特許第6875759号(P6875759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875759水素吸蔵合金およびその調製方法、水素吸蔵合金電極、ならびにニッケル水素電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875759
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】水素吸蔵合金およびその調製方法、水素吸蔵合金電極、ならびにニッケル水素電池
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/00 20060101AFI20210517BHJP
   C22F 1/10 20060101ALI20210517BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20210517BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20210517BHJP
   C22C 1/00 20060101ALI20210517BHJP
   C22C 1/02 20060101ALI20210517BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   C22C19/00 F
   C22F1/10 A
   H01M4/24 J
   H01M4/38 A
   C22C1/00 N
   C22C1/02 503Z
   !C22F1/00 641A
   !C22F1/00 661C
   !C22F1/00 681
   !C22F1/00 691A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-4258(P2020-4258)
(22)【出願日】2020年1月15日
(65)【公開番号】特開2020-117801(P2020-117801A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年1月15日
(31)【優先権主張番号】201910080365.2
(32)【優先日】2019年1月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514276562
【氏名又は名称】燕山大学
【氏名又は名称原語表記】YANSHAN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ ▲樹▼民
(72)【発明者】
【氏名】王 文▲鳳▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲ルー▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲暁▼雪
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 雨萌
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 爽
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−142104(JP,A)
【文献】 特開2006−127817(JP,A)
【文献】 特表2017−532446(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/080617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00〜19/07
C22C 1/00
C22C 1/02
C22F 1/10
H01M 4/24
H01M 4/38
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式は、(La1−mMgNiAlであり、
ここで、
Rは、Sm、または、SmおよびNd、であり、
a、b、m、x、およびyは、a>0、b0、0<m≦0.3、0≦y≦0.20、かつ3.0≦x+y≦4.15、という条件を満たし、
Cu−Kα線をX線源としてX線回折測定を行った際に、2θ=24°〜35°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)と、2θ=38°〜45°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)の強度と、の強度比(I/I)は、0.5以下である水素吸蔵合金。
【請求項2】
a>bかつx≧3.0であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水素吸蔵合金を調製する調製方法であって、
水素吸蔵合金の配合比率に応じて金属元素の単体を混合し、真空誘導溶解および熱処理を順次行い、水素吸蔵合金を得る、というステップを含む調製方法。
【請求項4】
前記真空誘導溶解の温度は、1000〜1400℃であり、前記真空誘導溶解の時間は、1〜30分間であることを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項5】
前記熱処理の温度は、850〜1100℃であり、前記熱処理の保温時間は、8〜36hであることを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の水素吸蔵合金を活性物質として含む水素吸蔵合金電極。
【請求項7】
負極、正極、および電解液を含み、前記負極は、請求項に記載の水素吸蔵合金電極であるニッケル水素電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニッケル水素電池の技術分野に関し、特に水素吸蔵合金およびその調製方法、水素吸蔵合金電極、ならびにニッケル水素電池に関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模での環境汚染問題に対処するために、人々はクリーンかつ無公害の新エネルギー車の分野に注目している。新エネルギー車について、ハイブリッド車および純粋な電気自動車は人々の研究のホットスポットである。ハイブリッド車および純粋な電気自動車の開発プロセスにおいて、高効率、低コスト、長寿命、および環境に優しい二次駆動用バッテリーの入手方法は人々が直面する大きな課題である。
【0003】
ニッケル水素電池は、高パワー、安定した充放電性能、安全性、環境保護等の利点を有するため、新エネルギー車にとって重要な選択肢になる。それに対応して、ニッケル水素電池の負極活性物質として人々に引き続き研究される対象にもなった従来の水素吸蔵合金は、CaCu構造のAB型希土類元素水素吸蔵合金である。このような合金は活性化が容易で、水素の吸収/脱着の反応速度が優れているが、電気化学容量が低いため、ニッケル水素(Ni/MH)電池の商業用途が制限される。希土類元素、Mg、およびNiを主成分とするRE−Mg−Ni系水素吸蔵合金は、AB型希土類元素水素吸蔵合金よりも容量が大きく、かつ高エネルギー、高パワーであり、最も有望なNi/MHバッテリーの負極材料として考えられる。
【0004】
しかし、現在の問題は、RE−Mg−Ni系水素吸蔵合金が、c軸方向に沿って異なる比率でABサブユニットとAサブユニットとを積み重ねることによって形成される超積層結晶構造を持ち、[AB]/[A]の比率が増加すると、水素吸蔵合金は非積層相構造AB相を簡単に生成し、合金容量およびサイクル寿命が短縮することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電気化学容量が高く、サイクル寿命が優れている水素吸蔵合金およびその調製方法、ならびに水素吸蔵合金を活性物質として用いた水素吸蔵合金電極およびニッケル水素電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。
【0007】
本発明は、水素吸蔵合金を提供し、
化学式は、(La1−mMgNiAlであり、
ここで、Rは、Sm、または、SmおよびNd、であり、
a、b、m、x、およびyは、
a>0、b0、0<m≦0.3、0≦y≦0.20、かつ3.0≦x+y≦4.15、という条件を満たす。
【0008】
前記水素吸蔵合金は、Cu−Kα線をX線源としてX線回折測定を行った際に、2θ=24°〜35°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)と、2θ=38°〜45°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)と、の強度比(I/I)は、0.5以下である。
【0009】
好ましくは、a>bであり、x≧3.0である。
【0010】
好ましくは、前記希土類元素は、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Y、Sc、Tm、Yb、またはLuである。
【0011】
本発明はさらに、上記技術的解決手段に記載の水素吸蔵合金の調製方法を提供し、それは、水素吸蔵合金の配合比率に応じて金属元素の単体を混合し、順次真空誘導溶解および熱処理を行い、水素吸蔵合金を得る、というステップを含む。
【0012】
好ましくは、前記真空誘導溶解の温度は、1000〜1400℃であり、前記真空誘導溶解の時間は、1〜30分間である。
【0013】
好ましくは、前記熱処理の温度は、850〜1100℃であり、保温時間は、8〜36時間である。
【0014】
本発明はさらに、水素吸蔵合金電極を提供し、それは、上記技術的解決手段に記載の水素吸蔵合金または上記技術的解決手段に記載の調製方法で調製して得られた水素吸蔵合金を、活性物質として調製して得られる。
【0015】
本発明はさらに、ニッケル水素電池を提供し、それは、負極、正極、および電解液を含み、前記負極は上記技術的解決手段に記載の水素吸蔵合金電極である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、水素吸蔵合金を提供し、その化学式は(La1−mMgNiであり、ここで、Rは、希土類元素、Ca、Ti、Zr、Hf、およびNbの一種または数種であり、Mは、Al、Fe、Co、Mn、Zn、V、Cr、Cu、Mo、およびWの一種または数種であり、a、b、m、x、およびyは、a>0、b≧0、0<m≦0.3、0≦y≦1.6、3.0≦x+y≦4.15、という条件を満たす。前記水素吸蔵合金はCu−Kα線をX線源としてX線回折測定を行った際に、2θ=24°〜35°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)と、2θ=38°〜45°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)と、の強度比(I/I)は、0.5以下である。本発明の水素吸蔵合金は、放電容量が大きく、また、La、Mg、Ni以外の合金元素を添加することにより、合金の水素吸蔵性能および放出性能が向上し、水素吸蔵合金の動的特性が優れている。実施例の記載によれば、本発明の前記水素吸蔵合金は、充放電容量が大きく、パワー性能が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金のXRD図
図2】実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金の、異なる電流密度下での放電倍率性能を示す図
図3】実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金の動的特性の試験曲線を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は水素吸蔵合金を提供し、
前記水素吸蔵合金の化学式は、(La1−mMgNiであり、
ここで、
Rは、希土類元素、Ca、Ti、Zr、Hf、およびNbの一種または数種であり、
Mは、Al、Fe、Co、Mn、Zn、V、Cr、Cu、Mo、およびWの一種または数種であり、
a、b、m、x、およびyは、a>0、b≧0、0<m≦0.3、0≦y≦1.6、かつ3.0≦x+y≦4.15、という条件を満たす。
【0019】
前記水素吸蔵合金は、Cu−Kα線をX線源としてX線回折測定を行った際に、2θ=24°〜35°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)と、2θ=38°〜45°の範囲内に現れる最も強いピークの強度(I)と、の強度比(I/I)は0.5以下である。
【0020】
本発明において、前記水素吸蔵合金の化学式は、a>bかつx≧3.0という関係を満たすことが好ましい。
【0021】
本発明において、前記希土類元素は、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Y、Sc、Tm、Yb、またはLuであることが好ましい。
【0022】
本発明において、前記化学式のRは、上記具体的な選択肢の二つ以上である時、前記具体的な元素の配合比率に対していかなる特別な限定はなく、前記Rの含有量の合計が上記化学式の範囲内であれば任意の比率でありうる。本発明において、前記Mが上記具体的な選択肢の二つ以上であるとき、前記具体的な元素の配合比率に対していかなる特別な限定はなく、混合された前記Mの量の合計は、上記の化学式の範囲内であれば任意の比率でありうる。
【0023】
本発明において、超格子La−Mg−Ni系水素吸蔵合金の電気化学的性能は合金の構造と密接に関連しているため、合金の計量比、元素組成、およびLa/Mgは、合金の構造に影響を与える要因である。合金の計量比を変更することは、合金相の組成を最適化しかつ合金の全体的な電気化学的性能を改善するための重要な方法である。上記合金元素の組成および配合比率の調整により、水素吸蔵合金の構造および水素吸蔵合金の性能を改善できる。
【0024】
本発明はさらに、上記技術的解決手段に記載の水素吸蔵合金の調製方法を提供し、それは、上記水素吸蔵合金の配合比率に応じて金属元素の単体を混合し、真空誘導溶解および熱処理を順次行い、水素吸蔵合金を得る、というステップを含む。
【0025】
本発明において、特別な説明がない限り、すべての原料成分はいずれも当業者に知られている市販製品である。
【0026】
本発明において、上記水素吸蔵合金の配合比率に応じて金属元素の単体を混合し、真空誘導溶解および熱処理を順次行い、水素吸蔵合金を得る。本発明において、前記金属元素の純度は、独立して、好ましくは≧99.99%である。
【0027】
本発明において、好ましくは、調製中の金属元素の損失を無視する。
【0028】
本発明において、前記真空誘導溶解の真空度は、5〜200Paが好ましく、より好ましくは8〜100Paである。前記真空誘導溶解の温度は、900〜1400℃が好ましく、より好ましくは1000〜1200℃である。前記真空誘導溶解の時間は、1〜30分間が好ましく、より好ましくは3〜20分間である。
【0029】
本発明において、前記真空誘導溶解は、揮発性微量元素を含む合金成分を正確に制御でき、低融点の有害な不純物、微量元素、およびガスなどを除去し、元素の偏析現象を減らし、均一な成分の合金を得ることができる。
【0030】
本発明において、前記熱処理の温度は、好ましくは850〜1100℃であり、より好ましくは950〜1050℃である。前記熱処理の保温時間は、好ましくは8〜36時間であり、より好ましくは12〜24時間である。前記熱処理の昇温速度は、好ましくは1〜10℃/分であり、より好ましくは1〜6℃/分である。
【0031】
本発明において、前記熱処理は、さらに好ましくは二つの昇温段階を含み、第一昇温段階において、好ましくは、5〜10℃/分の昇温速度で室温から580〜620℃まで昇温し、第二昇温段階において、好ましくは、1〜5℃/分の昇温速度で580〜620℃から950〜1050℃まで昇温する。
【0032】
本発明において、前記熱処理は、合金内部のマイクロ構造をさらに改善できる。これによって、前記水素吸蔵合金についてCu−Kα線をX線源としてX線回折測定を行った際に、2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度(I)と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度(I)と、の強度比(I/I)を、0.5以下に保証することができる。
【0033】
本発明において、好ましくは、熱処理が完了した後、得られた合金を冷却する。前記冷却は、好ましくは自然冷却である。
【0034】
本発明はさらに、水素吸蔵合金電極を提供し、前記水素吸蔵合金電極は、上記技術的解決手段に記載の水素吸蔵合金または上記技術的解決手段に記載の調製方法で調製して得られた水素吸蔵合金を、活性物質として調製して得られる。
【0035】
本発明において、前記水素吸蔵合金電極の調製原料は、好ましくは、さらにバインダーおよび導電剤を含む。本発明は、前記バインダーおよび導電剤の種類および使用量にいかなる特別な限定もなく、当業者によく知られている種類および使用量を用いうる。
【0036】
本発明において、前記水素吸蔵合金電極の調製は、好ましくは当業者に知られている調製方法で行われうる。
【0037】
本発明はさらに、ニッケル水素電池を提供し、それは、負極、正極、および電解液を含み、前記負極は上記技術的解決手段に記載の水素吸蔵合金電極である。
【0038】
本発明において、前記ニッケル水素電池は、さらに正極を含み、前記正極の活性物質は、好ましくは、水酸化ニッケルまたは改質処理、元素ドーピング、添加剤、またはバインダーの添加により得られた正極合剤である。本発明は、前記改質処理または元素ドーピングにいかなる特別な限定がなく、当業者によく知られている改質処理または元素ドーピングを用いて行いうる。本発明は、前記添加剤またはバインダーの種類および使用量にいかなる特別な限定もなく、当業者によく知られている種類および使用量を用いうる。
【0039】
本発明において、前記ニッケル水素電池は、さらに電解質を含み、前記電解質は、好ましくはアルカリ電解質である。本発明において、前記アルカリ電解質は、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、および水酸化カリウム水溶液の一種または数種である。本発明は、前記アルカリ電解質の濃度にいかなる特別な限定もなく、当業者によく知られている濃度を用いうる。
【0040】
本発明は、前記ニッケル水素電池の調製方法にいかなる特別な限定がなく、当業者によく知られている調製方法を用いて行いうる。
【0041】
以下に実施例を参照しながら本発明によって提供される水素吸蔵合金およびその調製方法、水素吸蔵合金電極およびニッケル水素電池を詳しく説明するが、それらは本発明の保護範囲を限定しない。
【実施例】
【0042】
〔実施例1〕
La:Mg:Ni=0.75:0.25:3.60のモル配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Mg、およびNiを混合した後、1100℃、5×10Paの真空度条件下で真空誘導溶解を3分間行い、鋳造合金を得た。
【0043】
前記鋳造合金を、アニール炉において950℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から1℃/分の昇温速度で950℃まで昇温し、12時間保温し、降温段階では950℃から室温まで降温し、La0.75Mg0.25Ni3.60を得た。
【0044】
前記La0.75Mg0.25Ni3.60を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。図1は、前記La0.75Mg0.25Ni3.60のXRD図である。図から分かるように、上記合金は、2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークとの強度比が0.45である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度の45%よりも低い。以上の結果は、前記合金が純粋なAB型構造を含有することを意味する。
【0045】
〔実施例2〕
La:Mg:Ni:Al=0.70:0.30:3.70:0.10のモル配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Mg、Ni、およびAlを混合した後、1150℃、6×10Paの真空度条件下で真空誘導溶解を6分間行い、鋳造合金を得た。
【0046】
前記鋳造合金を、アニール炉において990℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から2℃/分の昇温速度で990℃まで昇温し、16時間保温し、降温段階では990℃から室温まで降温し、La0.70Mg0.30Ni3.70Al0.10を得た。
【0047】
前記La0.70Mg0.30Ni3.70Al0.10を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。図1は、前記La0.70Mg0.30Ni3.70Al0.10のXRD図である。図から分かるように、上記合金は、2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、の強度比が0.4である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われた最も強いピークの強度の40%よりも低い。以上の結果は、前記合金が純粋なAB構造を含有することを意味する。
【0048】
〔実施例3〕
La:Sm:Mg:Ni:Al=0.54:0.22:0.24:3.80:0.20の配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Sm、Mg、Ni、およびAlを混合した後、1180℃、7.5×10Pa真空度の条件下で真空誘導溶解を10分間行い、鋳造合金を得た。
【0049】
前記鋳造合金を、アニール炉において1020℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から6℃/分の昇温速度に応じて600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から3℃/分の昇温速度で1020℃まで昇温し、18時間保温し、降温段階では1020℃から室温まで降温し、La0.54Sm0.22Mg0.24Ni3.80Al0.20を得る。
【0050】
前記La0.54Sm0.22Mg0.24Ni3.80Al0.20を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、の強度比は0.22である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われた最も強いピークの強度の22%よりも低かった。XRDスペクトルの特性ピークの2θと強度とを分析することにより、前記合金が、AB型、A19型の超積層相構造を含む多相水素吸蔵合金であることがわかった。
【0051】
〔実施例4〕
La:Sm:Nd:Mg:Ni:Al=0.75:0.20:0.10:0.25:4.0:0.10の配合比率に応じて、純度がいずれも99.99%を超える金属La、Sm、Nd、Mg、Ni、およびAlを混合した後、1200℃、7.5×10Pa真空度の条件下で真空誘導溶解を12分間行い、鋳造合金を得た。
【0052】
前記鋳造合金を、アニール炉において1040℃で熱処理し、第一昇温段階では室温から5℃/分の速度に応じて600℃まで昇温し、第二昇温段階では600℃から2℃/分の昇温速度で1040℃まで昇温し、20時間保温し、降温段階では1040℃から室温まで降温し、La0.75Sm0.20Nd0.10Mg0.25Ni4.0Al0.10を得た。
【0053】
前記La0.75Sm0.20Nd0.10Mg0.25Ni4.0Al0.10を機械的に粉砕し、400メッシュでふるいにかけた後、アンダーサイズをXRD試験に供した。2θ=24°〜35°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、2θ=38°〜45°の範囲内に現われる最も強いピークの強度と、の強度比は0.18である。また、2θ=24°〜35°の範囲内に少なくとも3つのピークが現われており、3つのピークの強度はいずれも2θ=38°〜45°の範囲内に現われた最も強いピークの強度の18%よりも低かった。XRDスペクトルの特性ピークの2θと強度とを分析することにより、前記合金が、AB型、A19型の超積層相構造を含む多相水素吸蔵合金であることがわかった。
【0054】
〔実施例5〕
実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金を電極として調製し(水素吸蔵合金の質量含有量は15%)、かつ、それをハーフバッテリーの負極とした。水酸化ニッケルをハーフバッテリーの正極とした。6mol/LのKOH水溶液をハーフバッテリーの電解質として用いた。DC−5バッテリーテスターおよびCHI660A電気化学ワークステーションを使用して、負極の電気化学性能を試験した。
【0055】
(充放電性能試験)
充放電条件
充/放電電流: 9mA
充電時間: 8.0h
放電遮断電圧: 1.0V
【0056】
実施例1〜4に記載の水素吸蔵合金の最大放電容量は、表1に示すとおりである。
【0057】
表1:実施例1〜4の水素吸蔵合金の最大放電容量
【表1】
【0058】
(倍率性能試験)
水素吸蔵合金電極を活性化した後、300mA・g−1(1C)充電電流密度で1.6時間充電し、10分間静置し、次にそれぞれ60mA・g−1(0.2C)、300mA・g−1(1C)、600mA・g−1(2C)、900mA・g−1(3C)、1200mA・g−1(4C)、および1500mA・g−1(5C)の放電電流密度で1.0V遮断電位まで放電した。異なる放電電流密度下での合金電極の放電容量を記録し、かつ下記の式に応じて、合金電極のHRD値を計算した。
HRD=(C/Cmax)×100%
ここで、Cは、放電電流がdである時の水素吸蔵合金電極の放電容量であり、Cmaxは、水素吸蔵合金電極の最大放電容量である。
【0059】
図2は、実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金の異なる電流密度下での放電倍率性能である。図2から、実施例1〜4の水素吸蔵合金について1500mA・g−1の電流密度下での放電容量およびHRD1500値を得ることができ、表2に示すとおりである。
【0060】
表2:実施例1〜4の水素吸蔵合金が1500mA・g−1の電流密度下での放電容量およびHRD1500
【表2】
【0061】
(動的特性試験)
水素吸蔵合金電極を50%の放電深度(DOD)まで放電し、30分間静置した後、試験に供した。試験条件は、走査速度は0.1mV/sであり、走査過電圧範囲は−5mV〜+5mVとした。合金電極の分極電流は過電圧と線形関係にあり、その両方をグラフフィッティングすると、合金電極の分極抵抗を取得でき、かつ、フィッティングにより得られた勾配から次の式によって合金電極の交換電流密度(I)を計算することができる。
=RT/FR
ここで、Rは、気体定数(J/(mol・K))であり、Tは、絶対温度(K)であり、Fは、ファラデー定数(C/mol)であり、Rは、電極表面の分極抵抗である。
【0062】
図3は、実施例1〜4で調製して得られた水素吸蔵合金の動的特性曲線である。図3から、実施例1〜4の水素吸蔵合金の交換電流密度を得ることができる(表3)。
【0063】
表3:実施例1〜4に記載の水素吸蔵合金の交換電流密度
【表3】
【0064】
以上の内容から分かるように、本発明の前記水素吸蔵合金では、水素貯蔵合金の相構造および電気化学的性能が、さまざまな程度に変化した。
【0065】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改善および修正が可能であることに留意すべきであり、これらの改善および修正も本発明の保護範囲に入ると見なされるべきである。
図1
図2
図3