【実施例1】
【0017】
[土木工事用袋体]
<1>全体の構成(
図1)。
土木工事用袋体1は、内部に中詰材Sを充填して土木工事用構造物Aを製作するための資材である。
土木工事用袋体1は、編地からなる袋材10と、袋材10の袋口10a付近に周設した口縛りロープ20と、袋材10の袋口10a付近に周設した吊りロープ30と、を少なくとも備える。
本例では、口縛りロープ20を、吊りロープ30より袋口10a側に周設する。これによって、吊りロープ30による土木工事用構造物Aの吊り上げ時に、口縛りロープ20に負荷がかかるのを回避することができる。
ただし口縛りロープ20と吊りロープ30の位置はこれに限らず、口縛りロープ20を吊りロープ30より袋底10b側に周設してもよい。
【0018】
<2>袋材。
袋材10は、中詰材Sを包持する有底袋である。
袋材10は、袋状に編製した編地からなり、袋口10aと袋底10bを有する。
本例では袋材10として、カーボンブラックを原着したポリエステル繊維糸を二重に編成してなるラッセル編地を採用する。
ただし袋材10の素材や編地はこれに限らず、他の組合せであってもよい。
【0019】
<3>口縛りロープ(
図2)。
口縛りロープ20は、袋材10の袋口10aを縛って閉じるためのロープである。
口縛りロープ20は、強度線部21と引出線部22の組合せからなる。
口縛りロープ20は、全長が袋材10の周長より長く、その内少なくとも袋材10の口縛りに用いる部分が強度線部21であり、その余の部分が引出線部22である。
強度線部21と引出線部22の連結点から、引出線部22の自由端までの長さは、通常、強度線部21と引出線部22の連結点から、強度線部21の連結端までの長さの2倍以上となる。
本例では、強度線部21の一端を袋材10の編地に縫い付ける等して連結し、編地の網目を連通しつつ袋口10aの全周をループさせ、引出線部22の先端を編地の網目から外側に出す。
【0020】
<3.1>強度線部。
強度線部21は、袋口10aを縛って口開きに抵抗する線材である。
強度線部21は、少なくとも袋材10の袋口10aを縛れる長さを有する。
強度線部21の引張強度T
1は、引出線部22の引張強度T
2よりも大きく、かつ袋材10の内部に中詰材Sを充填して地盤に設置した状態において、袋口10aを縛った強度線部21が破断しない程度の引張強度である。この引張強度T
1は、強度線部21の素材と線径の太さの組合せによって設定する。
本例では強度線部21として、3本のポリエステル繊維製ストランド21aを撚り合わせてなる、3本撚りの撚りロープを採用する。ただしストランド21aの素材や本数はこれに限らず、適宜の素材や本数を選択することができる。
また、強度線部21は撚りロープに限らず、丸編みや角編み等の手法によって複数のストランド21aを編み込んでなる編みロープであってもよい。
【0021】
<3.2>引出線部。
引出線部22は、袋口10aの口縛り時に、強度線部21を編地の外まで引き出すための線材である。
引出線部22は、強度線部21と異なり、口縛り後に切り捨てられる部分であるため、強度線部21より径の細い安価なロープを採用することができる。又は径が強度線部21と同一であって、強度線部21より引張強度が低い素材からなるロープを採用することができる。
本例では引出線部22として、荷造り用のポリプロピレンロープを採用する。
ただし引出線部22はこれに限られず、他のオレフィン系樹脂製ロープ等の公知のロープを採用することができる。要は強度線部21より安価な径や素材からなり、口縛り後の裁断が容易であればよい。
本例では、引出線部22が荷造り用のポリプロピレンテープからなるため、強度線部21の色彩が袋材10の編地と同色の黒色系である一方、引出線部22の色彩は白色である。このため、袋材10の黒色を背景に、白い引出線部22を識別しやすくなり、口縛りの作業性が向上する。
【0022】
<3.3>口縛りロープの連結構造(
図2)。
口縛りロープ20は、強度線部21と引出線部22とを連結してなる。
本例では、強度線部21の端部付近でストランド21aの撚りを緩めて、複数のストランド21aの間に隙間を作り、その隙間に引出線部22を挿通することで、強度線部21と引出線部22を一体に連結する。
引出線部22は、強度線部21内を挿通した両端を揃え、先端付近でループ状に結ぶ(
図2(a))。
本例の場合、径や構造の異なる2本のロープを、結び目のような突起部を設けずに連結できるため、口縛りロープ20を引き出す際に、連結部が編地に引っ掛かることなくスムーズに引き出すことができる。
ただし強度線部21と引出線部22の連結方法はこれに限らず、例えば引出線部22をストランド21aの隙間に通した後、引出線部22をループ状にせず、接続部に結んで連結してもよい(
図2(b))。また、2本のロープの端部を結んで連結したり、端部同士をミシンで縫い付けて連結してもよい。
【0023】
<4>吊りロープ。
吊りロープ30は、土木工事用構造物Aを吊り上げるためのロープである。
吊りロープ30は、袋口10aの全周にわたって網目を連通し、両端を連結してループ状に構成する。これによって、袋材10の網目から適宜の本数を外側に引き出すことができる。
本例では吊りロープ30として、3本撚りのポリエステル繊維製撚りロープを採用する。
ただし吊りロープ30はこれに限らず、適宜の素材や撚り数を選択することができる。また、吊りロープ30は撚りロープでなく編みロープ等であってもよい。
【0024】
<5>土木工事用構造物の製作方法(
図3)。
本発明の土木工事用袋体1を用いて土木工事用構造物Aを製作する方法について説明する。
本発明の土木工事用構造物Aの製作方法は、中詰材S充填後の口縛り作業に一つの特徴を有する。
カップ状の型枠の内側に、袋材10の袋口10aを広げた状態で配置し、袋材10の内部に中詰材Sを充填する。
充填後、袋材10の袋口10aを型枠から取り外す。
引出線部22の先端を引っ張って、袋材10の編地を通して袋口10aを絞り、同時に強度線部21を編地から引き出す。
強度線部21から引出線部22を取り外す。本例では、ループ状の引出線部22をカットし、強度線部21の撚り目から引き抜く。
本発明の土木工事用構造物Aの製作方法は、引出線部22が引張強度を必要としない細径の線材、または引張強度の弱い素材からなるため、引出線部22の切断が容易である。また、切離し後に廃棄する引出線部22が、強度線部21に比べて非常に安価なので、材料コストが安い。
残った強度線部21で、袋材10の袋口10aを縛る。
なお、引出線部22の取り外しと、強度線部21による口縛りの順序は問わず、先に袋口10aを縛ってから、引出線部22を取り外してもよい。
その後の工程は公知なので、ここでは詳述しない。