(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875689
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】無線通信ネットワークのためのデータ集中ゲートウェイの負荷を制御する方法
(51)【国際特許分類】
H04M 11/00 20060101AFI20210517BHJP
H04W 28/10 20090101ALI20210517BHJP
H04W 88/10 20090101ALI20210517BHJP
H04W 4/70 20180101ALI20210517BHJP
【FI】
H04M11/00 302
H04W28/10
H04W88/10
H04W4/70
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-511579(P2019-511579)
(86)(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公表番号】特表2019-531011(P2019-531011A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】FR2017052275
(87)【国際公開番号】WO2018042110
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】1658015
(32)【優先日】2016年8月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518381868
【氏名又は名称】カーリンク
【氏名又は名称原語表記】KERLINK
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】デュブール ロナン
(72)【発明者】
【氏名】ドリビエ ヤニック
【審査官】
石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−054344(JP,A)
【文献】
特表2014−511090(JP,A)
【文献】
特開2009−207187(JP,A)
【文献】
特開2015−076799(JP,A)
【文献】
特開2009−171382(JP,A)
【文献】
米国特許第07941175(US,B1)
【文献】
中国特許出願公開第103493534(CN,A)
【文献】
特開2010−258660(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/068308(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24−7/26
H04M3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04W4/00−8/24
8/26−16/32
24/00−28/00
28/02−72/02
72/04−74/02
74/04−74/06
74/08−84/10
84/12−88/06
88/08−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークのためのデータ集中ゲートウェイの負荷を制御する方法であって、
複数の遠隔クライアント装置から複数のデータ信号を受信し、
受信した各データ信号の通信開始時点を提供し、
受信したデータ信号を選択し、
受信した各データ信号の通信終了時点を決定し、
前記選択したデータ信号の通信開始時点と前記選択したデータ信号の通信終了時点との間に存する通信終了時点を有する、前記ゲートウェイが受信したデータ信号の数を決定し、
前記データ信号の数を閾値数と比較し、
前記データ信号の数が前記閾値数より大きいという検出に応答して警報信号を送信する
データ集中ゲートウェイの負荷を制御する方法。
【請求項2】
前記ゲートウェイが、複数の復調器を備え、前記ゲートウェイの各復調器は前記ゲートウェイによって受信されたデータ信号を復調するように構成され、
方法には、
前記複数のデータ信号を前記復調器によって復調するステップがさらに含まれ、
前記閾値数が前記ゲートウェイ内の復調器の数に対応する、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記ゲートウェイは、複数の無線データ信号を受信するように構成された無線通信インタフェースを含み、前記無線通信インタフェースが前記復調器に接続され、
前記通信インタフェースによって受信された各データ信号をそれぞれの復調器に送信するステップがさらに含まれる、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記ゲートウェイは前記信号を受信するためのアンテナをさらに備える、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記受信アンテナは、433MHz、868MHz、及び915MHzの周波数のグループの中の1つの周波数でデータ信号を受信するように構成される、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
各データ信号は、LoRa技術、Sigfox技術及びWM−BUS技術の中から選択される通信プロトコルのフレームである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
各受信データ信号の通信終了時点を決定することには、各受信したデータ信号について、
前記受信したデータ信号に対応するフレーム長を決定し、
前記フレーム長及び前記データ信号を受信した無線チャネルのデータレートの関数として、前記受信したデータ信号に対応する前記フレームの通信終了時点を計算する、ことが含まれる、請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記ゲートウェイには、受信した各データ信号の通信開始時点に対応するタイムスタンプデータ要素を供給することができる内部クロックが設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
データ信号を送信する1組の遠隔クライアント装置を含む無線通信ネットワーク用のデータ集中ゲートウェイであって、
1組のクライアント装置から無線データ信号を受信するように構成された無線通信インタフェースと、
前記通信インタフェースが受信したデータ信号を復調するように構成された複数の復調器と、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の制御方法を実行するように構成された制御ユニットと、を備える
データ集中ゲートウェイ。
【請求項10】
遠隔ネットワークに接続され、前記復調したデータ信号を送信するように構成されたネットワークインタフェースをさらに備える、請求項9に記載のデータ集中ゲートウェイ。
【請求項11】
前記ゲートウェイは、前記ゲートウェイに接続されたゲートウェイ管理装置に警報データ信号を送信するように構成された警報をさらに備える、請求項9又は10に記載のデータ集中ゲートウェイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にオブジェクトのインターネットの分野における無線データ通信のための方法及び装置の分野に関する。より詳細には、本発明は、無線通信ネットワーク用のデータ集中ゲートウェイ及びこれらのゲートウェイの制御の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
オブジェクトのインターネットは、無線ネットワークを使用して日常のオブジェクトが自動的にデータを通信することを可能にすることにある。例えば、通信モジュールを装備した水道メータが水の消費に対する請求を担当する事業に水道メータの測定値を自動的に通信することができる。
【0003】
基地局とも呼ばれるゲートウェイには、通信可能範囲内に存在する通信モジュールとの間でデータを無線で送受信できるようすると共に、これらの処理を担当するデバイス、例えばIPプロトコル(「インターネットプロトコル」)に基づくネットワークインターネットにアクセスできるサーバに、これらのデータを中継するという目的がある。
【0004】
ネットワーク通信モジュールの実装にはいくつかの無線アクセス技術が利用可能である。特に異なる種類の変調に基づくLoRa(商標)、Sigfox(商標)又はWM−Bus(英語の「Wireless Meter Bus」から)技術は、本明細書では純粋に例示として及び意図を限定することなく言及され得る。
【0005】
これらの技術には、長距離(英語では「long range」と呼ばれる)通信を提供するという共通の機能があり、ゲートウェイのカバー範囲を広げながらゲートウェイの数を減らすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一方では通信モジュールとゲートウェイとの間の通信、他方ではゲートウェイとゲートウェイを通過するデータの処理を担当する遠隔装置との間の通信は、異なる通信プロトコルに基づいている。従って、ゲートウェイは、対応する情報を関連するさまざまな遠隔装置に送信する前に、自身のカバー範囲内に存在するさまざまな通信モジュールから受信した信号を復調する必要がある。この目的のために、これらの信号はゲートウェイに組み込まれたさまざまな復調器によって処理される。ただし、ゲートウェイによって良好な状態で同時に処理できる信号の数はそれが含む復調器の数によって制限される。さらに、ゲートウェイによって同時に処理される信号の数は時間とともに変化し得る。従って、ゲートウェイの負荷を制御するための方法が必要とされる。
【0007】
本発明はこの要求を満たすことを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、無線通信ネットワーク用のデータ集中ゲートウェイ上の負荷を制御する方法を提供し、複数の遠隔クライアント装置から複数のデータ信号を受信し、受信した各データ信号の通信開始
時点を提供し、受信データ信号を選択し、受信した各データ信号の通信終了
時点を決定し、選択したデータ信号の通信開始
時点と選択したデータ信号の通信終了
時点との間に存する通信終了
時点を有するゲートウェイによって受信されたデータ信号の数を決定し、前記データ信号の数を閾値数と比較し、前記データ信号の数が前記閾値数より大きいという検出に応答して警報信号を送信する、ことを含む。
【0009】
これらの特性のため、ゲートウェイの負荷が同時に処理される信号の閾値数を超えるとすぐにアラームが送信される。従って、これらの特性によりゲートウェイの負荷が所定の閾値を超えていないことを確認できる。
【0010】
他の有利な実施形態によれば、データ集中ゲートウェイ上の負荷を制御するためのこのような方法は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を有し得る。
【0011】
一実施形態によれば、ゲートウェイは複数の復調器を含み、ゲートウェイの各復調器はゲートウェイによって受信されたデータ信号を復調するように構成され、方法はさらに復調器で複数のデータ信号を復調するステップを含む。
【0012】
一実施形態によれば、閾値数はゲートウェイ内の復調器の数に対応する。従って、制御方法は、ゲートウェイによって同時に処理される信号の数が、前記データ信号を処理することができる復調器の数を超えないことをチェックすることを可能にする。
【0013】
一実施形態によれば、ゲートウェイは複数の無線データ信号を受信するように構成された無線通信インタフェースを含み、無線通信インタフェースは復調器に接続され、方法には、通信インタフェースによって受信されたデータ信号のそれぞれを各復調器に送信するステップが含まれる。
【0014】
一実施形態によれば、ゲートウェイは信号を受信するためのアンテナをさらに備える。
【0015】
一実施形態によれば、受信アンテナは、433MHz、868MHz、及び915MHzの周波数のグループ内の周波数でデータ信号を受信するように構成される。
【0016】
一実施形態によれば、各データ信号は、LoRa技術、Sigfox技術及びWM−BUS技術の中から選択された通信プロトコルのフレームである。
【0017】
一実施形態によれば、各受信データ信号の通信終了
時点を決定することは、各受信データ信号について受信データ信号に対応するフレームの長さを決定し、フレーム長及びデータ信号が受信された無線チャネルのデータレートの関数として受信データ信号に対応するフレームの通信終了
時点を計算する、ことが含まれる。
【0018】
一実施形態によれば、ゲートウェイは、受信した各データ信号の通信開始
時点に対応するタイムスタンプデータ要素を提供することができる内部クロックを備える。
【0019】
一実施形態によれば、制御方法は、複数のデータ信号の各データ信号の通信終了
時点をゲートウェイのメモリに格納することをさらに含む。
【0020】
一実施形態によれば、ゲートウェイ制御方法にはさらに、ゲートウェイに接続されている遠隔装置から同期データを受信し、同期データに基づいてゲートウェイの内部クロックを同期させることが含まれる。
【0021】
一実施形態によれば、本発明はまた、データ信号を送信する一組の遠隔クライアント装置を含む無線通信ネットワーク用のデータ集中ゲートウェイを提供し、集中ゲートウェイが、一組のクライアント装置から無線データ信号を受信するように構成された無線通信インタフェースと、通信インタフェースによって受信されたデータ信号を復調するように構成された複数の復調器と、上記制御方法を実行するように構成された制御ユニットとを備える。
【0022】
一実施形態によれば、集中ゲートウェイは、遠隔ネットワークに接続され、復調データ信号を送信するように構成されたネットワークインタフェースをさらに備える。
【0023】
一実施形態によれば、集中ゲートウェイはさらに、ゲートウェイに接続されたゲートウェイ管理装置に警報データ信号を送信するように構成された警報を備える。このようなゲートウェイ管理装置は、例えば、遠隔ネットワークを介してゲートウェイに接続されている。このようなゲートウェイ管理装置は複数のゲートウェイに接続することができる。
【0024】
本発明のいくつかの態様は、ゲートウェイ上の負荷を制御するための方法を提供するという考えに基づいている。本発明のいくつかの態様は、ゲートウェイ過負荷が検出された場合に警報を送信するという考えに基づいている。本発明のいくつかの態様は、ゲートウェイによって同時に処理されたデータ信号の数を決定するという考えに基づいている。本発明のいくつかの態様は、ゲートウェイによって同時に受信され処理されるデータ信号の数がゲートウェイ内の復調器の数を超えないことをチェックするという考えに基づいている。いくつかの態様は、ゲートウェイによって受信された各データ信号についてゲートウェイ負荷を監視するという考えに基づいている。
【0025】
本発明のその他の目的、詳細、特徴及び利点が、単に例示を目的として非限定的に提供される本発明のいくつかの特定の実施形態の以下の説明から、よりよく理解されると共により容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】集中ゲートウェイを介した無線ローカルエリアネットワークと広域ネットワークとの間の相互接続の概略図である。
【
図2】
図1の集中ゲートウェイの概略機能図である。
【
図3】
図2のゲートウェイ上の負荷を制御するための方法の動作図である。
【
図4】所与の期間に
図2のゲートウェイによって受信された複数のフレームを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1において、第1の無線ローカルエリア通信ネットワーク(WLAN、「無線ローカルエリアネットワーク」のこと)1が、以降無線ローカルエリアネットワーク1と呼ばれるが、広域通信ネットワーク2(WAN、「広域ネットワーク」のこと)例えばインターネットと、ゲートウェイ3を介して相互接続される。このゲートウェイ3は、それが無線ローカルエリアネットワーク1と広域ネットワーク2の両方に属することを可能にするネットワークインタフェースを含む。
【0028】
ゲートウェイ3に加えて、無線ローカルエリアネットワーク1は、例示として
図1に4つ示されている1組の通信オブジェクト4を含む。これらの通信オブジェクト4は、例えば、水道メータ、ガスメータ、又は他のメータなどの無線センサとすることができる。従って、無線通信モジュールを備えたこれらの通信センサは、それらの特性に応じて、水、ガス又は他のメータの測定値などの測定データを集中ゲートウェイ3に通信することができる。これら通信オブジェクト4は一般に、「低消費」オブジェクトと呼ばれている非常に少ないエネルギーを消費し、そして非常に低いデータレート、例えば2kbps未満の通信手段を使用する固有の特徴を有する。
【0029】
通信オブジェクト4は、大部分が電池又は蓄電池で動作する。それらの電力消費を最適化するために、通信オブジェクト4がデータを送信又は受信することができる期間は制限される。これらの送信期間及び/又は受信期間外では、通信オブジェクト4は、例えば待機状態にあり、それによってそれらの電力消費を低減する。
図1においては、無線ローカルエリアネットワーク1は、例えば、Zigbeeネットワーク、LoRaネットワーク、従来型又は低エネルギー(Bluetooth(登録商標) Smart)タイプのBluetooth(登録商標)ネットワーク、又はIP通信ネットプロトコルに基づかない他の任意のネットワークである。しかしながら、この無線ローカルエリアネットワーク1は明示的ネットワークであり、即ち、各通信オブジェクト4は、それ自体の識別子、例えばMACアドレス(Media Access Control)によって、この無線ローカルエリアネットワーク1内で一意に識別することができる。
【0030】
広域ネットワーク2は、その一部として、インターネット、3G/4G、又は他の通信ネットワークなどのネットワークであるIP通信プロトコルに基づいている。この広域ネットワーク2は、ゲートウェイ3に加えて、サーバ、DNS(「ドメインネームシステム」)サーバ、データベース記憶装置などの遠隔装置5を含む。この広域ネットワーク2に接続されている各遠隔装置5は、IPアドレスによって識別される。遠隔装置5は、無線ローカルエリアネットワーク1上に存在する様々な通信オブジェクト4のいくつか又はすべてから情報を収集し処理するように構成されている。
【0031】
無線ローカルエリアネットワーク1及び広域ネットワーク2は異種通信プロトコルを使用するので、ゲートウェイ3は通信オブジェクト4と遠隔装置5との間のインタフェースとして機能する。通常、ゲートウェイ3は、データを通信装置4から遠隔装置5に及びその逆に通信するためのスイッチングプラットフォームとして機能する。従って、ゲートウェイ3は、一方では矢印37で示すように各通信オブジェクト4と、そして他方では矢印38で示すように遠隔装置5との双方向通信セッションを確立するためのメカニズムを持たなければならない。通信オブジェクト4及び遠隔装置5とこれらの双方向通信を確立するためのゲートウェイ3の一例が
図2に示されている。
【0032】
図2に示すゲートウェイ3は複数の構成要素を含む。特に、ゲートウェイ3は、無線フロントエンドモジュール6、ベースバンド処理モジュール7、マイクロコントローラ8、内部メモリ9、ユーザインタフェース10、GPS11、クロック12、及びネットワークインタフェース13を備える。
【0033】
無線フロントエンドモジュール6は、通信対象4との間で電波を送受信する機能を有する。この目的のために、無線フロントエンドモジュール6は少なくとも1つの無線アンテナ(図示せず)を備える。この無線アンテナは、無線伝送路を介して通信オブジェクト4と交換するデータを搬送する電波を放射又は捕捉するためのものである。無線フロントエンドモジュール6は、例えば、現在の規制に従って、433MHz、868MHz、915MHz、又は他の周波数の周波数を有する無線チャネル上で通信オブジェクト4と通信することができる。無線フロントエンドモジュール6はゲートウェイ3のベースバンド処理モジュール7に接続されて、ゲートウェイ3によって受信された無線信号を送信しゲートウェイ3によって送信されるべきデータ信号を受信する。
【0034】
ゲートウェイ3のベースバンド処理モジュール7は、マイクロコントローラ8による処理のためにゲートウェイ3によって受信されたデータ信号を準備する機能を有する。この目的のために、ベースバンド処理モジュール7は調停モジュール14、複数の復調器15及びバッファメモリ16を備える。
【0035】
調停モジュール14は、無線フロントエンドモジュール6からすべてのデータ信号を受信する。調停モジュール14はすべての復調器15に接続されている。調停モジュール14はゲートウェイ3が受信したデータ信号を復調器15に配信する。ゲートウェイによって受信されたデータ信号の送信は多数の配信基準に従って実行され得る。この配信は、例えば、復調器15の利用可能性、データ信号のデータレート、無線通信チャネル、データ信号の強度、又は他の要因に基づいて実行することができる。
【0036】
調停モジュール14は、異なるデータレートで受信されたデータ信号の状況を含めて、復調されるべきパケットの複数のヘッダを同時に検出することができる。しかしながら、各復調器は一度に1つのパケットしか復調できない。従って、ゲートウェイ3によって同時に復調され得るパケットの数は、ゲートウェイ3に組み込まれている復調器15の数によって制限される。
【0037】
ベースバンド処理モジュール7に組み込まれた復調器15は、異なる特性、特に要求に従ってさまざまなプログラム可能性特性を有することができる。
【0038】
従って、第1の変形形態では、復調器15は、複数の許可された周波数の中から所与の周波数を使用するように構成可能であり得る。復調器15の復調帯域幅は、例えば、125、250、又は500kHzに構成することができる。復調器15によって許可されるデータレートはまた、複数の利用可能なデータレートの中からの任意のデータレートで構成されてもよい。しかしながら、復調器15が実際に構成されているデータレートを有する1つのデータ信号のみが復調される。そのように構成可能な復調器15は、他のゲートウェイ又は遠隔装置5への高データレートリンクとして機能するように意図されていることが好ましい。
【0039】
第2の変形例では、復調器15は、変更又は構成されていない通過帯域、例えば125kHzの所定の通過帯域で動作するように設計されてもよい。しかしながら、この第2の変形による復調器15のデータレートは適応可能なままであるので、この第2の変形による復調器15は予備構成なしに異なるデータレートで信号を受信することができる。この第2の変形による復調器15は、好ましくは、多数の通信オブジェクト4を含むスター型ネットワークに専用に使用される。好ましくは、ゲートウェイ3の近くに位置する通信オブジェクト4は、125kHz(例えば、約6kbit/s)の固定通過帯域における最大可能データレートを使用するのに対して、ゲートウェイ3から遠い通信オブジェクト4は、より低いデータレート(125kHzのチャネルに対する最小LoRaデータレートに対応する300bit/sまで)を使用するであろう。
【0040】
好ましくは、通信オブジェクト4は、送信毎にそれらの送信周波数を変更することができ、従って複雑さを追加することなくそれらのリンクの構成に従って動的データレートの適応を可能にする。さらに、全てのデータレートがベースバンド処理モジュール7によって並行して復調されるので、異なる通信オブジェクト4によって使用されるデータレートのテーブルを更新する必要がない。
【0041】
復調器15によって復調された各パケットはメタデータと関連付けられる。これらのメタデータは、ベースバンド処理モジュール7によって検出される。これらのメタデータは、パケット送信の開始
時点、パケット長、及びパケット送信のデータレートを含む。復調されたパケット及び関連するメタデータは、ベースバンド処理モジュール7のバッファメモリ16に格納される。ベースバンド処理モジュール7は、ゲートウェイ3のマイクロコントローラ8がベースバンド処理部7のバッファメモリ16にアクセスできるようにゲートウェイ3のマイクロコントローラ8に接続されている。
【0042】
ベースバンド処理モジュール7では、復調器15のいずれかがパケットを復調するときはいつでも、このパケットがメタデータと呼ばれる追加情報と共にバッファメモリ16に格納される。メタデータは、例えば、無線チャネル識別子、パケットの長さにわたる平均信号対雑音比(dB)、パケットの長さにわたる最小の信号対雑音比(dB)、パケットの長さにわたる最大信号対雑音比(dB)、パケットの持続時間にわたる平均信号強度(dB)、パケットの開始に関するタイムスタンプデータ、誤り訂正コード値、復調器の識別子、相関ピーク位置、及び検出相関の信号対雑音比を含む。
【0043】
同様に、ベースバンド処理モジュール7を使用して、無線フロントエンドモジュール6によって送信されるべき遠隔装置5からのデータを、無線フロントエンドモジュール6に送信することができる。ゲートウェイ3に組み込まれ得るベースバンド処理モジュール7の例は、米国のSemtech(登録商標)によって製造されたSX1301プロセッサである。
【0044】
マイクロコントローラ8はゲートウェイ3のすべての要素に接続されて、ゲートウェイ3を管理し無線ローカルエリアネットワーク1と広域ネットワーク2との間のデータ転送を可能にする。具体的には、マイクロコントローラ8が用いられてゲートウェイ3の各種動作処理を実行する。各種動作処理を規定するプログラムは例えばゲートウェイ3の内部メモリ9に格納されている。これらの動作処理は、ゲートウェイ3を管理することができる任意のタイプのもの、例えばゲートウェイによって受信されたデータ信号を処理しそれらを受信者に送信する処理、参照データを提供するGPS11を使用してゲートウェイ3を同期させる処理、あるいは、クロック12を使用して様々な通信オブジェクト4を同期させる処理である。
【0045】
ユーザインタフェース10は、ゲートウェイ3を構成するための複数の入出力手段を備える。これらの入出力手段は、例えば、内部メモリ9へのアクセスを提供する入出力ポート、USB接続デバイス、又は他の手段などのコネクタである。ユーザインタフェースはまた、制御画面、ゲートウェイの動作状態を示すLEDランプ、又は他の手段などのヒューマンマシンインタフェース手段を含み得る。
【0046】
ゲートウェイ3のネットワークインタフェース13は、広域ネットワーク2を介してゲートウェイ3を遠隔装置5に接続するのに使用されてもよい。
【0047】
ゲートウェイ3は、例えば電力供給用のバッテリ(図示せず)を備える。
【0048】
図3は、
図2のゲートウェイ上の負荷を制御する方法の動作図である。
【0049】
上述したように、ゲートウェイ3が通信対象4からデータ信号を受信すると、対応するパケットはベースバンド処理モジュール7の復調器15の1つに送信されて処理される。メタデータに関連付けられベースバンド処理モジュール7のバッファメモリ16に格納された各復調パケットは、ゲートウェイ3の負荷を制御する方法の実行を生成する。これについては、
図3を参照してこれから説明する。
【0050】
復調器がフレーム開始
時点ddt1を検出すると(ステップ17)、フレーム開始
時点ddt1はメタデータ要素としてバッファメモリ16に記録される(ステップ18)。マイクロコントローラ8はまたフレーム開始
時点ddt1を読み取り、対応するフレーム終了
時点dft1を決定する(ステップ19)。この目的のために、マイクロコントローラ8は、例えば復調器15によってメタデータに含まれることによって供給されるなどの任意の可能な手段で、フレーム持続時間dt1を決定する(ステップ20)。フレーム終了
時点dft1は、次式に従って、フレーム期間dt1に基づいて計算される(ステップ22)。
dft1=ddt1+dt1
ここで、dt1=l/ddct1で、lは、ビット単位のフレーム長、ddct1はチャネルのデータレート(bps単位)である。
【0051】
この目的のために、マイクロコントローラ8は、フレーム長l(ビット)及びフレームが通過したチャネルのデータレートddct1を決定する。チャネルddct1のこのデータレートは、それ自身のパラメータに基づいて復調器15によって直接供給される。
【0052】
フレーム終了
時点dft1が決定されたので(ステップ19)、マイクロコントローラ8は、フレーム開始
時点ddt1とフレーム終了
時点dft1との間にあるフレーム終了
時点を有するゲートウェイ3によって受信されたフレームの数Nを決定する(ステップ23)。この目的のために、マイクロコントローラ8は、ベースバンド処理モジュール7のバッファメモリ16に格納されているメタデータを調べることができる。
【0053】
次に、マイクロコントローラ8は、1だけ増分されたフレーム数Nを、例えばゲートウェイ3に存在する復調器15の数Mに等しい閾値Sと比較する(ステップ24)。Nを1だけインクリメントすることにより、フレーム開始
時点ddt1の受信(ステップ17)が処理の実行を発生させたフレームを考慮することが可能になる。ゲートウェイに存在する復調器15の数は既知の数Mであり、これは例えばゲートウェイ3の内部メモリ9に記憶されている。
【0054】
この数N+1がゲートウェイ3内に存在する復調器15の数Mより厳密に小さい場合(ステップ25)、ゲートウェイへの負荷が重要でないと考慮されるので、方法はマイクロコントローラ8による追加の動作無く終了する(ステップ26)。
【0055】
一方、数N+1がゲートウェイ3に存在する復調器15の数M以上である場合(ステップ27)、マイクロコントローラ8は警報を送信する(ステップ28)。そのような警報は、ゲートウェイ3、光信号、又はゲートウェイ3のユーザインタフェース10に組み込まれた拡声器を使用する又は他の適切な手段による可聴警報、を管理するための任意の適切な方法、例えば遠隔サーバへのメッセージ送信の形態で生成される。
【0056】
警報が送信されると(ステップ28)、ゲートウェイ3の管理及び/又は保守を担当する担当者は、ゲートウェイ3の過負荷を知らされる。次いで、ゲートウェイ3が過負荷のままであることを防ぐためにいくつかの応答が行われ得る。従って、復調器15をゲートウェイ3に物理的に追加してその処理能力を増大させ、従って警報が送信される以上に閾値数を増加させることができる。別の解決策は、通信オブジェクト4を再プログラムして通信オブジェクト4からのアップロードを減らしそれによって復調器15のいくつかによって受信されたフレーム終了
時点を時間の経過とともに拡散させるか、又は通信オブジェクト4によって送信されるパケットを短縮する。
【0057】
上述のようにゲートウェイ3の負荷を制御する方法は、好ましくは、検出された新しいフレーム開始
時点ごとに実行される。ゲートウェイ3の負荷を制御するためのこのような方法は、ゲートウェイ3上の負荷を簡単で経済的な方法で推定することを可能にする。これは、この方法によって低い計算コストで復調器15の負荷をリアルタイムに決定することができるからである。従って、ゲートウェイ3の負荷を制御するためのこの方法は、その性能を低下させる危険性の無くゲートウェイ3において実施することができる。
【0058】
警報をトリガするための閾値数、即ち、ステップ24において数N+1が比較される数Sは、内部メモリ9に記憶されてもよく、またゲートウェイ3に存在する復調器15の数以外の値を表してもよい。例えば、この閾値数は、2より少ない復調器の数に対応するように作られてもよく、従って、すべての復調器15が飽和する以前に警報を生成することを可能にする。
【0059】
図4は、所定期間内に
図2のゲートウェイ3によって受信された複数のフレームの一例を示すグラフである。この図では、横軸は時間を表し、縦軸は、経時的にゲートウェイ3によって受信されたデータ信号を処理する異なる復調器15を示す。
【0060】
このグラフは、ゲートウェイ3の復調器M3によるフレームt3の処理後に実行されるゲートウェイ3の負荷を制御する方法に関する。フレームt3では、フレーム開始
時点ddt3とフレーム終了
時点dft3とがグラフィックインタフェース7のバッファメモリ16に格納される、又はフレームt3に対応するパケットに関連するメタデータを使用してマイクロコントローラ8によって決定される。さらに、
図3を参照して説明したゲートウェイの負荷を制御する処理の実行は、フレーム終了
時点がフレーム開始
時点ddt3とフレーム終了
時点dft3との間にあるフレームの数Nを決定するステップを含む。
図4に示すように、フレームt1及びt2のみがそれぞれフレーム終了
時点dft1及びdft2を有するフレーム開始
時点ddt3より後かつフレーム終了
時点dft3より前である。他のフレームは、フレーム終了
時点dft3より後のフレーム終了
時点を有する。従って、この場合、復調器M3によるフレームt3の処理の後に実行されるゲートウェイの負荷を制御する方法は、フレーム終了
時点を有するフレームの間のN+1個のフレームの間にあるのでアラームを生成しない。フレーム開始
時点ddt3及びフレーム終了
時点ddf3、即ちN=3は、復調器の数Mより少なく、
図4に示す場合では6である。
【0061】
本発明をいくつかの特定の実施形態を参照して説明したが、明らかにこれらの実施形態に限定されるものではなく、記載された手段のすべての技術的均等物及びそれらの組み合わせは本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
表された要素のいくつか、特にゲートウェイの構成要素は、ハードウェア及び/又はソフトウェア構成要素を使用して、単一の形又は分散された形でさまざまな形で作ることができる。使用可能なハードウェア構成要素は、ASIC特有の集積回路、FPGAプログラマブルロジックネットワーク、又はマイクロプロセッサである。ソフトウェアコンポーネントは、C、C++、Java(登録商標)又はVHDLなどの様々なプログラミング言語で書かれていてもよい。このリストは網羅的なものではない。
【0063】
「有する」、「備える」、又は「含む」という動詞及びその活用形の使用は、請求項に記載されているもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。
【0064】
請求項において、括弧内の如何なる参照符号も請求項の限定として解釈されるべきではない。