特許第6875704号(P6875704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875704メラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875704
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】メラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9706 20170101AFI20210517BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 36/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 9/04 20060101ALN20210517BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20210517BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   A61K8/9706ZNA
   A61Q19/02
   A61K36/02
   A61P17/00
   A61P43/00 111
   A61P27/02
   C12N9/99
   !C12N9/04 Z
   !A23L33/10
   !C12N1/12 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-77574(P2018-77574)
(22)【出願日】2018年4月13日
(65)【公開番号】特開2019-182801(P2019-182801A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】593206964
【氏名又は名称】マイクロアルジェコーポレーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593171592
【氏名又は名称】学校法人玉川学園
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一臣
(72)【発明者】
【氏名】竹中 裕行
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕司
(72)【発明者】
【氏名】榊 節子
【審査官】 山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−069443(JP,A)
【文献】 特開2005−170830(JP,A)
【文献】 特開平11−001486(JP,A)
【文献】 特開2012−046480(JP,A)
【文献】 特表2018−509376(JP,A)
【文献】 特開2004−149442(JP,A)
【文献】 特開2002−068943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラノサイト刺激ホルモンの刺激により促進されるチロシナーゼ遺伝子及び小眼球症関連転写因子から選ばれる少なくとも一種の発現を抑制することに基づいてメラニンの生成を抑制するメラニン生成抑制用組成物であって、
プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有することを特徴とするメラニン生成抑制用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のメラニン生成抑制用組成物を含有することを特徴とする美白用組成物。
【請求項3】
メラノサイト刺激ホルモンの刺激により促進されるチロシナーゼ遺伝子の発現を抑制する発現抑制用組成物であって、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有することを特徴とする発現抑制用組成物。
【請求項4】
メラノサイト刺激ホルモンの刺激により促進される小眼球症関連転写因子の発現を抑制する発現抑制用組成物であって、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有することを特徴とする発現抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け等による色素沈着、しみ、そばかす等の原因の一つとして、メラノサイトにおけるメラニンの過剰な生成が挙げられる。メラニンの生成を抑制する美白用組成物としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されるように、チロシンからのメラニンの生成に関与する酵素であるチロシナーゼの活性を抑制する美白用組成物や、メラニン生成に関与する遺伝子群の転写制御を担う転写因子である小眼球症関連転写因子の発現を抑制する美白用組成物が知られている。
【0003】
また、微細綱の藻体が有する作用についての様々な研究が行われている。例えば、特許文献3には、ハプト藻綱イソクリシス目プリュウロクリシス属の藻体から得られる抽出物に、抗酸化作用があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−88856号公報
【特許文献2】特開2013−163645号公報
【特許文献3】特開2002−69443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本研究者らによる鋭意研究の結果、ハプト藻綱イソクリシス目プリュウロクリシス属の藻体であるプリュウロクリシス・カルテレの水抽出物が、メラニン生成を抑制する作用、メラニン生成に関わる遺伝子の発現を抑制する作用を発揮することを新たに見出したことに基づいてなされたものである。本発明の目的は、新規なメラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するメラニン生成抑制用組成物は、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
上記課題を解決する美白用組成物は、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
【0007】
上記課題を解決する発現抑制用組成物は、チロシナーゼ遺伝子の発現を抑制する発現抑制用組成物であって、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
上記課題を解決する発現抑制用組成物は、小眼球症関連転写因子の発現を抑制する発現抑制用組成物であって、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規なメラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】α−MSHの刺激により促進されるメラニン生成について、試験液を投与した場合の影響を示すグラフ。
図2】通常時のメラニン生成について、試験液を投与した場合の影響を示すグラフ。
図3】α−MSHの刺激により促進されるチロシナーゼ遺伝子の発現について、試験液を投与した場合の影響を示すグラフ。
図4】α−MSHの刺激により促進される小眼球症関連転写因子の発現について、試験液を投与した場合の影響を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の組成物(以下、本組成物と記載する。)は、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を有効成分として含有する。
【0011】
プリュウロクリシス・カルテレ(Pleurochrysis carterae)は、ハプト藻綱(Haptophceae)イソクリシス目(Isochrysidales)プリュウロクリシス属(Pleurochrysis)に属する藻体である。プリュウロクリシス・カルテレ(以下、上記藻体と記載する。)は、天然に自生する藻体であってもよいし、人工的に培養した藻体であってもよい。なお、安定供給が可能である点や品質保持が容易である点から、人工的に培養した藻体を用いることが工業的に好適である。
【0012】
本組成物に含有される上記水抽出物は、上記藻体を原料として抽出処理を行うことにより得ることができる。
原料としての上記藻体は、採取したままの状態、採取後に破砕処理した状態、採取後に乾燥処理した状態、又は採取後に破砕処理及び乾燥処理した状態のいずれであってもよい。抽出処理時における効率化の観点から、上記藻体を破砕したものを原料として用いることが好ましい。
【0013】
抽出処理では、抽出溶媒として水を用いる。抽出方法としては、例えば、冷水抽出、温水抽出、熱水抽出、及び蒸気抽出等の公知の抽出方法のいずれの方法も用いることができるが、抽出効率の観点から温水抽出や熱水抽出を用いることが好ましい。具体的な方法としては、抽出溶媒中に原料である藻体を所定時間、浸漬させた後、固液分離操作を行うことにより抽出液(水抽出物)と残渣とに分離する。そして、必要に応じて得られた抽出液(水抽出物)の濃縮を行う。
【0014】
なお、抽出溶媒中における原料の濃度や抽出温度は適宜、設定することができる。更に、抽出効率を高めるために、抽出時に攪拌処理、加圧処理、及び超音波処理等の処理を行ってもよい。また、抽出溶媒中には、水以外の溶媒や添加剤が少量含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、有機塩、無機塩、緩衝剤、及び乳化剤等が挙げられる。また、固液分離処理の方法としては、ろ過や遠心分離等の公知の分離法を用いることができる。また、上記抽出処理は同一の原料に対して一回のみ行なってもよいし、複数回繰り返して行なってもよい。
【0015】
次に、本組成物の作用について説明する。
本組成物を摂取することにより、メラニンの生成が抑制される。したがって、本組成物は、メラニン生成の抑制作用の発揮を目的としたメラニン生成抑制用組成物、及びメラニン生成の抑制に基づく美白作用の発揮を目的とした美白用組成物として適用することができる。
【0016】
また、本組成物を摂取することにより、チロシンからのメラニン生成に関与する酵素であるチロシナーゼの遺伝子の発現が抑制される。したがって、本組成物は、チロシナーゼ遺伝子の発現の抑制作用の発揮を目的とした発現抑制用組成物として適用することができる。さらに、当該発現抑制用組成物は、チロシナーゼ遺伝子の発現を抑制する作用に基づいてチロシナーゼの発現を抑制するチロシナーゼ発現抑制用組成物として適用することもできる。
【0017】
また、本組成物を摂取することにより、メラニン生成に関与する遺伝子群の転写制御を担う転写因子である小眼球症関連転写因子(Mitf:Microphthalmia-associated transcription factor)の発現が抑制される。したがって、本組成物は、小眼球症関連転写因子の発現の抑制作用の発揮を目的とした発現抑制用組成物として適用することができる。
【0018】
本組成物からなるメラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物はそれぞれ、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等の各分野に適用することができる。
飲食品としては、例えば、各種飲料類(果汁又は野菜汁入り飲料、清涼飲料、ミネラル飲料、スポーツドリンク、茶類飲料、コーヒー、炭酸飲料、牛乳やヨーグルト等の乳製品等)、ゼリー状食品(ゼリー、寒天、ゼリー状飲料等)、カプセル(ソフトカプセル、ハードカプセル)、各種菓子類が挙げられる。飲食品には、ペクチンやカラギーナンなどのゲル化剤、グルコース、ショ糖、果糖、乳糖、ステビア、アスパルテーム、糖アルコール等の糖類・甘味料、香料等の食品添加剤、植物性油脂及び動物性油脂等の油脂等を適宜含有させることができる。また、飲食品の用途としては、特に限定されず、いわゆる一般食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、病者用食品として適用することができる。
【0019】
医薬品、医薬部外品、化粧品として使用する場合の投与方法は特に限定されるものではない。具体的な投与方法としては、例えば、服用(経口摂取)による投与、血管内投与、経腸投与、経皮投与、腹腔内投与が挙げられる。また、医薬品、医薬部外品、化粧品として使用する場合の剤形は特に限定されるものではない。具体的な剤形としては、例えば、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤が挙げられる。また、添加剤として、例えば、賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を含有してもよい。
【0020】
次に、上記実施形態の効果について説明する。
(1)メラニン生成抑制用組成物は、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
【0021】
上記構成によれば、メラニンの生成を抑制する効果が得られる。
(2)美白用組成物は、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
上記構成によれば、メラニンの生成が抑制されることにより、肌の美白効果が得られる。
【0022】
(3)チロシナーゼ遺伝子の発現を抑制する発現抑制用組成物は、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
上記構成によれば、チロシナーゼ遺伝子の発現を抑制する効果が得られる。
【0023】
(4)小眼球症関連転写因子の発現を抑制する発現抑制用組成物は、プリュウロクリシス・カルテレの水抽出物を含有する。
上記構成によれば、小眼球症関連転写因子の発現を抑制する効果が得られる。
【0024】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・メラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物は、それぞれの目的とする作用を損なわない範囲において、他の成分を含有していてもよい。
【0025】
・メラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物の摂取量及び摂取期間は、特に限定されず、摂取者の身体機能の状態、年齢、性別、及びその他の条件を考慮し、適宜、決定される。
【0026】
・メラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物は、ヒトを対象として適用することができるのみならず、家畜等の飼養動物に対する飼料、薬剤等に適用してもよい。
【0027】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)プリュウロクリシス・カルテレの熱水抽出物を含有するメラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、又は発現抑制用組成物。
【0028】
(ロ)プリュウロクリシス・カルテレを水抽出する工程を有するメラニン生成抑制用組成物、美白用組成物、及び発現抑制用組成物の製造方法。
【実施例】
【0029】
以下に試験例を挙げ、上記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験液の調製>
プリュウロクリシス・カルテレをフラスコ内で培養した。3000rpm、15分間の遠心分離処理によりフラスコ内のコロニーを採取して、その後すぐに凍結乾燥させることにより藻体の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体(30g)に水(1000mL)を加えて、90℃にて60分間攪拌した。冷却後、10000rpm、15分間の遠心分離処理と、ガラス繊維ろ紙(GA-100)を用いたろ過処理により得られた液を減圧濃縮して200mLの濃縮液を得、これを試験液とした。濃縮液の固形分濃度は78mg/mLであった。なお、試験液は使用まで−20℃で保存した。
【0030】
<培地の調製>
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM:シグマアルドリッチ社製D6046)に、熱不活化ウシ胎児血清を最終濃度5%、ペニシリンを最終濃度50units/mL、ストレプトマイシンを最終濃度50μg/mLとなるように添加し、これを後述する試験に用いる培地とした。
【0031】
<試験1>
α−MSH(メラノサイト刺激ホルモン)の刺激により促進されるメラニン生成について、試験液を投与した場合の影響を評価した。なお、α−MSHは、細胞内cAMP濃度を上昇させるとともに、チロシナーゼ遺伝子及び小眼球症関連転写因子の発現を促進させ、最終的にメラニン生成を強く促進させる生理活性物質である。
【0032】
通常時のメラニン生成能が低いB16F1細胞(マウス由来メラノーマ培養細胞)を、5.0×10cells/60φdishとなるように播種し、上記培地を用いて、37℃、5%COの条件下にて24時間、培養した。その後、培地を交換して、α−MSHを最終濃度0,10nMとなるように培地に添加するとともに、試験液を0,10,20μL/mLとなるように培地に添加し、37℃、5%COの条件下にて96時間、培養した後、培地を除去し、トリプシン/EDTAで細胞を処理することにより細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を採取しFuchs-Rosenthal細胞計算盤で細胞数を計測した。
【0033】
次に、細胞懸濁液に対して、1000rpm、5分間の遠心分離処理を行い、PBSで再懸濁した後、さらに1000rpm、5分間の遠心分離処理を行うことにより、細胞ペレットを得た。1×10cellsあたり100μLとなるように2MNaOHを細胞ペレットに注ぎこみ、100℃の湯浴上で20分間の処理を行った。メラニンが完全に溶解したことを確認し、405nmにおける吸光度を測定した。
【0034】
合成メラニンから作成した検量線を用いて、1細胞あたりのメラニン含有量を求めた。その結果を図1のグラフに示す。図1のグラフから、試験液(P.carterae)を投与することによって、α−MSHの刺激により促進されたメラニン生成が顕著に抑制されることが分かる。
【0035】
<試験2>
外部刺激に因らない通常時のメラニン生成について、試験液を投与した場合の影響を評価した。
【0036】
通常時のメラニン生成能が高いB16F10細胞(マウス由来メラノーマ培養細胞)を、5.0×10cells/60φdishとなるように播種し、上記培地を用いて、37℃、5%COの条件下にて24時間、培養した。その後、培地を交換して、試験液を0,20μL/mLとなるように培地に添加し、37℃、5%COの条件下にて120時間、培養した後、培地を除去し、トリプシン/EDTAで細胞を処理することにより細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を採取しFuchs-Rosenthal細胞計算盤で細胞数を計測した。
【0037】
次に、細胞懸濁液に対して、1000rpm、5分間の遠心分離処理を行い、PBSで再懸濁した後、さらに1000rpm、5分間の遠心分離処理を行うことにより、細胞ペレットを得た。1×10cellsあたり400μLとなるように2MNaOHを細胞ペレットに注ぎこみ、100℃の湯浴上で20分間の処理を行った。メラニンが完全に溶解したことを確認し、405nmにおける吸光度を測定した。
【0038】
合成メラニンから作成した検量線を用いて、1細胞あたりのメラニン含有量を求めた。その結果を図2のグラフに示す。図2のグラフから、通常時のメラニン生成についても、試験液(P.carterae)を投与することによって顕著に抑制されることが分かる。
【0039】
<試験3>
α−MSHの刺激により促進されるチロシナーゼ遺伝子及び小眼球症関連転写因子の発現について、試験液を投与した場合の影響を評価した。
【0040】
B16F1細胞を、1×10cells/60φdishとなるように播種し、上記培地を用いて、37℃、5%COの条件下にて24時間、培養した。その後、培地を交換して、α−MSHを最終濃度0,20nMとなるように培地に添加するとともに、試験液を0,20μL/mLとなるように培地に添加し、37℃、5%COの条件下にて72時間、培養した。なお、24時間ごとに、培地の交換と、0,20μL/mLとなるように試験液の添加を行った。
【0041】
その後、培地を除去し、RNA抽出試薬(ニッポンジーン社製ISOGEN2)を用いて細胞を溶解し、全RNAを抽出した。そして、RT−PCR用キット(タカラバイオ社製RNA PCR kit (AMV) Ver.3.0)を用いてcDNAを作成した。得られたcDNA、プライマー、PCR試薬(Life Technologies社製Power UP SYBR Green Master Mix)を混合し、リアルタイムPCR法により、チロシナーゼのmRNA発現量、小眼球症関連転写因子のmRNA発現量、及び内部標準としてのGAPDHのmRNA発現量を測定した。
【0042】
なお、リアルタイムPCR反応には、リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社製7500 fast real-time PCR system)を用いた。リアルタイムPCR反応の反応条件は、95℃で10秒、60℃で30秒を1サイクルとして、計40サイクルとした。用いたプライマーの配列は以下のとおりである。
【0043】
[チロシナーゼ]
Upstream:5′-TTG CCA CTT CAT GTC ATC ATA GAA TAT T-3′
Downstream:5′- TTT ATC AAA GGT GTG ACT GCT ATA CAA AT-3′
[小眼球症関連転写因子]
Upstream:5′-CGC CTG ATC TGG TGA ATC G-3′
Downstream:5′-CCT GGC TGC AGT TCT CAA GAA-3′
[GAPDH]
Upstream:5′-CGT CCC GTA GAC AAA ATG GT-3′
Downstream:5′-TTG ATG GCA ACA ATC TCC AC-3′
測定されたチロシナーゼ遺伝子のmRNA発現量をGAPDHのmRNA発現量で補正するとともに、α−MSHを添加し、試験液を添加していない場合のチロシナーゼ遺伝子のmRNA発現量の補正値を「1」としたチロシナーゼ遺伝子のmRNA発現レベルを求めた。その結果を図3のグラフに示す。
【0044】
同様に、測定された小眼球症関連転写因子のmRNA発現量をGAPDHのmRNA発現量で補正するとともに、α−MSHを添加し、試験液を添加していない場合の小眼球症関連転写因子のmRNA発現量の補正値を「1」とした小眼球症関連転写因子のmRNA発現レベルを求めた。その結果を図4のグラフに示す。
【0045】
図3のグラフから、試験液(P.carterae)を投与することによって、α−MSHの刺激により促進されたチロシナーゼ遺伝子の発現が顕著に抑制されることが分かる。
図4にグラフから、試験液(P.carterae)を投与することによって、α−MSHの刺激により促進された小眼球症関連転写因子(Mitf)の発現が、α−MSHによる刺激をしていないレベルまで顕著に抑制されることが分かる。
図1
図2
図3
図4