(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程の水性原料スラリー(1)又は前記第2工程の原料粉砕処理物を含むスラリー(2)に、更に、M源(Mは、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、W、V、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)を含有させることを特徴とする請求項1記載のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法。
前記原料粉砕処理物を含むスラリー(2)中の固形分の平均粒子径が1.5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法。
更に、前記第4工程を行い得られるピロリン酸コバルトリチウムを、加熱処理する第5(A)工程を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法。
請求項1〜6いずれか1項記載のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を行い得られたピロリン酸コバルトリチウムと、加熱分解により炭素が析出する導電性炭素材料源とを混合し、該ピロリン酸コバルトリチウムと該導電性炭素材料源との混合物を得、次いで、該混合物を加熱処理して、該導電性炭素材料源を加熱分解することにより、ピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体を得る第5(B)工程を有することを特徴とするピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のように、各原料を乾式で混合する方法では、X線回折分析において、単相のピロリン酸コバルトリチウムが得られ難い。
【0008】
従って、本発明の目的は、工業的に有利な方法で、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムを得ることができる方法を提供することにある。また、本発明の目的は、該ピロリン酸コバルトリチウムと炭素との複合体を得ることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、少なくとも水酸化コバルト、リン酸及び水酸化リチウムを原料として用いて、湿式で原料混合物を調製する方法において、有機酸の存在下に、原料の添加順序も考慮して原料混合物を調製すると、各原料が均一に分散し、取扱いが容易な水性原料スラリーが得られること。また、該水性原料スラリーは、メディアミルにより湿式粉砕処理が可能なものになること。更に、該水性原料スラリーを湿式粉砕処理した粉砕処理物を含むスラリーを噴霧乾燥処理して得られる反応前駆体は、反応性に優れたものになること。また、該反応前駆体を特定温度以上で焼成するこ
とにより、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明(1)は、下記一般式(1):
Li
xCo
1−yM
yP
2O
7 (1)
(式中、1.7≦x≦2.2、0≦y≦0.5であり、Mは、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、W、V、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)
で表されるピロリン酸コバルトリチウムの製造方法であって、
水溶媒に、有機酸及び水酸化コバルトを添加
及び反応させてコバルトの有機酸塩を得、次いで、リン酸及び水酸化リチウムを添加して、水性原料スラリー(1)を調製する第1工程と、
該水性原料スラリー(1)をメディアミルにより湿式粉砕処理して、原料粉砕処理物を含むスラリー(2)を得る第2工程と、
該原料粉砕処理物を含むスラリー(2)を噴霧乾燥処理して、反応前駆体を得る第3工程と、
該反応前駆体を600℃以上で焼成する第4工程と、
を有することを特徴とするピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明(2)は、前記第1工程の水性原料スラリー(1)又は前記第2工程の原料粉砕処理物を含むスラリー(2)に、更に、M源(Mは、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、W、V、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)を含有させることを特徴とする(1)のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明(3)は、前記原料粉砕処理物を含むスラリー(2)中の固形分の平均粒子径が1.5μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)いずれかのピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明(4)は、前記有機酸がカルボン酸であることを特徴とする請(1)〜(3)いずれかのピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明(5)は、前記有機酸がシュウ酸であることを特徴とする(1)〜(3)いずれかのピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(6)は、前記反応前駆体がコバルトの有機酸塩及びリチウムのリン酸塩を含有することを特徴とする(1)〜(5)いずれかのピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(7)は、更に、前記第4工程を行い得られるピロリン酸コバルトリチウムを、加熱処理する第5(A)工程を有することを特徴とする(1)〜(6)いずれかのピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(8)は、前記第5(A)工程おける加熱処理温度が200〜700℃であることを特徴とする(7)のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(9)は、本発明(1)〜(6)いずれかのピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を行い得られたピロリン酸コバルトリチウムと、加熱分解により炭素が析出する導電性炭素材料源とを混合し、該ピロリン酸コバルトリチウムと該導電性炭素材料源との混合物を得、次いで、該混合物を加熱処理して、該導電性炭素材料源を加熱分解することにより、ピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体を得る第5(B)工程を有することを特徴とするピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、工業的に有利な方法で、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムを得ることができる方法を提供することができる。また、本発明によれば、該ピロリン酸コバルトリチウムと炭素との複合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法は、下記一般式(1):
Li
xCo
1−yM
yP
2O
7 (1)
(式中、1.7≦x≦2.2、0≦y≦0.5であり、Mは、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、W、V、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)
で表されるピロリン酸コバルトリチウムの製造方法であって、
水溶媒に、有機酸及び水酸化コバルトを添加し、次いで、リン酸及び水酸化リチウムを添加して、水性原料スラリー(1)を調製する第1工程と、
該水性原料スラリー(1)をメディアミルにより湿式粉砕処理して、原料粉砕処理物を含むスラリー(2)を得る第2工程と、
該原料粉砕処理物を含むスラリー(2)を噴霧乾燥処理して、反応前駆体を得る第3工程と、
該反応前駆体を600℃以上で焼成する第4工程と、
を有することを特徴とするピロリン酸コバルトリチウムの製造方法である。
【0022】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法により得られるピロリン酸コバルトリチウムは、下記一般式(1):
Li
xCo
1−yM
yP
2O
7 (1)
(式中、1.7≦x≦2.2、0≦y≦0.5であり、Mは、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、W、V、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)
で表されるピロリン酸コバルトリチウムである。
【0023】
一般式(1)の式中のxは、1.7以上2.2以下、好ましくは1.8以上2.1以下である。yは0以上0.5以下、好ましくは0以上0.4以下である。Mは、電池特性を向上させることを目的として必要により含有させる金属元素である。Mは、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、W、V、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示し、Fe、Ni及び
Mnから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0024】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法に係る第1工程は、水溶媒に、有機酸及び水酸化コバルトを添加し、次いで、リン酸及び水酸化リチウムを添加して水性原料スラリー(1)を調製する工程である。
【0025】
水溶媒中に、水酸化コバルト、リン酸及び水酸化リチウムを添加すると、スラリーがケーキ状となり、撹拌等も出来なくなる。本発明者らは、水溶媒に、有機酸、水酸化コバルトを添加し、次いで、リン酸及び水酸化リチウムを添加すると、各原料が均一に分散し、取扱いが容易な水性原料スラリー(1)が得られること。また、該水性原料スラリー(1)は、メディアミルにより湿式粉砕処理が可能なものであることを見出した。
【0026】
第1工程では、先ず、水溶媒に、有機酸及び水酸化コバルトを添加することにより、水酸化コバルトと有機酸とが反応し、コバルトの有機酸塩になる。次いで、このコバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)へ、リン酸及び水酸化リチウムを添加することで、更に、リン酸と水酸化リチウムとが反応し、リチウムのリン酸塩となる。従って、第1工程を行い得られる水性原料スラリー(1)は、少なくともコバルトの有機酸塩と、リチウムのリン酸塩を含むものである。
【0027】
第1工程に係る有機酸は、例えば、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のジカルボン酸、カルボキシル基の数が3であるクエン酸等のカルボン酸が挙げられる。これらのうち、有機酸としては、シュウ酸が、水酸化コバルトとの反応性に優れる点で好ましい。
【0028】
有機酸の添加量は、水酸化コバルト中のコバルト原子に対する有機酸中の炭素原子のモル比(C/Co)が1.5以上となる量である。水酸化コバルト中のコバルト原子に対する有機酸中の炭素原子のモル比(C/Co)が、上記範囲未満だと、Co
3(PO
4)
2・8H
2Oが生成し、スラリーがケーキ状となり、撹拌不能となる傾向がある。また、有機酸の添加量は、スラリーの粘度が安定する点で、水酸化コバルト中のコバルト原子に対する有機酸中の炭素原子のモル比(C/Co)が、1.5〜2.5となる量が好ましく、1.7〜2.3となる量が特に好ましい。
【0029】
水溶媒への水酸化コバルトの添加量は、水溶媒100質量部に対して、5〜30質量部、好ましくは7〜25質量部である。水溶媒への水酸化コバルトの添加量が上記範囲にあることにより、スラリーの粘度が安定する。
【0030】
水溶媒に、有機酸及び水酸化コバルトを添加後、有機酸と水酸化コバルトとを反応させるために、15〜90℃、好ましくは20〜80℃で、30分以上、好ましくは30分〜2時間、撹拌することが好ましい。そして、有機酸と水酸化コバルトとを反応させることにより、少なくともコバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)を得ることができる。
【0031】
コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)の調製において、有機酸及び水酸化コバルトの添加順序は特に制限されないが、水溶媒に有機酸を添加し、次いで、水酸化コバルトを添加することが、スラリーの粘度が安定する点で好ましい。
【0032】
第1工程では、次いで、コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)に、リン酸及び水酸化リチウムを添加する。
【0033】
コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)へのリン酸の添加量は、水性スラリー(A)中のコバルト原子に対するリン酸中のリン原子のモル比(P/Co)が、好ましくは1.7〜2.2、特に好ましくは1.8〜2.1となる量である。水性スラリー(A)中のコバルト原子に対するリン酸中のリン原子のモル比(P/Co)が、上記範囲にあることにより、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムが得られ易くなる。
【0034】
コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)への水酸化リチウムの添加量は、リン酸中のリン原子に対する水酸化リチウム中のリチウム原子のモル比(Li/P)が、好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1となる量である。リン酸中のリン原子に対する水酸化リチウム中のリチウム原子のモル比(Li/P)が上記範囲にあることにより、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムが得られ易くなる。
【0035】
第1工程において、コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)へ、リン酸及び水酸化リチウムを添加すると、リン酸と水酸化リチウムが反応してリチウムのリン酸塩が生成する。第1工程における水性原料スラリー(1)は、リチウムのリン酸塩を含むことが好ましい。第1工程において、リン酸と水酸化リチウムとを反応させるため、15〜90℃、好ましくは20〜80℃で、30分以上、好ましくは30分〜2時間、撹拌することが好ましい。
【0036】
コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)から水性原料スラリー(1)の調製において、コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)へのリン酸及び水酸化リチウムの添加順序は特に制限されないが、コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)にリン酸を添加し、次いで、水酸化リチウムを添加することが、スラリーのpHを酸性側に保持することでスラリー粘度を安定させることができる点で好ましい。
【0037】
このようにして、第1工程において水性原料スラリー(1)が得られるが、本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法では、必要により、第1工程において、水性原料スラリー(1)に、更に、M源(Mは、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、W、V、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を示す。)を含有させることができる。
【0038】
M源としては、例えば、M元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、硝酸塩、リン酸塩が挙げられる。
【0039】
M源の添加量は、水酸化コバルト中のコバルト原子とM源中のM原子の合計のモル比に対するM源中のM原子のモル比(M/(M+Co))が、好ましくは0〜0.5となる量である。なお、第1工程において、水溶媒に更に、M源を添加する場合は、コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)へのリン酸の添加量が、水性スラリー(1)中のコバルト原子とM源中のM原子の総モルに対するリン酸中のリン原子のモル比(P/(Co+M))で、1.8〜2.2、好ましくは1.9〜2.1であることが、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムが得られる点で好ましい。
【0040】
第1工程におけるM源の添加時期は、特に制限されないが、第2工程を行う前のいずれかの時期に、M源を添加し、水性原料スラリー(1)に含有させることができる。
【0041】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法において、第1工程で、先に、水溶媒に、有機酸及び水酸化コバルトを添加し、次いで、リン酸及び水酸化リチウムを添加することにより、各原料が均一に分散し、取扱いが容易であり、また、メディアミルにより湿式粉砕処理が可能な水性原料スラリー(1)が得られる。
【0042】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法に係る第2工程は、第1工程を行い得られる水性原料スラリー(1)をメディアミルにより湿式粉砕処理して、粉砕処理物を含むスラリー(2)を得る工程である。
【0043】
第2工程において、メディアミルにより湿式粉砕を行う際の水性原料スラリー(1)中の固形分濃度は、 5〜40質量%、特に好ましくは10〜35質量%である。メディアミルにより湿式粉砕を行う際の水性原料スラリー(1)中の固形分濃度が上記範囲にあることにより、操作性が良好であり、また、効率的に粉砕処理を行うことができる。このため、第1工程を行った後、必要により、上記の固形分濃度になるように、水性原料スラリー(1)の固形分濃度を調節してから、第2工程において湿式粉砕処理することが好ましい。
【0044】
そして、第2工程では、水性原料スラリー(1)を、メディアミルにより湿式粉砕処理する。第2工程において、水性原料スラリー(1)を、メディアミルにより湿式粉砕処理することにより、水性原料スラリー(1)に含有されている固形分を、微細に粉砕することができるので、優れた反応性を有する反応前駆体を得ることができる。
【0045】
メディアミルとしては、ビーズミル、ボールミル、ペイントシェーカー、アトライタ、サンドミル等が挙げられ、ビーズミルが好ましい。ビーズミルを用いる場合、運転条件やビーズの種類及び大きさは、装置のサイズや処理量に応じて適切に選択される。
【0046】
メディアミルを用いる処理を一層効率的に行う観点から、コバルトの有機酸塩を含む水性スラリー(A)又は水性原料スラリー(1)に分散剤を加えてもよい。分散剤は、スラリーの種類や特性に応じて、適宜選択される。分散剤としては、各種の界面活性剤、ポリカルボン酸アンモニウム塩等が挙げられる。スラリー中の分散剤の濃度は、十分な分散効果が得られる点で、好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0047】
第2工程では、メディアミルを用いる湿式粉砕処理を、粉砕処理物を含むスラリー(2)中の固形分の平均粒子径が、レーザー散乱・回折法により求められるD50で、好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは0.1〜1.2μmとなるまで行う。粉砕処理物を含むスラリー(2)中の固形分の平均粒子径が、上記範囲にあることにより、優れた反応性を有する反応前駆体が得られ易くなる。なお、レーザー散乱・回折法により求められるD50とは、例えば、マイクロトラックベル製のMT3300を用いるレーザー散乱・回折法により求められる粒度分布曲線における体積積算で50%の粒径を指す。
【0048】
このようしてしに、第2工程を行うことにより、粉砕処理物を含むスラリー(2)を得ることができる。
【0049】
このようにして、第2工程を行うことにより、粉砕処理品を含むスラリー(2)を得るが、本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法では、必要により、第2工程の粉砕処理物を含むスラリーに、更に、M源を含有させることできる。なお、第2工程におけるM源の種類及びM源の添加量は、第1工程におけるM源の種類及びM源の添加量と同様である。
【0050】
第2工程におけるM源の添加時期は、特に制限されないが、第3工程を行う前のいずれかの時期に、M源を添加し、粉砕処理品を含むスラリー(2)に含有させることができる。
【0051】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法に係る第3工程は、第2工程を行い得られる粉砕処理物を含むスラリー(2)を噴霧乾燥して、反応前駆体を得る工程である。
【0052】
スラリーの乾燥方法には噴霧乾燥法以外の方法も知られているが、本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法においては、噴霧乾燥法を選択することが有利であるとの知見に基づき、この乾燥方法を採用している。
【0053】
詳細には、噴霧乾燥法により乾燥を行うと、各原料成分を均一に含有し、原料粒子が密に詰まった状態の造粒物が得られることから、本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法では、この造粒物を反応前駆体とし、反応前駆体を後述する第4工程で焼成することにより、X線回折的には単相のピロリン酸コバルトリチウムを得ることができる。
【0054】
第3工程における噴霧乾燥では、所定手段によってスラリーを霧化し、それによって生じた微細な液滴を乾燥させることにより、反応前駆体を得る。スラリーの霧化には、例えば回転円盤を用いる方法と、圧力ノズルを用いる方法がある。第3工程においてはいずれの方法も用いることもできる。
【0055】
第3工程における噴霧乾燥法では、霧化されたスラリーの液滴の大きさと、それに含まれる粉砕処理物の粒子の大きさとの関係が、安定した乾燥や、得られる乾燥粉の性状に影響を与える。詳細には、液滴の大きさに対して粉砕処理物の原料粒子の大きさが小さすぎると、液滴が不安定になり、乾燥を首尾よく行いづらくなる。この観点から、霧化された液滴の大きさは、1〜50μmが好ましく、10〜40μmが特に好ましい。噴霧乾燥装置へのスラリーの供給量は、この観点を考慮して決定することが好ましい。
【0056】
第3工程における噴霧乾燥により得られる反応前駆体は、第4工程で焼成に付されるが、得られるピロリン酸コバルトリチウムの平均粒子径等の粉体特性は、反応前駆体の特性を概ね引き継ぐようになる。このため、第3工程での噴霧乾燥においては、目的とするピロリン酸コバルトリチウムの粒子径の制御の点から、反応前駆体の二次粒子の大きさが、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により求められる粒子径で、1〜50μmとなるように噴霧乾燥を行うことが好ましく、10〜40μmとなるように噴霧乾燥を行うことが特に好ましい。
【0057】
第3工程において、噴霧乾燥装置での乾燥温度を、熱風入口温度が150〜350℃、好ましくは200〜330℃に調整して、熱風出口温度が80〜200℃、好ましくは100〜170℃となるように調整することが、粉体の吸湿を防ぎ粉体の回収が容易になることから好ましい。
【0058】
第3工程を行い得られる反応前駆体は、少なくともコバルトの有機酸塩及びリチウムのリン酸塩を含有するものであることが好ましい。反応前駆体をX線回折分析することにより、反応前駆体中のコバルトの有機酸塩及びリチウムのリン酸塩を確認することができる。反応前駆体に含有されるリチウムのリン酸塩としては、Li(H
2PO
4)が好ましく、また、コバルトの有機酸塩としては、用いる有機酸の種類によっても異なるが、例えば、シュウ酸を用いた場合には、コバルトのシュウ酸塩(Co(C
2O
4)(H
2O)
2)が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、反応過程で副生するコバルトの有機酸塩を含有していてもよい。副生するコバルトの有機酸塩としては、シュウ酸を用いた場合には、例えば、コバルトのギ酸塩(Co(HCOO)
2(H
2O)
2)等が挙げられる。また、M源を含有する反応前駆体は、コバルト及びMとの有機酸の複塩となっていても差し支えない。
【0059】
このようにして、第3工程を行うことにより、第4工程において焼成に付する反応前駆体を得る。
【0060】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法に係るに係る第4工程は、第3工程を行い得られる反応前駆体を焼成して、X線的に単相のピロリン酸コバルトリチウムを得る工程である。
【0061】
第4工程での焼成温度は、600℃以上、好ましくは600〜730℃である。焼成温度が上記範囲であることにより、X線的に単相のピロリン酸コバルトリチウムが得られる。一方、焼成温度が上記範囲未満だと、反応が完結せず、ピロリン酸コバルトリチウムが得られない。
【0062】
第4工程での焼成雰囲気は、大気雰囲気又は不活性ガス雰囲気である。焼成を700℃以上の高温で行う場合は、大気雰囲気中で焼成を行うと溶融状のものが得られ、粉末状のものが得られないため、700℃以上で焼成を行う場合は、不活性ガス雰囲気で焼成を行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等が挙げられ、これらの中、窒素ガスが、安価で工業的に有利になる観点から好ましい。
【0063】
第4工程における焼成時間は、特に制限されず、0.5時間以上、好ましくは2〜20時間である。第4工程では、0.5時間以上、好ましくは2〜20時間焼成を行えば、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムを得ることができる。
【0064】
第4工程では、一旦焼成を行い得られたピロリン酸コバルトリチウムを、必要に応じて、複数回焼成してもよい。
【0065】
第4工程を行い得られるピロリン酸コバルトリチウムを、必要に応じて、解砕処理、又は粉砕処理し、更に分級してもよい。
【0066】
また、本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法では、必要に応じて、第4工程を行い得られるピロリン酸コバルトリチウムに対して、下記の第5(A)工程又は第5(B)工程を行うことができる。
【0067】
第5(A)工程は、第4工程を行い得られるピロリン酸コバルトリチウムに対して、更に加熱処理を施して、ピロリン酸コバルトリチウムに含有される炭素量を調整する工程である。具体的には、第5(A)工程では、第4工程で得られるピロリン酸コバルトリチウムに加熱処理を施して、ピロリン酸コバルトリチウム中の炭素の酸化処理を行う。第5(A)工程における加熱処理は、酸素含有雰囲気下に行うことが好ましい。第5(A)工程では、雰囲気の酸素濃度が、5体積%以上、好ましくは10〜30体積%であることが、炭素を高効率で酸化処理するという観点から好ましい。 第5(A)工程における加熱処
理の温度は、200〜700℃、好ましくは250〜600℃である。第5(A)工程における加熱温度が上記範囲にあることにより、残存する炭素を高効率で酸化処理することができる。 第5(A)工程における加熱処理の時間は、本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法において臨界的ではない。第5工程における加熱処理の時間が長くなるほどピロリン酸コバルトリチウムに含有される炭素の含有量が低くなる。第5工程(A)では、所望の炭素の含有量となるよう、予め適宜好適な条件を設定して加熱処理を行うことが好ましい。
【0068】
第5(B)工程は、第4工程で得られたピロリン酸コバルトリチウムと、加熱分解により炭素が析出する導電性炭素材料源(以下、単に「導電性炭素材料源」とも記載する。)とを混合し、ピロリン酸コバルトリチウムと導電性炭素材料源との混合物を得、次いで、該混合物を加熱処理して、導電性炭素材料源を加熱分解してピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体を得る工程である。
【0069】
導電性炭素材料源としては、少なくとも第5(B)工程で加熱処理することにより加熱分解して炭素が析出するものが用いられる。導電性炭素材料源は、ピロリン酸コバルトリチウムに導電性を付与する成分であり、導電性の炭素とピロリン酸コバルトリチウムとの複合体とすることで、ピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体を正極活物質とするリチウム二次電池は、放電容量やサイクル特性の向上が期待できる。
【0070】
導電性炭素材料源としては、例えば、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ;乾留液化油等の石炭系重質油、常圧残油、減圧残油の直流重質油、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等の分解系重質油の石油系重質油;アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素;フェナジン、ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン;ポリ塩化ビニル;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマー、及びこれらの不溶化処理品;含窒素性のポリアクリロニトリル;ポリピロール等の有機高分子;含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子;グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロース等の糖類などの天然高分子;ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、これらのうち、糖類が工業的に安価に入手でき、また、最終的に得られるピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体を正極活物質とするリチウム二次電池の放電容量やサイクル特性を向上させる観点から好ましい。
【0071】
導電性炭素材料源の配合割合は、ピロリン酸コバルトリチウムに対して導電性炭素材料源中の炭素原子が、0.1〜20.0質量%、好ましくは0.5〜15.0質量%となるように、導電性炭素材料源を添加することがピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体を正極活物質とするリチウム二次電池の放電容量やサイクル特性を向上させる観点から好ましい。
【0072】
第5(B)工程において、ピロリン酸コバルトリチウムと、導電性炭素材料源との混合を、乾式又は湿式で行うことができる。
【0073】
第5(B)工程において、乾式で混合処理を行う方法としては、機械的手段にて行うことが均一な混合物が得られる点で好ましい。乾式混合に用いられる装置としては、均一な混合物が得られるものであれば特に制限はないが、例えば、ハイスピードミキサー、スーパーミキサー、ターボスフェアミキサー、アイリッヒミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、リボンブレンダー、V型混合機、コニカルブレンダー、ジェットミル、コスモマイザー、ペイントシェイカー、ビーズミル、ボールミル等が挙げられる。なお、実験室レベルでは、家庭用ミキサーで十分である。
【0074】
また、第5(B)工程において、湿式で混合処理を行う方法としては、水溶媒にピロリン酸コバルトリチウムと導電性炭素材料源を、固形分含有量が10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%となるように添加し、これを機械的手段で混合してスラリーを調製し、次いで、該スラリーを静置させた状態で乾燥させるか、あるいは、該スラリーを噴霧乾燥処理して乾燥させる等により、ピロリン酸コバルトリチウムと導電性炭素材料源との混合物を得る方法が挙げられる。
【0075】
湿式混合に用いられる装置としては、均一なスラリーが得られるものであれば特に制限はないが、例えば、スターラー、撹拌羽による攪拌機、3本ロール、ボールミル、ディスパーミル、ホモジナイザー、振動ミル、サンドグラインドミル、アトライター及び強力撹拌機等の装置が挙げられる。湿式混合処理は、上記で例示した機械的手段による混合処理に限定されるものではない。なお、湿式混合の際に、界面活性剤をスラリーに添加して混合処理を行ってもよい。
【0076】
次いで、前記のようにして調製したピロリン酸コバルトリチウムと導電性炭素材料源との混合物を加熱処理する。加熱処理を、導電性炭素材料源が加熱分解して炭素を析出させる温度で行う必要があり、加熱温度は、180〜900℃、好ましくは210〜800℃である。加熱処理の加熱温度が上記範囲にあることにより、炭素を粒子表面に均一被覆しながら凝集を抑えることができる。加熱処理の加熱時間は、0.2時間以上、好ましくは0.5〜5時間である。加熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気とすることが、炭素の酸化を抑制することができる点で好ましい。また、本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法における加熱処理では、用いた導電性炭素材料源の融点以上に一度加熱して導電性炭素材料源を溶融し、次いで、上記範囲で加熱処理して導電性炭素材料源から炭素を析出させることが、粒子表面に均一に炭素を被覆させることができる点で好ましい。
【0077】
このようにして本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を得られるピロリン酸コバルトリチウム及びピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体は、X線回折的に単相のピロリン酸コバルトリチウムであることに加えて、SEM観察により求められる平均粒子径が好ましくは10μm以下、特に好ましくは0.05〜5μmであり、BET比表面積が好ましくは0.1m
2/g以上、特に好ましくは0.5〜15m
2/gである。
【0078】
本発明のピロリン酸コバルトリチウムの製造方法を行い得られるピロリン酸コバルトリチウム及びピロリン酸コバルトリチウム炭素複合体は、リチウム二次電池、全固体電池等の正極材として好適に利用される。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
<第1工程>
純水11Lに室温(25℃)でシュウ酸・2水塩1604.5gを加えてスリーワンモーター攪拌機を用いて30分攪拌し、分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム)228gを加えた。次に水酸化コバルト1200gを加えて30分攪拌した。次に85質量%リン酸2922.4gを加えて30分攪拌した。次に水酸化リチウム・1水塩1068.8gを加えて1時間攪拌し水性原料スラリーを得た。
<第2工程>
次いで、この水性原料スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア攪拌型ビーズミルに供給し、3時間混合して湿式粉砕を行った。レーザー散乱・回折法により求められる湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.5μmであった。
<第3工程>
続いて、熱風入口の温度を220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体をX線回折分析したところ、Co(C
2O
4)(H
2O)
2、Li(H
2PO
4)の混合物であることが確認された。反応前駆体のX線回折図を
図1に示す。
<第4工程>
次いで、得られた反応前駆体を、650℃で4時間、窒素雰囲気中で焼成し、黒色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のLi
1.86CoP
2O
7であった。焼成品のX線回折図を
図2に示す。
【0081】
(実施例2)
第4工程において700℃で4時間、窒素雰囲気中で焼成したこと以外は、実施例1と同様に行い、黒色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のLi
1.86CoP
2O
7であった。焼成品のX線回折図を
図3に示す。
【0082】
(比較例1)
第4工程において550℃で4時間、大気雰囲気中で焼成したこと以外は、実施例1と同様に行い、紫色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品はLi
1.86CoP
2O
7とLiCoPO
4の混合物であった。
【0083】
(比較例2)
純水1Lに室温(25℃)で水酸化コバルト1200gを加えてリーワンモーター攪拌機を用いて30分攪拌し、分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム)228gを加えた。次に85質量%リン酸2922.4gを加えたところ紫色のケーキ状となり撹拌不能となった。その後の工程は行えなかった。得られた固形物をX線回折分析したところ、Co
3(PO
4)
2・8H
2Oであった。その結果を
図4に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例3)
実施例1で得られたピロリン酸コバルトリチウムを、350℃で4時間、大気雰囲気中(酸素濃度20体積%)で、加熱処理を行った。
得られた加熱処理品をX線回折分析したところ、単相のLi
1.86CoP
2O
7であった。
【0086】
(実施例4)
実施例1で得られたピロリン酸コバルトリチウムを、700℃で4時間、大気雰囲気中(酸素濃度20体積%)で、加熱処理を行った。
得られた加熱処理品をX線回折分析したところ、単相のLi
1.86CoP
2O
7であった。
【0087】
(実施例5)
第2工程において、メディア攪拌型ビーズミルで、水性原料スラリーを粉砕後、メディア攪拌型ビーズミル内のスラリーに、硝酸アルミニウム9水和物を218g加え、メディア攪拌型ビーズミルでスラリーを撹拌し、第3工程に供するスラリーを得たこと以外は、実施例4と同様にして、Li
1.86CoP
2O
7にAlをモル比Al/Coで0.04で含有させたピロリン酸コバルトリチウムの加熱処理品を得た。
得られた加熱処理品をX線回折分析したところ、異相は観察されず、単相のLi
1.86CoP
2O
7であることを確認した(
図6)。
【0088】
<諸物性の評価>
実施例で得られたピロリン酸コバルトリチウムについて、平均粒子径及びBET比表面積を測定し、その結果を表2に示す。また、実施例1で得られたピロリン酸コバルトリチウムのSEM写真を
図5に示す。
なお、平均粒子径の測定については、走査型電子顕微鏡において倍率1万倍で観察し、任意に抽出した粒子50個以上の平均値を、平均粒子径として求めた。
【0089】
【表2】