(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不断流状態で既設管の外周面の一部を穿孔機により穿孔して形成された穿孔口と連通し管継手を有する屈曲管で構成された分岐管を形成するために当該既設管に装着される分岐管形成装置であって、
前記既設管の軸芯および前記分岐管の軸芯が含まれる平面に沿った割面を有し、互いに密封状態で締結部材により連結される第一分割部材および第二分割部材と、
前記穿孔機のセンタードリルを内挿して案内する筒状の案内筒と、を備え、
前記第一分割部材は、前記穿孔機のカッターが通過可能な開口を有する筒部を有しており、
前記第一分割部材と前記第二分割部材との間には、前記平面に垂直な方向に沿って形成された前記穿孔口に隣接する位置で前記カッターを収容可能なカッター収容空間が形成されており、
前記第一分割部材と前記第二分割部材との連結部位には、前記穿孔口と前記カッター収容空間を介して対向する連結開口部が形成されており、当該連結開口部が前記分岐管の端部を密封状態で挟持しており、
前記案内筒には、前記既設管の外周面のうち鉛直方向下側に当接して、前記穿孔機の軸芯ずれを防止する軸芯保持部材が連結されている分岐管形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の分岐管形成装置は、半割部材が溶接で接合されているため作業効率の上で改善の余地がある。また、分岐管形成装置に接続される分岐管には、地震等により曲げ力や引張力が作用するため、接続ケースの接続管と分岐管とのフランジ連結部分や半割部材の溶接部分から漏水するおそれがあった。
【0006】
そこで、作業効率が高く耐震性能に優れた分岐管形成装置及び分岐管形成方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分岐管形成装置の特徴構成は、不断流状態で既設管の外周面の一部を穿孔機により穿孔して形成された穿孔口と連通する分岐管を形成するために当該既設管に装着される分岐管形成装置であって、前記既設管の軸芯および前記分岐管の軸芯が含まれる平面に沿った割面を有し、互いに密封状態で締結部材により連結される第一分割部材および第二分割部材を備え、前記第一分割部材は、前記穿孔機のカッターが通過可能な開口を有する筒部を有しており、前記第一分割部材と前記第二分割部材との間には、前記平面に垂直な方向に沿って形成された前記穿孔口に隣接する位置で前記カッターを収容可能なカッター収容空間が形成されており、前記第一分割部材と前記第二分割部材との連結部位には、前記穿孔口と前記カッター収容空間を介して対向する連結開口部が形成されており、当該連結開口部が前記分岐管の端部を密封状態で挟持している点にある。
【0008】
本構成では、分岐管形成装置を構成する第一分割部材および第二分割部材が、既設管の軸芯と分岐管の軸芯が含まれる平面に沿った割面で密封状態に連結されている。このため、例えば、第二分割部材を鉛直方向下側に配置した状態で第二分割部材の上に第一分割部材を装着することが可能となり、第二分割部材の内部のカッター収容空間が視認できると共に締結部材を上側から操作して第一分割部材を第二分割部材に連結させることができる。その結果、既設管を更新する際の作業効率を高めることが可能となる。
【0009】
また、第一分割部材と第二分割部材との連結開口部には分岐管の端部が密封状態で挟持されているため、地震等により分岐管に曲げ力や引張力が作用した場合でも、分岐管が柔軟に微小移動することが可能となり、連結開口部にかかる負荷を低減することができる。しかも、第一分割部材にカッターが通過可能な開口を有する筒部を形成し、両分割部材の割面(連結面)が既設管の軸芯と分岐管の軸芯が含まれる平面に沿っているため、割面(連結面)が該平面に垂直な場合に比べて、穿孔機の振動が割面に直接作用せず、穿孔作業のカッター軸芯のずれが少ない。このように、作業効率が高く耐震性能に優れた分岐管形成装置を提供できた。
【0010】
他の特徴構成は、前記カッター収容空間には、前記既設管の外径よりも小径の前記カッターが収容される点にある。
【0011】
本構成によれば、カッター収容空間をコンパクトにすることが可能となるため、分岐管形成装置の小型化を図ることができる。
【0012】
他の特徴構成は、前記穿孔機のセンタードリルを内挿して案内する筒状の案内筒と、前記第二分割部材の底部に載置されると共に当該案内筒と連結される平板部材と、を更に備え、前記第二分割部材の前記底部には、前記平板部材を収容する収容凹部と、当該収容凹部の中央に前記案内筒の端部が係合される係合凹部又は係合凸部と、が形成されている点にある。
【0013】
本構成のように、第二分割部材に平板部材を収容する収容凹部を設け、この収容凹部の中央に案内筒の端部が係合される係合凹部又は係合凸部を設ければ、案内筒の位置決めが容易であり、カッター軸芯のずれを無くし、精度よく穿孔口を形成することができる。しかも、第二分割部材に設けた収容凹部により案内筒の端部が係合されるので、第二分割部材の下方からボルトを螺合して案内筒を固定する必要が無く、作業効率が高い。
【0014】
他の特徴構成は、前記平板部材は、分割された複数の分割板で構成されている点にある。
【0015】
本構成のように、平板部材を分割板で構成すれば、第二分割部材を鉛直方向下側に配置した状態でカッター収容空間を視認しながら、順に分割板を設置することが可能となり、作業効率が向上する。
【0016】
他の特徴構成は、前記平板部材の外縁部には、前記穿孔口の側に突出した環状凸部が形成されている点にある。
【0017】
本構成のように、平板部材の外縁部に穿孔口の側に突出した環状凸部を設ければ、環状凸部の内側空間に、既設管に穿孔口を形成した際に生じる切屑を収容することが可能となるため、切屑を既設管や分岐管に流出させることを防止できる。しかも、平板部材の外縁部に環状凸部を設けるだけで良いので、製造コストを低減できる。
【0018】
他の特徴構成は、前記案内筒の端部には、径方向外側に突出し前記平板部材と連結される突出部が形成されており、前記突出部の内部には、前記センタードリルの外周面に形成された環状凹部に係合可能な係合部材と、当該係合部材を前記環状凹部に向かう径方向内側に付勢する付勢部材と、が収容されている点にある。
【0019】
本構成のように、平板部材と案内筒とを連結するための突出部の内部に、係合部材および付勢部材を設ければ、係合部材をセンタードリルと係合させて、穿孔機を撤去する際に案内筒及び平板部材も同時に回収することが可能となる。しかも、突出部の内部に係合部材及び付勢部材を収容しているため、案内筒の軸長を短縮することが可能となるため、分岐管形成装置の小型化を図ることができる。
【0020】
他の特徴構成は、前記係合部材には、前記センタードリルの先端に当接可能なテーパー面が形成されており、前記センタードリルの先端が前記テーパー面に当接することにより前記付勢部材の付勢力に対抗して前記係合部材が径方向外側に移動する点にある。
【0021】
本構成のように、係合部材にテーパー面を設ければ、センタードリルを案内筒に挿入するだけで案内筒及び平板部材を穿孔機に係合させることが可能となり、作業効率が高まる。
【0022】
他の特徴構成は、前記案内筒には、前記既設管の外周面のうち鉛直方向下側に当接するボルトが螺合されている点にある。
【0023】
本構成のように、既設管の外周面のうち鉛直方向下側に当接するボルトを案内筒に螺合すれば、穿孔機の振動を受けても案内筒の姿勢が安定し、カッター軸芯の位置ずれを確実に防止することができる。
【0024】
本発明に係る分岐管形成方法の特徴は、不断流状態で既設管の外周面の一部を穿孔機により穿孔して形成された穿孔口と連通する分岐管を形成する分岐管形成方法であって、第一分割部材の割面と第二分割部材の割面とが前記既設管の軸芯および前記分岐管の軸芯が含まれる平面に沿うように、前記第一分割部材および前記第二分割部材を前記既設管に配置する分割部材配置工程と、前記第一分割部材と前記第二分割部材との連結開口部に前記分岐管の端部を挟持して、前記第一分割部材と前記第二分割部材とを締結部材により密封状態に連結する分割部材連結工程と、前記第一分割部材に前記穿孔機を装着する穿孔機装着工程と、前記分岐管に設けられた仕切弁を閉弁する分岐流路閉塞工程と、前記第一分割部材と前記第二分割部材との間に形成されたカッター収容空間に前記穿孔機のカッターを移動させて、前記カッター収容空間と隣接する位置に前記穿孔口を形成する穿孔口形成工程と、を含む点にある。
【0025】
本方法では、分岐管形成装置を構成する第一分割部材および第二分割部材が、既設管の軸芯と分岐管の軸芯が含まれる平面に沿った割面で密封状態に連結されている。このため、例えば、第二分割部材を鉛直方向下側に配置した状態で第二分割部材の上に第一分割部材を装着することが可能となり、第二分割部材の内部のカッター収容空間が視認できると共に締結部材を上側から操作して第一分割部材を第二分割部材に連結させることができる。その結果、既設管を更新する際の作業効率を高めることが可能となる。
【0026】
また、第一分割部材と第二分割部材との連結開口部には分岐管の端部が密封状態で挟持されているため、地震等により分岐管に曲げ力や引張力が作用した場合でも、分岐管が柔軟に微小移動することが可能となり、連結開口部にかかる負荷を低減することができる。しかも、連結開口部に挟持される分岐管に仕切弁を設け、仕切弁を閉弁して分岐流路を閉塞した後に穿孔口を形成するため、既設管に複数の穿孔口を夫々独立して設けることが可能となり、作業効率が高い。このように、作業効率が高く耐震性能に優れた分岐管形成方法を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る分岐管形成装置及び分岐管形成方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、分岐管形成装置及び分岐管形成方法の一例として、流体配管系を構成する水道管W(既設管の一例)の更新,耐震化工事の際に水道管Wに装着される分岐管形成装置100、及び、分岐管形成装置100を用いた分岐管形成方法として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0029】
図1及び
図2に示すように、分岐管形成装置100は、不断流状態で水道管W(既設管の一例)の外周面の一部を穿孔機1により穿孔して形成された穿孔口Waと連通する分岐管2を形成するために水道管Wに装着される分割構造の割T字管で構成されている。この分岐管形成装置100は、水道管Wの軸芯Xおよび分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿った割面3a,4aを有し、互いに密封状態で締結部材Bにより連結される第一分割部材3および第二分割部材4と、第一分割部材3の筒部31の開口部31a(端部)を閉塞する蓋体5と、を備えている。ここで、「水道管Wの軸芯Xおよび分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿った割面3a,4a」とは、水道管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面上又は該平面と略平行な面上に割面3a,4aがあることを意味する。本実施形態における水道管W,分岐管2及び分岐管形成装置100は、鋳鉄管、鋼管等で構成される同種の材料を用いて成形されている。なお、水道管Wと分岐管2又は分岐管形成装置100とを異なる材料を用いて成形しても良い。
【0030】
本実施形態における分岐管形成装置100は、第一分割部材3が鉛直方向上側に配置されると共に第二分割部材4が鉛直方向下側に配置されるように水道管Wの外周面に沿って装着されており、第一分割部材3の第一割面3aと第二分割部材4の第二割面4aとは、地面に平行な水平面に沿っている。以下、重力方向を下、その反対方向を上として説明することがある。
【0031】
図2及び
図3に示すように、分岐管2の端部フランジ2A(端部の一例)が第一分割部材3及び第二分割部材4の連結開口部33,43に挟持されている。本実施形態における分岐管2は、短管21と仕切弁Vを有する連結管22との両フランジ21a,22aがボルト23,ナット24により連結されている。連結管22のフランジ22aの反対側のフランジ22bには、他の連結管が連結される。
【0032】
図4及び
図6に示すように、第一分割部材3は、半割部材で構成されており、水道管Wの外周面に沿う半円筒状の第一本体部32と、第一本体部32から分岐管2の側に延出し、分岐管2の外周面に沿う半円筒状の第一連結開口部33と、第一本体部32及び第一連結開口部33に跨って上側に延出する円筒状の筒部31と、を有している。
【0033】
第一本体部32は、水道管Wの外周面に沿って湾曲した第一湾曲部32aと、第一湾曲部32aから水道管Wの側方に突出形成した第一フランジ部32bとを有している。この第一湾曲部32aには、平面視で水道管Wの軸芯Xと交差する対角線上に一対の貫通孔部32a1が形成されており、この一対の貫通孔部32a1には、水道管Wの外周面に先端が当接する位置固定ボルト38が挿入され、第一本体部32の内面に回り止め状態で収納されたナット39に螺合される(
図6も参照)。この位置固定ボルト38が水道管Wの外周面に当接することにより、第一分割部材3が回転しないように水道管Wに位置固定される。また、第一フランジ部32bには、締結部材Bを構成するボルトBaが挿入され、このボルトBaが螺合させるナットBbが配置される複数(本実施形態では4箇所)の第一貫通孔部32b1が軸芯Xに沿って形成されている(
図1も参照)。
【0034】
第一連結開口部33は、分岐管2の端部フランジ2Aの外周面に沿って湾曲した第一分岐湾曲部33aと、第一分岐湾曲部33aから水道管Wの軸芯Xに沿って突出した一対の第一分岐フランジ部33bとを有している。この一対の第一分岐フランジ部33bには、締結部材Bを構成するボルトBaが挿入され、このボルトBaが螺合させるナットBbが配置される複数(本実施形態では夫々の第一分岐フランジ部33bに2箇所ずつ)の第一貫通孔部33b1が形成されている(
図1も参照)。
【0035】
これら第一本体部32の第一フランジ部32b及び第一連結開口部33の内面の外縁部には、平面視矩形状の第一割面3aが形成されている。この第一割面3aと第一湾曲部32aの内面とに亘って、第一シール部材S1が嵌合される平面視矩形状の第一シール溝3a1が形成されている。第一シール部材S1が、水道管Wの外周面及び分岐管2の端部フランジ2Aの外周面に密着することにより、第一分割部材3が水道管W及び分岐管2に対して密封状態となる。
【0036】
筒部31は、穿孔機1のホールソー11(カッターの一例)が通過可能な開口を有する開口部31aと、第一本体部32及び第一連結開口部33に連設される基端部31bとを有している。開口部31aには、後述する当接ボルトTの先端が当接する環状凹部31a1が形成されている(
図2も参照)。基端部31bには、後述するアタッチメント7を固定する埋込ボルトUが螺合される孔部31c1を有する複数(本実施形態では周方向に等間隔に配置された4箇所)の柱状部31cが、径方向外側に突出形成されている。これら複数の柱状部31cの天面は、アタッチメント7を載置する座面31c2を構成しており、これら座面31c2は、アタッチメント7の姿勢を水平に維持するために同一平面上に配置されている。
【0037】
図5及び
図6に示すように、第二分割部材4は、半割部材で構成されており、水道管Wの外周面に沿う半円筒状の第二本体部42と、第二本体部42から分岐管2の側に延出し、分岐管2の外周面に沿う半円筒状の第二連結開口部43と、第二本体部42及び第二連結開口部43に跨って内面側から見て下側に平面視円形状に窪んだ底部41と、を有している。
【0038】
第二本体部42は、水道管Wの外周面に沿って湾曲した第二湾曲部42aと、第二湾曲部42aから水道管Wの側方に突出形成した第二フランジ部42bとを有している。この第二湾曲部42aには、平面視で水道管Wの軸芯Xと交差する対角線上に一対の貫通孔部42a1が形成されており、この一対の貫通孔部42a1には、第一分割部材3と同様に水道管Wの外周面に先端が当接する位置固定ボルト38が挿入され、第二本体部42の内面に回り止め状態で収納されたナット39に螺合される。この位置固定ボルト38が水道管Wの外周面に当接することにより、第二分割部材4が回転しないように水道管Wに位置固定される。また、第二フランジ部42bには、締結部材Bを構成するボルトBaが挿入される複数(本実施形態では4箇所)の第二貫通孔部42b1が軸芯Xに沿って形成されている。
【0039】
第二連結開口部43は、分岐管2の端部フランジ2Aの外周面に沿って湾曲した第二分岐湾曲部43aと、第二分岐湾曲部43aから水道管Wの軸芯Xに沿って突出した一対の第二分岐フランジ部43bと、を有している。この一対の第二分岐フランジ部43bには、締結部材Bを構成するボルトBaが挿入される複数(本実施形態では夫々の第二分岐フランジ部43bに2箇所ずつ)の第二貫通孔部43b1が形成されている。
【0040】
これら第二本体部42の第二フランジ部42b及び第二連結開口部43の内面の外縁部には、平面視矩形状の第二割面4aが形成されている。この第二割面4aと第二湾曲部42aの内面とに亘って、第二シール部材S2が嵌合される平面視矩形状の第二シール溝4a1が形成されている。第二シール部材S2が、水道管Wの外周面及び分岐管2の端部フランジ2Aの外周面に密着することにより、第二分割部材4が水道管W及び分岐管2に対して密封状態となる。また、第一割面3aの第一シール溝3a1に嵌合された第一シール部材S1と、第二割面4aの第二シール溝4a1に嵌合された第二シール部材S2とが互いに圧接されることにより、第一分割部材3と第二分割部材4との隙間を密閉する。
【0041】
底部41は、後述する平板部材9を収容する平面視円形状の収容凹部41aと、収容凹部41aの中央に後述する案内筒8の端部が係合される平面視円形状の係合凹部41bとを有している(
図8も参照)。収容凹部41aは、底部41を下側に窪ませて形成されており、係合凹部41bは、収容凹部41aの中央を更に下側に窪ませて形成されている。また、収容凹部41aには、係合凹部41bと隣接する外周側に上側に突出させた平面視円環状の円環状凸部41cが形成されており、この円環状凸部41cの上面は、後述する案内筒8の突出部82が載置される載置面41c1となっている(
図11も参照)。この載置面41c1は、水道管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面と平行な平面である。このような構成から、円環状凸部41cの外周側には円環状溝41dが形成されており、この円環状溝41dに平板部材9が載置されることとなる。
【0042】
図1及び
図2に示すように、第一分割部材3の筒部31の開口部31aを閉塞する蓋体5は、底壁51と底壁51の外縁部から立設する側壁52とを有している。この蓋体5は、管路としての筒部31の流路を遮断する弁体として機能すると共に、筒部31を閉塞する閉塞蓋としても機能する。
【0043】
底壁51は、平面視円形状の平板部材であり、その外面には、弁操作部材Vkと係合可能な弧状の長溝51aが形成されている(
図13〜
図14も参照)。弁操作部材Vkの端部が長溝51aの一端から他端まで回動することにより、蓋体5が弁箱6の内部をスライド移動する。その結果、蓋体5が筒部31の開口を閉塞する閉弁状態と、蓋体5が筒部31の開口から離間する開弁状態とに切り替えることができる。また、底壁51の外縁部のうち長溝51aとは反対側の部位には、後述する側壁ピース53を固定する固定ボルトKが挿入される複数(本実施形態では2箇所)の貫通孔51bが形成されている。さらに、底壁51の外縁部の内面には、環状シール部材S3が嵌合される環状シール溝51cが形成されており、この環状シール部材S3が筒部31の開口部31aの上面に密着することにより、蓋体5が第一分割部材3の筒部31を密封する。なお、底壁51は、平面視円形状に限定されず、例えば、平面視矩形状に構成しても良い。
【0044】
側壁52は、底壁51の外縁部の一部に設けられており、底壁51の半円以上(180度以上)の領域に亘って一体的に突出する突出部位で構成されている。底壁51のうち側壁52が存在しない外縁部には、側壁ピース53が装着されている。
【0045】
側壁52には、筒部31の開口部31aの外周面に形成された環状凹部31a1に当接する複数(本実施形態では4つ)の当接ボルトTが螺合される螺子孔52aが、水道管Wの軸芯Xに沿って対向する部位に、夫々2箇所ずつ設けられている。本実施形態では、当接ボルトTが六角穴付きボルトで構成されており、この螺子孔52aに当接ボルトTを螺合することにより、当接ボルトTの先端が環状凹部31a1に食い込んで蓋体5が第一分割部材3の筒部31に固定される(
図19も参照)。なお、筒部31の開口部31aの外周面に環状凹部31a1を形成せずに、当接ボルトTを、筒部31の開口部31aの円滑な外周面に当接させても良い。
【0046】
側壁ピース53は、弧状部材で構成されており、底壁51のうち側壁52が存在しない外縁部に挿入される。この側壁ピース53には、水道管Wの軸芯Xに沿う水平方向に貫通し、当接ボルトTが螺合される第一螺子孔53aと、水道管Wの軸芯Xおよび分岐管2の軸芯Yに垂直な方向に貫通し、固定ボルトKが螺合される複数(本実施形態では2箇所)の第二螺子孔53bとが形成されている(
図18も参照)。底壁51のうち側壁52が存在しない外縁部に挿入された側壁ピース53は、固定ボルトKを底壁51の貫通孔51bから挿入して、第二螺子孔53bに螺合することにより蓋体5と一体化され、第一螺子孔53aに当接ボルトTを螺合することにより、当接ボルトTの先端が環状凹部31a1に食い込んで第一分割部材3の筒部31に固定される(
図19も参照)。なお、当接ボルトTが螺合される第一螺子孔53aを省略しても良い。
【0047】
続いて、分岐管形成装置100を用いた分岐管形成方法に用いられる作業用機器について説明する。本実施形態に用いられる作業用機器としては、
図12に示すように、穿孔機1と、筒部31の流路を遮断する弁体として機能する蓋体5を収容する弁箱6と、弁箱6を安定的に固定するためのアタッチメント7と、穿孔機1のセンタードリル12を案内する案内筒8と、案内筒8と連結される平板部材9と、を備えている。以下、アタッチメント7,案内筒8,平板部材9を含めて分岐管形成装置100を称する場合がある。
【0048】
図11及び
図12に示すように、穿孔機1は、切削チップ11aを有する円筒状のホールソー11(カッターの一例)と、ホールソー11の中心位置から切削チップ11aよりも外側に突出するセンタードリル12と、ホールソー11及びセンタードリル12を回転駆動させるモータを含む回転駆動機構13と、ホールソー11及びセンタードリル12を収容する穿孔ケース14とを備えている。なお、回転駆動機構13によりホールソー11のみ回転させて、センタードリル12を回転させない構成であっても良い。
【0049】
本実施形態におけるホールソー11は、その外径が水道管Wの外径よりも小さく構成されており、水道管Wの外周面の一部を切削するものである。ホールソー11及びセンタードリル12は、回転駆動機構13の回転軸13aと連結されており、回転しながら水道管Wの軸芯Xおよび分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に対して垂直な方向(上下方向)に進退移動する。回転駆動機構13により、ホールソー11を水道管Wに向かって回転させながら下方向に前進させると、ホールソー11の切削チップ11aにより水道管Wの外周面の一部(側面)が切削され、該垂直な方向に沿った穿孔口Waが形成される(
図2も参照)。水道管Wの軸芯Xおよび分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に対して垂直な方向に沿った穿孔口Waは、ホールソー11の外形に合わせた形状となっており、平面視では水道管Wの軸芯Xに沿って半円弧状に形成されている。なお、ホールソー11は、その外径が水道管Wの外径以上に構成されていても良い。
【0050】
回転駆動機構13によりホールソー11及びセンタードリル12を前進移動させたとき、第一分割部材3と第二分割部材4との間には、穿孔口Waに隣接する位置でホールソー11を収容可能なカッター収容空間Spが形成されている。この構成から、第一分割部材3と第二分割部材4との連結部位には、穿孔口Waとカッター収容空間Spを介して対向する連結開口部33,43が形成されており、この連結開口部33,43が分岐管2の端部フランジ2Aを密封状態で挟持している。本実施形態におけるセンタードリル12は、先端部12aの先端面の周方向全域の角部がテーパー形状で形成されており、先端部12aの側面には、環状凹部12a1が形成されている。
【0051】
図12〜
図14に示すように、弁箱6は、蓋体5を収容する弁箱本体61と、弁箱本体61より円筒状に延出し、ホールソー11及びセンタードリル12が通過可能な弁箱筒部62とを有している。弁箱本体61は、開弁状態の蓋体5を収容する蓋収容部61Aと、閉弁状態の蓋体5を収容しアタッチメント7に固定される弁箱固定部61Bとを有している。弁箱筒部62の端部には、穿孔機1の穿孔ケース14の穿孔フランジ14aとボルト,ナットで固定される弁箱フランジ62aが円環状に突出形成されている。
【0052】
蓋収容部61Aは、平面視矩形状のボックスであり、上壁に弁操作部材Vkが密封状態で固定されている。この弁操作部材Vkは、操作レバーVk1を回転操作することにより、弁操作部材Vkの端部が長溝51aの一端から他端まで回動して、蓋体5を弁箱6の内部でスライド移動させる。
【0053】
弁箱固定部61Bは、蓋収容部61Aと共に蓋体5の移動空間を形成する平面視円形状の弁箱円筒部63と、弁箱円筒部63からアタッチメント7の外周面に沿って延出した弁箱延出部64とを有している。弁箱円筒部63には、蓋体5を第一分割部材3の筒部31に固定するための六角穴付きボルトで構成される当接ボルトTを螺合操作するための操作工具(不図示)が挿入される操作用貫通孔63aが、複数(本実施形態では4箇所)設けられている。この操作用貫通孔63aには、操作工具を挿入するときを除いて水密状態に閉塞する閉塞ボルト63a1が螺合されている。また、弁箱円筒部63の上壁のうち、筒部31の開口部31aを閉塞した蓋体5の外縁部を押圧する押ボルトPが螺合される押ボルト用貫通孔63bが、複数(本実施形態では2箇所)設けられている。弁箱延出部64には、アタッチメント7の下部に当接する弁箱固定ボルト65が螺合される弁固定用貫通孔64aが、複数(本実施形態では4箇所)設けられている。また、弁箱延出部64の内周面には、弁箱円筒部63との境界部分に環状突出部64bが円環状に突出形成されており、この環状突出部64bと弁箱固定ボルト65とでアタッチメント7を挟み込むことにより、弁箱6がアタッチメント7に固定される。
【0054】
図8〜
図9に示すように、アタッチメント7は、第一分割部材3の筒部31の外周面を包囲する円環状部材で構成されている。本実施形態におけるアタッチメント7は、一対の半円部材で構成された分割構造となっており、夫々の半円部材には、アタッチメント7を第一分割部材3に固定するための埋込ボルトUが挿入される固定用貫通孔71が、上下方向に沿って複数(本実施形態では夫々の半円部材に2箇所ずつ)設けられている。この固定用貫通孔71に埋込ボルトUを内挿して、第一分割部材3の柱状部31cの孔部31c1に埋込ボルトUを螺合することにより、アタッチメント7が第一分割部材3に固定される。本実施形態における埋込ボルトUの頭部には、環状のシール溝Uaが設けられており、このシール溝UaにOリングUbが装着されている。また、アタッチメント7の外周面には、上下の外縁部に環状テーパー面72が形成されている。下側の環状テーパー面72に弁箱固定ボルト65の先端部が当接することにより、弁箱6の環状突出部64bと弁箱固定ボルト65とがアタッチメント7を挟み込んで、弁箱6がアタッチメント7に固定される(
図12も参照)。なお、アタッチメント7は、円環状部材に限定されず、例えば平面視で外形多角形状に構成しても良い。
【0055】
図10〜
図12に示すように、案内筒8は、穿孔機1のセンタードリル12が挿入されてセンタードリル12の上下方向の進退移動を案内する。案内筒8は、センタードリル12の外径と略同一の内径を有する円筒状の周壁部81と、周壁部81の端部から径方向外側に突出し、平板部材9と連結される円環状の突出部82とを有している。周壁部81の端部は、第二分割部材4の底部41に形成された係合凹部41bに係合することにより、案内筒8が位置決めされる。なお、案内筒8は、センタードリル12の上下方向の進退移動を案内可能な形状であれば、どのような形状であっても良い。
【0056】
周壁部81には、水道管Wの穿孔口Waを形成したときに水道管Wから分離される切断部分Wbを抱持する周壁貫通孔81aが形成されている。この周壁貫通孔81aとホールソー11の内周面との間に切断部分Wbが挟まれて、切断部分Wbが抱持される。また、周壁部81の水道管Wの軸芯Xに沿った両側方には、水道管W(切断部分Wb)の外周面のうち、鉛直方向下側に当接し穿孔機1の軸芯ずれを防止する軸芯保持ボルトJが螺合される一対のブロック部83が突出形成されている。この軸芯保持ボルトJは、水道管W(切断部分Wb)の外周面の鉛直方向下側に当接するため、切断部分Wbの落下を防止する機能も有している。
【0057】
突出部82は、外周部分に平板部材9に固定するために挿入される外周固定ボルトGが各別に挿入される複数(本実施形態では4箇所)のボルト挿入孔82aが形成されており、このボルト挿入孔82aの内側には、穿孔機1のセンタードリル12を保持する保持機構84が設けられている。保持機構84は、突出部82に形成された収容ボックス82bと、センタードリル12の外周面に形成された環状凹部12a1に係合可能な係合部材84aと、係合部材84aを環状凹部12a1に向かう径方向内側に付勢する圧縮コイルスプリング84b(付勢部材の一例)とを有している。なお、外周固定ボルトGをピンで構成して、突出部82と平板部材9とをピン嵌合する形態であっても良い。
【0058】
収容ボックス82bは、突出部82の上面に一体形成され、径方向内側に開口を有する一対のボックス状部材であり、該開口から圧縮コイルスプリング84b,係合部材84aの順に挿入して収容している。係合部材84aは、直方体ブロック状部材で構成されており、先端上面には、センタードリル12の先端部12aの先端面に形成されたテーパー状の先端角部(先端の一例)に当接可能なテーパー面84a1が形成されている。センタードリル12の先端角部がテーパー面84a1に当接することにより、圧縮コイルスプリング84bの付勢力に対抗して係合部材84aが径方向外側に移動し、更にセンタードリル12を前進移動させると、圧縮コイルスプリング84bの付勢力により係合部材84aが環状凹部12a1に係合し、センタードリル12が保持機構84により保持される。
【0059】
平板部材9は、平面視円環形状に形成されており、第二分割部材4の収容凹部41aに形成された円環状溝41dに載置された状態で案内筒8と連結される。平板部材9には、案内筒8を平板部材9に固定するための外周固定ボルトGが螺合される複数(本実施形態では4箇所)の外周固定ボルト螺合孔91が形成されている。また、平板部材9の外縁部には、穿孔口Waの側に突出した環状凸部92が形成されている。この環状凸部92は、平板部材9の上面に接着等で固定されるゴム等の弾性部材で構成されているが、平板部材9と一体形成しても良い。なお、平板部材9は、平面視円環形状に限定されず、例えば、平面視矩形状に構成しても良い。
【0060】
本実施形態における平板部材9は、一体形成された単一部材で構成されているが、分割された複数(例えば2つ)の分割板で構成することが好ましい。平板部材9を分割板で構成することにより、第二分割部材4の収容凹部41aに挿入する際、一方の分割板を水道管Wに干渉しないように円環状溝41dに載置した後に、水道管Wの下側に回転させることにより、他方の分割板を水道管Wに干渉しないように円環状溝41dに載置することができる。一方、平板部材9を単一部材で構成した場合は、平板部材9を斜めにした状態で第二分割部材4の収容凹部41aに挿入することとなる。
【0061】
続いて、
図6〜
図19を用いて、分岐管形成装置100を用いた分岐管形成方法について説明する。本実施形態では、水道管Wの所定の部位に分岐管形成装置100を装着して水道管Wと連通する分岐管2を形成した後、水道管Wの他の部位に他の分岐管形成装置100を装着して水道管Wと連通する分岐管2を形成し、これら分岐管形成装置100どうしの間に位置する老朽化した水道管Wを撤去して、水道管Wを分岐管2(新たな水道管W)に更新するものである。
【0062】
本実施形態における分岐管形成方法は、
図6に示す(1)分割部材配置工程と、
図7に示す(2)分割部材連結工程と、
図8〜
図9に示す(3)アタッチメント装着工程と、
図10〜
図12に示す(4)穿孔工程と、
図13〜
図15に示す(5)閉弁工程と、
図16に示す(6)蓋固定工程と、
図17に示す(7)弁箱撤去工程と、
図18〜
図19に示す(8)側壁ピース装着工程とを含んでいる。
【0063】
(1)分割部材配置工程
図6に示すように、第一分割部材3の割面3aと第二分割部材4の割面4aとが水道管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿うように、第一分割部材3および第二分割部材4を水道管Wに配置する。
【0064】
具体的には、まず、第二シール溝4a1に第二シール部材S2を嵌合した第二分割部材4を水道管Wの下側に配置すると共に、第二分割部材4の第二連結開口部43に分岐管2の端部フランジ2Aを配置する。なお、第二分割部材4を水平状態に維持可能な受け台がある場合は、後述する(2)分割部材連結工程における、平板部材9及び案内筒8のカッター収容空間Spへの収納作業を実行しても良い。
【0065】
第二分割部材4の上側に、水道管W及び分岐管2(第二分割部材4の受け台がある場合は平板部材9及び案内筒8も含む)が配置された状態で、第二分割部材4の上方から、第一シール溝3a1に第一シール部材S1を嵌合した第一分割部材3(
図4参照)を接近させ、第一分割部材3の割面3aと第二分割部材4の割面4aとを対向させる。このように、分岐管形成装置100を構成する第一分割部材3および第二分割部材4が、水道管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿った割面3a,4aで構成されているため、第二分割部材4を鉛直方向下側に配置した状態で第二分割部材4の上に第一分割部材3を装着することが容易である。
【0066】
(2)分割部材連結工程
図6〜
図7に示すように、第一分割部材3と第二分割部材4との連結開口部33,43に分岐管2の端部フランジ2Aを挟持した状態で、第一分割部材3と第二分割部材4とを締結部材Bにより密封状態に連結する。この締結部材Bは、第一分割部材3の第一フランジ部32b及び第二分割部材4の第二フランジ部42bに4箇所、第一分割部材3の第一分岐フランジ部33b及び第二分割部材4の第二分岐フランジ部43bに4箇所の合計8箇所に配置されることとなる。この締結部材Bによる締結作業により、第一割面3aの第一シール溝3a1に嵌合された第一シール部材S1と、第二割面4aの第二シール溝4a1に嵌合された第二シール部材S2とが互いに圧接されることにより、第一分割部材3と第二分割部材4との隙間が密閉され、水道管W及び分岐管2に対して密封状態となる(
図8も参照)。そして、第一分割部材3の一対の貫通孔部32a1および第二分割部材4の一対の貫通孔部42a1に位置固定ボルト38を挿入して、第一分割部材3および第二分割部材4が回転しないように水道管Wに位置固定しておく。
【0067】
次いで、
図6に示すように、第一分割部材3の筒部31の開口部31a又は分岐管2の開口を介して、平板部材9及び案内筒8をカッター収容空間Spに収納する。具体的には、第二分割部材4の収容凹部41aの円環状溝41dに平板部材9を載置し、この平板部材9を外周固定ボルトGにより案内筒8と連結する(
図11も参照)。次いで、案内筒8のブロック部83に予め挿入された軸芯保持ボルトJを締め込み操作して、軸芯保持ボルトJの先端を水道管W(切断部分Wb)の外周面の鉛直方向下側に当接させる(
図12も参照)。平板部材9と案内筒8との外周固定ボルトGによる連結作業及び軸芯保持ボルトJの締め込み操作は、カッター収容空間Spを臨みながら上方から操作でき、しかも、案内筒8の位置決めは、案内筒8の端部を収容凹部41aの中央に形成された係合凹部41bに係合するだけで良いため、容易である。また、平板部材9の載置に際し、平板部材9を分割板で構成した場合は、第二分割部材4の収容凹部41aに挿入する際、一方の分割板を水道管Wに干渉しないように円環状溝41dに載置した後に、水道管Wの下側に回転させることにより、他方の分割板を水道管Wに干渉しないように円環状溝41dに載置することができる。
【0068】
本実施形態では、分岐管形成装置100を構成する第一分割部材3および第二分割部材4が、水道管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿った割面3a,4aで構成されているため、締結部材Bを上側から操作して第一分割部材3を第二分割部材4に連結させることが可能となり、作業効率を高めることができる。すなわち、水道管W及び分岐管2の下側でのボルト締付作業が不要となる。また、第一分割部材3と第二分割部材4との連結開口部33,43には分岐管2の端部フランジ2Aが密封状態で挟持されているため、地震等により分岐管2に曲げ力や引張力が作用した場合でも、第一分割部材3および第二分割部材4で負荷を受け止めることが可能となり、締結部材Bにかかる負荷を低減できる。また、地震等により分岐管2に曲げ力や引張力が作用した場合でも、分岐管2が柔軟に微小移動することが可能となり、連結開口部33,43にかかる負荷を低減することができる。その結果、耐震性能に優れた分岐管形成装置100となっている。
【0069】
(3)アタッチメント装着工程
図8〜
図9に示すように、二分割構造のアタッチメント7を夫々、第一分割部材3の筒部31に形成された複数の柱状部31cの座面31c2に載置した状態で、アタッチメント7の固定用貫通孔71に挿入された埋込ボルトUを、柱状部31cの孔部31c1に螺合させる。これら座面31c2は、アタッチメント7の姿勢を水平に維持するよう同一平面上に配置されているため、アタッチメント7の第一分割部材3に対する固定作業が容易である。しかも、分岐管形成装置100を構成する第一分割部材3および第二分割部材4が、水道管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿った割面3a,4aで構成されているため、埋込ボルトUを上側から操作してアタッチメント7を固定することができる。
【0070】
(4)穿孔工程
図10〜
図12に示すように、穿孔工程は、第一分割部材3に穿孔機1を装着する穿孔機装着工程と、分岐管2に設けられた仕切弁Vを閉弁する分岐流路閉塞工程(
図3参照)と、第一分割部材3と第二分割部材4との間に形成されたカッター収容空間Spに穿孔機1のホールソー11を移動させて、カッター収容空間Spと隣接する位置に穿孔口Waを形成する穿孔口形成工程と、を有している。
【0071】
穿孔機装着工程では、弁箱6をアタッチメント7(第一分割部材3)に固定し、この弁箱6に穿孔機1を装着する。弁箱6をアタッチメント7に固定する際、弁箱6の弁箱延出部64の弁固定用貫通孔64aに弁箱固定ボルト65を螺合し、弁箱固定ボルト65の先端部をアタッチメント7の下側の環状テーパー面72に当接させる。その結果、弁箱6の環状突出部64bと弁箱固定ボルト65とがアタッチメント7を挟み込んで、弁箱6がアタッチメント7に固定される。そして、弁箱筒部62の弁箱フランジ62aと、穿孔機1の穿孔ケース14の穿孔フランジ14aとをボルト,ナットで固定し、穿孔機1が弁箱6を介して第一分割部材3に装着される。
【0072】
分岐流路閉塞工程では、分岐管2に設けられた仕切弁Vを閉弁することにより、後の穿孔口形成工程により形成された穿孔口Waを介して、水道管Wから分岐管2へと流路が変更されることを防止する(
図3参照)。このように、連結開口部33,43に挟持される分岐管2に仕切弁Vを設け、仕切弁Vを閉弁して分岐管2の分岐流路を閉塞した後に穿孔口Waを形成するため、仕切弁Vよりも下流側の配管施工を事前に行うことが可能となる。つまり、配管施工に支障をきたさず、任意のタイミングで水道管Wに穿孔口Waを形成することが可能となり、作業効率が高い。
【0073】
穿孔口形成工程では、回転駆動機構13によりホールソー11及びセンタードリル12を回転させながら下方向に前進させると、センタードリル12が案内筒8に内挿されながら、ホールソー11の切削チップ11aにより水道管Wの外周面の一部(側面)が切削され、穿孔口Waが形成される。この穿孔口Waの形成により生成された切断部分Wbは、案内筒8の周壁部81に形成された周壁貫通孔81aとホールソー11の内周面との間に挟まれて抱持される。このとき、軸芯保持ボルトJが水道管W(切断部分Wb)の外周面の鉛直方向下側に当接しているため、穿孔機1の軸芯ずれが防止されると共に、切断部分Wbの落下が確実に防止される。また、第一分割部材3にホールソー11が通過可能な開口を有する筒部31を形成し、第一分割部材3および第二分割部材4の割面3a,4aが水道管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿っているため、割面3a,4aが該平面に垂直な場合に比べて、穿孔機1の振動が割面3a,4aに直接作用せず、穿孔作業のカッター軸芯のずれが少ない。しかも、本実施形態では、平板部材9の外縁部に環状凸部92が形成されているため、環状凸部92の内側空間に切屑を収容することが可能となるため、切屑を水道管Wや分岐管2に流出させることを防止できる。
【0074】
穿孔口Waが形成された後も、回転駆動機構13によりホールソー11及びセンタードリル12を下方向に前進させると、センタードリル12の先端角部が係合部材84aのテーパー面84a1に当接することにより、圧縮コイルスプリング84bの付勢力に対抗して係合部材84aが径方向外側に移動する。そして、回転駆動機構13によりホールソー11及びセンタードリル12を下方向に更に前進させると、圧縮コイルスプリング84bの付勢力により係合部材84aが環状凹部12a1に係合し、センタードリル12が案内筒8の保持機構84により保持される。この状態で、回転駆動機構13によりホールソー11及びセンタードリル12を上方向に後退させると、第二分割部材4の収容凹部41aに形成された円環状溝41dに載置された平板部材9と、この平板部材9に固定された案内筒8とが、センタードリル12と共に上方向に移動する。その結果、弁箱6に収容された蓋体5よりも上側に、穿孔機1,平板部材9及び案内筒8を切断部分Wbと共に移動させることができる。
【0075】
(5)閉弁工程
図13〜
図15に示すように、閉弁工程は、弁箱6に収容された蓋体5を第一分割部材3の筒部31まで移動させて、筒部31の開口を閉塞する。具体的には、まず、弁操作部材Vkの端部が長溝51aの一端から他端まで回動することにより、蓋体5を弁箱6の内部でスライド移動させ、底壁51のうち側壁52が存在しない部分が筒部31の開口部31aを通過する。このように、底壁51のうち側壁52が存在しない部分を設ければ、側壁52が存在しない部分を筒部31の開口部31aに通過させることが可能となるため、弁体としての蓋体5を弁操作部材Vkによりスライド移動させることができる。次いで、弁箱固定部61Bの押ボルト用貫通孔63bに螺合された押ボルトPにより、蓋体5の外縁部を押圧する。これにより、蓋体5の底壁51の外縁部の内面に設けられた環状シール部材S3が筒部31の開口部31aの上面に密着することにより、蓋体5が第一分割部材3の筒部31を密封する。その結果、第一分割部材3および第二分割部材4の内部が密封され、穿孔機1を撤去することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、(5)閉弁工程と(6)蓋固定工程との間に穿孔機撤去工程を設けている。穿孔機撤去工程では、押ボルトPにより蓋体5の外縁部を押圧して第一分割部材3および第二分割部材4の内部を密封した後、穿孔機1,平板部材9及び案内筒8を切断部分Wbと共に撤去する(
図12参照)。つまり、蓋体5よりも上側に穿孔機1,平板部材9及び案内筒8を切断部分Wbと共に移動させた後、穿孔ケース14の穿孔フランジ14aと弁箱フランジ62aを固定していたボルト,ナットを取り外し、穿孔機1,平板部材9及び案内筒8を切断部分Wbと共に撤去する。これにより、
図15に示すように、作業用機器としては、弁箱6とアタッチメント7が残存することとなる。なお、穿孔機撤去工程を、後述する(7)弁箱撤去工程にて実行しても良い。
【0077】
(6)蓋固定工程
図16に示すように、蓋固定工程は、当接ボルトTの先端を第一分割部材3の筒部31の環状凹部31a1に食い込ませて、蓋体5を筒部31に固定する(
図19も参照)。具体的には、操作用貫通孔63aの閉塞ボルト63a1を取り外して不図示の操作工具を挿入し、この操作工具を弁箱6の外部から操作して、六角穴付きボルトで構成される当接ボルトTを蓋体5の側壁52に形成された螺子孔52aに螺合する(
図19も参照)。そして、当接ボルトTの先端が環状凹部31a1に食い込んで蓋体5が第一分割部材3の筒部31に固定される。なお、当接ボルトTを蓋体5の側壁52に予め仮螺合しておいて操作工具により本螺合しても良いし、操作工具の先端に当接ボルトTを取り付けた状態で操作用貫通孔63aに挿入し、当接ボルトTを蓋体5の側壁52に形成された螺子孔52aに螺合させても良い。このように、閉塞蓋として機能する蓋体5を筒部31に固定する場合、外部から当接ボルトTを操作して螺子孔52aに螺合するだけで良いため、作業効率が極めて高い。
【0078】
(7)弁箱撤去工程
図17に示すように、弁箱撤去工程は、第一分割部材3に固定されたアタッチメント7に固定された弁箱6を撤去し、アタッチメント7を含む分岐管形成装置100を残存させる。具体的には、弁箱6をアタッチメント7に固定していた弁箱固定ボルト65を取り外す(
図12も参照)。このとき、(2)分割部材連結工程により、第一分割部材3と第二分割部材4との隙間が密閉され、分岐管形成装置100が水道管W及び分岐管2に対して密封状態となっており、(6)蓋固定工程において筒部31に固定された蓋体5が第一分割部材3および第二分割部材4の内部を閉塞しているため、分岐管形成装置100の外部に漏水することがない。
【0079】
(8)側壁ピース装着工程
図18〜
図19に示すように、側壁ピース装着工程は、蓋体5の底壁51のうち側壁52が存在しない外縁部に、側壁ピース53を装着する。側壁ピース装着工程では、(7)弁箱撤去工程においてアタッチメント7を撤去せずに、側壁ピース53を装着した後にアタッチメント7を撤去することが好ましい。これにより、側壁ピース53をアタッチメント7の上面に沿わせて蓋体5に挿入することができる。
【0080】
蓋体5の底壁51のうち側壁52が存在しない外縁部に側壁ピース53を挿入した後、固定ボルトKを底壁51の貫通孔51bから挿入して、第二螺子孔53bに螺合することにより側壁ピース53を蓋体5と一体化する。そして、第一螺子孔53aに当接ボルトTを螺合することにより、当接ボルトTの先端が環状凹部31a1に食い込んで、側壁ピース53が第一分割部材3の筒部31に固定される。次いで、アタッチメント7を第一分割部材3の柱状部31cに固定していた埋込ボルトUを取り外し、分割構造のアタッチメント7を順に撤去する。このように、底壁51のうち側壁52が存在しない外縁部に装着される側壁ピース53を設ければ、閉塞蓋としての蓋体5の固定姿勢が安定する。また、底壁51の貫通孔51bに固定ボルトKを挿入して側壁ピース53を固定すれば、閉塞蓋としての蓋体5を強固に固定できる。しかも、底壁51に貫通孔51bを設ければ、上方から固定ボルトKを操作することが可能となり、作業効率を高めることができる。
【0081】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態において、案内筒8の周壁部81の端部を、第二分割部材4の底部41に形成された係合凹部41bに係合させた。これに代えて、案内筒8の周壁部81の端部に凹部を設け、第二分割部材4の底部41に形成された凸部(係合凸部)を設け、これら凹部と凸部を係合させても良い。
(2)上述した実施形態では、蓋体5の底壁51の外面に弁操作部材Vkの端部が係合する長溝51aを設けて、弁操作部材Vkにより蓋体5をスライド移動させたが、蓋体5の側壁52に設けた係合溝にプッシャ部材の先端を係合させて、プッシャ部材により蓋体5をスライド移動させても良い。
【0082】
(3)
図20に示すように、分岐管2の端部フランジ2A(端部の一例)が第一分割部材3及び第二分割部材4の連結開口部33,43に挟持されている。本実施形態における分岐管2は、上述した実施形態における短管21を省略して、仕切弁Vを有する連結管22の端部に端部フランジ2Aを有している。連結管22の端部フランジ2Aの反対側のフランジ22bには、他の連結管(不図示)が連結される。
(4)
図21に示すように、分岐管2は管継手28を有する屈曲管で構成されており、分岐管2の端部フランジ2A(端部の一例)が第一分割部材3及び第二分割部材4の連結開口部33,43に挟持されている。本実施形態における分岐管2は、短管21と仕切弁Vを有する連結管22とが管継手28により連結されている。連結管22の管継手28の反対側のフランジ22bには、他の連結管が連結される。
(5)上述した実施形態における既設管は、水道管Wに限定されず、他の流体管であっても良い。
【解決手段】不断流状態で既設管Wの外周面の一部を穿孔機により穿孔して形成された穿孔口Waと連通する分岐管2を形成するために既設管Wに装着される分岐管形成装置100であって、既設管Wの軸芯Xと分岐管2の軸芯Yが含まれる平面に沿った割面3a,4aを有し、互いに密封状態で締結部材Bにより連結される第一分割部材3および第二分割部材4を備え、第一分割部材3と第二分割部材4との連結部位には、穿孔口Waとカッター収容空間Spを介して対向する連結開口部33,43が形成されており、連結開口部33,43が分岐管2の端部2Aを密封状態で挟持している。