特許第6875758号(P6875758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875758
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】表面処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/16 20060101AFI20210517BHJP
   C25D 21/14 20060101ALI20210517BHJP
   C25D 21/10 20060101ALI20210517BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20210517BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C25D21/16 A
   C25D21/14 B
   C25D21/10 301
   C25D17/00 C
   C25D17/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-549225(P2019-549225)
(86)(22)【出願日】2018年10月10日
(86)【国際出願番号】JP2018037758
(87)【国際公開番号】WO2019078065
(87)【国際公開日】20190425
【審査請求日】2020年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2017-203868(P2017-203868)
(32)【優先日】2017年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507264549
【氏名又は名称】株式会社アルメックステクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝己
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 重幸
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−339794(JP,A)
【文献】 特開2014−237865(JP,A)
【文献】 特開2012−046782(JP,A)
【文献】 特開2004−285414(JP,A)
【文献】 特開2003−013291(JP,A)
【文献】 特開2013−011011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液に浸漬され、かつ、陰極に設定される複数のワークに前記処理液を噴出させる複数のノズル管が配置された処理槽と、
複数の処理液循環装置と、
を有し、
前記複数のノズル管の各々は、垂直方向に沿って複数の噴出口を含み、前記複数の噴出口付近の前記処理液を巻き込んで噴出させ、
前記複数の処理液循環装置の各々は、前記処理槽の長手方向分割され複数の分割領域の各一つとそれぞれ接続され、
前記複数の分割領域の各々は、前記複数のノズル管の少なくとも1本と、少なくとも一つの陽極と、を含み、
前記複数の処理液循環装置の各々は、
前記複数の分割領域の各一つに隣接するオーバーフロー槽と、
循環ポンプと、
前記複数の分割領域の各一つの底部及び前記オーバーフロー槽の底部の双方から前記循環ポンプにより回収される処理液を再供給用処理液に調整する調整槽と、
前記調整槽からの前記再供給用処理液を濾過するフィルターと、
を含み、
前記複数の分割領域の各一つから回収されて前記調整槽で調整された前記再供給用処理液を、前記フィルターを介して、前記循環ポンプにより前記複数の分割領域の各一つに設けられた前記少なくとも1本のノズル管に戻し供給することを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記調整槽は、回収された処理液に対して、消費される成分の投入と、温度調整と、の少なくとも一つを実施することを特徴とする表面処理装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記表面処理装置は複数の処理ユニットが前記長手方向で連結されて形成され、
前記複数の処理ユニットの各々は、前記処理液が収容される分割処理槽を含み、
前記複数の処理液循環装置の各々は、前記複数の処理ユニットの各々の前記分割処理槽とそれぞれ接続されることを特徴とする表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ装置等の表面処理装置に関し、特に、処理槽から回収された処理液を調整して処理槽に戻す処理液の循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
メッキ装置は、処理槽内にメッキ液を収容している。特許文献1は、メッキ槽外に、ポンプとフィルターとから成る不純物除去手段を設けたメッキ装置を開示している。メッキ液はメッキ槽の底部から排出され、不純物除去手段によりスライムのない清浄なメッキ液を、メッキ槽の底部よりメッキ槽内に戻し循環している。また、ワークにメッキされることで酸化銅等のメッキ成分が消耗されることから、従来、長いメッキ槽の一部から酸化銅を供給していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−013291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、メッキ槽の底部から排出されて不純物除去手段によりスライムが除去された清浄なメッキ液をメッキ槽の底部よりメッキ槽内に戻し循環すると、メッキ槽内にて清浄なメッキ液が均等に分配されない。また、従来、消耗される酸化銅は長いメッキ槽の一部から供給していたことから、処理槽内のメッキ液の濃度がばらつくという課題がある。
【0005】
本発明の少なくとも一つの態様は、処理槽内でフレッシュな処理液の濃度をほぼ均等にすることができる表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、
処理液に浸漬される複数のワークに前記処理液を噴出させる複数のノズル管が配置された処理槽と、
複数の処理液循環装置と、
を有し、
前記複数の処理液循環装置の各々は、前記処理槽の長手方向で複数に分割され、各々が前記複数のノズル管の少なくとも1本を含む複数の分割領域の各一つとそれぞれ接続され、前記複数の分割領域の各一つから回収された処理液を調整して、前記複数の分割領域の各一つに設けられた前記少なくとも1本のノズル管に戻し供給する表面処理装置に関する。
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の処理液循環装置の各々が、処理槽を長手方向で分割した複数の分割領域の各一つから回収された処理液を調整して、複数の分割領域の各一つに設けられた少なくとも1本のノズル管に戻し供給することができる。よって、調整後のフレッシュな処理液の濃度は複数の分割領域間でほぼ均等となる。しかも、処理槽の各分割領域内では少なくとも1本のノズル管からフレッシュな処理液がワークに向けて噴出されるので、各分割領域内にフレッシュな処理液が分散されて、各分割領域内でも処理液の濃度がほぼ均等となる。なお、処理槽の分割領域とは、物理的に分割されたものに限らず、少なくとも分割領域毎に処理液が回収される構造を備えていれば良い。
【0008】
(2)本発明の一態様(1)では、前記複数の処理液循環装置の各々は、循環ポンプと、前記複数の分割領域の一つから前記循環ポンプにより回収される処理液を再供給用処理液に調整する調整槽と、を含み、前記調整槽からの前記再供給用処理液を前記循環ポンプにより前記少なくとも1本のノズル管に戻し供給することができる。こうすると、循環ポンプにより回収された処理液は、調整槽において一括して調整され調整槽からの再供給用処理液を、循環ポンプにより少なくとも1本のノズル管に戻し供給することができる。
【0009】
(3)本発明の一態様(2)では、前記調整槽は、回収された処理液に対して、消費される成分の投入と、温度調整と、の少なくとも一つを実施することができる。消費される成分とは、表面処理が例えばメッキの場合には、処理液中のメッキ成分や添加剤などである。メッキ成分とは、例えば銅メッキの場合には酸化銅である。添加剤とは、例えばメッキの場合には光沢剤、平滑剤などである。温度調整は、表面処理に固有の最適温度に処理液を温度調整することである。それらの何れかの調整により、回収された処理液はフレッシュな再供給用処理液に調整される。例えば、回収された処理液中のメッキ成分、添加剤等の濃度、または処理液の温度をセンサーでモニターし、適正値を外れた場合に濃度又は温度を調整するようにしても良い。
【0010】
(4)本発明の一態様(2)では、前記処理槽内の処理液は、前記処理槽の底部側から排出されて回収され、前記複数の処理液循環装置の各々は、前記調整槽からの前記再供給用処理液を濾過するフィルターをさらに有することができる。処理槽内の処理液中に混入した比重の重いごみ等の不純物は処理槽の底部に溜まる。これらの不純物は処理槽の底部側から排出された処理液と共に回収され、フィルターにより除去することができる。
【0011】
(5)本発明の一態様(4)では、前記処理槽に隣接するオーバーフロー槽をさらに有し、前記処理槽内の処理液は、前記オーバーフロー槽を介して排出されて回収されても良い。処理槽内の処理液中に混入した比重の軽い不純物は処理槽内の処理液の上部に浮遊する。これらの不純物は処理槽からオーバーフローされた処理液と共にオーバーフロー槽を介して排出されて回収され、同様にフィルターにより除去することができる。
【0012】
(6)本発明の一態様(1)〜(5)では、前記表面処理装置は複数の処理ユニットが前記長手方向で連結されて形成され、前記複数の処理ユニットの各々は、前記処理液が収容される分割処理槽を含み、前記複数の処理液循環装置の各々は、前記複数の処理ユニットの各々の前記分割処理槽とそれぞれ接続されても良い。このように、表面処理装置が複数の処理ユニットを連結して構成する場合には、各処理ユニットに処理液循環装置を付設することができる。ただし、各処理ユニットに2以上の処理液循環装置を付設しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る間欠搬送方式のメッキ装置におけるメッキ処理部の概略断面図である。
図2図1に示すメッキ装置の一つの処理ユニットの概略平面図である。
図3】一つの処理ユニット内に停止されるワークと陽極との位置関係を示す図である。
図4】ワークを搬送する搬送治具の斜視図である。
図5】陽極、陰極レール上の導電部及び整流器の接続を模式的に示す図である。
図6図6(A)(B)は陰極レールの正面図及び断面図である。
図7】セル内で往復水平走査移動されるノズル管を示す平面図である。
図8】ノズル管の噴出口の配列ピッチを示す図である。
図9】分割処理槽に接続される処理液循環装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0015】
1.複数の処理ユニット
図1は本実施形態に係るメッキ装置(広義には表面処理装置)の断面図である。図1において、このメッキ装置1は、回路基板等のワーク2をメッキするメッキ処理部が1以上の処理ユニット3−1〜3−n(nは自然数)を連結して構成される。複数の処理ユニット3−1〜3−nは実質的に同一の構造を有することができる。複数の処理ユニット3−1〜3−nの各々では、ワーク2を連続搬送しても良いし、ワーク2を間欠搬送しても良い。間欠搬送式のメッキ装置1とした場合、複数の処理ユニット3−1〜3−nの各々では、少なくとも一つ、図1ではM(Mは2以上の整数)個例えばM=4個のワーク2が間欠停止可能である。図1は最大サイズのワーク2を示し、メッキ装置1はその最大サイズ以下のワーク2を処理することができる汎用性を有する。以下では、間欠搬送式のメッキ装置1を例に挙げて説明する。
【0016】
ワーク2は、プッシャー等の間欠搬送装置により、現在の停止位置から次の停止位置に向けて、A方向に順次間欠搬送される。本実施形態では、一つのワーク2は各処理ユニット内にて4か所に停止される。最上流の処理ユニット3−1の上流側には、B方向への下降移動によりワーク2が搬入される搬入ユニット4が連結されても良い。処理ユニット3−1内のワーク2が間欠搬送される時に、搬入ユニット4内のワーク2も間欠搬送されて処理ユニット3−1に移動される。最下流の処理ユニット3−nの下流側には、処理ユニット3−nから水平移動されるワーク2をC方向に上昇させて搬出する搬出ユニット5が連結されても良い。処理ユニット3−n内のワーク2が間欠搬送される前に、搬出ユニット5内のワーク2は上方に搬出される。ただし、搬入ユニット4及び/又は搬出ユニット5は省略しても良い。この場合、処理ユニット3−1の最上流停止位置にワーク2が下降され、処理ユニット3−nの最下流停止位置のワーク2が上昇して搬出される。
【0017】
図2は、処理ユニット3−2〜3−nと共通の構成を有する処理ユニット3−1の平面図である。処理ユニット3−1は、メッキ液(広義には処理液)が収容される分割処理槽6を有する。ワーク2は分割処理槽6内のメッキ液に浸漬される。分割処理槽6は上方が開口された略箱体であり、上流側及び下流側の隔壁にはそれぞれ開口6A,6Bが設けられ、隣り合うユニット(処理ユニット、搬入ユニットまたは搬出ユニット)との間でワーク2の水平移動が許容される。
【0018】
本実施形態では、処理ユニット3−1内の複数例えば4つの停止位置にあるワーク2の表面及び裏面の少なくとも一方側に、少なくとも一つの陽極20が設けられる。本実施形態では、各停止位置にある各一つのワーク2の表面と対向する陽極20Aと、ワーク2の裏面と対向する陽極20Bが設けられる。陽極20(20A,20B)の各々は、互いに導通された複数の分割陽極を含むことができる。本実施形態では上流側の分割陽極20A1(20B1)と下流側の分割陽極20A2(20B2)に分割されている。陽極20は、3以上に分割された分割陽極を含んでいても良いが、互いに導通されることから一つの陽極とみなすことができる。
【0019】
図3は、処理ユニット3−1に配置される陽極20A1,20A2(20B1,20B2)とワーク2との位置関係を示す正面図である。図3に示すように、ワーク2は搬送治具30に保持される。図2及び図3に示すように、陽極20(20A,20B)の各々は、4つの停止位置にあるワーク2と正対する位置に配置される。要は、図2に示すように、陰極に設定されるワーク2と陽極20との間で均一な電界を形成できればよい。陽極20の形状は問わず、図2及び図3に示す陽極は輪郭が矩形であるが、平面視での輪郭を円形としても良い。陽極は、不溶性陽極であって可溶性陽極であっても良い。
【0020】
本実施形態では、一つの処理ユニット3−1を4つのセル11−1〜11−4に区画する遮蔽板23を有することができる。各セル11−1〜11−4内に、平面視でワーク2の両側に陽極20(20A1,20A2,20B1,20B2)が配置される。遮蔽板23は、隣り合うセル間での電界(図2に矢印で示す陽極−陰極間の電界)の影響を遮断するために設けられる。遮蔽板23には、ワーク2が通過する開口23Aが形成される。
【0021】
2.搬送治具
図4は、搬送治具30の一例を示している。この搬送治具30は、水平アーム部300と、垂直アーム部310と、ワーク保持部320と、被案内部330と、被給電部340と、被押動片350とを有する。水平アーム部300は、間欠搬送方向Aと直交する方向Bに沿って延びる。垂直アーム部310は水平アーム部300に垂下して保持される。ワーク保持部320は垂直アーム部310に固定される。ワーク保持部320は、上部フレーム321と、上部フレーム321に例えば昇降可能に支持される下部フレーム322とを含む。上部フレーム321には、ワーク2の上部をクランプする複数のクランパー323が設けられる。下部フレーム322には、ワーク2の下部をクランプする複数のクランパー324が設けられる。ワーク2には下部のクランパー324により下向きのテンションが付与される。ただし、ワーク2が厚い場合や、ワーク2の下部から給電しない場合には、下部フレーム322及びクランパー324を省略しても良い。
【0022】
被案内部330は、処理ユニット3−2〜3−nに沿って配置され、例えば処理ユニット3−2〜3−n毎に分割された案内レール(図示せず)に案内されて、搬送治具30を直線案内するものである。被案内部330は、案内レールの天面と転接するローラー331と、案内レールの両側面と転接するローラー332(図4では一方の側面に転接するローラーのみ図示)とを含むことができる。
【0023】
被給電部340は、図5及び図6にて説明する陰極レールと接触して、搬送治具30の水平アーム部300、垂直アーム部310、ワーク保持部320を介してワーク2を陰極に設定する。被給電部340は、間欠搬送方向Aに沿って延びる支持アーム341の上流側と下流側とに支持される2つの接触子342,343を含む。接触子342,343は、支持アーム341に平行リンク機構を介して支持され、陰極レールに圧接されるようにバネで付勢される。2つの接触子342,343は、クランパー323,324の少なくとも一方と電気的に接続されることで、ワーク2が陰極に設定される。
【0024】
被押動片350は、例えば垂直アーム部310に固定され、ワーク保持部320の真上の位置にて被押動面を垂直にして配置される。被押動片350は、後述する間欠搬送装置により図示C方向から押動されて、搬送治具30に間欠搬送力を伝達させるものである。なお、図4に示す搬送治具30には、連続搬送時に使用される被係合部360が設けられており、搬送治具30は間欠搬送にも連続搬送にも兼用できる。
【0025】
3.陰極レール及び整流器
図5に示すように各処理ユニット3−1〜3−n(図5は2つの処理ユニットのみ図示)は、少なくとも1本の陰極レール40を有する。陰極レール40は、搬送方向Aと平行に複数並列に配置しても良い。この場合、複数の陰極レール40は同じ整流器に接続されても良いし、異なる整流器に接続されて給電部位毎に電流値を独立して制御するようにしても良い。本実施形態では1本の陰極レール40が設けられる。1本の陰極レール40は、好ましくは処理ユニット3−1〜3−n毎に分割された複数の分割陰極レール40−1〜40−n(図5は2つの分割陰極レール40−1,40−2のみを示す)を有し、搬送方向Aで連続するように連結される。分割陰極レール40−1〜40−nの各々は、図5及び図6(A)に示すように、絶縁レール41上にて間隔(非導電部)42をあけて、ワーク2が停止される各セル毎に一つずつ計4つの導電部43を有する。4つの導電部43の各々は、各処理ユニット3−1〜3−nの4箇所の停止位置にてワーク2を保持して停止された図4に示す搬送治具30の被給電部340(2つの接触子342,343)と電気的に導通される。なお、図5では各処理ユニット3−1〜3−nに収容されるメッキ液の液面Lが示され、ワーク2はメッキ液中に浸漬される。なお、図6(B)に示すように、陰極レール40の幅方向の両端には隔壁44,44が設けられ、導電部43上に非油性の導電性流体(例えば水)45を保持することができる。こうすると、被給電部340(2つの接触子342,343)と導電部43との電気的接触を、導電性流体45を介してより確実に担保することができる。ただし、水の導電性は金属である導電部43の導電性よりもはるかに低いので、隣り合う導電部43,43間の絶縁性は維持される。また、図6(B)に示すように、導電部43を絶縁レール41上に固定するボルト46は、被給電部340の走行路を挟んだ両側に配置することができる。これにより、導電部34にボルトの座ぐり穴を設ける必要がなくなり、抵抗となる要因を排除できる。
【0026】
各処理ユニット3−1〜3−nは、ワーク2が停止される各セル毎に一つずつ計4つの整流器50(図5では一つの整流器50のみを示す)を有する。4つの整流器50の各一つの正端子51は各セルに配置された陽極20(20A1,20A2,20B1,20B2)と接続される。4つの整流器50の各一つの負端子52は分割陰極レール40−1〜40−nの各一つのセルに対応する導電部43と接続される。
【0027】
4.ワークの停止時の電流制御
各処理ユニット3−1〜3−nの4箇所の停止位置(セル)にて、4つのワーク2に流れる電流は、各セル毎に一つずつ設けられた整流器50の各々により独立して制御される。しかも、セル間では陰極同士が絶縁され、陽極同士も絶縁されるので、各一つのワーク2毎に絶縁分離させて、各整流器50によりワーク2を個別的に給電制御することができる。加えて、セル間では遮蔽板23により電界を分離することで、セル間での影響を排除して、ワーク2毎の個別給電が担保される。それにより、ワーク2のメッキ品質を向上させることができる。
【0028】
本実施形態の間欠搬送方式を従来の連続搬送方式と対比すると、連続搬送されるワーク(陰極)は固定された陽極との位置関係が常時変化するのに対して、本実施形態の停止されたワーク(陰極)2は陽極20と正対させることができる。このように、ワーク2の停止中は陰極と陽極との位置関係が一定となり、各ワークは同一メッキ条件となるので、メッキ品質が向上すると期待される。特にワーク2が停止していれば接触抵抗の変動はなくなるので、緻密な電流制御が可能となる。また、連続搬送に用いられる長い陰極レール途中には固定ボルト用の座ぐり穴等があり、陰極レールの抵抗値が場所毎に異なり均一抵抗とはならない。そのため、ワークの連続搬送中の位置によってワークに流れる電流が異なるが、間欠搬送ではそのような不具合を解消できる。さらに、本実施形態は、連続搬送のようにワークの連続搬送速度よりメッキ品質が悪影響を受けることもない。
【0029】
ただし、上述のような完全個別給電を必ずしも実施せずにワーク2を間欠搬送しても良い。つまり、各処理ユニット3−1〜3−nの4つのセル11−1〜11−4にて、陰極及び陽極の一方または双方を共通(共通陰極及び/または共通陽極)にしても良い。
【0030】
5.ノズル管の移動走査
各処理ユニット3−1〜3−nの4つのセル11−1〜11−4にて、図7に示すように、平面視で、停止位置にあるワーク2の各面(表面及び裏面)と陽極20との間に少なくとも1本のノズル管60をさらに設けることができる。ノズル管60は、ワーク(陰極)2と陽極20との間に形成される電界を遮るので、複数のノズル管60を設ける場合でもその本数は少ないことが好ましい。ノズル管60は、図8に示すようにメッキ液を噴出する複数の噴出口60Aを有する。図8に示すノズル管60の噴出口60Aは垂直方向ピッチPは従来の連続搬送式に用いられるピッチ(例えば7.5mm)よりも小さく、噴出口60Aの外径以上でかつ5mm以下とすることができる。単位時間当たりのメッキ液供給量を多くするためである。加えて、小さいサイズのチップや密なパターンに均等にメッキ液を供給するためにも、ピッチPは小さい方が良い。なお、図8ではワーク2の表裏面側のノズル管60はワーク2を挟んで対向配置されているが、非対向位置に設けても良い。対向配置させればワーク2が液圧で変形することを解消でき、非対向配置させるとワーク2の貫通孔にメッキ液を供給し易くなる。なお、連続搬送方式でもノズル管が設けられるが、その本数は一処理ユニットに十数本と多い。
【0031】
ワークの連続搬送方式では多数のノズル管が固定されていたが、間欠搬送方式を採用する本実施形態では、各処理ユニット3−1〜3−nの4つのセル11−1〜11−4にて、少なくとも1本のノズル管60を、例えば図7の矢印A1方向及びA2方向(共に間欠搬送方向Aと平行である)に水平走査移動させている。それにより、図8に示すように、ワーク2の全面に対して均一にメッキ液を噴出させることができる。また、ノズル管60の移動速度は、連続搬送方式でのワーク2の移動速度(例えば0.8m/min)よりも速くすることができる。こうすると、単位時間当たりのメッキ液供給量を多くすることができる。なお、連続搬送式でワーク速度を速くすると処理槽の全長が長くなって装置が大型化するが、本実施形態のような間欠搬送では装置は大型化しない。
【0032】
ノズル管60の往復移動機構は図示を省略するが、公知の往復直線運動させる機構(例えば可逆モータで駆動されるピニオン−ラック機構、ピストン−クランク機構等)を採用することができる。この往復移動機構は、各セルで停止されているワーク2の少なくとも水平幅と対応する長さ範囲を少なくとも一回循環して走査するように、2本のノズル管60を移動させることができる。こうすると、処理されるワーク2の面内均一性が向上する。特に、ノズル管60の初期位置から少なくとも一回循環走査させて初期位置に復帰させることが好ましい。ノズル管60の影がワーク面内でほぼ均一化されるからである。なお、ノズル管60は装置の稼動中に亘って往復走査移動を連続させても良いし、ワーク2の間欠搬送中は往復走査移動を停止しても良い。
【0033】
本実施形態によれば、間欠停止されるワーク2に対して、ワーク2の停止位置と対応して少なくとも一つ例えば2本のノズル管60をワーク2に対して走査移動させることができる。それにより、平面視でワーク2と陽極20との間に位置するノズル管60の影となって陽極−陰極間の電界が妨げられる領域が、ノズル管60の移動に伴って移動する。このため、ノズル管60によって電界が妨げられる領域が固定されず、処理されるワーク2の面内均一性が向上する。なお、ノズル管60の走査移動方向は水平方向に限らない。例えばノズル管60を水平に配置して垂直方向に走査移動してもよく、走査移動方向は水平、垂直等のいずれの方向であっても良い。
【0034】
ノズル管60は公知の構造により分割処理槽内の噴出口60A付近のメッキ液を巻き込んで噴出させることができる。よって、陽極20付近の金属イオンが豊富なメッキ液をワーク2に向けて噴出でき、スループットが向上する。
【0035】
なお、ノズル管60の走査移動は、間欠搬送方式の表面処理装置に広く適用することができ、必ずしも上述した実施形態のような構造、つまり複数の処理ユニットの連結構造、陰極分割構造、陽極分割構造等に限定されるものではない。また、本発明は必ずしも間欠搬送式の表面処理装置に適用されるものではないので、連続搬送式の表面処理装置では少なくとも1本のノズル管は固定配置される。
【0036】
6.処理液循環装置
図9は、図1に示す各処理ユニット3−1〜3−nの各々に接続される処理液循環装置100を模式的に示す。図9では、処理液循環装置100は処理ユニット3−1の分割処理槽6に連結されている。ただし、分割処理槽6に複数の処理液循環装置100が連結されてもよく、例えば図3に示す4つのセル11−1〜11−4毎に一つの処理液循環装置100が連結されても良い。あるいは、複数の分割処理槽6毎に一つの処理液循環装置100を連結しても良い。ただし、処理液循環装置100が連結される分割領域とは、処理ユニット3−1〜3−nやセル11−1〜11−4のように物理的に分割されたものに限らない。
【0037】
図9において、処理液循環装置100は、分割処理槽6から回収されたメッキ液を調整して、分割処理槽6の各セル11−1〜11−4にてワーク2の両側に設けられた各2組計8組のノズル管60に戻し供給する。処理液循環装置100は、調整槽110を有する。調整槽110は、例えば常開のバルブ111を介して、分割処理槽6の底部と連通されている。図9に示すように、分割処理槽6の幅方向の例えば両側にオーバーフロー槽7A,7Bを有する場合には、調整槽110はオーバーフロー槽7A,7Bの底部とも連通される。
【0038】
調整槽110は、酸化銅投入部112、添加剤投入部113および温調部114を有することができる。酸化銅及び添加剤は、銅メッキにより消費される成分を補うために投入される。温調は、表面処理に固有の最適温度に処理液を温度調整するために実施される。調整槽110の下流側に、2本の戻し経路120A,120Bが接続される。戻し経路120Aは、分割処理槽6の各セル11−1〜11−4にてワーク2の表側に設けられた各1組計4組のノズル管60に接続される。戻し経路120Bは、分割処理槽6の各セル11−1〜11−4にてワーク2の裏側に設けられた各1組計4組のノズル管60に接続される。2本の戻し経路120A,120Bの各々には、循環ポンプ121、フィルター122及びフローメーター123が設けられる。
【0039】
本実施形態によれば、複数の処理液循環装置100の各々が、処理槽を長手方向で分割した分割処理槽6の各一つから回収されたメッキ液を調整して、分割処理槽6の各一つに設けられた計8組のノズル管60に再供給用処理液として戻し供給することができる。よって、調整後のフレッシュなメッキ液の濃度は複数の分割処理槽6間でほぼ均等となる。しかも、各分割処理槽6内では、移動走査される計8組のノズル管60からフレッシュなメッキ液がワーク2に向けて噴出される。よって、各分割処理槽6内にフレッシュなメッキ液が分散されて、各分割処理槽6内でもメッキ液の濃度がほぼ均等となる。また、ノズル管60の上部側から再供給用処理液を供給すれば、エア抜きを行うことができる。
【0040】
調整槽110は、回収されたメッキ液に対して、消費される成分例えば酸化銅及び/又は添加剤の投入と、温度調整と、の少なくとも一つを実施することができる。それらの何れかの調整により、回収されたメッキ液はフレッシュな再供給用処理液に調整される。
【0041】
分割処理槽6の傾斜面6Cを有する底部から回収されるメッキ液に含まれる比重の重い不純物(金属系例えば酸化銅の銅粉)や、オーバーフロー槽7A,7Bから回収されるメッキ液に含まれる比重の軽い不純物(例えば樹脂系)は、フィルター122により除去することができる。それにより、再供給されるメッキ液の汚染が防止され、ノズル管60の目詰まりも防止できる。特に、ワーク2に形成された配線のライン&スペースが小さくなると、僅かなゴミでもショート不良となる。このようなゴミは、フィルター122により除去されるので、再供給されるメッキ液中から排除することができる。なお、比重の重いゴミは、処理槽の底部から常開バブル111を介して回収されることにより、対流しながら処理槽に残存されることが防止される。
【0042】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 表面処理装置、2 ワーク、3−1〜3−n 処理ユニット、6 分割処理槽、7A,7B オーバーフロー槽、20(20A1,20A2,20B1,20B2) 陽極、30 搬送治具、40,40−1,40−2 陰極レール(分割陰極レール)、41 絶縁レール、42 間隔(非導電部)、43 導電部、50 整流器、51 正端子、52 負端子、60 ノズル管、60A 噴出口、100 処理液循環装置、110 調整槽、112 酸化銅投入部、113 添加剤投入部、114 温調部、120A,120B 第1,第2戻し経路、121 循環ポンプ、122 フィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9