【実施例】
【0029】
以下に試験例を挙げ、上記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験液の調製>
プリュウロクリシス・カルテレをフラスコ内で培養した。3000rpm、15分間の遠心分離処理によりフラスコ内のコロニーを採取して、その後すぐに凍結乾燥させることにより藻体の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体(30g)に水(1000mL)を加えて、90℃にて60分間攪拌した。冷却後、10000rpm、15分間の遠心分離処理と、ガラス繊維ろ紙(GA-100)を用いたろ過処理により得られた液を減圧濃縮して200mLの濃縮液を得、これを試験液とした。濃縮液の固形分濃度は78mg/mLであった。なお、試験液は使用まで−20℃で保存した。
【0030】
<培地の調製>
ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM:シグマアルドリッチ社製D6046)に、熱不活化ウシ胎児血清を最終濃度5%、ペニシリンを最終濃度50units/mL、ストレプトマイシンを最終濃度50μg/mLとなるように添加し、これを後述する試験に用いる培地とした。
【0031】
<試験1>
α−MSH(メラノサイト刺激ホルモン)の刺激により促進されるメラニン生成について、試験液を投与した場合の影響を評価した。なお、α−MSHは、細胞内cAMP濃度を上昇させるとともに、チロシナーゼ遺伝子及び小眼球症関連転写因子の発現を促進させ、最終的にメラニン生成を強く促進させる生理活性物質である。
【0032】
通常時のメラニン生成能が低いB16F1細胞(マウス由来メラノーマ培養細胞)を、5.0×10
4cells/60φdishとなるように播種し、上記培地を用いて、37℃、5%CO
2の条件下にて24時間、培養した。その後、培地を交換して、α−MSHを最終濃度0,10nMとなるように培地に添加するとともに、試験液を0,10,20μL/mLとなるように培地に添加し、37℃、5%CO
2の条件下にて96時間、培養した後、培地を除去し、トリプシン/EDTAで細胞を処理することにより細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を採取しFuchs-Rosenthal細胞計算盤で細胞数を計測した。
【0033】
次に、細胞懸濁液に対して、1000rpm、5分間の遠心分離処理を行い、PBSで再懸濁した後、さらに1000rpm、5分間の遠心分離処理を行うことにより、細胞ペレットを得た。1×10
6cellsあたり100μLとなるように2MNaOHを細胞ペレットに注ぎこみ、100℃の湯浴上で20分間の処理を行った。メラニンが完全に溶解したことを確認し、405nmにおける吸光度を測定した。
【0034】
合成メラニンから作成した検量線を用いて、1細胞あたりのメラニン含有量を求めた。その結果を
図1のグラフに示す。
図1のグラフから、試験液(P.carterae)を投与することによって、α−MSHの刺激により促進されたメラニン生成が顕著に抑制されることが分かる。
【0035】
<試験2>
外部刺激に因らない通常時のメラニン生成について、試験液を投与した場合の影響を評価した。
【0036】
通常時のメラニン生成能が高いB16F10細胞(マウス由来メラノーマ培養細胞)を、5.0×10
4cells/60φdishとなるように播種し、上記培地を用いて、37℃、5%CO
2の条件下にて24時間、培養した。その後、培地を交換して、試験液を0,20μL/mLとなるように培地に添加し、37℃、5%CO
2の条件下にて120時間、培養した後、培地を除去し、トリプシン/EDTAで細胞を処理することにより細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を採取しFuchs-Rosenthal細胞計算盤で細胞数を計測した。
【0037】
次に、細胞懸濁液に対して、1000rpm、5分間の遠心分離処理を行い、PBSで再懸濁した後、さらに1000rpm、5分間の遠心分離処理を行うことにより、細胞ペレットを得た。1×10
6cellsあたり400μLとなるように2MNaOHを細胞ペレットに注ぎこみ、100℃の湯浴上で20分間の処理を行った。メラニンが完全に溶解したことを確認し、405nmにおける吸光度を測定した。
【0038】
合成メラニンから作成した検量線を用いて、1細胞あたりのメラニン含有量を求めた。その結果を
図2のグラフに示す。
図2のグラフから、通常時のメラニン生成についても、試験液(P.carterae)を投与することによって顕著に抑制されることが分かる。
【0039】
<試験3>
α−MSHの刺激により促進されるチロシナーゼ遺伝子及び小眼球症関連転写因子の発現について、試験液を投与した場合の影響を評価した。
【0040】
B16F1細胞を、1×10
5cells/60φdishとなるように播種し、上記培地を用いて、37℃、5%CO
2の条件下にて24時間、培養した。その後、培地を交換して、α−MSHを最終濃度0,20nMとなるように培地に添加するとともに、試験液を0,20μL/mLとなるように培地に添加し、37℃、5%CO
2の条件下にて72時間、培養した。なお、24時間ごとに、培地の交換と、0,20μL/mLとなるように試験液の添加を行った。
【0041】
その後、培地を除去し、RNA抽出試薬(ニッポンジーン社製ISOGEN2)を用いて細胞を溶解し、全RNAを抽出した。そして、RT−PCR用キット(タカラバイオ社製RNA PCR kit (AMV) Ver.3.0)を用いてcDNAを作成した。得られたcDNA、プライマー、PCR試薬(Life Technologies社製Power UP SYBR Green Master Mix)を混合し、リアルタイムPCR法により、チロシナーゼのmRNA発現量、小眼球症関連転写因子のmRNA発現量、及び内部標準としてのGAPDHのmRNA発現量を測定した。
【0042】
なお、リアルタイムPCR反応には、リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社製7500 fast real-time PCR system)を用いた。リアルタイムPCR反応の反応条件は、95℃で10秒、60℃で30秒を1サイクルとして、計40サイクルとした。用いたプライマーの配列は以下のとおりである。
【0043】
[チロシナーゼ]
Upstream:5′-TTG CCA CTT CAT GTC ATC ATA GAA TAT T-3′
Downstream:5′- TTT ATC AAA GGT GTG ACT GCT ATA CAA AT-3′
[小眼球症関連転写因子]
Upstream:5′-CGC CTG ATC TGG TGA ATC G-3′
Downstream:5′-CCT GGC TGC AGT TCT CAA GAA-3′
[GAPDH]
Upstream:5′-CGT CCC GTA GAC AAA ATG GT-3′
Downstream:5′-TTG ATG GCA ACA ATC TCC AC-3′
測定されたチロシナーゼ遺伝子のmRNA発現量をGAPDHのmRNA発現量で補正するとともに、α−MSHを添加し、試験液を添加していない場合のチロシナーゼ遺伝子のmRNA発現量の補正値を「1」としたチロシナーゼ遺伝子のmRNA発現レベルを求めた。その結果を
図3のグラフに示す。
【0044】
同様に、測定された小眼球症関連転写因子のmRNA発現量をGAPDHのmRNA発現量で補正するとともに、α−MSHを添加し、試験液を添加していない場合の小眼球症関連転写因子のmRNA発現量の補正値を「1」とした小眼球症関連転写因子のmRNA発現レベルを求めた。その結果を
図4のグラフに示す。
【0045】
図3のグラフから、試験液(P.carterae)を投与することによって、α−MSHの刺激により促進されたチロシナーゼ遺伝子の発現が顕著に抑制されることが分かる。
図4にグラフから、試験液(P.carterae)を投与することによって、α−MSHの刺激により促進された小眼球症関連転写因子(Mitf)の発現が、α−MSHによる刺激をしていないレベルまで顕著に抑制されることが分かる。