(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶部に記憶された前記情報は、前記第1および第2の分圧器の分圧比の第1の誤差と、前記第2および第3の分圧器の分圧比の第2の誤差と、前記第3および第1の分圧器の分圧比の第3の誤差とを含み、
前記補正部は、前記第4の電圧検出器によって検出される前記中性点電圧に前記記憶部に記憶された前記第1〜第3の誤差を乗算することにより、前記第3の三相交流電圧のうちの前記分圧比の誤差に起因する直流成分を求める、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1による電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図1において、この電力変換装置は、インバータ1、交流フィルタ2、操作部3、制御装置4、および出力端子T1〜T3を備える。
【0011】
インバータ1は、制御装置4から供給される制御信号CNTによって制御される。インバータ1は、たとえば、6個のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、それぞれ6個のIGBTに逆並列に接続された6個のダイオードとを含む。制御信号CNTは、それぞれ6個のIGBTをオンおよびオフさせるための6個のゲート信号を含む。6個のゲート信号の各々は、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0012】
インバータ1は、直流電源5から供給される直流電圧VDCを商用周波数の三相パルス信号列Pu,Pv,Pwに変換して出力ノード1a,1b,1cに出力する。直流電源5は、バッテリでもよいし、商用交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する順変換器でもよい。
【0013】
図2は、交流フィルタ2の構成を示す回路図である。
図2において、交流フィルタ2は、リアクトルL1〜L3およびコンデンサC1〜C3を含む。リアクトルL1〜L3の一方端子はそれぞれインバータ1の出力ノード1a〜1cに接続され、それらの他方端子はそれぞれ出力端子T1〜T3に接続される。コンデンサC1〜C3の一方電極はそれぞれ出力端子T1〜T3に接続され、それらの他方電極はともに中性点端子T4に接続される。
【0014】
中性点端子T4と接地電圧GND(基準電圧)のラインとの間には、中性点電圧VNが発生している。中性点電圧VNは、直流電圧であり、電力変換装置が設置される環境によって変動する。中性点電圧VNは、制御装置4によって検出される。
【0015】
交流フィルタ2は、低域通過フィルタであり、インバータ1から出力される三相パルス信号列Pu,Pv,Pwのうちの商用周波数の交流成分を通過させ、スイッチング周波数の信号を遮断する。換言すると、交流フィルタ2は、三相パルス信号列Pu,Pv,Pwを商用周波数の三相交流電圧VU,VV,VW(第1の三相交流電圧)に変換する。
【0016】
三相交流電圧VU,VV,VWは、それぞれ交流電圧Vu,Vv,Vwと、中性点電圧VNとを含む。すなわち、VU=Vu+VN,VV=Vv+VN,VW=Vw+VNである。交流電圧Vu,Vv,Vwの各々は、商用周波数で正弦波状に変化する。交流電圧Vu,Vv,Vwの位相は、120度ずつずれている。三相交流電圧VU,VV,VWの瞬時値は、制御装置4によって検出される。
【0017】
図1に戻って、出力端子T1〜T3には、負荷6が接続される。負荷6は、電力変換装置から供給される三相交流電圧VU,VV,VWによって駆動される。
図3は、負荷6の構成を例示する回路ブロック図である。
図3において、負荷6は、三相変圧器7と、負荷本体部8とを含む。
【0018】
三相変圧器7は、デルタ・デルタ方式、デルタ・スター方式、スター・デルタ方式、およびスター・スター方式のうちのいずれの方式でも構わない。
図3では、デルタ・デルタ方式の三相変圧器7が示されている。
【0019】
三相変圧器7は、1次端子T11〜T13、2次端子T14〜T16、1次巻線7a〜7c、および2次巻線7d〜7fを含む。1次端子T11〜T13は、それぞれ交流フィルタ2を通過した三相交流電圧VU,VV,VWを受ける。2次端子T14〜T16は、負荷本体部8に接続される。
【0020】
1次巻線7a〜7cの一方端子はそれぞれ1次端子T11,T12,T13に接続され、それらの他方端子はそれぞれ1次端子T12,T13,T11に接続される。2次巻線7d〜7fの一方端子はそれぞれ2次端子T14,T15,T16に接続され、それらの他方端子はそれぞれ2次端子T15,T16,T14に接続される。
【0021】
2次端子T14〜T16には、三相交流電圧VU,VV,VWの交流成分Vu,Vv,Vwに応じたレベルの三相交流電圧Va,Vb,Vcが出力される。負荷本体部8は、三相変圧器7から供給される三相交流電圧Va〜Vcによって駆動される。
【0022】
なお、三相変圧器7の1次巻線7a〜7cに三相交流電圧VU,VV,VWが印加されて巻線7a〜7fに電流が流れると、鉄心(図示せず)内に磁束が発生する。鉄心内の磁束に直流成分が発生することを偏磁という。偏磁が発生すると、三相変圧器7の励磁電流が増大し、三相交流電圧VU,VV,VWの波形が劣化したり、三相変圧器7に過電流が流れて電力変換器が破損する恐れがある。したがって、このような電力変換装置では、三相変圧器7において偏磁現象が発生することを防止する必要がある。
【0023】
図1に戻って、操作部3は、電力変換装置の使用者によって操作される複数のスイッチおよび複数のボタン、種々の情報を表示する画像表示部などを含む。電力変換装置の使用者は、操作部3を操作することにより、電力変換装置の電源をオンおよびオフしたり、誤差検出モードおよび運転モードのうちのいずれかのモードを選択することができる。
【0024】
操作部3は、誤差検出モードの実行を指令する場合には誤差検出信号S1を出力し、負荷6の運転を指令する場合には運転指令信号S2を出力し、負荷6の運転の停止を指令する場合には運転停止信号S3を出力する。制御装置4は、操作部3からの信号S1〜S3、三相交流電圧VU,VV,VW、中性点電圧VNなどに基づき、制御信号CNTを生成してインバータ1に与える。誤差検出モードについては後述する。
【0025】
図4は、制御装置4の構成を示すブロック図である。
図4において、制御装置4は、三相分圧器10、線間電圧検出器11、電圧検出器12、LPF(Low Pass Filter)13、演算制御部14、記憶部15、減算部16、および制御部17を含む。
【0026】
三相分圧器10は、出力端子T1〜T3(
図1)に出力される三相交流電圧VU,VV,VWを分圧して三相交流電圧V1〜V3(第2の三相交流電圧)を生成する。線間電圧検出器11は、三相交流電圧V1〜V3の線間電圧V12=V1−V2,V23=V2−V3,V31=V3−V1を検出し、線間電圧V12,V23,V31(第3の三相交流電圧)の検出値を示す三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuを出力する。
【0027】
図5は、三相分圧器10および線間電圧検出器11の構成を示す回路ブロック図である。
図5において、三相分圧器10は、分圧器21〜23を含む。分圧器21は、抵抗素子21a,21bおよびモニタ端子21cを含む。抵抗素子21aの一方端子は交流電圧VU=Vu+VNを受け、その他方端子はモニタ端子21cに接続される。抵抗素子21bの一方端子はモニタ端子21cに接続され、その他方端子は接地電圧GND(基準電圧)を受ける。抵抗素子21a,21bの抵抗値をそれぞれR1,R2とすると、分圧器21の分圧比AはA=R2/(R1+R2)となる。モニタ端子21cには、交流電圧V1=(Vu+VN)Aが出力される。
【0028】
分圧器22は、抵抗素子22a,22bおよびモニタ端子22cを含む。抵抗素子22aの一方端子は交流電圧VV=Vv+VNを受け、その他方端子はモニタ端子22cに接続される。抵抗素子22bの一方端子はモニタ端子22cに接続され、その他方端子は接地電圧GNDを受ける。抵抗素子22a,22bの抵抗値をそれぞれR3,R4とすると、分圧器22の分圧比BはB=R4/(R3+R4)となる。モニタ端子22cには、交流電圧V2=(Vv+VN)Bが出力される。
【0029】
分圧器23は、抵抗素子23a,23bおよびモニタ端子23cを含む。抵抗素子23aの一方端子は交流電圧VW=Vw+VNを受け、その他方端子はモニタ端子23cに接続される。抵抗素子23bの一方端子はモニタ端子23cに接続され、その他方端子は接地電圧GNDを受ける。抵抗素子23a,23bの抵抗値をそれぞれR5,R6とすると、分圧器23の分圧比CはC=R6/(R5+R6)となる。モニタ端子23cには、交流電圧V3=(Vw+VN)Cが出力される。
【0030】
線間電圧検出器11は、電圧検出器24〜26を含む。電圧検出器24は、分圧器21の交流出力電圧V1=(Vu+VN)Aと分圧器22の交流出力電圧V2=(Vv+VN)Bとの差の電圧V12=V1−V2=VuA−VvB+VN(A−B)を検出し、検出した線間電圧V12を示す交流信号Vuvを出力する。
【0031】
電圧検出器25は、分圧器22の交流出力電圧V2=(Vv+VN)Bと分圧器23の交流出力電圧V3=(Vw+VN)Cとの差の電圧V23=V2−V3=VvB−VwC+VN(B−C)を検出し、検出した線間電圧V23を示す交流信号Vvwを出力する。
【0032】
電圧検出器26は、分圧器23の出力電圧V3=(Vw+VN)Cと分圧器21の出力電圧V1=(Vu+VN)Aとの差の電圧V31=V3−V1=VwC−VuA+VN(C−A)を検出し、検出した線間電圧V31を示す交流信号Vwuを出力する。
【0033】
実際には三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuの電圧は線間電圧V12,V23,V31よりも小さいが、ここでは説明の簡単化のため、三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuの電圧は線間電圧V12,V23,V31と同じであるものとする。
【0034】
このように線間電圧V12,V23,V31を検出するのは、中性点電圧VNを除去することにより、インバータ1の制御を容易にするためである。ここで、分圧器21,22,23の分圧比A,B,Cが同一である場合には、線間電圧V12,V23,V31の直流成分VN(A−B),VN(B−C),VN(C−A)がともに0になり、V12=(Vu−Vv)A,V21=(Vv−Vw)A,V31=(Vw−Vu)Aとなり、V12,V23,V31の各々は交流成分だけになる。
【0035】
しかし、実際には、抵抗素子21a,21b,22a,22b,23a,23bの製造ばらつきによって分圧器21,22,23の分圧比A,B,Cが一致せず、分圧比A,B,Cには誤差E1=A−B,E2=B−C,E3=C−Aが発生する。
【0036】
このため、線間電圧V12,V23,V31は、分圧比A,B,Cの誤差E1,E2,E3に起因する直流成分VN×E1,VN×E2,VN×E3を有することとなる。このような線間電圧V12,V23,V31(すなわち交流信号Vuv,Vvw,Vwu)に基づいてインバータ1を制御すると、インバータ1を精度よく制御することができず、三相変圧器7における偏磁現象の発生を防止することができない。
【0037】
そこで、本実施の形態1では、分圧比A,B,Cの誤差E1,E2,E3を検出して記憶しておき、記憶した誤差E1〜E3に中性点電圧VNを乗算して直流成分VN×E1,VN×E2,VN×E3を求め、それらの直流成分VN×E1,VN×E2,VN×E3に基づいて線間電圧V12,V23,V31(すなわち交流信号Vuv,Vvw,Vwu)を補正する。
【0038】
図4に戻って、電圧検出器12は、中性点電圧VNを検出し、その検出値を示す直流信号Vnを出力する。LPF13(直流検出器)は、電圧検出器24〜26から出力される三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuから直流成分VD1〜VD3を抽出して演算制御部14に与える。
【0039】
分圧比A,B,Cの誤差E1,E2,E3を検出する誤差検出モード時には、電力変換装置の使用者は、出力端子T1〜T3(
図1)に負荷6を接続せず、中性点電圧VNが高くなるようにチューニングし、操作部3(
図1)を操作して誤差検出信号S1を演算制御部14に与える。中性点電圧VNが高くなるようにチューニングする方法としては、たとえば、中性点端子T4(
図2)と接地電圧GNDのラインとの間に高抵抗値(たとえば10kΩ)を有する抵抗器を接続する方法がある。
【0040】
この場合、線間電圧V12,V23,V31の直流成分において、分圧比A,B,Cの誤差E1,E2,E3に起因する直流成分VN×E1,VN×E2,VN×E3が支配的になる。上述の通り、三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuと線間電圧V12,V23,V31とが同じ電圧であるので、三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuの直流成分VD1〜VD3を、分圧比A,B,Cの誤差E1,E2,E3に起因する直流成分VN×E1,VN×E2,VN×E3とみなすことができる。
【0041】
誤差検出信号S1に応答して演算制御部14は、信号ENを活性化レベルの「H」レベルにし、制御部17を活性化させてインバータ1を運転させる。また、演算制御部14は、電圧検出器12の出力信号Vnによって示される中性点電圧VNと、LPF13からの直流電圧VD1〜VD3とに基づいて、誤差E1=VD1/VN,E2=VD2/VN,E3=VD3/VNを求め、求めた誤差E1,E2,E3を記憶部15に格納する。演算制御部14は、誤差E1〜E3を記憶部15に格納した後、信号ENを非活性化レベルの「L」レベルにし、制御部17を非活性化させてインバータ1の運転を停止させる。
【0042】
負荷6を運転する運転モード時には、電力変換装置の使用者は、出力端子T1〜T3(
図1)に負荷6を接続し、中性点端子T4を通常の方法で接地し、操作部3(
図1)を操作して運転指令信号S2を演算制御部14に与える。なお、中性点端子T4を通常の方法で接地することは、中性点端子T4と接地電圧GNDのラインとの間に低抵抗値を有する抵抗器を接続することと等価になる。
【0043】
運転指令信号S2に応答して演算制御部14は、信号ENを活性化レベルの「H」レベルにし、制御部17を活性化させてインバータ1を運転させる。また、演算制御部14は、電圧検出器12の出力信号Vnによって示される中性点電圧VNと、記憶部15に記憶された誤差E1,E2,E3とに基づいて、誤差E1,E2,E3に起因する直流電圧VD1=VN×E1,VD2=VN×E2,VD3=VN×E3を求め、それらの直流電圧VD1〜VD3を示す直流信号Vd1〜Vd3を減算部16に与える。
【0044】
実際には直流信号Vd1〜Vd3の電圧は直流電圧VD1〜VD3よりも小さいが、ここでは説明の簡単化のため、直流信号Vd1〜Vd3の電圧は直流電圧VD1〜VD3と同じであるものとする。なお、誤差検出モード時には、直流信号Vd1〜Vd3は0Vにされる。
【0045】
負荷6の運転を停止する場合には、電力変換装置の使用者は、操作部3(
図1)を操作して運転停止信号S3を演算制御部14に与える。運転停止信号S3に応答して演算制御部14は、信号ENを非活性化レベルの「L」レベルにし、制御部17を非活性化させてインバータ1の運転を停止させる。
【0046】
減算部16は、線間電圧検出器11から与えられる三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuから、演算制御部14から与えられる直流信号Vd1〜Vd3を減算して、三相交流信号Vuvc=Vuv−Vd1,Vvwc=Vvw−Vd2,Vwuc=Vwu−Vd3を生成する。演算制御部14および減算部16は、三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuを補正して三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwuc(第4の三相交流電圧)を生成する補正部を構成する。
【0047】
制御部17は、信号ENが活性化レベルの「H」レベルである場合に活性化され、減算部16から与えられる三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucに残存する直流成分がなくなるように制御信号CNTを生成してインバータ1に与える。信号ENが非活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部17は非活性化されて制御信号CNTの生成を停止し、インバータ1の運転を停止する。
【0048】
図6は、制御部17の構成を示すブロック図である。
図6において、制御部17は、直流成分検出器30、電圧指令部31、および制御信号発生部32とを含む。直流成分検出器30は、減算部16(
図5)から与えられる三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucの直流成分Vdc1,Vdc2,Vdc3をそれぞれ検出する。
【0049】
電圧指令部31は、三相電圧指令信号VC1,VC2,VC3を生成する。電圧指令信号VC1〜VC3の各々は、正弦波状である。電圧指令信号VC1〜VC3の位相は、120度ずつずれている。電圧指令部31は、直流成分Vdc1,Vdc2,Vdc3がなくなるように、それぞれ電圧指令信号VC1,VC2,VC3の波形を制御する。
【0050】
制御信号発生部32は、信号ENが活性化レベルの「H」レベルである場合に活性化され、電圧指令信号VC1〜VC3と三角波信号との高低を比較し、比較結果に基づいて複数(たとえば6個)のPWM信号を生成し、それらのPWM信号を制御信号CNTとしてインバータ1に出力する。信号ENが非活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御信号発生部32は非活性化されて制御信号CNTの生成を停止し、インバータ1の運転を停止する。
【0051】
次に、この電力変換装置の使用方法および動作について説明する。この電力変換装置では、まず分圧器21〜23(
図5)の分圧比A〜Cの誤差E1=A−B,E2=B−C,E3=C−Aを検出して記憶部15(
図4)に格納する誤差検出モードが実行される。
【0052】
電力変換装置の使用者は、出力端子T1〜T3(
図1)に負荷6を接続せず、中性点電圧VNが高くなるようにチューニングし、操作部3を操作して誤差検出信号S1を演算制御部14に与え、制御部17にインバータ1を運転させる。
【0053】
直流電源5から供給される直流電圧VDCは、インバータ1および交流フィルタ2によって三相交流電圧VU=Vu+VN,VV=Vv+VN,VW=Vw+VNに変換される。三相交流電圧VU,VV,VWは、分圧器21〜23(
図5)によって分圧される。
【0054】
分圧器21〜23によって生成された三相交流電圧V1=(Vu+VN)A,V2=(Vv+VN)B,V3=(Vw+VN)Cの線間電圧V12=V1−V2,V23=V2−V3,V31=V3−V1が電圧検出器24〜26によって検出され、線間電圧V12,V23,V31を示す三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuが生成される。三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuは、それぞれVuv=VuA−VvB+VN×E1、Vvw=VvB−VwC+VN×E2、Vwu=VwC−VuA+VN×E3となる。
【0055】
三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuの直流成分VD1=VN×E1,VD2=VN×E2,VD3=VN×E3がLPF13によって抽出されて演算制御部14に与えられる。中性点電圧VNが電圧検出器12によって検出され、中性点電圧VNを示す信号Vnが演算制御部14に与えられる。
【0056】
演算制御部14は、直流成分VD1〜VD3を中性点電圧VNで除算して分圧比A〜Cの誤差E1〜E3を求め、求めた誤差E1〜E3を記憶部15(
図4)に格納する。これにより、負荷6の運転が可能となる。
【0057】
負荷6を運転する場合、電力変換装置の使用者は、出力端子T1〜T3(
図1)に負荷6を接続し、中性点端子T4を通常の方法で接地し、操作部3(
図1)を操作して運転指令信号S2を演算制御部14に与え、制御部17にインバータ1を運転させる。
【0058】
直流電源5から供給される直流電圧VDCは、インバータ1および交流フィルタ2によって三相交流電圧VU=Vu+VN,VV=Vv+VN,VW=Vw+VNに変換されて負荷6に供給され、負荷6が運転される。三相交流電圧VU,VV,VWは、分圧器21〜23(
図5)によって分圧される。
【0059】
分圧器21〜23によって生成された三相交流電圧V1=(Vu+VN)A,V2=(Vv+VN)B,V3=(Vw+VN)Cの線間電圧V12=V1−V2,V23=V2−V3,V31=V3−V1が電圧検出器24〜26によって検出され、線間電圧V12,V23,V31を示す三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuが生成される。
【0060】
中性点電圧VNが電圧検出器12によって検出され、中性点電圧VNを示す信号Vnが演算制御部14に与えられる。演算制御部14は、記憶部15(
図4)に記憶された分圧比A〜Cの誤差E1〜E3に中性点電圧VNを乗算し、分圧比A〜Cの誤差E1〜E3に起因する直流電圧VD1〜VD3(すなわち直流信号Vd1〜Vd3)を求める。
【0061】
線間電圧検出器11から与えられる三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuから、演算制御部14から与えられる直流信号Vd1〜Vd3が減算部16によって減算されて、三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucが生成される。制御部17は、減算部16から与えられる三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucに残存する直流成分がなくなるように制御信号CNTを生成してインバータ1に与えることにより、三相変圧器7における偏磁現象の発生を防止する。
【0062】
負荷6の運転を停止する場合には、電力変換装置の使用者は、操作部3(
図1)を操作して運転停止信号S3を演算制御部14に与え、制御部17を非活性化させてインバータ1の運転を停止させる。
【0063】
以上のように、この実施の形態1では、分圧器21〜23の分圧比A〜Cの誤差E1〜E3を記憶部15に記憶しておき、中性点電圧VNと誤差E1〜E3とを乗算して誤差E1〜E3に起因する直流成分Vd1〜Vd3を求め、その直流成分Vd1〜Vd3を三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuから除去して三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucを生成し、その三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucの直流成分がなくなるようにインバータ1を制御する。したがって、分圧器21〜23の分圧比A〜Cが同一でない場合でも、インバータ1を精度よく制御することができる。
【0064】
図7は、実施の形態1の変更例となる電力変換装置の要部を示すブロック図であって、
図4と対比される図である。
図7を参照して、この電力変換装置が実施の形態1の電力変換装置と異なる点は、制御装置4が制御装置4Aで置換されている点である。制御装置4Aは、制御装置4のLPF13を除去し、演算制御部14を演算制御部14Aで置換したものである。
【0065】
この電力変換装置では、分圧器21〜23の分圧比A〜Cの誤差E1〜E3が予め求められて、記憶部15に格納されている。たとえば、分圧器21〜23に含まれる抵抗素子21a,21b,22a,22b,23a,23bの抵抗値R1〜R6を検出し、検出した抵抗値R1〜R6から分圧器21〜23の分圧比A=R2/(R1+R2),B=R4/(R3+R4),C=R6/(R5+R6)を求め、求めた分圧比A〜Cから誤差E1=A−B,E2=B−C,E3=C−Aを求め、求めた誤差E1〜E3を記憶部15に書き込む。
【0066】
したがって、この電力変換装置では、分圧比A〜Cの誤差E1〜E3を検出して記憶部15に格納する誤差検出モードは実行されず、誤差検出信号S1は導入されない。演算制御部14Aは、記憶部15に記憶された分圧比A〜Cの誤差E1〜E3に中性点電圧VNを乗算し、分圧比A〜Cの誤差E1〜E3に起因する直流電圧Vd1〜Vd3を求めて減算部16に与える。この変更例でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0067】
[実施の形態2]
図8は、この発明の実施の形態2による電力変換装置の構成を示すブロック図であって、
図1と対比される図である。
図8を参照して、この電力変換装置が実施の形態1の電力変換装置と異なる点は、電流検出器41〜43が追加され、制御装置4が制御装置4Bと置換されている点である。
【0068】
電流検出器41〜43は、それぞれ交流フィルタ2と出力端子T1〜T3との間に設けられ、交流フィルタ2から負荷6に流れる三相交流電流IU,IV,IWをそれぞれ検出し、検出値を示す信号φ41〜φ43を制御装置4Bに出力する。
【0069】
制御装置4Bは、操作部3からの信号S1〜S3、三相交流電圧VU,VV,VW、中性点電圧VN、電流検出器41〜43の出力信号φ41〜φ43などに基づき、制御信号CNTを生成してインバータ1に与える。
【0070】
図9は、制御装置4Bの構成を示すブロック図であって、
図4と対比される図である。
図9を参照して、制御装置4Bが制御装置4と異なる点は、演算制御部14および制御部17がそれぞれ演算制御部14Bおよび制御部17Aと置換され、LPF44が追加されている点である。LPF44(第1の直流検出器)は、電流検出器41〜43の出力信号φ41〜φ43を受け、受けた信号φ41〜φ43の直流成分ID1〜ID3を演算制御部14Bに通過させる。
【0071】
分圧比A,B,Cの誤差E1,E2,E3に関連する情報を検出する誤差検出モード時には、電力変換装置の使用者は、出力端子T1〜T3(
図1)に負荷6を接続し、操作部3(
図1)を操作して誤差検出信号S1を演算制御部14Bに与える。
【0072】
誤差検出信号S1に応答して演算制御部14は、まず、信号ENを活性化レベルの「H」レベルにし、制御部17Aを活性化させてインバータ1を運転させる。この場合、演算制御部14Bは直流信号Vd1〜Vd3を出力しない。したがって、三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuは、そのまま三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucとなる。制御部17Aは、三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucの直流成分VD1=VN×E1,VD2=VN×E2,VD3=VN×E3がなくなるようにインバータ1を制御する。
【0073】
また、電流検出器41〜43の出力信号φ41〜φ43の直流成分ID1〜ID3がLPF44によって抽出されて演算制御部14Bに与えられる。この直流成分ID1〜ID3は、三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwuc(すなわち三相交流信号Vuv,Vvw,Vwu)の直流成分VD1〜VD3がなくなるようにインバータ1を制御したことに起因しており、分圧器21〜23の分圧比A〜Cの誤差E1〜E3に起因している。
【0074】
誤差E1〜E3が大きいほど三相交流信号φ41〜φ43の直流成分ID1〜ID3が大きくなる。したがって、誤差E1〜E3は、直流成分ID1〜ID3の関数f1(ID1),f2(ID2),3(ID3)で表される。
【0075】
E1=K1×ID1,E2=K2×ID2,E3=K3×ID3と近似すると、K1=E1/ID1=VD1/(ID1×VN),K2=E2/ID2=VD2/(ID2×VN),K3=E3/ID3=VD3/(ID3×VN)となる。
【0076】
次に、演算制御部14Bは、指令信号S4を制御部17Aに出力する。指令信号S4に応答して制御部17Aは、電流検出器41〜43の出力信号φ41〜φ43の直流成分ID1〜ID3が所定割合(たとえば1/2)に減少するようにインバータ1を制御する。信号φ41〜φ43の直流成分ID1〜ID3が減少すると、三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuの直流成分VD1〜VD3が現れる。直流成分VD1〜VD3は、LPF13(第2の直流検出器)によって抽出されて演算制御部14Bに与えられる。
【0077】
また、中性点電圧VNが電圧検出器12によって検出され、中性点電圧VNを示す信号Vnが演算制御部14Bに与えられる。演算制御部14Bは、直流成分VD1〜VD3と、直流成分ID1〜ID3と、中性点電圧VNと、上記数式とに基づいて、係数K1〜K3を求め、それらの係数K1〜K3を記憶部15に格納する。演算制御部14Bは、係数K1〜K3を記憶部15に格納した後、信号ENを非活性化レベルの「L」レベルにし、制御部17Aを非活性化させてインバータ1の運転を停止させる。これにより、負荷6の運転が可能となる。
【0078】
図10は、制御部17Aの構成を示すブロック図であって、
図6と対比される図である。
図10を参照して、制御部17Aが制御部17(
図6)と異なる点は、電圧指令部31が電圧指令部31Aで置換されている点である。
【0079】
電圧指令部31Aが電圧指令部31と異なる点は、指令信号S4に応答して、電流検出器41〜43の出力信号φ41〜φ43の直流成分ID1〜ID3が所定割合(たとえば1/2)に減少するように、それぞれ電圧指令信号VC1,VC2,VC3の波形を制御する点である。制御部17Aの他の動作は、制御部17と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0080】
負荷6を運転する場合、電力変換装置の使用者は、操作部3(
図1)を操作して運転指令信号S2を演算制御部14Bに与える。演算制御部14Bは、信号ENを活性化レベルの「H」レベルにして、制御部17Aにインバータ1を運転させる。
【0081】
直流電源5から供給される直流電圧VDCは、インバータ1および交流フィルタ2によって三相交流電圧VU=Vu+VN,VV=Vv+VN,VW=Vw+VNに変換されて負荷6に供給され、負荷6が運転される。三相交流電圧VU,VV,VWは、分圧器21〜23(
図5)によって分圧される。
【0082】
分圧器21〜23によって生成された三相交流電圧V1=(Vu+VN)A,V2=(Vv+VN)B,V3=(Vw+VN)Cの線間電圧V12=V1−V2,V23=V2−V3,V31=V3−V1が電圧検出器24〜26によって検出され、線間電圧V12,V23,V31を示す三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuが生成される。
【0083】
中性点電圧VNが電圧検出器12によって検出され、中性点電圧VNを示す信号Vnが演算制御部14Bに与えられる。演算制御部14Bは、記憶部15(
図4)に記憶された係数K1〜K3に直流成分ID1〜ID3を乗算して分圧器21〜23の分圧比A〜Cの誤差E1=K1×ID1,E2=K2×ID2,E3=K3×ID3を求める。さらに演算制御部14Bは、誤差E1〜E3に中性点電圧VNを乗算し、分圧比A〜Cの誤差E1〜E3に起因する直流電圧VD1〜VD3(すなわち直流信号Vd1〜Vd3)を求める。
【0084】
線間電圧検出器11から与えられる三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuから、演算制御部14Bから与えられる直流信号Vd1〜Vd3が減算部16によって減算されて、三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucが生成される。制御部17Aは、減算部16から与えられる三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucに残存する直流成分がなくなるように制御信号CNTを生成してインバータ1に与えることにより、三相変圧器7における偏磁現象の発生を防止する。
【0085】
以上のように、この実施の形態2では、係数K1〜K3を記憶部15に記憶しておき、記憶した係数K1〜K3と、三相交流信号φ41〜φ43の直流成分ID1〜ID3と、中性点電圧VNとに基づいて、誤差E1〜E3に起因する直流信号Vd1〜Vd3を求め、その直流信号Vd1〜Vd3を三相交流信号Vuv,Vvw,Vwuから除去して三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucを生成し、その三相交流信号Vuvc,Vvwc,Vwucの直流成分がなくなるようにインバータ1を制御する。したがって、分圧器21〜23の分圧比A〜Cが同一でない場合でも、インバータ1を精度よく制御することができる。
【0086】
なお、この実施の形態2では、E1=f1(ID1),E2=f2(ID2),E3=f3(ID3)をE1=K1×ID1,E2=K2×ID2,E3=K3×ID3と近似し、係数K1,K2,K3を記憶部15に格納したが、これに限るものではなく、関数f1(ID1),f2(ID2),f3(ID3)を記憶部15に格納しても構わない。この場合、演算制御部14Bは、記憶部15(
図4)に記憶された関数f1(ID1),f2(ID2),f3(ID3)と直流成分ID1〜ID3とに基づいて、分圧器21〜23の分圧比A〜Cの誤差E1=f1(ID1),E2=f2(ID2),E3=f3(ID3)を求める。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この電力変換装置では、インバータ(1)および交流フィルタ(2)によって生成される第1の三相交流電圧を第1〜第3の分圧器(21〜23)によって分圧して第2の三相交流電圧を生成し、第2の三相交流電圧の線間電圧である第3の三相交流電圧と第1の三相交流電圧の中性点電圧(VN)とを検出する。そして、それらの検出結果と記憶部(15)の記憶内容とに基づいて、第3の三相交流電圧のうちの第1〜第3の分圧器の分圧比の誤差(E1〜E3)に起因する直流成分を求め、その直流成分を第3の三相交流電圧から除去して第4の三相交流電圧を生成し、第4の三相交流電圧の直流成分がなくなるようにインバータを制御する。