特許第6875924号(P6875924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875924測定装置、血圧測定方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875924
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】測定装置、血圧測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20210517BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61B5/0215 F
   A61B5/0215 B
   A61B5/00 102A
   A61B5/0215ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-92966(P2017-92966)
(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公開番号】特開2018-187146(P2018-187146A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 亮
(72)【発明者】
【氏名】東 和理
(72)【発明者】
【氏名】小山 幸夫
【審査官】 福田 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0285812(US,A1)
【文献】 特開2016−087282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観血式の血圧測定を行い、測定中に血圧が所定異常状態となったことを検出する測定部と、
観血式の血圧測定に使用するトランスデューサのゼロ点較正が行われているか否かを検出する検出部と、
前記測定部が測定する血圧が前記所定異常状態となった場合に、前記検出部の検出状態に基づいてアラームの出力を行うか否かを制御する報知制御部とを備える測定装置であって、
前記報知制御部は、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と、前記測定部からの出力と、に基づいて、アラーム音を出力する第一モードと、アラーム音を出力しない第二モードとを選択することが可能である、
測定装置。
【請求項2】
前記所定のタイミングとは、
ゼロ点較正にかかるインターフェイスの操作タイミング、ゼロ点較正実施中に関するメッセージの表示開始タイミング、ゼロ点較正の終了タイミング、ゼロ点較正終了に関するメッセージの表示開始タイミング、ゼロ点較正終了に関するメッセージの表示終了タイミング、のいずれかである、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記経過時間は、第一設定時間と、前記第一設定時間より後の時間である第二設定時間と、を有し、
前記報知制御部は、前記第一設定時間の時点で、前記測定中の血圧が第一設定値を下回るものである場合、前記アラーム音を出力する第一モードを選択する、
請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、前記第一設定時間の時点で、前記測定中の血圧が、前記第一設定値と前記第一設定値より大きい第二設定値との間に存する場合、前記第二モードを選択する、
請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記報知制御部は、前記第一設定時間の時点で、前記測定中の血圧が、前記第二設定値より大きい場合、前記第二モードを選択する、
請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記報知制御部は、前記第二設定時間の時点で、前記測定中の血圧が前記第二設定値より大きい場合、前記第二モードを継続する、
請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記報知制御部は、前記第二設定時間の時点で、前記測定中の血圧が、前記第一設定値と前記第一設定値より大きい第二設定値との間に存する場合、前記アラーム音を出力する第一モードを選択する、
請求項3に記載の測定装置。
【請求項8】
前記第二モードは、アラームを鳴動せずにアラームメッセージの表示が行われるアラーム音抑制モードである、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
観血式の血圧測定を行い、測定中に血圧が所定異常状態となったことを検出する測定ステップと、
観血式の血圧測定に使用するトランスデューサのゼロ点較正が行われているか否かを検出する検出ステップと、
前記測定部が測定する血圧が前記所定異常状態となった場合に、前記検出部の検出状態に基づいてアラームの出力を行うか否かを制御する報知制御ステップと、
を備え、
前記報知制御ステップでは、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と、測定部からの出力と、に基づいて、アラーム音を出力する第一モードと、アラーム音を出力しない第二モードとが選択される、
血圧測定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
観血式の血圧測定を行い、測定中に血圧が所定異常状態となったことを検出する測定ステップと、
観血式の血圧測定に使用するトランスデューサのゼロ点較正が行われているか否かを検出する検出ステップと、
前記測定部が測定する血圧が前記所定異常状態となった場合に、前記検出部の検出状態に基づいてアラームの出力を行うか否かを制御する報知制御ステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記報知制御ステップでは、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と、測定部からの出力と、に基づいて、アラーム音を出力する第一モードと、アラーム音を出力しない第二モードとが選択される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、血圧測定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の血管内にカテーテルなどを挿入し、時々刻々と変化する血圧を連続的に測定する観血式血圧測定法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。血管内で発生している圧力は、カテーテルに接続されたトランスデューサによって電気信号に変換される。血圧計は、トランスデューサによって変換された電気信号に対応する血圧値や血圧波形を、医療従事者などに表示する。
【0003】
観血式の血圧測定においては、測定の基準値を定めるためのゼロ点較正と呼ばれる処理が必須である。ゼロ点較正は、トランスデューサを基準点に配置し、トランスデューサに加わる圧力をゼロにしたとき(カテーテルを大気開放したとき)の、血圧値に対する電気信号を測定基準値(例えば0mmHg)にするように行なわれる。
ところで観血式の血圧測定を行う場合、患者に取り付けたカテーテルの外れを知らせるアラーム出力が推奨されている。医療従事者は、このアラームを参照することによりカテーテル外れを即座に認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−517863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の血圧測定システムには、カテーテル外れを検出する等の一定の条件に該当する場合に、所定の異常状態(例えば脈拍が検出できなくなり、平均血圧が10mmHg以下となった状態)を医療従事者に知らせるためのアラーム機能が設けられている。
【0006】
しかしながら、従来の血圧測定システムでは、測定の基準値を定めるためのゼロ点較正を行った後、例えばまだ手術の準備中であるにも関わらず、アラーム音が出力されてしまう場合があった。すなわち、ゼロ点較正の後に、アラーム音の無駄鳴りが生じてしまう場合があった。この場合、医療従事者は、アラーム音を解除するため操作を行わなければならず、他の準備作業を阻害してしまうため好ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、ゼロ点較正が行われる場合であっても適切にアラーム音の出力を行うことができる測定装置、血圧測定方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の測定装置は、
観血式の血圧測定を行い、測定中に血圧が所定異常状態となったことを検出する測定部と、
観血式の血圧測定に使用するトランスデューサのゼロ点較正が行われているか否かを検出する検出部と、
前記測定部が測定する血圧が前記所定異常状態となった場合に、前記検出部の検出状態に基づいてアラームの出力を行うか否かを制御する報知制御部と、
を備える測定装置であって、
前記報知制御部は、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と、測定部からの出力と、に基づいて、アラーム音を出力する第一モードと、アラーム音を出力しない第二モードとを選択することが可能である。
【0009】
上記構成によれば、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と測定部からの出力とが所定条件に該当した場合、アラーム音を出力しない第二モードが選択され得るため、アラーム音の無駄鳴りが生じることを抑制することができる。また、前述の所定条件から外れる場合には、アラーム音を出力する第一モードが選択されて、アラーム音が鳴る。
このように、上記構成によれば、ゼロ点較正が行われる場合であっても、適切なタイミングでアラーム音が出力されたり抑制されたりするように制御することができる。その結果、医療従事者は、アラーム音を解除するための操作を行うことを要さず、他の準備作業が阻害されない。
【0010】
また、本発明の血圧測定方法は、
観血式の血圧測定を行い、測定中に血圧が所定異常状態となったことを検出する測定ステップと、
観血式の血圧測定に使用するトランスデューサのゼロ点較正が行われているか否かを検出する検出ステップと、
前記測定部が測定する血圧が前記所定異常状態となった場合に、前記検出部の検出状態に基づいてアラームの出力を行うか否かを制御する報知制御ステップと、
を備え、
前記報知制御ステップでは、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と、測定部からの出力と、に基づいて、アラーム音を出力する第一モードと、アラーム音を出力しない第二モードとが選択される。
【0011】
また、本発明のプログラムは、
コンピュータに、
観血式の血圧測定を行い、測定中に血圧が所定異常状態となったことを検出する測定ステップと、
観血式の血圧測定に使用するトランスデューサのゼロ点較正が行われているか否かを検出する検出ステップと、
前記測定部が測定する血圧が前記所定異常状態となった場合に、前記検出部の検出状態に基づいてアラームの出力を行うか否かを制御する報知制御ステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記報知制御ステップでは、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と、測定部からの出力と、に基づいて、アラーム音を出力する第一モードと、アラーム音を出力しない第二モードとが選択される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の測定装置、血圧測定方法、及びプログラムによれば、ゼロ点較正が行われる場合であっても適切なアラーム音の出力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る測定装置を備えた血圧測定システムの概要図である。
図2】測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図3】測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図4】測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図5】測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図6】測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図7】従来の測定装置におけるアラームモードの切替え例を示す概念図である。
図8】本実施形態の測定装置におけるアラームモードの切替え例を示す概念図である。
図9】アラームモード切替えの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る測定装置の一例について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る測定装置10を備えた血圧測定システム1の構成を示す概要図である。
血圧測定システム1は、被検者2の血圧値を観血的に測定することが可能である。血圧測定システム1の測定装置10は、血圧を観血的に測定できるものであれば良く、例えば生体情報モニタや除細動器等が該当する。測定装置10は、観血式の血圧測定以外の各種測定(心電図、呼吸曲線、SpO2、体温測定等)を行うことができる構成であってもよいことは勿論である。
【0015】
図1に示す例は、動脈血圧の測定を行う場合であり、被検者2の橈骨動脈にカテーテル(動脈針)21が挿入されている。トランスデューサ22は、被検者2の心臓の高さ(胸厚の半分に対応する位置の高さ)に固定される。カテーテル21とトランスデューサ22は、モニタリングライン23によって接続されている。
【0016】
モニタリングライン23は、第一チューブ23a、第二チューブ23b、第三チューブ23c、三方活栓23d、及び輸液ボトル23eを含んでいる。第一チューブ23aは、カテーテル21と三方活栓23dとを接続している。第二チューブ23bは、トランスデューサ22と三方活栓23dとを接続している。三方活栓23dは、血圧測定時には第一チューブ23aと第二チューブ23bとを接続させて大気を遮断する。また、三方活栓23dは、ゼロ点較正実行時にトランスデューサ22が大気に触れるように栓をする。第三チューブ23cは、輸液ボトル23eとトランスデューサ22とを接続している。輸液ボトル23eには、生理食塩水が収容されている。
【0017】
トランスデューサ22は、観血式の血圧測定に使用される変換器である。トランスデューサ22は、生理食塩水を通じて伝達される被検者2の血管内の圧力に対応する電気信号を出力する。測定装置10は、当該電気信号に対応する血圧値や血圧波形を、医療従事者などのユーザに表示する。
【0018】
測定装置10は、制御部11と、報知部16と、入力部17と、表示部18とを備えている。制御部11は、測定部12と、検出部13と、報知制御部14と、較正部15とを備えている。また、測定装置10は、図示を省略する二次記憶装置等を適宜備えている。
【0019】
報知部16は、音声ガイダンスやアラームを出力するものであり、例えばスピーカ及びスピーカ周辺回路等から構成されている。なお、報知部16は、音を出力するものに限られず、例えばインジケータのように視覚的に警告を報知するものであってもよい。報知部16の出力処理は、後述する報知制御部14によって制御されている。
【0020】
入力部17は、医療従事者からのデータ入力を受け付けるインターフェイスである。入力部17は、例えば測定装置10の筐体上に設けられたボタン、ツマミ、スイッチ等である。また、入力部17は、タッチパネルのように表示装置(液晶ディスプレイ)と一体化された構成であってもよい。入力部17は、後述するゼロ点較正用のボタンやオールゼロ処理用のボタンを含む。
【0021】
表示部18は、測定装置10の各種測定値や表示メッセージを表示する表示装置および周辺回路(またはソフトウェア)である。表示部18は、測定装置10の筐体上に設けられた液晶ディスプレイやインジケータであってもよく、測定装置10に着脱可能に構成されたディスプレイ装置等であってもよい。
【0022】
続いて、制御部11内の各処理部の機能について説明する。制御部11は、測定装置10の制御を行うものであり、図示を省略する記憶部(二次記憶装置)から適宜プログラムを読み出して実行する。制御部11は、例えばゼロ点較正を実行する際の表示制御等を行う。
【0023】
較正部15は、測定装置10が測定する血圧値の測定基準値を較正する。血圧測定の開始等の時点において、測定装置10のゼロ点較正が行われる。具体的には、三方活栓23dを大気開放状態にしてトランスデューサ22にかかる圧力がゼロにされる。較正部15は、この状態において測定装置10に入力される電気信号を基準値(例えば0mmHg)にするように内部の較正を行う。
【0024】
測定部12は、観血式の血圧測定を行う。すなわち、測定部12は、トランスデューサ22から出力された電気信号をA/D変換処理によってデジタルデータに変換し、変換されたデジタルデータに基づいて血圧値や血圧波形を算出する。血圧値や血圧波形の算出方法は、一般的な観血式血圧測定における手法と同様であればよい。算出した血圧値や血圧波形は、表示部18に表示される。
【0025】
また、測定部12は、測定中に血圧が所定異常状態となったことを検出する。例えば算出された血圧値や血圧波形に基づいて、被検者2に所定異常状態が生じたことを検出する。この場合の所定異常状態とは、被検者に装着されたカテーテル21が外れた場合等に生じる状態であり、例えば脈拍が無く、平均血圧値が10mmHg以下となった状態が所定時間(例えば10秒程度)継続する。また、例えば血圧デバイスが閉塞状態とされて、出力された血圧値が測定装置10で設定されている閾値(例えば200〜300mmHg)を超える値となった場合等にも所定異常状態が生じたと検出する。
【0026】
検出部13は、ゼロ点較正が実行されている最中であるか否かを検出する。また、検出部13は、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングを検出する。検出結果は、検出部13から報知制御部14にリアルタイムで通知される。例えば検出部13は、以下の(1)から(3)に示すような手法で、ゼロ点較正が実行されている最中であるか否か、あるいはゼロ点較正に関係する所定のタイミングを判定する。
【0027】
(1)「ゼロ点較正/オールゼロ」ボタンの押下
検出部13は、ゼロ点較正に関係する入力インターフェイス(ボタン、ツマミ、スイッチ等)を監視し、ゼロ点較正が実行されることを示す操作がなされた場合にゼロ点較正実行中と判定する。
【0028】
(2)ゼロ点較正処理の実行
検出部13は、較正部15の動作を監視し、ゼロ点較正が実行されていること(例えばゼロ点較正用のソフトウェアが実行されていること等)が検出された場合にゼロ点較正実行中と判定する。同様に、検出部13は、較正部15の動作を監視し、ゼロ点較正が終了したこと(例えばゼロ点較正用のソフトウェアが終了されたこと等)が検出された場合にゼロ点較正終了と判定する。
【0029】
(3)ゼロ点較正に関するメッセージの表示
検出部13は、較正部15から表示部18へのゼロ点較正実行中に関する表示指示、または表示部18におけるゼロ点較正実行中に関するメッセージ表示処理を監視する。検出部13は、ゼロ点較正が行われていることを示すメッセージの表示が検出された場合、ゼロ点較正実行中であると判定する。さらに、検出部13は、表示部18へのゼロ点較正専用画面の表示が検出された場合にもゼロ点較正実行中であると判定する。また、検出部13は、ゼロ点較正に関する終了メッセージの表示が検出された場合にはゼロ点較正が終了したものと判定する。
【0030】
(4)オールゼロ動作の検出
オールゼロに関する検出方法は、複数のカテーテル21を用いた複数個所での観血式の血圧測定を行っている場合に用いられる。検出部13は、ソフトウェアによるオールゼロ動作(複数個所のゼロ点較正を行う動作)を検出した場合にゼロ点較正実行中であると判定する。
【0031】
報知制御部14は、検出部13によるゼロ点較正の検出状態と、測定部12による所定異常状態の検出状態とに基づいて、報知部16によるアラームの出力を制御する。また、報知制御部14は、ゼロ点較正に関係する所定のタイミングからの経過時間と、測定部12から出力された血圧値や血圧波形に基づいて、アラームの出力モードを選択する。
【0032】
所定のタイミングとは、例えば以下の(A)から(F)に示すようなものが該当する。
(A)“ゼロ点較正”や“オールゼロ”用のインターフェイスの操作タイミング
(B)ゼロ点較正実施中に関するメッセージの表示開始タイミング
(C)ゼロ点較正の終了タイミング
(D)ゼロ点較正終了に関するメッセージの表示開始タイミング
(E)ゼロ点較正終了に関するメッセージの表示終了タイミング
(F)所定の異常状態開始タイミング
なお、これらの所定のタイミングは、検出部13によって検出される。
【0033】
次に、血圧測定システム1における測定装置10の動作例について、図2図6を参照しつつ説明する。本例では、血圧測定の開始時に測定装置10のゼロ点較正が行われる場合の動作を説明する。
【0034】
図2に示すように、測定装置10において例えばゼロ点較正ボタンが押下されると、検出部13は、ゼロ点較正の実行が開始されたことを検出する。さらに、例えばゼロ点較正用のソフトウェアが終了すると、検出部13は、ゼロ点較正が終了したことを検出する(ステップS101)。本例では、ゼロ点較正の終了時を上記ゼロ点較正に関係する所定のタイミングとする。
【0035】
続いて、測定装置10は、アラーム音を抑制するアラーム音抑制モードを利用するための設定スイッチがオンに設定されているか否かを判別する(ステップS102)。判別の結果、設定スイッチがアラーム音を抑制するモードに設定されていない場合、標準アラームモード(第一モードの一例)が選択された状態となる。本例の標準アラームモードとは、所定異常状態が検出された場合に、アラームメッセージを表示し、且つアラーム音を出力するモードである。
なお、設定スイッチのオンとオフに関わらず、本例の測定装置10は、ゼロ点較正の終了時から例えば30秒経過するまでの間は、所定異常状態が検出された場合でもアラームメッセージの表示およびアラーム音を出力(鳴動)しないように設定されている。
【0036】
一方、ステップS102で、設定スイッチがアラーム音を抑制するモードに設定されている場合、報知制御部14は、アラーム音抑制モード(第二モードの一例)を選択するか否かを、ゼロ点較正の終了時から例えば30秒経過時点において、チェックすることとなる。
アラーム音抑制モードとは、所定異常状態が検出された場合、アラーム音を出力しないようにするか、アラーム音の音量を標準アラームモードの音量より小さくする等、アラーム音が抑制されるモードをいう。アラームメッセージは表示しないようにしてもよいし、表示するようにしてもよい。
【0037】
続いて、図3に示すように、測定部12は、トランスデューサ22から出力される電気信号に基づいて、測定中の血圧値を算出する(ステップS105)。血圧値は、トランスデューサ22から出力される値の1秒間毎の平均血圧値である。
測定部12は、検出される脈拍数をカウントする(ステップS106)。
なお、この血圧値の算出と脈拍数のカウントとは、例えばゼロ点較正の終了後に開始されて、その後継続的に繰り返し実施される処理となる。
【0038】
続いて、図4に示すように、報知制御部14は、ゼロ点較正の終了時から30秒経過しているか否か判別する(ステップS107)。30秒経過していないと判別された場合、図3のAステップに戻り各処理を繰り返す。
一方、30秒経過している場合には、報知制御部14は、測定部12によって算出された血圧値が予め設定されている第二設定値(例えば200mmHg)以上であるか否か判別する(ステップS108)。第二設定値は、150〜300mmHgに設定することができる。なお、後述する第一設定値は、本例では、60mmHgに設定されている。第一設定値を60mmHgとしているのは、脈動のない静脈圧の測定を妨げないようにするためである。
【0039】
ステップS108で、血圧値が200mmHg以上ではないと判別された場合、報知制御部14は、その血圧値が第一設定値(例えば60mmHg)以上第二設定値(200mmHg)未満であるか否か判別する(ステップS109)。ここで、血圧値が60mmHg以上200mmHg未満に該当しない場合、すなわち血圧値が60mmHg未満である場合には、報知制御部14は、標準アラームモードを選択する(ステップS110)。
【0040】
一方、ステップS108で、血圧値が200mmHg以上であると判別された場合、図5に示すように、報知制御部14は、アラーム音抑制モードを選択する(ステップS111)。
続いて、報知制御部14は、測定中の血圧値が2秒間以上連続して200mmHg未満に低下したか否か判別する(ステップS112)。連続して2秒間以上200mmHg未満に低下しなかった、すなわち測定中の血圧値が200mmHg以上に維持されていたと判別された場合、報知制御部14は、脈拍数が8拍以上連続して検出されたか否か判別する(ステップS113)。連続した8拍の脈とは、拍と拍との間が2秒以下で8拍連続する脈をいう。また、8拍とは、被検者の生体信号として測定されうる脈拍数を考慮した数である。検出された脈拍数が8拍未満だったと判別された場合、ステップS111に戻り、アラーム音抑制モードを維持する。なお、測定中の血圧値が200mmHg以上に維持され、検出される脈拍数が8拍未満である状態が続いた場合、アラーム音抑制モードは経過時間に制限されず継続して延長される。
【0041】
一方、ステップS112で、血圧値が2秒間以上連続して200mmHg未満に低下したと判別された場合、報知制御部14は、標準アラームモードを選択する(ステップS114)。また、ステップS113で、脈拍が8拍以上検出されたと判別された場合にも、報知制御部14は、標準アラームモードを選択する(ステップS114)。
【0042】
図4に戻り、ステップS109で、血圧値が60mmHg以上200mmHg未満であると判別された場合、図6に示すように、報知制御部14は、アラーム音抑制モードを選択する(ステップS115)。
【0043】
続いて、報知制御部14は、血圧値が200mmHg以上に上昇したか否か判別する(ステップS116)。血圧値が200mmHg以上に上昇していない、すなわち血圧値が60mmHg以上200mmHg未満であると判別された場合、報知制御部14は、脈拍数が8拍以上連続して検出されたか否か判別する(ステップS117)。検出された脈拍数が8拍未満であると判別された場合、報知制御部14は、血圧値が60mmHg未満に低下したか否か判別する(ステップS118)。血圧値が60mmHg未満に低下していないと判別された場合、報知制御部14は、ゼロ点較正の終了時から延べ60秒(第二設定時間の一例)経過しているか否か判別する(ステップS119)。経過時間が60秒経過していないと判別された場合、ステップS115に戻り各処理を繰り返し、アラーム音抑制モードを維持する。
【0044】
一方、ステップS116で、血圧値が200mmHg以上に上昇したと判別された場合、図5のステップS111に戻り、各処理を繰り返す。
また、ステップS117で、脈拍が8拍以上検出されたと判別された場合、報知制御部14は、標準アラームモードを選択する(ステップS120)。
また、ステップS118で、血圧値が60mmHg未満に低下したと判別された場合にも、報知制御部14は、標準アラームモードを選択する(ステップS120)。
さらに、ステップS119で、経過時間が60秒に達したと判別された場合にも、報知制御部14は、標準アラームモードを選択する(ステップS120)。
【0045】
なお、測定装置10内の制御部11の処理は、その一部または全部が測定装置10内で動作するコンピュータプログラムとして実現することが可能である。例えば測定部12は、トランスデューサ22から出力された血圧信号をA/D変換処理によってデジタル化したデータを用いて血圧値や血圧波形の算出を行うことができる。
【0046】
ここでプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク,磁気テープ,ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えばマスクROM,PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0047】
ところで、血圧値を観血的に測定することが可能な測定装置では、血圧デバイスを組み立てた後、被検者の血圧ラインを確保した時点で即座に血圧波形・数値を表示するため、予めゼロ点較正を行って血圧デバイスを閉塞状態にして待機する場合がある。
しかし、従来の測定装置では、例えば図7に示すように、ゼロ点較正終了からの経過時間(30秒)のみを条件として、アラーム音とアラームメッセージを出力しないモードからアラーム音とアラームメッセージを出力するモードへと切り替える構成となっていた。
このため、手術の準備等の理由によりゼロ点較正終了からの所定の時間(30秒)が経過した後に上記閉塞状態が継続している場合、血圧回路内が高圧となり、測定装置で設定された閾値を超えてしまい、アラーム音(臨床的には誤アラーム)が発生してしまうことがあった。
例えば、以下のような場合に、いわゆるアラーム音の無駄鳴りが生じてしまうことがあった。
1)手術前の準備期間にゼロ点較正を実施し、フラッシュと三活閉鎖を行った場合
2)手術室での被検者が入室前
3)ゼロ点較正の完了後に、動脈ライン(Aライン)確保の時間がかかっている場合
【0048】
これに対し、本実施形態の測定装置10、血圧測定方法、およびプログラムによれば、アラーム音とアラームメッセージを出力する標準アラームモード(第一モードの一例)の他に、所定条件に該当した場合に選択されるアラーム音抑制モード(第二モードの一例)を有している。所定条件は、例えば、ゼロ点較正終了後(所定のタイミング)からの経過時間と、測定部の出力とを用いて構成されたものである。この所定条件を、想定されるアーチフェクト状態、すなわち、心電図に混入し得るノイズに対応するように設定することで、いわゆるアラーム音の無駄鳴りを減らし、適切なタイミングでアラーム音の出力を行うことが可能となる。また、所定条件から外れた場合(被検者の生体信号を測定していると判断できる場合)には、標準アラームモードが選択されて、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行し、アラーム音の出力を行うことが可能である。
【0049】
図8は、アラームモードの切替えの一例を時系列に沿って説明するための概念図である。例えば、図8に示すように、本例では、まず、ゼロ点較正終了からその30秒経過までの期間は、測定部の出力条件にかかわらず、アラーム音とアラームメッセージを出力しないモードが実施される。
【0050】
そして、ゼロ点較正終了から30秒経過時点(第一設定時間)において、血圧値が60mmHg未満の場合、標準アラームモードが選択される。それ以降の時間では測定部の出力条件にかかわらず標準アラームモードが継続される。
また、ゼロ点較正終了から30秒経過時点において、血圧値が60mmHg以上200mmHg未満、または200mmHg以上である場合、アラーム音抑制モードが選択される。
【0051】
そして、ゼロ点較正終了の30秒後からさらに30秒経過(ゼロ点較正終了から60秒経過)までの期間では、血圧値が60mmHg以上200mmHg未満で、検出される脈拍が8拍以上の場合は、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行する(図6のS116,S117,S120参照)。
また、60mmHg以上200mmHg未満だった血圧値が、60mmHg未満になった場合も同様に、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行する(図6のS116,S117,S118,S120参照)。
また、血圧値が200mmHg以上で、検出される脈拍が8拍未満の場合、アラーム音抑制モードが維持される(図5のS112,S113参照)。
なお、血圧値が200mmHg以上で、検出される脈拍が8拍以上の場合には、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行する(図5のS112,S113,S114参照)。200mmHg以上だった血圧値が、2秒間連続して200mmHg未満になった場合にも、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行する(図5のS112,S114参照)。
【0052】
さらに、ゼロ点較正終了から60秒経過時点(第二設定時間)において、血圧値が60mmHg以上200mmHg未満の場合、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行する。それ以降の時間では測定部の出力条件にかかわらず標準アラームモードが継続される。
また、ゼロ点較正終了から60秒経過時点において、血圧値が200mmHg以上の場合、アラーム音抑制モードが継続される。
【0053】
ゼロ点較正終了から60秒経過以降では、血圧値が200mmHg以上で、検出される脈拍が8拍以下の場合は、アラーム音抑制モードが継続される(図5のS112,S113参照)。
なお、血圧値が200mmHg以上で、検出される脈拍が8拍以上の場合には、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行する(図5のS112,S113,S114参照)。200mmHg以上だった血圧値が、2秒間連続して200mmHg未満になった場合にも、アラーム音抑制モードから標準アラームモードに移行する(図5のS112,S114参照)。
【0054】
例えばゼロ点較正の際に測定されうる血圧波形の一例(図9)を挙げて測定装置10の動作を説明すると以下のようになる。図9に示す血圧波形Aは、ゼロ点較正の終了後に血圧デバイスを閉塞状態にして待機した場合に測定される波形の一例である。
【0055】
本例では、上述のように、ゼロ点較正の終了時から30秒間は、アラーム音もメッセージも出力されないモードが実行される。このため、この間において例えばトランスデューサ22にかかる圧力が略ゼロになり血圧波形Aの血圧値が矢印で示すB点のように所定の異常状態(10mmHg以下の状態)となっても、アラーム音が出力されることはない。
【0056】
また、ゼロ点較正終了から30秒経過時点においては、血圧波形Aの血圧値がC点のように60mmHg以上200mmHg未満となっているので、アラーム音抑制モードが選択される。
【0057】
また、ゼロ点較正終了後の30秒経過時から60秒経過時までの間では、血圧波形Aの血圧値が60mmHg以上200mmHg未満(D点)あるいは200mmHg以上(E点)となっており、さらに本例では脈拍は検出されない(血圧デバイスを閉塞状態にして待機した場合のため)ので、上記アラーム音抑制モードが維持される。
【0058】
また、ゼロ点較正終了から60秒経過時では、血圧波形Aの血圧値がF点のように200mmHg以上となっているので、上記アラーム音抑制モードが継続される。
【0059】
また、ゼロ点較正終了から60秒経過時以降では、血圧波形Aの血圧値が点Gのように200mmHg以上で、脈拍が検出されない場合には、上記アラーム音抑制モードが継続される。そして、被検者の血圧測定が開始され、血圧波形Aの血圧値がH領域のように2秒間連続して200mmHg未満になった場合には、標準アラームモードに移行される。
【0060】
このように、ゼロ点較正が行われる場合であっても、適切なタイミングでアラーム音が出力されたり抑制されたりするように選択して制御することができる。その結果、医療従事者は、アラーム音を解除するための操作を行うことを要さず、他の準備作業が阻害されない。
【0061】
また、モード選択の基準となる所定のタイミングは、ゼロ点較正に関係する複数のタイミングのいずれかを用いることができるので、アラーム音抑制モードが選択される条件を適切に設計することができる。
【0062】
また、アラーム音抑制モードが選択されてアラーム音の出力が抑制された場合でもアラームメッセージは表示されるので、所定異常状態であることをメッセージで確認することができる。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0064】
1:血圧測定システム、10:測定装置、11:制御部、12:測定部、13:検出部、14:報知制御部、15:較正部、16:報知部、17:入力部、18:表示部、21:カテーテル、22:トランスデューサ、23:モニタリングライン、23d:三方活栓、23e:輸液ボトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9