(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875693
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ニンニク臭の消臭剤および消臭飲料、消臭剤の製造方法、ならびに消臭方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/20 20160101AFI20210517BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20210517BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20210517BHJP
【FI】
A23L5/20
A23L19/00 C
A23L2/38 C
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-98534(P2016-98534)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-205040(P2017-205040A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504304167
【氏名又は名称】吉田商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303055475
【氏名又は名称】株式会社 GREENSTUFF
(74)【代理人】
【識別番号】100131428
【弁理士】
【氏名又は名称】若山 剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 憲太郎
【審査官】
大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−019188(JP,A)
【文献】
特開2007−053980(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/011253(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/176852(WO,A1)
【文献】
特開2009−165452(JP,A)
【文献】
特開2000−256345(JP,A)
【文献】
特開2003−102821(JP,A)
【文献】
特開2003−009784(JP,A)
【文献】
特開昭61−247461(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01088560(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61L 9/00 − 9/22
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水若しくは調味液に浸したニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくはニンニクペーストに添加されることによりニンニク臭を消臭するニンニク臭の消臭剤であって、
前記ニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくは前記ニンニクペーストに前記消臭剤が添加された混合物の重量の0.06%〜100%の重量を前記消臭剤が固形物換算で有し、
野菜類、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類、及び、豆類の何れか1種以上の可食部又は非可食部の非水溶性物質を炭酸水素ナトリウム水溶液中で加熱処理した際に溶出する抽出液を、そのまま、または中和、または濃縮、もしくは粉末にすることを特徴とするニンニク臭の消臭剤。
【請求項2】
請求項1に記載のニンニク臭の消臭剤を、飲料に混合したことを特徴とするニンニク臭の消臭飲料。
【請求項3】
水若しくは調味液に浸したニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくはニンニクペーストのニンニク臭を消臭する消臭剤の製造方法において、
野菜類、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類、及び、豆類の何れか1種以上の可食部又は非可食部の非水溶性物質を炭酸水素ナトリウム水溶液中で加熱処理し、前記加熱処理により溶出した抽出液を、そのまま、または中和、または濃縮、もしくは粉末にすることで前記消臭剤とし、前記ニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくは前記ニンニクペーストに前記消臭剤が添加された混合物の重量の0.06%〜100%の重量を前記消臭剤が固形物換算で有することを特徴とするニンニク臭の消臭剤の製造方法。
【請求項4】
水若しくは調味液に浸したニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくはニンニクペーストのニンニク臭を消臭するニンニク臭の消臭方法において、
野菜類、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類、及び、豆類の何れか1種以上の可食部又は非可食部の非水溶性物質を炭酸水素ナトリウム水溶液中で加熱処理した際に溶出する抽出液を、そのまま、または中和、または濃縮、もしくは粉末にすることにより生成されるニンニク臭の消臭剤を、前記ニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくは前記ニンニクペーストに添加し、
前記消臭剤が、前記ニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくは前記ニンニクペーストに添加された混合物の重量の0.06%〜100%の重量を前記消臭剤が固形物換算で有することを特徴とするニンニク臭の消臭方法。
【請求項5】
請求項4に記載のニンニク臭の消臭方法において、
前記消臭剤が添加された、前記ニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくは前記ニンニクペーストを、容器に密封することを特徴とするニンニク臭の消臭方法。
【請求項6】
請求項5に記載のニンニク臭の消臭方法において、
前記容器に密封した後、更に70℃〜85℃で10分〜30分間加熱殺菌することを特徴とするニンニク臭の消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニンニク臭の消臭に関する消臭剤および消臭飲料、消臭剤の製造方法、ならびに消臭方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アメリカの国立ガン研究所は、植物性食品のフィトケミカルに関する研究の成果として、ガンなどの生活習慣病を予防する食品のトップにニンニクをあげた。また、ニンニクは料理に欠かせない食材として広く普及しているが、翌日まで残る特有な臭いのために食べることを制限する人も多い。こうしたことからニンニクの消臭については多くの方法が開発されている。また、ニンニクの加工品、例えば漬物に代表される調味ニンニクは25%程度の塩分濃度で保存した塩蔵ニンニクを原料にする。塩蔵ニンニクは塩分1〜2%まで脱塩してから使用する。従って、脱塩過程で、ニンニクの機能性成分、有臭成分はほぼ100%流出する。そのために殆どの市販調味ニンニクはニンニクの機能を期待できない。
【0003】
従来のニンニクの消臭方法として、例えば水にアルギン酸ナトリウムを分散させ、カルシウム塩、マグネシウム塩またはこれらの混合物を添加し、生成した水不溶性アルギン酸塩を分散させてからゼオライトまたは珪澡土を添加し、ニンニクを浸漬させて消臭する方法が示されている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、40〜70℃で加熱処理したニンニクを低濃度のカルシウム塩溶液に浸漬した後にペクチン等々の極性基を有する低濃度の多糖類分散液に浸漬することによる食後無臭化法が開発されている(例えば特許文献2)。
【0005】
また、漬物などに用いる生ニンニクに関しては、例えば皮剥きした生のニンニクまたは細断したニンニクを(1)クエン酸またはクエン酸を主とする酢酸、酒石酸の混合物と、(2)塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムの群から選ばれた1種または2種以上の無機塩類とからなる混合水溶液に浸漬し、10〜40℃で保持し脱臭する方法が記載されている(例えば特許文献3)。しかしながらこの方法は効果が少なく不安定である。
【0006】
また、すり下ろしたニンニクまたはニンニク搾汁にタマネギエキスとビタミンB
1 を添加することによるニンニクの消臭方法が示されている(例えば特許文献4)。しかしながらこの方法は、タマネギエキスの酵素を使用するので、処理条件によって効果が大きく左右されて不安定であり、また産業廃棄物の処理コストが高く、実用的な方法ではない。
【0007】
更に、水または調味液に浸したニンニクに、海藻または海藻抽出物を消臭剤として混合することにより消臭する方法が示されている(例えば特許文献5)。この方法は同種の海藻でも、海藻の栽培地や収穫時期等々により消臭効果に差異があるので、消臭が不安定である。
【0008】
更に、水または調味液に浸したニンニクに、海藻または海藻抽出物、灰化物を消臭剤として混合することにより消臭する方法が示されている(例えば特許文献6)。この方法による無臭化は、海藻中のアルギン酸やフコイダンのような多糖類による有臭成分の包摂と、有臭成分とポリフェノールやヨウ素との反応を、要因と考えることができる。この方法は、安定的な効果を期待できるが、海藻が高価という難点がある。
【0009】
ニンニク臭の発生原因について考察すると、ニンニクは組織が破壊されない状態では無臭である。これは臭い成分の前駆物質であるアリーンを代表とするS-アルケニル- L-システインスルホキシド類が細胞質、その分解酵素のアリナーゼが維管束鞘に存在するためである。すなわち、切断や磨砕等により組織が破壊され両成分が接触すると、無臭のSーアルケニル- Lーシステインスルホキシド類はアリナーゼにより有臭成分のアリシン等々のチオスルフィネート類に変化する。
【0010】
生成したアリシンは化学的に変化して有臭成分のスルフィド類、アホエン類、ビニルジチン類等々になる。また、ニンニクを食した後の呼気にはジアリルジスルフィド、ジアリルスルフィド、アリルメチルジスルフィド、アリルメチルスルフィド等々が検出される。これら有臭成分の中でアリルメチルスルフィドは一日後でも呼気に残る。しかし、他は食後20分程度でピークに達し、2〜3時間で消失する。この事実はニンニク臭の成分には体内で速やかに消費されるタイプと、代謝に時間のかかるタイプのあることを示唆している。
【0011】
したがって、ニンニク臭の無臭化はアリナーゼを失活させるか、Sーアルケニル- Lーシステインスルホキシド類を分解するか、安定な物質に変えるか、包摂することにより達成できる。更に、翌日まで体臭として残る成分の生成抑制または消去によっても食後無臭を達成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平06ー253769号
【特許文献2】特開2005ー204510号
【特許文献3】特開平09ー187247号
【特許文献4】特開平11ー215961号
【特許文献5】特開2007ー5398号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を改善するために野菜類、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類、豆類の可食部または、非可食部の非水溶性物質から、アルカリ性水溶液に溶出する抽出物、及び抽出した後の固形物により、体内での滞留時間の長い有臭成分を、食後速やかに且つ確実に無臭化し、翌日には影響のないニンニク産品を、安価に、大量に生産することができるニンニク臭の消臭剤および消臭飲料、消臭剤の製造方法、ならびに消臭方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1記載のニンニク臭の消臭剤は、野菜類または、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類もしくは豆類の何れか1種以上の可食部または非可食部の非水溶性物質から、pH8.0〜pH15.0のアルカリ性水溶液中で浸漬処理した際に溶出する抽出液からなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項2記載のニンニク臭の消臭剤は、野菜類または、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類もしくは豆類の何れか1種以上の可食部または非可食部の非水溶性物質から、pH8.0〜pH15.0のアルカリ性水溶液中で浸漬処理した際に溶出する抽出液を抽出した後の固形物からなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項3記載のニンニク臭の消臭剤は、請求項1または2記載のニンニク臭の消臭剤を、そのまま、または中和、または濃縮、もしくは粉末にしたことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項4記載のニンニク臭の消臭飲料は、請求項3記載のニンニク臭の消臭剤を、飲料に混合したことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項5記載のニンニク臭の消臭剤の製造方法は、野菜類または、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類もしくは豆類の何れか1種以上の可食部または非可食部の非水溶性物質を、pH8.0〜pH15.0のアルカリ性水溶液中で30〜100℃で加熱処理して、ここから溶出した抽出液を、これをそのまま、または中和、または濃縮、もしくは粉末にすることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項6記載のニンニク臭の消臭方法は、請求項1記載のニンニク臭の消臭剤を、水または調味液に浸したニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくはニンニクペーストに、固形物換算で0.06〜100重量%混合することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項7記載のニンニク臭の消臭方法は、請求項2記載のニンニク臭の消臭剤を、ニンニクペーストに、固形物換算で0.4〜20.0重量%混合することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項8記載のニンニク臭の消臭方法は、請求項6または7記載のニンニク臭の消臭方法において、処理したニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくはニンニクペーストを、容器に密封することを特徴とするものである。
【0022】
本発明の請求項9記載のニンニク臭の消臭方法は、請求項8記載のニンニク臭の消臭方法において、ニンニク臭の消臭剤を混合した後、更に70〜85℃で10〜30分間加熱殺菌することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に関わる請求項1記載のニンニク臭の消臭剤によれば、抽出液をそのまま、または濃縮、または中和して、ニンニクのペーストに混合することにより、食す際にはニンニク臭を有するが、体内での滞留時間の長い臭い成分の生成阻害が起こり、食後速やかに且つ確実に無臭化し、翌日には影響のないニンニク産品を簡単に製造できる。
【0024】
本発明の請求項2記載のニンニク臭の消臭剤によれば、粗細胞壁から消臭剤を抽出した後の固形物を消臭剤として用い、食後のニンニク臭を消臭することができる。この結果、使われている植物性食材を廃棄することなく、ほぼ全てを活用できるので、資源の有効利用の面でも極めて優位性が高く、廃棄物の低減化、資源の有効利用の観点からも極めて優位性が高い
【0025】
本発明の請求項3記載のニンニク臭の消臭剤によれば、ニンニク臭の消臭剤を、そのまま、または中和、または濃縮、もしくは粉末にしたので、使用目的に応じてその形状を選択することができる。
【0026】
本発明の請求項4記載のニンニク臭の消臭飲料によれば、抽出液を中和して配合した水または飲料を餃子等のニンニク料理の喫食時に飲用すれば、食後に発生するニンニク臭を確実に消臭することができ、食後のニンニク臭を気にしなくてよい。
【0027】
本発明の請求項5記載のニンニク臭の消臭剤の製造方法によれば、製造する際に、特別な設備や、特定の原料、アルコール等の有機溶媒を必要としないので、安価に、大量に、極めて容易に生産することができ、食品製造現場での実用化は極めて容易である。
【0028】
本発明の請求項6記載のニンニク臭の消臭方法によれば、請求項1または3記載の消臭剤を、固形物換算で0.06〜100重量%混合することにより、食後のニンニク臭を容易に、且つまた、確実に無臭化することができる。これにより、ニンニクの機能を有する、無臭化ニンニクを簡単に製造できる。このニンニクを餃子のニンニク具材として活用すれば、食す時にはニンニク臭はするが、食後、ニンニク臭が気にならない餃子を容易に、かつ確実に製造できる。また、このニンニクをキムチのニンニクに配合すれば食後臭わないキムチを製造することができる。したがって、本発明は生活習慣病に対して有効な機能を有するニンニクを広く提供する製品の製造を容易にすることができる。
【0029】
また、清涼菓子に配合することにより、ニンニク料理を食した後のニンニク臭を消臭する産品を容易に製造することができる。消臭剤を混合した水にニンニクの鱗片またはスライスしたニンニクを浸すことにより、極めて短時間で食後消臭する事ができるので、食後の臭いが気にならないニンニク料理を容易に作ることができる。その結果、レストランや家庭でも臭いを懸念しないで済む多彩なニンニク料理の提供が可能になる。また、ニンニクチップス生産工業で、食べる時はニンニク臭がするが、食後に消臭する付加価値の高い製品の生産を容易に実現できる。
【0030】
本発明の請求項7記載のニンニク臭の消臭方法によれば、アルカリ性水溶液中で浸漬処理した際に抽出した後の固形物を消臭剤として、ニンニクペーストに固形物換算で0.4〜20.0重量%混合することにより極めて短時間で食後消臭する事ができるので、食後の臭いが気にならないニンニク料理を容易に作ることができる。しかも抽出した後の固形物を利用するので、植物性食材を廃棄することなく、ほぼ全てを活用でき、資源の有効利用の面でも極めて優位性が高い。
【0031】
本発明の請求項8記載のニンニク臭の消臭方法によれば、処理したニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくはニンニクペーストを、プラスチックフィルムで形成した袋や容器、チューブまたは瓶に密封することにより保管が容易である。
【0032】
本発明の請求項9記載のニンニク臭の消臭方法によれば、消臭剤を混合して、包装容器に密封後、75〜85℃で10〜60分間加熱殺菌することにより、ニンニクの機能を有し、保存性の高い、調味加工ニンニクを簡単に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明のニンニク臭の消臭剤の抽出原料として使用できる原料は、細胞壁を有する全ての植物性食材である。具体的には、野菜類、山菜・野草類、香辛野菜類、果実類、穀類、イモ類、豆類の可食部、及び皮、根、芯のような非可食部の非水溶性部分である。これらは単独で使用してもよいが、複数を混合してもよい。また、抽出原料とする食材は乾燥または塩蔵品であってもよい。
【0034】
野菜類としては、葉菜類、根菜類、茎・鱗茎菜類、果菜類、莢実類、花菜類、新野菜類等をあげることができる。
【0035】
葉菜類はアブラナ科のハクサイ、キャベツ、コールラビー、ケール、メキャベツ、コマツナ、キョウナ、タイサイ、サントウサイ、カラシナ、タカナ、ノザワナ、ヒロシマナ、アカザ科のホーレソウ、キク科のシュンギク、レタス、キクチシャ、チコリ-、セリ科のセルリー、パセリ、フキ、ミツバ、セリ、ハマボウフウ、シソ科のシソ、タデ科のタデ、ルバーブ、ツルナ科のツルナ、スイレン科のジュンサイ、ムラサキ科のコンフリー、アカザ科のフダンソウ、ヒルガオ科のエンサイ等をあげることができる。根菜類はアブラナ科のダイコン、カブ、スグキナ、ヒノナ、アカザ科のビーツ、キク科のゴボウ、ヤマゴボウ、セリ科のニンジン、パースニップ、ショウガ科のショウガ、スイレン科のレンコン等をあげることができる。茎・鱗茎菜類はユリ科のネギ、タマネギ、リーキ、ワケギ、アサツキ、ニラ、ラッキョウ、ニンニク、ユリ、アスパラガス、ウコギ科のウド、イネ科のタケノコ等をあげることができる。果菜類はナス科のトマト、ナス、ピーマン、ウリ科のキュウリ、スイカ、メロン、シロウリ、カボチャ、ユウガオ、ハヤトウリ、ヘチマ、トウガン、ニガウリ、アオイ科のオクラ等をあげることができる。莢実類はマメ科のインゲンマメ、エンドウ、サヤエンドウ、エダマメ、シカクマメ、ソラマメ、ジュウロクササゲ、モヤシ等をあげることができる。花菜類はアブラナ科のカリフラワー、ブロッコリー、ナバナ、キク科のリョウリギク、アーティチョーク、ショウガ科のミョウガ等をあげることができる。新野菜類はビタミン菜、セレタス、ヒユ菜、ユウコウサイ、オータムポエム、トウミョウ、センポウサイ、モロヘイヤ等をあげることができる。
【0036】
山菜・野草類はウラボシ科のワラビ、ゼンマイ科のゼンマイ、オシダ科のコゴミ、キク科のアザミ、ヨモギ、タンポポ、ヨメナ、コオニタビラ、ヨブスマソウ、ユリ科のノビル、ミズギボウシ、シオデ、ノカンゾウ、カタクリ、アマドコロ、ギョウジャニンニク、ウコギ科のヤマウド、タラノメ、ウコギ、アカザ科のアカザ、トンンブリ、オカヒジキ、ナデシコ科のハコベ、ヒユ科のヒユ、イラクサ科のウワバミソウ、ミヤマイラクサ、セリ科のアシタバ、タデ科のイタドリ、ラン科のシュンラン、ユキノシタ科のトリアシショウマ、ツルムラサキ科のツルムラサキ、アブラナ科のナズナ、オランダガラシ、トクサ科のツクシ、イネ科のネマガリダケ、ナス科のクコ、アケビ科のアケビ、クワ科のクワ、マタタビ科のマタタビ等をあげることができる。
【0037】
香辛野菜類はセリ科のフェンネル、コリアンダー、チャービル、イタリアンパセリ、ディル、アニス、キャラウエイ、クミン、シソ科のオレガノ、ハッカ、ローズマリ-、タイム、バジリコ、レモンバーム、スイートマジョラ、セイジ、ムラサキ科のボリジ、アブラナ科のホースラディシュ、ワサビ、ナス科のトウガラシ、パプリカ、ミカン科のルー、サンショウ、ショウガ科のショウガ、ウコン、クスノキ科のニッケ、ローレル、フトモモ科のチョウジ、テンニン科のオールスパイス、ニクズク科のナツメグ、クスノキ科のローレル、クワ科のホップ、マメ科のフェヌグリーク等をあげることができる。
【0038】
野菜類は繊維質が多いので抽出原料として好適である。また、ダイコンやカブの葉、アスパラガスの根、ブロッコリーやカリフラワーの葉や茎のように通常は食されることのない、いわゆる非可食部も抽出原料として使用できる。
【0039】
果実類は仁科類、柑橘果類、核果類、漿果類、熱帯果・輸入果類等をあげることができる。
【0040】
仁果類はバラ科のナシ、リンゴ、マルメロ、カリン、ビワ、カキノキ科のカキ等をあげることができる。柑橘果類はミカン科のウンシュウミカン、ナツダイダイ、ヒュウガナツ、イヨカン、ハッサク、オレンジ、ポンカン、グレープフルーツ、レモン、ブンタン、ユズ、カボス、スダチ等をあげることができる。核果類はバラ科のモモ、スモモ、アンズ、ウメ、サクランボ、ニワウメ、クロウメモドキ科のナツメ、モクセイ科のオリーブ等をあげることができる。漿果類はブドウ科のブドウ、クワ科のイチジク、ザクロ科のザクロ等をあげることができる。輸入果類はバショウ科のバナナ、アナナス科のパイナップル等をあげることができる。
【0041】
果実類の果肉部は、細胞壁が薄く、水溶性の遊離糖や遊離アミノ酸が多いので、抽出原料としては好適でない。しかし、リンゴの皮や柑橘類の皮や砂嚢(さのう)、柿の皮、バナナの皮、ブドウの皮等のようないわゆる果実類の非可食部は、繊維質が多く、抽出原料として好適である。
【0042】
穀類はイネ科のコメ、コムギ、オオムギ、エンバク、ライムギ、ハトムギ、モロコシ、アワ、ヒエ、キビ、トウモロコシ、ソバ等をあげることができる。
【0043】
穀類のコメやコムギ等は、でん粉やタンパク質が特に多く細胞壁も薄いので、抽出原料として好適でないが、玄米精白時の副産物である米糠やコムギから小麦粉を製造する際に副生するフスマのように繊維質が特に多いものは消臭剤の抽出原料として好適である。
【0044】
イモ類はナス科のジャガイモ、ヒルガオ科のサツマイモ、サトイモ科のサトイモ、ハスイモ、コンニャク、オモダカ科のクワイ、ヤマイモ科のヤマノイモ、キク科のキクイモ、トウダイグサ科のキャッサバ、シソ科のチョロギ等をあげることができる。
【0045】
イモ類のサツマイモ、ジャガイモのようのように、でん粉やタンパク質が特に多いものは、細胞壁が薄く、消臭剤として、効力を有する物質が少ないので、抽出原料として好適でないが、サトイモやハスイモの葉柄、サツマイモの葉柄部などのように繊維質が多い部分は、消臭剤の抽出原料として好適である。
【0046】
豆類はマメ科のダイズ、インゲンマメ、エンドウ、アズキ、ササゲ、ソラマメ、ナタマメ、ラッカセイ、ウイングビーン、レンズマメ、コーヒー豆等をあげることができる。
【0047】
豆類のダイズやラッカセイは脂質、タンパク質が多いので抽出原料としては好適でないが、オカラのようなダイズの搾り粕や、ラッカセイの非可食部である殻は繊維質が多く、消臭剤の抽出原料として好適である。
【0048】
次に消臭物質を抽出する原料の前処理方法について説明する。まず生鮮原料を、水洗・裁断後、そのまま用いてもよいが、作業効率、抽出効率を高めるために、天日乾燥や熱風乾燥により、水分を除去後に使用してもよい。原料として野菜や果物の果皮を乾燥すると歩留りは5〜10%になるが,乾燥原料を用いる方が、保存性や保管性がよい。この乾燥物に50〜100倍量の水を加え、30分〜1時間撹拌してろ過する。この操作を、ロ液に糖の反応が陰性になるまで繰り返す。これにより、細胞質の成分が除去され、粗細胞壁を得ることができる。
【0049】
この場合、非水溶性物質は、植物性食材を、裁断・風乾後、洗液に糖の反応が陰性になるまで水洗する事により調製するので、細胞の原形質中の遊離糖、アミノ酸、無機質、水溶性タンパク質等がほぼ除去された粗細胞壁と考える事ができる。
【0050】
細胞壁は全ての植物性食品、木材に共通する組織であり、成分的には繊維成分として総括されるが、ペクチン質、ヘミセルロース(キシラン、グルカン、マンナン等の多糖類)、セルロースのような多糖類と高分子ポリフェノールのリグニン等から構成されている。
【0051】
米糠は玄米を搗精した際の副産物なので、そのまま供試するか、脱脂糠を用いるとよい。また、おからは、膨潤させたダイズに加水して、摩砕後に加熱して、豆乳を圧搾した絞り粕なので、水洗工程を除いてもよいが、残存する遊離糖、遊離アミノ酸、水溶性のタンパク質や多糖類等の高分子化合物を除去するために水洗してもよい。
【0052】
また消臭物質の抽出方法は、乾燥原料の場合、乾燥原料に20〜50倍量のpH8.0〜pH15.0のアルカリ性水溶液を加え、室温で1〜3時間撹拌するか、または30〜100℃に加熱した、加熱アルカリ性水溶液中で10〜60分間加熱しながら撹拌することにより、溶出した抽出液を、これをそのまま、または中和、または濃縮、もしくは粉末にしてニンニク臭の消臭剤として使用する。
【0053】
消臭物質を抽出する場合、pH8.0〜pH15.0のアルカリ性水溶液中で行う理由は、pH8.0未満では、抽出率が悪く、pH15.0を超えると、それ以上の抽出が期待できないことと、その後の操作が煩雑になるからである。なおpH6以下で加熱抽出した場合は細胞壁の分解が殆ど起らない。また強酸、例えば塩酸での煮沸であれば、ペクチン質は抽出されるが、中和すると沈殿物が生成する。また、酸性での抽出では消臭機能の本体と想定しているリグニンやアルカリ可溶性ペクチンなどが検出されないので上記範囲に規定した。
【0054】
水溶液のpH調整は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのようなアルカリ性化合物や酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムのような有機酸の塩類で行うことができる。
【0055】
また原料に20〜50倍量のアルカリ性水溶液を加えるのは、20倍以下では消臭物質の抽出効率が悪く、50倍以上では消臭物質が希釈されるので濃縮が必要になるからである。なおアルカリ性水溶液中で30℃未満の加熱では、抽出効率が十分ではなく、また100℃を超えると、沸騰して処理が煩雑になるからである。この操作によりアルカリ可溶性のペクチンやヘミセルロース、リグニンの一部が溶出し、抽出液が淡褐色になる。また、抽出は繰り返してもよい。
【0056】
抽出液は、そのまま用いてもよいが、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸のような有機酸で中和してから、ろ過または遠心分離により、不溶物を除去する。抽出液は、必要に応じて濃縮または粉末にしてもよい。また消臭剤は粉末として製剤化することも簡単にできる。粉末にすると保存が容易になる。
【0057】
消臭剤の添加範囲はニンニクに、抽出液を固形物換算で0.06〜100重量%混合することがよい。0.06重量%未満では消臭効果が少なく、また100重量%を超えて混合しても効果が変わらないからである。
【0058】
更に本発明では、アルカリ性水溶液中で浸漬処理した際に溶出する抽出液を抽出した後の固形物を、水洗・乾燥後に、ニンニク臭の消臭剤として活用することができる。この固形物のニンニク臭の消臭剤を、ニンニクペーストに、固形物換算で0.4〜20.0重量%混合することによりニンニク臭を消臭することができる。これにより、抽出に用いた原料は全てを消臭剤として活用することができる。
【0059】
この現象は、アルカリ性水溶液に不溶で粗細胞壁に残存するアルカリ変性したペクチン質やヘミセルロース、リグニンがニンニクの有臭成分を包摂、または結合したためと考えることができる。これにより、粗細胞壁のアルカリ可溶性及び不溶性の両成分がニンニク臭の消臭剤として活用できることになる。このことは、廃棄物の低減化、資源の有効利用の観点からも極めて優位性が高い。
【0060】
抽出した後の固形物を消臭剤として、固形物換算で0.4〜20.0重量%混合するのは、消臭成分の特定はできないが、抽出液に比べて不要な物質が含まれていると考えられることから、0.4重量%未満では消臭効果が少なく、また20.0重量%を超えて混合しても効果が変わらないからである。
【0061】
消臭作用は詳細には不明だが、細胞壁成分のアルカリ可溶性ペクチンやヘミセルロースとして総括される多糖類によるニンニク臭の包摂及び、一部可溶化した高分子ポリフェノールのリグニンとニンニク臭の成分との結合、また、アルカリ可溶性成分によるアリナーゼの失活を消臭の要因と考えることができる。
【0062】
つまり、粗細胞壁をアルカリ性の水溶液中で浸漬または加熱処理すると、主として細胞の中葉に存在し細胞同士を接着しているペクチン質はβ―離脱反応により低分子化し溶解する。また、ヘミセルロースも一部が分解し溶解すると思われる。さらに、セルロースやヘミセルロース等と結合し、細胞を堅固に保持している高分子ポリフェノールのリグニンも一部が分解すると考えられる。これらの現象は組織崩壊を誘起する。
【0063】
粗細胞壁成分のペクチン質はニンニクの有臭成分の包摂媒体としての機能を有する。また、ヘミセルロースはキシラン、グルカン、マンナン等の多糖類なので、ペクチン質と同様な機能を有する。さらに、リグニンは植物体内でセルロースとヘミセルロースの接着剤として存在するので、ニンニクの臭い成分と結合する可能性がある。こうしたことから、機構的には、未解明ではあるが、粗細胞壁成分のアルカリ可溶性物質による、ニンニクの無臭化は、細胞壁成分のアルカリ可溶性ペクチンと、ヘミセルロースによる有臭成分の包摂と、一部可溶化したリグニンと有臭成分との結合等の複数の要因によると考える事ができる。
【0064】
また、粗細胞壁からアルカリ性水溶液で抽出後、中和した水溶液に、ニンニク鱗茎の底辺部を浸漬することにより、容易に食後無臭化する。この現象は鱗茎を、アリーンとアリナーゼが接触するスリオロシ操作を行っても変わらない。この事は、食後無臭化する成分が維管束鞘から吸収される事と、アリーンを分解しニンニク臭の成分に変える酵素のアリナーゼも維管束鞘に存在する事から、無臭化にはアリナーゼの失活または阻害が関与する可能性がある。
【0065】
以上のような事から、細胞壁を有する植物のアルカリ可溶性物質は、ニンニク臭の食後消臭機能を有すると考えることができる。
【0066】
その結果、粗細胞壁のアルカリ可溶性抽出液を、そのまま、または濃縮、または中和して、ニンニクのペーストに固形物換算で0.06〜100重量%混合することにより、食す際にはニンニク臭を有するが、体内での滞留時間の長い臭い成分の生成阻害が起こり、食後速やかに且つ確実に無臭化し、翌日には影響のないニンニク産品を簡単に製造できる。
【0067】
また抽出した後の固形物を乾燥、粉末化して消臭剤として、ニンニクペーストに、固形物換算で0.4〜20.0重量%混合しても消臭効果がある。
【0068】
このように抽出固形物を使用するので、消臭剤を製造する際に、産業廃棄物が殆ど産出されないことになる。このことは、野菜を原料とする食品工業(例えば、カット野菜、漬物工業)や果物や野菜の生産業や加工業等が産廃として廃棄していた野菜の残渣、果実の皮や芯部も有効且つ効率的に利用できることになる。
【0069】
またニンニクの鱗茎に消臭剤を添加する場合、鱗茎は根部が5mm程度、消臭剤溶液に浸漬していればよい。これは、消臭剤が根部から吸収されるためである。また、切片は吸収速度が速いので、短時間の浸漬でよい。
【0070】
また消臭剤を混合した、ニンニクの切片または鱗片、または非剥皮鱗片、または鱗茎もしくはニンニクペーストをプラスチックフィルムで形成した袋や容器、チューブまたは瓶に密封することにより保存性を向上させることができる。
【0071】
消臭剤を混合した水にニンニクの鱗片またはスライスしたニンニクを浸すことにより、極めて短時間で食後消臭する事ができるので、食後の臭いが気にならないニンニク料理を容易に作ることができる。その結果、レストランや家庭でも臭いを懸念しないで済む多彩なニンニク料理の提供が可能になる。また、ニンニクチップス生産工業で、食べる時はニンニク臭がするが、食後に消臭する付加価値の高い製品の生産を容易に実現できる。更に、粉末化した消臭剤を清涼菓子に加工すればニンニクを食した後の口内清涼剤としての活用もできる。
【0072】
また本発明は消臭剤を混合した飲料として利用することができる。例えば、水、お茶、ジュース等を、餃子やニンニク料理を食する際に飲用することにより、食後のニンニク臭を容易に、また、確実に無臭化することができる。
【0073】
更に処理したニンニク産品を、包装容器に充填して保存することができる。調味液としては例えば、食酢、塩、醤油などの調味料を調合したものを用いる。これを、10℃以下の温度で保持することにより、食す際にはニンニク臭を有し、食感が生ニンニクのように歯切れが良く、体内での滞留時間の長い有臭成分を食後速やかに且つ確実に無臭化し、翌日には影響のないニンニク産品を得ることができる。
【0074】
また包装容器に充填してから70〜85℃で10〜30分加熱することにより殺菌して、無臭化と長期保存性を同時に得ることができる。この場合、70℃未満で10分未満の加熱では殺菌効果が少なく、また85℃を超え、30分を超える加熱では、長期保存性は変わらないが、ニンニク産品が軟化して食感が低下する恐れがあるので上記範囲に規定した。
【0075】
処理したニンニクのペーストは、チューブに充填した薬味、餃子の具材、スープ、ガーリックトースト等に使用することができる。これにより、翌日まで残るニンニク臭のない製品を容易に製造できる。また、キムチに使用すれば、新タイプの食後臭いの消えるキムチを容易に開発することができる。したがって、本発明によればニンニクを使用した料理も臭いが気にならなくなり、これまで後まで残る臭いのために製造されなかったニンニク配合野菜ジュースを容易に製造が可能になった。
【実施例】
【0076】
(実施例1 ダイコン由来の消臭剤)
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。ダイコン1.0kgを水洗後、スライサーで厚さ約0.5cmの切片にする。これをプラスチック製の角ザルに敷いて天日乾燥し、乾燥ダイコンとする。乾燥ダイコンは94.6g(乾燥歩留り9.5%)であった。乾燥ダイコンに20倍量の水を加え、マグネチックスターラーで3時間撹拌してからステンレスのザルで漉して残渣を得る。この操作を、漉し液の糖の反応が陰性になるまで繰り返す。
【0077】
残渣を圧搾後、ガラス容器に入れ、水1リットルを加える。その際、濃度が総量の0.5%になるように炭酸水素ナトリウムを混合する。これを、30分間煮沸後に、冷却してから、ろ過する。不溶物に、再度、0.5%炭酸水素ナトリウム水溶液1リットルを加え、同様な操作を繰り返す。これらのロ液を遠心分離(10000rpm×10min.)する。これをクエン酸で中和し減圧濃縮(60℃以下)して1リットルとする。この水溶液をニンニク臭の消臭剤とした。消臭剤は透明な淡褐色であった。ダイコン由来の固形物は16.8g(1.68重量%)であった。
【0078】
この消臭剤3g(ダイコン由来の固形物は50mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために12gの水を加え、総量115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.043重量%(0.05/115×100)になる。これを比較例1(処理ニンニク-1)とした。同様に、消臭剤5g(ダイコン由来の固形物は84mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために10gの水を加え、総量を115gとした。
【0079】
ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.073重量%(0.084/115×100)になる。これを実施例1(処理ニンニク-2)とした。同様に、消臭剤10g(ダイコン由来の固形物は168mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために5gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.146重量%(0.168/115×100)になる。これを実施例2(処理ニンニク-3)とした。同様に、消臭剤15g(ダイコン由来の固形物は252mg)をニンニクペースト100gに混合した。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.219重量%(0.252/115×100)になる。これを実施例3(処理ニンニク-4)とした。
【0080】
これらのニンニクペーストについて、食後のニンニク臭の官能検査は次のように行った。インスタントカップ麵(麵33g、湯の目安量270ml)を食す際に、薬味として、ニンニクペースト8gを混ぜてから、麵とスープの全量を食させた。消臭剤を配合したニンニクペーストをカップ麵の薬味として、それぞれ5名のパネリストに食させ、食後の口臭・体臭等のニンニク臭を、臭いに敏感な者に判定させた。試験期間中、ニンニクを使用した料理の摂食は禁止した。口臭等のニンニク臭の評価は、1:全く臭くない。2:殆ど臭くない。3:やや臭い。4:臭い。5:極めて臭い。の五段階評価とした。また、消臭効果を厳密に評価するために翌朝起床時( 食後13〜15時間) に寝室(6畳) の臭いを家人に評価させた。官能検査の結果は表1に示す通りである。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から、食した直後のパネリストの口臭等のニンニク臭の評価は、比較例1の生ニンニクが「極めて臭い」、比較例2、実施例1は、いずれも「臭い」、実施例2(処理ニンニク-3)は「やや臭い」、処理ニンニク-4は「殆ど臭くない」と評価された。生ニンニクを食した者は5時間後でも「極めて臭い」、翌朝起床時の寝室の臭いも「臭い」であった。実施例1(処理ニンニク-2)は3時間後に「殆ど臭くない」、5時間後に「全く臭くない」と評価され、翌朝起床時の寝室の臭いも「全くない」であった。実施例2(処理ニンニク-3)は、食後3時間後は「全く臭くない」、朝起床時の寝室の臭いも「全く臭くない」であった。実施例3(処理ニンニク-4)は食した直後でも「殆ど臭くない」、食後1、3、5時間後は「全く臭くない」、朝起床時の寝室の臭いも「全く臭くない」であった。
【0083】
以上のことから本発明の消臭剤の効果として、食後5時間の評価で全く臭くない状態になったものを本発明の実施例品とした。したがって、実施例品の消臭剤は固形物換算で0.073重量%以上であり、食後5時間で消臭されることが確認できた。
【0084】
(実施例2 タマネギ由来の消臭剤)
タマネギ1.0kgをスライサーで厚さ0.5cm程度の切片にする。これをプラスチックの角ザルに敷いて、天日乾燥し、乾燥タマネギとする。乾燥タマネギは52.5g(乾燥歩留り5.3%)であった。乾燥タマネギから消臭剤の抽出を実施例1と同様な方法で行い、抽出液1リットルを調製した。抽出液中のタマネギに由来する固形物は15.0g(1.50重量%)であった。この水溶液をニンニク臭の消臭剤とした。消臭剤は透明な淡褐色であった。
【0085】
消臭剤3g(タマネギ由来の固形物は45mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために12gの水を加え、総量115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.039重量%(0.045/115×100)になる。これを比較例2(処理ニンニク-1)とした。同様に、消臭剤5g(タマネギ由来の固形物は75mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために10gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.065重量%(0.075/115×100)になる。これを実施例1(処理ニンニク-2)とした。
【0086】
同様に、消臭剤10g(タマネギ由来の固形物は150mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために5gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.130重量%(0.150/115×100)になる。これを実施例2(処理ニンニク-3)とした。同様に、消臭剤15g(タマネギ由来の固形物は225mg)をニンニクペースト100gに混合した。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.196重量%(0.225/115×100)になる。これを実施例3(処理ニンニク-4)とした。
【0087】
これらのニンニクペーストの食後のニンニク臭についての官能検査を、実施例1と同様に行った。官能検査の結果は表2に示す通りである。
【0088】
【表2】
【0089】
表2の結果から、本発明の消臭剤の効果として、食後5時間の評価で全く臭くない状態になったものを本発明の実施例品とした。したがって、実施例品は消臭剤が固形物換算で0.065重量%以上であり、食後5時間で消臭されることが確認できた。
【0090】
(実施例3 ウンシュウミカン果皮由来の消臭剤)
ウンシュウミカン果皮1kgを幅1cm程度にする。これを、天日乾燥し、乾燥果皮とする。乾燥果皮は296g(乾燥歩留り29.6%)であった。これを、ワ―リングブレンダ―で摩砕した。この乾燥果皮20gを試料とし、実施例1と同様な方法で処理し、抽出液1リットルを調製した。抽出液中のウンシュウミカン果皮に由来する固形物は26.3g(2.63重量%)であった。この水溶液をニンニク臭の消臭剤とした。消臭剤は透明でやや褐色の淡橙色であった。
【0091】
消臭剤3g(ウンシュウミカン果皮由来の固形物は79mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために12gの水を加え、総量115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.069重量%(0.079/115×100)になる。これを実施例1(処理ニンニク-1)とした。同様に、消臭剤5g(ウンシュウミカン果皮由来の固形物は132mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために10gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.115重量%(0.132/115×100)になる。これを実施例2(処理ニンニク-2)とした。
【0092】
同様に、消臭剤10g(ウンシュウミカン果皮由来の固形物は263mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために5gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.229重量%(0.263/115×100)になる。これを実施例3(処理ニンニク-3)とした。同様に、消臭剤15g(タマネギ由来の固形物は395mg)をニンニクペースト100gに混合した。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.343重量%(0.395/115×100)になる。これを実施例4処理(ニンニク-4)とした。
【0093】
これらのニンニクペーストの食後のニンニク臭についての官能検査を、実施例1と同様に行った。官能検査の結果は表3に示す通りである。
【0094】
【表3】
【0095】
表3の結果から、本発明の消臭剤の効果として、食後5時間の評価で全く臭くない状態になった実施例1〜4を本発明の実施例品とした。したがって、消臭剤は固形物換算で0.069重量%以上であり、食後5時間で消臭されることが確認できた。
【0096】
(実施例4 コメヌカ由来の消臭剤)
エチルアルコールで洗浄してから風乾したコメヌカを脱脂コメヌカとした。この脱脂コメヌカ20gから消臭剤の抽出を実施例1と同様な方法で行い、抽出液1リットルを調製した。抽出液中の脱脂コメヌカに由来する固形物は24.4g(2.44重量%)であった。この水溶液をニンニク臭の消臭剤とした。消臭剤はやや褐色で透明であった。
【0097】
消臭剤3g(脱脂コメヌカ由来の固形物は73mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために12gの水を加え、総量115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.063重量%(0.073/115×100)になる。これを実施例1(処理ニンニク-1)とした。同様に、消臭剤5g(脱脂コメヌカ由来固形物は122mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために10gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.106重量%(0.122/115×100)になる。これを実施例2(処理ニンニク-2)とした。
【0098】
同様に、消臭剤10g(脱脂コメヌカ由来の固形物は244mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために5gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.212重量%(0.244/115×100)になる。これを実施例3(処理ニンニク-3)とした。同様に、消臭剤15g(脱脂コメヌカ由来の固形物は366mg)をニンニクペースト100gに混合した。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.318重量%(0.366/115×100)になる。これを実施例4(処理ニンニク-4)とした。
【0099】
これらのニンニクペーストの食後のニンニク臭についての官能検査を、実施例1と同様に行った。官能検査の結果は表4に示す通りである。
【0100】
【表4】
【0101】
表4の結果から、本発明の消臭剤の効果として、食後5時間の評価で全く臭くない状態になった実施例1〜4を本発明の実施例品とした。したがって、消臭剤は固形物換算で0.063重量%以上であり、食後5時間で消臭されることが確認できた。
【0102】
(実施例5 ラッカセイの殻由来の消臭剤)
市販の炒った殻付きラッカセイの殻の部分をワ―リングブレンダ―で摩砕した。摩砕したラッカセイの殻40gを実施例1と同様な方法で処理し、ラッカセイの殻の抽出液1リットルを調製した。抽出液中のラッカセイの殻に由来する固形物は30.8g(3.08重量%)であった。この水溶液をニンニク臭の消臭剤とした。消臭剤は濃褐色であった。
【0103】
消臭剤3g(ラッカセイの殻由来の固形物は92mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために12gの水を加え、総量115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.08重量%(0.092/115×100)になる。これを実施例1(処理ニンニク-1)とした。同様に、消臭剤5g(ラッカセイの殻由来固形物は153mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために10gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.133重量%(0.153/115×100)になる。これを実施例2(処理ニンニク-2)とした。
【0104】
同様に、消臭剤10g(ラッカセイの殻由来の固形物は306mg)をニンニクペースト100gに混合し、濃度を調整するために5gの水を加え、総量を115gとした。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.266重量%(0.306/115×100)になる。これを実施例3(処理ニンニク-3)とした。同様に、消臭剤15g(ラッカセイの殻由来の固形物は459mg)をニンニクペースト100gに混合した。ニンニクペーストの消臭剤は固形物として0.399重量%(0.459/115×100)になる。これを実施例4(処理ニンニク-4)とした。
【0105】
これらのニンニクペーストの食後のニンニク臭についての官能検査を、実施例1と同様に行った。官能検査の結果は表5に示す通りである。
【0106】
【表5】
【0107】
表5の結果から、本発明の消臭剤の効果として、食後5時間の評価で全く臭くない状態になった実施例1〜4を本発明の実施例品とした。したがって、消臭剤は固形物換算で0.08重量%以上であり、食後5時間で消臭されることが確認できた。
【0108】
(実施例6 ダイコンから抽出した後の固形物の消臭剤)
実施例1で述べた、乾燥したダイコンから0.5%炭酸水素ナトリウム水溶液でニンニク臭の消臭剤を抽出した後の固形物を、中性になるまで水洗してから乾燥した。乾燥固形物は乾燥ダイコンの22.0%であった。この乾燥物をワ―リングブレンダ―で微粉末化してから、32〜16メッシュのふるいを通し、得られた微粉末をニンニクの粉末消臭剤とした。
【0109】
ミキサーで摩砕し、ペースト状にしたニンニクペーストに、ダイコンの粉末消臭剤をペーストの0.3、0.5、1.0、1.5重量%で夫々混合した。これらのペーストを、夫々、比較例2(処理ニンニク-1)、実施例1(処理ニンニク-2)、実施例2(処理ニンニク-3)、実施例3(処理ニンニク-4)とした。各処理ニンニクのニンニクペーストは、夫々、99.7%、99.5、99.0、98.5重量%になる。
【0110】
これらのニンニクペーストの食後のニンニク臭についての官能検査を、実施例1と同様に行った。官能検査の結果は表6に示す通りである。
【0111】
【表6】
【0112】
表6の結果から、本発明の消臭剤の効果として、食後5時間の評価で全く臭くない状態になった実施例1〜3を本発明の実施例品とした。したがって、ダイコンから抽出した後の固形物の消臭剤は、有効成分が少ないので0.5重量%以上必要であり、実施例1では固形物換算で0.5重量%あり、食後5時間で消臭されることが確認できた。タマネギ、ウンシュウミカンの果皮、脱脂コメヌカ、ラッカセイの殻から抽出した後の固形物の消臭剤でも同様な効果が認められた。
【0113】
(実施例7 タマネギから抽出した消臭剤を用いて袋詰めした場合)
タマネギから抽出した消臭剤溶液40g(タマネギに由来する固形物は1.5重量%)と食酢、塩、醤油等々からなる調味液、1000gを調製する。この場合、調味液の消臭剤溶液の濃度は4.0重量%である。また、予め20%食塩水に約5時間漬けて塩分濃度を2%にしたニンニク800gを調製する。このニンニク80gをプラスチック製の小袋中に入れ調味液100gで充填密封する。これを85℃で30分間加熱処理後、直ちに流水中で冷却し、比較例2(処理ニンニク-1)とした。この場合、総量が180gで、調味液は100gなので、調味液のタマネギに由来する固形物は0.06g(100×4.0/100×1.5/100)、総量(180g)中では0.033重量%(0.06/180×100)になる。同様に消臭剤溶液80gを混合した調味液、1000gを調製する。予め塩分濃度を2%にしたニンニク80gをプラスチック製の小袋中に入れ調味液100gで充填密封し、加熱処理する。この場合、調味液は消臭剤濃度が8.0重量%なので、総量中(180g)のタマネギに由来する固形物は0.120g(100×8.0/100×1.5/100)、総量(180g)中では0.066重量%(0.120/180×100)になる。これを実施例1(処理ニンニク−2)とした。
【0114】
同様に消臭剤溶液120gを混合した調味液、1000gを調製する。予め塩分濃度を2%にしたニンニク80gをプラスチック製の小袋中に入れ調味液100gで充填密封し、加熱処理する。この場合、調味液は消臭剤濃度が12.0重量%なので、総量中(180g)のタマネギに由来する固形物は0.180g(100×12/100×1.5/100)、総量(180g)中では0.100重量%(0.18/180×100)になる。これを実施例2(処理ニンニク−3)とした。同様に消臭剤溶液160gを混合した調味液、1000gを調製する。予め塩分濃度を2%にしたニンニク80gをプラスチック製の小袋中に入れ調味液100gで充填密封し、加熱処理する。この場合、調味液は消臭剤濃度が16.0重量%なので、総量中(180g)のタマネギに由来する固形物は0.240g(100×16/100×1.5/100)、総量(180g)中では0.133重量%(0.240/180×100)になる。これを実施例3(処理ニンニク−4)とした。
【0115】
この袋詰加熱した比較例2、実施例1、実施例2、実施例3を20℃に7ヶ月間放置し保存性を検討した。プラスチック袋に充填密封した野菜加工品、例えば漬物は品質が劣化すると充填液の白濁や袋の膨張が起るので、充填液の透明性と袋の膨張の有無を保存性の評価基準とした。試験結果は表7に示す通りである。
【0116】
【表7】
【0117】
表7の結果から、調味液でプラスチック袋に充填密封した生ニンニクは僅か7日後には充填液が明らかに白濁し袋が膨張した。しかし、本発明による消臭剤を添加して加熱殺菌した調味ニンニクは7ヶ月後でも白濁や袋の膨張はなく高い保存性が確認された。
【0118】
加熱直後のニンニクの食後のニンニク臭についての官能検査を、実施例1と同様に行った。官能検査の結果は表8に示す通りである。
【0119】
【表8】
【0120】
表8の結果から、本発明の消臭剤の効果として、食後5時間の評価で全く臭くない状態になったものを本発明の実施例品とした。したがって、実施例品は消臭剤が固形物換算で0.066重量%以上であり、食後5時間で消臭されることが確認できた。この結果は、ダイコン、ウンシュウミカンの果皮、脱脂コメヌカ、ラッカセイの殻等から調製した消臭剤でも同様な効果が認められた。
【0121】
(実施例8 ウンシュウミカン果皮由来の消臭剤溶液に浸漬処理)
実施例3に記述したウンシュウミカン果皮から抽出した消臭剤(固形物は2.63重量%)の20、30、50重量%水溶液120mlを夫々調製した。各消臭剤水溶液を、プラスチック製の容器(19.8×15.0cm、深さ4.0cm)に入れた。これに、ニンニクの鱗茎各8個(計440〜450g)を入れ、夫々実施例1〜3(消臭剤浸漬鱗茎-1、-2、-3)とし、室内に24時間放置した。また比較のために、消臭剤溶液の代りに水に浸漬したニンニクを同様に処理した比較例1(水浸漬鱗茎)を作成した。この場合、鱗茎の下部0.5cm程度が消臭液に浸漬した。浸漬処理後、各ニンニクを室内に1〜2日間放置しで風乾した。この場合、実施例1(消臭剤浸漬鱗茎-1)のウンシュウミカン果皮に由来する固形物は0.53重量%(120×20/100×2.63/100×100/120)、実施例2(消臭剤浸漬鱗茎-2)の固形物は0.79重量%(120×30/100×2.63/100×100/120)、実施例3(消臭剤浸漬鱗茎-3)の固形物は1.32重量%(120×50/100×2.63/100×100/120)である。
【0122】
これらのニンニクの鱗茎を剥皮後、すりおろし、その10gを食事の際に薬味として食させ、実施例1と同様に行った。官能検査の結果は表9に示す通りである。
【0123】
【表9】
【0124】
表9の結果から、本発明の方法により消臭処理したニンニクの鱗茎は、食後、明らかに減臭または消臭されることが明らかになった。この場合の消臭は、消臭剤がアリーン分解酵素のアリナーゼを失活させた可能性がある。理由は、消臭剤は維管束鞘から吸収され、アリナーゼを失活させるので、ニンニクをスリオロシた時にアリナーゼとアリーンが接触しても、翌日まで残る臭いが無いと考える事ができる。この結果は、ダイコン、タマネギ、脱脂コメヌカ、ラッカセイの殻等から調製した消臭剤でも同様であった。また、鱗茎の代りにニンニクの剥皮鱗片、切片を供試しても同様な結果であり、鱗片の場合は5時間程度、切片の場合は5分程度で食後無臭化する。
【0125】
(実施例9 ダイコンから抽出した消臭剤飲料)
実施例1に記述したダイコンから抽出した消臭剤溶液(ダイコン由来の固形物1.68重量%)10mlに水90mlを混合した比較例2(消臭剤混合水-1)、消臭剤溶液20mlに水80mlを混合した実施例1(消臭剤混合水-2)、消臭剤溶液30mlに水70mlを混合した実施例2(消臭剤混合水-3)を調製した。また、比較のために水100mlを比較例1(飲料水区)とした。比較例2(消臭剤混合水-1)のダイコンに由来する固形物は0.168g(0.168重量%)、実施例1(消臭剤混合水-2)重量%のダイコンに由来する固形物は0.336g(0.336重量%)、実施例2(消臭剤混合水-3)のダイコンに由来する固形物は0.504g(0.504重量%)である。
【0126】
食事の際に、消臭剤混合水-1、-2、-3各100mlを飲みながら生ニンニクの切片8gを食させた。比較対照として水100mlを飲ませた。食後、臭いに敏感な第三者に口臭を評価させた。また、消臭効果を厳密に判断するために翌朝起床時( 食後13〜15時間) に寝室(6畳) の臭いを家人に評価させた。パネリストは各5名、計20名とした。官能検査の結果は表10に示す通りである。
【0127】
【表10】
【0128】
上記結果から、比較例2(消臭剤混合水-1)は消臭剤溶液10mlと薄いため効果は少なかったが、20ml以上の実施例1〜2は5時間後、全く臭くなくなり本発明の消臭剤溶液を食事の際に飲用すると、食後、明らかに減臭または消臭されることが明らかになった。この結果は、タマネギ、脱脂コメヌカ、ラッカセイの殻等から調製した消臭剤でも同様な効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0129】
固形物を肥料として収穫前の畑に張った水に散布することにより収穫したニンニクに消臭効果が認められ、収穫後のニンニクに特別の消臭処理をしなくても、ニンニク自体の消臭効果を持たせることが可能である。このようにニンニク臭の消臭剤は、野菜を原料とする食品工業(例えば、カット野菜、漬物工業)や果物や野菜の生産業や加工業等が産廃として廃棄していた野菜の残渣、果実の皮や芯部も有効且つ効率的に利用でき、新産業創出の有力な技術になり得る可能性が高く、農業の国際化に貢献すると考えられる。