特許第6875912号(P6875912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6875912-金型遠心力鋳造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875912
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】金型遠心力鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 13/02 20060101AFI20210517BHJP
   B22D 13/10 20060101ALI20210517BHJP
   B22D 13/12 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B22D13/02 501Z
   B22D13/10 506
   B22D13/12
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-70727(P2017-70727)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171627(P2018-171627A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】澤田 健二
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−001404(JP,A)
【文献】 特開2003−103352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 13/00〜13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水の流通路が金型に設けられ、その金型を前記流通路に冷却水を流しつつ回転させながら金型内に溶湯を流し込んで鋳造管を鋳造し、その鋳造管を金型から引き抜き脱型する金型遠心力鋳造法において、
上記金型流通後の冷却水の温度(W)を測定し、その測定温度(W)が、一定時間、一定に保たれた後、その一定に保たれた温度から0.1℃下降したタイミングで前記鋳造管の引き抜きを行うことを特徴とする金型遠心力鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金型を冷却水で冷却しつつ回転させながら金型内に溶湯を流し込んで鋳造管を製造する金型遠心力鋳造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダクタイル鋳鉄管等の鋳造管は、通常、筒状の金枠を筒軸心を中心に回転させながら、金枠の内側に溶湯を供給し、溶湯に遠心力を作用させた状態で前記鋳造管を製造(鋳造)する金型遠心力鋳造方法によって製造されている。
この製造時、上記金枠内部には冷却水の流通路が設けられて溶湯からなる鋳造管の冷却が行われ、その冷却度が適切になると、爪を持った引き抜き機によって鋳造管を金型から引き抜いて脱型している(特許文献1明細書段落0010〜0019、図1図2、特許文献2明細書段落0023〜0031,図1図5等参照)。
【0003】
従来、上記冷却度が適切になる金型の冷却回転時間を経験則から割り出し、その割り出した時間(設定時間)に基づき、その設定時間になると、上記金型からの鋳造管の引き抜きを行っており、その引き抜きの際、鋳鉄管の表面色を見ながらその引き抜き速度を微調整している。
また、引き抜き時、冷却水の金型通過量を一時的に減少させて、金型を膨張させ、鋳鉄管の引き抜きを容易にしている技術もある(特許文献1、明細書段落0009参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−153962号公報
【特許文献2】特開2003−181610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記経験則に基づく引き抜きは、周りの温度等の環境のよって、引き抜きに最適な金型冷却回転時間が変化し、その金型冷却回転時間と経験則から定めた金型冷却回転時間(設定時間)が異なって、適切な引き抜きが行われない場合が多い。例えば、鋳造設備に何らかのトラブルが生じ、鋳造作業が中断して金枠の温度が変わったり、鋳込み温度が変わったりすると、溶湯の凝固時間が変わるため、経験則による設定時間による引き抜き時が適切でなくなる。
【0006】
この引き抜き時が適切でないと、例えば、金型冷却回転時間が短いと、鋳鉄管の凝固が完了していないため、引き抜き機の爪が鋳鉄管の内面を滑り、引き抜きが円滑に行われない場合が生じたり、鋳鉄管の内面に爪によるひっかき傷が生じたりする。一方、金型冷却回転時間が長いと、金型が収縮し、金型と鋳鉄管と隙間が小さくなり、引き抜きが困難になる場合がある。
このように、鋳鉄管の引き抜きが適切に行われないと、鋳造管の製造ピッチ(製造間隔)が崩れ、それによって、溶湯温度や周囲環境の変化が生じ、鋳鉄管の品質がバラツク恐れがある。また、生産性も低下する。
【0007】
この発明は、以上の実状の下、金型から鋳鉄管の引き抜きを適切に行い得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、上記の金型遠心力鋳造法において、鋳鉄は共晶凝固中の温度がほぼ一定となる時があり、その時、冷却水の温度も一定となることを発見した。この発明は、その発見に基づき上記課題を達成したものであって、冷却水の流通路が金型に設けられ、その金型を前記流通路に冷却水を流しつつ回転させながら金型内に溶湯を流し込んで鋳造管を鋳造し、その鋳造管を金型から引き抜き脱型する金型遠心力鋳造法において、前記金型流通後の冷却水の温度を測定し、その測定温度が、一定時間、一定に保たれた後、下降した(下がった)タイミングで前記鋳造管の引き抜きを行うようにしたのである。
【0009】
このようにすると、冷却水の温度を連続的に測定し、その測定温度が一定となって、下降し始めた時点(タイミング)で、金型から鋳鉄管の引き抜きを開始すれば、その時が、鋳鉄管の共晶凝固の完了した時となるため、円滑な引き抜きを行うことができる。
なお、上記測定温度が一定時間、一定に保たれる時(タイミング)は、溶湯の性状、金型の大きさや材質、鋳造管の形式等によって異なるが、冷却水の温度を連続的に測定すれば、その時間及び温度は必ず生じる。このため、溶湯の性状等が異なっても、金型から鋳鉄管の引き抜きタイミングは確認できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、以上のように構成して、冷却水の温度に基づき、鋳鉄管をその共晶凝固の完了した時に引き抜きを行うため、一定のタイミングで前記引き抜きを行うことができ、自動化が可能であって、鋳鉄管の生産を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明に係わる金型遠心力鋳造方法の一実施形態の溶湯供給開始からの時間と冷却水温度との関係図
【発明を実施するための形態】
【0012】
特許文献1の図1図2等で示される、筒状の金枠を筒軸心を中心に回転させながら、金枠の内側に溶湯を供給し、溶湯に遠心力を作用させた状態で前記鋳造管を鋳造する金型遠心力鋳造機を用意した。
この鋳造機は、金枠内部の流路に冷却水が水槽から流通し、かつ循環して溶湯からなる鋳造管の冷却を行うものである。
【0013】
この鋳造において、金型内への溶湯の供給開始時から鋳鉄管の引き抜きを行うまでの時間Tを計測した。その時間Tにおいて、溶湯供給完了(溶湯の流し込み完了時点t)直後から冷却時間タイマーを始動(計測)した。
その計測とともに、金型内部の流路から排出された直後の冷却水の温度(排水温度)Wを測定した。その測定は、一般的なデジタル温度計を使用した。
その溶湯供給開始からの時間Tと排水温度(冷却水温度)Wとの関係を図1に示す。
【0014】
この図1において、溶湯供給開始からの時間Tが溶湯供給完了tを経て開始から70秒を過ぎた辺りから、排水温度Wが一定(58℃近く)となり、溶湯供給時間Tが90秒を過ぎた辺り(T=t)から、排水温度Wが前記一定から下がり(一定から0.1℃程度下がり)始め、その後、徐々に低下した。
【0015】
その、排水温度Wが一定から下がりだした時点(タイミング)、例えば、0.1℃下がった時点で、金型内の鋳鉄管を引き出したところ、何の障害もなく、その引き出しを行うことができた。
【0016】
この溶湯供給開始からの時間Tと排水温度(冷却水温度)Wとの関係は、この実施形態の金型遠心力鋳造以外の各種、例えば、溶湯の性状が異なったり、金型の大きさや材質、鋳造管のNS等の形式が異なっていたりしても、同様に、溶湯供給開始から一定時間(例えば、120秒)を過ぎた辺りから、排水温度Wが一定(例えば、約54℃)となり、その一定時間を過ぎた辺りから(例えば、128秒後)、排水温度Wが前記一定から下がり始めた(例えば、0.1℃下がった)。その排水温度Wが下がりだした時点で、金型内の鋳鉄管を引き出したところ、何の障害もなく、その引き出しを行うことができた。
【0017】
その金型の大きさ等の異なる各遠心力鋳造において、前記一定時間から下がり始めるまでの時間差は0〜10秒程度であった。このとき、これまでの経験則によって設定した冷却時間タイマーは前記排水温度Wが一定から下がりだした時点から数秒後(例えば、5秒後)に終了しており、排水温度Wを監視しておれば、厚肉部などの凝固温度を測定できない個所も含めた鋳造管全体の冷却状態(凝固状態)を把握することができ、何らかのトラブルが生じて、作業が中止するなどの作業変化が生じた場合でも、最適な冷却時間で引き抜くことが可能であると考える。
【0018】
このため、この発明は、各種の金型遠心力鋳造機において、溶湯の性状、金型の大きさや材質、鋳造管の形式等が変化しても、上記溶湯供給開始からの時間Tに対する排水温度(冷却水温度)Wを測定し、その測定値に応じて、例えば、排水温度Wが下がりだした時点(タイミング)、例えば、0.1℃下がった時点、若しくはこの時点から一定時間(例えば、0〜10秒)で、溶湯供給完了時tから始動した冷却時間タイマーを完了とし、その完了時、上記鋳鉄管の引き抜き操作をすれば、この発明の作用効果を得ることができることが理解できる。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0019】
T 溶湯供給開始からの時間
排水温度(冷却水温度)
t 引き抜き開始時間
冷却時間タイマー作動(計測)開始時(溶湯供給完了時)
図1