(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを切削加工する切削工具と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に回転させる回転手段と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に往復振動させる振動手段と、前記切削工具による前記ワークの切削加工時の周速が維持されるように前記回転手段の回転数を設定する周速維持手段と、前記往復振動の振動周波数を設定する振動周波数設定手段とを備え、前記振動周波数に応じた前記相対的な回転1回転あたりの振動数の振動を伴って前記ワークの振動切削加工を行わせる工作機械の制御装置であって、
前記周速維持手段が、前記ワークのワーク径および前記周速に基づき、あるいは、前記振動周波数と前記振動数に基づき、前記回転数を設定し、
前記振動周波数設定手段が、前記周速維持手段の設定した回転数と所定の振動数に基づき仮の振動周波数を算出すると共に該仮の振動周波数を元に指令可能な周期に基づく実際の振動周波数を設定し、
前記周速維持手段および前記周波数設定手段は、互いに連係して、前記周速を前記ワーク径に因らずに一定としたまま、前記実際の振動周波数に設定すると共に実際の振動数が前記所定の振動数および許容範囲から定められる所定範囲の範囲内に収まる回転数を設定する、工作機械の制御装置。
ワークを切削加工する切削工具と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に回転させる回転手段と、前記切削工具と前記ワークとを相対的に往復振動させる振動手段と、前記切削工具による前記ワークの切削加工時の周速が維持されるように前記回転手段の回転数を設定する周速維持手段と、前記往復振動の振動周波数を設定する振動周波数設定手段とを備え、前記振動周波数に応じた前記相対的な回転1回転あたりの振動数の振動を伴って前記ワークの振動切削加工を行わせる工作機械の制御装置であって、
前記周速維持手段が、前記ワークのワーク径および所定の周速に基づき、あるいは、前記振動周波数と前記振動数に基づき、前記回転数を設定し、
前記振動周波数設定手段が、前記周速維持手段の設定した回転数と所定の振動数に基づき仮の振動周波数を算出すると共に該仮の振動周波数を元に指令可能な周期に基づく実際の振動周波数を設定し、
前記周速維持手段および前記周波数設定手段は、互いに連係して、実際の前記振動数を前記ワーク径に因らずに一定としたまま、前記実際の振動周波数に設定すると共に実際の周速が所定速度範囲の範囲内に収まる実際の回転数を設定する、工作機械の制御装置。
前記周速維持手段は、前記振動切削加工における前記往復振動の往動時の切削加工部分と復動時の切削加工部分とが重複する範囲に前記振動数が維持されるように、前記回転数を設定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の工作機械の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の工作機械の制御装置および工作機械について説明する。
図1に示されるように、本発明の一実施例に係る工作機械100は、主軸110と、切削工具台130Aと、制御装置180とを備えている。
【0017】
主軸110の先端には、チャック120が設けられている。
主軸110をワーク保持手段とし、ワークWは、チャック120を介して主軸110に保持されている。
主軸110は、主軸台110Aに支持されるとともに、主軸モータの動力によって回転駆動される。
主軸モータは、主軸台110Aと主軸110との間に設けられ、例えば、公知のビルトインモータとすることができる。
【0018】
工作機械100のベッド側に、Z軸方向送り機構160が設けられている。
Z軸方向送り機構160は、ベッドと一体的なベース161と、ベース161に固定されたZ軸方向ガイドレール162とを備えている。
Z軸方向ガイドレール162には、Z軸方向送りテーブル163がZ軸方向ガイド164を介してスライド自在に支持されている。
Z軸方向送りテーブル163に、主軸台110Aが搭載される。
主軸台110Aは、主軸110の軸線方向がZ軸方向ガイドレール162の延出方向と一致するように配置されている。
主軸台110Aは、Z軸方向送り機構160によって主軸110の軸線方向(図示のZ軸方向)に移動自在に設けられ、主軸110は、主軸台110Aを介してZ軸方向に沿って移動できる。
【0019】
リニアサーボモータ165の可動子165aが、Z軸方向送りテーブル163に設けられている。
リニアサーボモータ165の固定子165bが、ベース161に設けられている。
Z軸方向送りテーブル163がリニアサーボモータ165の駆動によってZ軸方向に移動すると、主軸台110AがZ軸方向に移動し、主軸110がZ軸方向に沿って移動する。
【0020】
工作機械100のベッド側に、X軸方向送り機構150が設けられている。
X軸方向送り機構150は、ベッドと一体的なベース151と、Z軸方向に対して上下方向で直交するX軸方向に延びるX軸方向ガイドレール152とを備えている。
X軸方向ガイドレール152は、ベース151に固定され、X軸方向ガイドレール152には、X軸方向送りテーブル153がX軸方向ガイド154を介してスライド自在に支持されている。
【0021】
X軸方向送りテーブル153には、切削工具台130Aが搭載される。
切削工具台130Aは、このX軸方向送り機構150によって、X軸方向に移動自在に設けられている。
切削工具台130Aは、ワークWを加工するバイト等の切削工具130が装着され、切削工具130を保持する刃物台を構成している。
【0022】
リニアサーボモータ155の可動子155aが、X軸方向送りテーブル153に設けられている。
リニアサーボモータ155の固定子155bが、ベース151に設けられている。
X軸方向送りテーブル153がリニアサーボモータ155の駆動によってX軸方向に移動すると、切削工具台130AがX軸方向に移動し、切削工具130がX軸方向に沿って移動する。
【0023】
なお、図示は省略するが、図示のZ軸方向およびX軸方向に直交するY軸方向に対するY軸方向送り機構を設けてもよい。
Y軸方向送り機構は、X軸方向送り機構150と同様の構造とすることができる。
X軸方向送り機構150をY軸方向送り機構を介してベッドに搭載することにより、Y軸方向送りテーブルをリニアサーボモータの駆動によってY軸方向に移動して、切削工具台130AをY軸方向に移動させ、切削工具130をX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。
なお、Y軸方向送り機構を、X軸方向送り機構150を介してベッド側に設け、Y軸方向送りテーブルに切削工具台130Aを搭載してもよい。
【0024】
主軸110の回転、X軸方向送り機構150およびZ軸方向送り機構160等の移動は、制御装置180が有する制御部181によって制御される。
X軸方向送り機構150とZ軸方向送り機構160とによって、あるいはY軸方向送り機構を含めて送り手段が構成され、X軸方向送り機構150あるいはY軸方向送り機構とZ軸方向送り機構160との協動により、
図2に示すように、主軸台110Aと切削工具台130Aとを所定の位置に移動させることができる。
主軸台110Aと切削工具台130Aとを所定の位置に移動させることによって、切削工具130を主軸110に対して相対的に移動させるとともに、主軸110を、ワークWと切削工具130とを相対的に回転させる回転手段として駆動させ、ワークWを切削工具130に対して回転させることによって、ワークWを所望の形状に加工することができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、主軸台110Aと切削工具台130Aとの両方が移動できる構造について説明したが、主軸台110Aをベッドに固定し、切削工具台130AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能な構造としてもよい。
この場合、送り手段は、切削工具台130Aを移動させる送り機構によって構成される。
あるいは、切削工具台130Aをベッドに固定し、主軸台110AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能な構造としてもよい。
この場合、送り手段は、ベッドに設けた送り機構によって構成される。
【0026】
なお、本実施形態においては、X軸方向送り機構150やZ軸方向送り機構160にリニアサーボモータを用いた例を挙げて説明したが、公知のボールネジとサーボモータを用いてもよい。
本実施形態においては、切削工具130に対してワークWを回転させた例で説明するが、切削工具130にドリル等の回転工具を用い、ワークWに対して切削工具130を回転させてもよい。
この場合、切削工具130を回転させるモータが、本発明の回転手段に相当する。
【0027】
制御装置180の制御部181は、
図3に示すように、主軸台110Aを所定の前進量だけ前進移動(往動)させた後、所定の後退量だけ後退移動(復動)させることにより、ワークWに対して切削工具130を送り方向に沿った振動を伴って前進量と後退量との差(進行量)だけ送り方向に送ることができる。
X軸方向送り機構150とZ軸方向送り機構160、あるいはY軸方向送り機構を含めた送り手段によって振動手段が構成され、主軸台110Aと切削工具台130Aとを往動移動および復動移動させることにより、ワークWに対して切削工具130を振動させることができる。
切削工具130は、振動手段を兼用した送り手段によって、ワークWに対して送り方向に沿った振動を伴って送られ、ワークWを加工する。
【0028】
切削工具130によって、ワークWを所定の形状に外形切削加工する場合、ワーク外周面は、
図4に示すように、切削工具130によって正弦曲線状に加工される。
正弦曲線状の波形の谷を通過する仮想線(1点鎖線)において、主軸110の1回転分、すなわち、主軸位相0°から360°まで変化したときの切削工具130の位置の変化量である進行量の合計が、切削工具130の送り量になる。
図4は、主軸110の1回転当たりにおける切削工具台130Aの振動数Nが、3.5回(振動数N=3.5)の例を示す。
また、
図4では、ワーク外周面の状態を分かり易く説明するため、グラフの縦軸を加工送り方向におけるワークWに対する切削工具130の位置、グラフの横軸をワークWの1回転、すなわち、主軸位相0°から360°とし、ワーク外周面を周方向に沿って展開したワーク外周面の切削工具130による振動切削加工の切削軌跡を示している。
【0029】
切削工具130で加工された主軸110のn(nは1以上の整数)回転目におけるワーク外周面の切削軌跡(
図4に実線で示す)と、主軸110のn+1回転目におけるワーク外周面の切削軌跡(
図4に破線で示す)とは、主軸位相方向(
図4のグラフの横軸方向)でずれている。
具体的には、
図4に破線で示したワーク外周面形状の位相の谷の最も浅い点(言い換えると、切削工具130から見た山の頂点)の位置が、
図4に実線で示したワーク外周面形状の位相の谷の最も浅い点(言い換えると、切削工具130から見た山の頂点)の位置に対して、主軸位相方向(グラフの横軸方向)で一致せずにずれる。
【0030】
振動切削加工が往復振動の往動時における切削軌跡と復動時における切削軌跡とが交差する位相および振幅を備えているため、切削工具130による往動時の切削加工部分と、復動時の切削加工部分とが一部重複し、ワーク外周面のn+1回転目の切削部分に、n回転目に切削済み部分が含まれ、この切削済みとなっている切削軌跡を通過する際に、振動切削中に加工送り方向において切削工具130がワークWを切削しない空振り動作が生じる。
振動切削加工時にワークWから生じる切削屑は、この空振り動作によって順次分断される。
この結果、工作機械100は、切削工具130による加工送り方向に沿った往復振動によって切削屑を分断しながら、ワークWの振動切削加工を円滑に行うことができる。
【0031】
図4では、今回の往動時の切削加工部分と次回の復動時の切削加工部分とが位相の谷の最も浅い点を一部重複する例を示した。
ただし、切削工具130の空振り動作は、例えば、主軸110のn+1回転目におけるワーク外周面の切削部分に、主軸110のn回転目におけるワーク外周面の切削済み部分が含まれていれば発生する。
言い換えると、ワーク外周面のn+1回転目(nは1以上の整数)における復動時の切削工具130の切削軌跡が、ワーク外周面のn回転目における切削工具130の切削軌跡まで到達すればよい。
なお、主軸110のn+1回転目におけるワーク外周面の切削部分と、主軸110のn回転目におけるワーク外周面の切削済み部分とを近接させ、該近接部分で前記切削屑を折れるように分断させてもよい。
【0032】
図4に示されるように、n+1回転目とn回転目のワークWにおける切削工具130により切削される形状の位相が一致(同位相)とならなければよく、必ずしも180°反転させる必要はない。
例えば、主軸110を1回転させる間にワークWと切削工具130とを往復振動させる回数である振動数Nは、例えば、1.1や1.25、2.6、3.75(回/r)等とすることができる。
また、振動数Nを1(回/r)よりも小さな値(0<振動数N<1.0)に設定することもできる。
振動数Nを1(回/r)よりも小さな値に設定した場合、切削工具台130Aが1往復するまでに、主軸110は1回転よりも多く回転する。
【0033】
工作機械100において、制御装置180の制御部181は、所定の指令周期で動作指令を行う。
この動作指令によって、主軸台110A(主軸110)または切削工具台130A(切削工具130)の往復振動は、制御部181の指令周期に基づく所定の振動周波数fで動作可能となる。
例えば、制御部181によって1秒間に500回の動作指令を送ることが可能な工作機械100の場合、制御部181の指令周期は、1(秒間)÷500(回)=2(ms/回)が基準周期となる。
【0034】
指令周期は、基準周期に基づいて定まり、一般的には、基準周期の整数倍の値となる。
例えば、基準周期(2(ms))の5倍の10(ms)を指令周期とすると、10(ms)毎に往動と復動を実行させることができ、1÷(0.002×5)=100.0(Hz)で主軸台110A(主軸110)または切削工具台130A(切削工具130)を往復振動させることができる。
【0035】
その他、基準周期の整数倍の値の逆数となる複数の所定の限られた周波数でのみ、主軸台110A(主軸110)または切削工具台130A(切削工具130)を往復振動させることができる。
指令周期に応じた振動周波数fの集まりを振動周波
数群とすると、主軸台110Aまたは切削工具台130Aの振動周波数は、振動周波
数群から選択される値に定められる。
なお、制御装置180(制御部181)によっては、基準周期(2(ms))の整数倍以外の倍数で指令周期を設定することができる場合もある。
【0036】
主軸台110A(主軸110)または切削工具台130A(切削工具130)を往復振動させる場合、主軸110の回転数をSとすると、振動数Nは、次式によって定まる。
N=f×60/S
振動数Nは、振動周波数fに比例し、回転数Sに対して反比例する。
主軸110は、振動周波数fを高くするほど、また、振動数Nを小さくするほど高速回転になる。
【0037】
本実施例の工作機械100では、回転数Sと振動数Nと振動周波数fとをパラメータとし、ユーザによって、所定のパラメータの値を、数値設定部182等を介して制御部181に設定することができるように構成されている。
パラメータの制御部181への設定は、制御部181にパラメータ値として入力することができる他、例えば、回転数Sや振動数Nの値を加工プログラムに記載して設定したり、所定のプログラムブロック(プログラムの1行)において振動数Nを引数として設定したりすることができる。
【0038】
特に、振動数Nを加工プログラムのプログラムブロックにおいて引数として設定することができるように構成すると、一般的に加工プログラム上に記載される主軸110の回転数Sと、プログラムブロックでの引数として記載される振動数Nとによって、加工プログラムから容易に回転数Sと振動数Nとをユーザが制御部181に設定することができる。
【0039】
制御部181は、設定された回転数Sに基づく回転数で主軸110を回転させるとともに、設定された振動数Nに基づく振動数で切削工具130を前記加工送り方向に沿って往復振動させながら加工送り方向に送られるように、主軸台110Aまたは切削工具台130Aの移動を制御する。
【0040】
制御装置180に周速維持
手段としての周速維持部183と振動周波数設定手段としての振動周波数設定部184とが設けられている。
周速維持部183は、切削工具130によるワークWの切削加工時の周速が維持されるように、ワーク径と前記周速に基づいて、回転数Sを自動的に設定するように構成されている。
維持される周速をV、ワーク径をWdとすると、回転数Sは、次式によって定まる。
S=V÷(π×Wd)
ただし、回転数Sは、前述のように振動数Nと振動周波数fに基づいて定まるため、振動数Nが所定範囲に維持されるとともに、周速Vが所定範囲の誤差を許容して維持される回転数Sを、周速維持部183が設定することができる振動周波数fを、振動周波数設定部184が設定するように、周速維持部183と振動周波数設定部184とが連係されている。
【0041】
振動数Nが維持される所定範囲は、例えば、予め許容範囲Bを設定し、振動数N±許容範囲Bとすることができる。
なお、本実施形態の周速維持部183は、予め定められた最高回転数Smaxを越える回転は許容しないように構成されている。
周速維持部183によって維持される周速Vや最高回転数Smax、許容範囲B、ワーク径Wd等は、数値設定部182等を介して制御部181に設定することができる。
【0042】
周速Vや最高回転数Smax、許容範囲B、ワーク径Wd等の制御部181への設定は、制御部181にパラメータ値として入力することができる他、例えば、各値を加工プログラムに記載して設定したり、所定のプログラムブロック(プログラムの1行)において引数として設定したりすることができる。
周速維持部183の動作時、制御部181は、振動周波数設定部184によって設定される振動周波数fと、周速維持部183によって設定される回転数Sおよび振動数Nとに応じて、主軸110を回転させるとともに、主軸台110Aまたは切削工具台130Aの移動を制御する。
【0043】
<実施例1>
加工されるワークWのワーク径Wd、周速維持部183によって維持される周速V、最高回転数Smax、振動数Nおよび許容範囲B等が設定され、周速維持部183の動作状態でワークWの加工が開始されると、
図5に示すように、周速維持部183は、ワークWの径方向への切削工具130の移動に応じて、ワーク径Wdに基づき、周速Vとなる
仮の回転数S
tを算出する(STEP103)。
【0044】
振動周波数設定部184は、算出された
仮の回転数S
tと振動数Nとから、
仮の振動周波数f
tを算出する(STEP104)。
振動周波数設定部184は、振動周波
数群の中から算出された
仮の振動周波数f
tに最も近い値(最近似値)を選択し、その値を
実際の振動周波数fとして制御部181に対して設定する(STEP105)。
【0045】
次に、周速維持部183は、算出された
仮の回転数S
tが、指令値として設定された最高回転数Smax以下であるか否かを判定する(STEP106)。
算出された
仮の回転数S
tが最高回転数Smax以下である場合(判定YES)、周速維持部183は、
実際の振動周波数fと
仮の回転数S
tとから、
仮の振動数N
tを算出する(STEP107)。
次に、周速維持部183は、算出された
仮の振動数N
tが、指令値として設定された振動数N±許容範囲Bの範囲内であるか否かを判定する(STEP108)。
算出された
仮の振動数N
tが、振動数N±許容範囲Bの範囲内である場合(判定YES)、周速維持部183は、算出された
仮の回転数S
tを
実際の回転数Sとして制御部181に設定する(STEP109)。
制御部181は、設定された
実際の振動周波数fと
実際の回転数Sとで主軸110および切削工具130を動作させ、
実際の振動数である実振動数Nr
(仮の振動数N
t)の振動による加工を実行させる。
【0046】
STEP106において、算出された
仮の回転数S
tが最高回転数Smaxを超えている場合(判定NO)、周速維持部183は、
実際の回転数Sを最高回転数Smaxとし(STEP110)、STEP109に移行して制御部181に設定する。
【0047】
STEP108において、算出された
仮の振動数N
tが振動数N±許容範囲Bの範囲内でない場合(判定NO)、上限値を超過している際には実振動数Nrが指令値の範囲の上限値となる振動数N+許容範囲B、下限値未満の際には実振動数Nrが指令値の範囲の下限値となる振動数N−許容範囲Bとなるように
実際の回転数Sを算出(STEP111)して、STEP109に移行して制御部181に設定する。
【0048】
例えば、振動周波
数群が、31.3、33.3、35.7、38.5、41.7、45.5、50.0、55.6、62.5、71.4、83.3、100.0(Hz)の工作機械に対して、ワーク径Wd=10.0(mm)のワークWを、先端のワーク径Wd=3.0(mm)となる、
図6に示されるような複数段を有する形状に加工する場合に、周速V=50(m/min)、最高回転数Smax=7000(r/min)、振動数N=1.5(回/r)、振動数Nの許容範囲B=±0.1(回/r)と設定する。
【0049】
所定のワーク径Wdに対して、設定される周速Vに基づいて定まる
実際の回転数S、
実際の振動周波数f、設定された
実際の回転数Sと
実際の振動周波数fでの実振動数Nr、実際の周速(実周速Vr)は
図7に示され、ワーク径Wd=9.0(mm)で、
仮の回転数S
t=1769(r/min)、
仮の振動周波数f
t=44.2(Hz)と算出されるため、
実際の振動周波数fは算出された
仮の振動周波数f
tに最も近い45.5(Hz)に設定される。
【0050】
仮の回転数S
t=1769(r/min)は、最高回転数Smax=7000(r/min)以下であるため、実振動数Nr=1.54(回/r)が算出され、実振動数Nr=1.54(回/r)は、許容範囲(1.4〜1.6)内となる。
ワーク径Wd=9.0(mm)の状態では、
実際の回転数S=1769(r/min)、
実際の振動周波数f=4
5.5(Hz)が設定され、実周速Vr=50(m/min)、実振動数Nr=1.54(回/r)として加工が行われる。周速Vは50(m/min)に維持される。
【0051】
ワーク径Wd=3.7(mm)では、
仮の回転数S
t=4302(r/min)、
仮の振動周波数
tf=107.6(Hz)と算出され、
実際の振動周波数fは100.0(Hz)に設定される。
【0052】
仮の回転数S
t=4302(r/min)は、最高回転数Smax=7000(r/min)以下であるため、
仮の振動数N
t=1.39(回/r)が算出されるが、
仮の振動数N
t=1.39(回/r)は、許容範囲(1.4〜1.6)の下限未満であるため、実振動数Nr
が許容範囲の下限値1.4となるように回転数S=4286(r/min)が設定される。
従って、ワーク径Wd=3.7(mm)の状態では、
実際の回転数S=4286(r/min)、
実際の振動周波数f=100.0(Hz)が設定され、実周速V≒50(m/min)、実振動数Nr=1.4(回/r)として加工が行われ、周速Vは50(m/min)がほぼ維持される。
以降、ワーク径Wd=3.0(mm)まで同様の処理が行われる。
【0053】
このように、周速Vを一定に維持するため、
実振動数N
rを所定の範囲内で維持する
実際の回転数Sを周速維持手段が設定できるように、振動周波
数群の中から
実際の振動周波数fを
設定して周速維持手段に設定する振動周波数設定手段が備えられている。
そして、ワーク径Wdに応じて周速Vが一定に維持されているため、安定した加工精度と挽き目で振動を伴う加工を行うことができる。
【0054】
ただし、ワーク径Wdが3.7(mm)より小さいときは、
実際の振動周波数fが振動周波
数群の最大値である100(Hz)に設定され、実振動数Nrが許容範囲の下限値1.4となるように
実際の回転数Sが設定されるため、周速Vは50(m/min)より低下する。
本実施例1の制御のように、
実際の回転数Sや
実際の振動周波数fに設定できる値が、最高回転数Smaxや振動周波
数群によって制限されるため、
実振動数N
rが許容範囲Bから外れた場合には、周速Vの維持が困難な場合が発生する。
また、本実施例1では、振動数N=1.5(回/r)を用いて説明したが、
仮の回転数S
tが上限を超えた場合に
実際の回転数Sを最高回転数Smaxとして
実振動数N
rを所定の範囲に維持できるように制御することができる。
【0055】
<実施例2>
制御部181に対し
て2つの振動数Nを設定し、振動周波数設定部184を、算出される
仮の振動数N
tが、設定された上記振動数Nのいずれかに所定範囲で維持されるように
実際の振動周波数fを設定する構成とすることもできる。
【0056】
加工されるワークWのワーク径Wd、周速維持部183によって維持される周速V、最高回転数Smax、2つの振動数Nおよび許容範囲B等が設定され、ワークWの加工が開始されると、
図8に示すように、2つの振動数Nのうち大きい値を第1の値
N1、小さい値を第2の値
N2とし、第1の値
N1を制御部181に設定する(STEP201)。
第2の値
N2は、例えば、数値設定部182にメモリを設けて保存しておくことができる。
図8に示すSTEP203〜208およびSTEP209、210は、STEP103〜108またはSTEP109〜110のそれぞれ下二桁が共通する符号の処理と同じであるため説明を省略する。
【0057】
STEP208で算出された
仮の振動数N
tが設定された振動数N
1±許容範囲Bの範囲内でない場合、
図9に示すように、周速維持部183は、
仮の振動数N
tが上限値
(N1+B)を超過しているか否かを判定する(STEP211)。
STEP211で判定がYESである場合、実振動数Nrが指令値の範囲の上限
(N1+B)となるように
実際の回転数Sを算出(STEP212)し、STEP209に移行して制御部181に設定する。
【0058】
STEP211で判定がNOである場合、つまり
仮の振動数N
tが指令値の範囲の下限値
(N1−B)未満である場合、周速維持部183は、設定された振動数Nが第1の値
N1と一致するかを判定する(STEP213)。
振動数Nが第1の値
N1である場合(判定YES)、制御部181は数値設定部182のメモリから第2の値
N2を呼び出して振動数Nに設定(STEP214)し、STEP203に移行する。
振動数Nが第1の値
N1と一致しない場合、つまり振動数Nが第2の値
N2である場合、(判定NO)、実振動数Nrが指令値の範囲の振動数Nの下限
(N2−B)または上限
(N2+B)となるように
実際の振動周波数fと
実際の回転数Sとを算出して、STEP209に移行して制御部181に設定する。
【0059】
例えば、実施例1と同じ振動周波
数群を有する工作機械に対して、ワークWを、
図6に示されるような複数段を有する形状に加工する場合に、周速V=50(m/min)、最高回転数Smax=7000(r/min)、振動数Nの第1の値=1.5(回/r)および第2の値=0.5(回/r)、振動数Nの許容範囲B=±0.1(回/r)と設定する。
【0060】
所定のワーク径Wdに対して、設定される周速Vに基づいて定まる
実際の回転数S、
実際の振動周波数f、設定された
実際の回転数Sと
実際の振動周波数fでの実振動数Nr、実際の周速(実周速Vr)は、
図10に示される。
制御部181は、まず、第1の値
N1を1.5(回/r)と設定して、実施例1と同様に、
仮の回転数S
t、
仮の振動周波数f
t、
仮の振動数N
tの算出処理を行い、
仮の振動数N
tが振動数N±許容範囲B(1.4〜1.6)である場合は、実施例1と同様に、周速Vに基づいて
実際の振動周波数fと
実際の回転数Sとが設定され、周速Vは50(m/min)を維持し、実周速Vr=50(m/min)、所定の実振動数Nrで加工が行われる。
【0061】
一方、例えば、ワーク径Wd=3.7(mm)では、
仮の振動数N
t=1.39(回/r)が算出され、
仮の振動数N
t=1.39は許容範囲(1.4〜1.6)の下限未満となるため、振動数Nが第2の値
N2(0.5)に設定される。
振動数N=0.5(回/r)の場合、
仮の振動周波数f
t=35.9(Hz)が算出され、
実際の振動周波数f=35.7(Hz)に設定される。
仮の回転数S
t=4302(r/min)と
実際の振動周波数f=35.7(Hz)とから、
仮の振動数N
t=0.50が算出され、
仮の振動数N
t=0.50(回/r)は許容範囲(0.4〜0.6)内となる。
【0062】
従って、ワーク径Wd=3.7(mm)の状態では、周速V=50(m/min)が維持されるように、
実際の回転数S=4302(r/min)、
実際の振動周波数f=35.7(Hz)が設定され、実周速Vr=50(m/min)、実振動数Nr=0.50(回/r)として加工が行われる。
以後、振動数Nを第2の値
N2として、ワーク径Wd=3.0(mm)まで同様の処理が行われる。
振動数N=1.5(回/r)が設定される実施例1と比較して、振動数Nに第1の値
N1(1.5)と第2の値
N2(0.5)を設定することにより、ワーク径Wd=3.7(mm)より小さいときにおいても、周速V=50(m/min)が維持される。
【0063】
このように、周速Vを一定に維持するため、予め定められた複数の振動数Nのいずれかに所定の範囲で維持されるように設定され、設定された振動数Nの値が所定の範囲内を超えた場合に小さな値の振動数Nを呼び出して設定する周速維持手段が備えられている。
【0064】
これにより、ワーク径Wdに応じて周速Vが一定に維持される加工寸法の範囲を広げることができ、より安定した加工精度と挽き目で振動を伴う加工を行うことができる。
【0065】
振動数Nの大きい値を第1の値
N1として設定する説明としたが、回転数の設定に際して第1の値
N1と第2の値
N2とを用いて各パラメータを求め、実周速Vrおよび実振動数Nrと指令値として設定された周速Vおよび振動数Nとの差が小さくなる方の値を振動数Nとして選択する制御としてもよい。
指令値として設定される振動数Nの数は、3つ以上としてもよい。
許容範囲Bは、振動数Nの複数の指令値ごとに異なる値に設定してもよい。
【0066】
<実施例3>
振動数Nを一定値とし、実振動数Nrが振動数Nとなるような
実際の回転数Sとする
実際の振動周波数fを設定する構成とすることもできる。
図11に示すように、STEP303〜305およびSTEP310はSTEP103〜105またはSTEP110のそれぞれ下二桁が共通する符号の処理と同じであるため説明を省略する。
【0067】
STEP305で
実際の振動周波数fを設定した後、周速維持部183は、
実際の振動数Nと
実際の振動周波数fとから仮の回転数S
tを算出する(STEP305−2)。
周速維持部183が算出
した
仮の回転数S
tが最高回転数Smax以下であるかを判定し(STEP306)、判定がYESである場合は、STEP309に移行し、
仮の回転数Stを回転数S
として制御部181に設定する。
判定がNOである場合、STEP310に移行する。
【0068】
例えば、実施例1と同じ振動周波
数群を有する工作機械に対して、ワークWを、
図6に示されるような複数段を有する形状に加工する場合に、周速V=50(m/min)、最高回転数Smax=7000(r/min)、振動数N=1.5(回/r)と設定する。
【0069】
所定のワーク径Wdに対して、設定される周速Vに基づいて定まる
仮の振動周波数f
t、
仮の回転数S
tは、ワーク径Wd=9.0(mm)で、
仮の回転数S
t=1769(r/min)、
仮の振動周波数f
t=44.2(Hz)と算出されるため、
実際の振動周波数fは算出された
仮の振動周波数f
tに最も近い45.5(Hz)に設定される。
【0070】
図12に示されるように、
実際の振動周波数f=45.5(Hz)において振動数N=1.5(回/r)となる
仮の回転数S
t=1820(r/min)が算出される。
仮の回転数S
t=1820(r/min)は最高回転数Smax=7000(r/min)以下であるため、
仮の回転数S
t=1820(r/min)
を実際の回転数Sとして制御部181に設定
し、振動数N=1.5(回/r)が
実振動数Nrとして維持され、実周速Vr=51.45(m/min)として加工が行われる。
以後、ワーク径Wd=3.0(mm)まで同様の処理が行われる。
【0071】
このように、周速Vを所定
速度範囲に維持するため、実振動数Nrが振動数Nとなるような
実際の回転数Sを周速維持手段が設定できるように、振動周波
数群の中から
実際の振動周波数fを算出して周速維持手段に設定する振動周波数設定手段が備えられている。
そして、ワーク径Wdに応じて周速Vが所定
速度範囲内に維持されているため、より安定した加工精度と挽き目で振動を伴う加工を行うことができる。
【0072】
<実施例4>
実施例3に示されるように、振動数Nを一定値とし、実振動数Nrが振動数Nとなるような
実際の回転数Sと
なる実際の振動周波数fを設定する際、実周速
Vrを設定された周速Vを下限として周速V以上の範囲で動作させる構成または実周速
Vrを設定された周速Vを上限として周速V以下で動作させる構成とすることもできる。
図13に示す、STEP403、304およびSTEP405−2、406、409、410の工程は、STEP103、104またはSTEP305−2、306、309、310のそれぞれ下二桁が共通する符号の処理と同じであるため説明を省略する。
【0073】
周速Vは、次式によって定まる。
V=(f×60×π×Wd)÷N
振動周波数設定部184は、STEP40
4で算出された
仮の振動周波数f
t以上の値で最も近い値を振動周波
数群の中から選択し、その値を
実際の振動周波数fに設定する。
これより、実周速
Vrは、設定された周速V以上となる。
なお、振動周波数設定部184を、STEP40
4で算出された
仮の振動周波数f
t以下の値で最も近い値を振動周波
数群の中から選択し、その値を
実際の振動周波数fに設定するように構成することにより、実周速
Vrを設定された周速V以下にすることができる。
【0074】
例えば、実施例1と同じ振動周波
数群を有する工作機械に対して、ワークWを、
図6に示されるような複数段を有する形状に加工する場合に、周速V=50(m/min)以上、最高回転数Smax=7000(r/min)、振動数N=1.5(回/r)と設定する。
【0075】
所定のワーク径Wdに対して、実周速Vrが50(m/min)以上となる
実際の振動周波数f、
実際の回転数S、および実周速Vrが
図14の「周速V≧50」欄に示され、実周速が50(m/min)以下となる
実際の振動周波数f、
実際の回転数S、および実周速Vrが
図14の「周速V≦50」欄に示される。
この場合、ワーク径Wd=9.0(mm)で、回転数S=1
768(r/min)、
仮の振動周波数f
t=44.2(Hz)と算出され、
実際の振動周波数fは算出された
仮の振動周波数f
t=44.2(Hz)以上で最も近い45.5(Hz)に設定される。
【0076】
実際の振動周波数f=45.5(Hz)において、振動数N=1.5(回/r)となる
仮の回転数S
t=1820(r/min)が算出される。
仮の回転数S
t=1820(r/min)は、最高回転数Smax=7000(r/min)以下であるため、
仮の回転数S
t=1820(r/min)
を回転数Sとして制御部181に設定され、振動数N=1.5(回/r)が維持され、設定された周速V以上の実周速Vr=51.45(m/min)で加工が行われる。
以後、ワーク径Wd=3.0(mm)まで同様の処理が行われる。
【0077】
周速の条件が周速V=50(m/min)以下である場合は、
実際の振動周波数f=41.7(Hz)に設定され、
仮の回転数S
t=1668(r/min)
を回転数Sとして制御部181に設定され、振動数N=1.5(回/r)が維持され、設定された周速V以下の実周速Vr=47.15(m/min)で加工が行われる。
【0078】
実振動数Nrを所定の振動数Nとし、周速Vを設定値以上または以下の条件とする場合であっても、振動周波数設定部184による
実際の振動周波数fの設定によって、周速Vが所定範囲に維持され、実振動数Nrが所定範囲の誤差を許容して維持される
実際の回転数
Sを設定することができる。
実周速Vrを、周速Vを下限として周速V以上とすることによって、ワークWの加工時間を短縮することができる。
また、実周速Vrを、周速Vを上限として周速V以下とすることによって、切削工具130の摩耗を抑制することができる場合もあり得る。
【0079】
なお、本実施例3、4の制御では、振動周波数fに設定できる値が、振動周波
数群によって制限されているため、振動周波数fが振動周波
数群の最大値に設定された場合は、ワーク径Wdが小さくなるに連れて周速Vが低下し、周速Vの維持が困難な場合が発生し得る。