コネクタ331,341は硬質樹脂製の汎用品であり、例えばねじ込みにより、図1に示すように、薬剤容器側チューブF2と患者側チューブF5(各々、ポンプユニット3のコネクタ331,341に接続できるような、「オス」「メス」の関係にある形状のコネクタF3,F4を備える)とに接続される。コネクタ331,341により、ポンプユニット3と薬剤容器側チューブF2とを分離でき、かつ、ポンプユニット3と患者側チューブF5とを分離できるので、投薬機構1に対する薬剤容器F1及び患者Pの距離を自由に設定できる。よって、患者Pが投薬機構1を携帯する際にチューブF2,F5が邪魔になりにくい。
【0036】
なお、コネクタ331,341は吸引側チューブ33または吐出側チューブ34の少なくとも一方の先端にのみ位置することもできる。一方にのみコネクタが設けられた場合、コネクタが設けられない側については、薬剤容器F1(あるいは、薬剤容器F1よりも患者P側に位置する、図示しない点滴筒)までがポンプユニット3に含まれることになり、投薬機構1を挟んだ反対側では、患者Pに刺しこまれる針F6までがポンプユニット3に含まれることとなる。
【0037】
入口側バイパス流路375及び出口側バイパス流路376は、ポンプ31を介さずに吸引側チューブ33と吐出側チューブ34とを連結している。図3に示すように、入口側バイパス流路375は、入口側主流路371に接続されており、出口側バイパス流路376は、出口側主流路372に接続されている。
【0038】
投薬時、図4Aに矢印で示したように、吸引側チューブ33からブロック体37に入った薬液は、ブロック体37内の入口側主流路371を経て吸引口311からポンプ31に入る。そしてポンプ31の吐出口312から吐出された薬液は、ポンプ連結流路373、バランス流路374の一部、出口側主流路372を順次通り、ブロック体37を出て吐出側チューブ34に至る。
【0039】
一方、投薬経路Fに閉塞が発生してバイパス開閉弁36を開放した場合には、図4Bに矢印で示したように、吐出側チューブ34に滞留していた薬液のうち過剰分が、ブロック体37に入り(逆流し)、出口側バイパス流路376、連通流路377(バイパス流路35の一部であり、バイパス開閉弁36の弁体361が移動して形成された流路)、入口側バイパス流路375を順次通り、ブロック体37を出て吸引側チューブ33に至る。
【0040】
このように構成された入口側バイパス流路375、出口側バイパス流路376、連通流路377からなるバイパス流路35が存在することにより、バイパス開閉弁36の開放時に、吸引側チューブ33と吐出側チューブ34とを連通させ、投薬経路Fに閉塞が発生した場合の過剰な薬液を吸引側チューブ33に戻すことができる。
【0041】
なお、本実施形態におけるダイヤフラム式のポンプのように、送液を行う部分の容積が拡大・縮小を繰り返すポンプを用いた場合、ポンプユニット3の吐出側に接続されたチューブ34,F5に閉塞が生じた場合でも、ポンプ31の構成上、ポンプ31内を通る逆流が起こらないことから、ポンプ31の駆動が継続してポンプ31から閉塞箇所までの区間に多量の薬液が滞留することがある。バイパス流路35及びバイパス開閉弁36には、ポンプ31から閉塞箇所までの区間に滞留した薬液のうち過剰分をポンプ31よりも吸引側に戻す際に薬液が通される。
【0042】
バイパス開閉弁36はバイパス流路35の途中に設けられ、バイパス流路35の流路を開閉できる。このバイパス開閉弁36は、ブロック体37の内部に移動可能に設けられた弁体361、弁体361を閉鎖方向に付勢する付勢手段362、付勢手段362の付勢に抗して弁体361を開放方向に移動させるためのボタン363を備える。
【0043】
このバイパス開閉弁36は手動で開放されるよう構成されており、医療従事者または患者Pが図3に示すボタン363をブロック体37の内部へと押し込むことにより、図4Bに示す上方に弁体361を移動させる。これにより、入口側バイパス流路375と出口側バイパス流路376とを連通させる連通流路377が形成される。その結果、バイパス開閉弁36が開放され、バイパス流路35が開通する。なお、ボタン363から手を離すと、バイパス開閉弁36は、ブロック体37に内蔵されたばね等により自動的に閉鎖状態となる。自動開放をさせない理由は、投薬経路Fの途中で閉塞が生じた場合に医療従事者や患者Pが閉塞箇所を確認してから、閉塞原因を究明する必要があるからである。これにより、投薬経路Fに閉塞が生じた場合に適切な対処をなすことができる。ただし、想定される使用状況によっては、バイパス流路35等の圧力が所定圧力を超えた場合に自動開放するバイパス開閉弁36を用いることもできる。
【0044】
本実施形態のポンプユニット3は使い捨てすることができる。このため、投薬機構1を衛生的かつ安全に使用できる。薬剤の種類や使用状況にもよるが、ポンプユニット3は通常3日程度、長い場合は30日程度で取り換えられる。ポンプユニット3を使い捨てとすることで、医療機関において臨床工学技士(ME)が行う吐出精度の検査が不要になる。よって、医療機関における投薬機構1の管理が容易になり、将来的には臨床工学技士の手を必要とせず、病棟単位で看護師等により投薬機構1を管理できるようになる可能性がある。
【0045】
また、吸引側チューブ33及び吐出側チューブ34のうち少なくとも圧力センサ24に一致する部分において、材質及び寸法誤差等が管理されていれば、ポンプユニット3を交換した場合でも、圧力センサ24に対応して位置するチューブの径や硬度(径変化のしやすさ)をほぼ同じにできる。よって、チューブを医療機関が用意して投薬機構に接続する場合のように、チューブの径や硬度にばらつきを生じにくくできるため、圧力変化の検出を確実にできる。
【0046】
次に、この投薬機構1の使用方法について簡単に述べる。まず、薬剤容器F1から延びるチューブF2と患者P側から延びるチューブF5(針F6が備えられていない場合はチューブF5に取り付けておく)をポンプユニット3に接続する。そして、チューブF2とチューブF5とが接続された状態のポンプユニット3を本体2に装着し、図1に示す状態とする。また必要な場合、点滴筒や流量センサを装着する。次に、投薬経路Fの気泡を抜く。そして針F6を患者Pに刺す。次にポンプ31の駆動を開始させる。これにより、ポンプ31によって薬液が患者Pの体内に送られる。
【0047】
投薬経路Fに閉塞が発生した場合(特に、投薬経路Fのうちポンプ31よりも患者P側の区間で閉塞が発生した場合)には、圧力センサ24の検知により、制御部261によって警告の報知(アラーム音やアラームランプ点灯による報知)がなされる。これに応じ、医療従事者または患者Pは、ポンプ31を停止させた上で(なお、前記警告の報知に連動してポンプ31の停止が自動的になされてもよい)、本体2よりも患者P側に開閉弁(図示していない)が設けられている場合にはこの開閉弁を閉鎖する。そして、医療従事者または患者Pがポンプユニット3のバイパス開閉弁36を開放する。その後、医療従事者または患者Pが閉塞箇所を確認した上で閉塞を解除する(例えば、折れ曲がった状態のチューブを延ばすことで流路を確保する)。このように、閉塞解除の前にバイパス開閉弁36を開放することで、ポンプ31から閉塞箇所までの区間に滞留した薬液のうち過剰分を、投薬経路Fのうちポンプ31よりも薬剤容器F1側の区間に戻すことができる。このため、閉塞解除により滞留した過剰な薬液が患者Pに向かうことを抑制でき、安全である。また、薬剤容器F1側の区間に戻された薬液は再びポンプ31によって患者Pに投与されるため、閉塞発生で生じた過剰な薬液を有効利用できる。閉塞解除の後は患者P側に開閉弁があればそれを開放し、ポンプ31の駆動を再開することで、薬液の投与が再開される。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0049】
例えば、ブロック体37にフリーフロー防止弁32を内蔵しないこともできる。この場合、ブロック体37の内部には、ポンプ入口側流路の一部である入口側主流路371、ポンプ出口側流路の一部である出口側主流路372及びポンプ連結流路373(これら二つの流路は一連の流路となる)、入口側バイパス流路375、出口側バイパス流路376が形成されることとなる。
【0050】
最後に、前記実施形態(変形した形態を含む)の構成及び作用についてまとめておく。前記実施形態は、薬剤容器F1に充填された液状の薬剤を患者Pに投与するための投薬機構1に用いられ、薬剤を前記薬剤容器F1から吸引して患者Pへと吐出するポンプ31と、薬剤を前記薬剤容器F1から前記ポンプ31に導くポンプ入口側流路(入口側主流路)371と、薬剤を前記ポンプ31から患者Pに導くポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373と、を備えるポンプユニット3であって、更に、一方が前記ポンプ入口側流路(入口側主流路)371に連通し、他方が前記ポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373に連通するバイパス流路35と、前記バイパス流路35を開閉するバイパス開閉弁36と、を備え、前記ポンプ入口側流路(入口側主流路)371、前記ポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373及び前記バイパス流路35が内蔵されるブロック体37と、を備えたポンプユニット3である。
【0051】
この構成によれば、閉塞解除の前にバイパス開閉弁36を開放することで、ポンプ31の出口から閉塞箇所までの区間に滞留した薬液のうち過剰分を、バイパス流路35を介してポンプ入口側流路(入口側主流路)371に戻すことができる。このため、閉塞解除により滞留した薬液が患者Pに向かうことを抑制できる。更に、ブロック体37に、ポンプ入口側流路(入口側主流路)371、ポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373、バイパス流路35が内蔵されている。このため、ポンプユニット3をコンパクトに形成できる。
【0052】
そして、前記ポンプ31の非駆動時に、前記ポンプ入口側流路(入口側主流路)371において生じた薬剤圧力によって前記ポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373を閉鎖するフリーフロー防止弁32を更に備え、前記フリーフロー防止弁32は前記ブロック体37に内蔵されていることができる。
【0053】
この構成によれば、フリーフロー防止弁32により、ポンプ31を通過する薬液に意図しない流れが生じることを防止できる。
【0054】
また、前記実施形態は、薬剤容器F1に充填された液状の薬剤を患者Pに投与するための投薬機構1に用いられ、薬剤を前記薬剤容器F1から吸引して患者Pへと吐出するポンプ31と、薬剤を前記薬剤容器F1から前記ポンプ31に導くポンプ入口側流路(入口側主流路)371と、薬剤を前記ポンプ31から患者Pに導くポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373と、を備えるポンプユニット3の製造方法であって、前記ポンプユニット3が、一方が前記ポンプ入口側流路(入口側主流路)371に連通し、他方が前記ポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373に連通するバイパス流路35と、前記バイパス流路35を開閉するバイパス開閉弁36と、前記ポンプ入口側流路(入口側主流路)371、前記ポンプ出口側流路(出口側主流路)372,373及び前記バイパス流路35が内蔵されるブロック体37とを備え、薬剤の流路となる孔を形成した複数の単位体37a〜37eを組み合わせ、これら単位体37a〜37eの組み合わせを前記ポンプ31及び前記バイパス開閉弁36を一体に形成できるように配置することにより前記ブロック体37を形成する、ポンプユニット3の製造方法である。
【0055】
この方法によれば、複数の単位体37a〜37eの組み合わせで簡単にブロック体37を形成し、ポンプ31及びバイパス開閉弁36を一体に形成できる。
【0056】
そして、前記各単位体は板状体からなり、前記複数の単位体37a〜37eを厚さ方向に積層することにより前記ブロック体37を形成することができる。
【0057】
この方法によれば、単位体が板状体であるため組み立てやすい。また、単位体がかさばりにくいので、ポンプユニット3の構成部品の管理が容易となる。
【0058】
以上、前記実施形態によると、閉塞解除により滞留した薬液が患者Pに向かうことを抑制でき、コンパクトに形成できる。よって、チューブ等の配管に閉塞が生じた場合でも、閉塞解除の際に過剰な薬液が一気に患者Pに投与されてしまうことを抑制でき、しかも投薬機構1のコンパクト化に貢献できる。
【符号の説明】
【0059】
1 投薬機構
2 本体
3 ポンプユニット
31 ポンプ
32 フリーフロー防止弁
35 バイパス流路
36 バイパス開閉弁
37 ブロック体
371 ポンプ入口側流路、入口側主流路
372 ポンプ出口側流路、出口側主流路
373 ポンプ出口側流路、ポンプ連結流路
374 バランス流路
375 バイパス流路、入口側バイパス流路
376 バイパス流路、出口側バイパス流路
377 バイパス流路、連通流路
37a〜37e 単位体
F1 薬剤容器
P 患者

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B