特許第6875917号(P6875917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875917密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法及び密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875917
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法及び密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/16 20060101AFI20210517BHJP
   C22C 18/00 20060101ALI20210517BHJP
   C23C 2/26 20060101ALI20210517BHJP
   C22C 18/04 20060101ALN20210517BHJP
   C22C 21/10 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   C23C8/16
   C22C18/00
   C23C2/26
   !C22C18/04
   !C22C21/10
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-72391(P2017-72391)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172743(P2018-172743A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 一郎
(72)【発明者】
【氏名】中溝 浩行
(72)【発明者】
【氏名】安田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】山本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 忠
(72)【発明者】
【氏名】湯倉 義孝
(72)【発明者】
【氏名】太田 勉
(72)【発明者】
【氏名】梶本 真一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昇
(72)【発明者】
【氏名】土山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】村井 裕輔
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−047672(JP,A)
【文献】 特開2003−312774(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0281207(US,A1)
【文献】 特開2012−132061(JP,A)
【文献】 特開2016−057087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/00−16/56
C23C 2/00− 2/40
F16J12/00−13/24
B01J 3/00− 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側分割体と下側分割体とが合体して構成される密閉容器において当該上側分割体を当該下側分割体との合体位置に対して位置合わせする密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法であって、
前記上側分割体を前記下側分割体の上方へ移動させる上方移動工程と、
前記下側分割体の上方に位置する前記上側分割体を、第1ガイドポールを有する第1ガイド機構によって前記合体位置に向かって所定の位置精度でガイドして降下させる第1降下工程と、
前記第1ガイド機構によってガイドされて降下中の前記上側分割体を、前記第1ガイドポールを中心とする径方向に離れた別の位置に設けられた第2ガイド機構によって前記第1ガイド機構よりも高い位置精度でガイドして前記下側分割体との合体位置に向かって降下させる第2降下工程と、を少なくとも備える
ことを特徴とする、密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【請求項2】
前記第1ガイド機構は、
前記上側分割体に設けられた第1位置合わせ孔と、
前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、前記第1位置合わせ孔に所定のクリアランスを有した状態で挿通される前記第1ガイドポールと、を少なくとも含み、
前記第2ガイド機構は、
前記上側分割体に設けられた第2位置合わせ孔と、
前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、前記第2位置合わせ孔に前記所定のクリアランスよりも小さいクリアランスを有した状態で前記第2位置合わせ孔に挿通される第2ガイドポールと、を少なくとも含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【請求項3】
前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔との組が、少なくとも二つ備えられるとともに、一の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さは、他の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さよりも高い位置にある
ことを特徴とする、請求項2に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【請求項4】
前記第1位置合わせ孔に前記第1ガイドポールを挿通して前記上側分割体を降下させることにより、前記第2位置合わせ孔が前記第2ガイドポールを挿通可能な位置に導かれるように、前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔とのクリアランスが設定されている
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【請求項5】
上側分割体と下側分割体とが合体して構成される密閉容器において当該上側分割体を当該下側分割体との合体位置に対して位置合わせする密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置であって、
第1ガイドポールを有し、前記下側分割体の上方に位置している前記上側分割体を降下させる際に、当該上側分割体を当該下側分割体との合体位置に向かって所定の位置精度でガイドする棒状の第1ガイド機構と、
前記第1ガイド機構にガイドされて降下中の前記上側分割体を、前記第1ガイドポールを中心とする径方向に離れた別の位置に設けられ、前記第1ガイド機構よりも高い位置精度で前記下側分割体との合体位置に向かってガイドする第2ガイド機構と、を少なくとも備える、
ことを特徴とする、密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【請求項6】
前記第1ガイド機構は、
前記上側分割体に設けられた第1位置合わせ孔と、
前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、当該第1位置合わせ孔に所定のクリアランスを有した状態で挿通される前記第1ガイドポールと、を少なくとも含み、
前記第2ガイド機構は、
前記上側分割体に設けられた第2位置合わせ孔と、
前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、当該第2位置合わせ孔に前記所定のクリアランスよりも小さいクリアランスを有した状態で挿通される第2ガイドポールと、を少なくとも含む
ことを特徴とする、請求項5に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【請求項7】
前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔との組が、少なくとも二つ備えられるとともに、一の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さは、他の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さよりも高い位置にある
ことを特徴とする、請求項6に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【請求項8】
前記第1位置合わせ孔に前記第1ガイドポールを挿通して前記上側分割体を降下させることにより、前記第2位置合わせ孔が前記第2ガイドポールを挿通可能な位置に導かれるように、前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔とのクリアランスが設定されている
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器構成部材を、精密に合体位置に合わせる方法及び精密に合体位置に合わせる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板の意匠性及び耐食性の観点から、鋼板の表面を酸化させて、鋼板の表面に青色皮膜を形成する表面処理技術(ブルーイング)が知られている。例えば、特許文献1には、鋼帯を巻いたコイルを密閉容器(熱処理炉本体)中で水蒸気と接触させて、ブルーイングする方法が開示されている。
【0003】
また、建築物の屋根材や外装材、家電製品、自動車などの分野では、意匠性などの観点から黒色の外観を有する鋼板のニーズが高まっている。鋼板の表面を黒色化する方法としては、鋼板の表面に黒色塗料を塗布して黒色塗膜を形成する方法があるが、黒色塗膜を形成せずに、めっき鋼板の金属光沢および銀白色の色調を遮蔽して、めっき層そのものを酸化させて黒色化する方法が提案されている。例えば、特許文献2および特許文献3には、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を、密閉容器の内部で水蒸気と接触させて、黒色化した酸化皮膜を溶融Al、Mg含有Znめっき層に形成させる方法が記載されている。
【0004】
以下、この明細書では、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を、単に「めっき鋼板」とも言うことがある。また、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板の溶融Al、Mg含有Znめっき層を、単に「めっき層」ということがある。さらに、溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板の溶融Al、Mg含有Znめっき層を黒色化するために、密閉容器の内部で溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板に水蒸気を接触させることを、単に「水蒸気処理」ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−132061号公報
【特許文献2】特許第5335159号公報
【特許文献3】特許第6072952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1に記載されたブルーイングを行う場合、鋼板を密閉容器の内部に収容して行われるため、大型の密閉容器が用いられる。この大型の密閉容器は、鋼板を支持するベースフレームと、このベースフレームに合体して組み付けられる内カバー及び外カバーとに分割可能に構成されている。密閉容器内への鋼板の出し入れは内カバー及び外カバーを移動させて行われるが、この移動させた内カバー及び外カバーをベースフレームに合体して組み付ける際には、上述の水蒸気処理を行う上で、高い気密性が要求される。
【0007】
しかしながら、内カバー及び外カバーは大型故、ベースフレーム上の合体位置へ精度よく移動させることは非常に難しい。すなわち、ベースフレームから一旦取り外された内カバー及び外カバーを、再びベースフレームとの合体位置に精度よく戻すことは容易ではない。内カバー及び外カバーをベースフレームとの合体位置に精度よく戻せない場合、内カバー及び外カバーとベースフレームとの間において高い気密性を確保できない虞がある。
【0008】
特許文献2、3に記載された水蒸気処理も、高い気密性が要求される密閉容器(上下に分割可能な容器)内で行われるため、特許文献2、3に記載された密閉容器においても、特許文献1と同様の上記の問題が生じる虞がある。
【0009】
なお、特許文献1の技術(鋼板のブルーイング)は、鋼板を水蒸気と接触させる処理を行なう点では特許文献2,3の技術(めっき鋼板の黒色化処理)と同様であるものの、特許文献2,3の設備(密閉容器)の方が高い圧力で使用されるため、密閉容器(分割体)のセットにより高い精度が要求される。また、鋼板のブルーイングとめっき鋼板の黒色化処理とでは、水蒸気圧力の制御範囲が大きく異なるため、特許文献1の設備では、黒色化した酸化皮膜を溶融Al、Mg含有Znめっき層に形成させる処理を行なうことはできない。
【0010】
そこで、本願発明では、高い気密性が要求される密閉容器において、当該密閉容器を構成する部材同士を精度よく位置合わせすることができる、合体位置合わせ方法及び合体位置合わせ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上側分割体と下側分割体とが合体して構成される密閉容器において当該上側分割体を当該下側分割体との合体位置に対して位置合わせする密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法であって、
前記上側分割体を前記下側分割体の上方へ移動させる上方移動工程と、
前記下側分割体の上方に位置する前記上側分割体を、第1ガイドポールを有する第1ガイド機構によって前記合体位置に向かって所定の位置精度でガイドして降下させる第1降下工程と、
前記第1ガイド機構によってガイドされて降下中の前記上側分割体を、前記第1ガイドポールを中心とする径方向に離れた別の位置に設けられた第2ガイド機構によって前記第1ガイド機構よりも高い位置精度でガイドして前記下側分割体との合体位置に向かって降下させる第2降下工程と、を少なくとも備える
ことを特徴とする、密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【0012】
(2)前記第1ガイド機構は、前記上側分割体に設けられた第1位置合わせ孔と、前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、前記第1位置合わせ孔に所定のクリアランスを有した状態で挿通される前記第1ガイドポールと、を少なくとも含み、前記第2ガイド機構は、前記上側分割体に設けられた第2位置合わせ孔と、前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、前記第2位置合わせ孔に前記所定のクリアランスよりも小さいクリアランスを有した状態で前記第2位置合わせ孔に挿通される第2ガイドポールと、を少なくとも含むことを特徴とする、(1)に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【0013】
(3)前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔との組が、少なくとも二つ備えられるとともに、一の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さは、他の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さよりも高い位置にあることを特徴とする、(2)に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【0014】
(4)前記第1位置合わせ孔に前記第1ガイドポールを挿通して前記上側分割体を降下させることにより、前記第2位置合わせ孔が前記第2ガイドポールを挿通可能な位置に導かれるように、前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔とのクリアランスが設定されていることを特徴とする、(2)又は(3)に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ方法。
【0015】
(5)上側分割体と下側分割体とが合体して構成される密閉容器において当該上側分割体を当該下側分割体との合体位置に対して位置合わせする密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置であって、
第1ガイドポールを有し、前記下側分割体の上方に位置している前記上側分割体を降下させる際に、当該上側分割体を当該下側分割体との合体位置に向かって所定の位置精度でガイドする棒状の第1ガイド機構と、
前記第1ガイド機構にガイドされて降下中の前記上側分割体を、前記第1ガイドポールを中心とする径方向に離れた別の位置に設けられ、前記第1ガイド機構よりも高い位置精度で前記下側分割体との合体位置に向かってガイドする第2ガイド機構と、を少なくとも備える、
ことを特徴とする、密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【0016】
(6)前記第1ガイド機構は、前記上側分割体に設けられた第1位置合わせ孔と、前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、当該第1位置合わせ孔に所定のクリアランスを有した状態で挿通される前記第1ガイドポールとを備え、前記第2ガイド機構は、前記上側分割体に設けられた第2位置合わせ孔と、前記下側分割体又は当該下側分割体が設置される場所に設けられ、当該第2位置合わせ孔に前記所定のクリアランスよりも小さいクリアランスを有した状態で挿通される第2ガイドポールとを備えることを特徴とする、(5)に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【0017】
(7)前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔との組が、少なくとも二つ備えられるとともに、一の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さは、他の組における第1ガイドポールの第1位置合わせ孔への挿通開始高さよりも高い位置にある、ことを特徴とする、(6)に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【0018】
(8)前記第1位置合わせ孔に前記第1ガイドポールを挿通して前記上側分割体を降下させることにより、前記第2位置合わせ孔が前記第2ガイドポールを挿通可能な位置に導かれるように、前記第1ガイドポールと前記第1位置合わせ孔とのクリアランスが設定されていることを特徴とする、(6)又は(7)に記載の密閉容器構成部材の合体位置合わせ装置。
【0019】
上記(1)、(5)の構成によれば、第1ガイドポールを有する第1ガイド機構により、上側分割体の、下側分割体との合体位置への、粗方の位置合わせが成され、その後さらに、第1ガイドポールを中心とする径方向に離れた別の位置に設けられた第2ガイド機構により、上側分割体の、下側分割体との密閉可能な合体位置への、より高い精度での位置合わせが成される。つまり、第1ガイド機構および第2ガイド機構により、位置合わせの精度を順次高めることができるため、上側分割体を下側分割体との合体位置に精度よく、しかも素早く位置合わせすることができる。
【0020】
上記(2)、(6)の構成によれば、第1位置合わせ孔と第1ガイドポールとの間のクリアランスよりも、第2位置合わせ孔と第2ガイドポールとの間のクリアランスを小さくすることにより、第2ガイド機構による位置合わせの精度を第1ガイド機構による位置合わせの精度よりも高めている。したがって、位置合わせの精度を順次高めて、精度よく、しかも素早く位置合わせすることができる。
【0021】
上記(3)、(7)の構成によれば、第1ガイドポールと第1位置合わせ孔との組を二組設け、それらの組について、順次、挿通作業を行えばよいので、二つの組について同時に挿通作業を行う場合と比べて容易に挿通作業を行うことができる。
【0022】
上記(4)、(8)の構成によれば、第1位置合わせ孔へ第1ガイドポールが挿通されることによって、上側分割体がそのまま合体位置方向まで降下されれば、第2位置合わせ孔へ第2ガイドポールが挿通されるため、作業者が上側分割体を細かく位置調整する必要がなく、合体位置合わせの作業を極めて容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本願発明によれば、高い気密性が要求される密閉容器において、当該密閉容器を構成する部材同士を精度よく位置合わせすることができる、合体位置合わせ方法及び合体位置合わせ装置を提供することができる。そして、位置合わせを精度よく行うことができることにより、密閉容器の気密性を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願発明に係る黒色めっき鋼板を製造する方法のフローチャートである。
図2】本願発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置の模式図である。
図3】本発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置の平面図である。
図4図3に示される装置を直線(一点鎖線)L1に沿って切断した状態で示す部分断面図である。
図5図3に示される装置を直線(一点鎖線)L2に沿って切断した状態で示す部分断面図である。
図6】本発明における第2ガイド機構の要部を拡大して示す平面図である。
図7図6に示される要部をさらに拡大して示す平面図である。
図8】本発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置の上部カバーを底部フレームから退避させた状態から、クレーンを用いて、上部カバーを底部フレームの上方に移動させた状態を示す側面図である。
図9】本発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置の上部カバーを、第1ガイド機構によってガイドしつつ、クレーンを用いて降下させた状態を示す側面図である。
図10】本発明に係る黒色めっき鋼板を製造する装置の上部カバーを、第1ガイド機構及び第2ガイド機構によってガイドしつつ、クレーンを用いて降下させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の密閉容器の一例として、黒色めっき鋼板の製造装置を例に挙げて説明するとともに、その装置内で行われる黒色めっき鋼板の製造方法について説明する。
【0026】
なお、この明細書で「密閉容器の内部が正圧である」とは、密閉容器の内部の圧力が密閉容器の外部の圧力(大気圧)よりも大きい状態であることをいう。また、「密閉容器の内部が負圧である」とは、密閉容器の内部の圧力が密閉容器の外部の圧力(大気圧)よりも小さい状態であることをいう。
【0027】
[黒色めっき鋼板を製造する方法]
本願発明に係る黒色めっき鋼板を製造する方法は、AlおよびMgを含有する溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を密閉容器の内部で水蒸気に接触させて黒色めっき鋼板を製造する方法である。
【0028】
黒色めっき鋼板の製造方法は、図1のフローチャートに示されているように、密閉容器の内部に溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を搬入する工程と、密閉容器の内部に配置した溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を加熱する第1工程(S110)と、密閉容器の内部の雰囲気ガスを排気して、密閉容器内部の気体圧力を70kPa以下にする第2工程(S120)と、密閉容器の内部に水蒸気を導入して所定の圧力の下、めっき層を黒色化する第3工程(S130)と、第3工程(S130)の後に密閉容器の内部の圧力をいったん大気圧に戻した後に、密閉容器内部の気体圧力を再び70kPa以下にする第4工程(S140)と、密閉容器内部のめっき鋼板を冷却する第5工程(S150)と、密閉容器から溶融Al、Mg含有Znめっき鋼板を払い出す工程とを、この順番で行われる。なお、雰囲気ガスとは、密閉容器の内部に存在するガスを意味し、本願明細書に記載された大気、水蒸気、水素を含有する水蒸気、窒素ガスなどの総称である。
【0029】
以下、各工程についてより詳しく説明する。
【0030】
以下の第1工程(S110)の前に、密閉容器10(図2参照)における後述の上部カバー9を後述の底部フレーム8から切り離すことにより、密閉容器10を開放して、めっき鋼板1を密閉容器10の内部に搬入する。そして、上部カバー9を底部フレーム8に合体させて、第1工程(S110)に移行する。
【0031】
(第1工程)
第1工程(S110)では、密閉容器の内部に配置しためっき鋼板を加熱する。
【0032】
図2に示されるように、密閉容器10の内部に、めっき鋼板1が配置される。密閉容器10は、めっき鋼板1を配置する配置部12を内部に有し、雰囲気ガスの排気による内部の気体圧力の低下や水蒸気の導入、加熱、冷却などに耐えうる強度を有していればよい。
【0033】
図2に示される例では、密閉容器10は、底部フレーム8(本発明の「下側分割体」に含まれる)と、上部カバー9(本発明の「上側分割体」に含まれる)とに分割可能に構成されている。底部フレーム8は、めっき鋼板1が配置される配置部12を備えている。また、上部カバー9は、天井面がドーム状に形成された上部カバー天井部13と、側面が円形筒状に形成された上部カバー縦壁部14とを有している。上部カバー9は、下部が開放される形状によって構成されている。上部カバー9と底部フレーム8とは、図外のクランプ部材(クラッチ式締め付けリング)を用いて相互に連結可能に構成されている。具体的には、上部カバー9の下端部に形成された図外の係止爪と、底部フレーム8の上端部に形成された図外の被係止爪とを位置合わせした状態で、これら係止爪と被係止爪とをクランプ部材でクランプすることにより、上部カバー9と底部フレーム8とを連結(合体)できるように構成されている。また、上部カバー9と底部フレーム8の間には、図外のシール部材(例えば、ゴム製パッキン等)が介挿されており、上部カバー9と底部フレーム8とが合体した状態では、このシール部材により上部カバー9と底部フレーム8との間の気密性が確保されるようになっている。なお、この気密性を確保するためには、底部フレーム8と上部カバー9との位置合わせが精密に行われる必要がある。
【0034】
めっき鋼板1の密閉容器10内への出し入れ作業は、ボルト・ナットによる連結を解除した後に、上部カバー9をクレーン102(図8参照)で吊り上げ、所定の退避場所に上部カバー9を一旦退避させ、その後、配置部12上のめっき鋼板1を出し入れした後に、再び、クレーン102で上部カバー9を吊り上げて、底部フレーム8との密閉可能な合体位置に戻すことにより行われる。したがって、密閉容器10は、その外部から内部への気体の流入が実質的に不可能な密閉状態と、めっき鋼板の搬出、搬入が可能な開放状態との、いずれをもとることが可能に構成されている。
【0035】
めっき鋼板1は、基材鋼板と、基材鋼板の表面に形成された溶融Al、Mg含有Znめっき層とを有する。
【0036】
溶融Al、Mg含有Znめっき層は、水蒸気との接触により黒色化する組成を有していればよい。めっき層が水蒸気との接触により黒色化するメカニズムは不明であるが、一つの仮説としては、水蒸気との接触によりめっき層表面およびめっき層中に酸素欠乏型の欠陥構造を有するZn、Al、Mgの酸化物(例えば、ZnO1−xなど)や水酸化物が生成されるためと推察される。このように、酸素欠乏型の酸化物や水酸化物が生成されると、その欠陥準位に光がトラップされるため、上記の酸化物や水酸化物が黒色外観を呈することになる。例えば、Alが0.1質量%以上60質量%以下、Mgが0.01質量%以上10質量%以下、Znが残部の組成を有するめっき層は、水蒸気との接触によって好適に黒色化することができる。
【0037】
また、第1工程(S110)において、めっき鋼板1は、露点が常にめっき鋼板温度未満であるガス(低水蒸気ガス)の存在下で加熱される。つまり、密閉容器10の内部に存在する雰囲気ガスは低水蒸気ガスである。めっき鋼板1の加熱作業を容易にする観点から、低水蒸気ガスは大気であってもよいが、めっき鋼板1の黒色化が可能な限りにおいて、窒素などの不活性ガスに置換してもよい。その他、大気よりも低露点の雰囲気に置換してもよい。なお、低水蒸気ガスは、密閉容器10に接続されたガス導入部50から密閉容器10内へ導入することができる。第1工程(S110)では、めっき鋼板1を低水蒸気ガスの存在下で加熱するので、密閉容器10に容器外から外気が侵入しないことが好ましい。このため、密閉容器10には内部の正圧に対する気密性が必要である。そして、密閉容器10の正圧に対する気密性を確保するためには、底部フレーム8と上部カバー9との位置合わせが精密に行われている必要がある。
なお、この明細書では、露点がめっき鋼板温度未満であるガスのことを「低水蒸気ガス」という。
【0038】
(第2工程)
第2工程(S120)では、密閉容器10内の雰囲気ガスを、排気配管31を通じて排気し、密閉容器10内の気体の圧力を70kPa以下にする。例えば、密閉容器10外に設置した排気ポンプ(図示せず。)で、密閉容器10の中の雰囲気ガスを排出することで、密閉容器10内の気体の圧力を上記範囲にすることができる。第2工程(S120)においては、雰囲気ガスの排気を1回のみ行ってもよいし、密閉容器10内に残存する水蒸気以外の気体成分の量をより少なくするため、雰囲気ガスの排気と、ガス導入配管51からの低水蒸気ガスの導入を繰り返し行ってもよい。第2工程(S120)では、密閉容器10の内部が真空またはそれに近い状態となるように排気するので、密閉容器10には内部の負圧に対する気密性が必要である。そして、密閉容器10の負圧に対する気密性を確保するためには、底部フレーム8と上部カバー9との位置合わせが精密に行われている必要がある。
【0039】
(第3工程)
第3工程(S130)では、密閉容器10内に水蒸気を導入してめっき鋼板1のめっき層を黒色化する。すなわち、第3工程(S130)では、めっき鋼板1に対して、水蒸気処理を行う。第3工程(S130)では、密閉容器10の内部に水蒸気を導入して、密閉容器10内を正圧に維持する必要があるため、密閉容器1には内部の正圧に対する気密性が必要である。
【0040】
(第4工程)
第4工程(S140)では、密閉容器10の内部の圧力をいったん大気圧に戻した後に、密閉容器10の内部の雰囲気ガスを排気して、密閉容器の内部の気体圧力を70kPa以下にする。例えば、密閉容器10の内部の圧力をいったん大気圧に戻すためには、密閉容器に設けた大気圧開放弁(図示せず。)を開くことで行うことができる。また、密閉容器10内の気体圧力を70kPa以下とするためには、密閉容器外に設置した排気ポンプ(図示せず。)使用し、密閉容器10内の雰囲気ガスを、排気配管31を通じて排出することで密閉容器10内の圧力を低くすることができる。第4工程(S140)では、密閉容器10の内部が真空またはそれに近い状態となるように排気するので、密閉容器10には内部の負圧に対する気密性が必要である。
【0041】
(第5工程)
第5工程(S150)では、密閉容器10の内部に露点が常にめっき鋼板温度未満であるガス(低水蒸気ガス)をガス導入部50から導入してめっき鋼板1を冷却する。第5工程(S150)で導入されるガスは、加熱されていないことが好ましいが、必要に応じて、密閉容器10内の雰囲気温度よりも低温に加熱されていてもよい。第5工程(S150)では、めっき鋼板1を低水蒸気ガスの存在下で冷却するので、密閉容器10に容器外から外気が侵入しないことが好ましい。このため、密閉容器10には内部の正圧に対する気密性が必要である。
【0042】
例えば、第5工程(S150)で導入される低水蒸気ガスは、大気、窒素ガス、または不活性ガスとすることができ、作業性を考慮すると、密閉容器10を大気開放して、大気を導入することが好ましい。
【0043】
第5工程(S150)の後に、密閉容器10における後述の上部カバー9を後述の底部フレーム8から切り離すことにより、密閉容器10を開放して、めっき鋼板1を密閉容器10から払い出す(搬出する)。
【0044】
次に、黒色めっき鋼板の製造装置について説明する。
[黒色めっき鋼板を製造する装置]
(装置の構成)
黒色めっき鋼板を製造する装置は、模式断面図である図2に示されているように、めっき鋼板1を取り出し可能に配置できる配置部12を有する密閉容器10等を有している。
【0045】
さらに、本発明の密閉容器10には、底部フレーム8の上方に位置している上部カバー9を、底部フレーム8との合体位置に向かって所定の位置精度でガイドして降下させる第1ガイド機構81と、第1ガイド機構81によりガイドされて降下中の上部カバー9を、当該第1ガイド機構81よりも高い位置精度でガイドしつつ上記合体位置まで降下させる第2ガイド機構82とが備えられている。第1ガイド機構81と第2ガイド機構82とにより、本実施形態における合体位置合わせ装置103が構成されている。また、本実施形態において上部カバー9を移動および合体位置まで降下させるクレーン102は、例えば天井クレーンであり、その場合には、建屋の両側の壁に沿って設けられた図外のランウェイ(走行軌道) と、ランウェイを走行する図外の走行部と、走行部から上下方向の長さを調整可能に垂下するワイヤ104と、ワイヤ104の先端に設けられたフック105とを備えている。なお、上記した合体位置合わせ装置は、黒色めっき鋼板を製造する装置に限らず、気密性が要求される密閉容器に好適に利用することが可能である。
【0046】
(第1ガイド機構81の構成)
第1ガイド機構81は、上部カバー9の外壁面に当該外壁面から径方向外側に突出するように設けられる複数の第1ブラケット83(図2、3、4参照)と、底部フレーム8が配置される台座87に支持され、当該台座87から上向きに延びる第1ガイドポール88とを備えている。図3に示される例では、2つの第1部ブラケット83が、上部カバー9の径方向中心を通る直線L1上で、互いに反対側に位置するように配置されている。なお、図2においては、便宜上、第1ブラケット83と、後述の第2ブラケット84とを図示している。なお、第1ガイドポール88は、底部フレーム8に設けられていてもよい。
【0047】
本実施形態においては、図4に示されるように、2つの第1ブラケット83に対応して、台座87に2本の第1ガイドポール88が立設されている。2本の第1ガイドポール88のうちの一方の第1ガイドポール88(図4における左側の第1ガイドポール88)は、他方の第1ガイドポール88(図4における右側の第1ガイドポール88)よりも長い長さとされている。つまり、図4において右側の第1ガイドポール88の上端高さを示す直線L3よりも、左側の第1ガイドポール88の上端位置は高い位置にある。換言すれば、一方の第1ガイドポール88の第1位置合わせ孔85(後述)への挿通開始高さが、他方の第1ガイドポール88の第1位置合わせ孔85(後述)への挿通開始高さよりも高い位置にある。
【0048】
一方の第1ガイドポール88の第1位置合わせ孔85への挿通開始高さを、他方の第1ガイドポール88の第1位置合わせ孔85への挿通開始高さよりも高い位置に設定することで、以下の利点が得られる。詳しく説明すると、2本の第1ガイドポール88を、各々、第1位置合わせ孔85に挿通する際に、まず、一方の第1ガイドポール88(長い方の第1ガイドポール88)を第1位置合わせ孔85に挿通し、その後に、他方の第1ガイドポール88(短い方の第1ガイドポール88)を第1位置合わせ孔85に挿通すればよい(つまり、2本の第1ガイドポール88の挿通作業を順次行えばよい)。このように、一方の第1ガイドポール88の第1位置合わせ孔85への挿通開始高さを、他方の第1ガイドポール88の第1位置合わせ孔85への挿通開始高さよりも高い位置に設定することにより、2本の第1ガイドポール88の挿通開始高さを互いに同じ高さに設定して(2本の第1ガイドポール88の上端高さを互いに同じ高さに設定して)2本の第1ガイドポール88の挿通作業を同時に行う場合と比べて、挿通作業を容易に行うことができる。
【0049】
第1ブラケット83は、第1ガイドポール88を挿通可能な第1位置合わせ孔85を有している。第1ガイドポール88は、本実施形態では円柱状に構成されるとともに、上端部が円錐状に尖っており、第1位置合わせ孔85に所定のクリアランスを有した状態で挿通可能となっている。つまり、第1位置合わせ孔85の直径は、第1ガイドポール88の直径よりも所定のクリアランス分だけ大きい値に設定されている。具体的には、第1位置合わせ孔85に第1ガイドポール88を挿通して上部カバー9を降下させれば(図9参照)、後述の第2位置合わせ孔86が後述の第2ガイドポール89先端の円錐部に導かれるように、第1ガイドポール88と第1位置合わせ孔85とのクリアランスが設定されている。これにより、第1位置合わせ孔85に第1ガイドポール88が挿通されていさいすれば、上部カバー9をそのまま合体位置方向へ降下させることで、第2ガイド機構82における第2位置合わせ孔86(後述)へ第2ガイドポール89(後述)が挿通されるので、オペレータ100による上部カバー9の細かな位置調整が必要なくなり、合体位置合わせ作業を極めて容易に行うことができる(図9、10参照)。
【0050】
(第2ガイド機構82の構成)
第2ガイド機構82は、上部カバー9の外壁面に当該外壁面から径方向外側に突出するように設けられる複数の第2ブラケット84(図2、3、5〜7参照)と、底部フレーム8が配置される台座87に支持され、当該台座87から上向きに延びる第2ガイドポール89と、台座87に柱部91を介して支持され、第2ブラケット84の位置を調整する位置調整機構92とを備えている。図3に示される例では、2つの第2部ブラケット84が、上部カバー9の径方向中心を通る直線L2上で、互いに反対側に位置するように配置されている。第2ブラケット84は、第2ガイドポール89を挿通可能な第2位置合わせ孔86を有している。
【0051】
第2ガイドポール89は、本実施形態では第1ガイドポール88よりも小さい径で円柱状に構成されるとともに、上端部が円錐状に尖っている。第2ガイドポール89の上端は、第1ガイドポール88の上端よりも下方に位置している。図8〜10に示される例では、第2ガイドポール89と第1ガイドポール88とは、台座87における同じ高さ位置から上方に延びており、第2ガイドポール89は、第1ガイドポール88よりも短く構成されている。これにより、上部カバー9を降下させる際に、第1ガイドポール88を第1位置合わせ孔85に入れて、上部カバー9の、底部フレーム8との合体位置への粗方の位置決めを行った後に、第2ガイドポール89を第2位置合わせ孔86に入れることができる。したがって、第2ガイドポール89を第2位置合わせ孔86に入れ易くなる。なお、第2ガイドポール89は、底部フレーム8に設けられていてもよい。
【0052】
また、第2位置合わせ孔86と第2ガイドポール89とのクリアランスは、第1位置合わせ孔85と第1ガイドポール88とのクリアランスよりも小さいクリアランスを有している。したがって、第2ガイド機構82は、第1ガイド機構81よりも、より高い位置精度で上部カバー9を合体位置まで誘導することに貢献している。詳しく説明すると、第1ガイド機構81により、上部カバー9の、底部フレーム8との合体位置への粗方の位置合わせが成され、その後さらに、第2ガイド機構82により、上部カバー9の、底部フレーム8との密閉可能な合体位置への、より高い精度の位置合わせがなされる。つまり、第1ガイド機構81および第2ガイド機構82により、位置合わせの精度を順次高めることができるため、上部カバー9を下部カバー8との合体位置に精度よく、しかも素早く位置合わせすることができる。
【0053】
位置調整機構92は、図7に示されるように、第2ブラケット84の外側端部に回転自在に当接するローラ93と、このローラ93における直線L2に沿った方向の位置を調整する回転自在のローラ94とを備えている。したがって、ローラ93の位置を適宜調整することにより、合体位置のより細かい位置調整が可能となっている。
【0054】
次に、図8〜10を参照しつつ、底部フレーム8から退避場所へ退避した上部カバー9を、クレーン102及び位置合わせ装置103を用いて、底部フレーム8と上部カバー9とが密閉可能な合体位置に移動させる方法について説明する。
【0055】
[上部カバー9を底部フレーム8との合体位置に移動させる方法]
(上方移動工程)
この工程では、図8に示されるように、底部フレーム8から退避した上部カバー9を、クレーン102を用いて底部フレーム8の上方へ移動させる。このとき、クレーン102のオペレータ100は、第1ガイド機構81の第1位置合わせ孔85が、第1ガイドポール88の真上に位置していることを目視で確認する。ここでいう「真上」には、第1位置合わせ孔85の径方向中心と、第1ガイドポール88の径方向中心とが径方向において一致している場合の他、径方向に若干ずれている場合も含まれる。
【0056】
(第1降下工程)
この工程では、図9に示されるように、底部フレーム8の真上に位置する上部カバー9を、第1ガイド機構81を用いて合体位置に向かって所定の位置精度でガイドしつつクレーン102を用いて降下させる。具体的には、第1ガイドポール88付近に配置された監視員101の合図により、オペレータ100がクレーン102を操作して、第1位置合わせ孔85に第1ガイドポール88を挿通しながら、上部カバー9を降下させる。上部カバー9は、第2位置合わせ孔86が第2ガイドポール89の若干上の位置に来るまで降下される。このとき、第2ガイドポール91付近に配置された監視員101は、第2ガイド機構82の第2位置合わせ孔86が、第2ガイドポール89の真上に位置していることを目視で確認する。ここでいう「真上」には、第2位置合わせ孔86の径方向中心と、第2ガイドポール89の径方向中心とが径方向において一致している場合の他、径方向に若干ずれている場合も含まれる。
【0057】
この工程では、一方の第1ガイドポール88(上端高さが高い方の第1ガイドポール88)を第1位置合わせ孔85に挿通した後に、他方の第1ガイドポール88(上端高さが低い方の第1ガイドポール88)を第1位置合わせ孔85に挿通する。これにより、2本の第1ガイドポールの上端高さを互いに同じ高さに設定して2本の第1ガイドポールの挿通作業を同時に行う場合と比べて、挿通作業を容易に行うことができる。
【0058】
(第2降下工程)
この工程では、図10に示されるように、第1ガイド機構81にガイドされて降下中の上部カバー9を、第2ガイド機構82を用いて第1ガイド機構81よりも高い位置精度でガイドしつつクレーン102を用いて底部フレーム8との合体位置まで降下させる。具体的には、第2ガイドポール89付近に配置された監視員101の合図により、オペレータ100がクレーン102を操作して、第2位置合わせ孔86に第2ガイドポール89を挿通しながら、上部カバー9を降下させて底部フレーム8上に載せる。その後、ボルト・ナットで上部カバー9と底部フレーム8とを相互に連結する。
【0059】
本実施形態では、第1位置合わせ孔85に第1ガイドポール88を挿通して上部カバー9を降下させれば(図9参照)、第2位置合わせ孔86が第2ガイドポール89先端の円錐部に導かれるように、第1ガイドポール88と第1位置合わせ孔85とのクリアランスが設定されている。これにより、第1位置合わせ孔85に第1ガイドポール88が挿通されていさいすれば、上部カバー9をそのまま合体位置方向へ降下させることで、第2位置合わせ孔86へ第2ガイドポール89が挿通されるので、オペレータ100による上部カバー9の細かな位置調整が必要なくなり、合体位置合わせ作業(図10参照)を極めて容易に行うことができる。
【0060】
(効果)
上記本願発明の方法によれば、第1ガイド機構81により、上部カバー9の、底部フレーム8との合体位置への、粗方の位置合わせが成され、その後さらに、第2ガイド機構82により、上部カバー9の、底部フレーム8と密閉可能な合体位置へのより高い精度での位置合わせが成される。つまり、第1ガイド機構81および第2ガイド機構82により、位置合わせの精度を順次高めることができるため、上部カバー9を、底部フレーム8との合体位置に精度よく、しかも素早く位置合わせすることができる。また、めっき鋼板1の黒色化に用いられる密閉容器10は、大型で重量が大きいものであるため、上部カバー9をクレーン等の揚重機械を用いて移動させる必要がある。しかし、クレーン等の揚重機械を用いて上部カバー9のような重量物を移動させる場合、上部カバー9には多少なりとも揺れが生じるため、高い気密性を維持できるように上部カバー9と底部フレーム8とを密閉することは困難を極める。この点、本実施形態に係る方法及び装置を用いて上部カバー9を移動させると、上部カバー9と底部フレーム8とを高い気密性で密閉可能な合体位置への位置合わせを精度よく、しかも素早く行うことができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、第1ガイド機構による第1降下工程と、第2ガイド機構による第2降下工程とにより、合体位置合わせを行っているが、本実施形態はこれに限られない。例えば、3つ以上のガイド機構を設け、それらガイド機構の位置合わせの精度を順次高いものとして、これらガイド機構による3つ以上の降下工程により、合体位置合わせを行ってもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係る合体位置合わせ方法及び合体位置合わせ装置は、水蒸気処理によるめっき鋼板の黒色化に用いられているが、これに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明の方法は、密閉容器10の上部カバー9を、底部フレーム8との合体位置に精度よく素早く位置合わせすることができるので、黒色化されためっき鋼板の生産性を向上させて、そのより一層の普及に貢献することが期待される。
【符号の説明】
【0064】
8 底部フレーム
9 上部カバー
10 密閉容器
81 第1ガイド機構
82 第2ガイド機構
85 第1位置合わせ孔
86 第2位置合わせ孔
88 第1ガイドポール
89 第2ガイドポール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10