(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記雄雌継手(10、20)の嵌り合った両対向周面に雄雌継手(10、20)の径方向で対向する凹部(12、22)をそれぞれ形成し、その対向する凹部(12、22)に上記係合駒(30)を雄雌継手(10、20)の径方向に移動可能に装填し、
上記嵌り合った雄雌継手(10、20)の一方の継手にその外面又は内面から上記凹部(12、22)に通じる上記貫通孔(23)を形成し、その貫通孔(23)に上記引き杆(32)を移動可能に貫通してその先端を上記係合駒(30)に固定し、
上記引き杆(32)の周りに、上記係合駒(30)の外面又は内面と上記一方の継手の凹部の奥内面との間に介在されて前記係合駒(30)を他方の継手側に向かって押圧する上記押圧体(31)を設け、
上記係合駒(30)は、雄雌継手(10、20)の嵌り合い時、上記押圧体(31)の押圧力に抗して上記一方の継手側の凹部内に退去してその嵌り合いを許容し、雄雌継手(10、20)が嵌り合った後は、上記押圧体(31)の押圧力によって他方の継手の凹部内に押されて両凹部(12、22)に亘って位置することを特徴とする請求項1に記載の鋼管継手装置。
上記雄雌継手(10、20)の嵌り合った両対向周面に雄雌継手(10、20)の径方向で対向する周溝(112、122)をそれぞれ形成し、その対向する両周溝(112、122)に上記係合駒(130)を雄雌継手(10、20)の径方向に移動可能に装填し、
上記嵌り合って噛み合った雄雌継手(10、20)の一方の継手に外面又は内面から上記周溝に通じる上記貫通孔(23)を形成し、その貫通孔(23)に上記引き杆(32)を移動可能に貫通してその先端を上記係合駒(130)に固定し、
上記引き杆(32)の周りに、上記係合駒(130)の外面又は内面と上記一方の継手の周溝の奥内面との間に介在されて前記係合駒(130)を他方の継手側に向かって押圧する上記押圧体(31)を設け、
上記係合駒(130)は、雄雌継手(10、20)の嵌り合い時、上記押圧体(31)の押圧力に抗して上記一方の継手側の周溝内に退去してその嵌り合いを許容し、雄雌継手(10、20)が嵌り合った後は、上記押圧体(31)の押圧力によって他方の継手の周溝内に押されて両周溝(112、122)に亘って位置して雄雌継手(10、20)の軸方向の離反を阻止することを特徴とする請求項1に記載の鋼管継手装置。
上記係合駒(130)は、上記雄雌継手(10、20)の全周に亘って位置されてその周方向で分割されており、その各分割係合駒片(131)のそれぞれに対応して、嵌り合って噛み合った前記雄雌継手(10、20)の一方の継手にその外面又は内面から前記周溝に通じる貫通孔(23)を形成し、その各貫通孔(23)に引き杆(32)を移動可能に貫通してその先端を前記各分割係合駒片(131)にそれぞれ固定したことを特徴とする請求項3に記載の鋼管継手装置。
上記貫通孔(23)は、嵌り合った雄雌継手(10、20)の内の外側に位置する一方の継手(20)にその外面から前記凹部(22)又は周溝(122)に通じるものであり、その貫通孔(23)に上記引き杆(32)を前記一方の継手(20)の外面から移動可能に貫通してその先端を上記係合駒(30、130)に固定し、
上記引き杆(32)の周りに、上記係合駒(30、130)の外面と上記嵌り合った雄雌継手(10、20)の内の外側の一方の継手(20)の凹部(22)又は周溝(122)の奥内面との間に介在される上記押圧体(31)を設け、
上記係合駒(30、130)は、雄雌継手(10、20)の嵌り合い時、上記押圧体(31)の押圧力に抗して上記外側の一方の継手(20)側の凹部(22)又は周溝(122)内に退去してその嵌り合いを許容し、雄雌継手(10、20)が嵌り合った後は、前記押圧体(31)の押圧力によって他方の継手(10)の凹部(12)又は周溝(122)内に押されて両凹部(12、22)又は両周溝(112、122)に亘って位置するとともに、前記引き杆(32)の頭部は貫通孔(23)に没していることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一つに記載の鋼管継手装置。
上記引き杆(32)の頭部は、上記嵌り合った雄雌継手(10、20)の外側に位置する一方の継手(20)の外側からの引き治具(34、36)の係止部(33、35)を有し、前記引き治具(34、36)により、前記係止部(33、35)を介し引き杆(32)を引くことによって、前記係合駒(30、130)が前記押圧体(31)に抗して上記外側の一方の継手(20)側の凹部(22)又は周溝(122)内に退去して雄雌継手(10、20)の離脱を許容することを特徴とする請求項5に記載の鋼管継手装置。
上記引き杆(32)は先端部が雄ねじとなった棒状部材であり、上記引き杆(32)の頭部の係止部が前記引き治具(34)の雄ねじがねじ込まれる雌ねじ孔(33)としたことを特徴とする請求項6に記載の鋼管継手装置。
上記引き杆(32)の頭部に上記引き治具(34)となる起伏自在なリング(37)を設け、そのリング(37)は、上記雄雌継手(10、20)が嵌り合った後、貫通孔(23)に没しており、前記リング(37)を起立させて上記引き杆(32)を引いて前記係合駒(30、130)を前記押圧体(31)に抗して上記外側の一方の継手(20)側の凹部(12)又は周溝(122)内に退去させることを特徴とする請求項6に記載の鋼管継手装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図12に示すように、杭となる鋼管1a、1bを回転させつつ地中に圧入して埋め込む際、所定の深度まで到達させるために、圧入途中で施工を一時的に中止して鋼管1a、1bの接続が行われる。その鋼管の接続手段として現場での溶接が行われているが、その溶接には高度の技能を必要としたり、天候の影響を受けたりすることから、現場での無溶接方式の鋼管継手装置が提案されている(特許文献1〜4等参照)。
【0003】
その鋼管継手装置は、通常、対の筒状雄雌継手10、20からなり、工場において、その一方の継手(例えば、雄継手10)を鋼管1bの一端部に同一軸上に溶接するとともに、他方の継手(例えば、雌継手20)を当該鋼管1aの他の端部に同一軸上に溶接し、施工現場においては、その雄雌継手10、20を結合することによって2つの鋼管1a、1bを接続する。
【0004】
この対の雄雌継手10、20からなる鋼管継手装置の一例として、対の雄雌継手3、4(特許文献1の符号、以下同じ)の嵌り合った両対向周面に雄雌継手の径方向で対向する凹部5、6をそれぞれ形成し、その対向する凹部5、6に係合駒(連結キー7)を雄雌継手3、4の径方向に移動可能に装填し、嵌り合った雄雌継手3、4の内の外側に位置する雌継手4にその外面から前記凹部6に通じる貫通孔を形成し、その貫通孔にボルト部材9を貫通してその先端を前記係合駒7に固定可能とし、その係合駒7は、雄雌継手3、4の嵌り合い時、雄継手3側の凹部5内に退去してその嵌り合いを許容し、雄雌継手3、4が嵌り合った後は、前記ボルト部材9を係合駒7にねじ結合し、そのねじ回しによって雌継手4の凹部6内に係合駒7を引き寄せて両凹部5、6に亘って位置させ、雄雌継手3、4の軸方向の離反を阻止するとともに、雄雌継手の周方向の相互回転を阻止する構成のものが開示されている(特許文献1、請求項1、
図1〜
図4参照)。
また、上記係合駒をバネによって両凹部に亘り移動させて係合する技術もある(特許文献2
図6参照)。
さらに、雄雌継手10、20をその端縁を噛み合わせて軸心回りに一体とした技術もある(特許文献3、4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12に示すように、駅のホームFにおける工事の場合、既設屋根R等の構築物があり、上空を高くとれないこと、杭1a、1bの周囲を広く掘削した場合の排土の移動搬出や埋め戻しの煩雑さ、終電から始発までの短時間工事の制約等、難しい工事となっている。この場合、大きなピットPを形成することは困難であり、できるだけピットPは小さくする必要があり、杭1a、1bの接続作業をその小さなピットP内で行うこととなる。このため、上記特許文献1、3、4記載の鋼管継手装置のように、ボルト部材9等のねじ回しによって、係合駒7を進退させる作用は煩雑である。ピットP内の作業はできるだけ簡単にしたい。
また、特許文献2記載の鋼管継手装置は、バネによって係合駒を進行させるが、バネの支持が不安定であり、雄雌継手の嵌め込みが円滑でない。さらに、継手装置の外面には鋼管外周面から突出する部材があると、圧入の時の抵抗となる。
【0007】
この発明は、以上の実状に鑑み、ワンタッチで安定して雄雌継手を結合し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、この発明は、2つの鋼管を接続する鋼管継手装置であって、前記鋼管にそれぞれ設けられる対の筒状雄雌継手からなって、その雄雌継手は筒軸方向で嵌り合っており、前記雄雌継手の嵌り合った両対向周面の間にその雄雌継手の径方向移動可能に係合駒を装填し、前記嵌り合った雄雌継手の一方の継手にその外面又は内面から他面に向かって貫通孔を形成し、その貫通孔に引き杆を移動可能に貫通してその先端を係合駒に固定し、前記引き杆の周りに、係合駒を他方の継手側に向かって押圧する押圧体を設け、係合駒は、雄雌継手の嵌り合い時、前記押圧体の押圧力に抗して一方の継手側内に退去してその嵌り合いを許容し、雄雌継手が嵌り合った後は、押圧体の押圧力によって他方の継手内に押されて雄雌継手内に亘って位置する構成を採用したのである。
この構成の鋼管継手装置は、引き杆の周りに押圧体が設けてあって、その押圧体が引き杆に支持されているため、係合駒の進退が安定し、雄雌継手の嵌り合いも円滑である。
押圧体は、係合駒を押圧するものであれば任意であり、弾性体が望ましく、コイルバネや弾性樹脂筒体等がより好ましい。
【0009】
この発明の具体的な一手段は、2つの鋼管を接続する鋼管継手装置であって、前記鋼管にそれぞれ設けられる対の筒状雄雌継手からなって、その雄雌継手は筒軸方向で嵌り合い、その雄雌継手の嵌り合った両対向周面に雄雌継手の径方向で対向する凹部をそれぞれ形成し、その対向する凹部に係合駒を雄雌継手の径方向に移動可能に装填し、嵌り合った雄雌継手の一方の継手にその外面又は内面から前記凹部に通じる貫通孔を形成し、その貫通孔に引き杆を移動可能に貫通してその先端を係合駒に固定し、引き杆の周りに、係合駒の外面又は内面と一方の継手の凹部の奥内面との間に介在されて係合駒を他方の継手側に向かって押圧する押圧体を設けた構成を採用したのである。
【0010】
この構成の鋼管継手装置は、上記係合駒が、雄雌継手の嵌り合い時、上記押圧体の押圧力に抗して一方の継手側の凹部内に退去してその嵌り合いを許容する。そして、雄雌継手が嵌り合った後は、押圧体の押圧力によって他方の継手の凹部内に押されて両凹部に亘って位置する。
この両凹部に係合駒が位置して、その係合駒が両凹部に雄雌継手の軸方向及び周方向に移動不能に嵌っていると(嵌合していると)、その嵌合によって、雄雌継手相互の軸方向及び周方向の動きが阻止される。このとき、雄雌継手が筒軸方向で嵌り合って噛み合いによってその軸心周りに一体となるものであれば(
図5参照)、前記嵌合は周方向の動きを阻止する態様でなくても良い。
【0011】
上記課題を達成するためのこの発明の具体的な他の手段は、2つの鋼管を接続する鋼管継手装置であって、前記鋼管にそれぞれ設けられる対の筒状雄雌継手からなって、その雄雌継手は、筒軸方向で嵌り合って噛み合いによってその軸心周りに一体となり、前記雄雌継手の嵌り合った両対向周面に雄雌継手の径方向で対向する周溝をそれぞれ形成し、その対向する両周溝に係合駒を雄雌継手の径方向に移動可能に装填し、前記嵌り合って噛み合った雄雌継手の一方の継手にその外面又は内面から前記周溝に通じる貫通孔を形成し、その貫通孔に引き杆を移動可能に貫通してその先端を前記係合駒に固定し、前記引き杆の周りに、前記係合駒の外面又は内面と一方の継手の周溝の奥内面との間に介在されて前記係合駒を他方の継手側に向かって押圧する押圧体を設けた構成を採用したのである。
【0012】
この構成において、上記係合駒は、上記雄雌継手の全周に亘って位置されてその周方向で分割されており、その各分割係合駒片のそれぞれに対応して、嵌り合って噛み合った前記雄雌継手の一方の継手にその外面又は内面から前記周溝に通じる貫通孔を形成し、その各貫通孔に引き杆を移動可能に貫通してその先端を前記各分割係合駒片にそれぞれ固定した構成とすることができる。
【0013】
この両構成の鋼管継手装置も、同様に、上記係合駒が、雄雌継手の嵌り合い時、上記押圧体の押圧力に抗して一方の継手側の周溝内に退去してその嵌り合いを許容する。そして、雄雌継手が嵌り合った後は、押圧体の押圧力によって他方の継手の周溝内に押されて両周溝に亘って位置して雄雌継手の軸方向の離反を阻止する。なお、この両構成では、雄雌継手の周方向の相互回転は、両継手の噛み合いによって阻止される。
【0014】
上記各構成において、上記貫通孔は、嵌り合った雄雌継手の内の外側に位置する一方の継手にその外面から凹部又は周溝に通じるものであり、その貫通孔に上記引き杆を前記一方の継手の外面から移動可能に貫通してその先端を上記係合駒に固定し、前記引き杆の周りに、係合駒の外面と嵌り合った雄雌継手の内の外側の一方の継手の凹部又は周溝の奥内面との間に介在される押圧体を設け、係合駒は、雄雌継手の嵌り合い時、押圧体の押圧力に抗して外側の一方の継手側の凹部又は周溝内に退去してその嵌り合いを許容し、雄雌継手が嵌り合った後は、押圧体の押圧力によって他方の継手の凹部又は周溝内に押されて両凹部又は両周溝に亘って位置する構成とすることができる。
この構成において、雄雌継手が嵌り合った後、上記引き杆の頭部は貫通孔に没しているようにすると、引き杆が鋼管(継手)の内外面に突出しない利点があり、この没していることの確認によって、係合駒が雄雌継手の両凹部に亘って位置していることが確認できる。なお、「没している」は、他方の継手の内外周面と面一状態も含む。
【0015】
また、上記引き杆の頭部は、上記嵌り合った雄雌継手の外側に位置する一方の継手の外側からの引き治具の係止部を有しているものとすると、引き治具により、前記係止部を介し引き杆を引くことによって、前記係合駒を前記押圧体に抗して外側の一方の継手側の凹部内又は周溝内に退去させることができて雄雌継手を離脱することができる。
その引き治具は先端部が雄ねじとなった棒状部材とし、上記引き杆頭部の係止部を雌ねじ孔とすれば、棒状部材の先端雄ねじをその雌ねじ孔にねじ込むことによって、引き治具でもって引き杆を進退させることができる。
また、上記引き杆の頭部に上記引き治具となる起伏自在なリングを設け、そのリングは、雄雌継手が嵌り合った後、貫通孔に没しているように設定し、前記リングを起立させて上記引き杆を引いて前記係合駒を前記押圧体に抗して一方の継手側の凹部又は周溝内に退去させることができる。
なお、雄雌継手は鋼管の端縁に設けて固定されれば、その固定手段として種々の態様を採用することができる。例えば、溶接、ボルト止め等を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、以上のように構成したので、鋼管を作業性良く連結することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係る鋼管継手装置の一実施形態を
図1〜
図3、
図4A〜
図4Cに示し、この実施形態の鋼管継手装置A1は対の筒状雄継手10と筒状雌継手20とからなる。鋼管1a、1b(総称符号:1)はJIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管(STK)やJIS A 5525に規定する鋼管杭(SKK)が使用され、この両継手10、20はその鋼管1に溶接可能な金属からなる。通常、鋼管杭は、外径:165.2mm以上のものを採用する。雄雌継手10、20の嵌り込み長さは連結強度を考慮して適宜に設定すれば良いが、例えば、継手外径:270mm前後の場合、90mm程度とする。
【0019】
雄継手10は、
図3に示すように、上縁11が全周に亘って欠如(切削)されてその外周面が鋼管1の内径とほぼ同一となっており、鋼管1(1b)の一端に嵌めて溶接aにより鋼管1に一体化(固定)される(
図1参照)。このとき、鋼管1の外周面と雄継手10の外周面は面一となって接続部にほぼ突起物がない状態となる。
その上縁11から下方の雄継手10の外周面には12個の円状凹部12が周囲等間隔に形成されている。その凹部12の数は任意であり、その間隔も等間隔でなくても良い。要は、連結された鋼管1a、1bに回転力を伝達するとともに、雄雌継手10、20の軸方向の一体化が担保できれば良い。
【0020】
雌継手20は、
図3に示すように、その下縁21が全周に亘って欠如(切削)されてその外周面が鋼管1の内径とほぼ同一となっており、鋼管1(1a)の一端に嵌めて溶接aにより鋼管1に一体化される(
図1参照)。このとき、雄継手10と同様に、鋼管1の外周面と雌継手20の外周面は面一となって接続部にほぼ突起物がない状態となる。
【0021】
雌継手20の内面軸方向中程の全周に亘って12個の円状凹部22が等間隔に形成されている。その凹部22の数は任意であり、その間隔も等間隔でなくても良いが、雄雌継手10、20を嵌めた際、両継手10、20の各凹部12、22がそれぞれ対向して、例えば、雄継手10の凹部12と同一大きさ、同一数及び同一間隔として、その凹部12、22の間を下記係合駒30が雄雌継手10、20の径方向に行き来(移動)可能となるように設定する。
【0022】
上記両凹部12、22に円盤状の係合駒30が嵌る。このため、両凹部12、22と係合駒30は前者に後者がピッタリ嵌る形状であれば、何れの形状でもよく、円盤状に限らず、四辺形盤状等の多角形としてもよい。
【0023】
雌継手20にはその外面から各凹部22に通じる貫通孔23が形成されており、その貫通孔23に弾性体となるコイルバネ31を嵌めたボルト状引き杆32が移動可能に貫通してその先端が各係合駒30にねじ止め固定されて、この引き杆32がコイルバネ31(押圧体)を貫通して支持している。凹部22の底面(奥面)や係合駒30の表面にコイルバネ31の受け孔23a、23bを形成すれば、そのバネ31の位置決めが安定する(
図2参照)。各引き杆32の頭部には雌ねじ孔33が形成されている。引き杆32はその頭部が円柱状に限らず、貫通孔23を通り抜けない形状であれば、何れでも良い。例えば、
図6に示す円錐状(皿ねじ)とすることができ、頭部は円柱状ではなく、六角等の角柱とすれば、係合駒30へのねじ込みが容易である。
【0024】
この実施形態の鋼管継手装置A1は以上の構成であり、工場において、接続用鋼管1の一方1bの端(例えば、下端)に雄継手10が溶接aによって取付けられ、他方1aの端(同上端)に雌継手20が溶接aによって取付けられる。なお、杭の先端となる鋼管杭の先にはオーガドリルやビット等を有する掘削具が取り付けられ、打ち込み用駆動機は雌継手20に嵌って鋼管1に回転力及び掘削力を付与する態様のものが使用される。
【0025】
その雌継手20は、通常、
図4Aに示すように、各係合駒30をそれぞれ引き杆32で支持して各凹部22にその一部が嵌った状態となっている。
この状態において、打ち込まれた鋼管1aにつぎの鋼管1bを継ぎ足す際、その先行の鋼管1a端の雌継手20につぎ(後行)の鋼管1b端の雄継手10を嵌め込むと、
図4A→
図4B→
図4Cに示すように、雄継手10の嵌り込みに伴って、係合駒30が凹部22内に後退して(没して)雄継手10の嵌り込みを許容する(
図4B)。このとき、雄継手10の下端のCカット15及び係合駒30の内側周縁のCカット30aによってその雄継手10の嵌め込みに伴って係合駒30が凹部22内に押されて円滑に後退するため、その嵌め込みも円滑である。雄継手10の下端のCカット15及び係合駒30の内側周縁のCカット30aは、少なくとも一方に形成すれば良く、すなわち、雄継手10下端外側周縁及び係合駒30の内側上縁のどちらか一方に形成したり、両者に形成したりすることができる。
【0026】
雄継手10が押し込まれて、雄継手10の凹部12が雌継手20の凹部22(係合駒30)に対応(対峙)すると、コイルバネ31の付勢力によって係合駒30が雄継手10の凹部12内に嵌り込む。この嵌り込んだ状態は、各係合駒30が雄雌継手10、20の両凹部12、22に亘ってぴったり嵌っており(
図4C)、各係合駒30によって雄雌継手10、20の上下方向の離反及び周方向の相互回転を阻止する。
このとき、
図4Cに示すように、各引き杆32の頭部は貫通孔23に没するように設定されている。このため、全ての引き杆32が各貫通孔23に没しておれば、それを目視することにより、各係合駒30が雄雌継手10、20の各両凹部12、22に亘って位置していることとなり、係合駒30によって雄雌継手10、20が上下方向及び周方向において強固に一体化していることが確認できる。
引き杆32が貫通孔23に没していなければ、ハンマ等で引き杆32頭部を叩いて没した状態にして、係合駒30によって雄雌継手10、20が上下方向に一体になっている状態とする。
【0027】
以上の作用により、
図1に示すように、この雄雌継手10、20によって接続された鋼管1a、1bは、回転方向及び上下方向(離反方向・軸方向)において一体化される。この状態で、上側の鋼管1bからの圧入を開始する。以後、同様な作用によって所要数の鋼管1を継ぎ足して所要長さの鋼管杭を打ち込む(圧入する)。
【0028】
地中に打ち込んだ鋼管杭を抜く場合は、その杭を逆転するなどによって各鋼管1を地上に抜き出し、その各鋼管1、1の鋼管継手装置A1において、
図4C鎖線で示すように、各引き杆32の頭部の雌ねじ孔33にボルト状の引き治具34をねじ込み、その引き治具34により、引き杆32をコイルバネ31に抗して引き出し、係合駒30を雌継手20の凹部22内に後退させ雄継手10の凹部12から退去させて、両継手10、20を離脱可能とし、その状態で、下側の鋼管1aに対し上側の鋼管1bを引き離すことによって行う(
図4C→
図4B→
図4A)。
【0029】
この発明に係る鋼管継手装置の他の実施形態を
図5、
図6、
図7A〜
図7Cに示し、この実施形態の鋼管継手装置A2も対の筒状雄継手10と筒状雌継手20とからなり、鋼管1に溶接可能な金属からなって、上記と同一符号は同一物を示す。
【0030】
この実施形態の雄継手10は、
図6に示すように、その上縁11から下方に向かう外周面は下方に開口する凹部115が周囲等間隔に形成され、その凹部115の間が凸部(歯状部)116となって、その凸部116の裏面側は空洞になっている(
図7A参照)。この凹部115(凸部116)の数は任意であり、その間隔も等間隔でなくても良い。要は、連結された鋼管1、1に回転力を伝達し得る噛み合い力が担保されれば良い。嵌め合い部分の面取りは一方のみでも良い。
【0031】
凹部115及び凸部116が形成された雄継手10の下方の外周面の中程に全周に亘る断面四角状の溝(周溝)112が形成されており、その溝112のさらに下方の下縁15はその全周に亘ってCカット(面取り)されている。この溝112の筒軸方向の位置は、連結強度を考慮して実験などによって適宜に設定する。
【0032】
同雌継手20は、
図6に示すように、その上部全周に上方に開口する凹部125が周囲等間隔に形成されて、その凹部125の間が凸部(歯状部)126となっている。この凹部125及び凸部126の数、間隔及び大きさ、深さは上記雄継手10の凸部116及び凹部115と対応しており、雄継手10の凸部116が雌継手20の凹部125に、同凹部115に同凸部126がそれぞれ嵌り合って、噛み合いによりその軸心周りに一体となる(
図5参照)。この嵌り合い・噛み合った雄雌継手10、20の外周面は面一となってほぼ突起物がない状態となる。
【0033】
雌継手20の内面軸方向中程の全周に亘って断面四角状の溝(周溝)122が形成されており、雌継手20に雄継手10が嵌められて両者10、20が一体になると、この溝122は雄継手10の溝112に対応(対向)してほぼ段差のない一条の溝となる(
図7C参照)。この溝122の筒軸方向の位置も連結強度を考慮して実験などによって適宜に設定する。
【0034】
この溝122及び上記溝112に係合駒となる断面四角の係合駒(ロックリング)130が嵌る。この係合駒130は、円環状をして、その内径が雄継手10の溝112の底内径と同一の鋼製リングを分割した分割係合片(分割係合駒片)131からなる(
図6参照)。このため、バネ等により径方向内側に押されて周方向の力が働くと、各分割係合片31が相互に突っ張って円環状を維持する。その分割係合片131の分割数は任意であり、同等間隔が好ましい。
【0035】
分割係合片131は、
図7Aに示すように、その内側上周縁がCカット(面取り)131aされてその長さ方向(弧状方向)の中程にねじ孔132が形成され、このねじ孔132に雌継手20の外面からの皿ねじからなる引き杆32が貫通孔23を介してねじ込まれて、この引き杆32によって雌継手20に分割係合片131が吊り下げ状態に支持される。
各引き杆32の周りにおいて、分割係合片131の外面と雌継手20の周溝212の奥内面との間にコイルバネ31を介在し、このバネ31によって分割係合片131を雄継手10に向かって押圧する。溝122の底面(奥面)や分割係合片131の外面にコイルバネ31の受け孔(23a、23b参照)を形成すれば、そのバネ31の位置決めが安定する。この実施形態においても、引き杆32がコイルバネ31を貫通して支持している。
このコイルバネ31を装填した状態で溝122に分割係合片131を嵌めるとともに、引き杆32で分割係合片131を引き込むと(雌継手20の外側に引くと)、分割係合片131はコイルバネ31に抗して溝122内に没する。この没した状態の分割係合片131の内面と雌継手20の内周面はほぼ面一又は前者が後者に没する状態となる。
【0036】
この実施形態の鋼管継手装置A2は以上の構成であり、同様に、工場において、接続用鋼管1の一方1bの端(例えば、下端)に雄継手10が溶接aによって取付けられ、他方1aの端(同上端)に雌継手20が溶接aによって取付けられる。
【0037】
その雌継手20は、
図7Aに示すように、分割係合片131を溝122に嵌め、引き杆32を貫通孔23に通すとともにコイルバネ31を介して分割係合片131のねじ孔132にねじ込み固定して分割係合片131が支持された状態とする。この分割係合片131の支持は溝122の全周に亘って行い、溝122内全周に係合駒130が装填された状態となっている。その係合駒130(分割係合片131)の支持状態は、溝122内にコイルバネ31に抗して分割係合片131が移動して没することが可能となっている。
【0038】
このため、打ち込まれた鋼管1aにつぎの鋼管1bを継ぎ足す際、その先行の鋼管1a端の雌継手20につぎ(後行)の鋼管1b端の雄継手10を嵌め込むと、
図7A→
図7B→
図7Cに示すように、雄継手10の嵌り込みに伴って、係合駒130(各分割係合片131)が溝122内に後退して(没して)雄継手10の嵌り込みを許容する(
図7B)。このとき、雄継手10下端のCカット15及び分割係合片131の内側上周縁のCカット131aによってその雄継手10の嵌め込みに伴って分割係合片131が周溝122内に押されて円滑に後退するため、その嵌め込みも円滑である。雄継手10下端のCカット15及び分割係合片131の内側上周縁のCカット131aは、少なくとも一方に形成すれば良く、すなわち、雄継手10下端外側周縁及び分割係合片31の内側上周縁のどちらか一方に形成したり、両者に形成したりすることができる。
【0039】
雄継手10が押し込まれて、雄継手10の溝112が雌継手20の溝122に対応(対峙)すると、コイルバネ31の付勢力によって係合駒130(各分割係合片131)が雄継手10の溝112内に嵌り込む。この嵌り込んだ状態は、各分割係合片131が雄雌継手10、20の両溝112、122に亘ってぴったり嵌っており(
図7C)、雄雌継手10、20の上下方向の離反を阻止する。
【0040】
このとき、引き杆32は貫通孔23に没して(引き杆32の頭部頂面は雌継手20の外周面上又はその面より内側にあって)、係合駒130(各分割係合片131)が両周溝112、122に亘って雄雌継手10、20が上下方向に一体になっていることを確認できる。
また、この雄雌継手10、20が嵌り合った状態は、
図5、
図7Cに示すように、雄雌継手10、20の凹部115、125と凸部116、126がピッタリ嵌り合っている。
【0041】
以上の作用により、
図5に示すように、この雄雌継手10、20によって接続された鋼管1a、1bは、回転方向及び上下方向(離反方向)において一体化される。この状態で、上側の鋼管1bからの圧入を開始する。以後、同様な作用によって所要数の鋼管1を継ぎ足して所要長さの鋼管杭を打ち込む(圧入する)。
【0042】
引き杆32は、ボルト状以外に係合駒30、130(各分割係合片131)を引いたりし得る棒状体であれば、その態様は任意であり、例えば、
図8に示すように、円環溝状係止部35を有するピンとし得る。このピン(引き杆)32は係合駒30、130(分割係合片131)に溶接、接着やねじ込み等によって固定する。このピン32も、同図(b)に示すように、係合駒30が両凹部12、22や周溝112、122に亘って納まった際、その環状係止部35をなす頭部が貫通孔23内に没するようにする。
この係止部35を有するピン(引き杆)32は、同図(c)に示すように、フックを有する引き治具36によってその係止部35を引っ掛けて引くことができる。
【0043】
また、
図9(a)に示すように、上記引き杆32の頭部に起伏自在なリング37を設ければ、そのリング37を起立させて引き杆32を引いて係合駒30をコイルバネ31に抗して雌継手20側の凹部22(周溝122)内に退去させることができる。なお、リング37が倒伏した引き杆32の頭部も、雄雌継手10、20が嵌り合った際、貫通孔23内に没しているように設定して、その没していることの確認によって、係合駒30、130が雄雌継手10、20の両凹部12、22又は周溝112、122に亘って位置して、係合駒30、130によって雄雌継手10、20が上下方向及び周方向において強固に一体化していることが確認できるようにする。
さらに、
図9(b)に示すように、E形止め具(リング)38を溝39に嵌めることよって引き杆32の抜け止めを行うことができる。このとき、リング38及び引き杆32の頭部は、雄雌継手10、20が嵌り合った際、貫通孔23内に没しているように設定する。
【0044】
上記各実施形態の鋼管継手装置A1、A2は係合駒(30、130)及び引き杆32を、嵌合した雄雌継手10、20の内の外側に位置する継手(雌継手20)に設けたが、
図10A〜
図10Cに示すように、嵌合した雄雌継手10、20の内の内側に位置する継手(雄継手10)に設けたものとすることができる。このとき、貫通孔23は、内側に位置する継手(雄継手10)の内面からその凹部12又は周溝112に通じるものとなり、引き杆32の頭部は、その貫通孔23に没するようにしたり、前記内面から突出したりさせることができる。コイルバネ31の上記受け孔を形成すれば、そのバネ31の位置決めが安定することは言うまでもない。
【0045】
この実施形態の鋼管継手装置A3も、打ち込まれた鋼管1aにつぎの鋼管1bを継ぎ足す際、その先行の鋼管1a端の雌継手20につぎ(後行)の鋼管1b端の雄継手10を嵌め込むと、
図10A→
図10B→
図10Cに示すように、雄継手10の嵌り込みに伴って、係合駒30、130(各分割係合片131)が凹部12又は溝112内に後退して(没して)雄継手10の嵌り込みを許容する(
図10B)。
雄継手10が押し込まれて、雄継手10の凹部12又は溝112が雌継手20の凹部22又は溝122に対応(対峙)すると、コイルバネ31の付勢力によって係合駒30、130(各分割係合片131)が雌継手20の凹部22又は溝122内に嵌り込む。この嵌り込んだ状態は、係合片30、130が雄雌継手10、20の両凹部12、22又は両溝112、122に亘ってぴったり嵌っており(
図10C)、雄雌継手10、20の上下方向の離反を阻止する。
【0046】
なお、上記各実施形態において、雄雌継手10、20の一体化が維持できれば、係合駒30、130は凹部12、22、周溝112、122にピッタリ嵌らなくても良い。
また、上記各実施形態においては、雌継手20を下側(先行)鋼管1aに、雄継手10を上側(後行)鋼管1bに溶接取付けしたが、雄継手10を下側(先行)鋼管1aに、雌継手20を上側(後行)鋼管1bに溶接取付けすることができる。
図1〜
図4Cの実施形態において、
図5〜
図7Cに示すように、雄雌継手10、20を凹凸部115、116、125、126の噛み合いによるものとすることができる。このとき、係合駒30は凹部12、22に周方向に移動自在に嵌るものとすることができる。
【0047】
さらに、雄雌継手10、20は、単筒体ではなく、複数の筒からなるものとして強度を高めたものとすることができる。例えば、
図11に示すように、雄継手10を2つの筒体10a、10bで構成し、雌継手20も2つの筒体20a、20bで構成することができる。複数筒体で構成した場合、同一軸心として溶接aによって一体化する。雌継手20が複数の筒体から成ると、コイバネ31の装填スペースSを容易に確保したり、筒体20bを貫通した凹部(孔)22としたりすることができる。雄継手10を二つの筒体10a、10bで構成する場合は、上部の鍔部分をなす筒体10aとその筒体10aに嵌る下部部分をなす筒体10bとしたり、図示のように、一方10aを中筒とし、その中に筒体10bを嵌め込んだりすることができる。
係合駒30、130の雄雌継手10、20の対向面間の移動は、凹部12、22、周溝112、12以外に考え得る適宜な構成を採用することができる。
また、この発明の管継手装置は鋼管杭に限らず、各種の鋼管の継手として採用し得る。
【0048】
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。