(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875862
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】補修材料及び補修方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20210517BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20210517BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20210517BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20210517BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20210517BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20210517BHJP
C04B 111/72 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B22/14 A
C04B22/10
C04B24/02
E04G23/02 C
C04B111:72
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-2277(P2017-2277)
(22)【出願日】2017年1月11日
(65)【公開番号】特開2018-111619(P2018-111619A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】荒木 昭俊
(72)【発明者】
【氏名】真下 昌章
(72)【発明者】
【氏名】岡元 直征
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−280844(JP,A)
【文献】
特開平11−130562(JP,A)
【文献】
特開2005−314140(JP,A)
【文献】
特開2007−261853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00−32/02,
C04B40/00−40/06,
C04B103/00−111/94
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーン比表面積が5000cm2/g以上の微粉セメント、酸化物換算でSiO2を3.0質量%以上含有するカルシウムアルミノシリケート、セッコウ及びアルコール類を含有し、
カルシウムアルミノシリケートの使用量が、微粉セメント100質量部に対して5〜50質量部であり、
セッコウの使用量が、カルシウムアルミノシリケート100質量部に対して50〜250質量部であり、
アルコール類の使用量が、微粉セメント、カルシウムアルミノシリケート及びセッコウの合計100質量部に対して、20〜50質量部である補修材料。
【請求項2】
カルシウムアルミノシリケートのSiO2含有量が酸化物換算で3.0〜30質量%である請求項1記載の補修材料。
【請求項3】
カルシウムアルミノシリケートのCaO/Al2O3モル比が1.2〜2.5である請求項1又は2記載の補修材料。
【請求項4】
アルコール類が、炭素数2〜3のアルキル基を有する1価アルコール類である請求項1〜3のいずれか1項記載の補修材料。
【請求項5】
更に、脱水剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の補修材料。
【請求項6】
脱水剤が無水硫酸ナトリウムと無水炭酸カリウムからなる群の1種以上である請求項5記載の補修材料。
【請求項7】
脱水剤の使用量が、アルコール類100質量部に対して、0.2〜5質量部である請求項5又は6項記載の補修材料。
【請求項8】
液状である請求項1〜7のいずれか1項記載の補修材料。
【請求項9】
20℃での粘度が20〜30Pa・sであり、かつ、液状である請求項1〜7のいずれか1項記載の補修材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の補修材料をコンクリート躯体面に塗布した後に、水を噴霧する補修方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の補修材料をコンクリート躯体面に充填した後に、水を噴霧する補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修材料及び補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物のあばたやひび割れを補修する方法は、セメント系材料や樹脂系材料がよく用いられている。セメント系材料の場合は、水や粉体を計量する作業と練り混ぜる作業が必要となる。樹脂系材料の場合は2液混合タイプの常温硬化型の樹脂を用いる場合が多い。2液混合タイプの常温硬化型の樹脂を用いてひび割れを補修する場合は、2液をそれぞれ計量・混合し、刷毛やローラーを用いて塗布し、ひび割れに樹脂を含浸する方法や、シリンジ等の注入治具をひび割れに沿って配置し、ひび割れ開口部分をシールして低圧で注入する方法等が行われている。このような方法では、計量や練混ぜ作業、注入治具のセット等が必要であり簡便性に欠けていた。特に、補修対象箇所が少ない場合、大量に材料を余らせる場合もあり経済性に欠ける面もあった。
【0003】
液状のセメント系材料を用いた技術について説明する。コンクリート亀裂部の補修方法としては、超速硬セメントをコンクリート亀裂内部に粉体のまま擦り込み、そこに水をしみ込ませて硬化させる方法が知られている(特許文献1)。この方法では、計量や混合作業が不要であるけれども、粉体を亀裂部に擦り込むため、粉塵が発生し、亀裂内部への充填性も不充分となりやすいという課題がある。
【0004】
可溶性アルミを含有してなる粉体と液体の有機化合物を混合したペースト状の急硬材が知られている(特許文献2)。特許文献2は、炭素数4〜6の1価アルコールを用いることが記載されている。特許文献2の可溶性アルミは、SiO
2含有量が酸化物換算で最大2.8質量%であり、本発明とは異なる。
【0005】
ポルトランドセメント及び/又は混合セメントとカルシウムアルミネートを含む粒子間隙が45〜65容積%の混合粒子と、溶解度パラメーターが9.0以上の有機溶媒とを含有し、20℃で粘度が20Pa・s以下である流体状硬化材が知られている。この流体状硬化材は、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、炭素数が2〜3の1価アルコールを使用している。本発明は、特定のカルシウムアルミノシリケートと、ポルトランドセメントよりも比表面積が大きい微粉セメントとを、使用するものである。微粉セメントについて特許文献3に記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−130562号公報
【特許文献2】特許第3192710号公報
【特許文献3】特開2005−314140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば、硬化性、充填性、貯蔵安定性に優れた補修材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、ブレーン比表面積が5000cm
2/g以上の微粉セメント、酸化物換算でSiO
2を3.0質量%以上含有するカルシウムアルミノシリケート、セッコウ及びアルコール類を含有する補修材料であり、カルシウムアルミノシリケートのSiO
2含有量が酸化物換算で3.0〜30質量%である該補修材料であり、カルシウムアルミノシリケートのCaO/Al
2O
3モル比が1.2〜2.5である該補修材料であり、カルシウムアルミノシリケートの使用量が、微粉セメント100質量部に対して5〜50質量部である該補修材料であり、セッコウの使用量が、カルシウムアルミノシリケート100質量部に対して50〜250質量部である該補修材料であり、アルコール類が、炭素数2〜3のアルキル基を有する1価アルコール類である該補修材料であり、アルコール類の使用量が、微粉セメント、カルシウムアルミノシリケート及びセッコウの合計100質量部に対して、20〜50質量部である該補修材料であり、更に、脱水剤を含有する該補修材料であり、脱水剤が無水硫酸ナトリウムと無水炭酸カリウムからなる群の1種以上である該補修材料であり、脱水剤の使用量が、アルコール類100質量部に対して、0.2〜5質量部である該補修材料であり、液状である該補修材料であり、20℃での粘度が20〜30Pa・sであり、かつ、液状である該補修材料であり、該補修材料をコンクリート躯体面に塗布した後に、水を噴霧する補修方法であり、該補修材料をコンクリート躯体面に充填した後に、水を噴霧する補修方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、例えば、硬化性、充填性、貯蔵安定性に優れた補修材料及び補修方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の、ブレーン比表面積で5000cm
2/g以上の微粉セメント(以下セメントということもある)としては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントを粒度調整したものや、これら微粉セメントに、粒度調整された高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合微粉セメント等が挙げられる。これらの1種以上が使用できる。微粉セメントは、ブレーン比表面積で12000cm
2/g以下が好ましい。
【0011】
本発明の、酸化物換算でSiO
2を3.0質量%以上含有するカルシウムアルミノシリケートとは(以下、カルシウムアルミノシリケートと記述する。)、CaO原料、Al
2O
3原料、SiO
2原料を混合したものをキルンで焼成したり、電気炉等で溶融したり、等の熱処理をして得られるカルシウムアルミノシリケートであり、SiO
2の含有量が3.0質量%以上の範囲を示す。カルシウムアルミノシリケートは、その他の成分として、ナトリウム、カリウム及びリチウム等のアルカリ金属塩を一部固溶させてもよい。カルシウムアルミノシリケートの中では、反応活性の点で、非晶質が好ましい。カルシウムアルミノシリケートの粒度は、ブレーン値で5000cm
2/g以上が好ましい。5000cm
2/g未満ではクラックへの充填性が低下する可能性がある。カルシウムアルミノシリケート中のSiO
2含有量は3.0〜30質量%が好ましい。3.0質量%未満では、水和活性が高くなりすぎて、適度な硬化スピードを得ることができず、クラックへの充填性や貯蔵安定性が低下し、30質量%を超えると、水和活性が低くなり、硬化性が悪くなる可能性がある。カルシウムアルミノシリケートのCaO/Al
2O
3モル比は、1.2〜2.5が好ましく、1.3〜2.0がより好ましい。1.2未満では硬化性が得られない可能性があり、2.5を超えると充填性が得られない可能性がある。
【0012】
カルシウムアルミノシリケートの使用量は、微粉セメント100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。5質量部未満では硬化性が得られない可能性があり、50質量部を超えると充填性が得られない可能性がある。
【0013】
本発明のセッコウは、カルシウムアルミノシリケートと併用することにより、初期強度及び長期強度を向上させることができる。セッコウの種類としては、無水セッコウ、半水セッコウ、二水セッコウ等が挙げられ、工場で副生するセッコウや天然に産出するセッコウが使用できる。これらの中では、強度発現性の点で、無水セッコウが好ましい。セッコウの粒度は、ブレーン値で4000cm
2/g以上が好ましい。4000cm
2/g未満ではクラックへの充填性が低下する可能性がある。セッコウの粒度は、ブレーン値で10000cm
2/g以下が好ましい。
【0014】
セッコウの使用量は、カルシウムアルミノシリケート100質量部に対して、50〜250質量部が好ましく、100〜200質量部がより好ましい。50質量部未満では十分な強度発現効果が得られない可能性があり、250質量部を超えると強度発現性が頭打ちとなる可能性がある。カルシウムアルミノシリケートとセッコウの混合物の使用量は、セメント100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜70質量部がより好ましい。10質量部未満では硬化性が得られない可能性があり、100質量部を超えると、貯蔵安定性が低下する可能性がある。
【0015】
本発明のアルコール類(以下、アルコール類と記述する。)は、液状化するための水溶性有機溶媒である。アルコール類は、液体が好ましい。アルコール類の中では、炭素数2〜3のアルキル基を有する1価アルコール類が好ましい。例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが挙げられる。これら1種以上のアルコール類を混合してもよい。より硬化を促進する必要がある場合は、エタノールアミン類を貯蔵安定性に支障のない範囲で併用してもよい。これらの中では、エタノール、イソプロピルアルコールからなる群の1種以上が好ましい。
【0016】
アルコール類の使用量は、微粉セメント、カルシウムアルミノシリケート及びセッコウの合計100質量部に対して、20〜50質量部が好ましい。20質量部未満では適度な充填性や液状状態を得ることが難しい可能性があり、50質量部を超えると塗布したときの有効粉体量が少なくなり、十分な充填性を確保できない可能性がある。
【0017】
本発明の脱水剤は、アルコール類に含まれる水分や外気から溶け込む水分を脱水するために使用する。脱水剤としては、モレキュラーシーブ、無水硫酸ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、活性無水硫酸カルシウム、無水炭酸カリウム、シリカゲル等が挙げられる。これらの中では、貯蔵安定性が大きく、水を噴霧後の硬化促進作用を示す点で、無水硫酸ナトリウムと無水炭酸カリウムからなる群の1種以上が好ましい。
【0018】
脱水剤の使用量は、アルコール類100質量部に対して、0.2〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。0.2質量部未満では、十分な脱水効果が期待できず、貯蔵安定性が小さい場合があり、5質量部を超えると効果が頭打ちになる可能性がある。
【0019】
本発明の補修材料には、性能に悪影響を及ぼさない範囲で、界面活性作用を示す薬剤、ケイ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、ポリマーディスパージョン、増粘剤、撥水剤等を併用することができる。
【0020】
本発明の補修材料は、液状補修材料であることが好ましい。本発明の液状補修材料の粘度は20℃で500mPa・s以上の範囲に調整することが好ましく、20〜30Pa・sの範囲に調整することがより好ましい。粘度が500mPa・s未満では、アルコール類の量が多すぎて、粉体の濃度が小さくなり、塗布した時の有効粉体量が減少し、十分な充填を行えない可能性がある。30Pa・sを超えると充填性が低下する可能性がある。
【0021】
本発明の液状補修材料の練混ぜ方法は、特に制限するものではないが、例えば、粉体用ミキサーで、微粉セメント、カルシウムアルミノシリケート、セッコウ、必要に応じて脱水剤等を所定量混合し、得られた混合物に、アルコール類を加え、モルタル混練用やコンクリート混練用のミキサーで混合する方法が挙げられる。モルタル混練用やコンクリート混練用のミキサーとしては、ホバートミキサーやパン型ミキサー等が挙げられる。
【0022】
本発明の液状補修材料を保管する容器は、特に限定するものではないが、ポリビン、ガラスビン、缶、チューブ、ポリ袋、コーキングガンで押し出す容器等が挙げられ、状況に合った形状の容器を使用すればよい。保管中に粉体部分が沈降するような液状補修材料である場合、ケチャップ等を入れる小径ノズル付きのプラスチック容器で液状補修材料を保管すれば、使用する前に容器を振ることにより液状補修材料が混合し、使用できる。
【0023】
本発明の液状補修材料を用いたあばたやひび割れの補修方法としては、液状補修材料をコンクリート躯体面の補修箇所に塗布又は充填し、その後、保護手袋を装着した指であばたやひび割れに充填する方法等が挙げられる。アルコール類はすぐに揮発し、乾燥するので、その後、充填箇所に刷毛や噴霧器を用いて水を供給することにより、充填された粉体を硬化させて補修箇所を補修する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
表1に記載する液状補修材料を調整し、硬化性、ひび割れ充填性、粘度、貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
(使用材料)
普通ポルトランドセメント(C0):デンカ社製普通ポルトランド ブレーン比表面積3300cm
2/g
微粉セメント(C1):デンカ社製普通ポルトランドセメントを分級し粒度調整したもの。ブレーン比表面積5100cm
2/g
微粉セメント(C2):デンカ社製普通ポルトランドセメントを分級し粒度調整したもの。ブレーン比表面積8200cm
2/g
微粉セメント(C3):デンカ社製普通ポルトランドセメントを分級し粒度調整したもの。ブレーン比表面積11600cm
2/g
微粉セメント(C4):微粉セメント(C2)100質量部とブレーン比表面積9200cm
2/gの高炉スラグ微粉末30質量部とを混合したもの
カルシウムアルミネート(CA):市販特級試薬のCaCO
3、Al
2O
3を所定割合になるように混合し、高周波炉を用いて約2000℃で加熱溶融し、水中で急冷し、粉砕、分級して調整したもの。SiO
2含有量0%、ブレーン比表面積6000cm
2/g、CaO/Al
2O
3モル比=1.7,非晶質
カルシウムアルミノシリケート(CAS1):市販特級試薬のSiO
2、CaCO
3、Al
2O
3を所定割合になるように混合し、高周波炉を用いて約2000℃で加熱溶融し、水中で急冷し、粉砕、分級して調整したもの。CaO/Al
2O
3モル比=1.7,SiO
2含有量3.3%、ブレーン比表面積5900cm
2/g、非晶質
カルシウムアルミノシリケート(CAS2):CAS1と同様に調整したもの。CaO/Al
2O
3モル比=1.7,SiO
2含有量10.5%、ブレーン比表面積5850cm
2/g、非晶質
カルシウムアルミノシリケート(CAS3):CAS1と同様に調整したもの。CaO/Al
2O
3モル比=1.7,SiO
2含有量20.6%、ブレーン比表面積6050cm
2/g、非晶質
カルシウムアルミノシリケート(CAS4):CAS1と同様に調整したもの。CaO/Al
2O
3モル比=1.7,SiO
2含有量29.7%、ブレーン比表面積5900cm
2/g、非晶質
カルシウムアルミノシリケート(CAS5):市販特級試薬のSiO
2、CaCO
3、Al
2O
3を所定割合になるように混合し、高周波炉を用いて約2000℃で加熱溶融し、水中で急冷し、粉砕、分級して調整したもの。CaO/Al
2O
3モル比=1.7,SiO
2含有量2.8%、ブレーン比表面積5900cm
2/g、非晶質
セッコウ(CS):天然無水セッコウ粉砕品、ブレーン比表面積5100cm
2/g、中国産
アルコール類(Et):市販エタノール、純度99.5%
脱水剤(D1):試薬特級、無水硫酸ナトリウム
脱水剤(D2):試薬特級、無水炭酸カリウム
【0027】
(試験方法)
各試験はいずれも20℃の環境下で実施した。
ブレーン比表面積:JIS R 5201に規定するブレーン空気透過装置を用いて測定した。
硬化性:モルタル平板表面に液状補修材料を縦40mm×横40mm×厚さ1mmになるように塗布し、アルコールを蒸発させて乾燥した後に、霧吹きで水を散布し湿らせた。散布後の状態を観察した。10分後に指で押してもへこまない場合は○、再度水で湿らしてから10分後にへこまない場合は△、更に60分経過後にへこむ場合であれば×とした。
ひび割れ充填性:横10cm縦10cm×厚み10cmのコンクリート硬化体に幅0.2mm×深さ30mmの模擬ひび割れを作製し、液状補修材料を模擬ひび割れ部分に充填した。翌日、模擬ひび割れと直交する方向でコンクリートを切断し、切断面を観察することにより充填された深さを測定した。
粘度:B型粘度計を用いて測定した。
貯蔵安定性(安定性):液状補修材料をポリビンに加え、蓋を閉めた。蓋を閉めて4ヶ月経過後に粒状固形物が発生した場合を◎、3ヶ月経過後に粒状固形物が発生した場合を○、2ヶ月経過後に粒状固形物が発生した場合を△、1ヶ月経過後に粒状固形物が発生した場合を×とした。
【0028】
【表1】
【0029】
表1からわかるように、本発明の補修材料は、硬化性、ひび割れ充填性及び貯蔵安定性に優れている。カルシウムアルミノシリケートを用いることにより貯蔵安定性が向上する。脱水剤を併用することにより、貯蔵安定性を向上できる。
微粉セメントの代わりに普通ポルトランドセメントを使用した場合、ひび割れ充填性が小さい(実験No.1)。セッコウを使用しない場合、ひび割れ充填性が小さい(実験No.3)。カルシウムアルミノシリケートを使用しない場合、硬化性が小さい(実験No.4)。カルシウムアルミノシリケート中のSiO
2含有量が2.8%である場合、ひび割れ充填性や貯蔵安定性が小さい(実験No.17)。アルコールを使用しない場合、補修材料が液状化されず、試験評価できない(実験No.21)。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の補修材料、特に液状補修材料を用いることにより、コンクリート構造物やコンクリート製品の表面に発生した、あばたやひび割れやクラック等のひび割れ箇所を、計量や混練作業をすることなく、液状補修材料を塗布し、指でなぞるだけで、隙間に充填できる。本発明の補修材料は、簡便な補修方法を提案できる。本発明は、施工前の計量や混合作業を必要としない。本発明は、粉塵の発生を抑制でき、保管性に優れる。本発明の液状補修材料は、ひび割れ箇所に塗布又は充填し、水を噴霧することにより、硬化でき、少ない量で簡便に変状を補修できる。本発明は、粉末度を高くすることにより、ひび割れ箇所への充填性に優れる。本発明は、製造後2ヶ月経過しても、振り混ぜると施工に支障のない均一な分散液となり、安定した品質の液状補修材料を提供できる。本発明は、硬化性や貯蔵安定性に優れる補修材料を提供できる。