(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1筐体、前記第1クローラベルト、および第1回転体を有する第1クローラモジュールは、前記走行装置の幅方向における長さが、前記走行装置の高さ方向における長さよりも短く構成されている請求項1または2に記載の走行装置。
前記第1筐体および/または前記第2筐体は係合孔および/または係合突起を有しており、前記案内部には係合孔および/または係合突起を有しており、前記第1筐体および/または前記第2筐体は、前記案内部に係合している請求項1〜7のいずれか一項に記載の走行装置。
前記第2筐体、前記第2クローラベルト、および第2回転体を有する第2クローラモジュールと前記第1クローラモジュールと前記本体は、互いに独立して防塵防水性を有している請求項3〜8のいずれか一項に記載の走行装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ロボットシステムを用いる場合、作業者が室内に上がり込んで該ロボットシステム本体を床下点検口(床下収納庫)から床下空間に進入させ、床上から遠隔により該ロボットシステムの制御が行われている。この作業を行うために、作業者は事前に戸建てや集合住宅の住人またはオーナーと作業日程や作業時間の調整を綿密に行う必要があった。また、一般に他人を室内に入れて作業させること自体、住人にとってストレスを伴うこともあることから、特に家庭の主婦や単身者にとっては負担が大きかった。
【0006】
本発明は上記の事情に着目してなされたものであって、その目的は、作業者が室内(屋内)に上がり込んで作業することなく、室外(屋外)において安全、且つ、効率的に行うことができる防蟻剤放出用の走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得た本発明の走行装置は、遠隔操作される走行装置であって、第1クローラベルトと、該第1クローラベルトの内側にある第1回転体と、第2クローラベルトと、該第2クローラベルトの内側にある第2回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置されている本体と、少なくとも前記第1回転体に接続される第1回転モータと、を有しており、前記第1回転モータの回転軸は、前記第1回転体の回転軸に対して垂直な面に平行(10度以内のズレを有する場合を含む)であるところに要旨を有する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記第1回転モータの回転軸と、前記走行装置の直進方向のなす角度の大きさが10度以内である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記第1回転モータを収容している第1筐体と、前記第2回転体に接続される第2回転モータと、前記第2回転モータを収容している第2筐体と、をさらに有しており、前記本体の底部には、前記第1筐体および/または前記第2筐体の形状に沿う案内部が形成されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記第1筐体、前記第1クローラベルト、および第1回転体を有する第1クローラモジュールが、前記走行装置の幅方向における長さが、前記走行装置の高さ方向における長さよりも短く構成されている。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記第1クローラモジュールは、前記走行装置の幅方向における長さが80mm以下である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記第1筐体の高さ方向の中心位置が、前記第1クローラベルトの高さ方向の中心位置よりも高い位置にある。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記本体の上に分離可能に形成されている天板と、該天板上に分離可能に形成されている防蟻剤ノズルとをさらに有している。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記本体と、前記第1回転体と、前記第2回転体とがそれぞれ分離可能に構成されている。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記第1筐体および/または前記第2筐体は係合孔および/または係合突起を有しており、前記案内部には係合孔および/または係合突起を有しており、前記第1筐体および/または前記第2筐体は、前記案内部に係合している。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、前記走行装置は、前記第2筐体、前記第2クローラベルト、および第2回転体を有する第2クローラモジュールと前記第1クローラモジュールと前記本体は、互いに独立して防塵防水性を有している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部から床下空間へ搬入することができる防蟻剤放出用の走行装置を提供できる。これにより、人体に有害な防蟻剤を放出する走行装置を、作業者が家屋室内に上がり込んで、床下点検口(床下収納庫)から床下空間に進入させるという作業を行う必要がない。したがって、家屋の住人やオーナーに対して、事前の作業日程や作業時間の調整を綿密に行う必要がなく、作業者が作業自体に集中することが可能となり、作業効率を向上させることができる。また、家屋の住人やオーナーにとって、見知らぬ他人が室内に上がり込んで作業するというストレスを貯めることもない。さらに、人体に有害な防蟻剤の放出装置を室内に持ち込んで作業を行う必要がないことから、家屋の住人やオーナーは防蟻剤に触れることもなく、安心して当該作業を依頼できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、より詳細な実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態のみに限定されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る走行装置11と、第1クローラモジュール70aを示す斜視図である。(a)は走行装置11の分解図、(b)は第1クローラモジュール70aの内部透視図を示す。第1クローラモジュール70aは、第1筐体50a、第1クローラベルト19a、および第1回転体18aを有するものである。
【0022】
図1(a)に示す通り、本発明の走行装置11は、第1クローラベルト19aと、第1クローラベルト19aの内側にある第1回転体18aと、第2クローラベルト19bと、第2クローラベルト19bの内側にある第2回転体18bとを備えている。更に走行装置11は、第1回転体18aと第2回転体18bとの間に配置される本体12を備えている。更に走行装置11は、遠隔操作されるようになっている。
【0023】
図1(b)に示す通り、走行装置11は、第1回転体18aに接続される第1回転モータ40aを備えている。走行装置11は、更に第1回転モータ40aを収容する第1筐体50aを備えていても良い。
【0024】
図1(b)に示す通り、第1回転モータ40aの回転軸Xは、第1回転体18aの回転軸Yに対して垂直な面に平行になっている。本発明の走行装置11は、第1回転モータ40aの回転軸Xが、第1回転体18aの回転軸Yに対して垂直な面に平行である点に最大の特徴がある。第1回転モータ40aは、回転軸X方向の長さが長いものである。そのため、回転軸Xを第1回転体18aの回転軸Yに対して垂直な面に平行にすることにより、第1クローラモジュール70aの走行装置11の幅方向(回転軸Y方向)の長さを短くすることができる。その結果、走行装置11を家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部から床下空間へ搬入し易くすることができる。
【0025】
第1回転モータ40aの回転軸Xは、第1回転体18aの回転軸Yに対して垂直な面に平行であるが、10度以内のズレを有していても良い。この角度の誤差は、好ましくは8度以下、より好ましくは6度以下、更により好ましくは4度以下である。
【0026】
第1回転モータ40aの回転軸Xと、走行装置11の直進方向Pのなす角度の大きさは10度以内であることが好ましい。上記角度が10度以内であることにより、第1筐体50aの高さ方向における長さを短くし易くすることができる。上記角度は、より好ましくは8度以下、更に好ましくは6度以下、更により好ましくは4度以下である。
【0027】
図1(b)に示す通り、走行装置11は、少なくとも第1回転体18aに接続される第1回転モータ40aを備えるものである。第1回転体18aは、例えば、回転方向を変えることが可能なベベルギアやクラウンギア等の傘歯車等を介して、第1回転モータ40aの回転トルクが供給されるようになっていれば良い。
【0028】
第1回転モータ40aは、例えば電気モータが挙げられる。なお木製の建材に向かって放出する防蟻剤は引火して爆発する可能性があるため、防爆の観点からは、ブラシレスモータが好ましい。
【0029】
図1(a)に示す通り、走行装置11は、更に第2回転体18bに接続される第2回転モータ40bを備えることが好ましい。第1回転モータ40aと第2回転モータ40bをそれぞれ第1回転体18aと第2回転体18bに接続して、第1回転体18aと第2回転体18bを原動ホイールとすることにより、第1回転体18aと第2回転体18bを互いに独立して駆動制御することができる。これにより、走行装置11はまっすぐに前進や後進、旋回しながら前進や後進、さらに、左右逆回転させてその場で旋回する超信地旋回も行うことが可能である。更にこの構成により、例えば、床下地面に凹凸が存在する場合や進行を妨げる障害物等が存在する場合においても、走行装置11を自在に進退させることができる。そのため走行装置11は、第1回転モータ40aと第2回転モータ40bとを備えることが好ましい。
【0030】
また、走行装置11は、第3回転体18c、第4回転体18dを備え、それぞれに回転モータが接続されていても良い。すなわち3回転体18c、第4回転体18dを原動ホイールとしても良い。
【0031】
第1回転体18a、第2回転体18bは、それぞれ第1クローラベルト19a、第2クローラベルト19bとトルク伝達が可能となっていれば良く、例えば、第1回転体18a、第2回転体18bに突起が設けられ、第1クローラベルト19a、第2クローラベルト19bにはこれら突起に係合する係合穴が形成されていても良い。
【0032】
第1クローラベルト19a、第2クローラベルト19bは、例えばゴムクローラベルトが挙げられる。この場合、ゴム材中に無端状スチールベルト、無端状ワイヤ、不織布等の抗張材を埋め込んでも良い。
【0033】
第1回転体18a〜第4回転体18dはホイールであり、樹脂や金属等により形成される。第1回転体18a〜第4回転体18dは、軽量化の観点からは樹脂により形成されることが好ましい。
【0034】
図1(a)に示す通り、走行装置11は、第1回転モータ40aを収容する第1筐体50aと、第2回転モータ40bを収容する第2筐体50bとを備えることが好ましい。これにより、第1回転モータ40aと第2回転モータ40bを保護することができる。更に第1筐体50aと第2筐体50bに、バッテリー、通信線、電源線等を収容することもできる。
【0035】
図1(a)に示す通り、走行装置11は、本体12の上に天板20を備えることが好ましい。天板20の上には、走行装置11の用途に応じて様々な機器を配置することができ、例えば、撮影機15a、15b、防蟻剤ノズル、照明機、アンテナ、送受信機等を配置することができる。
【0036】
図1(a)に示す通り、本体12と、第1回転体18aと、第2回転体18bとはそれぞれ分離可能に構成されていることが好ましい。すなわち、第2筐体50b、第2クローラベルト19b、および第2回転体18bを有する第2クローラモジュール70bと、第1クローラモジュール70aと、本体12とは、それぞれ分離可能に構成されていることが好ましい。更に、天板20、防蟻剤ノズル等を備える場合、これらも分離可能に構成されていることが好ましい。これにより、予め走行装置11を分解して、開口部から床下空間へ搬入することができる。またこれにより、機体の一部が破損しても機体全体が使用不能となることを回避することができ、破損したユニットを交換するだけで良いため迅速な修理が可能となる。更に他の機体の一部のユニットを補修部品として使用することもできる。
【0037】
天板20が分離可能に構成されていれば、天板ユニットを他の機能を発揮するユニットと交換するだけで、走行装置11を他の用途に用いることができる。そのため、本体12と、第1クローラモジュール70aと、第2クローラモジュール70bと、天板20とはそれぞれ分離可能に構成されていることがより好ましい。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係る走行装置11を示す図である。(a)は走行装置11を分解したときの正面図、(b)は走行装置11の正面図、(c)は走行装置11の平面図、(d)は走行装置11の側面図を示す。
【0039】
図2(a)、(b)に示す通り、本体12の底部12Aには、第1筐体50aと第2筐体50bの形状に沿う案内部60a、60bが形成されていることが好ましい。案内部60a、60bは、第1筐体50aと第2筐体50bの形状に沿うため、予め分解された走行装置11を床下空間に搬入して手作業で組立てるときに位置決めのガイドとして機能する。その結果、分解された走行装置11を組立て易くすることができる。また、本体12に案内部60a、60bを形成することにより、第1筐体50aと第2筐体50bに案内部を形成する必要がなくなるため、第1クローラモジュール70aの幅方向の長さと第2クローラモジュール70bの幅方向の長さを短くすることができる。
【0040】
案内部60a、60bの形状は、第1筐体50aと第2筐体50bの形状に沿っていれば特に限定されず、例えば、板状、柱状、棒状等が挙げられる。案内部60a、60bの走行装置11の幅方向における長さは、それぞれ第1筐体50a、第2筐体50bの走行装置11の幅方向における長さの1/10以上であることが好ましく、より好ましくは2/10以上、更に好ましくは3/10以上である。これにより、案内部60a、60bと第1筐体50a、第2筐体50bとを係合し易くすることができる。一方、案内部60a、60bの走行装置11の幅方向における長さは、床下空間に搬入し易くするために、それぞれ第1筐体50a、第2筐体50bの走行装置11の幅方向における長さの9/10以下であることが好ましく、より好ましくは8/10以下、更に好ましくは7/10以下である。
【0041】
更に、
図2(a)、(b)に示す通り、案内部60a、60bには、係合孔61a、61bが形成されていることが好ましい。この係合孔61a、61bは、第1筐体50a、第2筐体50bにそれぞれ設けられた係合突起62a、62bと係合することが可能である。また係合孔61a、61bに限定されず、案内部60a、60bには、例えば係合突起が形成されていても良い。この場合は、第1筐体50aと第2筐体50bに係合孔を設ければ良い。また案内部60a、60bと第1筐体50a、第2筐体50bのそれぞれに係合孔と係合突起の両方が形成されていても良い。
【0042】
すなわち、第1筐体50aおよび/または第2筐体50bは係合孔61a、61bおよび/または係合突起62a、62bを有しており、案内部60a、60bには係合孔61a、61bおよび/または係合突起62a、62bを有しており、第1筐体50aおよび/または第2筐体50bは、案内部60a、60bに係合していても良い。
【0043】
本体12と、第1筐体50aと第2筐体50bとを結合させる方法は、特に限定されず、例えば、ねじ、磁石、着脱し易い両面テープ等の接着部材等を用いて結合させることができる。分解し易さの観点からは、磁石や接着部材を用いることが好ましい。また、天板20と、第1筐体50aと第2筐体50bとの結合も、同じく、ねじ、磁石、着脱し易い両面テープ等の接着部材等を用いて結合させることができる。
【0044】
図2(a)、(b)に示す通り、第1クローラモジュール70aは、走行装置11の幅方向における長さWが、走行装置11の高さ方向における長さH1よりも短く構成されていることが好ましい。これにより、第1クローラモジュール70aを開口部から床下空間へ搬入し易くすることができる。
【0045】
第1クローラモジュール70aの走行装置11の幅方向における長さWは、好ましくは80mm以下、より好ましくは75mm以下、更に好ましくは70mm以下である。幅方向における長さWは、第1回転モータ40や第1回転体18aのサイズを考慮すると、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上、更に好ましくは60mm以上である。
【0046】
第1クローラモジュール70aの走行装置11の高さ方向における長さH1は、床下地面の段差を考慮すると、好ましくは100mm以上、より好ましくは120mm以上、更により好ましくは140mm以上である。一方、開口部から搬入し易くする観点からは、高さ方向における長さH1は、好ましくは500mm以下、より好ましくは400mm以下、更に好ましくは300mm以下、更により好ましくは200mm以下である。
【0047】
なお第2クローラモジュール70bの各構成の好ましいサイズ等は、第1クローラモジュール70aと同様である。
【0048】
本体12の走行装置11の高さ方向における長さH2は、第1クローラモジュール70aの走行装置11の幅方向における長さWと同等以下であることが好ましい。これにより、本体12を開口部から搬入し易くすることができる。長さH2は、好ましくは80mm以下、より好ましく75mm以下、更に好ましくは70mm以下である。一方、本体12に収容することが可能なビデオエンコーダ等のサイズを考慮すると、長さH2は、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上、更に好ましくは60mm以上である。
【0049】
天板20と撮影機15a、15b等を備える天板ユニットの走行装置11の高さ方向における長さH3は、第1クローラモジュール70aの走行装置11の幅方向における長さWよりも短いことが好ましい。これにより、天板ユニットを搬入し易くすることができる。長さH3は、好ましくは70mm以下、より好ましく60mm以下、更に好ましくは50mm以下である。一方、撮影機等のサイズを考慮すると、長さH3は、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上、更に好ましくは40mm以上である。
【0050】
図2(a)、(b)では、第1筐体50aの高さ方向の中心位置C1は、第1クローラベルト19aの高さ方向の中心位置N1よりも高い位置にある。これにより第1筐体50aを地面から離れた位置に配置することができるため、例えば、床下地面に凹凸が存在する場合や進行を妨げる障害物等が存在する場合においても、走行装置11を進退し易くすることができる。そのため、第1筐体50aの高さ方向の中心位置C1は、第1クローラベルト19aの高さ方向の中心位置N1よりも高い位置にあることが好ましい。
【0051】
図2(c)に示す通り、走行装置11は、第1回転体18aと第2回転体18bのそれぞれの左右両側に一対の側板13a、13bと側板13c、13dを備えることが好ましい。これにより、第1クローラベルト19a、第2クローラベルト19b内への砂や埃の侵入を抑制し易くすることができる。
【0052】
本体12と第1クローラモジュール70aと第2クローラモジュール70bは、互いに独立して防塵防水性を有していることが好ましい。互いに独立して防塵防水性を有していることにより、一部のユニットが破損して塵や水が侵入した場合に、他のユニットへの塵や水の浸入を抑制することができる。
【0053】
本発明において、防塵防水性とは、JIS C 0920で規定されている保護等級5級以上の防塵性、および保護等級7級以上の防水性を意味する。
【0054】
走行装置11に防塵防水性を備えさせるためには、例えば、本体12、第1筐体50a、第2筐体50b等を構成するパネル間の隙間等を樹脂製のシール材等で塞げば良い。また、例えば、第1クローラモジュール70aと第2クローラモジュール70bを防塵防水用カバーで覆うことも有効である。防塵防水用カバーは樹脂製の不織布等が挙げられる。
【0055】
走行装置11は、天板20の上に撮影機15a、15bを備えることが好ましい。撮影機15a、15bを備えることにより、床下空間等のモニタ映像を見ながら、遠隔操作により第1回転体18a、第2回転体18bの駆動等を行うことができる。
【0056】
撮影機15a、15bは、床下のシロアリの被害、腐朽、カビ等の発生を感度良く撮影できる機能を有するものであれば特に限定されないが、より高感度の画像を得ることを考慮して、CCD(Charge−Coupled Device:電荷結合素子)を有するビデオカメラを用いることが好ましい。
【0057】
走行装置11は、撮影機15a、15bと接続されるビデオエンコーダを備えることが好ましい。ビデオエンコーダにより、アナログ信号をデジタル信号に変換し、データを伝送することができる。ビデオエンコーダは、本体12に収容すれば良い。
【0058】
走行装置11は、天板20の上に照明器を備えることができる。照明器を備えることにより、撮影機15a、15bの撮影をし易くすることができる。
【0059】
照明機は、通常のライトを使用することができるが、十分な明るさで床下空間を照らすことを考慮して、例えば高輝度LED(Light Emitting Diode)照明を使用することが好ましい。
【0060】
図2(c)、(d)に示す通り、走行装置11は、天板20の上に防蟻剤ノズル14を備えることができる。これにより防蟻剤ノズル14から防蟻剤の散布を行うことができる。防蟻剤ノズル14は、防蟻剤を細く直線状に噴射する直流型(ソリッド型)や、防蟻剤を霧状に噴射する円錐型(フルコーン型)のいずれかを用いることができるが、特に限定されるものではない。例えば、木製の建材に向かって集中的に散布する場合には直流型を用いるのが好ましく、床下の地上に噴霧する場合には円錐型を用いることが好ましい。防蟻剤を散布するためには、例えば、防蟻剤ノズル14に防蟻剤を供給するホースを接続し、このホースは家屋外に設置された防蟻剤タンクに接続して、防蟻剤ノズル14から散布する防蟻剤を防蟻剤タンクから供給すれば良い。これにより、作業者は走行装置11の操縦を行うと共に、防蟻剤ノズル14からの防蟻剤散布の制御を家屋外から容易に行うことができる。
【0061】
走行装置11は、送受信機を備えることができる。送受信機を備えることにより、リモートコントローラーの送受信機との間で、無線で送受信ができる。これにより、撮影機15a、15bで撮影されたモニタ映像を見ながら、遠隔操作により第1回転体18a、第2回転体18bの駆動等や防蟻剤ノズル14から防蟻剤の散布を行うことができる。
【0062】
本発明の走行装置11は、防蟻剤放出に限らず、狭小空間の点検、調査や清掃等に用いることが可能である。
【0063】
以上、本発明の走行装置について説明した。以下では、本発明の走行装置を用いた防蟻剤散布方法について説明する。
【0064】
図3に、本発明の防蟻剤散布方法のブロック図を示す。本発明の防蟻剤散布方法は、家屋の床下における防蟻剤散布方法であって、防蟻剤を散布するノズルを含む走行装置を家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部から床下空間へ搬入する搬入ステップと、前記ノズルから前記防蟻剤を散布する散布ステップと、を含む。
【0065】
走行装置は、例えば、家屋外から作業者が遠隔で操作させることができる。家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部は、例えば、コンクリート製の床下基礎(布基礎)において床上方向に立ち上がる箇所にくり抜かれた部分であり、床下空間を乾燥させるための換気孔である。
【0066】
本発明の防蟻剤散布方法によれば、人体に有害な防蟻剤を散布する走行装置を、家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部から床下空間へ搬入することができることから、作業者が家屋室内に上がり込んで、当該走行装置を床下点検口(床下収納庫)から床下空間に進入させるという作業を行う必要がない。したがって、家屋の住人やオーナーに対して、事前の作業日程や作業時間の調整を綿密に行う必要がなく、作業者が作業自体に集中することが可能となり、作業効率を向上させることができる。また、人体に有害な防蟻剤の走行装置を室内に持ち込んで作業を行う必要がない。したがって、家屋の住人やオーナーは、人体に有害な防蟻剤の走行装置に接することもなく、安心して当該作業を看過できる。
【0067】
本発明の防蟻剤散布方法は、さらに、前記走行装置に電源を供給する給電ステップを含んでも良い。この方法によれば、例えば、走行装置を床下点検口(床下収納庫)から床下空間に進入させる際に、当該走行装置に供給する電源を室内コンセントから引いてくるという余分の作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。
【0068】
また、本発明の防蟻剤散布方法は、前記走行装置が複数の部品で構成されており、前記搬入ステップの後に前記複数の部品から前記走行装置を組み立てる組立ステップを有することが好ましい。この方法によれば、走行装置が予め分解されたコンパクトな状態となることから、間口の狭い箇所においても床下空間に搬入することが可能となる。
【0069】
また、本発明の防蟻剤散布方法において、搬入ステップの前に、平坦部と傾斜部を有するステージを開口部から床下空間へ搬入するステップをさらに有するものでも良い。この方法によれば、走行装置が平坦部と傾斜部を介して床下空間へ搬入されることになる。つまり、家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部の下端と走行装置が設置される面(床下コンクリート面)との段差に対して、走行装置に無理な振動や衝撃を与えることなく搬入することができる。
【0070】
図4に、ステージ1の概略を示す。平坦部2とは、
図4に示すように、走行装置11を家屋の基礎コンクリートの立設部4に形成されている開口部5の下端から、床6と床下コンクリート面7との間の空間(床下空間8)へ搬入する際に生じる段差を解消するための台となるものである。また、傾斜部3とは、平坦部2の台に載せた走行装置11を、床下コンクリート面7に衝撃等を与えることなく着地させるスロープである。この方法によれば、走行装置11を搬入する前に予めステージ1が搬入されて設置されることから、上記段差が生じるような場合においても高低差を緩和し、走行装置11に振動、衝撃等の影響を与えることなく搬入することが可能となる。
【0071】
また、本発明の散布方法において、傾斜部3の床下コンクリート面7に対する傾斜角が10〜70°であることが好ましく、より好ましくは20〜60°、さらに好ましくは30〜50°とするのが良い。傾斜部3の床下コンクリート面7に対する傾斜角が10°以上の場合には、走行装置11を遅滞なくスムーズに搬入することが可能であり、作業効率の向上を図ることができる。また、傾斜部3の床下コンクリート面7に対する傾斜角が70°以下の場合には、走行装置11に対する振動、衝撃等の影響を抑制することができる。
【0072】
また、本発明の散布方法において、開口部5の開口面積が0.01〜0.08m
2であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.07m
2、さらに好ましくは0.01〜0.06m
2とするのが良い。開口面積が0.01m
2以上の場合には、走行装置11の搬入をスムーズに行うことができ、開口部5における格子、網の撤去作業を必要最小限に抑えることができる。また、開口面積が0.08m
2以下の場合には、開口部5における格子、網等の撤去作業を容易にすることができる。
【0073】
また、本発明の散布方法において、開口部の開口縁に滑り部材を含むことが好ましい。この方法によれば、走行装置11を家屋の開口部5から床下空間8に搬入する際に、該走行装置11に接続する配線や散布剤供給ホース等と開口部5の開口縁とが接触して摩擦を発生し、最悪の場合、亀裂や断線が生じるのを防ぐことができる。滑り部材としては、例えば、走行装置11と開口縁との接触による摩擦を低減させる観点から、ポリプロピレンやポリカーボネートからなる樹脂製部材を用いるのが好ましい。
【0074】
また、本発明の防蟻剤散布方法は、前記家屋が集合住宅であっても良い。集合住宅の場合、単身者が多く、作業者が訪問しても応答がない場合が多いことから、散布作業の段取りが組めないという事情がある。そこで、集合住宅のオーナーと事前に作業日程等の調整を行い、居室に立ち入ることなく作業を進めることで、作業効率の向上を図ることができる。また、集合住宅の場合、戸建て住宅と比較して床下構造が単純であり、防蟻剤散布の作業をより一層短時間で行うことが可能である。
【0075】
次に、本発明の実施の形態に係る防蟻剤散布方法について説明する。防蟻剤散布方法は、以下のステップを含む。
【0076】
まず、搬入ステップとして、走行装置を家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部から床下空間へ搬入する。本発明においては、以下で説明するように走行装置の搬入方法に特徴を有する。
【0077】
次に、散布ステップとして、ノズルから防蟻剤を散布する。前記の走行装置で説明したように、防蟻剤ノズルとして直流型や円錐型を適宜選択することが可能であり、本発明において、防蟻剤ノズルの構造は特に限定されるものではない。
【0078】
本発明の散布方法で重要なことは、作業者が家屋の室内に上がり込んで走行装置の搬入作業を行うことがないように、家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部から床下空間へ搬入することである。このような搬入作業を行うことで、家屋の住人やオーナーに対して、事前の作業日程や作業時間の調整を綿密に行う必要がなく、作業者が作業自体に集中することが可能となり、作業効率を向上させることができる。また、家屋の住人やオーナーにとって、見知らぬ他人が室内に上がり込んで作業するというストレスが貯まることもない。さらに、人体に有害な防蟻剤の走行装置を室内に持ち込んで作業を行う必要がないことから、家屋の住人やオーナーは走行装置に接することもなく、安心して当該作業を看過できる。
【0079】
図5に、本発明の走行装置11が搬入される様子と、防蟻剤散布作業終了後における開口部の復旧の様子の一例を示す。(a)は、走行装置11が搬入される様子、(b)は、防蟻剤散布作業終了後における開口部の修復の様子を示す。
【0080】
本発明の散布方法では、家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部として、建築基準法で定められている床下換気口を利用することが好ましい。具体的には、外壁の床下部分において、壁の長さ5m以下毎に面積300cm
2以上の換気口を設け、さらにねずみの進入を防ぐための欠込み(例えば、格子や網)を設けたものを用いることができる。開口部から走行装置11を搬入する際には、例えば、
図5(a)に示すように、床下換気口21の欠込み22を取り外した状態で行う。また、
図5(b)に示すように、防蟻剤散布作業が完了した際には、該欠込み22に対して新たに金網23を取付け、作業前の換気口の機能が保てるように施す作業が行われる。
【0081】
また、本発明の散布方法では、例えば、走行装置11を床下点検口(床下収納庫)から床下空間に進入させる際に、当該走行装置11に供給する電源を家庭用室内コンセントから引いてくるという余分の作業が必要でなく、作業効率を向上させることを考慮して、走行装置11に電源を供給する給電ステップを含んでも良い。具体的には、走行装置11の本体12に蓄電池を搭載する方法や、屋外の電源装置と接続する方法があるが、作業性や安全性を考慮して、蓄電池を走行装置11に搭載して電源を供給する方法が好ましい。蓄電池としては、耐久性や保守性の観点から、完全密閉でメンテナンスフリーであり、且つ小型で大容量のリチウム二次電池やニッケル水素蓄電池を用いるのがより好ましい。
【0082】
本発明の散布方法では、屋外の防蟻剤タンクと床下空間内の走行装置11を接続する防蟻剤供給ホースの取り回しの高低差がわずかであり、また、防蟻剤供給ホースが絡まることも少ないことから、従来の室内の床下点検口(床下収納庫)を介して床下空間の走行装置11へ防蟻剤を供給する方法と比べて、防蟻剤の供給をスムーズに行うことが可能である。したがって、防蟻剤供給に関連するトラブル発生が少なく、作業効率の向上に貢献することができる。
【0083】
図6に、本発明の防蟻剤散布方法を用いた場合の床上と床下の様子の一例を示す。本発明の散布方法は、走行装置11を家屋の基礎コンクリートの立設部に形成されている開口部から床下空間へ搬入し、人体に有害な防蟻剤を家屋居室内に持ち込まずに作業することができる。したがって、例えば、
図6に示すように、床下空間で作業者31が遠隔操作により走行装置11で作業を進めている最中においても、居住者32(例えば、家庭の主婦)は防蟻剤散布の作業に対する特段の留意を向けることなく、室内で炊事、掃除、洗濯等を居ながらに行うことができる。