(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを、処理液や処理ガスによって一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1の処理対象の基板Wには、表面にパターンが形成されている。基板処理装置1は、基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。搬送ロボットIRおよび基板搬送ロボットCRは、制御装置3によって制御される。搬送ロボットIRは、キャリヤCと基板搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。基板搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、基板Wの表面(パターン形成面)に処理液を供給して、基板Wを処理液で処理する液処理ユニット2Aと、液処理ユニット2Aによる処理の結果倒壊したパターンを回復させる回復処理ユニット2Bとを含む。
【0023】
図2は、基板処理装置1に備えられた液処理ユニット2Aの構成例を説明するための図解的な断面図である。
液処理ユニット2Aは、洗浄薬液またはエッチング液を用いて基板Wを処理する。液処理ユニット2Aは、箱形の第1のチャンバ4と、第1のチャンバ4内で、基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット、回転ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に薬液を供給するための薬液供給ユニット(処理液供給ユニット)6と、基板Wの上面にリンス液を供給するためのリンス液供給ユニット(処理液供給ユニット)7と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤の液体を供給するための有機溶剤供給ユニット(処理液供給ユニット)8と、スピンチャック5を取り囲む筒状の処理カップ9とを含む。
【0024】
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ10と、このスピンモータ10の駆動軸と一体化されたスピン軸11と、スピン軸11の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース12とを含む。
スピンベース12の上面には、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材13が配置されている。複数個の挟持部材13は、スピンベース12の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
【0025】
また、スピンチャック5としては、挟持式のものに限らず、たとえば、基板Wの裏面を真空吸着することにより、基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、スピンチャック5に保持されている基板Wを回転させる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
薬液供給ユニット6は薬液ノズル14を含む。薬液ノズル14は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面の中央部に向けて固定的に配置されている。薬液ノズル14には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液配管15が接続されている。薬液配管15の途中部には、薬液ノズル14からの薬液の供給/供給停止を切り換えるための薬液バルブ16が介装されている。薬液バルブ16が開かれると、薬液配管15から薬液ノズル14に供給された連続流の薬液が、薬液ノズル14の下端に設定された吐出口から吐出される。また、薬液バルブ16が閉じられると、薬液配管15から薬液ノズル14への薬液の供給が停止される。薬液は、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、有機溶剤(たとえば、IPA:イソプロピルアルコールなど)、および界面活性剤、腐食防止剤の少なくとも1つを含む液である。
【0026】
リンス液供給ユニット7はリンス液ノズル17を含む。リンス液ノズル17は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面の中央部に向けて固定的に配置されている。リンス液ノズル17には、リンス液供給源からのリンス液が供給されるリンス液配管18が接続されている。リンス液配管18の途中部には、リンス液ノズル17からのリンス液の供給/供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ19が介装されている。リンス液バルブ19が開かれると、リンス液配管18からリンス液ノズル17に供給された連続流のリンス液が、リンス液ノズル17の下端に設定された吐出口から吐出される。また、リンス液バルブ19が閉じられると、リンス液配管18からリンス液ノズル17へのリンス液の供給が停止される。リンス液は、たとえば脱イオン水(DIW)である。DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(たとえば、10ppm〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0027】
有機溶剤供給ユニット8は有機溶剤ノズル20を含む。有機溶剤ノズル20は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック5の上方で、その吐出口を基板Wの上面の中央部に向けて固定的に配置されている。有機溶剤ノズル20には、有機溶剤供給源からの液体の有機溶剤が供給される有機溶剤配管21が接続されている。有機溶剤配管21の途中部には、有機溶剤ノズル20からの有機溶剤の供給/供給停止を切り換えるための有機溶剤バルブ22が介装されている。有機溶剤バルブ22が開かれると、有機溶剤配管21から有機溶剤ノズル20に供給された連続流の有機溶剤が、有機溶剤ノズル20の下端に設定された吐出口から吐出される。また、有機溶剤バルブ22が閉じられると、有機溶剤配管21から有機溶剤ノズル20への液体の有機溶剤の供給が停止される。液体の有機溶剤は、たとえばイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)である。液体の有機溶剤は、IPAのほかにも、メタノール、エタノール、アセトン、HEF(ハイドルフルオロエーテル)を例示できる。これらは、いずれも水(DIW)よりも表面張力が小さい有機溶剤である。
【0028】
また、薬液ノズル14、リンス液ノズル17および有機溶剤ノズル20は、それぞれ、スピンチャック5に対して固定的に配置されている必要はなく、たとえば、スピンチャック5の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、このアームの揺動により基板Wの上面における処理液の着液位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
【0029】
第1のチャンバ4の側方の隔壁には、基板Wを搬入/搬出するための搬出入口23が形成されている。液処理ユニット2Aは、搬出入口23を開閉するシャッタ24と、シャッタ24を開閉駆動するための、シリンダ等を含むシャッタ開閉ユニット25とをさらに含む。
図3は、基板処理装置1に備えられた回復処理ユニット2Bの構成例を説明するための図解的な断面図である。
【0030】
回復処理ユニット2Bは、反応気体(基板Wの表面に介在している生成物と反応可能な反応気体)を、基板Wの表面に供給して、パターンを回復させる。回復処理ユニット2Bは、反応気体として、フッ化水素(HF)を含む蒸気(HF vapor。以下、「フッ化水素蒸気」という)を用いる。
回復処理ユニット2Bは、たとえば筒状(円筒状)の第2のチャンバ28と、第2のチャンバ28内に収容され、保持プレート31を含む基板保持ユニット32と、保持プレート31に保持されている基板Wの上面にフッ化水素蒸気(HF vapor)を供給するためのフッ化水素蒸気供給ユニット(反応気体供給ユニット)33と、保持プレート31に保持されている基板Wの上面に水蒸気を供給するための水蒸気供給ユニット34とを含む。
【0031】
第2のチャンバ28は、周壁39と、上下に対向する上壁40および底壁41とを含む。第2のチャンバ28は、蒸気を用いて基板Wを処理する蒸気処理チャンバ(Vapor Process Chamber:VPC)である。
保持プレート31の内部には、保持プレート31に保持された基板Wを加熱するためのヒータ42が埋設されている。ヒータ42の発熱により保持プレート31の上面が温められる。すなわち、保持プレート31は、ホットプレートとして機能し、基板Wを下方から保持すると共に、保持対象の基板Wを下方から加熱する
(基板加熱工程)。
【0032】
基板保持ユニット32は、保持プレート31に対して基板Wを昇降させる複数本(たとえば、3本)のリフトピン36と、複数本のリフトピン36を支持する共通の支持部材37と、支持部材37に結合された、シリンダを含むリフトピン昇降ユニット38とをさらに含む。
保持プレート31は、鉛直方向に延びる回転軸57の上端に固定されている。回転軸57には、回転軸57の中心軸線と一致する回転軸線A2まわりに回転軸57を回転させるスピンモータ58が結合されている。
【0033】
複数本のリフトピン36は、第2のチャンバ28の底壁41に挿通され、第2のチャンバ28外において支持部材37に支持されている。リフトピン昇降ユニット38は、複数本のリフトピン36の先端が保持プレート31の上方に突出する上位置(たとえば、基板搬送ロボットCRとの間で基板Wの受け渡しが可能な位置。
図3に二点鎖線にて図示)と、複数本のリフトピン36の先端が保持プレート31の下方に退避する下位置(
図3に実線にて図示)との間で、複数本のリフトピン36を一体的に昇降させる。
【0034】
また、第2のチャンバ28の周壁39には、第2のチャンバ28内に対する基板Wの搬入/搬出のための搬出入口43が形成されている。周壁39の外側には、搬出入口43を開閉するシャッタ44が設けられている。シャッタ44には、シリンダ等を含むシャッタ開閉ユニット45が結合されている。シャッタ開閉ユニット45は、シャッタ44が搬出入口43を密閉する閉位置と、搬出入口43を開位置との間で、シャッタ44を移動させる。
【0035】
図3に示すように、フッ化水素蒸気供給ユニット33は、第2のチャンバ28の上壁40に設けられたフッ化水素蒸気導入配管46を含む。フッ化水素蒸気導入配管46には、フッ化水素蒸気供給源からのフッ化水素蒸気(HF vapor)が供給される。フッ化水素蒸気導入配管46に供給されるフッ化水素蒸気(HF vapor)は、キャリアガス(たとえば、窒素ガス等の不活性ガス)を含むものであってもよい。フッ化水素蒸気導入配管46は、上壁40を貫通し、フッ化水素蒸気(HF vapor)を第2のチャンバ28内に導入する。フッ化水素蒸気供給ユニット33は、フッ化水素蒸気導入配管46を開閉するフッ化水素蒸気バルブ47をさらに含む。
【0036】
水蒸気供給ユニット34は、第2のチャンバ28の上壁40に設けられた水蒸気導入配管48を含む。水蒸気導入配管48には、水蒸気供給源からの水蒸気が供給される。水蒸気導入配管48に供給される水の蒸気は、キャリアガス(たとえば、窒素ガス等の不活性ガス)を含むものであってもよい。水蒸気導入配管48は、上壁40を貫通し、水蒸気を第2のチャンバ28内に導入する。水蒸気導入配管48から第2のチャンバ28内に導入される水蒸気は、水の沸点以上の温度(たとえば約140℃)を有する過熱水蒸気であることが好ましい。水蒸気供給ユニット34は、水蒸気導入配管48を開閉する水蒸気バルブ49をさらに含む。
【0037】
第2のチャンバ28の内部において、上壁40と保持プレート31との間には、水平に沿う整流板50が配置されている。整流板50には、第2のチャンバ28の内部に対向する多数の吐出孔51が形成されている。上壁40と整流板50との間には、第2のチャンバ28の内部に供給される気体(フッ化水素蒸気(HF vapor)や水蒸気)が拡散するための拡散空間が区画されている。
【0038】
フッ化水素蒸気バルブ47が開かれると、フッ化水素蒸気導入配管46からのフッ化水素蒸気(HF vapor)が、第2のチャンバ28の内部に供給される。フッ化水素蒸気導入配管46からのフッ化水素蒸気(HF vapor)は、整流板50の多数の吐出孔51から分散して吐出され、第2のチャンバ28内において、上壁40の内面と平行な面内でほぼ均一な流速となるシャワー状をなし、保持プレート31に保持されている基板Wに降りかかる。
【0039】
また、水蒸気バルブ49が開かれると、水蒸気導入配管48からの水蒸気が、第2のチャンバ28の内部に供給される。水蒸気導入配管48からの水蒸気は、整流板50の多数の吐出孔51から分散して吐出され、第2のチャンバ28内において、上壁40の内面と平行な面内でほぼ均一な流速となるシャワー状をなし、保持プレート31に保持されている基板Wに降りかかる。
【0040】
また、第2のチャンバ28のたとえば周壁39には、不活性ガスの一例である窒素ガスを第2のチャンバ28内に導入する不活性ガス導入配管53が設けられている。不活性ガス導入配管53には、不活性ガスバルブ52を介して不活性ガスが供給される。不活性ガス導入配管53は、たとえば上壁に設けられていてもよい。
また、第2のチャンバ28の底壁41には、排気口54が形成されている。排気口54には、先端が排気源(図示せず)に接続された排気配管55の基端が接続されている。排気配管55の途中部には、排気バルブ56が介装されている。排気バルブ56が開かれると、第2のチャンバ28内の雰囲気が排気口54から排気され、排気バルブ56が閉じられると、排気口54からの排気が停止される。
【0041】
図4は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0042】
また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ10、シャッタ開閉ユニット25、スピンモータ58、リフトピン昇降ユニット38、シャッタ開閉ユニット45、ヒータ42等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、薬液バルブ16、リンス液バルブ19、有機溶剤バルブ22、フッ化水素蒸気バルブ47、水蒸気バルブ49、不活性ガスバルブ52、排気バルブ56等を開閉する。
【0043】
図5A,5Bは、基板処理装置1(液処理ユニット2Aおよび回復処理ユニット2B)によって実行される第1の基板処理例を説明するための流れ図である。
図6A〜6Cは、パターン62の倒壊を説明するための図解的な図である。
図7A,7Bは、倒壊しているパターン62の回復を説明するための図解的な図である。
以下、
図1〜
図5Bを参照しながら、第1の基板処理例について説明する。
図6A〜6Cおよび
図7A,7Bについては適宜参照する。基板処理装置1によって第1の基板処理例が施されるときには、先ず、液処理ユニット2Aによって基板Wに液処理が施され、その後、回復処理ユニット2Bによって基板Wに回復処理が施される。液処理ユニット2Aによって基板Wに施される液処理は、洗浄処理またはエッチング処理である。
【0044】
まず、液処理ユニット2Aによる基板Wに対する液処理について説明する。液処理ユニット2Aによる液処理が実行されるときには、未洗浄の基板Wが、第1のチャンバ4の内部に搬入される(
図5AのステップS1)。
具体的には、制御装置3は、基板Wを保持している基板搬送ロボットCR(
図1参照)のハンドH1(
図1参照)を第1のチャンバ4の内部に進入させる。これにより、基板Wが、その表面(処理対象面)を上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡される。その後、スピンチャック5に基板Wが保持される。第1のチャンバ4の内部に搬入される基板Wは、
図6A等に示すように、たとえばシリコン(Si)基板61(半導体基板の一例)の表面に、微細なパターン(薄膜パターン)62を形成したものである。パターン62は、たとえば、線幅W1が10nm〜45nm程度、隣接するパターン間の間隔W2が10nm〜数μm程度で形成されていてもよい。パターン62を形成する構造体の膜厚Tは、たとえば、50nm〜5μm程度である。また、この構造体は、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する膜厚Tの比)が、たとえば、5〜500程度であってもよい。
【0045】
スピンチャック5に基板Wが保持された後、制御装置3はスピンモータ10(
図2参照)を制御して、基板Wを回転開始させる(
図5AのステップS2)。
基板Wの回転が、予め定める液処理速度(たとえば約800rpm)に達すると、制御装置3は、基板Wの表面に薬液を供給する薬液工程(
図5AのステップS3)を実行する。具体的には、制御装置3は、薬液バルブ16を開く。それにより、回転状態の基板Wの表面に向けて、薬液ノズル14から薬液が供給される。供給された薬液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡り、基板Wに薬液を用いた薬液処理が施される。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、薬液バルブ16を閉じて、薬液ノズル14からの薬液の吐出を停止する。これにより、薬液工程(S3)が終了する。
【0046】
次いで、制御装置3は、基板W上の薬液をリンス液に置換して基板W上から薬液を排除するためのリンス工程(
図5AのステップS4)を実行する。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ19を開く。それにより、回転状態の基板Wの表面に向けて、リンス液ノズル17からリンス液が吐出される。吐出されたリンス液は遠心力によって基板Wの全面に行き渡る。このリンス液によって、基板W上に付着している薬液が洗い流される。
【0047】
リンス液の供給開始から予め定める期間が経過すると、基板Wの上面全域がリンス液に覆われている状態で、制御装置3は、スピンモータ10を制御して、基板Wの回転速度を液処理速度からパドル速度(零または約40rpm以下の低回転速度。たとえば約10rpm)まで段階的に減速させる。その後、基板Wの回転速度をパドル速度に維持する。これにより、
図6Aに示すように、基板Wの表面に、基板Wの上面全域を覆う水の液膜がパドル状に保持される。
【0048】
次いで、基板W上のリンス液が、より表面張力の低い低表面張力液である有機溶剤に置換される(
図5AのステップS5)。具体的には、制御装置3は、有機溶剤バルブ22を開いて、基板Wの表面に向けて有機溶剤ノズル20から液体の有機溶剤(たとえばIPA)を吐出する。これにより、基板Wの表面に形成された液膜に含まれるリンス液が有機溶剤に置換され、基板Wの表面に、(パドル状の)有機溶剤の液膜が形成される。基板Wの上面上のリンス液が有機溶剤に置換された後、制御装置3は、有機溶剤バルブ22を閉じて、有機溶剤ノズル20からの有機溶剤の吐出を停止する。
【0049】
その後、制御装置3は、スピンドライ工程(
図5AのステップS6)を実行する。具体的には、制御装置3は、液処理速度よりも大きい所定のスピンドライ速度(たとえば約1000rpm)まで基板Wを加速させ、そのスピンドライ速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。
【0050】
基板Wの高速回転の開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ10を制御して、スピンチャック5による基板Wに対する回転を停止させる(
図5AのステップS7)。
その後、第1のチャンバ4内から基板Wが搬出される(
図5AのステップS8)。具体的には、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドH1を第1のチャンバ4の内部に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドH1にスピンチャック5上の基板Wを保持させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドH1をチャンバ4内から退避させる。これにより、液処理後の基板Wが第1のチャンバ4から搬出される。
【0051】
液処理ユニット2Aによるスピンドライ工程(S6)では、パターン62の倒壊が発生することが考えられる。スピンドライ工程(S6)では、
図6Aに示すように、パターン62内に有機溶剤の液面(空気と液体との界面)が形成され、液面とパターン62との接触位置に、有機溶剤の表面張力が働く。このとき、パターン62の間に入り込んだ有機溶剤の液面高さHが基板Wの各所で不均一になっており、そのため、パターン62の周囲に存在する有機溶剤の液面高さHが、パターン62を形成する構造体の全周に関してばらついていると考えられる。そのため、パターン62に作用する有機溶剤の液体の表面張力(毛細管力)が、当該パターン62の全周に関して釣り合わず、パターン62は、大きい表面張力が作用する方向へ倒れる。これにより、
図6Bに示すように、パターン62の倒壊が生じる。
【0052】
一方、パターン62は弾性を有しており、この場合には、パターン62に倒壊が生じた場合であっても、倒壊したパターン62には、パターン自身が持つ弾性によって起立(回復)しようとする力が、ある程度働く。
パターン62が弾性を有していても倒壊状態が維持されることが多い。この要因の一つとして、本願発明者は、
図6Cに示すように、隣接するパターン62が倒壊してその先端部62a同士が互いに接触し、互いに接触する先端部62a同士が、液処理ユニット2Aによる液処理に伴って発生する生成接着物63によって接着され、これにより、パターン62の起立が阻害されていると考えている。そして、パターン62の倒壊状態が長期間保たれることにより、そのパターン62に倒壊形状が記憶されて、倒壊状態が維持されると考えている。この実施形態のように、基板としてシリコン基板61を用いる場合には、生成接着物63は、主として、シリコン酸化物を含むと考えられる。生成接着物63は、シリコン酸化物に加えて/代えて、酸化チタン(TiO
2)を含んでいてもよい。
【0053】
次に、回復処理ユニット2Bによる基板Wに対する回復処理(パターン回復工程)について説明する。回復処理ユニット2Bによる回復処理が実行されるときには、液処理ユニット2Aによって液処理された後の基板Wが、第2のチャンバ28の内部に搬入される(
図5BのステップS9)。回復処理ユニット2B内への基板Wの搬入に先立ち、制御装置3はシャッタ開閉ユニット45を制御してシャッタ44を開位置まで移動させ、これにより、搬出入口43が開放される。また、回復処理ユニット2B内への基板Wの搬入に先立ち、制御装置3はリフトピン昇降ユニット38を制御して、リフトピン36を、その先端が保持プレート31の上方に突出する位置に配置させる。
【0054】
具体的には、制御装置3は、基板Wを保持している基板搬送ロボットCR(
図1参照)のハンドH1(
図1参照)を第2のチャンバ28の内部に進入させる。これにより、基板Wが、その表面(処理対象面)を上方に向けた状態で基板保持ユニット32に受け渡される。第2のチャンバ28内に搬入された基板Wは、ハンドH1によってリフトピン36上に載置される。その後、制御装置3は、リフトピン昇降ユニット38を制御して、リフトピン36を下位置に向けて下降させる。このリフトピン36の下降により、リフトピン36上の基板Wが保持プレート31上に移載される。そして、基板Wの下面と保持プレート31の上面との間に生じる摩擦力により、基板Wが保持プレート31に保持される。
【0055】
リフトピン36上への基板Wの載置後、制御装置3は、第2のチャンバ28内からハンドH1を退避させる。ハンドH1が第2のチャンバ28内から退避した後は、制御装置3は、シャッタ開閉ユニット45を制御して、シャッタ44を閉位置まで移動させ、これにより、搬出入口43がシャッタ44により密閉され、第2のチャンバ28内は、密閉空間になる。
【0056】
搬出入口43が密閉された後、制御装置3はヒータ42を制御して、基板Wに対し下面側から加熱開始し(
図5BのステップS10)、H
2SiF
6の沸点(約109℃)よりも高い所定の温度(たとえば約120℃)まで基板Wを昇温させる。また、保持プレート31に基板Wが保持された後、制御装置3はスピンモータ58(
図3参照)を制御して、基板Wを回転開始させる。
【0057】
基板Wの温度が処理温度(たとえば約120℃)に達し、かつ基板Wの回転が回復処理速度(たとえば約300rpm)に達すると、制御装置3は、フッ化水素蒸気供給工程(
図5BのステップS11)を実行する。フッ化水素蒸気供給工程(S11)は、保持プレート31に保持されている基板Wの表面に、フッ化水素蒸気(HF vapor)を供給する工程である。具体的には、制御装置3は、フッ化水素蒸気バルブ47および排気バルブ56を開くことにより、フッ化水素蒸気導入配管46から第2のチャンバ28内にフッ化水素蒸気(HF vapor)が導入される。これにより、
図7Aに示すように、基板Wの表面の全域にフッ化水素蒸気(HF vapor)が供給される。この場合、式(2)に示すように、フッ化水素はシリコン酸化物と反応し、H
2SiF
6と水とに分解する。
SiO
2+6HF→H
2SiF
6+2H
2O ・・・(2)
倒壊しているパターン62の先端部62a同士を接着している生成接着物63がシリコン酸化物を含んでいる場合には、基板Wの表面に供給されたフッ化水素蒸気(HF vapor)が、シリコン酸化物を含む生成接着物63と反応して分解し、H
2SiF
6が生成される。
【0058】
また、フッ化水素蒸気(HF vapor)の供給と並行して、制御装置3がヒータ42を制御して、H
2SiF
6の沸点(約109℃)よりも高い温度まで昇温するように基板Wを加熱しているので、フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素とシリコン酸化物(SiO
2等)と反応により生じるH
2SiF
6の残渣を蒸発させて、基板Wの表面から除去することができる。
【0059】
パターン62の先端部62aから生成接着物63が除去されることにより、倒壊しているパターン62に対し、パターン62自身が持つ弾性によって起立(回復)しようとする力が働く。これにより、
図7Bに示すように、倒壊しているパターン62が起立(回復)する。
また、フッ化水素蒸気(HF vapor)の供給と並行して、基板Wを回転させることにより、フッ化水素蒸気(HF vapor)が基板Wの上面の全域にむらなく供給される。
【0060】
第1の基板処理例では、第2のチャンバ28内に供給されるフッ化水素蒸気(HF vapor)の供給流量は、キャリアガスを含めて、約15リットル/分である。このときの、フッ化水素蒸気(HF vapor)とキャリアガスとの流量比は、たとえば約1:1である。フッ化水素蒸気(HF vapor)の供給時間、すなわち、フッ化水素蒸気供給工程(S11)の実行時間は、約1分間である。
【0061】
フッ化水素蒸気(HF vapor)の供給開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3はフッ化水素蒸気バルブ47を閉じる。これにより、基板Wの表面に対するフッ化水素蒸気(HF vapor)の供給が停止される。
次いで、制御装置3は、基板Wの表面に水蒸気を供給する水蒸気供給工程(
図5BのステップS12)を実行する。具体的には、制御装置3は、水蒸気バルブ49を開く。これにより、水蒸気導入配管48から第2のチャンバ28内に水蒸気が導入され、このフッ化水素蒸気(HF vapor)が基板Wの表面に供給される。また、水蒸気の供給と並行して、基板Wを回転させることにより、水蒸気が基板Wの上面の全域にむらなく供給される。
【0062】
水蒸気はフッ素と良好に反応する。そのため、水蒸気供給工程(S12)後の基板Wの表面にフッ素が残留している場合であっても、基板の上面に水蒸気を供給することにより、基板Wの表面に在留していたフッ素が除去される。
次いで、第2のチャンバ28内の雰囲気が、不活性ガスに置換される(
図5BのステップS13)。具体的には、制御装置3は、不活性ガスバルブ52を開く。これにより、不活性ガス導入配管53から第2のチャンバ28内に常温の不活性ガスが導入され、その結果、第2のチャンバ28内の雰囲気が、不活性ガス導入配管53から導入される不活性ガスに急速に置換される。第2のチャンバ28内に対する不活性ガスの供給時間(不活性ガスパージ時間)は、約30秒間である。
【0063】
第2のチャンバ28内の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換された後は、制御装置3は、ヒータ42を制御して、基板Wへの加熱を停止する(
図5BのステップS14)。また、制御装置3は、不活性ガスバルブ52および排気バルブ56を閉じる。
その後、制御装置3は、リフトピン昇降ユニット38を制御して、リフトピン36を、基板Wが保持プレート31に対して上位置まで上昇させる。リフトピン36の上昇によって、それまで保持プレート31に支持されていた基板Wがリフトピン36に支持される。その後、制御装置3は、シャッタ開閉ユニット45を制御して、シャッタ44を開位置に配置し、これにより搬出入口43が開放される。この状態で、リフトピン36によって支持されている基板Wが、基板搬送ロボットCRによって第2のチャンバ28から搬出される(
図5BのステップS15)。
【0064】
以上により、この実施形態によれば、基板Wの表面の全域にフッ化水素蒸気(HF vapor)が供給される。基板Wの表面にシリコン酸化物が介在している。この場合には、倒壊しているパターンの先端部同士を生成接着物63が接着しており、また、生成接着物63がシリコン酸化物(SiO
2等)を含むと考えられる。
この場合には、フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素がシリコン酸化物(SiO
2等)と反応するため、基板Wの表面に供給されたフッ化水素蒸気(HF vapor)が、シリコン酸化物を含む生成接着物63と反応して分解し、これにより、生成接着物63をパターン62の先端部62aから除去することが可能である。
【0065】
パターン62の先端部62aから生成接着物63が除去されることにより、倒壊しているパターン62に対し、パターン62自身が持つ弾性によって起立(回復)しようとする力が働く。これにより、倒壊しているパターン62を回復させることができる。
また、基板Wに対するフッ化水素蒸気(HF vapor)への供給と並行して基板Wを加熱する。フッ化水素蒸気(HF vapor)に含まれるフッ化水素がシリコン酸化物(SiO
2等)と反応することにより、H
2SiF
6の残渣が生成されるおそれがある。しかしながら、基板Wに対するフッ化水素蒸気(HF vapor)の供給に並行して基板Wの加熱により、このような残渣を蒸発させて、基板Wの表面から除去することができる。
【0066】
また、フッ化水素蒸気供給工程(S11)の後、水蒸気供給工程(S12)が実行される。フッ化水素蒸気供給工程後(S11)の基板Wの表面には、フッ素が残留しているおそれがある(すなわち、いわゆるF残りが発生するおそれがある)。水蒸気はフッ素と良好に反応するため、基板Wの表面に在留していたフッ素は、基板Wの表面に供給される水蒸気によって除去される。これにより、フッ素の残留を生じさせることなく、倒壊しているパターン62を回復させることができる。
【0067】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置201の内部のレイアウトを説明するための平面図である。
図9は、基板処理装置201に備えられた回復処理ユニット2Cの構成例を説明するための図解的な断面図である。
第2の実施形態に示す実施形態において、前述の第1の実施形態と共通する部分には、
図1〜
図7Bの場合と同一の参照符号を付し、説明を省略する。基板処理装置201は、回復処理ユニット2Bに代えて回復処理ユニット2Cを備える点で、基板処理装置1と相違する。
【0068】
回復処理ユニット2Cは、基板Wの表面に反応気体を供給して、パターンを回復させる。回復処理ユニット2Cは、反応気体としてオゾンガスを含む気体(以下、「オゾンガス気体」という)を用いる。
図9に示すように、回復処理ユニット2Cは、たとえば筒状(円筒状)の第3のチャンバ228と、第3のチャンバ228内に収容され、保持プレート31を含む基板保持ユニット232と、保持プレート31に保持されている基板Wの上面にオゾンガス気体を供給するためのオゾンガス供給ユニット203(反応気体供給ユニット)とを含む。
【0069】
第2の実施形態に係る第3のチャンバ228は、第1の実施形態に係る第2のチャンバ28と同等の構成を有している。
第2の実施形態に係る基板保持ユニット232は、第1の実施形態に係る基板保持ユニット32と同等の構成を有している。
図9に示すように、オゾンガス供給ユニット203は、第2のチャンバ28の上壁40に設けられたオゾンガス導入配管204を含む。オゾンガス導入配管204には、オゾンガス供給源からのオゾンガスを含む気体(以下、「オゾンガス気体」という)が供給される。オゾンガス導入配管204に供給されるオゾンガス気体(O
3)は、キャリアガス(たとえば、窒素ガス等の不活性ガス)を含むものであってもよい。オゾンガス導入配管204は、上壁40を貫通し、オゾンガス気体(O
3)を第2のチャンバ28内に導入する。オゾンガス供給ユニット203は、オゾンガス導入配管204を開閉するオゾンガスバルブ205をさらに含む。
【0070】
オゾンガスバルブ205が開かれると、オゾンガス導入配管204からのオゾンガス気体(O
3)が、第2のチャンバ28の内部に供給される。オゾンガス導入配管204からのオゾンガス気体(O
3)は、整流板50の多数の吐出孔51から分散して吐出され、第2のチャンバ28内において、上壁40の内面と平行な面内でほぼ均一な流速となるシャワー状をなし、保持プレート31に保持されている基板Wに降りかかる。
【0071】
図10は、基板処理装置201の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ10、シャッタ開閉ユニット25、スピンモータ58、リフトピン昇降ユニット38、シャッタ開閉ユニット45、ヒータ42等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、薬液バルブ16、リンス液バルブ19、有機溶剤バルブ22、オゾンガスバルブ205、不活性ガスバルブ52、排気バルブ56等を開閉する。
【0072】
図11は、基板処理装置201(液処理ユニット2Aおよび回復処理ユニット2C)によって実行される第2の基板処理例を説明するための流れ図である。
第2の基板処理例は、液処理ユニット2Aによって基板Wに施される液処理に関して、第1の基板処理例と共通している。すなわち、第2の基板処理例は、
図5AのステップS1〜ステップS8の各工程を含んでいる。
図11では、
図5AのステップS9以降の工程のみが記載されている。
【0073】
薬液工程(
図5AのS3)において用いられる薬液の種類によっては、液処理(液処理ユニット2Aによる液処理)後に、有機物が存在していることがある。この場合、生成接着物63(
図6C参照)は、主として、有機物を含むと考えられる。
以下、
図8〜
図11を参照しながら、第2の基板処理例の回復処理について説明する。第2の基板処理例の回復処理は、回復処理ユニット2Cにおいて実行される。回復処理ユニット2Cによる回復処理が実行されるときには、液処理ユニット2Aによって液処理された後の基板Wが、第2のチャンバ28の内部に搬入される(
図11のステップS21)。回復処理ユニット2C内への基板Wの搬入は、回復処理ユニット2B(
図2参照)内への基板Wの搬入(
図5BのS9)と同等の工程である。
【0074】
リフトピン36上への基板Wの載置後、制御装置3は、第2のチャンバ28内からハンドH1を退避させる。ハンドH1が第2のチャンバ28内から退避した後は、制御装置3は、シャッタ開閉ユニット45を制御して、シャッタ44を閉位置まで移動させ、これにより、搬出入口43がシャッタ44により密閉され、第2のチャンバ28内は、密閉空間になる。
【0075】
搬出入口43が密閉された後、制御装置3はヒータ42を制御して、基板Wに対し下面側から加熱開始し、所定の処理温度(たとえば約120℃)まで基板Wを昇温させる。また、制御装置3はスピンモータ58(
図3参照)を制御して、基板Wを回転開始させる。
基板Wの温度が処理温度(たとえば約120℃)に達し、かつ基板Wの回転が回復処理速度(たとえば約300rpm)に達すると、制御装置3は、オゾンガス供給工程(
図11のステップS22)を実行する。オゾンガス供給工程(S22)は、保持プレート31に保持されている基板Wの表面に、オゾンガス気体(O
3)を供給する工程である。具体的には、制御装置3は、オゾンガスバルブ205および排気バルブ56を開くことにより、オゾンガス導入配管204から第2のチャンバ28内にオゾンガス気体(O
3)が導入される。これにより、基板Wの表面の全域にオゾンガス気体(O
3)が供給される。この場合、オゾンガス気体(O
3)に含まれるオゾンガスは有機物と反応し、有機物を分解させる。
【0076】
倒壊しているパターン62(
図6B参照)の先端部62a(
図6B参照)同士を接着している生成接着物63が有機物を含んでいる場合には、基板Wの表面に供給されたオゾンガス気体(O
3)に含まれるオゾンガスが、有機物を含む生成接着物63と反応して分解する。これにより、生成接着物63がパターン62の先端部から除去される。
パターン62の先端部62aから生成接着物63が除去されることにより、倒壊しているパターン62に対し、パターン62自身が持つ弾性によって起立(回復)しようとする力が働く。これにより、倒壊しているパターン62が起立(回復)する。
【0077】
また、オゾンガス気体(O
3)の供給と並行して、基板Wを回転させることにより、オゾンガス気体(O
3)が基板Wの上面の全域にむらなく供給される。
この実施形態では、第2のチャンバ28内に供給されるオゾンガス気体(O
3)の供給流量は、キャリアガスを含めて、約20リットル/分である。このときの、オゾンガスとキャリアガスとの流量比は、たとえば約1:7である。オゾンガス気体(O
3)の供給時間、すなわち、オゾンガス供給工程(S22)の実行時間は、約3分間である。
【0078】
オゾンガス気体(O
3)の供給開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3はオゾンガスバルブ205を閉じる。これにより、基板Wの表面に対するオゾンガス気体(O
3)の供給が停止される。
次いで、第2のチャンバ28内の雰囲気が、不活性ガスに置換される(
図11のステップS23)。回復処理ユニット2Cにおける不活性ガスによる置換は、回復処理ユニット2B(
図2参照)における不活性ガスによる置換(
図5BのS13)と同等の工程である。
【0079】
第2のチャンバ28内の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換された後、制御装置3は、ヒータ42を制御して、基板Wへの加熱を停止する。また、制御装置3は、不活性ガスバルブ52および排気バルブ56を閉じる。
その後、制御装置3は、リフトピン昇降ユニット38を制御して、リフトピン36を、基板Wが保持プレート31に対して上位置まで上昇させる。リフトピン36の上昇によって、それまで保持プレート31に支持されていた基板Wがリフトピン36に支持される。その後、制御装置3は、シャッタ開閉ユニット45を制御して、シャッタ44を開位置に配置し、これにより搬出入口43が開放される。この状態で、リフトピン36によって支持されている基板Wが、基板搬送ロボットCRによって第2のチャンバ28から搬出される(
図11のステップS24)。
【0080】
以上により、この実施形態によれば、基板Wの表面に、オゾンガス気体(O
3)が供給される。基板Wの表面に有機物が介在している。この場合には、倒壊しているパターンの先端部同士を生成接着物63が接着しており、また、生成接着物63が有機物を含むと考えられる。
この場合には、オゾンガスが有機物と反応するため、基板Wの表面に供給されたオゾンガス気体(O
3)に含まれるオゾンガスが、有機物を含む生成接着物63と反応して分解し、これにより、生成接着物63がパターン62の先端部62aから除去される。
【0081】
パターン62の先端部62aから生成接着物63が除去されることにより、倒壊しているパターン62に対し、パターン62自身が持つ弾性によって起立(回復)しようとする力が働く。これにより、倒壊しているパターン62を回復させることができる。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置301の回復処理ユニット302の構成例を説明するための図解的な断面図である。
【0082】
第3の実施形態において、前述の第1の実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図7Bの場合と同一の参照符号を付し、説明を省略する。
基板処理装置301は、回復処理ユニット2Bに代えて回復処理ユニット302を備える。第1の実施形態に係る回復処理ユニット2Bと相違する一つの点は、密閉チャンバではない第4のチャンバ303をチャンバとして備えた点である。回復処理ユニット302は、箱状の第4のチャンバ303と、第4のチャンバ303内に収容された基板保持ユニット304と、基板保持ユニット304の保持プレート31に保持されている基板Wの上面に対向する対向部材305とを含む。基板保持ユニット304は、第1の実施形態に係る基板保持ユニット32(
図3参照)と同等の構成である。
【0083】
この実施形態では、対向部材305が基板Wの上面に接近することにより、対向部材305と基板Wの上面との間に半密閉空間307が形成されている。この半密閉空間307において、基板Wの表面に対するフッ化水素蒸気(HF vapor)の供給が行われる。
対向部材305は、略円板状の対向板308を含む。対向板308は、基板保持ユニット304の上方に配置されている。対向板308は、上下方向に延びる支軸309によって水平な姿勢で支持されている。対向板308は、基板Wと同等か、基板Wよりも大きい外径を有する円板状である。対向板308の中心軸線は、回転軸線A1上に配置されている。
【0084】
対向板308は、水平に配置された円板部310と、円板部310の外周縁に沿って設けられた筒状部311とを含む。筒状部311は、円錐台状であってもよい。具体的には、
図12に示すように、筒状部311は、円板部310の外周縁から外方に広がるように下方に延びていてもよい。また、
図12に示すように、筒状部311は、筒状部311の下端に近づくに従って肉厚が減少していてもよい。
【0085】
回復処理ユニット302は、処理液を吐出するノズル312をさらに含む。ノズル312は、対向板308の中央部を上下方向に貫通している。ノズル312の下端部には、対向板308の下面中央部で開口する吐出口313が形成されている。ノズル312は、対向板308と共に鉛直方向に昇降可能に設けられている。
回復処理ユニット302は、支軸309を介して対向板308に連結された対向板昇降ユニット314をさらに含む。回復処理ユニット302は、対向板308の中心軸線まわりに対向板308を回転させる遮断板回転ユニットをさらに備えていてもよい。対向板昇降ユニット314は、対向板308の下面中央部が基板Wの上面に近接する近接位置(
図12に示す位置)と、近接位置の上方に設けられた退避位置(図示しない)との間で対向板308を昇降させる。
【0086】
回復処理ユニット302は、さらに、吐出口313にフッ化水素蒸気(HF vapor)を供給するフッ化水素蒸気供給ユニット(反応気体供給ユニット)315と、吐出口313に水蒸気を供給する水蒸気供給ユニット316とを含む。フッ化水素蒸気供給ユニット315および水蒸気供給ユニット316は、それぞれ、第1の実施形態に係るフッ化水素蒸気供給ユニット33(
図3参照)および水蒸気供給ユニット34(
図3参照)に代えて用いられる。
【0087】
フッ化水素蒸気供給ユニット315は、ノズル312にフッ化水素蒸気(HF vapor)を供給するためのフッ化水素蒸気配管317と、フッ化水素蒸気配管317を開閉するためのフッ化水素蒸気バルブ318とを含む。
水蒸気供給ユニット316は、ノズル312に水蒸気を供給するための水蒸気配管319と、水蒸気配管319を開閉するための水蒸気バルブ320とを含む。
【0088】
水蒸気配管319が閉じられた状態でフッ化水素蒸気バルブ318が開かれると、ノズル312にフッ化水素蒸気が供給され、吐出口313から下方に向けてフッ化水素蒸気が吐出される。
一方、フッ化水素蒸気バルブ318が閉じられた状態で水蒸気配管319が開かれると、ノズル312に水蒸気が供給され、吐出口313から下方に向けて水蒸気が吐出される。
【0089】
制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ58、リフトピン昇降ユニット38、ヒータ42等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、フッ化水素蒸気バルブ318、水蒸気バルブ320等を開閉する。
回復処理ユニット302では、第1の基板処理例と同等の処理が実行され、第1の基板処理例において説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。回復処理ユニット302で実行される回復処理が、前述の第1の基板処理例の回復処理と相違する部分だけ、以下において説明する。
【0090】
基板Wの温度が処理温度(たとえば約120℃)に達し、かつ基板Wの回転が回復処理速度(たとえば約300rpm)に達すると、制御装置3は、フッ化水素蒸気供給工程(
図5BのS11に相当)を実行する。具体的には、制御装置3は、対向板昇降ユニット314を制御して、対向板308を近接位置に配置する。これにより、対向部材305と基板Wの上面との間に、円筒状の半密閉空間307が形成される。また、制御装置3は、フッ化水素蒸気バルブ318および排気バルブ56を開く。これにより、フッ化水素蒸気配管317からのフッ化水素蒸気(HF vapor)が半密閉空間307に導入され、半密閉空間307に充満し、これにより、基板Wの表面の全域にフッ化水素蒸気(HF vapor)が供給される。
【0091】
フッ化水素蒸気(HF vapor)の供給開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3はフッ化水素蒸気バルブ318を閉じる。これにより、基板Wの表面に対するフッ化水素蒸気(HF vapor)の供給が停止される。
次いで、制御装置3は、基板Wの表面に水蒸気を供給する水蒸気供給工程(
図5BのS12に相当)を実行する。具体的には、制御装置3は、水蒸気バルブ320を開く。これにより、水蒸気配管319からの水蒸気が半密閉空間307に導入され、半密閉空間307に充満し、これにより、基板Wの表面の全域に水蒸気が供給される。
【0092】
水蒸気の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、ヒータ42を制御して、基板Wへの加熱を停止する(
図5BのステップS14に相当)。また、制御装置3は、不活性ガスバルブ52および排気バルブ56を閉じる。制御装置3は、対向板昇降ユニット314を制御して、対向板308を退避位置に配置する。
その後、制御装置3は、リフトピン昇降ユニット38を制御して、リフトピン36を、基板Wが保持プレート31に対して上位置まで上昇させる。リフトピン36の上昇によって、それまで保持プレート31に支持されていた基板Wがリフトピン36に支持される。この状態で、リフトピン36によって支持されている基板Wが、基板搬送ロボットCRによって第4のチャンバ303から搬出される(
図5BのステップS15に相当)。
<第1の回復試験>
次に、倒壊しているパターンを回復させるための第1の回復試験について説明する。まず、第1の回復試験について説明する。
【0093】
アスペクト比16を有するパターンが形成された半導体基板を、第1の回復試験の試料として採用した。2つの試料(試料1および試料2)に対し、有機溶剤の供給(
図5AのS5に相当)およびスピンドライ工程(
図5AのS6に相当)を行い、かつ、その後にフッ化水素蒸気供給工程(
図5BのS11に相当)を行った。
スピンドライ工程の実行後には、各試料に形成されたパターンに倒壊が見られた。各試料の倒壊している構造体の数を、SEM(電子走査顕微鏡)による画像を解析して求めた。倒壊している構造体の数は、パターン倒壊が生じていない状態における構造体の数から、スピンドライ工程後において立っている構造体の数を差し引くことにより求められる。
【0094】
試料1および試料2に対し、下記の条件で、フッ化水素蒸気供給工程を行った。
試料1:試料を130℃に加熱しながら、大気下環境下において、フッ化水素蒸気(HF vapor)を1分間供給した。
試料2:試料を120℃に加熱しながら、大気下環境下において、フッ化水素蒸気(HF vapor)を2分間供給した。
【0095】
フッ化水素蒸気供給工程の実行後の試料(試料1および試料2)に対し、回復処理後に、倒壊状態から回復した構造体の数を、SEMによる画像を解析して求めた。倒壊状態から回復した構造体の数は、スピンドライ工程後において立っている構造体の数から、フッ化水素蒸気供給工程後において立っている構造体の数を差し引くことにより求められる。
そして、正規回復率(Normalized recovery rate:回復処理後に、倒壊状態から回復した構造体の数/回復処理前に倒壊している構造体の数(%))を算出した。その結果を
図13に示す。
【0096】
また、フッ化水素蒸気供給工程の前後における、試料1のSEMによる画像図を、それぞれ
図14A,14Bに示す。
第1の回復試験の結果から、試料(半導体基板)の表面にフッ化水素蒸気を供給することにより、倒壊しているパターンを回復させることができることがわかる。また、フッ化水素蒸気の供給時間が長くなるに従って、パターンの回復度合いが上昇することがわかる。
<第2の回復試験>
次に、第2の回復試験について説明する。
【0097】
アスペクト比16を有するパターンが形成された半導体基板を、第2の回復試験の試料として採用した。4つの試料(試料3〜試料6)に対し、有機溶剤の供給(
図5AのS5に相当)およびスピンドライ工程(
図5AのS6に相当)を行い、かつ、その後にフッ化水素蒸気供給工程(
図5BのS11に相当)を行った。
スピンドライ工程の実行後には、各試料に形成されたパターンに倒壊が見られた。各試料の倒壊しているパターンの数を、SEM(電子走査顕微鏡)による画像を解析して求めた。
【0098】
4つの試料(試料3〜試料6)のうち、試料3および試料4は、パターン倒壊の比較的少ないサンプルであり(全部で17800個のパターンのうち倒壊しているパターンが1000個未満)、試料5および試料6は、パターン倒壊の比較的多いサンプルであった。
試料3〜試料6に対し、下記の条件で、フッ化水素蒸気供給工程を行った。
試料3および試料5:大気下環境下において、フッ化水素蒸気を10分間供給した。
【0099】
試料4および試料6:大気下環境下において、フッ化水素蒸気を30分間供給した。
フッ化水素蒸気供給工程の実行後の試料(試料3〜試料6)に対し、倒壊しているパターンの数を、SEMによる画像を解析して求めた。
図15に、フッ化水素蒸気供給工程の前後における、各試料の倒壊しているパターンの数を示した。
図15から、試料(半導体基板)の表面にフッ化水素蒸気を供給することにより、倒壊しているパターンを回復させることができることがわかる。また、フッ化水素蒸気供給工程前のパターン倒壊が多いほど、パターンの回復度合いが高いことがわかる。
【0100】
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば第3の実施形態において、
図12に破線で示すように、回復処理ユニット302が、吐出口313に有機溶剤を供給する有機溶剤供給ユニット(処理液供給ユニット351をさらに備えて設けられていてもよい。また、基板保持ユニット304に保持されている基板Wの上面に薬液を供給するための薬液供給ユニット(処理液供給ユニット)352と、基板保持ユニット304に保持されている基板Wの上面にリンス液を供給するためのリンス液供給ユニット(処理液供給ユニット)353とをさらに備えていてもよい。この場合、第1の基板処理例を、1つの処理ユニットで行うことができ、基板Wの移送に要する時間を短縮化できる結果、スループットの向上を図ることができる。
【0101】
第2の実施形態に係る基板保持ユニット232が、保持プレート31の内部にヒータ42を設けていなくてもよい。つまり、第2の実施形態において、ホットプレートとして機能しない保持プレートを保持プレート31として採用することもできる。この場合、オゾンガス供給工程(
図11のステップS22)において基板Wは加熱されない。
また、第1および第2実施形態において、処理液供給ユニット(薬液供給ユニット6、リンス液供給ユニット7および有機溶剤供給ユニット8)を回復処理ユニット2B,2Cに組み込むことにより、1つの処理ユニットで、第1の基板処理例または第2の基板処理例を実行するようにしてもよい。
【0102】
また、前述の第1および第2の実施形態において、第2のチャンバ28内への基板Wの搬入直後に、第2のチャンバ28内の雰囲気の不活性ガス置換を開始してもよい。また、基板Wの搬出入の際には搬出入口23が開放するが、搬出入口23の開放状態に並行して、第2のチャンバ28外の気体(外気)が、第2のチャンバ28内に進入することを防止するために、第2のチャンバ28内への不活性ガスの供給が行われていてもよい。
【0103】
また、第1および第3の実施形態において、水蒸気供給工程(S12)の開始前に、基板Wへの加熱が終了していてもよい。すなわち、水蒸気供給工程(S12)と基板Wへの加熱とが並行して行われなくてもよい。
また、第1および第3の実施形態において(第1の基板処理例において)、水蒸気供給工程(S12)を省略してもよい。この場合、第1および第3の実施形態において、水蒸気供給ユニット34,316を廃止できる。
【0104】
また、第1〜第3の実施形態において、反応気体供給工程(フッ化水素蒸気供給工程、オゾンガス供給工程)に並行して基板Wを回転させる例を説明したが、基板Wを静止させた状態に保ちながら反応気体供給工程(フッ化水素蒸気供給工程(S12)、オゾンガス供給工程(S13))を行ってもよい。
また、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせてもよい。すなわち、1つの基板処理装置1が、回復処理ユニット2B(
図3参照)と、回復処理ユニット2C(
図9参照)との双方を備えていてもよい。
【0105】
また、第3の実施形態を、第2の実施形態に組み合わせてもよい。
また、前述の各実施形態では、基板処理装置1,201,301が円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1,201,301が、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。