(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記搬送面を水平にした状態で前記搬送方向に沿って見たとき、前記搬送面の一方において、前記磁気検出装置の形状は、左右非対称であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の磁気検出装置。
前記制御部は、前記複数の検出コイルの全ての出力信号に基づいて、前記いずれか一部のみの検出コイルを選択することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の磁気検出装置。
前記いずれか一部のみの検出コイルは、前記硬貨の種類に応じて前記硬貨の磁気特性の検出前に決定された検出コイルであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の磁気検出装置。
制御部と、硬貨が搬送される搬送路の搬送面の少なくとも一方に設けられ、かつ、前記硬貨の搬送方向と交差する方向に配置された複数の検出コイルと、を備える磁気検出装置による磁気検出方法であって、
前記制御部が、前記複数の検出コイルのうち、いずれか一部のみの検出コイルの出力信号に基づいて、前記硬貨の磁気特性を検出するステップを含み、
前記硬貨は、貫通孔を有し、
前記複数の検出コイルは、一定のピッチで配置された2つ以上の検出コイルを含む1つ以上の検出コイル群を含み、
前記搬送面を平面視したとき、各検出コイル群の連続する2つ以上の検出コイルは、平面視した前記貫通孔と同じ大きさの領域内に収まることを特徴とする磁気検出装置による磁気検出方法。
制御部と、硬貨が搬送される搬送路の搬送面の少なくとも一方に設けられ、かつ、前記硬貨の搬送方向と交差する方向に配置された複数の検出コイルと、を備える磁気検出装置による磁気検出方法であって、
前記制御部が、前記複数の検出コイルのうち、いずれか一部のみの検出コイルの出力信号に基づいて、前記硬貨の磁気特性を検出するステップを含み、
前記硬貨は、中心部のコア部分と周辺部のリング部分とで異なる材料を用いて形成されたバイカラー硬貨であり、
前記複数の検出コイルは、一定のピッチで配置された2つ以上の検出コイルを含む1つ以上の検出コイル群を含み、
前記搬送面を平面視したとき、各検出コイル群の連続する2つ以上の検出コイルは、前記リング部分の幅と同じ幅の範囲内に収まることを特徴とする磁気検出装置による磁気検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態1)
以下、図面を参照して、本発明に係る磁気検出装置、硬貨識別装置、及び磁気検出装置による磁気検出方法の好適な実施形態を詳細に説明する。本実施形態に係る磁気検出装置、及び磁気検出装置による磁気検出方法は、硬貨識別装置内で、硬貨の磁気特性を検出するために利用される。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る硬貨識別装置1000は、磁気検出装置100と、識別制御部200と、記憶部300と、通信部400と、搬送部500と、を備える。
【0033】
磁気検出装置100は、搬送路を搬送される硬貨に磁界を印加し、この磁界による誘起電圧に基づいた出力信号に基づいて硬貨の磁気特性を検出する。
【0034】
磁気検出装置100は、磁気検出部110と、制御部120と、を備える。磁気検出部110は、相互誘導型の磁気センサを含んで構成される。制御部120は、磁気検出装置100を制御するとともに、磁気検出部110の出力に基づいて硬貨の磁気特性を検出する。更に、制御部120は、検出した硬貨の磁気特性を識別制御部200へ出力する。
【0035】
識別制御部200は、磁気検出装置100が検出した磁気特性に基づいて、検知対象である硬貨の種類(金種)等を識別するようになっている。
【0036】
この識別制御部200は、例えば、
図1に示すように、識別部210と、搬送制御部220と、処理部230と、を備える。
【0037】
制御部120と識別制御部200とは、例えば、各種の処理を実現するためのソフトウェアプログラムと、当該ソフトウェアプログラムを実行するCPUと、当該CPUによって制御される各種ハードウェアと、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理デバイス等によって構成されている。各部の動作に必要なソフトウェアプログラムやデータの保存には、記憶部300や、別途設けられたRAMやROM等のメモリやハードディスクが利用される。
【0038】
識別部210は、磁気検出装置100から検出された磁気特性と、予め検知対象となる硬貨に対して、記憶部300に記憶されている基準値等とを比較することにより、硬貨の種類等を特定する機能を有する。
【0039】
なお、硬貨は、例えば、単一の材質から構成されたもの、すなわちモノメタル硬貨であるか、2以上の材質から構成されたもの、すなわちバイメタル硬貨等である。バイメタル硬貨には、
図2(a)及び(b)に示すようなバイカラー硬貨101と、
図3(a)〜(d)に示すようなクラッド硬貨102と、
図4(a)及び(b)に示すようなバイカラー・クラッド硬貨103とが含まれる。バイカラー硬貨101は、
図2(a)及び(b)に示すように、中心部のコア部分101aと周辺部のリング部分101bとで異なる材料を用いて形成されたものである。クラッド硬貨102は、中心部の芯材102aと、芯材102aを覆う表面層102bとで異なる材料を用いて形成されたものである。クラッド硬貨102としては、例えば、
図3(a)及び(b)に示すように、円形の芯材(母材)102aにメッキし、刻印したもの、
図3(c)及び(d)に示すように、3層構造の板を円形に打ち抜き、刻印したもの等が挙げられる。バイカラー・クラッド硬貨103は、
図4(a)及び(b)に示すように、クラッド硬貨の構造を有するコア部分103aを、それと異なる材料でできたリング部103bの中に嵌め込んで形成されたものである。バイカラー・クラッド硬貨103におけるコア部分103aは、中心部の芯材103a1と、芯材103a1を覆う表面層103a2とで異なる材料を用いて形成されている。
【0040】
搬送制御部220は、硬貨識別装置1000の搬送部500を制御するようになっている。
【0041】
処理部230は、各部の動作に必要な各種の処理を実行するようになっている。
【0042】
記憶部300は、揮発性又は不揮発性のメモリやハードディスク等の記憶装置で構成され、硬貨識別装置1000で行われる処理に必要な各種のデータを記憶するために利用される。
【0043】
記憶部300は、識別制御部200による識別結果を記憶するようになっている。また、記憶部300は、硬貨の判別処理等を行うために利用される各種の基準値と、これらに関連する情報とを記憶している。
【0044】
通信部400は、硬貨識別装置1000の外部からの信号を受信し、硬貨識別装置1000から外部へ信号を送信する機能を有する。
【0045】
この通信部400によって、例えば、外部からの信号を受信して、制御部120及び識別制御部200の動作設定を変更したり、記憶部300に記憶されているソフトウェアプログラムやデータの更新、追加及び削除の処理を行ったり、硬貨識別装置1000による硬貨の識別結果を外部へ出力することができる。
【0046】
搬送部500は、硬貨を搬送するための搬送機構を備える。搬送機構には、フィンや搬送ベルト等の搬送手段が含まれる。
【0047】
以下に、磁気検出装置100の詳細を説明する。
図5〜
図7に示すように、磁気検出装置100は、硬貨10が搬送方向120aに搬送される搬送路121と、基板Tと、基板T上に実装されて配置された複数の検出コイルLと、基板T及び複数の検出コイルLを収容する筐体SのケースS1及びカバーS2と、搬送路121の幅方向における搬送路121の両端を規定する部材(以下、スペーサとも言う。)Uと、を更に備える。スペーサUは、ビス等の固定部材によって硬貨識別装置1000に取り付けられている。なお、
図5では、スペーサUが省略されている。
【0048】
磁気検出装置100は、上部に搬送手段(図示省略)の配置用隙間(以下、門構えとも言う。)SCを有する形状になっており、その門構えSCの下方の矩形状空間が硬貨10の搬送路121である。磁気検出装置100の搬送路121は、硬貨識別装置1000の搬送路の全体の一部を構成するものであり、スペーサUによって、硬貨10の下面を支える平滑な搬送面122と、硬貨10の周面に接して硬貨10を片寄せ案内する片寄面123と、片寄面123の反対側に位置する反片寄面124とが構成されている。搬送面122は、矩形状であり、識別対象の硬貨10のうち、最も径が大きい硬貨10よりも大きい。ジルコニア等のセラミックを材料とした耐摩耗板が使用された搬送路121には、後述する励磁コイルによって磁界が生成されている。
【0049】
図6等に示したようにスペーサUを筐体Sと別部品とすることにより、片寄面123の位置、搬送路121の幅w、長さl及び位置、門構えSCの位置といった硬貨10の搬送に関する構造の位置関係を任意に設定できるため、種々の搭載装置の要求仕様に対応可能となる。これらの構造の位置関係は、複数の検出コイルLが実装される基板Tの形状や磁気検出装置100の搭載装置への取り付け位置の変更することなく設定可能であることから、磁気検出装置100の検出能力と、それに基づく硬貨識別装置1000の識別能力(品質)を安定化することができる。
【0050】
本実施形態では、
図7に示されるように、搬送面122を水平にした状態で搬送方向120aに沿って見たとき(以下、単に正面視したときとも言う。)、搬送面122の一方、好ましくは上方において、磁気検出装置100の形状は、左右非対称である。
【0051】
このような態様とすることにより、硬貨10の搬送方向120aに対して反転した二通りの取り付け方法で磁気検出装置100を搭載装置に取り付けることができるため、片寄面123の位置、搬送路121の幅w、長さl及び位置、門構えSCの位置といった硬貨10の搬送に関する構造の位置関係をより柔軟に設定でき、種々の搭載装置の要求仕様に対応可能となる。これらの取り付け方法は、複数の検出コイルLが実装される基板Tの形状や磁気検出装置100の搭載装置への取り付け位置の変更することなく設定可能であることから、磁気検出装置100の検出能力と、それに基づく硬貨識別装置1000の識別能力(品質)を安定化することができる。
【0052】
上記左右非対称な形状とは、より具体的には、正面視したとき、搬送面122に対して搬送される硬貨10と同じ側に位置する磁気検出装置100の外形形状、すなわち筐体Sの外形形状であることが好ましい。また、磁気検出装置100は、正面視したとき、搬送面122の一方、好ましくは上方において、中心から外れた場所に門構えSCを有することが好ましい。なお、門構えSCとは、磁気検出装置100Aの切り欠き部分であって、搬送手段が配置され、硬貨10の搬送時に搬送手段が移動する空間を形成するものである。
【0053】
硬貨10は、搬送部500の搬送手段によって搬送路121上を、一枚ずつ間隔を空けて搬送される。硬貨10は、搬送路121の片寄面123側の端部に片寄せられた状態で、すなわち、片寄面123に接触した状態で、搬送面122上を摺動する。そして、本実施形態において、検出コイルLは、搬送路121の搬送面122の上方及び下方にそれぞれ複数設けられており、搬送面122の下方に配置された複数の反射検出コイルL1と、搬送面122の上方に配置された複数の透過検出コイルL2とを含んでいる。
【0054】
複数の検出コイルLは、硬貨10の搬送方向120aと交差する方向、好ましくは直交する方向に配置されている。反射検出コイルL1及び透過検出コイルL2は、それぞれ、搬送面122と平行に1列に配列されている。このように、複数の検出コイルLが、搬送路121の搬送面122の上方及び下方の各々において、硬貨10の搬送方向120aと交差する方向に配置されることにより、複数の検出コイルLは、搬送される硬貨10の磁気特性に関する信号(磁気信号)を、複数のエリア毎に出力することができる。
【0055】
硬貨10が搬送路121を搬送されると、後述する励磁コイルが搬送路121に生成した磁界により誘起された誘起電圧に基づいて、各検出コイルLは出力信号を出力する。
【0056】
制御部120は、複数の検出コイルLのうち、いずれか一部のみの反射検出コイルL1の出力信号に基づいて、硬貨10の磁気特性を検出するとともに、いずれか一部のみの透過検出コイルL2の出力信号に基づいて、硬貨10の磁気特性を検出する。そのため、複数のエリアの出力信号のうち、硬貨10への重なり具合の大きな検出コイルLのものに基づいて硬貨10の磁気特性を検知することが可能になる。その結果、硬貨10の径の影響を低減でき、硬貨10の磁気特性(例えば材質特性)の検知能力を向上することができる。また、寄せはずれといった硬貨10の搬送位置の変動に起因する出力の変動を低減することができる。
【0057】
図8を用いて、硬貨10への重なり具合の大きな検出コイルLに基づいて硬貨10の磁気特性を検知することによる効果をより詳細に説明する。
【0058】
励磁コイルが生成した磁界の中へ硬貨10が搬送されると、渦電流損失が発生する。この渦電流損失の量は、硬貨10の材質により異なる。導電率の大きな材質ほど渦電流損失は大きくなるため、結果として検出コイルLの出力電圧は小さくなる。例えば、材質がニッケル黄銅の現行の500円硬貨は、材質が白銅の旧500円硬貨に比べて導電率が大きいため、現行の500円硬貨の方が出力電圧は小さくなる。
【0059】
ここで、複数の検出コイルLのうち、全ての検出コイルLの総和値を用いて日本の各硬貨の磁気特性を検出した場合、出力される磁気特性は硬貨径の影響を受け、
図8(a)に示すように、1円硬貨より導電率の小さな10円硬貨の方が、出力電圧が減衰してしまっている。
【0060】
一方、本実施形態のように特定の1つの検出コイルLで磁気特性を検出した場合は、各硬貨の出力電圧は、
図8(b)に示すように各硬貨の導電率に概ね応じた出力となり、硬貨径の影響を抑えて、硬貨の磁気特性の検知能力を向上させることが可能となった。
【0061】
図9及び
図10に示すように、基板Tには開口部TAが形成されており、搬送路121は、開口部TAを貫通するように配置されている。
【0062】
図9に示すように、基板T上には、更に、搬送面122に対して、反射検出コイルL1と同じ側に励磁コイルLXが配置されている。励磁コイルLXは、交流電圧が印加されることにより、搬送路121に磁界を生成する。励磁コイルLXは単一のコイルである。このように、励磁コイルLXを単一のコイルとすることにより、処理回路を簡素化することができる。すなわち、検知信号のクロストーク対策等が不要となる。なお、励磁コイルLXは、複数のコイル(1次コイル)で構成されていてもよい。
【0063】
複数の反射検出コイルL1はそれぞれ、例えば、検知用コアに巻回されている。搬送路121を硬貨10が通過する際、各反射検出コイルL1は、励磁コイルLXが生成する磁界が硬貨10で反射した磁界により誘起電圧を誘起し、この誘起電圧に基づいた出力信号を出力するようになっている。
【0064】
また、励磁コイルLXは、全ての反射検出コイルL1を取り囲むように巻回されており、反射検出コイルL1の検知用コアが励磁コイルLXの励磁用コアとして共用されている。励磁コイルLXには後述する交流電源Zから単一周波数の交流電圧又は複数周波数を含む交流電圧が印可され、磁界を発生する。
【0065】
複数の透過検出コイルL2はそれぞれ、例えば、検知用コアに巻回されている。搬送路121を硬貨10が通過する際、各透過検出コイルL2は、励磁コイルLXが生成する磁界が硬貨10を透過した磁界により誘起電圧を誘起し、この誘起電圧に基づいた出力信号を出力するようになっている。
【0066】
ここで、励磁コイルLXに印加される交流電圧の周波数を適宜設定することによって、反射検出コイルL1の出力信号(以下、反射信号ともいう。)は、硬貨10の表面の材質に応じた出力となり、透過検出コイルL2の出力信号(以下、透過信号ともいう。)は、硬貨10の材質全体に関する出力となる。本実施形態では、数kHz〜数MHzの周波数の交流電圧を用いることができる。
【0067】
上記いずれか一部のみの反射検出コイルL1は、
図11に示すように硬貨10の中心10cが基板Tの開口部TAを通過するときに、硬貨10の端から硬貨10の内側に所定距離だけ入った位置に対応する検出コイルLであることが好ましい。上記いずれか一部のみの透過検出コイルL2についても同様である。このような態様とすることにより、硬貨10の径や、硬貨10の搬送位置によらず、硬貨10の端から一定の距離にあるエリアの信号を常に出力できるため、硬貨10の磁気特性をより安定的に検出することが可能となる。
【0068】
制御部120により、硬貨10の端から硬貨10の内側に所定距離だけ入った位置に対応する検出コイルLを選択する処理フローとしては、以下の態様が挙げられる。
図12を用いて以下の処理フローを説明するが、この処理フローは、反射検出コイルL1及び透過検出コイルL2のそれぞれに対して実施される。
【0069】
(1−1)まず、全検出コイルLの出力を採取する。
【0070】
(1−2)次に、硬貨10の径を検知する。硬貨10に重なる検出コイルL、すなわち出力変化が発生する検出コイルL、から最も外側に位置する検出コイルLを検出し、硬貨10の径を検知する。このとき、最も外側に位置する検出コイルLの位置を記憶部300の基準値と比較して金種識別を行ってもよい。
【0071】
最も外側に位置する検出コイルLの決定方法としては、
a)出力変化が最も小さい検出コイルLを検出する方法
b)出力変化の開始が最も遅い検出コイルLを検出する方法
c)出力変化がない検出コイルLの隣の検出コイルL(ただし出力変動が発生する検出コイルL)を検出する方法
のいずれかの方法、又は、それらを組合せた方法が挙げられる。ここで、出力変化とは、好ましくは出力の低下である。
【0072】
(1−3)最後に、上記(1−2)で検知された硬貨10の径に基づいて、硬貨10の端から硬貨10の内側に所定距離だけ入った位置に対応する検出コイルLを決定し、硬貨10の材質検知用の検出コイルLとする。
【0073】
また、上記いずれか一部のみの反射検出コイルL1は、硬貨10の中心10cが基板Tの開口部TAを通過するときに硬貨10の中心10cから所定距離だけ離れた位置に対応する検出コイルLであることも好ましい。上記いずれか一部のみの透過検出コイルL2についても同様である。このような態様とすることにより、中心10cに開口(貫通孔)が形成された硬貨10であっても、硬貨10の径や、硬貨10の搬送位置によらず、硬貨10の中心10cから一定の距離にあるエリアの信号を常に出力できるため、硬貨10の磁気特性をより安定的に検出することが可能となる。
【0074】
制御部120により、硬貨10の中心10cから所定距離だけ離れた位置に対応する検出コイルLを選択する処理フローとしては、以下の態様が挙げられる。
図12を用いて以下の処理フローを説明するが、この処理フローは、反射検出コイルL1及び透過検出コイルL2のそれぞれに対して実施される。
【0075】
(2−1)まず、全検出コイルLの出力を採取する。
【0076】
(2−2)次に、硬貨10の中心10cを検知検出する。具体的には、全検出コイルLのうち、最初に出力変化が発生する検出コイルLを中心10cに位置する検出コイルLとして検出する。また、上述のように硬貨10の径を検知した上で、硬貨10の中心10cに位置する検出コイルLを検出してもよい。
【0077】
(2−3)最後に、上記(2−2)で検知された硬貨10の中心10cに基づいて、硬貨10の中心10cから所定距離だけ離れた位置に対応する検出コイルLを決定し、硬貨10の材質検知用の検出コイルLとする。
【0078】
図12に示したように、複数の反射検出コイルL1の全ての出力信号に基づいて、上記いずれか一部のみの反射検出コイルL1を選択することによって、硬貨10の磁気特性の検知に特に適した反射検出コイルL1を選択することができるため、硬貨10の磁気特性の検知能力を更に向上することができる。透過検出コイルL2についても同様である。
【0079】
複数の検出コイルLは、各々、巻線型チップインダクタであることが好ましい。また、搬送方向120aと交差する方向、好ましくは直交する方向における、上記巻線型チップインダクタの幅は、0.3mm以上、3.0mm以下であることが好ましい。このような態様とすることにより、硬貨10の微細部分に対応する磁気信号を確実に採取することができる。
【0080】
本明細書において、複数の検出コイルL(反射検出コイルL1の場合でも、透過検出コイルL2の場合でもよい。以下同様。)のうち、いずれか一部のみの検出コイルLとは、複数の検出コイルLの少なくとも1つを含まない1つ以上の検出コイルLを意味し、複数の検出コイルLのうちの1つを除いた残りの全ての検出コイルLであっても、複数の検出コイルLのうちの1つの検出コイルLであってもよいが、1つ又は2つの検出コイルLであることが好ましい。これは、バイカラー硬貨101やバイカラー・クラッド硬貨103の検知の場合、外側のエッジ部がコア部分とリング部分の2箇所で発生するため、コア部分及びリング部分の少なくとも一方における磁気特性の検知能力を向上させるためである。このような観点からは、上記いずれか一部のみの検出コイルLは、2つ以上であることがより好ましい。
【0081】
また、磁気検出装置100では、複数の反射検出コイルL1のうち、いずれか一部のみの反射検出コイルL1の出力信号と、複数の透過検出コイルL2のうち、いずれか一部のみの透過検出コイルL2の出力信号と、に基づいて、硬貨10の磁気特性を検出する。以下、この検出方法を、反射透過比較検出とも言う。ここで、上述のように、反射信号は硬貨10の表面の材質を検出でき、透過信号は硬貨10の材質全体を検出できる。
【0082】
したがって、
図13に示すようなバイカラー・クラッド硬貨103と、バイカラー・クラッド硬貨103の表面層103a2と同一材質のみで構成されたモノメタル硬貨とを識別する場合、硬貨の表面層は同一材質であるため反射検出コイルL1では両硬貨とも同じ信号が検出されることになるが、硬貨内部の材質は異なるため透過検出コイルL2では両硬貨から互いに異なる信号が検出されることになる。このように、反射透過比較検出を用いることにより、単一周波数であっても、硬貨10のクラッド構造を識別することができる。
【0083】
具体的には、
図14に示すように、透過信号と反射信号の比が同程度であるモノメタル曲線V1の周辺領域V2に透過信号と反射信号の比が得られた硬貨はモノメタル硬貨と識別することができ、モノメタル曲線V1から離れた領域V3に透過信号と反射信号の比が得られた硬貨はクラッド構造を有していると識別することができる。これは、モノメタル硬貨は、均一材種であるため、反射信号と透過信号が、それぞれモノメタル硬貨の材質の導電率に応じた出力となるが、クラッド構造を有している場合、反射信号が表面層の材質の導電率に応じた出力となる一方で、透過信号がクラッド構造全体の材質の導電率に応じた出力となるためである。
【0084】
また、透過信号に対して反射信号が大きい領域V4に透過信号と反射信号の比が得られた場合は、クラッド層に含まれる材質が磁性材料であると識別することができる。すなわち、反射信号及び透過信号の比からクラッド構造に含まれる材質が磁性材料なのか、非磁性材料なのかを識別することができる。これは、磁性材料が含まれる場合、反射信号が増加し、モノメタル曲線V1から大きく外れるためである。
【0085】
更に、反射透過比較検出において、単一周波数の交流電圧ではなく、複数の周波数を含む交流電圧に基づいて励磁コイルLXの磁界を生成することにより、周波数に応じて硬貨10の表面や中心付近など、様々な部分の磁気特性を検知することができるため、硬貨10のクラッド構造の検知能力を容易に向上させることが可能となる。
【0086】
反射透過比較検出における、上記いずれか一部のみの反射検出コイルL1、及び上記いずれか一部のみの透過検出コイルL2は、硬貨10の中心10cが基板Tの開口部TAを通過するときに硬貨10の中央部に対応する検出コイルLであることが好ましい。このような態様とすることにより、硬貨10との重なり具合の大きな検出コイルLを用いて磁気特性を検出することができるため、材質検知能力を更に高めることができる。
【0087】
次に、透過検出コイルL2の配置について説明する。
図9に示されるように、透過検出コイルL2は、正面視したとき、左右非対称に配置される。すなわち、透過検出コイルL2を、搬送路121の上方から平面視すると、
図15に示すような配置となる。
【0088】
このように左右非対称に透過検出コイルL2を配置することにより、国A及び国Bいずれにおいても、径の小さな硬貨10S及び径の大きな硬貨10Lの両方に対して、硬貨の端部より内側に左右の透過検出コイルL21、L22を配置することが容易となる。その結果、硬貨10との重なり具合の大きな透過検出コイルL2を用いて磁気特性を検出することができるため、磁気検出装置100の検出能力と、それに基づく硬貨識別装置1000の識別能力(品質)を安定化することができる。
【0089】
実施形態1における磁気検出部110について以下に詳細を説明する。磁気検出部110は、例えば、
図16に示すように、センサ部(硬貨識別用磁気センサ)Yと、処理部Wと、を備える。
【0090】
磁気検出部110のセンサ部Yは、例えば、
図16に示すように、交流電源Z、励磁コイル(1次コイル)LXと、複数の検出コイル(2次コイル)L(L1、L2)と、基板T(
図16では図示省略)と、を備える。複数の反射検出コイルL1は、それぞれ、検出用コアCO1に巻回されており、複数の透過検出コイルL2は、それぞれ、検出用コアCO2に巻回されている。
【0091】
交流電源Zは、交流電圧Z1を生成するようになっている。この交流電源Zは、例えば、基板Tに配置されている。なお、交流電圧Z1は、例えば、1つの特定周波数を含む交流電圧、又は、2つ以上の特定周波数を含む交流電圧(合成信号)である。
【0092】
また、励磁コイルLXは、交流電源Zが出力した交流電圧Z1が印加されて、搬送路121に磁界Mを生成するようになっている。
【0093】
励磁コイルLXは、例えば、複数の反射検出コイルL1がそれぞれ巻回される複数の検出用コアCO1及び複数の反射検出コイルL1を囲むように巻回されている。この場合、
図16に示す励磁用コアCOXは、複数の検出用コアCO1で代用されることとなる。
【0094】
複数の検出コイルL(L1、L2)は、励磁コイルLXが発生する磁界Mにより誘起電圧を誘起し、誘起電圧に基づいた検知信号S21、S22を出力するようになっている。そして、複数の検出コイルL(L1、L2)は、硬貨10が搬送路121を搬送されることで変化した磁界Mにより誘起された誘起電圧に基づいて、それぞれ検知信号S21、S22を出力する。
【0095】
磁気検出部110の処理部Wは、センサ部Yが出力した検出信号を取得し、この検出信号を信号処理して判定用信号Soutを出力するようになっている。
【0096】
この処理部Wは、例えば、
図16に示すように、反射側アンプAMP1と、反射側ローパスフィルタLPF1と、反射側ハイパスフィルタHPF1と、反射側整流平滑回路RE1と、反射側AD変換回路ADC1と、透過側アンプAMP2と、透過側ローパスフィルタLPF2と、透過側ハイパスフィルタHPF2と、透過側整流平滑回路RE2と、透過側AD変換回路ADC2と、判定回路DCと、を備える。
【0097】
反射側アンプAMP1は、反射検出コイルL1が出力した検知信号S21を増幅するようになっている。
【0098】
また、反射側ローパスフィルタLPF1は、反射側アンプAMP1が増幅した検知信号S21をフィルタリングして、増幅された検知信号S21の低周波成分(信号S31)を出力するようになっている。
【0099】
例えば、この反射側ローパスフィルタLPF1は、増幅された検知信号S21について、予め規定された遮断周波数より低い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より高い周波数の成分を逓減させる。
【0100】
また、反射側ハイパスフィルタHPF1は、反射側アンプAMP1が増幅した検知信号S21をフィルタリングして、増幅された検知信号S21の高周波成分(信号S41)を出力するようになっている。なお、この反射側ハイパスフィルタHPF1は、BPF(帯域通過フィルタ)回路であってもよい。
【0101】
例えば、この反射側ハイパスフィルタHPF1は、検知信号S21について、予め規定された遮断周波数より高い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より低い周波数の成分を逓減させる。
【0102】
また、反射側整流平滑回路RE1は、反射側ハイパスフィルタHPF1が出力した信号S41を整流し且つ平滑化して信号S51を出力するようになっている。
【0103】
また、反射側AD変換回路ADC1は、反射側ローパスフィルタLPF1が出力した信号S31と反射側整流平滑回路RE1が出力した信号S51とを、アナログ/デジタル変換したデジタル信号を出力するようになっている。
【0104】
また、透過側アンプAMP2は、透過検出コイルL2が出力した検知信号S22を増幅するようになっている。
【0105】
また、透過側ローパスフィルタLPF2は、透過側アンプAMP2が増幅した検知信号S22をフィルタリングして、増幅された検知信号S22の低周波成分(信号S32)を出力するようになっている。
【0106】
例えば、この透過側ローパスフィルタLPF2は、増幅された検知信号S22について、予め規定された遮断周波数より低い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より高い周波数の成分を逓減させる。
【0107】
また、透過側ハイパスフィルタHPF2は、透過側アンプAMP2が増幅した検知信号S22をフィルタリングして、増幅された検知信号S22の高周波成分(信号S42)を出力するようになっている。なお、この透過側ハイパスフィルタHPF2は、BPF(帯域通過フィルタ)回路であってもよい。
【0108】
例えば、この透過側ハイパスフィルタHPF2は、検知信号S22について、予め規定された遮断周波数より高い周波数の成分をほぼ減衰させることなく、また、当該遮断周波数より低い周波数の成分を逓減させる。
【0109】
また、透過側整流平滑回路RE2は、透過側ハイパスフィルタHPF2が出力した信号S42を整流し且つ平滑化して信号S52を出力するようになっている。
【0110】
また、透過側AD変換回路ADC2は、透過側ローパスフィルタLPF2が出力した信号S32と透過側整流平滑回路RE2が出力した信号S52とを、アナログ/デジタル変換したデジタル信号を出力するようになっている。
【0111】
そして、判定回路DCは、反射側AD変換回路ADC1と透過側AD変換回路ADC2とが出力したデジタル信号を信号処理して、判定用信号Soutを出力するようになっている。なお、本実施形態における処理部Wはアナログ信号処理を行っているが、処理部Wでの信号処理は、デジタル処理することにより行ってもよい。
【0112】
(実施形態1の変形例1)
実施形態1の変形例1に係る磁気検出装置では、
図17に示すように、実施形態1の磁気検出装置100におけるスペーサUの構造を変更した。
【0113】
実施形態1の変形例1に係る磁気検出装置100Aは、スペーサUとは異なる構造のスペーサUAを備えている。これにより、実施形態1に係る磁気検出装置100と、実施形態1の変形例1に係る磁気検出装置100Aとは、搬送路121の構造が互いに異なる。
【0114】
具体的には、
図18に示すように、実施形態1に係る磁気検出装置100の片寄面123aと、実施形態1の変形例1に係る磁気検出装置100Aの片寄面123bとは、取付基準SB及び門構えSCに対して互いに異なる場所に位置している。ここで、
図18において、スペーサUは固定部材U1によって硬貨識別装置1000に取り付けられている。
【0115】
このように搬送路121の両端を規定するスペーサU、UAを筐体Sと別部品とすることにより、上述のように、片寄面123の位置、搬送路121の幅w、長さl及び位置、門構えSCの位置といった硬貨10の搬送に関する構造の位置関係を任意に設定できるため、種々の搭載装置の要求仕様に対応可能となる。これらの構造の位置関係は、複数の検出コイルLが実装される基板Tの形状や磁気検出装置100、100Aの搭載装置への取り付け位置の変更することなく設定可能であることから、磁気検出装置100、100Aの検出能力と、それに基づく硬貨識別装置1000の識別能力(品質)を安定化することができる。
【0116】
このように、本実施形態に係る磁気検出装置100、100Aは、磁気検出装置100、100Aの用途、及び磁気検出装置100、100Aが搭載される機種の少なくとも一方に応じて、そのサイズが変更可能なように構成されている。
【0117】
また、本実施形態に係る磁気検出装置100、100Aにおける搬送路121は、磁気検出装置100、100Aの用途、及び磁気検出装置100、100Aが搭載される機種の少なくとも一方に応じて、その幅wが変更可能なように構成されている。
【0118】
(実施形態1の変形例2)
実施形態1における制御部120では、全検出コイルLの出力を採取した上で、いずれか一部のみの検出コイルLを選択した。しかしながら、硬貨10の磁気特性を検出するに当たって、対象となる硬貨10の種類が予め分っている場合、上記いずれか一部のみの検出コイルLは、硬貨10の種類に応じて硬貨10の磁気特性の検出前に決定された検出コイルLであることも好ましい。このような態様とすることにより、記憶部300において全検出コイルLの出力を記憶する必要がなくなるため、記憶部300のメモリ容量の減少を抑制することが可能となる。また、全検出コイルLの出力を採取してから材質検知用の検出コイルLを選択するフローを省略することができるため、処理速度を向上させることが可能となる。
【0119】
(実施形態1の変形例3)
実施形態1では、搬送路121の搬送面122の上方及び下方の各々に複数の検出コイルLが設けられていたが、複数の検出コイルLは、搬送面122のいずれか一方、すなわち、搬送路121の搬送面122を介して互いに隣接する2つの空間のうちのいずれか一方、のみに設けられていてもよい。例えば、磁気検出装置100は、反射検出コイルL1及び透過検出コイルL2の一方の全てを有していなくてもよい。このように、複数の検出コイルLが、搬送路121の搬送面122の少なくとも一方において、硬貨10の搬送方向120aと交差する方向に配置されることにより、複数の検出コイルLは、搬送される硬貨10の磁気特性に関する信号を、複数のエリア毎に出力することができる。
【0120】
(実施形態1の変形例4)
実施形態1では、複数の検出コイルLが配置される間隔は特に限定されなかったが、搬送路121を搬送される硬貨10の種類によって、複数の検出コイルLは、所定の間隔で配置されていてもよい。
【0121】
硬貨10が、
図19(a)に示すような貫通孔10hを有する硬貨104である場合、複数の反射検出コイルL1は、一定のピッチで配置された2つ以上の反射検出コイルL1を含む1つの反射検出コイル群LA1からなり、搬送面122を平面視したとき、反射コイル群LA1の連続する2つ以上の反射検出コイルL1は、平面視した貫通孔10hと同じ大きさの領域10h
1内に収まることが好ましい。このような態様とすることにより、貫通孔10hの有無を捉えることが可能となる。
【0122】
また、硬貨10が貫通孔10hを有する硬貨104である場合、
図19(b)に示すように、複数の透過検出コイルL2は、一定のピッチで配置された2つ以上の透過検出コイルL2を含む2つの透過検出コイル群LA2からなり、搬送面122を平面視したとき、各透過検出コイル群LA2の連続する2つ以上の透過検出コイルL2は、平面視した貫通孔10hと同じ大きさの領域10h
1内に収まることが好ましい。この場合、透過検出コイルL2全体では、一定のピッチで配置されていないが、各透過検出コイル群LA2では2つ以上の透過検出コイルL2が、一定のピッチ(全ての透過検出コイル群LA2に共通のピッチでもよい)で配置されることになる。このような態様とすることにより、貫通孔10hの有無を捉えることが可能となる。
【0123】
なお、貫通孔10hとは、硬貨104を貫く開口である。また、連続する2つ以上の検出コイル(反射検出コイルL1又は透過検出コイルL2)が、平面視した貫通孔10hと同じ大きさの領域10h
1内に収まるとは、搬送面122を平面視したとき、連続する2つ以上の検出コイルの各々の全体と重なるように領域10h
1を配置し得ることをいう。
【0124】
検知対象の硬貨10に異なる径の貫通孔10hを有する硬貨104が複数種含まれる場合は、平面視した最小径の貫通孔10hと同じ大きさの領域10h
1内に連続する2つ以上の検出コイル(反射検出コイルL1又は透過検出コイルL2)が収まることが好ましい。
【0125】
(実施形態1の変形例5)
上記実施形態1の変形例4では、硬貨10が、貫通孔10hを有する硬貨104である場合の好ましい態様について説明した。本変形例では、硬貨10がバイカラー硬貨101である場合の好ましい態様について説明する。
【0126】
硬貨10が、
図20(a)に示すような、中心部のコア部分101aと周辺部のリング部分101bとで異なる材料を用いて形成されたバイカラー硬貨101である場合、複数の反射検出コイルL1は、一定のピッチで配置された2つ以上の反射検出コイルL1を含む1つの反射検出コイル群LA1からなり、搬送面122を平面視したとき、反射検出コイル群LA1の連続する2つ以上の反射検出コイルL1は、リング部分101bの幅w1と同じ幅w1の範囲内に収まることが好ましい。このような態様とすることにより、リング部分101bのみの信号を捉えることが可能となる。
【0127】
また、硬貨10がバイカラー硬貨101である場合、
図20(b)に示すように、複数の透過検出コイルL2は、一定のピッチで配置された2つ以上の透過検出コイルL2を含む2つの透過検出コイル群LA2からなり、搬送面122を平面視したとき、各透過検出コイル群LA2の連続する2つ以上の透過検出コイルL2は、リング部分101bの幅w1と同じ幅w1の範囲内に収まることが好ましい。この場合も、透過検出コイルL2全体では、一定のピッチで配置されていないが、各透過検出コイル群LA2では2つ以上の透過検出コイルL2が、一定のピッチ(全ての透過検出コイル群LA2に共通のピッチでもよい)で配置されることになる。このような態様とすることにより、リング部分101bのみの信号を捉えることが可能となる。
【0128】
なお、連続する2つ以上の検出コイル(反射検出コイルL1又は透過検出コイルL2)が、リング部分101bの幅w1と同じ幅w1の範囲内に収まるとは、リング部分101bの幅w1と同じ幅w1の範囲内に、連続する2つ以上の検出コイルの各々の全体を配置し得るこという。
【0129】
なお、リング部分101bの幅w1とは、リング部分101bの最小の幅を意味し、バイカラー硬貨101のリング部分101bの幅w1が場所によって異なる場合は、リング部分101bの最小の幅と同じ幅の範囲内に連続する2つ以上の検出コイル(反射検出コイルL1又は透過検出コイルL2)が収まることが好ましい。また、検知対象の硬貨10に、リング部分101bの幅w1が互いに異なるバイカラー硬貨101が複数種含まれる場合は、リング部分101bの幅w1が最も小さいバイカラー硬貨101のリング部分101bの幅w1と同じ幅w1の範囲内に連続する2つ以上の検出コイル(反射検出コイルL1又は透過検出コイルL2)が収まることが好ましい。
【0130】
上述のように、上記実施形態に係る磁気検出装置100は、硬貨10が搬送される搬送路121と、搬送路121の搬送面122の少なくとも一方に設けられ、かつ、硬貨10の搬送方向120aと交差する方向に配置された複数の検出コイルLを備えることから、複数の検出コイルLは、搬送される硬貨10の磁気特性に関する信号(磁気信号)を、複数のエリア毎に出力することができる。
【0131】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置100は、複数の検出コイルLのうち、いずれか一部のみの検出コイルLの出力信号に基づいて、硬貨10の磁気特性を検出する制御部120を備えることから、複数のエリアの出力信号のうち、硬貨10への重なり具合の大きな検出コイルLのものに基づいて硬貨10の磁気特性を検知することが可能になる。その結果、硬貨10の径の影響を低減でき、硬貨10の磁気特性(例えば材質特性)の検知能力を向上することができる。また、片寄外れといった硬貨10の搬送位置の変動に起因する出力の変動を低減することができる。
【0132】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置100は、複数の検出コイルLが配置された基板Tを更に備え、搬送路121は、基板Tの開口部TAを貫通するように配置され、上記いずれか一部のみの検出コイルは、硬貨10の中心10cが開口部TAを通過するときに硬貨10の端から硬貨10の内側に所定距離だけ入った位置に対応する検出コイルLであることから、硬貨10の径や、硬貨10の搬送位置によらず、硬貨10の端から一定の距離にあるエリアの信号を常に出力できるため、硬貨10の磁気特性をより安定的に検出することが可能となる。
【0133】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置100は、複数の検出コイルLが配置された基板Tを更に備え、搬送路121は、基板Tの開口部TAを貫通するように配置され、上記いずれか一部のみの検出コイルLは、硬貨10の中心10cが開口部TAを通過するときに硬貨10の中心10cから所定距離だけ離れた位置に対応する検出コイルLであることから、中心10cに開口(貫通孔)が形成された硬貨10であっても、硬貨10の径や、硬貨10の搬送位置によらず、硬貨10の中心10cから一定の距離にあるエリアの信号を常に出力できるため、硬貨10の磁気特性をより安定的に検出することが可能となる。
【0134】
また、上記実施形態において、上記いずれか一部のみの検出コイルLは、1つ又は2つであることから、バイカラー硬貨101やバイカラー・クラッド硬貨103の磁気特性の検知能力を向上させることができる。
【0135】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置100は、搬送路121に磁界Mを生成する励磁コイルLXを更に備え、複数の検出コイルLは、搬送面122に対して、励磁コイルLXと同じ側に配置された複数の反射検出コイルL1と、搬送面122に対して、励磁コイルLXと反対側に配置された複数の透過検出コイルL2と、を含み、制御部120は、複数の反射検出コイルL1のうち、いずれか一部のみの反射検出コイルL1の出力信号と、複数の透過検出コイルL2のうち、いずれか一部のみの透過検出コイルL2の出力信号とに基づいて、硬貨10の磁気特性を検出することから、複数の反射検出コイルL1により、硬貨10の表面の反射信号を検知することができ、複数の透過検出コイルL2により、硬貨10の表面及び内部を合わせた透過信号を検知することができる。また、複数の反射検出コイルL1のうちの任意の一部の反射検出コイルL1の出力信号(反射信号)と、複数の透過検出コイルL2のうちの任意の一部の透過検出コイルL2の出力信号(透過信号)とに基づいて、硬貨10の磁気特性を検出するため、検出コイルLの反射信号及び透過信号を比較することが可能となる。その結果、単一周波数の電圧に基づいて励磁コイルLXの磁界Mが生成される場合であっても、硬貨10のクラッド構造を検知することが可能となる。更に、複数の周波数を含む電圧に基づいて励磁コイルLXの磁界Mを生成することにより、硬貨10のクラッド構造の検知能力を容易に向上させることが可能となる。また、検出コイルLの反射信号及び透過信号より、クラッド構造に含まれる材質が磁性材料であるか、非磁性材料であるかを識別することが可能となる。
【0136】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置100は、複数の検出コイルLが配置された基板Tを更に備え、搬送路121は、基板Tの開口部TAを貫通するように配置され、上記いずれか一部のみの反射検出コイルL1、及び上記いずれか一部のみの透過検出コイルL2は、硬貨10の中心10cが開口部TAを通過するときに硬貨10の中央部に対応する検出コイルLであることから、硬貨10との重なり具合の大きな検出コイルLを用いて磁気特性を検出することができるため、材質検知能力を更に高めることができる。
【0137】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置100、100Aは、磁気検出装置100、100Aの用途、及び磁気検出装置100、100Aが搭載される機種の少なくとも一方に応じて、そのサイズが変更可能なように構成されていることから、任意の搬送路121の幅wに対応できるため、種々の用途や種々の搭載装置の要求仕様に対応可能となる。
【0138】
また、上記実施形態において、搬送路121は、磁気検出装置100、100Aの用途、及び磁気検出装置100、100Aが搭載される機種の少なくとも一方に応じて、その幅wが変更可能なように構成されていることから、任意の搬送路121の幅wに対応できるため、種々の用途や種々の搭載装置の要求仕様に対応可能となる。
【0139】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置100、100Aは、複数の検出コイルLを収容する筐体Sと、搬送路121の幅方向における搬送路121の両端を規定する部材U、UAと、を更に備える。このように部材U、UAを筐体Sと別部品とすることにより、片寄面123の位置、搬送路121の幅w、長さl及び位置、門構えSCの位置といった硬貨10の搬送に関する構造の位置関係を任意に設定できるため、種々の搭載装置の要求仕様に対応可能となる。これらの構造の位置関係は、コイルが実装される基板Tの形状や磁気検出装置100、100Aの搭載装置への取付位置の変更することなく設定可能であることから、磁気検出装置100、100Aの検出能力と、それに基づく硬貨識別装置1000の識別能力(品質)を安定化することができる。
【0140】
また、上記実施形態において、搬送面122を水平にした状態で搬送方向120aに沿って見たとき(正面視したとき)、搬送面122の一方において、磁気検出装置100、100Aの形状は、左右非対称であることから、硬貨10の搬送方向120aに対して反転した二通りの取付方法で磁気検出装置100、100Aを搭載装置に取り付けることができるため、片寄面123の位置、搬送路121の幅w、長さl及び位置、門構えSCの位置といった硬貨10の搬送に関する構造の位置関係をより柔軟に設定でき、種々の搭載装置の要求仕様に対応可能となる。これらの取付方法は、コイルが実装される基板Tの形状や磁気検出装置100、100Aの搭載装置への取付位置の変更することなく設定可能であることから、磁気検出装置100、100Aの検出能力と、それに基づく硬貨識別装置1000の識別能力(品質)を安定化することができる。
【0141】
また、上記実施形態において、制御部120は、複数の検出コイルLの全ての出力信号に基づいて、上記いずれか一部のみの検出コイルLを選択することから、硬貨の磁気特性の検知に特に適した検出コイルLを選択することができるため、硬貨の磁気特性の検知能力を更に向上することができる。
【0142】
また、上記実施形態において、上記いずれか一部のみの検出コイルLは、硬貨10の種類に応じて硬貨10の磁気特性の検出前に決定された検出コイルLであることから、記憶部300において全検出コイルLの出力を記憶する必要がなくなるため、記憶部300のメモリ容量の減少を抑制することが可能となる。また、全検出コイルLの出力を採取してから材質検知用の検出コイルLを選択するフローを省略することができるため、処理速度を向上させることが可能となる。
【0143】
また、上記実施形態において、硬貨10(硬貨104)は、貫通孔10hを有し、複数の検出コイルLは、一定のピッチで配置された2つ以上の検出コイルLを含む1つ以上の検出コイル群LA1、LA2を含み、搬送面122を平面視したとき、各検出コイル群LA1、LA2の連続する2つ以上の検出コイルLは、平面視した貫通孔10hと同じ大きさの領域10h
1内に収まることから、貫通孔10hの有無を捉えることが可能となる。
【0144】
また、上記実施形態において、硬貨10は、中心部のコア部分101aと周辺部のリング部分101bとで異なる材料を用いて形成されたバイカラー硬貨101であり、複数の検出コイルLは、一定のピッチで配置された2つ以上の検出コイルLを含む1つ以上の検出コイル群LA1、LA2を含み、搬送122を平面視したとき、各検出コイル群LA1、LA2の連続する2つ以上の検出コイルは、リング部分の幅w1と同じ幅w1の範囲内に収まることから、リング部分101bのみの信号を捉えることが可能となる。
【0145】
また、上記実施形態において、各検出コイルLとしては、巻線型チップインダクタが好適である。
【0146】
また、上記実施形態において、搬送方向120aと交差する方向における、上記巻線型チップインダクタの幅は、0.3mm以上、3.0mm以下であることから、硬貨10の微細部分に対応する磁気信号を確実に採取することができる。
【0147】
また、上記実施形態に係る硬貨識別装置1000は、磁気検出装置100、100Aと、磁気検出装置100、100Aの検出結果に基づいて、硬貨10を識別する識別部210と、を備えることから、硬貨10の識別能力を向上することができる。
【0148】
また、上記実施形態に係る磁気検出装置による磁気検出方法は、制御部120と、硬貨10が搬送される搬送路121の搬送面122の少なくとも一方に設けられ、かつ、硬貨10の搬送方向120aと交差する方向に配置された複数の検出コイルLと、を備える磁気検出装置100による磁気検出方法であって、制御部120が、複数の検出コイルLのうち、いずれか一部のみの検出コイルLの出力信号に基づいて、硬貨10の磁気特性を検出するステップを含むことから、上記実施形態に係る磁気検出装置100の場合と同様に、硬貨10の磁気特性の検知能力を向上させ、かつ、硬貨10の搬送位置の変動に起因する出力の変動を低減することができる。
【0149】
(変形形態)
上記実施形態では、各検出コイルLの出力信号に基づいて硬貨10の磁気特性を検出する場合、すなわち、各検出コイルLと、磁気検出部110の各出力チャンネルとが互いに1対1で対応し、制御部120が一つの検出コイルL単位で硬貨10の磁気特性を検出する場合について説明したが、磁気検出部110の各出力チャンネルは、複数の検出コイルLの出力信号を合成した合成信号を出力し、制御部120が複数の検出コイルL単位で硬貨10の磁気特性を検出してもよい。
【0150】
より具体的には、
図21に示すように、反射検出コイルL1は、搬送面122と平行に2列に配列されてもよく、反射磁気検出用の複数の出力チャンネルは、各々、上下方向で互いに隣接する2つの反射検出コイルL1a及びL1bの出力信号を合成した合成信号を出力してもよく、また、透過磁気検出用の各出力チャンネルは、各々、搬送方向120aに直交する方向で互いに隣接する2つの透過検出コイルL2a及びL2bの出力信号を合成した合成信号を出力してもよい。更に、同じ出力チャンネルの2つの反射検出コイルL1a及びL1bは、互いに逆位相の信号を出力するように構成されてもよい。同じ出力チャンネルの2つの透過検出コイルL2a及びL2bについても同様である。
【0151】
上記実施形態では、正面視したとき、搬送面122の一方において磁気検出装置100の形状が左右非対称である場合について説明したが、正面視したとき、搬送面122の一方、好ましくは上方において磁気検出装置100の形状は、左右対称であってもよい。また、硬貨10が、フィンや搬送ベルト等の搬送手段によらず、自重で転動したり、押し出し機構等により搬送路121上に打ち出されたりすることにより、搬送路121を通過する場合、磁気検出装置100は、搬送手段の配置用隙間(門構えSC)が形成されない形状であってもよい。この場合、正面視したとき、搬送面122の上方において磁気検出装置100の形状は、通常、左右対称となる。
【0152】
上記実施形態では、基板Tの片面のみに複数の検出コイルLが実装された場合について説明したが、基板Tの両面にそれぞれ複数の検出コイルLを実装してもよい。
【0153】
上記実施形態では、磁気検出部110が相互誘導型の磁気センサを有する場合について説明したが、磁気検出部110は、相互誘導型の磁気センサの代わりに自己励磁型の磁気センサを有してもよい。
【0154】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。