(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
織物からなる所定幅のメディアが巻芯に巻き付けられたメディアロールから前記メディアを繰り出す繰り出し工程と、前記メディアロールから繰り出した前記メディアに印刷を行う印刷工程との間に、前記メディアロールから繰り出した前記メディアの拡幅を行う第1拡幅工程が設けられており、
前記印刷工程において前記メディアに対して前記印刷を行う際のカールの矯正方法であって、
前記第1拡幅工程では、
前記メディアロールの中心軸に平行な第1回転軸回りに回転する第1拡幅ローラの外周に、前記メディアロールから繰り出した前記メディアを張架させた状態で前記メディアの拡幅を行うと共に、
前記メディアは、カールしている側の面を、前記第1拡幅ローラの外周に張架させるものであり、
前記繰り出し工程と前記第1拡幅工程との間に、前記第1回転軸の軸方向から見た前記メディアの前記第1拡幅ローラの外周への進入角を第1の所定角度で保持する角度保持工程をさらに有しており、
前記角度保持工程により、前記第1拡幅ローラの外周に接触する前記メディアの面が表裏逆転しても、前記第1拡幅ローラの外周への進入角を前記第1の所定角度に保持することを特徴とするカールの矯正方法。
前記第1拡幅ローラと前記印刷部との間の前記メディアの搬送経路に設けられていると共に、前記メディアロールの中心軸に平行な第2回転軸回りに回転しながら、外周に張架させた前記メディアの拡幅を行う第2拡幅ローラと、
前記第1拡幅ローラと前記第2拡幅ローラとの間の前記メディアの搬送経路に設けられていると共に、前記メディアに張力を与えるテンションバーと、をさらに備え、
前記テンションバーは、前記第2回転軸に平行な第3回転軸回りに回転可能に設けられていると共に、前記第3回転軸の径方向外側に配置させた前記メディアとの当接部を、前記第3回転軸周りの周方向に変位可能とされており、
前記第2拡幅ローラにおいて前記メディアは、カールしている側の面を、前記第2拡幅ローラの外周に張架させており、
前記テンションバーは、前記当接部を前記メディアのカールしていない側の面に当接させて、前記第2回転軸の軸方向から見た前記メディアの前記第2拡幅ローラの外周への進入角を第2の所定角度で保持しており、
前記第2の所定角度は、前記第2拡幅ローラの外周と前記メディアとの接触面積が第2所定面積となる角度であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の印刷装置。
前記切替部で搬送方向が切り替えられたメディアを、前記第3回転軸周りの周方向に変位する前記当接部の移動領域の外側を経由させて、前記第2拡幅ローラに誘導する誘導バーをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、ニットのような伸縮性を有する織物のメディアに対して印刷を行う印刷装置1の場合を例に挙げて説明する。
図1は、印刷装置1におけるメディアMの搬送部13側の要部構成を説明する図である。
【0009】
[印刷装置]
図1に示すように、印刷装置1は、メディアロール10から繰り出したメディアMに、印刷を行うものであり、メディアロール10を回転可能に支持する支持軸2と、メディアMを図示しない印刷部側に搬送する搬送機構部3との間に、メディアロール10から繰り出されたメディアMの搬送部13が設けられている。
【0010】
ここで、実施の形態におけるメディアMは、ニットのように、伸縮性を有する材料で織られた織物のメディア(以下、メディアMと記載する)であり、メディアロール10は、所定幅を有する帯状のメディアMを巻芯101に巻き付けて構成されている。
【0011】
メディアロール10は、印刷装置1の支持軸2に外挿して設けられており、この状態においてメディアロール10は、支持軸2と一体に、当該支持軸2の中心軸(回転軸X1)回りに回転可能に設けられている。
【0012】
印刷装置1では、印刷部(図示せず)の前段に、搬送機構部3が位置しており、この搬送機構部3により、メディアMが印刷部側に搬送されると、メディアロール10では、当該メディアロール10から引き出されたメディアMが、搬送機構部3(搬送部13)側に引っ張られて、メディアロール10から順次繰り出されるようになっている。
【0013】
搬送機構部3は、図示しない駆動源(例えば、モータ)の回転駆動力で回転軸X7回りに回転する駆動ローラ31と、回転軸X7に平行な回転軸X8回りに回転可能に設けられた加圧ローラ32と、駆動ローラ31に巻き掛けられた搬送ベルト33と、を有している。
【0014】
加圧ローラ32は、駆動ローラ31に巻き掛けられた搬送ベルト33との間に、メディアMの厚みより小さい隙間を空けて配置されており、加圧ローラ32の外周と駆動ローラ31の外周との間に、メディアMが把持されるようになっている。
【0015】
そのため、搬送機構部3では、図示しない駆動源の回転駆動力で駆動ローラ31が回転すると、加圧ローラ32により搬送ベルト33に圧接されたメディアMが、搬送ベルト33と一緒に、搬送機構部3の下流側(印刷部側)に搬送されるようになっている。
そして、この搬送機構部3によるメディアMの送り出しに連動して、メディアロール10に巻き付けられたメディアMが、搬送部13に向けて繰り出されるようになっている。
【0016】
前記したように、実施の形態にかかる印刷装置1では、伸縮性を有する材料で織られたメディアMを印刷対象物としており、この印刷対象物のメディアMでは、幅方向における少なくとも一側に、伸縮性に起因するカールMc(湾曲)が発生することがある。
そのため、搬送部13では、当該搬送部13内のメディアMの搬送経路上に、第1拡幅ローラ4と第2拡幅ローラ5とが設けられており、これら第1拡幅ローラ4および第2拡幅ローラ5により、メディアMのカールMcを、印刷部に供給されるまでの間で矯正するようにしている。
【0017】
図2は、第1拡幅ローラ4を説明する図であり、(a)は、第1拡幅ローラ4の斜視図であり、(b)は、第1拡幅ローラ4を回転軸X2の径方向から見た平面図であって、第1拡幅ローラ4によりメディアMが拡幅される状態を模式的に示す図である。
【0018】
図2の(a)に示すように、第1拡幅ローラ4は、円柱形状の基部41を有しており、この基部41の外周には、ヘリカル突起42が設けられている。
ヘリカル突起42は、第1拡幅ローラ4の回転軸X2の径方向に突出して形成されており、このヘリカル突起42は、基部41の長手方向の中心を通る中心線Y2を挟んで一方側に位置するヘリカル突起42aと、他方側に位置するヘリカル突起42bとから構成される。
【0019】
これらヘリカル突起42a、42bは、基部41の外周を回転軸X2回りの周方向に沿って螺旋状に延びており、基部41の長手方向の中心を通る中心線Y2を挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0020】
図2の(b)に示すように、実施の形態では、回転軸X2の径方向から見た平面視において、基部41の幅方向における一側41cから他側41dに向かうにつれて、ヘリカル突起42a、42bの回転軸X2方向の離間距離Waが広くなる向きで、ヘリカル突起42a、42bが設けられており、ヘリカル突起42a、42bは、回転軸X2の径方向から見て、回転軸X2に対して所定角度θ傾斜している。
【0021】
そのため、第1拡幅ローラ4が、外周に巻き掛けられたメディアMを、
図2(b)における基部41の一側41cから他側41d側に移動させる方向に回転すると、メディアMにおけるヘリカル突起42a、42bの圧接する位置が、基部41の両端部41a、41b側に変位するようになっている(
図2の(b)、矢印参照)。
【0022】
このヘリカル突起42a、42bの圧接する位置が変位する方向は、メディアMの幅を広げる方向であるので、実施の形態では、メディアMの幅が、第1拡幅ローラ4を通過する前後で、幅H1から幅H2に拡幅されるようになっている。
【0023】
メディアロール10から繰り出されたメディアMでは、メディアMの幅方向の少なくとも一側部が、メディアMの厚み方向における一方に湾曲して、カールMcが発生していることがある。
ここで、以下の説明では、メディアMの厚み方向における一方の面であって、一側部が湾曲している側の面をカール面、他方の面を非カール面とも標記する。
【0024】
第1拡幅ローラ4では、当該第1拡幅ローラ4の外周面にメディアMのカール面を巻き掛けた(張架させた)のち、この状態でメディアMを、第1拡幅ローラ4における基部41の一側(上流側)41cから他側(下流側)41d側に移動させて拡幅することで、メディアMに生じていたカールMcを矯正するようになっている。
【0025】
図1に示すように、実施の形態では、第1拡幅ローラ4は、メディアロール10の回転軸X1を通る鉛直線VL上で、メディアロール10の回転軸X1に平行な回転軸X2回りに回転可能に設けられている。
【0026】
ここで、メディアMにおけるカール面は、メディアロール10において内側に位置していた裏面Mbになる場合と、外側に位置していた表面Maになる場合とがある。
さらに、印刷装置1では、支持軸2にセットされたメディアロール10でのメディアMの巻き付け方向が、反時計回り方向になる場合(
図1、4参照)と、時計回り方向になる場合(
図5、6参照)とがある。
【0027】
すなわち、支持軸2にセットされたメディアロール10でのメディアMの巻き付け方向が、反時計回り方向になる場合と、時計回り方向になる場合の何れにおいても、カール面が、表面Maになる場合と、裏面Mbになる場合とがある。
【0028】
具体的には、
(A)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が、反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置されている場合であって、裏面Mbがカール面になる場合(
図1)と、
(B)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が、反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置されている場合であって、表面Maがカール面になる場合(
図4)と、
(C)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が、時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置されている場合であって、裏面Mbがカール面になる場合(
図5)と、
(D)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が、時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置されている場合であって、表面Maがカール面になる場合(
図6)と、がある。
【0029】
そのため、実施の形態では、これら(A)から(D)のうちの(A)、(C)の場合(メディアMのカール面が、メディアロール10の内径(裏面Mb)側である場合)にも、第1拡幅ローラ4の外周にメディアMのカール面を巻き掛けることができるようにするために、第1拡幅ローラ4とメディアロール10との間に、一対の第1折返しバー6、7が、鉛直線VLを挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0030】
一対の第1折返しバー6、7は、それぞれ支持軸61、71で回転不能に支持された筒状部材であり、メディアMにおけるカール面が裏面Mbである場合に、メディアMの表面Maが巻き掛けられるようになっている。
実施の形態では、巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が、反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置されている場合であって、裏面Mbがカール面になる場合(前記(A):
図1参照)に、第1折返しバー6にメディアMが巻き掛けられると共に、巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が、時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置されている場合であって、裏面Mbがカール面になる場合(前記(C):
図5参照)に、第1折返しバー7にメディアMが巻き掛けられるようになっている。
【0031】
図1に示すように、これら第1折返しバー6、7は、鉛直線VLの直交方向で、第1拡幅ローラ4の外周とメディアロール10の外周とを結ぶ接線TL、TLよりも、鉛直線VLから離れた位置に配置されている。
【0032】
これにより、メディアMを、第1折返しバー6、7を介さずに、第1拡幅ローラ4に直接巻き掛ける場合(前記(B)の場合:
図4、前記(D)の場合:
図6)に、第1折返しバー6、7がメディアMに干渉することを防止している。
【0033】
さらに、第1折返しバー6、7の鉛直線VLの直交方向の離間距離Lxは、第1拡幅ローラ4の外径Dxよりも小さい距離に設定されている。
これにより、メディアMを、第1折返しバー6、7を介して、第1拡幅ローラ4に巻き掛ける場合に、第1折返しバー6、7により移動方向が変更されたメディアMを、第1拡幅ローラ4の外周に確実に巻き掛けることができるようになっている。
【0034】
なお、実施の形態では、第1折返しバー6、7により移動方向が変更されたメディアMの第1拡幅ローラ4への進入角(第1拡幅ローラ4の外周面とメディアMとの接触角)が、第1拡幅ローラ4の外周面とメディアMとの接触面積を、メディアMの拡幅に必要な第1の所定面積にする角度になるように、第1折返しバー6、7の位置が決められている。
【0035】
第1拡幅ローラ4の上方には、メディアMの進行方向を、第2拡幅ローラ5側に折り返すための第2折返しバー8が設けられている。
第2折返しバー8は、メディアロール10の回転軸X1に平行な回転軸X3回りに回転可能に設けられた筒状部材であり、この第2折返しバー8の外周面に、メディアMが巻き掛けられている。
【0036】
実施の形態では、第1拡幅ローラ4で拡幅されたメディアMが、第2折返しバー8の外周に巻き掛けられており、メディアMの所定面積の領域が、第2折返しバー8の外周に圧接している。
そのため、第2折返しバー8に対する圧接力で、拡幅後のメディアMの形状が保持されるようになっており、メディアMの形状が、拡幅前のカールの大きい形状に戻らないようにされている。
【0037】
第2折返しバー8の外周面には、巻き掛けられたメディアMのスリップを防止するための表面加工が施されている。なお、摺動抵抗の大きい布を、第1拡幅ローラ4の外周面に巻き付けた構成としても良い。
【0038】
実施の形態では、回転軸X3の軸方向から見て、第1拡幅ローラ4側から供給されたメディアMの第2折返しバー8の外周面における最初の接触点P1が、メディアロール10の回転軸X1と第1拡幅ローラ4の回転軸X2を通る鉛直線VL上、または鉛直線VLの近傍に位置するように、第2折返しバー8の位置が決められている。
【0039】
第2折返しバー8をこのように配置することで、メディアMが、第1拡幅ローラ4の第1折返しバー6側の外周に巻き掛けられた場合(
図1)と、第1拡幅ローラ4の第1折返しバー7側の外周に巻き掛けられた場合(
図5)の何れの場合にも、メディアMに作用する張力(メディアMの第1拡幅ローラ4への圧接力:張架力)が均一になるようにしている。
【0040】
メディアMの搬送方向における第2折返しバー8の下流側(印刷部側)には、メディアMのカールMcを矯正するための第2拡幅ローラ5が設けられており、この第2拡幅ローラ5と第2折返しバー8との間に、第2拡幅ローラ5に供給されるメディアMの張力などを調整するためのテンションバー9が設けられている。
【0041】
第2拡幅ローラ5は、第1拡幅ローラ4の回転軸X2に平行な回転軸X4回りに回転可能に設けられており、この第2拡幅ローラ5の外周面に、メディアMのカール面が巻き掛けられている。
なお、第2拡幅ローラ5は、前記した第1拡幅ローラ4と同じ構成を有しているので、ここでは具体的な説明を省略する。
【0042】
テンションバー9は、第2拡幅ローラ5の回転軸X4に平行な回転軸X5回りに回転可能に設けられており、このテンションバー9の回転軸X5は、第2折返しバー8の回転軸X3と、第2拡幅ローラ5の回転軸X4とを結ぶ線分K1上に位置している。
【0043】
テンションバー9は、回転軸X5の径方向外側に所定距離R離れた位置を、回転軸X5に沿って回転軸X5に略平行に延びる当接部91を有しており、この当接部91は、テンションバー9を回転軸X5回りに回転させることで、図中の仮想線Lmで示す軌跡上の任意の位置に配置できるようになっている。
【0044】
実施の形態では、当接部91を、第2折返しバー8から第2拡幅ローラ5に向けて搬送されるメディアMの非カール面に圧接させて、第2拡幅ローラ5の外周に巻き掛けられるメディアMの張力と、第2拡幅ローラ5に対するメディアMの進入角を調節している。
ここで、第2拡幅ローラ5に対するメディアMの進入角は、第2拡幅ローラ5の外周とメディアMとの接触面積が、メディアMの拡幅に必要な第2の所定面積となる角度に設定される。
なお、第2の所定面積は、前記した第1拡幅ローラ4の場合における第1の所定面積と同じであっても良い。
【0045】
前記したように、メディアMにおけるカール面は、表面Maになる場合(
図4、
図6)と、裏面Mbになる場合(
図1、
図5)とがあるので、テンションバー9の当接部91を、回転軸X5周りの周方向の任意の位置に配置できるようにすることで、カール面が表面Maである場合と裏面Mbである場合の何れにおいても、当接部91を非カール面に当接させることができるようになっている。
【0046】
また、テンションバー9の回転軸X5を線分K1上に位置させたことで、テンションバー9の当接部91が線分K1の一方側(例えば、図中上側)でメディアMに当接した場合と、他方側(例えば、図中下側)でメディアMに当接した場合の何れの場合にも、均等な張力をメディアMに作用させることができるようになっている。
【0047】
メディアMの搬送部13では、この第2拡幅ローラ5と第2折返しバー8との間であって、テンションバー9の当接部91の移動可能な範囲を示す軌跡(図中、仮想線Lm参照)の外側に、迂回バー20が設けられている。
【0048】
この迂回バー20は、第2拡幅ローラ5の回転軸X4に平行な回転軸X6回りに回転可能に設けられた筒状部材であり、メディアMを、テンションバー9との接触を避けて、第2折返しバー8から第2拡幅ローラ5に向けて搬送する際に、外周にメディアMが巻き掛けられるようになっている(
図7参照)。
【0049】
迂回バー20の回転軸X6は、第2拡幅ローラ5の回転軸X4と、実施の形態では、回転軸X4の軸方向から見て、第2拡幅ローラ5側から供給されたメディアMの加圧ローラ32の外周面における最初の接触点P2とを結ぶ線分K2上に位置している。
【0050】
迂回バー20をこのように配置することで、メディアMの表面Maが、第2拡幅ローラ5の外周に巻き掛けられた場合と、裏面Mbが巻き掛けられた場合の何れでも、メディアMに作用する張力(メディアMの第2拡幅ローラ5への圧接力:張架力)が均一になるようにしている。
【0051】
ここで、迂回バー20の外周面には、巻き掛けられたメディアMのスリップを防止するための表面加工が施されている。なお、摺動抵抗の大きい布を、迂回バー20の外周面に巻き付けた構成としても良い。
【0052】
[カールの矯正方法]
次に、印刷装置1でメディアMに印刷を行う際のカールの矯正方法を、巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置されている場合であって、裏面Mbがカール面であり、表面Maが印刷面(非カール面)である場合(
図1参照)を例に挙げて説明する。
図3は、印刷装置1でメディアMに印刷を行う際のカールの矯正方法を説明するフローチャートである。
【0053】
初めに、メディアロール10から引き出されたメディアMは、第1折返しバー6、第1拡幅ローラ4、第2折返しバー8、テンションバー9、第2拡幅ローラ5の順番で巻き掛けられたのち、搬送機構部3と印刷部(図示せず)とを経て、図示しない巻取りローラに巻き取られるようにセットされる(
図1参照)。
【0054】
この状態で、駆動ローラ31を回転させると、駆動ローラ31に巻き掛けられた搬送ベルト33と、加圧ローラ32との間に把持されたメディアMが、搬送ベルト33と一緒に、印刷部側に搬出されることになる。
そうすると、この搬送機構部3によるメディアMの搬出に連動して、メディアロール10に巻き付けられたメディアMが、搬送部13側(第1拡幅ローラ4側)に順次繰り出されることになる(
図3、ステップ101:繰り出し工程)。
【0055】
そして、メディアロール10から繰り出されたメディアMの搬送方向が、当該メディアMの外周面(表面Ma)を巻き掛けた第1折返しバー6により変更されて、メディアMは、カール面である裏面Mbを第1拡幅ローラ4の外周に接触させる向きで、第1拡幅ローラ4に供給されることになる。
【0056】
ここで、印刷装置1では、メディアMの第1拡幅ローラ4への進入角が、第1拡幅ローラ4の外周面とメディアMとの接触面積がメディアMの拡幅に必要な第1の所定面積となる角度となるように、第1折返しバー6の位置が決められている。
そのため、第1折返しバー6を通過したメディアMは、所定の進入角で第1拡幅ローラ4に供給されることになる(
図3、ステップ102:角度保持工程)。
【0057】
前記したように第1拡幅ローラ4では、当該第1拡幅ローラ4の外周面に、メディアMにおけるカール面である裏面Mbが巻き掛けられている。
ここで、
図2に示すように、第1拡幅ローラ4の外周面には、ヘリカル突起42a、42bが設けられており、外周に巻き掛けられたメディアMを、
図2(b)における基部41の一側41cから他側41d側に移動させる方向に回転すると、メディアMにおけるヘリカル突起42a、42bの圧接する位置が、基部41の両端部41a、41b側に変位するようになっている(
図2の(b)、矢印参照)。
【0058】
このヘリカル突起42a、42bの圧接する位置が変位する方向は、メディアMの幅を広げる方向であるので、実施の形態では、メディアMの幅が、第1拡幅ローラ4の通過の前後で、幅H1から幅H2に拡幅されるようになっている。
そのため、カール面を第1拡幅ローラ4の外周に巻き掛けられたメディアMは、拡幅されることで、幅方向の少なくとも一方の側部のカールが発生した領域が延ばされて、カールが矯正されることになる(
図3、ステップ103:第1拡幅工程)。
【0059】
続いて、第1拡幅ローラ4を通過したメディアMの進行方向が、第2折返しバー8により、第2拡幅ローラ5側に変更される(
図3、ステップ104:第1折り返し工程)。
【0060】
前記したように、第1拡幅ローラ4で拡幅されたメディアMは、第2折返しバー8の外周に巻き掛けられており、メディアMの所定面積の領域が、第2折返しバー8の外周に圧接している。
そのため、第2折返しバー8に対する圧接力で、拡幅後のメディアMの形状が保持されるようになっており、メディアMの形状が、拡幅前のカールの大きい形状に戻らないようにされている。
【0061】
これにより、第1拡幅ローラ4で拡幅されたメディアMが、第2折返しバー8を通過することで、拡幅されてカールが矯正された状態が保持されたままで、第2拡幅ローラ5側に供給されることになる。
【0062】
第2折返しバー8から第2拡幅ローラ5に向けて搬送される途上のメディアMでは、テンションバー9の当接部91が非カール面に当接しており、搬送されるメディアMの進行方向が、当接部91との当接点を境界として、第2拡幅ローラ5側に大きく変更されるようになっている。
そのため、メディアMでは、当接部91が非カール面に当接することで、メディアMを第2拡幅ローラ5に巻き掛けるのに必要なテンションを発生させている。
【0063】
さらに、印刷装置1では、テンションバー9の当接部91の回転軸X5周りの角度位置に応じて、第2拡幅ローラ5に対するメディアMの進入角が決まるようになっている。
実施の形態では、印刷装置1で印刷を行う際に、テンションバー9の当接部91が、メディアMの第2拡幅ローラ5に対する進入角を、第2拡幅ローラ5の外周とメディアMとの接触面積がメディアMの拡幅に必要な第2の所定面積になる角度を実現する位置に配置されている。
【0064】
よって、当接部91により、メディアMの第2拡幅ローラ5に対する進入角が、第2拡幅ローラ5の外周とメディアMとの接触面積がメディアMの拡幅に必要な第2の所定面積になる角度に保持されるようになっている(
図3、ステップ105:角度保持工程)。
【0065】
当接部91を通過したメディアMは、カール面である裏面Mbを第2拡幅ローラ5の外周に接触させる向きで、第2拡幅ローラ5に供給されて、メディアMは、第2拡幅ローラ5の外周に圧接した状態で、第2拡幅ローラ5を通過することになる。
これにより、メディアMは、第2拡幅ローラ5を通過する際に拡幅されて、幅方向の少なくとも一方の側部のカールが発生した領域が延ばされて、カールが矯正されることになる(
図3、ステップ106:第2拡幅工程)。
【0066】
そして、第2拡幅ローラ5で拡幅されたメディアMは、搬送機構部3に到達すると、加圧ローラ32により搬送ベルト33に圧接されたのち、搬送ベルト33と一緒に、搬送機構部3の下流側(印刷部側)に搬送される(
図3、ステップ107:搬送工程)。
【0067】
この際に、第2拡幅ローラ5で拡幅されてカールがさらに矯正されたメディアMが、加圧ローラ32から作用する押圧力で搬送ベルト33に対して圧接されることになる。
この際に、メディアMを搬送ベルト33に圧接させる力(圧接力)が、拡幅後のメディアMの形状を保持する機能を発揮するので、メディアMの形状が、第2拡幅ローラ5で拡幅される前の形状に戻らないようにされている。
【0068】
これにより、第2拡幅ローラ5で拡幅されてカールがさらに矯正されたメディアMが、印刷部に供給されて、メディアMの印刷面(表面Ma)に対する印刷が実施されることになる(
図3、ステップ108:印刷工程)。
【0069】
ここで、本実施の形態では、印刷装置1におけるメディアロール10から引き出したメディアMの搬送経路の説明を、(A)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合であって、裏面Mbがカール面になる場合(
図1参照)を例に挙げて説明をした。
実施の形態に係る印刷装置1では、(A)の場合だけでなく、(B)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合であって、表面Maがカール面になる場合(
図4参照)と、(C)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合であって、裏面Mbがカール面になる場合(
図5参照)と、(D)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合であって、表面Maがカール面になる場合(
図6参照)と、の何れの場合でも、メディアMのカールを適切に矯正できるようにしている。
【0070】
そこで、以下においては、前記した(B)から(D)の場合について、搬送経路におけるメディアMの配置を説明する。
【0071】
図4は、(B)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合であって、表面Maがカール面である場合の印刷装置1でのメディアMの配置を説明する図である。
【0072】
図4に示すように、(B)の場合には、メディアロール10は、第1折返しバー6、7を介さずに、繰り出したメディアMのカール面(表面Ma)を、第1拡幅ローラ4の外周に直接巻き掛けることができる向きで設置されている。
【0073】
そのため、印刷装置1においてメディアロール10から引き出されたメディアMは、第1拡幅ローラ4、第2折返しバー8、テンションバー9、第2拡幅ローラ5の順番で巻き掛けられている。
この場合にも、メディアMが、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5を通過する際に、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5の外周にカール面である表面Maを圧接させた状態で拡幅されることで、カールが発生した領域が延ばされて、カールが矯正されることになる。
【0074】
図5は、(C)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合であって、裏面Mbがカール面である場合の印刷装置1でのメディアMの配置を説明する図である。
【0075】
図5に示すように、(C)の場合には、メディアロール10は、繰り出したメディアMの搬送方向を第1折返しバー7により変更したのちに、カール面(裏面Mb)を第1拡幅ローラ4の外周に巻き掛けることができる向きで設置されている。
そのため、印刷装置1においてメディアMは、第1折返しバー7、第1拡幅ローラ4、第2折返しバー8、テンションバー9、第2拡幅ローラ5の順番で巻き掛けられている。
【0076】
この場合にも、メディアMが、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5を通過する際に、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5の外周にカール面である裏面Mbを圧接させた状態で拡幅されることで、カールが発生した領域が延ばされて、カールが矯正されることになる。
【0077】
図6は、(D)巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合であって、表面Maがカール面である場合の印刷装置1でのメディアMの配置を説明する図である。
【0078】
図6に示すように、(D)の場合には、メディアMが引き出されるメディアロール10は、第1折返しバー6、7を介さずに、カール面(表面Ma)を第1拡幅ローラ4の外周に直接巻き掛けることができる向きで設置されている。
【0079】
そのため、印刷装置1においてメディアロール10から引き出されたメディアMは、第1拡幅ローラ4、第2折返しバー8、テンションバー9、第2拡幅ローラ5の順番で巻き掛けられている。
この場合にも、メディアMが、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5を通過する際に、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5の外周にカール面である表面Maを圧接させた状態で拡幅されることで、カールが発生した領域が延ばされて、カールが矯正されることになる。
【0080】
このように、実施の形態にかかる印刷装置1では、前記した(A)〜(D)の何れの場合でも、メディアMのカールMcの発生面(カール面)を、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5の外周に巻き掛けた状態で、メディアMの拡幅を行えるようになっている。
そのため、メディアMが、第1拡幅ローラ4、第2拡幅ローラ5を通過する際に、メディアMにおけるカールが発生している領域を延ばして、カールが矯正できるようになっている。
【0081】
実施の形態にかかる印刷装置1では、このメディアロール10を回転可能に支持する支持軸2が、発明における繰出部に相当し、第1折返しバー6、7が、発明における角度保持部(第1角度保持部、第2角度保持部)に相当し、第2折返しバー8が、発明における切替部に相当する。
【0082】
以上の通り、実施の形態では、
(1)織物からなる所定幅のメディアMが巻芯101に巻き付けられたメディアロール10からメディアMを繰り出す繰り出し工程(ステップ101)と、メディアロール10から繰り出したメディアMに印刷を行う印刷工程(ステップ108)との間に、メディアロール10から繰り出したメディアMの拡幅を行う第1拡幅工程(ステップ103)が設けられており、
印刷工程において拡幅されたメディアMに対して印刷を行う際のカール矯正方法であって、
第1拡幅工程では、
メディアロール10の回転軸X1(中心軸)に平行な回転軸X2(第1回転軸)回りに回転する第1拡幅ローラ4の外周に、メディアロール10から繰り出したメディアMを張架させた状態でメディアMの拡幅を行うと共に、
メディアMは、カールMcしている側の面(表面Maまたは裏面Mb)を、第1拡幅ローラ4の外周に張架させている構成のカールの矯正方法とした。
【0083】
このように構成すると、第1拡幅工程では、メディアMのカールしている側の面(カール面)を、第1拡幅ローラ4の外周に巻き掛けた(張架させた)状態でメディアMの拡幅を行うので、メディアMにおけるカールしている領域を十分に伸ばしてカールを適切に矯正できる。
【0084】
(2)支持軸2で回転可能に支持されたメディアロール10であって、織物からなる所定幅のメディアMが巻芯101に巻き付けられたメディアロール10からメディアMを繰り出す繰出部と、
メディアロール10から繰り出したメディアMに印刷を行う印刷部(図示せず)と、
繰出部から印刷部までのメディアMの搬送経路(搬送部13)に設けられていると共に、メディアロール10の回転軸X1(中心軸)に平行な回転軸X2(第1回転軸)回りに回転しながら、外周に張架させたメディアMの拡幅を行う第1拡幅ローラ4と、
回転軸X2の軸方向から見たメディアMの第1拡幅ローラ4の外周への進入角を第1の所定角度で保持する角度保持部(第1折返しバー6,7)と、を有し、
第1拡幅ローラ4においてメディアMは、カールしている側の面を、第1拡幅ローラ4の外周に張架させており、
第1の所定角度は、第1拡幅ローラ4の外周とメディアMとの接触面積が、メディアMの拡幅に必要な第1の所定面積となる角度である構成とした。
【0085】
このように構成すると、第1拡幅ローラ4の外周へのメディアMの進入角が、第1拡幅ローラ4の外周とメディアMとの接触面積をメディアMの拡幅に必要な第1の所定面積にする第1の所定角度で保持されるので、第1拡幅ローラ4に巻き掛けたメディアMを確実に拡幅して、カールを矯正できる。
また、メディアMにおけるカール面と非カール面を判別して、カール面を第1拡幅ローラ4の外周に張架させることで、十分にカールを伸ばすことができる。
【0086】
ここで、メディアロール10に巻き付けられたメディアMのカール面が、裏面Mb(メディアロール10の内径側の面)の場合、カール面が表面Ma(メディアロール10の外径側の面)である場合に比べて、メディアロール10から送り出されたメディアMの第1拡幅ローラ4への回転軸X2方向から見た進入角が大きくなってしまう。
そうすると、メディアMと第1拡幅ローラ4との径方向から見た接触面積が小さくなるので、メディアMの拡幅が不十分となって、カールの矯正が不十分になる虞がある。
少なくとも裏面Mbにカールが生じている場合に、第1折返しバー6、7を介してメディアを第1拡幅ローラ4に供給することで、第1拡幅ローラ4の外周と、メディアMとの接触面積を確保できる。
【0087】
また、回転軸X2の軸方向から見て、回転軸X2は、メディアロール10の回転軸X1を通る鉛直線VL上に位置しており、
第1折返しバー6、7は、鉛直線VLを挟んで対称に配置された第1折返しバー6(第1角度保持部)および第1折返しバー7(第2角度保持部)から構成される構成とした。
【0088】
このように構成すると、巻芯101におけるメディアMの巻き付け方向が反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合と、反時計回り方向となる向きでメディアロール10が設置された場合の何れにおいても、裏面Mbがカール面である場合には、メディアMの第1拡幅ローラ4の外周への進入角を、同じ角度にすることができると共に、メディアMに作用する張力が均一になる。よって、搬送部13におけるメディアMの搬送制御を容易に行うことができる。
【0089】
また、第1拡幅ローラ4と、図示しない印刷部との間のメディアMの搬送経路に設けられていると共に、メディアロール10の回転軸X1に平行な回転軸X4(第2回転軸)回りに回転しながら、外周に張架させたメディアMの拡幅を行う第2拡幅ローラ5と、
第1拡幅ローラ4と第2拡幅ローラ5との間のメディアMの搬送経路に設けられていると共に、メディアMに張力を与えるテンションバー9と、をさらに備え、
テンションバー9は、回転軸X4に平行な回転軸X5(第3回転軸)回りに回転可能に設けられていると共に、回転軸X5の径方向外側に配置させたメディアMとの当接部91を、回転軸X3周りの周方向に変位可能とされており、
第2拡幅ローラ5においてメディアMは、カールしている側の面を、第2拡幅ローラ5の外周に張架させており、
テンションバー9は、当接部91をメディアMのカールしていない側の面に当接させて、回転軸X5の軸方向から見たメディアMの第2拡幅ローラ5の外周への進入角を第2の所定角度で保持しており、
第2の所定角度は、第2拡幅ローラ5の外周とメディアMとの接触面積が第2の所定面積となる角度である構成とした。
【0090】
このように構成すると、搬送部13では、メディアMの第2拡幅ローラ5への進入角を第2の所定角度で保持するテンションバー9が、第1拡幅ローラ4と図示しない印刷部との間に設けられている。そして、テンションバー9の当接部91を、回転軸X5周りの周方向の任意の位置に配置できるようにすることで、カール面が表面Maである場合と裏面Mbである場合の何れにおいても、当接部91を非カール面に当接させることができるようになっている。
よって、搬送部13では、第1拡幅ローラ4から送り出されたメディアMの第2拡幅ローラ5への進入角を所定の角度に調整することができ、第2拡幅ローラ5でのメディアMの拡幅を確実に行うことができる。
さらに、搬送部13では、メディアMの第2拡幅ローラ5への第2の所定角度は、第2拡幅ローラ5の外周とメディアMとの接触面積が第2の所定面積となる角度としたので、第2拡幅ローラ5でのメディアMの拡幅をより確実に行うことができる。
さらに、テンションバー9を回転させて当接部91を所望の位置に配置することで、メディアMにテンションを掛けつつ、メディアの搬送方向を切り替えることができる。
【0091】
第1拡幅ローラ4とテンションバー9との間のメディアMの搬送経路に設けられていると共に、メディアMの搬送方向を切替える第2折返しバー8(切替部)を、さらに備えており、
第2折返しバー8は、
回転軸X2に平行な回転軸X3(第4回転軸)回りに回転可能に設けられていると共に、回転軸X3の軸方向から見て、第2折返しバー8の外周とメディアMとの接触点P1(接触位置)が、鉛直線VL上、または鉛直線VLの近傍となるように設けられている構成とした。
【0092】
このように構成すると、第1拡幅ローラ4とテンションバー9との間に設けられた第2折返しバー8にメディアMが巻き付けられるようになっている。よって、第1拡幅ローラ4でカールMcやシワが延ばされた状態のメディアMが、第2折返しバー8に圧接されることで、テンションバー9に搬送される間に延びたカールMcやシワが戻るのを抑えることができる。
【0093】
また、第2折返しバー8の外周とメディアMとの接触点P1と、メディアロール10の回転軸X1を通る鉛直線VLとがほぼ一直線状となるので、メディアMが、第1拡幅ローラ4の第1折返しバー6側の外周に巻き掛けられた場合(
図1)と、第1拡幅ローラ4の第1折返しバー7側の外周に巻き掛けられた場合(
図5)の何れの場合にも、メディアMに作用する張力(メディアMの第1拡幅ローラ4への圧接力)が均一になる。よって、搬送部13におけるメディアMの搬送制御を容易に行うことができる。
【0094】
第2折返しバー8は、回転軸X5周りの周方向に変位するテンションバー9の当接部91との干渉を避けた位置に配置されている構成とした。
【0095】
このように構成すると、第2折返しバー8とテンションバー9の当接部91との干渉を防止し、第2折返しバー8におけるメディアMの搬送を確実に行うことができる。
【0096】
また、第2折返しバー8(切替部)で搬送方向が切り替えられたメディアMを、回転軸X6(第3回転軸)周りの周方向に変位するテンションバー9の当接部91の移動領域の外側を経由させて、第2拡幅ローラ5に誘導する迂回バー20(誘導バー)をさらに備える構成とした。
【0097】
メディアの種類によっては、メディアにテンションバー9による張力が作用した場合、メディアの塑性変形領域を超えて延びてしまう場合がある。
このように構成すると、印刷装置1では、メディアMを迂回バー20に巻き掛けることで、メディアMを、メディアMと当接部91との接触を回避して、テンションバー9による張力を作用させることなく第2拡幅ローラ5に誘導することができる。
また、印刷装置1では、第2折返しバー8から送り出されたメディアMを、テンションバー9に巻き掛けるか、テンションバー9ではなく迂回バー20に巻き掛けるかを変更するだけで、テンションバー9を迂回させるか否かの切替を簡単に行うことができる。
【0098】
第2拡幅ローラ5と図示しない印刷部との間のメディアMの搬送経路には搬送機構部3を、さらに備えており、
搬送機構部3は、
回転軸X7(第5回転軸)回りに回転可能に設けられている駆動ローラ31と、
駆動ローラ31に巻き掛けられて、駆動ローラ31の回転軸X7回りの回転に伴って印刷部側に搬送される搬送ベルト33と、
搬送ベルト33を挟んで駆動ローラ31と反対側に設けられるとともに、回転軸X7に平行な回転軸X8(第6回転軸)回りに回転可能に設けられる加圧ローラ32と、を備え、
加圧ローラ32は、
駆動ローラ31に巻き付けられた搬送ベルト33との間に、メディアMの厚みよりも小さい隙間を設けて配置されており、
加圧ローラ32の外周と搬送ベルト33の外周との間に把持されて、加圧ローラ32により搬送ベルト33に圧接されたメディアMが、駆動ローラ31の回転駆動により搬送される搬送ベルト33とともに、印刷部側に搬送される構成とした。
【0099】
このように構成すると、印刷装置1では、加圧ローラ32の外周と搬送ベルト33の外周との間に把持されたメディアMを、加圧ローラ32で搬送ベルト33に圧接するようにしているので、駆動ローラ31の回転駆動により印刷部側に搬送される搬送ベルト33と一緒に、メディアMを印刷部側に確実に搬送することができる。
【0100】
[変形例]
図8は、変形例にかかる印刷装置1Aの搬送部13側の概略図であり、搬送経路におけるメディアMの配置を説明する図である。
【0101】
前記した実施の形態では、回転軸X2の軸方向から見て、メディアロール10と第1拡幅ローラ4との間であって、メディアロール10の回転軸X1を通る鉛直線VLに対して対称となる位置に2つの第1折返しバー6、7を設ける場合を例示して説明したが、メディアロール10と第1拡幅ローラ4との間に第1折返しバー6Aを1つ設ける構成としても良い。
【0102】
図8に示すように、印刷装置1Aでは、メディアロール10と第1拡幅ローラ4との間に第1折返しバー6A(角度保持部)が設けられている。
メディアロール10の回転軸X1の軸方向から見て、第1折返しバー6A(角度保持部)は、支持軸61で回転不能に支持された筒状部材であり、鉛直線VL上でメディアロール10の回転軸X1に対して、平行に配置されている。
【0103】
第1折返しバー6Aの外径D1は、第1拡幅ローラ4の外径Dxよりも小さい外径に設定されており、メディアロール10から繰り出されたメディアMが、外周に巻き掛けられるようになっている。
印刷装置1Aでは、メディアロール10から繰り出されたメディアMが、第1折返しバー6を介して第1拡幅ローラ4に供給されることで、メディアMの第1拡幅ローラ4に対する進入角を適切な進入角に保持することができるようになっている。
【0104】
実施の形態では、第1拡幅ローラ4の外周面とメディアMとの接触面積を、メディアMの拡幅に必要な第1の所定面積にする角度になるように、第1折返しバー6Aの位置が決められている。
【0105】
また、第1折返しバー6Aの回転軸X2は、メディアロール10の回転軸X1を通る鉛直線VL上に位置しているので、巻芯101に対するメディアMの巻き付け方向(時計回り方向、反時計回り方向)にかかわらず、メディアロール10からの繰り出し距離が等しくなり、メディアMに作用する張力を均一にすることができる。これにより、搬送部13におけるメディアMの搬送制御を容易に行うことができる。
【0106】
また、第1折返しバー6Aを1つだけにすることができるので、搬送部13を構成する部品点数が減り、搬送部の構成の簡易化、省スペース化および製造コストの削減を図ることができる。
【0107】
また、外径D1が異なる第1折返しバー6Aを複数用意しておき、メディアMの種類によって、第1折返しバー6Aを付け替えるだけで、第1折返しバー6AからメディアMに作用する張力の調整と、メディアMの第1拡幅ローラ4への進入角度の調整を簡単に行うことができる。
【0108】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれる。