特許第6875850号(P6875850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875850
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】フィールドデータ収集システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   G05B23/02 V
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-251473(P2016-251473)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-106389(P2018-106389A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮前 公準
(72)【発明者】
【氏名】徳田 則昭
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/046726(WO,A1)
【文献】 特開2002−056387(JP,A)
【文献】 特開2014−078122(JP,A)
【文献】 特開2011−198086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに設けられたフィールド機器に固有の識別情報を保持し、当該フィールド機器又はその近傍であって当該フィールド機器の前記識別情報であることが認識できる位置に設けられた識別情報保持体と、
前記フィールド機器の点検の際に作業者が用いる点検用の携帯情報端末とを備え、
前記携帯情報端末が、
前記識別情報保持体から前記識別情報を読み取る識別情報取得部と、
前記フィールド機器の指示計を撮像するカメラと、
前記カメラの撮像画像から前記指示計の指示値を読み取る指示値読取部と、
前記指示値読取部が読み取った前記指示値と前記識別情報取得部が読み取った前記識別情報とを関連付けて記憶する指示値記憶部と
表示出力部とを有し、
前記携帯情報端末は、前記識別情報取得部が読み取った前記識別情報により識別された前記フィールド機器の前記指示計の型に対応したガイドと前記カメラがとらえた画像とを含む撮影ガイド画面を前記表示出力部に表示させるように構成されている
フィールドデータ収集システム。
【請求項2】
前記フィールド機器の各々について前記指示計の仕様情報及び前記指示計の前記撮像画像に対する画像補正情報を含む指示値認識設定情報と前記識別情報とが、前記識別情報からそれに対応する前記フィールド機器の前記指示値認識設定情報を読み出すことができるように関連付けられて記憶された指示値認識設定データベースと、
前記識別情報取得部が読み取った前記識別情報と関連付けれた前記指示値認識設定情報を前記指示値認識設定データベースから読み出す認識設定情報取得部とを、更に備え
前記指示値読取部は、読み出された前記指示値認識設定情報を利用して前記撮像画像から前記指示値を読み取る画像処理を行う、
請求項に記載のフィールドデータ収集システム。
【請求項3】
前記携帯情報端末と通信可能に接続されたプラントサーバを更に備え、前記プラントサーバが、前記指示値記憶部に記憶された情報に基づいて、前記フィールド機器の点検記録情報を作成する点検記録作成部と、生成した前記点検記録情報を記憶する点検記録データベースとを有する、
請求項1又は2に記載のフィールドデータ収集システム。
【請求項4】
前記携帯情報端末は、前記指示値読取部が読み取った前記指示値を含む読取結果画面を前記表示出力部に表示する、
請求項のいずれか一項に記載のフィールドデータ収集システム。
【請求項5】
前記読取結果画面は前記撮像画像と、作業者からの前記指示値の承認の入力を受け付ける入力部とを含み、前記入力部が承認を受け付けた場合に前記指示値記憶部への記憶が許容される、
請求項に記載のフィールドデータ収集システム。
【請求項6】
前記携帯情報端末が、前記プラント内の複数の検針箇所のうち、前記指示値記憶部への前記指示値への記憶があるものが第1の表示で示され、余が第2の表示で示された、検針作業支援画面を前記表示出力部に表示出力する検針作業支援部を、更に有する、
請求項のいずれか一項に記載のフィールドデータ収集システム。
【請求項7】
プラントに設けられたフィールド機器に固有の識別情報を保持する識別情報保持体を当該フィールド機器又はその近傍であって当該フィールド機器の前記識別情報であることが認識できる位置に設けること、
前記フィールド機器の点検の際に作業者が用いる携帯情報端末に設けられたリーダーで前記識別情報保持体から前記識別情報を読み取ること、
前記携帯情報端末に設けられた表示出力部に、読み出された前記識別情報により識別された前記フィールド機器の指示計の型に対応したガイドと前記携帯情報端末に設けられたカメラがとらえた画像とを含む撮影ガイド画面を表示すること、
前記メラで前記示計を撮像すること、
前記携帯情報端末に設けられた第1の演算処理部が前記カメラの撮像画像から前記指示計の指示値を読み取ること、及び、
指示値記憶部に読み取った前記指示値と前記識別情報を関連付けて記憶すること、を含む、
フィールドデータ収集方法。
【請求項8】
前記フィールド機器の各々について前記指示計の仕様情報及び前記指示計の前記撮像画像に対する画像補正情報を含む指示値認識設定情報と前記識別情報とを、前記識別情報からそれに対応する前記フィールド機器の前記指示値認識設定情報を読み出すことができるように関連付けて指示値認識設定データベースに記憶することと、
前記第1の演算処理部が前記指示値認識設定データベースから、読み取った前記識別情報と関連付けられた前記指示値認識設定情報を読み出すことを、更に含み、
前記指示値を読み取ることが、読み出した前記指示値認識設定情報を利用して前記撮像画像から前記指示値を読み取る画像処理を行うことを含む、
請求項に記載のフィールドデータ収集方法。
【請求項9】
第2の演算処理部が、前記指示値記憶部に記憶された情報に基づいて前記フィールド機器の点検記録情報を生成すること、及び、
点検記録データベースに生成した前記点検記録情報を記憶することを、更に含む、
請求項7又は8に記載のフィールドデータ収集方法。
【請求項10】
前記携帯情報端末が、読み取った前記指示値を含む読取結果画面を表示することを、更に含む、
請求項のいずれか一項に記載のフィールドデータ収集方法。
【請求項11】
前記読取結果画面は前記撮像画像と、前記作業者からの前記指示値の承認の入力を受け付ける入力部とを有し、
前記指示値及び前記識別情報を記憶することが、前記入力部が承認を受け付けた場合に許容される、
請求項10に記載のフィールドデータ収集方法。
【請求項12】
前記携帯情報端末が、前記プラント内の複数の検針箇所のうち、前記指示値記憶部への前記指示値への記憶があるものが第1の表示で示され、余が第2の表示で示された、検針作業支援画面を表示することを、更に含む、
請求項11のいずれか一項に記載のフィールドデータ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラントのフィールドデータを収集するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種プラントには、圧力計、流量計、温度計などのセンサ類、圧力制御弁、流量制御弁などのバルブ類、ポンプ、ブロワ、ファン、モータ、アクチュエータなどの機器類を含む多種且つ多数のフィールド機器が設けられている。それらのフィールド機器の指示値や運転データなどを、以下では、「フィールドデータ」と称する。フィールド機器のうちプラントの運転監視に最低限必要なフィールドデータを提供するものは制御装置と通信可能に接続されており、当該フィールド機器から制御装置へフィールドデータが自動的に送信される。その他のフィールド機器のフィールドデータは、定期的に巡回する保守管理作業者が目視で指示値等を読み取って点検簿へ手書きで記録し、別途分析して保守に利用している。しかし、この点検簿は、書面で管理され、検索性が悪く、記録されたフィールドデータをプラントの監視や制御のために二次的利用することが困難であった。
【0003】
そこで、プラントのフィールドデータを電子的に管理するための技術が、特許文献1で提案されている。特許文献1に記載の計器保守管理システムは、計器の保守管理作業者が操作する点検用端末と、プラントの管理者が利用する管理端末と、点検用端末及び管理端末と通信可能に接続されたプラントサーバとを備えている。この計器保守管理システムでは、作業者が計器の点検データを点検用端末に入力し、入力された点検データが点検用端末からプラントサーバに送信され、プラントサーバでは受け付けた点検データが計器の点検に必要なデータに対応付けてデータベースに格納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−198086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の計器保守管理システムでは、点検用端末への点検データの入力は作業者によって行われ、作業者による値の読み取り間違いや、点検用端末への誤入力などのおそれがある。そのため、管理端末の管理者が、点検用端末から入力された点検データが正しいと承認したうえで、データベースの更新が行うという煩雑な処理を行わなければならない。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、作業者によるフィールド機器の指示値の読み取り間違いや、作業者による情報端末への誤入力などの課題が解消され得る、フィールドデータ収集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るフィールドデータ収集システムは、プラントに設けられたフィールド機器に固有の識別情報を保持し、当該フィールド機器又はその近傍であって当該フィールド機器の前記識別情報であることが認識できる位置に設けられた識別情報保持体と、記フィールド機器の点検の際に作業者が用いる点検用の携帯情報端末とを備えている。そして、前記携帯情報端末が、前記識別情報保持体から前記識別情報を読み取る識別情報取得部と、フィールド機器の指示計を撮像するカメラと、記カメラの撮像画像から前記指示計の指示値を読み取る指示値読取部と、み取った前記指示値前記識別情報とを関連付けて記憶する指示値記憶部と、表示出力部とを有し、前記携帯情報端末は、前記識別情報取得部が取得した前記識別情報により識別された前記指示計の型に対応したガイドと前記カメラがとらえた画像とを含む撮影ガイド画面を前記表示出力部に表示させるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
上記フィールドデータ収集システムでは、作業者の操作により、携帯情報端末が指示計の指示値(フィールドデータ)の読み取りと記憶とを行う。よって、作業者による指示値の読み取り間違いや、情報端末への指示値の誤入力などの従来の課題が解消される。
【0009】
上記フィールドデータ収集システムが、前記携帯情報端末と通信可能に接続されたプラントサーバを備え、前記プラントサーバが、前記指示値記憶部に記憶された情報を前記携帯情報端末から取得して、前記フィールド機器の点検記録情報を作成する点検記録作成部と、生成した前記点検記録情報を記憶する点検記録データベースとを有していてよい。
【0010】
携帯情報端末で収集された指示値がプラントサーバに集められることによって、収集された指示値を一元的に管理したり、指示値を二次的利用したりすることが可能となる。
【0011】
上記フィールドデータ収集システムにおいて、前記携帯情報端末が、前記プラント内の複数の検針箇所のうち、前記指示値記憶部への前記指示値への記憶があるものが第1の表示で示され、余が第2の表示で示された、検針作業支援画面を前記表示出力部に表示出力する検針作業支援部を、更に有していてよい。
【0012】
このように、携帯情報端末に検針作業支援画面が表示されることによって、作業者は計画された順序でフィールドデータを収集することができ、作業者が介在することによる読み間違い、ごまかし、見落としを排除することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業者によるフィールド機器の指示値の読み取り間違いや、携帯情報端末への誤入力などの課題が解消され得る、フィールドデータ収集システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るフィールドデータ収集システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、携帯情報端末によるフィールドデータ収集処理の流れ図である。
図3図3は、検針作業支援画面の一例を示す図である。
図4図4は、撮影ガイド画面の一例を示す図である。
図5図5は、読取結果画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔フィールドデータ収集システム1の概要〕
図1は、本発明の一実施形態に係るフィールドデータ収集システム1の概略構成を示す図である。図1に示すフィールドデータ収集システム1は、複数のフィールド機器6を備えたプラントにおいて、それらのフィールド機器6からフィールドデータを収集するシステムである。なお、図1では、複数のフィールド機器6のうちの1つが例示されている。
【0016】
複数のフィールド機器6には、圧力計、流量計、温度計などのセンサ類、圧力制御弁、流量制御弁などのバルブ類、ポンプ、ブロワ、ファン、モータ、アクチュエータなどの機器類を含む多種且つ多数の機器が含まれていてよい。各フィールド機器6は、計測値や運転状態を示す少なくとも1つの指示計61(指示計器)を備えている。指示計61には、デジタル表示式のものや、アナログ表示式のものがある。フィールドデータ収集システム1では、それらの指示計61の指示値(「フィールドデータ」と称する)を、デジタルデータとして収集する。
【0017】
フィールド機器6には、そのフィールド機器6に固有の識別情報を保持する識別情報保持体62が設けられている。識別情報保持体62は、フィールド機器6の指示計61に近接し、且つ、検針作業の作業者から見てフィールド機器6の正面に設けられていることが望ましい。但し、識別情報保持体62は、フィールド機器6の形状や設置状況によってフィールド機器6に設けることが困難である場合には、フィールド機器6と関連が認識できるように当該フィールド機器6の近傍(例えば、フィールド機器6の指示計61から半径3m以内)に設けられていてもよい。
【0018】
識別情報保持体62は、例えば、2次元バーコードが印字されたシールであってよい。この場合、後述する識別情報取得部55は、その2次元バーコードを読み取るバーコードリーダー(カメラ51を含む)である。
【0019】
また、識別情報保持体62は、例えば、近接場型の無線通信(非接触通信)用のICタグであってよい。この場合、後述する識別情報取得部55は、そのICタグに記憶された情報を読み取るICタグリーダーである。但し、識別情報保持体62は、上記に例示されたものに限定されず、フィールド機器6に後付け可能な情報媒体であればよい。
【0020】
本実施形態に係るフィールドデータ収集システム1は、プラントに設置されたプラントサーバ2と、プラントサーバ2と通信ネットワーク10を介して接続された監視サーバ3と、保守管理作業者がフィールド機器6の点検(即ち、指示計61の検針)に用いる携帯情報端末5と、フィールド機器6に設けられた前述の識別情報保持体62とを備えている。携帯情報端末5は、状況によって、プラントサーバ2と情報を送受信可能に接続される。
【0021】
プラントサーバ2、監視サーバ3、及び携帯情報端末5は、いわゆるコンピュータであって、CPU等の演算処理部と、ROM、RAM等の記憶部を各々に有している(いずれも図示略)。記憶部には、演算処理部が実行する制御プログラムや、各種固定データ等が記憶されている。演算処理部は、外部装置とデータの送受信を行う。また、演算処理部は、各種センサからの検出信号の入力や各制御対象への制御信号の出力を行う。演算処理部では、記憶部に記憶されたプログラム等のソフトウェアを演算処理部が読み出して実行することにより、端末又はサーバの持つ機能を発揮するための処理が行われる。
【0022】
〔携帯情報端末5の構成〕
携帯情報端末5は、カメラ51、入力部52及び表示出力部53としてのタッチ式パネル、並びに、記憶装置54を一体的に備えた携帯型の情報端末である。
【0023】
カメラ51は、例えば、CCDカメラなどのデジタルカメラであって、被写体を撮像してそのデジタル画像を得ることができる。作業者は、携帯情報端末5を操作して、カメラ51でフィールド機器6の指示計61や識別情報保持体62を撮像する。
【0024】
この携帯情報端末5では、タッチ式パネルに入力部52及び表示出力部53としての機能を併せ備えている。但し、携帯情報端末5に、入力部52と表示出力部53とが独立して設けられていてもよい。
【0025】
記憶装置54には、携帯情報端末5で取得した指示値を記憶する指示値記憶部541や、携帯情報端末5で取得した撮像画像を記憶する画像記憶部542などが設けられている。記憶装置54は、携帯情報端末5の本体から着脱可能な記憶媒体であってもよい。
【0026】
携帯情報端末5は、更に、識別情報取得部55、認識設定情報取得部56、指示値読取部57、検針作業支援部58などの機能部を備えている。携帯情報端末5は、携帯情報端末5の演算処理部が予めインストールされたプログラムを実行することにより、上記機能部として処理を行う。
【0027】
識別情報取得部55は、フィールド機器6に設けられた識別情報保持体62から識別情報を読み出して取得する。識別情報取得部55は、識別情報保持体62と対応しており、識別情報保持体62の持つ識別情報を読み取るリーダーである。
【0028】
認識設定情報取得部56は、識別情報取得部55が取得した識別情報に基づいて、当該識別情報と対応する指示値認識設定情報を指示値認識設定データベース4から読み出して取得する。
【0029】
指示値読取部57は、カメラ51で撮像したフィールド機器6の指示計61の撮像画像を取得し、指示値認識設定情報を利用して撮像画像を画像処理することにより、指示計61の指示値を読み取る。指示値読取部57は、デジタル表示式及びアナログ表示式の指示計61の指示値を読み取ることができる。なお、指示計61のデジタル画像から、その指示値を読み出す手法(プログラム)は公知であり、公知の技術に基づいて指示値読取部57を構成することができる。
【0030】
検針作業支援部58は、保守管理作業者の検針作業を支援するために、携帯情報端末5の表示出力部53に検針作業支援画面71(図3、参照)を表示させる。検針作業支援画面71には、計画された検針箇所と、巡回ルートとが示されたプラントのマップが含まれている。検針箇所のうち、指示値記憶部541へ指示値が記憶されたもの(即ち、指示値の取得が済んだもの)は第1の表示で示され、余が第2の表示で示されている。例えば、青と赤のように、第1の表示と第2の表示では表示色が異なっていてよい。また、例えば、四角と丸のように、第1の表示と第2の表示では表示形が異なっていてよい。
【0031】
〔指示値認識設定データベース4〕
指示値認識設定データベース4は、携帯情報端末5が情報を読み出し可能に接続された記憶装置である。プラントに無線通信可能な環境が整っている場合は、携帯情報端末5は指示値認識設定データベース4と情報の送受信を可能に無線で接続されていてよい。また、プラントに通信環境が整っていない場合には、携帯情報端末5と指示値認識設定データベース4とがインターフェースを介して直接的に、又は、情報の送受信を可能に有線で接続されていてもよい。
【0032】
指示値認識設定データベース4には、携帯情報端末5の指示値読取部57が、指示計61の撮像画像から指示値を読み取るために利用する指示値認識設定情報が、フィールド機器6の識別情報に関連付けられて記憶されている。指示値認識設定情報には、指示計61の仕様情報と、指示計61の撮像画像に対する画像補正情報とが、少なくとも含まれている。更に、指示値認識設定情報には、指示計61の指示値の管理値(正常値の範囲)情報なども、含まれていてもよい。
【0033】
指示計61の仕様情報には、アナログ表示式・デジタル表示式の表示方式、アナログ表示式のときは指示計61の型、目盛領域の色、及び、目盛領域の終始の値などのうち少なくとも1つが含まれていてよい。また、指示計61の撮像画像に対する画像補正情報には、撮影角度による歪み、距離による大きさの違い、照明などの外乱などのうち少なくとも1つを、画像処理で補正するための情報が含まれていてよい。画像補正情報は、指示計61の設置状況に起因するので、その指示計61に固有の情報となり得る。
【0034】
〔プラントサーバ2の構成〕
プラントサーバ2は、プラントごとに設けられており、プラントの運転に関する情報、具体的には、プラントのフィールド機器6の仕様や運転状態に関する情報を扱う。プラントサーバ2は各プラントに設置されてもよいし、複数のプラントサーバ2が1又は複数の拠点に集約して設置されてもよい。プラントサーバ2には、プラントが備えるフィールド機器6の仕様情報を記憶した機器仕様データベース21、フィールド機器6の点検記録情報が記憶される点検記録データベース22が接続されている。更に、プラントサーバ2には、携帯情報端末5の指示値記憶部541に記憶された指示値を取得して、フィールド機器6の点検記録情報を作成する点検記録作成部23が設けられている。点検記録作成部23で作成された点検記録情報は、点検記録データベース22に記憶される。
【0035】
〔監視サーバ3の構成〕
監視サーバ3は、複数のプラントの運転を監視する。監視サーバ3はプラントに設置されていてもよいし、プラントから離れて設置されていてもよい。監視サーバ3へは、プラントサーバ2から定期的に点検記録データベース22に記録されている点検記録情報が送信される。但し、監視サーバ3が、プラントサーバ2を介して機器仕様データベース21や点検記録データベース22に記憶されている情報を定期的に読み出してもよい。
【0036】
監視サーバ3は、取得した点検記録情報をモデルデータや予め記憶された閾値等と比較することにより、プラントの運転状態の異常を検出する運転監視部31を備えている。更に、監視サーバ3は、プラントの運転状態の異常が見つかったときに、不具合発生時の点検記録情報を解析したり、不具合発生の原因を推定したりする機能を備えていてもよい。
【0037】
〔フィールドデータ収集処理の流れ〕
ここで、上記構成のフィールドデータ収集システム1を用いた、フィールドデータ収集処理の流れを説明する。図2は、携帯情報端末5のフィールドデータ収集処理の流れ図である。
【0038】
図2に示すように、携帯情報端末5は、フィールドデータ収集にあたり、先ず、携帯情報端末5の表示出力部53に、検針作業支援画面71を表示する(ステップS1)。例えば、図3に示すように、検針作業支援画面71には、複数の検針箇所及び巡回ルートが示されたプラントのマップと、次の検針箇所に係る情報が示されている。作業者は、巡回ルートに沿って、次の検針箇所に移動する。
【0039】
検針箇所には、フィールド機器6の指示計61と、識別情報保持体62とがある。作業者の操作により、携帯情報端末5は、カメラ51で識別情報保持体62を撮像する(ステップS2)。なお、この例では、識別情報保持体62は2次元バーコードである。携帯情報端末5は、識別情報保持体62の撮像画像を取得し、これを画像処理することにより、識別情報保持体62が保持する識別情報を読み取る(ステップS3)。
【0040】
携帯情報端末5は、読み取った識別情報に基づいて、その識別情報と関連付けられた指示値認識設定情報を指示値認識設定データベース4から読み出す(ステップS4)。
【0041】
続いて、作業者の操作により、携帯情報端末5は、カメラ51で指示計61を撮像する(ステップS5)。ここで、携帯情報端末5の表示出力部53に、読み出した指示値認識設定情報に含まれる指示計61の表示形式や型に対応して、撮影ガイド画面72が表示されてもよい。例えば、図4に示すように、撮影ガイド画面72には、被写体が映し出される枠内に、指示計61の型に対応したガイドが表示されていてよい。
【0042】
携帯情報端末5は、指示計61の撮像画像を取得し、画像記憶部542に記憶する(ステップS6)。また、携帯情報端末5は、取得した指示計61の撮像画像を画像処理することにより、指示計61の指示値を読み取る(ステップS7)。ここで、携帯情報端末5は、読み出した指示値認識設定情報を利用する。
【0043】
指示計61がデジタル表示式の場合は、携帯情報端末5の指示値読取部57は、例えば、撮像画像から表示盤の領域を閾値処理によって切り出し、撮影角度による歪みや距離による大きさの違いや照明などの外乱を補正により修正し、表示盤の領域から数字を認識し、その数字を指示値とする。
【0044】
アナログ表示式の指示計61には、単針の円型メータ、単針の扇形メータ、複数の指針を有する多針メータ、レベルゲージなどの直線型メータなどの複数の型がある。携帯情報端末5の指示値読取部57は、指示計61がアナログ表示式の場合は、例えば、指示計61の型に基づいて、撮像画像から表示盤の領域を閾値処理によって切り出し、撮影角度による歪みや距離による大きさの違いや照明などの外乱を補正により修正し、表示盤の目盛領域・数字領域・指針を認識し、目盛領域の終始の値及び指針の位置から指示値を算出する。
【0045】
携帯情報端末5は、読み取った指示値を含む、読取結果画面73を表示出力部53に出力する(ステップS8)。例えば、図5に示すように、読取結果画面73には、読み取った指示値を修正するか承認するかの入力を作業者に促す入力部52と、指示計61の撮像画像とが表示されていてよい。作業者は、読み取った指示値が、目視で認識した値と合致していれば承認を入力し、合致していなければ修正を入力する。修正が入力されれば(ステップS9でYES)、携帯情報端末5は、指示値を手入力するかどうかを作業者に問い合わせる画面を表示出力部53に出力する。作業者が、指示値を手入力しない場合は(ステップS14でNO)、携帯情報端末5は、指示計61の撮像処理(ステップS5)から処理をやり直す。一方、作業者が指示値を手入力する場合は(ステップS14でYES)、携帯情報端末5は、表示出力部53に指示値入力画面を出力させ、作業者が入力部52を介して入力した入力値を取得する(ステップS15)。
【0046】
承認が入力されたとき(ステップS9でNO)、及び、作業者により指示値が手入力されたとき、携帯情報端末5は、読み取った又は取得した指示値を識別情報及び時刻と関連づけて指示値記憶部541に記憶する(ステップS10)。そして、携帯情報端末5は、更新された検針作業支援画面71を表示出力部53に出力し(ステップS11)、次の検針箇所を作業者に示す。
【0047】
以上の処理が、各検針箇所で行われる。プラントの計画された全ての検針箇所で処理が終わると(ステップS12でYES)、作業者は、携帯情報端末5とプラントサーバ2とが通信可能な位置まで、携帯情報端末5を移動させる。なお、携帯情報端末5に接続された記憶装置54が取り外されて、プラントサーバ2に接続されてもよい。そして、携帯情報端末5は、指示値記憶部541に記憶された指示値情報をプラントサーバ2へアップロードする(ステップS13)。ここで、指示値情報とともに、画像記憶部542の画像情報も、携帯情報端末5からプラントサーバ2へアップロードされてよい。
【0048】
指示値情報を取得したプラントサーバ2は、指示値情報からフィールド機器6の点検記録情報を作成するか、又は、既存の点検記録情報に追記する。点検記録情報は、例えば、フィールド機器6又は指示計61ごとに、計測した指示値が時系列に並べられた情報であってよい。プラントサーバ2は、生成した、又は、追記した点検記録情報を、点検記録データベース22に記憶する。
【0049】
点検記録データベース22に記憶された点検記録情報は、定期的に(例えば、24時間ごとに)、プラントサーバ2から監視サーバ3へ送信される。
【0050】
監視サーバ3の運転監視部31では、取得した点検記録情報を解析し、プラントの運転状態の異常を検出する。また、運転監視部31は、併せて、プラントの将来の運転状態を予測してもよい。運転監視部31の処理によって、プラントの運転状態の異常が見つかった又は予測されたときには、監視サーバ3からプラントサーバ2へ、警告又は警報が出力される。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態のフィールドデータ収集システム1は、プラントに設けられたフィールド機器6に固有の識別情報を保持し、当該フィールド機器6又はその近傍に設けられた識別情報保持体62と、フィールド機器6の指示計61の仕様情報と指示計61の撮像画像に対する画像補正情報とを含む指示値認識設定情報を識別情報に関連付けて記憶した指示値認識設定データベース4と、フィールド機器6の点検の際に作業者が用いる点検用の携帯情報端末5とを備えている。そして、携帯情報端末5が、識別情報保持体62から識別情報を読み取る識別情報取得部55と、読み取った識別情報に基づいて、指示値認識設定データベース4から識別情報に関連付けられた指示値認識設定情報を読み出す認識設定情報取得部56と、フィールド機器6の指示計61を撮像するカメラ51と、指示値認識設定情報を利用して、取得したカメラ51の撮像画像から指示計61の指示値を読み取る指示値読取部57と、読み取った指示値を表示出力する表示出力部53と、読み取った指示値を識別情報に関連付けて記憶する指示値記憶部541とを有することを特徴としている。
【0052】
上記フィールドデータ収集システム1によれば、携帯情報端末5が指示計61の指示値の読み取りと記憶とを行う。作業者は、指示計61の指示値を読み取ったり、記録のために指示値を手入力したりすることがない。よって、作業者による指示値の読み取り間違いや、携帯情報端末への誤入力などの従来の課題が解消される。
【0053】
また、携帯情報端末5が備えるカメラ51によって指示計61の撮像画像を得るので、各指示計61にそれを撮像する固定カメラを備える場合と比較して、システムの導入コストを削減することができる。
【0054】
また、データ送信機能のない指示計61においても、デジタル化された指示値を自動的に取得することができるので、各指示計61にデータ送信機能を備える場合と比較して、システムの導入コストを削減することができる。
【0055】
更に、携帯情報端末5が指示計61の撮像画像から指示値認識設定情報を取得し、それを指示計61の撮像画像から指示値を読み取る処理に利用するので、指示値の読取精度が向上し、また、作業者が画像を補正する作業が発生しない。よって、作業者の技量に拘わらず、指示計61の検針作業を正確且つ速やかに行うことができる。
【0056】
そして、携帯情報端末5がスタンドアロンで各指示計61の指示値(フィールドデータ)の収集を行うことができるので、電波の届きにくいプラント内においても、フィールドデータ収集作業を行うことができる。
【0057】
また、上記実施形態に係るフィールドデータ収集システム1は、携帯情報端末5と通信可能に接続されたプラントサーバ2を備えている。そして、プラントサーバ2が、指示値記憶部541に記憶された情報を携帯情報端末5から取得して、フィールド機器6の点検記録情報を作成する点検記録作成部23と、生成した点検記録情報を記憶する点検記録データベース22とを有している。
【0058】
このように、携帯情報端末5で収集されたフィールドデータがプラントサーバ2に集められることによって、収集されたフィールドデータを一元的に管理したり、フィールドデータを二次的利用したりすることが可能となる。
【0059】
なお、上記実施形態ではフィールドデータ収集システム1に1つの携帯情報端末5を備えているが、フィールドデータ収集システム1に複数の携帯情報端末5が備えられていてよい。このように、複数の携帯情報端末5で平行して各指示計61の指示値(フィールドデータ)を収集することで、検針作業に要する時間を短縮することができる。
【0060】
また、上記実施形態に係るフィールドデータ収集システム1は、携帯情報端末5が、プラント内の複数の検針箇所のうち、指示値記憶部541への指示値への記憶があるものが第1の表示で示され、余が第2の表示で示された、検針作業支援画面71を表示出力部53に表示出力する検針作業支援部58を、更に有している。
【0061】
このように、携帯情報端末5の表示出力部53に検針作業支援画面71が表示されることによって、作業者は計画された順序で検針作業を行うことができ、作業者が介在することによる読み間違いやごまかしを排除することができる。また、検針作業支援画面71には、指示値記憶部541への指示値への記憶があるもの(即ち、指示値の読取処理を終えたもの)とそうでないものとが区別して表示されるので、検針箇所の見落としを防止することができる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記フィールドデータ収集システム1の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0063】
例えば、上記実施形態において、フィールドデータ収集システム1は通信環境の整っていないプラントに適用されているが、通信環境の整ったプラントにフィールドデータ収集システム1を適用させることもできる。この場合、携帯情報端末5は、指示値記憶部541に記憶した指示値情報を纏めてプラントサーバ2へアップロードするのではなく、指示値情報を取得するたびにプラントサーバ2へアップロードしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 :フィールドデータ収集システム
2 :プラントサーバ
3 :監視サーバ
4 :指示値認識設定データベース
5 :携帯情報端末
6 :フィールド機器
10 :通信ネットワーク
21 :機器仕様データベース
22 :点検記録データベース
23 :点検記録作成部
31 :運転監視部
51 :カメラ
52 :入力部
53 :表示出力部
54 :記憶部
541 :指示値記憶部
542 :画像記憶部
55 :識別情報取得部
56 :認識設定情報取得部
57 :指示値読取部
58 :検針作業支援部
61 :指示計
62 :識別情報保持体
図1
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図3
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図5