(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875682
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】機械部品
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20210517BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20210517BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20210517BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20210517BHJP
【FI】
B22F3/16
C22C19/07 Z
B22F3/105
B33Y80/00
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-130664(P2017-130664)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-14921(P2019-14921A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000222772
【氏名又は名称】東洋刃物株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晶彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信之
(72)【発明者】
【氏名】志村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】神尾 大介
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−123238(JP,A)
【文献】
特開2015−190004(JP,A)
【文献】
特開2015−151610(JP,A)
【文献】
特開昭61−179838(JP,A)
【文献】
特開2016−194143(JP,A)
【文献】
特開昭62−023951(JP,A)
【文献】
特開昭61−243143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/16
B22F 3/105
B33Y 80/00
C22C 19/07
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、Mo:14〜20質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成された、10μm以下の炭化物が網目状に繋がって均一に分散されたCo基合金から成ることを特徴とする機械部品。
【請求項2】
C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、W:20〜26質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成された、10μm以下の炭化物が均一に分散されたCo基合金から成ることを特徴とする機械部品。
【請求項3】
C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、Mo:10〜15質量%と、W:5〜7質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成された、10μm以下の炭化物が均一に分散されたCo基合金から成ることを特徴とする機械部品。
【請求項4】
前記Co基合金は、前記炭化物が立体的に繋がっていることを特徴とする請求項1記載の機械部品。
【請求項5】
前記Co基合金は、前記炭化物が立体的に網目状に繋がっていることを特徴とする請求項2または3記載の機械部品。
【請求項6】
刃物から成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の機械部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刃物などの機械部品の材料として、ダイス鋼(SKD材)、高速度工具鋼(ハイス)、セラミックス、超硬合金等が用いられている。これらの材料を用いたものとして、例えば、高速度工具鋼系、ダイス鋼系、または合金工具鋼系の粉末材料を用いて、熱間静水圧プレスにより成形体を作成し、この成形体を所望の寸法に切断して最終形状に加工して製造された刃物類が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、セラミックスを用いたものは、非金属で腐食が発生することはないが、薄厚の刃物の場合や刃先が鋭利な場合には、刃先が割れやすいため加工性が悪いという問題があった。また、例えば、厚さや硬さが均一でない水産物のなどを切断する際、切断負荷が絶えず変化するため割れやすいという問題もあった。これらの問題を解決するために、耐摩耗性および耐チッピング欠け性を兼ね備えたセラミック刃物として、多結晶セラミックから成るセラミックマトリックスと、そのセラミックマトリックスを構成する多結晶セラミックの焼結温度より高い融点を有する第二相とで構成されたものが開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、本発明者等により、C:0.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、Mo:5.0〜7.0質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo−Cr−Mo基合金粉末を材料として、積層造形法を利用して形成された機械部品が開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−106801号公報
【特許文献2】特開平11−057237号公報
【特許文献3】特開2015−190004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の刃物類は、材料として粉末ハイスを用いた場合には、シャルピー衝撃値が約30〜42J/cm
2であり、比較例の超硬合金(約3J/cm
2)と比べて靭性に優れるが、硬度はHRC(ロックウェル硬さ)62〜64であり、超硬合金(HRC>70)と比べてやや低くなっている。また、ダイス鋼のSKD11を用いた場合にも、シャルピー衝撃値が約18〜20J/cm
2であり、超硬合金と比べて靭性は優れているが、硬度はHRC62であり、超硬合金と比べてやや低くなっている。このように、硬さが高いほど靭性(シャルピー衝撃値:動的靱性)は低下しており、超硬合金に近い高硬度領域で、ダイス鋼や高速度工具鋼の鉄鋼材料並みの靭性を有するものは得られていないという課題があった。
【0007】
特許文献2に記載のセラミック刃物は、セラミックス材料に耐摩耗性、耐チッピング欠け性を付与するために、焼結温度を2段階にする等の複雑な製造工程が必要であるという課題があった。また、セラミックスや超硬合金を用いた機械部品は、材料自体が高価であるという課題があった。
【0008】
特許文献3に記載の機械部品は、耐食性に優れており、容易かつ安価に製造することができ、硬度もHRC63と比較的高くなっているが、さらに硬度および靭性を向上させることが期待されている。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、優れた硬度および靭性を兼ね備え、容易かつ安価に製造することができる機械部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の本発明に係る機械部品は、C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、Mo:14〜20質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成された、10μm以下の炭化物が
網目状に繋がって均一に分散されたCo基合金から成ることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明に係る機械部品は、C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、W:20〜26質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成された、10μm以下の炭化物が均一に分散されたCo基合金から成ることを特徴とする。
【0012】
第3の本発明に係る機械部品は、C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、Mo:10〜15質量%と、W:5〜7質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成された、10μm以下の炭化物が均一に分散されたCo基合金から成ることを特徴とする。
【0013】
第1乃至第3の本発明に係る機械部品は、10μm以下の炭化物が均一に分散されているため、硬度が高く、HRC≧70となり、超硬合金並みの高硬度を有している。このため、刃先などの薄く形成された部分等の強度を高めることができる。積層造形法を利用して形成することにより、炭化物などの析出物を10μm以下まで容易に微細化することができ、硬度を高めることができる。また、各組成をそれぞれの割合で配合することにより、ダイス鋼や高速度工具鋼並みの比較的高い靭性を得ることができる。このように、第1乃至第3の本発明に係る機械部品は、積層造形体であり、優れた硬度および靭性を兼ね備えている。
【0014】
第1の本発明に係る機械部品は、Cが2.5質量%より少ないとき、Crが26質量%より少ないとき、および、Moが14質量%より少ないときの、少なくともいずれか1つのときには、硬度がHRC70より低くなる。また、Cが5.0質量%より多いとき、Crが35質量%より多いとき、および、Moが20質量%より多いときの、少なくともいずれか1つのときには、靭性が著しく低下し、脆くなって使用できなくなる。第1の本発明に係る機械部品で、不可避不純物は、Si、Mn、N、W、Ni、Ti、Fe、Nb、V、Taなどである。また、分散している炭化物は、主にCrおよびMoの炭化物である。
【0015】
第2の本発明に係る機械部品は、Cが2.5質量%より少ないとき、Crが26質量%より少ないとき、および、Wが20質量%より少ないときの、少なくともいずれか1つのときには、硬度がHRC70より低くなる。また、Cが5.0質量%より多いとき、Crが35質量%より多いとき、および、Wが26質量%より多いときの、少なくともいずれか1つのときには、靭性が著しく低下し、脆くなって使用できなくなる。第2の本発明に係る機械部品で、不可避不純物は、Si、Mn、N、Mo、Ni、Ti、Fe、Nb、V、Taなどである。また、分散している炭化物は、主にCrおよびWの炭化物である。
【0016】
第3の本発明に係る機械部品は、Cが2.5質量%より少ないとき、Crが26質量%より少ないとき、Moが10質量%より少ないとき、および、Wが5質量%より少ないときの、少なくともいずれか1つのときには、硬度がHRC70より低くなる。また、Cが5.0質量%より多いとき、Crが35質量%より多いとき、Moが15質量%より多いとき、および、Wが7質量%より多いときの、少なくともいずれか1つのときには、靭性が著しく低下し、脆くなって使用できなくなる。第3の本発明に係る機械部品で、不可避不純物は、Si、Mn、N、Ni、Ti、Fe、Nb、V、Taなどである。また、分散している炭化物は、主にCr、MoおよびWの炭化物である。
【0017】
第1乃至第3の本発明に係る機械部品は、積層造形法を利用することにより、材料として炭素を含んで硬度が高いCo基合金粉末を使用しても、容易に製造することができる。また、第1乃至第3の本発明に係る機械部品は、特に、前記積層造形法により、前記Co基合金粉末に電子ビームまたはレーザービームを照射して焼結溶解することでニアネットシェイプに成形した後、仕上げ加工して形成されていることが好ましい。この場合、鍛造、圧延等の機械加工や、原材料からの切り出し工程、生加工(内径孔加工)、焼入れ・焼き戻し等の複雑な製造工程が不要となり、さらに容易かつ安価に製造することができる。また、様々な形状・種類のものを製造することができ、多種少量生産を行うことができる。
【0018】
第1乃至第3の本発明に係る機械部品で、前記Co基合金は、前記炭化物が立体的に網目状に繋がっていることが好ましい。この場合、より優れた硬度および靭性が得られる。
【0019】
第1乃至第3の本発明に係る機械部品は、いかなる用途の部品であってもよい。第1乃至第3の本発明に係る機械部品は、優れた硬度および靭性を有し、耐食性および耐摩耗性も高いため、特に刃物から成ることが好ましい。この場合、刃先の強度が高く、刃先が割れたり欠けたりしにくい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた硬度および靭性を兼ね備え、容易かつ安価に製造することができる機械部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の機械部品に対応する試験試料1の、(a)水平断面、(b)垂直断面の電子顕微鏡写真である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態の機械部品に対応する試験試料2の、(a)水平断面、(b)垂直断面の電子顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態の機械部品に対応する試験試料3の、(a)水平断面、(b)垂直断面の電子顕微鏡写真である。
【
図4】(a)
図1に示す試験試料1と同じ成分を有する鋳造材である比較例1、(b)
図2に示す試験試料2と同じ成分を有する鋳造材である比較例2、(c)
図3に示す試験試料3と同じ成分を有する鋳造材である比較例3の断面の電子顕微鏡写真である。
【
図5】
図1〜
図3に示す試験試料1〜3の、立体的に網目状に繋がった炭化物のイメージを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例を挙げながら、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の第1の実施の形態の機械部品は、C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、Mo:14〜20質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成されている。本発明の第1の実施の形態の機械部品は、積層造形体であり、10μm以下の炭化物が均一に分散されたCo基合金から成っている。
【0023】
本発明の第2の実施の形態の機械部品は、C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、W:20〜26質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成されている。本発明の第2の実施の形態の機械部品は、積層造形体であり、10μm以下の炭化物が均一に分散されたCo基合金から成っている。
【0024】
本発明の第3の実施の形態の機械部品は、C:2.5〜5.0質量%と、Cr:26〜35質量%と、Mo:10〜15質量%と、W:5〜7質量%と、不可避不純物とを含み、残部がCoから成るCo基合金粉末を材料とし、積層造形法を利用して形成されている。本発明の第3の実施の形態の機械部品は、積層造形体であり、10μm以下の炭化物が均一に分散されたCo基合金から成っている。
【実施例1】
【0025】
本発明の第1の実施の形態の機械部品に対応する粉末試料1として、Cr:27質量%、Mo:16質量%、Co:残部を含むCo基合金組成物に、炭素を3質量%添加した原料を真空溶解し、窒素ガス中でガスアトマイズして、Co基合金粉末を作製した。これらの粉末の平均粒径は、アトマイズ条件と、メッシュ篩とを調整することで、1μmから200μmとした。
【0026】
本発明の第2の実施の形態の機械部品に対応する粉末試料2として、Cr:27質量%、W:22質量%、Co:残部を含むCo基合金組成物に、炭素を3質量%添加した原料を真空溶解し、窒素ガス中でガスアトマイズして、Co基合金粉末を作製した。これらの粉末の平均粒径は、アトマイズ条件と、メッシュ篩とを調整することで、1μmから200μmとした。
【0027】
本発明の第3の実施の形態の機械部品に対応する粉末試料3として、Cr:27質量%、Mo:12質量%、W:6質量%、Co:残部を含むCo基合金組成物に、炭素を3質量%添加した原料を真空溶解し、窒素ガス中でガスアトマイズして、Co基合金粉末を作成した。これらの粉末の平均粒径は、アトマイズ条件と、メッシュ篩とを調整することで、1μmから200μmとした。
【0028】
粉末試料1〜3を材料として、積層造形法を利用して、それぞれ試験試料1〜3の積層造形体を作製した。積層造形法では、真空チャンバー内でCo基合金粉末に電子ビームを照射して焼結溶解することにより、ニアネットシェイプに成形した。このとき、70μmの1層の厚さごとに、ステージX軸およびY軸に垂直な方向に交互に電子ビームをスキャンして、焼結溶解した。ニアネットシェイプに成形後、Heガス雰囲気で冷却を行い、さらに仕上げ加工を行って、一辺が10mmの立方体形状の試験試料1〜3を作製した。
【0029】
なお、使用した電子ビーム積層造形(EBM)装置は、Arcam EBM A2X system(Arcam AB, Molndal, Sweden)である。積層造形の条件として、加速電圧を60kV、予備加熱温度域を750〜850℃とした。また、試験試料1〜3には、それぞれの主成分以外にも、Si、Mn、N、Ni、Ti、Fe、Nb、V、Ta等の不可避不純物が含まれている。なお、ここでは、積層造形に電子ビームを用いたが、レーザービームを用いても同様に試料を作製することができる。作製した試験試料1〜3の組成を、表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
試験試料1〜3について、シャルピー衝撃値およびロックウェル硬度(HRC)の測定を行った。それらの測定結果を、表1に示す。表1に示すように、試験試料1〜3のいずれも、硬度がHRC70以上であり、超硬合金並みの硬度であることが確認された。また、試験試料1〜3のシャルピー衝撃値は、8〜12J/cm
2であり、超硬合金の約3〜4倍となり、鉄鋼材料に近い靭性を有することが確認された。
【0032】
次に、試験試料1〜3について、積層造形の際の積層面に沿った水平断面、および、積層方向に沿った垂直断面に対して、電子顕微鏡写真による組織観察を行った。水平断面および垂直断面は、それぞれ一辺10mmの立方体形状を成す試験試料1〜3の中心を通る断面とした。試験試料1の水平断面および垂直断面の電子顕微鏡写真を、それぞれ
図1(a)および(b)に、試験試料2の水平断面および垂直断面の電子顕微鏡写真を、それぞれ
図2(a)および(b)に、試験試料3の水平断面および垂直断面の電子顕微鏡写真を、それぞれ
図3(a)および(b)に示す。
【0033】
なお、比較のため、試験試料1〜3と同じ成分の原料を真空溶解し、その溶湯を金型に鋳込んで作成したインゴット(以下、「鋳造材」という)についても、電子顕微鏡写真による組織観察を行った。試験試料1〜3に対応する成分の鋳造材をそれぞれ比較例1〜3とし、それぞれの断面の電子顕微鏡写真を、
図4(a)〜(c)に示す。
【0034】
図1〜3に示すように、試験試料1〜3は、いずれも組織中に微細化された炭化物が析出していることが確認された(図中の白色および灰色の部分)。また、これらの炭化物は、10μm以下であり、組織中にほぼ均一に分散されていることも確認された。これらの炭化物は主に、
図1ではCrおよびMoの炭化物であり、
図2ではCrおよびWの炭化物であり、
図3ではCr、MoおよびWの炭化物である。なお、図中の黒色部分は、Coマトリックスである。
【0035】
また、
図1〜3では、析出した炭化物が、水平断面および垂直断面のどちらにも、10μm以下で網目状に微細分散していることから、
図5に示すように、炭化物は立体的に網目状に繋がって強く結びついて存在しているものと考えられる。このように、試験試料1〜3は、積層造形法を利用して形成することにより、炭化物などの析出物が10μm以下まで微細化されるとともに、その炭化物が立体的に網目状に繋がるため、表1に示すような非常に優れた硬度および靭性を有していると考えられる。
【0036】
表1に示す硬度とシャルピー衝撃値の結果、および
図1〜3の組織観察の結果から、本発明の第1乃至第3の実施の形態の機械部品は、耐摩耗性や、刃先などの薄く形成された部分の強度(靭性)を高めることができる。このため、摺動部品(ベアリング、ガイドレール等)や刃物などにしたときでも、長寿命で、割れたり欠けたりしにくい。
【0037】
これに対し、鋳造材の比較例1〜3は、
図4に示すように、析出した炭化物が組織中に均一に分散しておらず、互いに立体的に強く結びついていない。このため、脆くて崩れやすく、構造物として成り立たず、シャルピー衝撃値を測定することはできなかった。このことから、同じ成分であっても、鋳造材では靭性は得られず、機械部品として使用することは不可能であるといえる。