(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875926
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】コンクリートの配合方法
(51)【国際特許分類】
B28C 7/04 20060101AFI20210517BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
B28C7/04
G01N33/38
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-95863(P2017-95863)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-192640(P2018-192640A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年3月27日
【審判番号】不服2019-12542(P2019-12542/J1)
【審判請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】508183977
【氏名又は名称】新技術建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506056952
【氏名又は名称】株式会社梅谷商事
(73)【特許権者】
【識別番号】503044237
【氏名又は名称】株式会社フローリック
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松藤 泰典
(72)【発明者】
【氏名】達見 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小山 智幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 利光
【合議体】
【審判長】
日比野 隆治
【審判官】
村岡 一磨
【審判官】
後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−062823(JP,A)
【文献】
特開昭54−017918(JP,A)
【文献】
特開昭55−075955(JP,A)
【文献】
特開昭60−255654(JP,A)
【文献】
特開昭51−129429(JP,A)
【文献】
特開2017−67477(JP,A)
【文献】
高性能AE減水剤等を用いた流動化コンクリート配合設定の手引き(案)−改定版−」,国土交通省四国地方整備局,平成28年6月,p.1〜8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 5/00-9/04
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートに要求される圧縮強度から水セメント比を決定し、この決定した水セメント比において目標とする複数のスランプのそれぞれに応じた単位水量及び単位セメント量を決定して配合するコンクリートの配合方法において、
前記決定した水セメント比において、前記目標とする複数のスランプ中の最小スランプに対する単位水量及び単位セメント量を決定し、この決定された単位水量及び単位セメント量と同じ量の単位水量及び単位セメント量を前記目標とする複数のスランプのそれぞれに対して配合するとともに、単位フライアッシュ量を80kg/m3で一定にしてフライアッシュを配合し、さらに単位粗骨材かさ容積を一定にして、混和剤量を変化させて目標とするスランプを得ることを特徴とするコンクリートの配合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの配合設計に関し、目標の水セメント比における複数のスランプのそれぞれに対して単位水量及び単位セメント量を変えることなく同じ量を配合してそれぞれのスランプを得ることが可能なコンクリート配合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、配合設計により水、セメント、骨材などが配合される。コンクリートの配合においては、コンクリートの流動性の指標であるスランプを定める必要があるが、その際のスランプは、打ち込みの最小スランプを基準とし、これに荷卸しから打ち込みまでの現場内での運搬および時間経過に伴うスランプの低下と製造段階での品質の許容差を考慮して、荷卸しの目標スランプが選定されている。
【0003】
コンクリートの配合設計は、例えば、コンクリートに要求される圧縮強度から水セメント比を決定し、この水セメント比を一定にしてコンクリートの水量を調整しながら選定された目標とするスランプが得られるように単位水量を決定している(特許文献1「背景技術」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−067477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目標とするスランプは、構造物の種類、部材の種類および大きさ、鋼材量や鋼材の最小あき等の配筋条件、締固め作業高さ等の施工条件等に基づき多岐に亘って規定されている。一方、スランプは、通常、コンクリート強度を特定する水セメント比を目標
として、所用スランプが得られるように単位水量を定める。このとき、単位セメント量は、水セメント比に従属するので単位水量の変化に従って変化する。
【0006】
具体的には、スランプを大きくすれば単位水量が増加し、比例して単位セメント量も増加する。したがって、上記既定を満たすためには選定されたスランプ毎に単位水量を求める必要があるので、極めて多岐に亘ってコンクリートを配合しなければならない。発明者等が有する現行のコンクリート調合の例を表1に示す。
【0007】
表1に示す例で、スランプ12cmを基準にした場合、スランプ21cmのコンクリートは、設計水セメント比が45→65%と増加する間に、単位セメント量を33〜60kg/m
3の範囲で増加しなければならないが、これはコンクリートのスランプ=流動性を確保するために単位水量の増加に従属して設定した水セメント比を満足するように設定されるセメント量であり、これに伴って他のコンクリート構成材料(例えば表1における単位粗骨材かさ容積)も変化する。
【0008】
表1に示すように、必要とされる水セメント比における目標とするスランプ毎に単位水量及び単位セメント量を求めるのは手間がかかり非効率的である。
【0009】
強度を支配する水セメント比と、スランプを制御する単位水量を、それぞれ一定とした配合でスランプを変化させることができれば、即ち、コンクリートのスランプを単位水量を変化させることなく他の手段によって制御することができれば、効率的なコンクリートを製造することができる。
【0010】
【表1】
【0011】
そこで、本発明は、コンクリートの配合設計において、所定の水セメント比における目標とする複数のスランプのそれぞれに対して単位水量及び単位セメント量を変化させることなく同じ量を配合して目標のスランプを得ることを可能にすることによって配合設計の簡素化を図ることができるコンクリート配合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、目標
とした水セメント比において、対象とするスランプ中の最小スランプについて単位水量及び単位セメント量を定め、この単位水量及び単位セメント量と同じ量を対象のスランプのそれぞれに対して配合することにより所用のスランプを有するコンクリートの配合を行うものである。
【0013】
本願発明は、コンクリートに要求される圧縮強度から水セメント比を決定し、この決定した水セメント比において目標とする複数のスランプのそれぞれに応じた単位水量及び単位セメント量を決定して配合するコンクリートの配合方法において、
前記決定した水セメント比において、前記目標とする複数のスランプ中の最小スランプに対する単位水量及び単位セメント量を決定し、この決定された単位水量及び単位セメント量と同じ量の単位水量及び単位セメント量を前記目標とする複数のスランプのそれぞれに対して配合するとともに、
単位フライアッシュ量を80kg/m3で一定にしてフライアッシュを配合し、さらに単位粗骨材かさ容積を一定にして、混和剤量を変化させて目標とするスランプを得ることを特徴とするコンクリートの配合方法である。
【0015】
スランプの調整は、混和剤(主成分をリグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩とポリカルボン酸系とする化合物であること)、及び、フライアッシュ(コンクリート用フライアッシュJIS−A6201の規格を満たす品質であること)で行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明の配合方法により、目標とした水セメント比において、同じ量の単位水量及び単位セメント量の配合することにより対象のスランプのそれぞれに対して単位水量及び単位セメント量を変化させることなく目標のスランプを有するコンクリートの配合を行うことができるので、配合設計の簡素化を図ることが可能となる。
【0017】
また、単位水量が変化しないので、材料のバラツキを少なくすることが可能となる。さらに、フライアッシュを配合することによってフレッシュコンクリートの施工性(充填性)を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるコンクリート配合の充填性を通過率で示すグラフである。
【
図2】本発明によるコンクリート配合の充填性を通過率で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<
参考例>
混和剤で調整する方法
本参考例は所定の水セメント比における目標とする複数のスランプに対して単位水量及び単位セメント量を一定にし、混和剤量を変化させて目標とするスランプとするものである。
【0020】
混和剤に多機能性混和剤(フローリック製、AE減水剤標準形(I種)SV10H)を使用した例を示す。混和剤SV10Hの特長は、従来のAE減水剤よりも優れた減水効果により、単位水量を低減し、ワーカビリティーを良好にする。また、スランプ保持性能に優れ、長時間輸送を要する生コンクリートや、暑中コンクリートにおいて生コンクリートのフレッシュ性状を良好に保つ。 凍結融解抵抗性、水密性の向上、中性化の抑制等、コンクリート構造物の耐久性に寄与する。混和剤SV10Hを使用した一例を表2に示す。この例では、スランプ範囲を
15〜21cmに設定して、最小スランプを15cmとした単位セメント量でスランプ18cm及び21cmのコンクリートを製造する。なお、単位粗骨材は、従来の配合設計にしたがって、かさ容積および粗骨材の実績率から若しくは細骨材率から決定する。
【0022】
<
実施例>
フライアッシュを配合する方法
本実施例は所定の水セメント比における目標とする複数のスランプに対して単位水量及び単位セメント量及びフライアッシュ量を一定にし、混和剤量を変化させて目標とするスランプとするものである。
【0023】
フライアッシュにJIS−A6201規格を満たす品質を有するフライアッシュを使用した例を表3および表4に示す。なお、単位粗骨材は、従来の配合設計にしたがって、かさ容積および粗骨材の実績率から若しくは細骨材率から決定する。
【0024】
表3では、全ての水セメント比に対して単位フライアッシュ量(FA)を80kg/m
3で一定にして各水セメント比を満足する単位セメント量を設定して配合した。
表4では、
参考例として、単位フライアッシュ量(FA)を100kg/m
3として表3と同じ作業を行えることを示した。
【0027】
フライアッシュを配合する方法による場合、配合されたコンクリートの施工性品質(充填性)が改善される。
【0028】
<充填性評価試験>
本発明によるコンクリート配合の施工性(充填性)への影響について試験した。充填性評価試験方法は、充填装置を用いて粗骨材の最大寸法が25mm以下の高流動コンクリートの充填性を通過率で評価する試験方法(JSCE−F511−2011)を用いて評価する。評価試験結果を
図1および
図2に示す。
【0029】
図1では、細骨材に海砂、粗骨材に石灰石を用いたコンクリートと細骨材に砕砂、粗骨材に砕石を用いたコンクリートの通過率を比較して示す。充填性の悪い後者は通過率がスランプ全領域で5ポイント強低下することを示した。
【0030】
図2では、このような細・粗骨材を使用したコンクリート(細骨材に砕砂、粗骨材に砕石)にフライアッシュを添加すると通過率が全域において細骨材に海砂、粗骨材に石灰石を用いたコンクリートの通過率と等しくなると言う効果を得ることができ、施工性(充填性)が改善されることを示した。