特許第6875797号(P6875797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875797
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ガスセンサキット及び顔面装着具
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20210517BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61B5/08
   A61M16/00 345
   A61M16/06 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-117759(P2016-117759)
(22)【出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2017-221308(P2017-221308A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170911
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 文彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 正行
(72)【発明者】
【氏名】株本 憲一郎
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−200061(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0015916(US,A1)
【文献】 特開2004−321721(JP,A)
【文献】 特開2016−000265(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0320851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08−5/097
A61M 16/00−16/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気のガス濃度を測定するガスセンサと、
前記被験者の呼気を前記ガスセンサに導くガス導入部と、
前記被験者に治療ガスを供給するガス供給ユニットと、を備え、
前記ガス供給ユニットは、前記治療ガスの流速を遅くするように調整する流速調整部を有し、
前記流速調整部は、チューブから前記ガス供給ユニットに対して前記治療ガスが流れ込むガス流入口に配置され、前記チューブと前記ガス供給ユニットの中央とを隔てる多孔性部材である、ガスセンサキット。
【請求項2】
被験者の呼気のガス濃度を測定するガスセンサと、
前記被験者の呼気を前記ガスセンサに導くガス導入部と、
前記被験者に治療ガスを供給するガス供給ユニットと、を備え、
前記ガス供給ユニットは、前記治療ガスの流速を遅くするように調整する流速調整部を有し、
前記流速調整部は、前記ガス供給ユニットに対して前記治療ガスが流れ込むガス流入口に配置された長細形状を有する多孔性部材である、ガスセンサキット。
【請求項3】
前記ガス供給ユニットは、前記ガスセンサの筐体を覆うキャップ形状である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサキット。
【請求項4】
前記流速調整部は、前記治療ガスの流入方向が拡散するように調整する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスセンサキット。
【請求項5】
被験者の呼気のガス濃度を測定するガスセンサと、
前記被験者の呼気を前記ガスセンサに導くガス導入部と、
前記被験者に治療ガスを供給するガス供給ユニットと、を備え、
前記ガス供給ユニットは、前記治療ガスの流速を遅くするように調整する流速調整部を有し、
前記流速調整部は、前記治療ガスを供給するチューブと対向する位置に設けられた柱状体とスリットである、ガスセンサキット。
【請求項6】
被験者の呼気のガス濃度を測定するガスセンサと、
前記被験者の呼気を前記ガスセンサに導くガス導入部と、
前記被験者に治療ガスを供給するガス供給ユニットと、を備え、
前記ガス供給ユニットは、前記治療ガスの流速を遅くするように調整する流速調整部を有し、
前記流速調整部は、前記ガス供給ユニット内の前記治療ガスが流入する空室に設けられた少なくとも一つの柱状体である、ガスセンサキット。
【請求項7】
被験者の呼気のガス濃度を測定するガスセンサと、
前記被験者の呼気を前記ガスセンサに導くガス導入部と、
前記被験者に治療ガスを供給するガス供給ユニットと、を備え、
前記ガス供給ユニットは、前記治療ガスの流速を遅くするように調整する流速調整部を有し、
前記流速調整部は、前記ガス供給ユニット内の前記治療ガスが流入する空室に設けられ、流入する前記治療ガスの流入方向と異なる方向に前記治療ガスを導く流路である、ガスセンサキット。
【請求項8】
被験者の呼気のガス濃度を測定するガスセンサに前記被験者の呼気を導くガス導入部と、
前記ガスセンサまたは前記ガス導入部に着脱可能に構成され、前記被験者に治療ガスを供給するガス供給ユニットと、を備え、
前記ガス供給ユニットは、前記治療ガスの流速を調整する流速調整部を有し、
前記流速調整部は、チューブから前記ガス供給ユニットに対して前記治療ガスが流れ込むガス流入口に配置され、前記チューブと前記ガス供給ユニットの中央とを隔てる多孔性部材である、顔面装着具。
【請求項9】
被験者に治療ガスの送気を行いつつ、前記被験者の呼気ガス濃度を測定するガスセンサキットであって、
前記被験者の鼻と口の間に配置されて前記治療ガスを前記被験者に供給するキャップ形状のガス供給ユニットを備え、
前記ガス供給ユニットは、チューブから前記キャップ形状の内部に前記治療ガスが流れ込むガス流入口に配置されて前記治療ガスの流速を調整するとともに前記チューブと前記キャップ形状の中央とを隔てる多孔性部材を有する、
ガスセンサキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサキット及び顔面装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素状態の被験者に対する対処療法として、酸素マスクや酸素カニューラを用いて高濃度酸素ガスを投与する手法が用いられている。低酸素状態の被験者に対して処置を行う場合、高濃度酸素ガスの投与を行うと共に、被験者の呼吸状態(呼気ガス濃度)を測定する必要がある。
【0003】
特許文献1は、唾液等の分泌物の影響を回避して被験者の呼吸状態を正確に測定できるバイトブロックを開示している。当該バイトブロックは、導管が挿入される穴を有する筒状の第1壁と、第1壁を囲繞して口腔と対向する第2壁と、第1壁と第2壁との間の空隙から構成されるサンプルポートへのガス流路を備える(特許文献1図1図2)。当該バイトブロックには、呼吸情報収集用アダプタが取り付け可能に構成され、当該呼吸情報収集用アダプタに対してプロングを取り付ける構成である(特許文献1図4)。そしてプロングには、酸素供給源から酸素供給がなされる(特許文献1段落0024)。
【0004】
すなわち特許文献1に記載のバイトブロックは、酸素投与を行うと共に、被験者の呼気ガス濃度を測定可能な構成である。この他にも、治療ガスの送気と呼気ガス測定を同時に行う構成(マスク等)が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5385599号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】CO2センサキット、[平成28年5月31日検索]、インターネット<URL:”http://www.nihonkohden.co.jp/iryo/products/monitor/01_bedside/tg970p.html”>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、治療ガス(好適には酸素ガス)の送気と呼気ガス濃度の測定を同時に行う構成の場合、送気した治療ガスにより被験者の呼気が希釈され、正確な呼気ガス濃度の測定が難しいという問題があった。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、送気した治療ガスの影響を低減した上で呼気ガス濃度の測定ができるガスセンサキット及び顔面装着具を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるガスセンサセンサキットの一態様は、
被験者の呼気のガス濃度を測定するガスセンサと、
前記被験者の呼気を前記ガスセンサに導くガス導入部と、
前記被験者に治療ガスを供給するガス供給ユニットと、を備え、
前記ガス供給ユニットは、前記治療ガスの流速を調整する流速調整部を有する、ものである。
【0010】
上述のガスセンサキットは、ガスセンサによって呼気ガス濃度(好適には呼気の二酸化炭素濃度)の測定を行うと共に治療ガスの送気を行う構成である。ガス供給ユニットは、流入される治療ガスの流速が遅くなるように調節する流速調整部を有する。治療ガスの流速が遅くなるように制御することにより、治療ガスが勢いよく被験者の鼻孔に吹き付けられることがなくなる。これにより、呼気ガス濃度を測定しつつ治療ガスの送気を行う構成であっても、治療ガスが呼気に与える影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、送気した治療ガスの影響を低減した上で呼気ガス濃度の測定ができるガスセンサキット及び顔面装着具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかるガスセンサキット1の概略を示す分解斜視図である。
図2】実施の形態1にかかるガスセンサキット1の装着概念図である。
図3】実施の形態1にかかるガス供給ユニット40の裏面図である。
図4】実施の形態1にかかるガス供給ユニット40の裏面図である。
図5】実施の形態1にかかるガス供給ユニット40の断面図である。
図6】実施の形態1にかかるガス供給ユニット40の裏面図である。
図7】実施の形態1にかかるガス供給ユニット40の断面図である。
図8】実施の形態1にかかるガス供給ユニット40の裏面図である。
図9】実施の形態1にかかるカヌーラ50を示すである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図において、同一の構成要素には同一符号及び同一名称を付して重複する説明を省略する。また、理解の容易化のため、各構成要素のサイズや形状については適宜調整して記載する。
【0014】
図1は、本実施の形態にかかるガスセンサキット1の概略を示す分解斜視図である。ガスセンサキット1は、被験者に対して治療ガス(酸素ガスや水素ガスであり、以下の説明では酸素ガスであるものとする。)の送気を行いつつ、呼気のガス濃度を測定する医療ユニットである。ガスセンサキット1は、バイトブロック10、ネーザルアダプタ20、ガスセンサ30、及びガス供給ユニット40を備える。
【0015】
なお、以下の説明及び図面において、ガスセンサキット1を被験者が装着した際の各方向を以下のように定める。被験者にガスセンサキット1を装着して正面視した際の被験者の顔面の左右方向をX方向(左側面方向が+X方向、右側面方向が−X方向)とし、被験者の顔面の上下方向をY方向(頭頂方向が+Y方向、顎方向が−Y方向)とし、被験者の口腔内方向を−Z方向、被験者の口腔から離れる方向を+Z方向とする。
【0016】
バイトブロック10は、内視鏡や硬性鏡を用いた検査の際に口腔に挿入される器具である。なおバイトブロック10は、被験者の口腔付近に配置されてガス供給ユニット40と共に利用される器具の一例である。そのためガスセンサキット1は、バイトブロック10に代わってマスク等を備える構成であってもよい。バイトブロック10は、筒状の形態であると共に、ネーザルアダプタ20と接続する接続機構を有する。
【0017】
ネーザルアダプタ20は、バイトブロック10と接続すると共に、被験者の鼻孔付近に配置されるアダプタである。ネーザルチューブ21及び22は、被験者の両鼻孔に挿入される。またネーザルアダプタ20は、ガスセンサ30と接続し、被験者の呼気をガスセンサ30に導く。すなわちネーザルアダプタ20は、被験者の呼気をガスセンサ30に導くガス導入部の一態様である。
【0018】
ガスセンサ30は、ネーザルアダプタ20と着脱可能に構成される。例えばガスセンサ30は、受光窓を有する凹部をネーザルアダプタ20に嵌め合わせることによりネーザルアダプタ20と接続する。ガスセンサ30は、被験者の呼気ガス濃度(以下の説明では二酸化炭素ガスの濃度とするが、この他のガス濃度を検出してもよい)を測定する。ガスセンサ30は、発光部と受光部を有し、被験者呼気の透過光を基に二酸化炭素濃度を算出する。二酸化炭素は特定の波長の赤外線を強く吸収する性質があるため、呼気中の二酸化炭素濃度が高いほど赤外光が強く吸収され、透過光量が弱まる。ガスセンサ30は、この性質を利用して呼気の二酸化炭素濃度を検出するものであればどのような形状や構造であってもよい(非特許文献1は実装の一例となる製品である。)。
【0019】
ガスセンサ30は、ガス供給ユニット40と着脱可能に構成される。例えばガスセンサ30から延伸するチューブやガスセンサ30の筐体と、ガス供給ユニット40の筐体と、を嵌合させるようにして接続すればよい。またはガス供給ユニット40に切込孔や爪を設けておき、ガスセンサ30に設けられたボス等と嵌合することによって両者を接続してもよい。なおガス供給ユニット40は、ネーザルアダプタ20と接続する構造であってもよい。この場合であっても、ボスや切込孔を用いて両者を接続すればよい。すなわちガス供給ユニット40は、ガスセンサ30またはネーザルアダプタ20と着脱可能に構成されれば良い。
【0020】
ガス供給ユニット40は、被験者の鼻孔に対して治療ガスを供給する。ガス供給ユニット40は、ガスセンサ30を介してネーザルアダプタ20と接続するものであり、被験者の鼻孔付近に配置される。チューブ41には、酸素供給源から酸素ガスが供給される。ガス供給ユニット40は、ガスセンサ30の筐体を覆うようなキャップ形状の本体43を持つ。ガスセンサ40の筐体をキャップ形状とすることにより、送気した酸素ガスが被験者の鼻孔付近に滞留し、効率よく酸素投与を行うことができる。本体43は、酸素ガスが流入する空室である。チューブ41から供給された酸素ガスは、多孔性部材42を通過した後にキャップ形状の本体43に流入する。
【0021】
続いてガスセンサキット1の装着状態について説明する。図2は、本実施の形態にかかるガスセンサキット1の装着状態を示す図(ガスセンサキット1を装着中の被験者の顔面下部の拡大図)である。
【0022】
バイトブロック10は、被験者の口腔に挿入される。バイトブロック10に接続したネーザルアダプタ20のネーザルチューブ21(図2には図示せず)及び22は、被験者の両鼻孔に挿入(または近接位置に配置)される。
【0023】
ガス供給ユニット40は、ネーザルアダプタ20の本体部分及びガスセンサ30を覆い、被験者の鼻孔と唇の間に配置される。そのためガス供給ユニット40は、チューブ41から供給された酸素ガスを被験者の鼻孔付近に供給する。ここでガス供給ユニット40は、供給する酸素ガスがガスセンサ30による呼気ガス濃度検出に影響を与えないよう、酸素ガスの流速を調整する。以下、この調整機構について説明する。
【0024】
図3は、ガス供給ユニット40の裏面図(−Z方向からガス供給ユニット40を見た図)である。上述のようにチューブ41は、酸素ガスを導入する。チューブ41から流れ込んだ酸素ガスは、本体43とチューブ41の間にあるガス流路にあたるガス流入口44に流入する。ガス流入口44には、酸素ガスの流速を調節する(換言すると流速を遅くする)流速調整部の一態様である多孔性部材42が設けられている。なお流速調整部は、流速を遅くすると共に、ガスの流入方向を拡散するように調整することが望ましい。多孔性部材42は、例えばスポンジであり、チューブ41から流れ込んだ酸素ガスを緩衝し、流速を遅くした状態でキャップ状の本体43に供給する。
【0025】
また多孔性部材42は、流れ込んだ酸素ガスの流入方向が拡散するように調節する。多孔性部材42は、無数の開口を有する構成であるが、一般的にその開口方向が一定ではない。例えば多孔性部材42がスポンジである場合、スポンジを構成する無数の開口の開口方向は一定ではない。そのため多孔性部材42から供給された酸素ガスの流入方向は、図3の点線矢印で示すように拡散した状態となる。
【0026】
本体43は、図2に示すように被験者の鼻孔から唇の間に配置される。本体43には、多孔性部材42によって流速が十分に遅くなった酸素ガスが流れ込む。また酸素ガスは、流入方向が拡散した状態で本体43に流れ込む。
【0027】
続いて本実施の形態にかかるガスセンサキット1の効果について説明する。ガスセンサキット1は、ガスセンサ30によって呼気ガス濃度(好適には呼気の二酸化炭素濃度)の測定を行うと共に酸素ガス(治療ガスの一態様)の送気を行う構成である。ガス供給ユニット40は、チューブ41から流入される酸素ガスの流速が遅くなるように調節する多孔性部材42(流速調整部の一態様)を有する。酸素ガスの流速が遅くなるように制御することにより、酸素ガスが勢いよく被験者の鼻孔に吹き付けられることがなくなる。これにより、呼気ガス濃度を測定しつつ酸素ガスの送気を行う構成であっても、酸素ガスが呼気に与える影響を低減することができる。
【0028】
多孔性部材42は無数の微細孔を有する構成であるため、通気性を確保すると共に流入する酸素ガスに対する緩衝材として作用する。そのため、酸素ガスを被験者の鼻孔付近に取り込むことができるとともに、酸素ガスが呼気に与える影響を低減することができる。また多孔性部材42は、スポンジ等の一般的な材質であるため、コストアップを伴うことなく上述の効果を奏することができる。更にスポンジを使用する場合、重量が軽い素材であるために被験者の装着負荷が小さい。
【0029】
多孔性部材42を構成する微細孔の開口方向は一定ではないため、図3に示すように酸素ガスの流入方向が拡散する。これにより一点に酸素ガスが収束することが無くなり、酸素ガスが呼気に与える影響を低減することができる。
【0030】
なお多孔性部材42は、酸素ガスの流速を調節する流速調整部の一態様であり、この他の態様であってもよい。以下、変形例について説明する。
【0031】
(変形例1)
第1の変形例は、流速調整部が柱状体45及びスリット46により構成されているものである。以下、当該構成を図4及び図5を参照して説明する。図4は、当該変形例にかかるガス供給ユニット40の裏面図(−Z方向からガス供給ユニット40を見た図)である。図5は、図4におけるガス供給ユニット40のA−A断面図である。
【0032】
本体43には、スリット46を有する柱状体45が設けられている。すなわちチューブ41と対向する位置に柱状体45とスリット46が設けられている。図5に示すように柱状体45は、高さ(Z軸方向に長さ)を有する形状である。本例では、柱状体45に対して2つのスリット46が設けられているが、スリット46の個数は任意の個数でよい。
【0033】
チューブ41から流入した酸素ガスは、スリット46を通過して流れ込む。柱状体45は、チューブ41から流入した酸素ガスに対する壁のように作用する。そのため、柱状体45に吹き付けられた酸素ガスは、押し戻されるようにして本体43内を滞留する。この滞留した酸素ガスは、新たにチューブ41から流入する酸素ガスと対向するように移動するため、酸素ガスの流速は遅くなる。
【0034】
なお本例(図4図5)では、柱状体45及びスリット46が本体43の略中心部(X軸方向の中心付近)に設けられている例を示したが、必ずしもこれに限られず、略中心部(X軸方向の中心付近)よりもチューブ41側に設けられていてもよい。
【0035】
本変形例においても柱状体45及びスリット46がチューブ41から流入した酸素ガスの流速を遅くするように調節する。これにより、チューブ41から流入した酸素ガスの影響をキャンセルした状態で被験者の呼気ガス濃度の検出を行うことができる。
【0036】
(変形例2)
第2の変形例は、流速調整部が複数の柱状体47により構成されているものである。以下、当該構成を図6及び図7を参照して説明する。図6は、当該変形例にかかるガス供給ユニット40の裏面図(−Z方向からガス供給ユニット40を見た図)である。図7は、図6におけるガス供給ユニット40のA−A断面図である。
【0037】
本体43(酸素ガスが流入するキャップ形状の空室)には、複数の柱状体47が設けられている。なお図6の例では、8つの柱状体47が設けられているものとしたが、柱状体47の個数は任意でよい。すなわち柱状体47は、本体43に少なくとも一つ設けられていてもよい。また柱状体47の形状は、円柱形であってもよく、角柱形であってもよい。また柱状体47の大きさも任意のものであれば良い。
【0038】
柱状体47の各々は、チューブ41から流入する酸素ガスに対して、壁のように作用する。すなわち柱状体47に吹き付けられた酸素ガスは、流入方向を変えて本体43内部を滞留する。これにより、チューブ41から流入した酸素ガスの流入方向は拡散的になると共に、流速が遅くなる。
【0039】
また流速調整部は、図8に示すように蛇行して酸素ガスを導く流線型の流路48であってもよい。また図8の説明では流路48が蛇行した例を示したが、必ずしももこれに限られず、チューブ41から流入する酸素ガスの流入方向と異なる方向に酸素ガスを導くようなものであれば良い。これにより、流入した酸素ガスが蛇行して進むため、流速が遅くなるように制御される。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0041】
上述の説明においてガスセンサキット1は、被験者が咬合するバイトブロックとガスセンサ等が接続する構成であったが必ずしもこれに限られない。すなわちガスセンサキット1は、ガス送気と呼気ガス濃度の測定を行える構成であればよく、図1の構成(バイトブロック)以外に酸素マスクや酸素カニューラのような構成であってもよい。
【0042】
またチューブ41に多孔性部材42のような流速調整部が設けられた形状も理論上可能である。すなわちガスセンサキット1は、治療ガスの供給源から被験者の鼻孔周辺へのガス流路に治療ガスの流速を調節する流速調整部を有する構成であればよい。
【0043】
上述の図1等の説明では、メインストリーム式のガス測定を行うものとして説明したが、必ずしもこれに限られず上述の技術をサイドストリーム式のガス測定に応用してもよい。すなわち被験者の呼気をチューブ等(ガス導入部の一態様)で外部のガス測定機(上述のガスセンサ30)に導くと共に、上述のガス供給ユニット40を用いる構成であってもよい。当該構成であっても、送気した酸素ガスの影響を低減した呼気ガス濃度の測定ができる。
【0044】
図9は、ガス導入部の他の一例であるカヌーラ50を示す図である。図9(A)はカヌーラ50の斜視図であり、図9(B)はカヌーラ50の上面図(+Y方向から見た図)である。図示するように鼻孔に挿入する二つのネーザルチューブ51、52が設けられている。またネーザルチューブ51と52の間に配置され、+Y方向に酸素を供給する酸素供給口53が設けられている。このカヌーラ50を上述のネーザルアダプタ20の代わりに利用し、カヌーラ50にガス供給ユニット40を取り付けて酸素ガスを患者に供給する。またガスセンサ30は、ネーザルチューブ51及び52からチューブ54、55を介して吸引した呼気ガスを用いて呼気ガス濃度測定を行えばよい。
【0045】
なおガスセンサキット1は、被験者の顔面に装着して呼吸状態や口腔の状態を管理する顔面装着具(バイトブロック10、ネーザルアダプタ20、ガス供給ユニット40)と、呼気ガス濃度を測定するガスセンサ30と、を備える構成と解釈することができる。顔面装着具の構成は、任意のものであれば良く、例えばバイトブロック10が存在しない構成や、バイトブロック10の代わりに酸素センサを設ける構成も可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ガスセンサキット
10 バイトブロック
20 ネーザルアダプタ
21、22 ネーザルチューブ
30 ガスセンサ
40 ガス供給ユニット
41 チューブ
42 多孔性部材
43 本体
44 ガス流入口
45 柱状体
46 スリット
47 柱状体
48 流路
50 カヌーラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9