【文献】
渡辺紀元 他,稚内層珪藻頁岩の除菌特性,工業用水,日本,社団法人 日本工業用水協会,2005年 2月20日,第557号 2月号,64−70頁
【文献】
渡辺紀元 他,稚内層珪藻頁岩の除菌特性,第39回研究発表会講演要旨,社団法人 日本工業用水協会,2004年,79-81
【文献】
平石輝男,乳牛に安全で牛床の除菌と細菌増殖を抑制する 稚内珪藻頁岩粉末を利用した敷料衛生剤「菌キャッチャー」,DAIRYMAN,日本,2012年,Vol. 62, No. 1,100−101頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
稚内珪藻土とも称される稚内珪藻頁岩(地質学名:稚内層珪質頁岩)は、自然素材でありながら優れた調湿機能があることから、これまでに壁材のような住宅用建材に使用され、最近では消臭機能を利用した消臭製品などにも使用されて、その機能を活用した商品が作り出されている。
【0003】
稚内珪藻頁岩は、新第三紀中新世後期(約1200万年前〜約700万年前)に、深海に堆積した微細なプランクトンである珪藻の遺骸(非昌質シリカが主成分)が次第に圧密を受けて硬化した細かく割れやすい硬質頁岩である。
【0004】
北海道立資源研究所(現北海道立総合研究機構地質研究所)が実施した調査によると、稚内珪藻頁岩は稚内を中心とした道北天北地方に多く分布している。
【0005】
稚内珪藻頁岩の細孔半径は、
図1に示すように、1〜10nm(ナノメートル:1nmは100万分の1mm)という微細孔(通称:メソ孔)を多く有している。それに対して、秋田・石川・岡山・大分など他の地域で産出される珪藻土においては細孔半径が50nm以上の大きな細孔(通称:マクロ孔)が主である。
【0006】
また、稚内珪藻頁岩の一般的なデータによると、稚内珪藻頁岩は全細孔容積が約0.215cm
3/g、比表面積が約128.8m
2/gである。それに対して前述の他の地域で産出される珪藻土の全細孔容積と比表面積は、稚内珪藻頁岩の約1/4〜1/6である(北海道立工業試験場と北海道立地下資源調査所の共同研究成果報告書(1994年)より作成)。
【0007】
ところで、近年、畜産物の安全性を向上させるために、個々の畜産農場における衛生管理を向上させる取り組みが行われている。通常の衛生管理としては、家畜の健康維持を主目的にして、畜産農場の清浄度の維持向上と家畜に有害な細菌数レベルを下げるための管理がなされている。
【0008】
従来使用している消毒薬は、病原体に応じて効果的に実施できる反面、人体や家畜に有害な消毒薬もあり、取り扱いに注意しなければならない。そこで、人体や家畜に無害で、有害な細菌を殺菌もしくは滅菌機能をもつ環境改良材が必要とされている。
【0009】
その一つに、自然素材である稚内珪藻頁岩を使用した畜産場の環境改良材が製品化されている。なお、珪藻土は、戦時中の食糧難の時代にお菓子や食品の増量剤に使われたこともあり、人畜無害の自然素材である。
【0010】
この製品は、特許文献1に記載されているように、糞尿などによって不衛生になりやすい畜舎の微生物増殖抑制材として、稚内珪藻頁岩を粒体および/または粉体にして家畜用床敷材として使用されている。
【0011】
しかしながら、前記特許文献1の請求項3によれば、この畜舎の微生物増殖抑制材である家畜用床敷材は、「微生物を保持しつつ増殖を抑制する材」としての機能を有するものであり、微生物自体を殺菌もしくは滅菌する機能を有していない。
【0012】
また、この製品は滅菌処理を施していないために、稚内珪藻頁岩の採掘時からすでに付着・存在している細菌は、粒体および/または粉体に粉砕してもそのまま製品に残存している。したがって、この製品を家畜床敷材に散布することは、同時に製品に残存している細菌をも撒き散らしていることになる。
【0013】
(財)日本食品分析センターで、標準寒天平板培養法を用いて滅菌処理を施していない稚内珪藻頁岩を培養したところ、6.1×10
2/gの一般細菌数(生菌数)を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0033】
稚内珪藻頁岩を用いた環境改良材を作成するには、まず、稚内珪藻頁岩を採掘し、この採掘した稚内珪藻頁岩を、公知の方法にて粉砕して、稚内珪藻頁岩の粒体および/または粉体を形成する。ウィキペディアによると、この粒体と粉体は、粒の集合体もしくは粉の集合体で、粉は粒よりも小さく、粒は肉眼でその姿形を識別できる程度の大きさのものをいう。粒と粉を大雑把に区分すれば、10
−2m〜10
−4m(数mm〜0.1mm)を粒体とし、10
−4m〜10
−9m(原子の大きさの数倍まで)を狭義の粉体とする。
【0034】
つぎに、このようにして粒体および/または粉体とされた稚内珪藻頁岩を滅菌処理する。この滅菌処理として
は、乾熱滅菌処理を行う。この乾熱滅菌処理の原理は、粒体および/または粉体とされた稚内珪藻頁岩を160〜200℃で、30分〜2時間加熱することにより、稚内珪藻頁岩に付着している微生物などの酵素やタンパク質を熱変性させ、失活させて滅菌するというものである。
【0035】
この乾熱滅菌処理に使用される乾熱滅菌装置の一例としては、前面に開閉可能な扉を有する公知の乾燥電気炉がある。この乾燥電気炉の内容積は、間口1.2×奥行1.0×高1.0mで、乾燥許容温度は、150〜200℃である。また、電気炉の内部には、上下方向に間隔を隔てて複数段の棚板が配設されている。この上下の棚の間隔は、各棚に角バットを並べても加熱された空気が各角バット上に十分行き渡るように設定されている。
【0036】
前記乾燥電気炉による乾熱滅菌は、直接加熱法である。すなわち、乾燥電気炉の内壁には電熱コイルが取り付けられており、電熱コイルの加熱により、内部空気温度が所定の温度に上昇・保持される構造になっている。また、乾燥電気炉で滅菌処理できる稚内珪藻頁岩は、1回で300〜500kgである。
【0037】
乾熱滅菌処理の方法は、まず、乾燥電気炉外において粒体および/または粉体となるように粉砕した稚内珪藻頁岩を業務用大型角バットの底面に1.0〜1.5cmの厚みで敷き詰める。この比較的薄い厚さに稚内珪藻頁岩を敷き詰める理由は上方からの熱を稚内珪藻頁岩の中にまんべんなく伝達するためである。
【0038】
そして、乾燥電気炉内部の棚の上に稚内珪藻頁岩を敷き詰めた角バットを並べる。棚に並べた角バットの位置を確認後、乾燥電気炉の扉を閉めて内部の空気を加熱する。乾燥電気炉の内部温度が所定の温度(160〜200℃)に到達後、内部の温度を30分〜2時間保持して粒体および/または粉体とされた稚内珪藻頁岩を乾熱滅菌する。加熱温度と加熱時間は、その乾燥される稚内珪藻頁岩の湿気具合により調整する。
【0039】
なお、効率よく乾燥させるためには稚内珪藻頁岩を攪拌しながら乾燥させることも考えられるが、このためには、密閉構造とされている乾燥電気炉の中で稚内珪藻頁岩を乾燥させなければならないこと、耐熱構造の撹拌装置を設けなければならないことなど、特殊な構造が必要になる。
【0040】
また、家畜用の環境改良材の使用量は、牛舎の規模で異なるが、数百kgの稚内珪藻頁岩を使用しなければならない場合もあり、したがって、低コストでなければならないから、既設の乾燥電気炉を使用することが望ましい。
【0041】
滅菌処理を施していない粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部に付着・存在している細菌を除菌するために、乾熱滅菌器を使用して滅菌処理をし、粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部を無菌状態にした。
【0042】
この無菌状態になった稚内珪藻頁岩の抗菌効果を試験するために、無菌状態の粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を容器に小分けし、各々に一般生菌の代表菌である大腸菌および黄色ブドウ球菌の増殖用試験菌液を添加混合し、時間経過による各菌の状態変化を観察した。
【0043】
試験は、(財)日本食品分析センターで実施した。試験菌は、普通寒天培地を用いて35℃±1℃で18〜24時間培養した後、普通ブイヨン培地に浮遊させて、菌数が10
3〜10
4/mLとなるように調整し、試験菌とした。試験操作は、検体4gに試験菌液4mLを添加し、混合したものを試料とした。試料を25℃±1℃で保存し、6時間、24時間および48時間後に試料をSCDLP培地で直ちに10倍に希釈し、試料中の生菌数を菌数測定用培地を用いて測定した。なお、試料をSCDLP培地で10倍に希釈することにより、検体の影響を受けずに、生菌数が測定できることを予備試験により確認した。
【0044】
なお、対照として検体未添加の試験菌液を用いて同様に試験し、開始時についても生菌数を測定した。この試験結果を表1に示す。
【0046】
表1の試験結果に示すように、
乾熱滅菌処理した珪藻頁岩に添加混合した増殖用試験菌の大腸菌および黄色ブドウ球菌は、時間が経過するにしたがって減菌し続け、48時間後にはほぼ滅菌状態、すなわち、無菌状態になった(
図3a−g、
図4a−gに時間ごとの生菌数測定平板を示す)。
【0047】
添加混合した大腸菌は、添加時に6.6×10
3個あった(
図3a)ものが、6時間後
には6.8×10
2個の10.3%に減菌し(
図3b)、24〜48時間後には40〜50個(
図3d、f)とほぼ滅菌状態になっている。
【0048】
同じく添加混合した黄色ブドウ球菌は、添加時に1.0×10
4個あった(
図4a)ものが、6時間後には8.5×10
2個の8.5%に減菌し(
図4b)、24時間後では3.6×10
2個の3.6%に減菌し(
図4d)、48時間後では<10(試験菌検出せず:
図4f)と滅菌状態になっている。
【0049】
これらに対して、稚内珪藻頁岩を添加しない増殖用試験菌のみの容器(未添加)は、時間経過にしたがって各々の菌は増殖し続け、48時間後には大腸菌が4.0×10
9個の6.06×10
5倍に(
図3g)、黄色ブドウ球菌が2.1×10
9個の2.1×10
5倍に(
図4g)、急増している。
【0050】
つぎに、乾熱滅菌処理をしていない自然状態の稚内珪藻頁岩に同様の試験を行った結果を表2に示す(
図5a−g、
図6a−gに時間ごとの生菌数測定平板を示す)。
【0052】
乾熱滅菌処理していない自然状態の稚内珪藻頁岩に添加した増殖用試験菌は、6時間後で各々わずかに減菌する(
図5b、
図6b)が、その後は増殖し続け、48時間後には大腸菌が3.7×10
6個の6.17×10
2倍に(
図5f)、黄色ブドウ球菌が5.3×10
6個の6.02×10
2倍に(
図6f)、増加している。
【0053】
ちなみに、稚内珪藻頁岩を添加しない増殖用試験菌のみの容器(未添加)は、時間経過にしたがって各々増殖し続け、48時間後には大腸菌が4.5×10
9個の7.0×10
5倍に(
図5g)、黄色ブドウ球菌が8.8×10
8個の1.0×10
5倍に(
図6g)、急増している。
【0054】
なお、滅菌処理した稚内珪藻頁岩の試験と滅菌処理していない稚内珪藻頁岩の試験は日時が異なるために、各々の菌の数値に若干の違いが生じている。
【0055】
つぎに、国内で産出されている珪藻土で、大分産珪藻土を乾熱滅菌処理して、同様の試験を行った結果を表3に示す(
図7a−g、
図8a−gに時間ごとの生菌数測定平板を示す)。
【0057】
滅菌処理した大分産珪藻土に添加した増殖用試験菌は、時間経過にしたがって各々増殖し続け、48時間後には大腸菌が3.4×10
9個の4.59×10
5倍に、黄色ブドウ球菌が9.4×10
8個の1.08×10
5倍に、増加している。
【0058】
ちなみに、増殖用試験菌のみの容器(未添加)は、時間経過にしたがって各々増殖し続け、48時間後には大腸菌が4.5×10
9個の6.08×10
5倍に(
図7f)、黄色ブドウ球菌が2.4×10
9個の2.76×10
5倍に(
図8f)、急増している。
【0059】
なお、滅菌処理した大分産珪藻土の試験は、表1、表2の稚内珪藻頁岩の試験と日時が異なるために、各々の菌の数値に若干の違いが生じている。
【0060】
これらの試験結果をまとめて
図2に示す。
【0061】
この
図2は、縦軸が対数単位の増殖用試験菌の生菌数(/g)、横軸が開始時から計測時までの時間を示す。
【0062】
図2から明らかなように、乾熱滅菌処理した稚内珪藻頁岩は時間経過にしたがって生菌数が減菌し続け、48時間後には分析的には滅菌といえる状態になっている。それに対して、乾熱滅菌処理しない稚内珪藻頁岩は、乾熱滅菌処理した大分産珪藻土と同様、時間経過にしたがって生菌数が増殖し続けている。その違いは歴然としている。
【0063】
つぎに、他の細菌やウイルスについての試験結果について説明する。前述した大腸菌や黄色ブドウ球菌の試験のときと同様、滅菌処理を施していない粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部に付着・存在している細菌を除菌するために、乾熱滅菌器を使用して滅菌処理をし、粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部を無菌状態にした。
【0064】
この無菌状態になった稚内珪藻頁岩の抗菌効果を試験するために、無菌状態の粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を容器に小分けし、各々に一般生菌の代表菌であるサルモネラ菌の増殖用試験菌液を添加混合し、時間経過による各菌の状態変化を観察した。
【0065】
試験は(財)日本食品分析センターで実施した。試験菌は、普通寒天培地を用いて35℃±1℃で18〜24時間培養した後、普通ブイヨン培地に浮遊させて、菌数が10
3〜10
4/mLとなるように調整し、試験菌とした。試験操作は、検体4gに試験菌液4mLを添加し、混合したものを試料とした。試料を25℃±1℃で保存し、6時間、24時間および48時間後に試料をSCDLP培地で直ちに10倍に希釈し、試料中の生菌数を菌数測定用培地を用いて測定した。なお、試料をSCDLP培地で10倍に希釈することにより、検体の影響を受けずに、生菌数が測定できることを予備試験により確認した。
【0066】
対照として検体未添加の試験菌液を用いて同様に試験し、開始時についても生菌数を測定した。この試験結果を表4に示す。
【0068】
表4の試験結果に示すように、滅菌処理した珪藻頁岩に添加混合した増殖用試験菌のサルモネラ菌は、時間が経過するにしたがって減菌し続け、48時間後には3.4%に減菌した(
図9a−gに時間ごとの生菌数測定平板を示す)。
【0069】
添加混合したサルモネラ菌は、添加時に3.8×10
3個あった(
図9a)ものが、6時間
後には1.4×10
3個に減菌し(
図9b)、24時間後には6.8×10
2個(
図9d)、48時間後には1.3×10
2個(
図9f)の3.4%に減菌し、ほぼ滅菌状態になっている。
【0070】
これに対して、稚内珪藻頁岩を添加しない増殖用試験菌のみの容器(未添加)は、時間経過にしたがってサルモネラ菌は増殖し続け、添加時に3.8×10
3個あった(
図9a)ものが、6時間後には8.0×10
4個(
図9c)、12時間後には1.3×10
9個(
図9e)、48時間後には2.7×10
9個(
図9g)に急増している。
【0071】
なお、表4の数値は、表1−3の試験結果とは、各種条件が多少異なっているので、数値にも差が出ている。
【0072】
つぎに、ウイルス不活性化試験について説明する。前述した大腸菌や黄色ブドウ球菌の試験のときと同様、滅菌処理を施していない粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部に付着・存在している細菌を除菌するとともにウイルスを不活性化するために、乾熱滅菌器を使用して滅菌処理をし、粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部を無菌状態にした。
【0073】
この無菌状態になった稚内珪藻頁岩のウイルス不活性効果を試験するために、無菌状態の粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を容器に小分けし、そのうちの1つの検体(0.5g)に、細胞培養が不可能なノロウイルスの代替ウイルスとして広く使用されているネコカリシウイルスのウイルス液(0.5mL)を添加、混合して試料とした。このウイルス液は、細胞培養後のウイルス培養液を遠心分離して得られた上澄み精製水で10倍希釈して得られたものである。また、使用細胞としては、CRFK細胞を用いた。
【0074】
試験は(財)日本食品分析センターで実施した。試験操作は、前記試料を室温で保存し、6時間および24時間後に試料を細胞維持培地(2%牛胎仔血清加イーグルMEM培地)で直ちに10倍に希釈し、試料のウイルス感染価を測定した。なお、試料を細胞維持培地で10倍に希釈することにより、検体の影響を受けずにウイルス感染価が測定できることを予備試験により確認した。また、細胞増殖培地としては、10%牛胎仔血清加イーグルMEM培地を使用した。
【0075】
対照として検体未添加のインフルエンザウイルスのウイルス液を用いて同様に試験し、開始時、6時間および24時間後に試料を細胞維持培地で直ちに10倍に希釈し、試料のウイルス感染価を測定した。この試験結果を表5に示す。
【0076】
つぎに、インフルエンザウイルスの不活性効果について説明する。まず、粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部に付着・存在している細菌を除菌するとともにウイルスを不活性化するために、乾熱滅菌器を使用して滅菌処理をし、粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩の内部および外部を無菌状態にした。
【0077】
この無菌状態になった稚内珪藻頁岩のウイルス不活性化効果を試験するために、無菌状態の粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を容器に小分けし、そのうちの1つの検体(0.5g)に、インフルエンザウイルスのウイルス液(0.5mL)を添加、混合して試料とした。このウイルス液は、細胞培養後のウイルス培養液を遠心分離して得られた上澄み精製水で10倍希釈して得られたものである。また、使用細胞としてはMDCK(NBL−2)細胞 ATCC CCL−34株を用いた。
【0078】
試験は(財)日本食品分析センターで実施した。試験操作は、前記試料を室温で保存し、6時間および24時間後に試料を細胞維持培地(MEM培地1000mL、10%NaHCO
3、L−グルタミン(30g/L)9.8mL、100×MEM用ビタミン液30mL、10%アルブミン20mL、0.25%トリプシン20mL)で直ちに10倍に希釈し、試料のウイルス感染価を測定した。なお、試料を細胞維持培地で10倍に希釈することにより、検体の影響を受けずにウイルス感染価が測定できることを予備試験により確認した。
【0079】
対照として検体未添加のインフルエンザウイルスのウイルス液を用いて同様に試験し、開始時、6時間および24時間後に試料を細胞維持培地で直ちに10倍に希釈し、試料のウイルス感染価を測定した。この試験結果を表5に示す。
【0081】
このように、滅菌処理した稚内珪藻頁岩のウイルス不活性化作用は、稚内珪藻頁岩を滅菌処理することによって初めて付加された新しい機能であり、滅菌処理した稚内珪藻頁岩がウイルスを不活性化させる機能は固有の機能であることは明らかである。
【0082】
この滅菌処理した稚内珪藻頁岩が大腸菌や黄色ブドウ球菌を殺菌もしくは滅菌する機能を応用して、大腸菌や黄色ブドウ球菌を含む一般生菌を殺菌もしくは滅菌する環境改良材を以下に示す。
【実施例1】
【0083】
粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を滅菌処理して畜産用環境改良材として使用する実施例について説明する。
【0084】
畜産物の安全性を向上させるために、個々の畜産農場では、農場の入口や畜舎周辺の消毒および畜舎内の消毒などの衛生対策に取り組んでいる。特に、畜舎内の衛生管理は家畜の健康維持に重要な要素である。
【0085】
そこで、家畜の衛生管理の代表例として、乳牛、肉牛用の牛舎内外の環境改良材に滅菌処理した稚内珪藻頁岩を使用した例を示す。
【0086】
食品の安全性を高めるために、乳牛や肉牛を飼育する牛舎内外の安全・衛生管理が重要である。牛の健康を維持するには牛舎内外を清潔かつ快適に保つことが必要であるが、日々の排せつ物である糞尿は環境を悪化させる最大の要因である。すなわち、糞尿からはアンモニアガスが発生し、また、糞尿には食中毒の原因になる大腸菌や黄色ブドウ球菌の食中毒菌が含まれている。
【0087】
一般的である繋ぎ牛舎の構造は、牛舎の長手方向に牛床が並び、牛床の片側が給飼槽、その反対側が糞尿溜になっている。
【0088】
牛床には、餌を採食した牛がゆっくりと横になって反芻できるような快適な環境が必要で、その多くは洗浄しやすいコンクリート床の上にワラなどの敷料を敷いている。
【0089】
この敷料が少なかったり、交換頻度が少ないと、牛の糞尿によってぬかるみ状態になり、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの増殖の原因になる。また、牛に付着した糞が牛の移動によって撒き散らされることになり、それは糞の中に介在する大腸菌や黄色ブドウ球菌を撒き散らすことになる。また、牛の後肢に付着した糞の汚れが乳房から乳頭に拡がり、乳頭から乳房炎の原因菌が侵入する要因にもなる。
【0090】
通常、牛への給餌は朝夕2回行われている。また給餌時間以外でも、牛は給飼槽に残っている餌を食べ続けている。餌を食べ、水を飲めば、牛は糞尿を排せつする。排せつ物である糞尿は主に糞尿溜に溜まるが、同時に牛床の敷料の上にも排せつしたり飛び散ったりして、敷料を汚してしまうのである。
【0091】
したがって、牛舎内外の衛生を保つには、糞尿溜の糞尿をこまめに除去し、糞尿で汚れた牛床の敷料もこまめに交換し、通路や周辺を清掃するなどして、牛舎内外を清潔にしなければならない。
【0092】
従来、牛舎全体を消毒する際には、糞尿や汚れた敷料を除去した後、糞尿溜や牛床や通路を中心に逆性石鹸や消石灰などの消毒薬を全体的に散布している。散布作業は、作業前に牛を牛舎の外に退去させ、作業時にはゴーグルやマスクなどの保護具を着用するなど、消毒作業が大がかりになっている。また、消毒薬によっては人や牛に有害なものもあり、取り扱いに注意しなければならない。特に消石灰は、牛の乳房に炎症を起こすことがあるので、牛を牛舎に入れる前に消石灰を掃き出すか、敷料を厚めに敷くなどの注意が必要である。
【0093】
牛の飼育環境を快適に保つためには糞尿で汚れた敷料を頻繁に交換し、牛床や糞尿溜や通路も頻繁に清掃しなければならない。その度ごとに、消毒薬を散布することは大変な重労働になる。
【0094】
そこで、日常の清浄度の維持・向上をはかり、牛床や敷料そして糞尿溜や通路での細菌を抑制する環境改良材として、人や牛に無害で簡単に散布することができ、かつ湿気と臭いの吸収に優れ、菌を保持し抑制する作用を有する自然素材で安価な稚内珪藻頁岩が用いられている。
【0095】
粉砕して粒体および/または粉体にした稚内珪藻頁岩を、牛床や敷料そして糞尿溜や通路に散布することで、湿気や臭いを吸収すると同時に、糞尿に含まれている大腸菌や黄色ブドウ球菌などの一般生菌を保持し抑制することができる。
【0096】
しかしながら、稚内珪藻頁岩自体は、細菌の増殖を阻止する抑制作用のみで、細菌を殺菌もしくは滅菌することができなかった。
【0097】
したがって、安全・衛生管理面からの牛舎内外の消毒作業は、従来通り、同じ頻度で行わなければならなかった。
【0098】
それに対し、本発明の
製造方法である稚内珪藻頁岩を乾熱滅菌処理することによって付加された大腸菌や黄色ブドウ球菌を含む一般生菌を殺菌もしくは滅菌する環境改良材は、散布した場所の大腸菌や黄色ブドウ球菌などを含む一般生菌を殺菌もしくは滅菌するという画期的な機能を有している。
【0099】
滅菌処理した粒体および/または粉体からなる稚内珪藻頁岩を環境改良材として牛床や敷料、糞尿溜や通路に散布することで、糞尿に含まれている大腸菌や黄色ブドウ球菌などを含む一般生菌を殺菌もしくは滅菌することができる。
【0100】
細菌は水分や養分があれば増殖し続けることから、水洗い清掃後の牛床や通路、糞尿溜に滅菌処理した稚内珪藻頁岩からなる粒体および/または粉体の環境改良材を散布することで残存している細菌を殺菌・滅菌し、かつ湿気と臭いを吸収することができる。
【0101】
また、清掃前に敷料や通路が汚れ始めると菌の拡散と増殖が進行するので、適宜散布して除菌効果を高めることができる。
【0102】
そして、清掃作業時に衣類に糞尿が付着しても、作業後の衣類を滅菌処理した稚内珪藻頁岩を粒体もしくは粉体にした環境改良材で包むことで付着した細菌を除菌することができ、細菌の拡散防止に役立てることができる。
【0103】
なお、清掃によって集められた糞尿や汚れた敷料などは堆肥場に排出され、肥料に利用されている。堆肥場に山積みされた糞尿などは、糞尿内の大腸菌や黄色ブドウ球菌などを含む一般生菌を増殖させ、発酵して悪臭を放つことになる。そこで、排出時もしくは山積み途中で滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩からなる環境改良材を散布したり排出物に混ぜ合わせたり覆うことで、堆肥場での殺菌・滅菌を行うことができ、アンモニア臭に代表される塩基性臭の悪臭も除臭することができる。
【0104】
これによって日常の清浄度が向上し、牛舎内外が清潔かつ快適に保たれ、牛の健康維持に大いに貢献することができる。また、これによって牛舎内外の消毒作業は、頻度を大幅に低減することができ、作業者の労働環境の改善とコスト削減に貢献することができる。
【実施例2】
【0105】
粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を滅菌処理して食品の防腐剤・食品加工施設の環境改良材として使用する実施例について説明する。
【0106】
保存食品の基本は、食品を腐らせないことが重要である。食品が腐る要因の大部分は細菌やカビなどの微生物による腐敗である。腐敗の元であるこの微生物を除去するために、本発明の稚内珪藻頁岩を滅菌処理することによって付加された大腸菌や黄色ブドウ球菌を含む一般生菌を殺菌もしくは滅菌する環境改良材を用いることができる。
【0107】
滅菌処理した稚内珪藻頁岩の粒体もしくは粉体からなる防腐剤としての環境改良材で食品を覆うことで、食品に付着している細菌を殺菌・滅菌し、かつ外部から侵入してくる細菌を除菌することができる。これによって、食品を腐らせずに長く保存することができる。
【0108】
また、この防腐剤としての環境改良材を容器に収納して食品の保存室内に配置することで、室内の空気中に浮遊する細菌が防腐剤に付着し、この付着した細菌を防腐剤が殺菌・滅菌し、食品を腐らせずにより長く保存することができる。
【0109】
なお、防腐剤として、滅菌処理した稚内珪藻頁岩の粒体および/または粉体からなる環境改良材を、滅菌処理した稚内珪藻頁岩としての機能を喪失しないようにして固体化して使用してもよい。
【0110】
さらに、環境改良材の単独使用以外にも、粒体および/または粉体からなる滅菌処理した稚内珪藻頁岩をフィルムや紙のようなシート材に塗布したり、あるいは布のようなシート材に含浸させることにより、このシート材で滅菌させる対象物を包装することで応用範囲を広げることができる。
【0111】
また、細菌は低温庫や冷蔵庫内の低温状態では増殖せず、食品の腐敗は抑制される。しかし、食品に付着している細菌や冷蔵庫内の細菌は死滅していない。そこで、低温庫や冷蔵庫の内部に滅菌処理した稚内珪藻頁岩の粒体および/または粉体からなる防腐剤(固体化された防腐剤も含む)としての環境改良材を配置することで、庫内の空気中に浮遊する細菌でこの防腐剤に付着した細菌を殺菌・滅菌し、冷蔵した食品を長く保存することができる。同時に、低温・冷蔵保存の食品を上記の防腐剤としての環境改良材で覆えば、より殺菌・滅菌効果を発揮する。
【0112】
一方、食品の安全性を確保するために、食品加工施設の衛生管理が重要である。食品加工施設内の空気中に浮遊する細菌を抗菌・除菌し、アンモニア臭に代表される塩基性臭の不快な臭いを除臭するために、施設内の空気を清浄化するフィルタや内壁材などに滅菌処理した粒体および/または粉体からなる稚内珪藻頁岩あるいは固体化した稚内珪藻頁岩からなる環境改良材を用いることができる。なお、これらの単独使用以外にも、これらを塗布したりまたは付着や含浸させた布やフイルムや紙なども用いることができる。
【0113】
また、施設内の清掃時に、滅菌処理した稚内珪藻頁岩の粒体もしくは粉体にした環境改良材を床などに散布することで、床などに付着している細菌を抗菌・除菌し、アンモニア臭に代表される塩基性臭を除臭することができる。
【0114】
また、細菌や臭いが付着した作業員の衣類などを、滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩からなる環境改良材により覆うことで、衣類などに付着している細菌を抗菌・除菌し、アンモニア臭に代表される塩基性臭を除臭することができる。なお、これらの単独使用以外にも、これらを塗布したりまたは付着や含浸させた布やフイルムや紙なども用いることができる。
【0115】
さらに、本発明の
製造方法により製造される環境改良材は、食品保管施設でも同様の効果がある。その他にも、本発明の
製造方法により製造される環境改良材は、施設周辺に散布したり、食品の廃棄場やゴミ置き場など、細菌やカビなどの微生物の発生で食品が腐敗しやすい場所にも効果を発揮する。
【0116】
さらにまた、本発明の
製造方法により製造される環境改良材は、医療用抗菌・除菌材として使用することができる。
【0117】
病院や高齢者養護施設などの医療施設は、室内の空気中に存在する細菌やウイルスや不快な臭いを軽減・排除するための工夫がなされている。
【0118】
医療施設の空調システムの抗菌・除菌材として、滅菌処理した粒体および/または粉体からなる稚内珪藻頁岩からなる環境改良材を、施設内の空気を清浄化するフィルタに用いて、空気中の細菌やウイルスを抗菌・除菌することができる。同時に、本発明の
製造方法により製造される環境改良材は、アンモニア臭に代表される塩基性臭を除臭することができる。
【0119】
病室や廊下やロビーなどの内装材に滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩からなる環境改良材を用いて、院内の細菌やウイルスを抗菌もしくは除菌することができる。同時に、アンモニア臭に代表される塩基性臭を除臭することができる。この場合、内装材として、滅菌処理した粒体および/または粉体あるいは固定材の稚内珪藻頁岩からなる環境改良材の単独での使用以外にも、この稚内珪藻頁岩を塗布したりまたは付着や含浸させた布やフイルムや紙などを環境改良材として用いることができる。
【0120】
また、医療用マスクや着衣に滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を取り付けて、抗菌性・除菌性を高めることができる。
【0121】
さらに、本発明の
製造方法により製造される環境改良材は住宅用抗菌・除菌材として使用することができる。快適な居住環境を維持・向上させるために、滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩を用いることができる。
【0122】
さらにまた、室内の空調機や空気清浄機のフィルタに滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩からなる環境改良材を用いて、室内の空気を抗菌・除菌して清浄化することができる。同時に、アンモニア臭に代表される塩基性臭を除臭することができる。
【0123】
また、台所やゴミ置き場、ペットの飼育場所など、細菌の発生しやすい空間に滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩からなる環境改良材を配置することで、細菌の発生を抑制し、除菌することができる。
【0124】
さらに、本発明の
製造方法により製造される環境改良材は、ゴミ集積の抗菌・除菌材として使用することができる。
【0125】
ゴミの集積は、町の生活機能を維持するために必要不可欠な作業である。生ゴミは腐敗しやすく、特に集積された生ゴミには細菌が発生しやすく、臭いも強烈である。
【0126】
滅菌処理した粒体および/または粉体の稚内珪藻頁岩としての環境改良材を、ゴミ置き場内の床に散布したり、ゴミ収集車の荷物室内に散布したり、また集積工場内部に散布することで、細菌の発生を抑制し、除菌することができる。本発明の
製造方法により製造される環境改良材をゴミの上から覆うように散布すればより殺菌・滅菌効果を発揮することができる。同時に、アンモニア臭に代表される塩基性臭を除臭することができる。
【0127】
上記以外にも、自動車の抗菌・除菌フィルタ、教育・保育施設や給食施設の抗菌・除菌剤、食堂やレストランなどの飲食店の抗菌・除菌剤、宿泊所の抗菌・除菌剤、ペットショップや動物病院の抗菌・除菌剤、その他の産業や生活の環境で抗菌・除菌を必要とする、あらゆる分野で本発明の
製造方法により製造される環境改良材は、有効に環境を改良するものとして活用することができる。
【0128】
前述したように、本発明の
製造方法により乾熱滅菌処理された稚内珪藻頁岩からなる環境改良材により、大腸菌や黄色ブドウ球菌を含む一般生菌を確実に殺菌もしくは滅菌することができるし、ウイルスのような非細胞生物などの微生物を確実に不活性化することができる。
【0129】
したがって、本発明の環境改良材は、前述した例示に限定されるものではなく、広範な分野に適用されて、有効な効果を奏することができる。