(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記指示部材は、投射光を出力する投射デバイスと、前記投射デバイスから出力される投射光を反射して前記光を放出する反射部材と、を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の機械式駐車場。
前記指示部材は、照射光を出力する光源デバイスと、前記指示領域の上方の空間に支持され、前記光源デバイスから出力される前記照射光に応じて前記光を放出する部材と、を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の機械式駐車場。
前記指示部材は、進入した車両を前記格納棚へ格納するための操作が行われたとき、前記光の放出を開始するように構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の機械式駐車場。
前記指示部材は、前記乗降室が閉じられてから予め設定された時間が経過したときに前記光の放出を停止するように構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の機械式駐車場。
前記指示部材が前記光を放出するとき、利用者に前記指示領域への待避を促す音声メッセージと映像メッセージの少なくとも一方を出力する装置を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の機械式駐車場。
【発明を実施するための形態】
【0011】
近年、駐車場の安全性向上のニーズが高まる中、本発明者は機械式駐車場について考察し、以下のような認識を得た。
機械式駐車場の乗降室に車両を進入させた後、万が一、誤って利用者が乗降室内に取り残されたままで駐車装置が作動し始めると、乗降室扉が閉まり、次には乗降室内で搬送機械や車両が旋回し昇降動作を開始する。このような状況に取り残された利用者は、搬送機械が動作し始めると、その搬送機械が迫ってくるような錯覚に襲われてパニックに陥る可能性がある。非常口や待避箇所の設置など様々な安全対策が施されている駐車場であっても、パニックに陥った利用者は、判断力や認識力が低下して、待避箇所までどのようにたどり着けばよいのか認識できないことも想定される。この場合、利用者はむしろ安全でない行動をとることも考えられる。このことから、本発明者は、誤って乗降室内に取り残された利用者が穏やかに行動できるようにする観点から、機械式駐車場に改善すべき課題があることを認識した。
【0012】
そこで、本発明者は、誘導路や待避箇所を明確に表示して利用者が容易に認識できるようにすることによって、利用者は穏やかに行動できることを見出した。例えば、誘導路や待避箇所の床、天井あるいは壁に、発光や反射などによって目印を浮かび上がるように表示することができる。一例として、床に埋め込み式の光源を設けること、天井に取付けたプロジェクタなどから光を投射すること、床に蛍光塗料などを塗布することなどが考えられる。また、待避箇所には、例えば柵、のれんあるいはカーテンなどを用いて立体的に表示することができる。利用者は、この立体的に表示される空間が安全であることを感覚的に感じ取れるから、パニックに陥る可能性を低くすることができる。
実施の形態はこのような思索に基づいて案出されたもので、以下にその具体的な構成を説明する。
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
[実施の形態]
図1は、本実施の形態に係る機械式駐車場100の正面図である。実施の形態に係る機械式駐車場100は、乗降室12に進入した自動車などの車両20を格納棚14へ導入する。以下、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Z軸方向は水平な前後方向に対応し、Y軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向Z軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。
【0015】
機械式駐車場100は、地上に設けられた建物24の地下に地下3階まで設けられた、いわゆる地下式の機械式駐車場である。機械式駐車場100は、乗降室12と、パレット57と、格納棚14と、を備える。格納棚14は建物24の地下1階〜3階それぞれに設けられる駐車室である。
【0016】
機械式駐車場100は、パレットを用いたパレット式の駐車場である。このパレット式の機械式駐車場100は、後述する昇降装置を用いて車両20が搭載された状態のパレット57を昇降させる。機械式駐車場100は、後述する移載装置を使用してパレットを面方向に移動させたりする。これらの動作により、機械式駐車場100は格納棚14に車両20を駐車させるように構成される。なお、パレットを用いることは必須ではない。
【0017】
(乗降室)
乗降室12は、機械式駐車場100へ車両20を入れたり機械式駐車場100から車両20を取り出したりするために建物24内に設けられている。乗降室12は、建物24内において、例えば昇降路96の上端に設けられる。
【0018】
図2は乗降室12を示す平面図である。
図3は乗降室12を示す側面図である。
図4は乗降室12を示す背面図である。
図2では車両20の記載を省略している。乗降室12は、床12gと、天井12cと、前壁12fと、後壁12dと、第1側壁12pと、第2側壁12sと、乗降室扉16と、出入口12bと、指示領域38と、非常口12eと、映像表示装置50と、を備える。前壁12fと、後壁12dと、第1側壁12pと、第2側壁12sと、を総括するときは壁12wと表記する。
乗降室12は、床12gと天井12cの間において前壁12fと後壁12dと第1側壁12pと第2側壁12sとで画定された略直方体空間を囲む部屋である。前壁12fに形成された出入口12bには開閉可能な乗降室扉16が設けられる。格納動作するとき、乗降室12は乗降室扉16によって閉じられる。
【0019】
乗降室12の床12gには、乗降室12と昇降路とを連通するパレット開口26が設けられている。このパレット開口26の大きさは、パレット57がパレット開口26の周面と干渉することなく通過できるように、平面視でのそのパレットの大きさに十分な量のマージンを加えた大きさとされる。実施の形態のパレット開口26は、例えば略矩形状を有する。
【0020】
(指示領域)
指示領域38は、乗降室12に取り残された利用者が乗降室12内において退避することができる領域であって、後述する指示部材10によって指し示される領域である。特に、指示領域38は、乗降室12内において車両を格納する動作中であっても、利用者が安全に通行または待機することが可能な位置に設けられる。指示部材10は、乗降室12が閉じられた状態にて利用者が視認できる光43を放出する。指示部材10は光43を放出することで指示領域38を指し示す。指示領域38は指示部材10を用いた縁取りで区画されてもよい。指示領域38は、利用者が通行可能な退避通路42と利用者が待機可能な待機区域40とを含む。待機区域40および退避通路42は、例えば乗降室12の床12gに設けられる。指示部材10は、退避通路42と待機区域40とを指し示すように光43を放出する。指示部材10および光43については後述する。
【0021】
(退避通路)
退避通路42は、乗降室12の中において指示部材10を用いた縁取りで区画される通路である。乗降室12に取り残された利用者は退避通路42を安全に通行して待機区域40に退避することができる。退避通路42は利用者が立った状態で歩行できる程度の幅を有する。退避通路42の幅W1は、例えば500mm以上にしてもよい。この場合、利用者が容易に歩行できる。退避通路42の幅W1は、例えば900mm以上にしてもよい。この場合、車椅子利用者が通行できる。退避通路42の幅W1は、例えば2000mm以下にしてもよい。この場合、乗降室12をコンパクトにすることができる。
【0022】
退避通路42は、乗降室12において、進入した車両20を停止させる停止領域12hの周囲に配置されてもよい。退避通路42は、停止領域12hにおける車両20の幅方向(以下、単に幅方向という)の両側に設けられる第1通路42bと第2通路42cとを含んでもよい。退避通路42は、停止領域12hにおける車両20の前後方向(以下、単に前後方向という。)外側に設けられる第3通路42dを含んでもよい。第1通路42bおよび第2通路42cは、例えば前後方向に伸びる。第1通路42bと第2通路42cは、停止領域12hを挟んで実質的に平行に設けられてもよい。第3通路42dは、例えば第1通路と第2通路とを繋ぐように幅方向に伸びる。第3通路42dは停止領域12hの出入口12b側に配置されてもよい。退避通路42は、第1通路42bと待機区域40とを繋ぐ第4通路42eを含んでもよい。退避通路42は、第2通路42cと待機区域40とを繋ぐ第5通路42fを含んでもよい。
【0023】
実施の形態において、第1通路42bと第2通路42cはパレット開口26の縁に沿って、パレット開口26を挟むように設けられる。第1通路42bは、停止領域12hと乗降室12に設けられた非常口12eとの間に配置される。第2通路42cは、第1通路42bの非常口12eと反対側に配置される。取り残された利用者は、パレット開口26の近傍から、退避通路42を通って待機区域40に退避することができる。
【0024】
(待機区域)
待機区域40は、乗降室12の中において指示部材10を用いた縁取りで区画されるゾーンである。乗降室12に取り残された利用者は待機区域40内にて安全に待機することができる。
図4に示すように、待機区域40には、床12gから上方に伸びる略直方体形状の待機空間40sが設けられる。待機空間40sは、例えば利用者が立った状態で待機できる程度の幅と奥行きと高さとを有する。待機区域40は、例えば矩形状を有する。待機区域40の幅W2および奥行きD2は、例えば500mm以上にしてもよい。この場合、利用者が立った状態で容易に待機できる。幅W2および奥行きD2は、例えば900mm以上にしてもよい。この場合、車椅子利用者が待機できる。幅W2および奥行きD2は、例えば2000mm以下にしてもよい。
【0025】
図2に示すように、乗降室12の一方の壁である第1側壁12pには非常口12eが設けられている。待機区域40は、退避通路42と非常口12eが設けられる第1側壁12pとの間に設けられた第1区域40bを含む。特に、利用者の心理を落ち着かせる観点から、第1区域40bは、停止領域12hから離隔されて、非常口12eが設けられた第1側壁12pの近傍に設けられる。第1区域40bは、非常口12eの近傍に設けられてもよい。より具体的には、第1区域40bは第1通路42bの第1側壁12p側の位置に設けられている。退避通路42の非常口12eから遠い第2通路42c側に取り残された利用者の退避を容易にする観点から、待機区域40は、退避通路42の非常口12eが設けられる第1側壁12pと反対側に設けられる第2区域40cを含んでもよい。特に、第2区域40cは非常口12eから遠い側の第2通路42cの近傍に設けられている。
図2に示すように、第2区域40cは退避通路42の非常口を有しない第2側壁12sの近傍に設けられている。
【0026】
(指示部材)
図5は、指示領域38の配置を示す上面視の配置図である。指示部材10は、光を放出することによって指示領域38を指し示す部材である。指示部材10は、乗降室12が閉じられた状態にて利用者が視認できる光43を放出する。指示部材10が光43を放出することによって、利用者は、指示領域38を容易に認識することができる。指示部材10は、例えば乗降室12の床12g、天井12cおよび壁12wの少なくとも一つに設けられる。実施の形態では、指示部材10は、例えば退避通路42の非通路領域との境界近傍に退避通路42の伸びる方向に沿って複数配置される。実施の形態では、指示部材10は、例えば床12gの待機区域40が設けられる領域の縁に複数配置されてもよい。
【0027】
実施の形態の指示部材10は、発光部材10eと、反射部材10fと、垂下部材10mと、をそれぞれ複数含む。発光部材10eは、自ら発光することによって光43を放出する発光部材である。
図6は、発光部材10eの一例を示す斜視図である。
図6は、退避通路42を指し示す状態の発光部材10eの一例を示している。発光部材10eは、例えば発光ダイオードであるLED10kを内蔵し、通電されることで自ら光43を放出する。
図6に示すように、発光部材10eは、床12gに埋め込まれてもよい。
【0028】
(反射部)
反射部材10fは、投射デバイスから出力される光を反射して光43を放出する部材である。
図7は、反射部材10fの一例を示す斜視図である。
図7は、退避通路42を指し示す状態の反射部材10fを示している。実施の形態の反射部材10fは、投射デバイスである投射部10dから投射された投射光10hを反射して光43を放出する。光43を強調する観点から、反射部材10fは蛍光体を含んでもよい。投射部10dは光を出力する投射デバイスであり、光源に特別の制限はないが、例えば光源としてLEDを用いることができる。反射部材10fは、床12gの上面に設けられてもよい。投射部10dは、例えば天井12cに設けられる。
【0029】
発光部材10eと、反射部材10fと、垂下部材10mと、は必要に応じて配置されてもよい。実施の形態では、一例として、発光部材10eは第1通路42bと第2通路42cの縁に沿って予め設定されたピッチP1毎に床に取り付けられる。ピッチP1は利用者が指示領域38を認識できる程度の間隔に設定される。発光部材10eは待機区域40の縁に沿って床に取り付けられる。反射部材10fは、一例として、第3通路42dの縁に沿って予め設定されたピッチP2毎に床に取り付けられる。ピッチP2は利用者が指示領域38を認識できる程度の間隔に設定される。一例として、ピッチP1、P2は100mm〜300mmの範囲内に設定することができる。
【0030】
(垂下部材)
垂下部材10mは、指示領域38の上方の空間に支持され、光源デバイスから出力される光に応じて光43を放出する部材である。
図8は、垂下部材10mの一例を示す斜視図である。
図8は、待機区域40の上方の空間に設けられた状態の垂下部材10mを示している。実施の形態の垂下部材10mは、縦方向に伸びて、照射部10gから照射された照射光10jを反射または屈折して光43を放出する。具体的には、垂下部材10mは、待機区域40の第1区域40bの縁の鉛直上方に予め設定されたピッチP3毎に天井12cから吊下げられる。ピッチP3は利用者が指示領域を認識できる程度の間隔に設定される。一例として、ピッチP3は100mm〜300mmの範囲内に設定することができる。照射部10gは光を出力する光源デバイスであり、光源に特別の制限はないが、例えば光源としてLEDを用いることができる。照射部10gは、例えば天井12cに取りつけられる。
【0031】
垂下部材10mの素材に特別な制限はないが、例えば樹脂、布、紙、金属などの素材から形成されてもよい。垂下部材10mは、例えば透光性を有する材料から形成される。垂下部材10mは、天井10cに設けられた照射部10gから照射される照射光10jを透過または反射させることによって光43を放出する。垂下部材10mは、例えば待機区域40の境界の上方に上下に伸びる縦長の部材であってもよい。垂下部材10mの形状に特別な制限はなく、例えば帯状、ひも状あるいは簾状であってもよい。待機区域40の上方の空間を垂下部材10mで囲うことにより、利用者はその空間を安全な空間として容易に認識することができる。垂下部材10mに囲まれた空間に待機する利用者は、より高い安心感を得ることができる。
【0032】
指示部材10は、光43を常時放出するようにしてもよい。この場合、指示部材10の故障を早期に発見できる。実施の形態の指示部材10は、光源の交換までの寿命を長くする観点から、乗降室12が閉じられてから予め設定された時間T1が経過したときに光43の放出を停止するように構成されている。この時間T1は、利用者の待避時間を確保することを考慮して、例えば5分〜20分の範囲に設定してもよい。
【0033】
指示領域38の認識を容易にするという観点から、実施の形態の指示部材10は、予め設定された時間T2が経過するたびに間欠的に光43を放出するように構成されている。この時間T2は、利用者の識別の容易さを考慮して、例えば0.5秒〜2秒に設定してもよい。指示部材10は、光43の光量や色を時間の経過とともに変化させてもよい。指示部材10は、光43が一定の方向に流れるように、複数の発光部材10eを順次点滅するように構成されてもよい。
【0034】
図2を参照する。利用者に穏やかな行動を促すという観点から、機械式駐車場100は、指示部材10が光43を放出するとき、利用者に指示領域38への待避を促す音声メッセージと映像メッセージの少なくとも一方を出力する装置を設けてもよい。実施の形態の機械式駐車場100には、映像メッセージとともに音声メッセージを出力する映像表示装置50が設けられている。映像表示装置50は待機区域40の近傍において、例えば壁12wに取付けられてもよい。利用者は、音声メッセージの音源方向を覚知することで、待機区域40を容易に認識することができる。利用者は、映像メッセージによってどのように行動するべきかを容易に認識することができる。映像メッセージは静止画や動画を含んでもよい。
【0035】
次に、実施の形態の機械式駐車場100のその他の構成を説明する。
図1を参照する。機械式駐車場100は、移送機構55と、操作盤28と、制御装置30と、をさらに備える。移送機構55は、車両20を載せたパレット57を乗降室12と格納棚14との間で移送して格納または搬出する機構である。移送機構55は第1移載装置56と、第2移載装置58と、複数(例えば、2本または4本)のマスト90と、リフトフレーム88と、昇降装置94と、を含む。第2移載装置58は複数設けられる。1階〜3階の格納棚14はそれぞれ複数(例えば、10)の駐車スペースを含む。それら複数の駐車スペースは、平面視した場合に移載方向(図のX軸方向)に5行、移載方向と実質的に直交する交差方向(図のZ軸方向)に2列のマトリクス状に配列される。駐車スペースはパレットと共に車両20が駐車されうる格納棚内の一つの駐車領域(駐車の1単位)である。1階〜3階の格納棚14それぞれは、格納棚の床を画定するフレーム80を含む。それぞれのフレーム80には第2移載装置58が固定される。
【0036】
各マスト90は断面が略矩形の昇降路96の隅に設けられる支柱である。リフトフレーム88は、平面視で略矩形状に形成され、複数のマスト90に昇降自在に支持される。リフトフレーム88の上部には第1移載装置56が搭載される。昇降装置94は昇降路96に沿ってリフトフレーム88を昇降させる。第1移載装置56の上部にはパレットが搭載される。第1移載装置56は、移載方向にパレットを移動可能に構成される。パレット57はいずれも平板状の部材である。パレット57の車両20が搭載される上面すなわち車両20搭載面は略矩形である。パレット57は画一的な大きさを有する。
【0037】
図9は機械式駐車場100の構成の一例を示すブロック図である。
図9は実施の形態を説明する上で重要ではない要素の一部を省略して表示している。操作盤28は乗降室12の外側に設けられる。制御装置30は乗降室12の内側に設けられる。
図9に示すように、制御装置30には操作盤28が接続される。
【0038】
(操作盤)
次に操作盤28について説明する。操作盤28は、駐車場の利用者または駐車場の係員に対するユーザインタフェースとしての機能を有する。操作盤28は、操作部28cと、表示部28dと、を含む。操作部28cは、例えばタッチパネル(不図示)を介して一定の操作の入力を受け付けて制御装置30に送る。表示部28dは、制御装置30に制御されて一定の表示をなす。
【0039】
(制御装置)
次に制御装置30について説明する。
図9に示す制御装置30の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0040】
制御装置30は、操作結果取得部31と、移送制御部32と、表示制御部33と、乗降扉制御部34と、指示部材制御部35と、を含む。操作結果取得部31は、操作盤28の操作部28cの各操作部の操作に基づきその操作結果を取得する。移送制御部32は、乗降室12と格納棚14との間で車両20を移送して格納または搬出するように移送機構55を制御する。表示制御部33は、一定の表示をするように操作盤28の表示部28dを制御する。乗降扉制御部34は、乗降室12を開閉するように乗降室扉16を制御する。指示部材制御部35は、光43の放出を開始および停止させるように指示部材10を制御する。
【0041】
(動作)
次に、以上のように構成された機械式駐車場100の動作の一例について説明する。
図10は、機械式駐車場100の動作の一例を示すフローチャートである。
図10は、車両20の入庫の際における指示部材10の動作に関する処理S200を示している。まず、乗降室12に車両20を進入させ停止領域12hに停止させる(ステップS202)。ステップS202において、車両20の利用者は降車して乗降室12から退出する。この際、誤って利用者が乗降室に取り残される可能性がある。車両20を停止領域12hに停止させた利用者または係員は操作盤28を操作して車両を格納する操作を開始させる。このとき、制御装置30は、利用者または係員から格納動作開始の操作がされたか否かを判定する(ステップS204)。格納動作開始の操作がされていない場合(ステップS204のN)、制御装置30は処理をステップS204の先頭に戻す。
【0042】
格納動作開始の操作がされた場合(ステップS204のY)、制御装置30は光43の放出を開始するように指示部材10を制御する(ステップS206)。つまり、進入した車両20を格納棚14へ格納するための操作が行われたとき、指示部材10は、光43の放出を開始するように構成されている。光43の放出を開始したら、制御装置30は乗降室12を閉じるように乗降室扉16を動作させる(ステップS208)。ステップS208と相前後して、制御装置30は音声メッセージおよび映像メッセージを出力するように映像表示装置50を制御する(ステップS210、S212)。光43の放出を開始したら、制御装置30は時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS214)。時間T1が未経過の場合(ステップS214のN)、制御装置30は処理をステップS214の先頭に戻す。時間T1が経過した場合(ステップS214のY)、制御装置30は光43の放出を停止するように指示部材10を制御する(ステップS216)。光43の放出を停止したら処理S200は終了する。
【0043】
なお、この処理S200はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを削除したり、ステップの順序を変更したりすることも可能である。特に、格納動作開始の操作が行われた場合には、ステップS206〜S212の実行開始タイミングは、この例と異なる順序であってもよく、タイミングの一部またはすべてが同時であってもよい。
【0044】
次に、このように構成された実施の形態の機械式駐車場100の作用効果を説明する。
乗降室内に取り残された利用者が冷静に行動できることが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100は、乗降室12に進入した車両20を格納棚14へ格納する機械式駐車場であって、乗降室12に取り残された利用者が乗降室12内において退避することができる領域であって、指示部材10によって指し示される指示領域38を備え、指示部材10は、乗降室12が閉じられた状態にて利用者が視認できる光43を放出する。この構成によれば、乗降室12が閉じられても指示部材10がその指示領域38を指し示すから、利用者は指示領域38を容易に認識することができる。指示領域38を認識できない場合と比較して、利用者は指示領域38を認識することで安心感を得て冷静に行動することができる。利用者の安全でない行動を抑制することができる。
【0045】
指示部材は、退避箇所および退避箇所への経路を指し示すことが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示領域38は、利用者が通行可能な退避通路42と、利用者が待機可能な待機区域40と、を含み、指示部材10は、退避通路42と待機区域40とを指し示すように光43を放出する。この構成によれば、退避通路42と待機区域40とを指し示す光43を放出するから、乗降室12内が暗くても、利用者はこれらを短時間で認識して速やかに退避することができる。待機区域40に加えて退避通路42も指し示すので、待機区域40が離れた位置にある場合でも、利用者は落ち着いて退避を行うことができる。
【0046】
待機区域に移動した利用者は、短時間で非常口を見つけられることが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、乗降室12の一方の壁である第1側壁12pには非常口12eが設けられ、待機区域40は、退避通路42と第1側壁12pとの間に設けられる第1区域40bを含む。この構成によれば、第1区域40bは、非常口12eが設けられた第1側壁12pに近い位置に設けられているので、第1区域40bに退避した利用者は、非常口12eを迅速に見つけることができる。
【0047】
待機区域までの移動距離は短いことが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、待機区域40は、退避通路42の一方の壁である第1側壁12pと反対側に設けられる第2区域40cを含む。この構成によれば、非常口12eが設けられた側と反対側に第2区域40cが設けられているので、退避通路42の非常口12eから遠い側に残った利用者は、短距離の移動で容易に第2区域40cに退避することができる。利用者の退避経路の選択肢を増やすことができる。
【0048】
指示部材10は容易に識別できることが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示部材10は、発光することによって光43を放出する発光部材10eを含む。この構成によれば、自ら発光する発光部材10eを含むことにより、鮮明な光を放出することができ、指示部材10の識別性を高めることができる。発光部材10eを複数含むことによって、その一部が故障しても、残りの発光部材10eが光43を放出するので、ある程度の機能は発揮することができる。
【0049】
指示部材10は、複雑な形状の指示領域を指し示せることが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示部材10は、投射光10hを出力する投射デバイスである投射部10dと、投射部10dから出力される投射光10hを反射して光43を放出する反射部材10fと、を含む。この構成によれば、反射部材10fを待機区域40や退避通路42の形状に応じて配置することで、複雑な形状を容易に指し示すことができる。待機区域40や退避通路42を変更する際にも、配置を容易に変更することができる。反射部材10fは薄型化が容易であるため、駐車場の床の構造の制約を受けにくい。少数の投射部10dからの投射光10hによって、多数の反射部材10fから光43を放出することができるので、投射部10dの数を減らすことができ、メンテナンスを容易にすることができる。
【0050】
短時間で利用者の不安を軽減することが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示部材10は、照射光10jを出力する光源デバイスである照射部10gと、指示領域38の上方の空間に支持され、照射部10gから出力される照射光10jに応じて光43を放出する垂下部材10mと、を含む。この構成によれば、垂下部材10mによって指示領域38の上方の空間を立体的に指し示すことができる。立体的に指し示すことにより、利用者は、車両20を挟んで反対側に残っていても、より迅速に指示領域38を見つけることができるので、利用者の不安を短時間で軽減することができる。また、垂下部材10mで囲まれた空間は、感覚的に安心感が高く、利用者の心理をより落ち着かせることができる。
【0051】
利用者が指示領域38を見つけるまでの時間は短いことが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示部材10は、進入した車両20を格納棚14へ格納するための操作が行われたとき、光43の放出を開始するように構成される。この構成によれば、車両20を格納する動作が開始するときに、光43が放出されているので、乗降室12に残された利用者は、短時間で光43が指し示す指示領域38を見つけることができる。
【0052】
利用者が指示領域38を見つけるまでの時間はより短いことが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示部材10は、予め設定された時間が経過するたびに間欠的に光43を放出するように構成される。この構成によれば、光43が点滅することにより利用者の注意を引くことができるので、利用者は指示領域38をより短時間で見つけることができる。
【0053】
メンテナンスの負担は軽いことが望ましい。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示部材10は、乗降室12が閉じられてから予め設定された時間が経過したときに光43の放出を停止するように構成される。この構成によれば、光源の交換までの寿命を長くすることができ、メンテナンスの負担を軽減することができる。
【0054】
冷静さを失った利用者は、どのように行動するかを考えられなくなることがある。そこで、実施の形態の機械式駐車場100では、指示部材10が光43を放出するとき、利用者に指示領域38への待避を促す音声メッセージと映像メッセージの少なくとも一方を出力する映像表示装置50を備える。この構成によれば、利用者は、音声メッセージによって冷静さを取り戻し、映像メッセージによってどのように行動するかを容易に認識することができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0056】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0057】
(第1変形例)
実施の形態の説明では、機械式駐車場がパレットを用いたパレット式の駐車場である例について説明したがこれに限られない。機械式駐車場は例えば、スラットコンベア式などパレットを用いない駐車場であってもよく、櫛歯のすれ違いによって車両20をエレベータや格納棚に受け渡す方式であってもよい。
【0058】
(第2変形例)
実施の形態の説明では、車両20を入出庫する乗降室が共用される例について説明したがこれに限定されない。例えば、入庫用の乗降室と出庫用の乗降室とが別々に設けられてもよい。また、乗降室の入口と出口が出入口として共用される例について説明したがこれに限定されない。入口と出口とが別々に設けられてもよい。
【0059】
(第3変形例)
実施の形態の説明では、待機区域40が第1区域40bと第2区域40cとを含む例について説明したがこれに限定されない。例えば、待機区域40は第1区域40bと第2区域40cの一方のみを含むようにしてもよい。複数の区域を含む場合と比較して乗降室をコンパクトにすることができる。
【0060】
(第4変形例)
実施の形態の説明では、退避通路42に、第1通路42b、第2通路42c、第3通路42dの三つの形態の通路を含む例について説明したがこれに限定されない。例えば、退避通路42は、これらの三つの形態の通路のうちから一または二つの形態の通路を選択して含むようにしてもよい。すべての通路を含む場合と比較して乗降室をコンパクトにすることができる。
【0061】
(第5変形例)
実施の形態の説明では、指示部材10として、発光部材10e、反射部材10f、垂下部材10mの三つの形態の部材を用いる例について説明したがこれに限定されない。指示部材10として、これらの三つの形態の部材のうちから一または二つの形態の部材を選択して用いるようにしてもよい。
【0062】
(第6変形例)
実施の形態の説明では、投射部10dは、部分的に設けられた反射部材10fに投射光10hを出力する例について説明したがこれに限定されない。例えば、投射部10dは床面にパターンを投影して一定の模様を表示させるように構成してもよい。つまり、床面を反射部材として所定のパターンを投射することによって指示領域を指し示すようにしてもよい。床面に反射部材10fを設ける手間を省くことができる。
【0063】
上述の変形例それぞれは実施の形態と同様の作用効果を奏する。