【実施例】
【0042】
〔実施例1〕
La:Mg:Ni=0.75:0.25:3.60のモル配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Mg、およびNiを混合した後、1100℃、5×10
0Paの真空度条件下で真空誘導溶解を3分間行い、鋳造合金を得た。
【0043】
前記鋳造合金を、アニール炉において950℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から1℃/分の昇温速度で950℃まで昇温し、12時間保温し、降温段階では950℃から室温まで降温し、La
0.75Mg
0.25Ni
3.60を得た。
【0044】
前記La
0.75Mg
0.25Ni
3.60を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。
図1は、前記La
0.75Mg
0.25Ni
3.60のXRD図である。図から分かるように、上記合金は、2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークとの強度比が0.45である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度の45%よりも低い。以上の結果は、前記合金が純粋なAB
4型構造を含有することを意味する。
【0045】
〔実施例2〕
La:Mg:Ni:Al=0.70:0.30:3.70:0.10のモル配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Mg、Ni、およびAlを混合した後、1150℃、6×10
0Paの真空度条件下で真空誘導溶解を6分間行い、鋳造合金を得た。
【0046】
前記鋳造合金を、アニール炉において990℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から2℃/分の昇温速度で990℃まで昇温し、16時間保温し、降温段階では990℃から室温まで降温し、La
0.70Mg
0.30Ni
3.70Al
0.10を得た。
【0047】
前記La
0.70Mg
0.30Ni
3.70Al
0.10を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。
図1は、前記La
0.70Mg
0.30Ni
3.70Al
0.10のXRD図である。図から分かるように、上記合金は、2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、の強度比が0.4である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われた最も強いピークの強度の40%よりも低い。以上の結果は、前記合金が純粋なAB
4構造を含有することを意味する。
【0048】
〔実施例3〕
La:Sm:Mg:Ni:Al=0.54:0.22:0.24:3.80:0.20の配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Sm、Mg、Ni、およびAlを混合した後、1180℃、7.5×10
0Pa真空度の条件下で真空誘導溶解を10分間行い、鋳造合金を得た。
【0049】
前記鋳造合金を、アニール炉において1020℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から6℃/分の昇温速度に応じて600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から3℃/分の昇温速度で1020℃まで昇温し、18時間保温し、降温段階では1020℃から室温まで降温し、La
0.54Sm
0.22Mg
0.24Ni
3.80Al
0.20を得る。
【0050】
前記La
0.54Sm
0.22Mg
0.24Ni
3.80Al
0.20を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、の強度比は0.22である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われた最も強いピークの強度の22%よりも低かった。XRDスペクトルの特性ピークの2θと強度とを分析することにより、前記合金が、AB
4型、A
5B
19型の超積層相構造を含む多相水素吸蔵合金であることがわかった。
【0051】
〔実施例4〕
La:Sm:Nd:Mg:Ni:Al=0.75:0.20:0.10:0.25:4.0:0.10の配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Sm、Nd、Mg、Ni、およびAlを混合した後、1200℃、7.5×10
0Pa真空度の条件下で真空誘導溶解を12分間行い、鋳造合金を得た。
【0052】
前記鋳造合金を、アニール炉において1040℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から5℃/分の速度に応じて600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から2℃/分の昇温速度で1040℃まで昇温し、20時間保温し、降温段階では1040℃から室温まで降温し、La
0.75Sm
0.20Nd
0.10Mg
0.25Ni
4.0Al
0.10を得た。
【0053】
前記La
0.75Sm
0.20Nd
0.10Mg
0.25Ni
4.0Al
0.10を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、の強度比は0.18である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われた最も強いピークの強度の18%よりも低かった。XRDスペクトルの特性ピークの2θと強度とを分析することにより、前記合金が、AB
4型、A
5B
19型の超積層相構造を含む多相水素吸蔵合金であることがわかった。
【0054】
〔実施例5〕
実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金を電極として調製し(水素吸蔵合金の質量含有量は15%)、かつ、それをハーフバッテリーの負極とした。水酸化ニッケルをハーフバッテリーの正極とした。6mol/LのKOH水溶液をハーフバッテリーの電解質として用いた。DC−5バッテリーテスターおよびCHI660A電気化学ワークステーションを使用して、負極の電気化学性能を試験した。
【0055】
(充放電性能試験)
充放電条件
充/放電電流: 9mA
充電時間: 8.0h
放電遮断電圧: 1.0V
【0056】
実施例1〜4に記載の水素吸蔵合金の最大放電容量は、表1に示すとおりである。
【0057】
表1:実施例1〜4の水素吸蔵合金の最大放電容量
【表1】
【0058】
(倍率性能試験)
水素吸蔵合金電極を活性化した後、300mA・g
−1(1C)充電電流密度で1.6時間充電し、10分間静置し、次にそれぞれ60mA・g
−1(0.2C)、300mA・g
−1(1C)、600mA・g
−1(2C)、900mA・g
−1(3C)、1200mA・g
−1(4C)、および1500mA・g
−1(5C)の放電電流密度で1.0V遮断電位まで放電した。異なる放電電流密度下での合金電極の放電容量を記録し、かつ下記の式に応じて、合金電極のHRD値を計算した。
HRD=(C
d/C
max)×100%
ここで、C
dは、放電電流がdである時の水素吸蔵合金電極の放電容量であり、C
maxは、水素吸蔵合金電極の最大放電容量である。
【0059】
図2は、実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金の異なる電流密度下での放電倍率性能である。
図2から、実施例1〜4の水素吸蔵合金について1500mA・g
−1の電流密度下での放電容量およびHRD
1500値を得ることができ、表2に示すとおりである。
【0060】
表2:実施例1〜4の水素吸蔵合金が1500mA・g
−1の電流密度下での放電容量およびHRD
1500値
【表2】
【0061】
(動的特性試験)
水素吸蔵合金電極を50%の放電深度(DOD)まで放電し、30分間静置した後、試験に供した。試験条件は、走査速度は0.1mV/sであり、走査過電圧範囲は−5mV〜+5mVとした。合金電極の分極電流は過電圧と線形関係にあり、その両方をグラフフィッティングすると、合金電極の分極抵抗を取得でき、かつ、フィッティングにより得られた勾配から次の式によって合金電極の交換電流密度(I
0)を計算することができる。
I
0=RT/FR
P
ここで、Rは、気体定数(J/(mol・K))であり、Tは、絶対温度(K)であり、Fは、ファラデー定数(C/mol)であり、R
Pは、電極表面の分極抵抗である。
【0062】
図3は、実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金の動的特性曲線である。
図3から、実施例1〜4の水素吸蔵合金の交換電流密度を得ることができる(表3)。
【0063】
表3:実施例1〜4に記載の水素吸蔵合金の交換電流密度
【表3】
【0064】
以上の内容から分かるように、本発明の前記水素吸蔵合金では、水素貯蔵合金の相構造および電気化学的性能が、さまざまな程度に変化した。
【0065】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改善および修正が可能であることに留意すべきであり、これらの改善および修正も本発明の保護範囲に入ると見なされるべきである。