特許第6875929号(P6875929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875929
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20210517BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20210517BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20210517BHJP
   C08G 63/181 20060101ALI20210517BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20210517BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20210517BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20210517BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20210517BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   G03F7/027 515
   G03F7/032 502
   C08G63/181
   C08G63/199
   C08G63/91
   C08F2/46
   C08F2/44 A
   C08F299/02
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-107618(P2017-107618)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-219838(P2017-219838A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-110761(P2016-110761)
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝治
(72)【発明者】
【氏名】塚田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−221980(JP,A)
【文献】 特開2014−005355(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119622(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/119623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/027
G03F 7/032
C08G 63/181
C08G 63/199
C08G 63/91
C08F 2/46
C08F 2/44
C08F 299/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるフルオレン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応物に、エポキシ基含有(メタ)アクリレートを付加した感光性樹脂及び遮光剤を含み、
前記感光性樹脂が、ヒドロキシル基を有する単官能(メタ)アクリレート及びヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種の封鎖剤で末端封鎖され、
かつ前記遮光剤がカーボンブラックであるブラックマトリックス用感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、環Zはアレーン環、Aはアルキレン基、R及びRは置換基、m及びpは0以上の整数、nは1以上の整数、kは0〜4の整数である)
【請求項2】
封鎖剤がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む請求項記載の組成物。
【請求項3】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートが、下記式(2)で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートである請求項1又は2記載の組成物。
【化2】
(式中、AはC2−4アルキレン基、Rは水素原子又はメチル基、qは0以上の整数である)
【請求項4】
テトラカルボン酸二無水物が芳香族テトラカルボン酸二無水物である請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
感光性樹脂の酸価が90mgKOH/g以上である請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
感光性樹脂の重量平均分子量が1000〜10000である請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
式(1)において、Zがベンゼン環、nが1である請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
さらに光重合開始剤及び/又は光増感剤を含む請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の組成物で形成されたブラックマトリックスを備えたカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどに利用されるカラーフィルターを構成するブラックマトリックスを形成するための感光性樹脂組成物及びこの組成物の硬化物で形成されたブラックマトリックスを備えたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイで色を発現させるための部材であるカラーフィルターは、赤(R)、緑(G)、青(B)で構成された画素の周囲の格子部にブラックマトリックス(BM)を配置させることにより、バックライトの光漏れや隣接する画素(RGB)の混色を防止している。ブラックマトリックスは、光硬化性樹脂を用いてフォトリソグラフィー法などによってパターン状に形成する方法が一般的であるが、着色剤として、カーボンブラックなどの黒色顔料を用いるため、紫外線透過率が低く、精度の高いパターンの形成が困難であった。
【0003】
特開2015−189947号公報(特許文献1)には、黒色顔料と分散剤と分散バインダーと硬化性バインダーとを含む黒色樹脂組成物の硬化物で形成された樹脂ブラックマトリックスが開示されている。この文献には、前記硬化性バインダーとしては、フルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、顔料が高濃度であっても、黒色顔料同士の接触を抑制でき、絶縁性に優れた着色層が形成できると記載されている。また、前記黒色顔料は、バナジウム酸窒化物を含み、黒色顔料中80質量%以上含むのが好ましいと記載されている。さらに、黒色顔料の割合は、組成物中20〜80質量%、好ましくは35〜70質量%であると記載されている。
【0004】
しかし、この黒色樹脂組成物では、顔料として、高価なバナジウム酸窒化物を必須とする上に、組成物中の黒色顔料濃度が高すぎるため、組成物の紫外線透過率が低く、パターン精度が十分でない。さらに、フルオレン骨格を有する前記エポキシ(メタ)アクリレートでは、アルカリ溶解性が低く、現像性が低い。
【0005】
なお、特許第4733231号公報(特許文献2)には、フルオレン骨格を有する化合物と四塩基酸二無水物とを反応させて得られる高分子化合物に、カルボン酸反応性(メタ)アクリレート化合物を付加させて得られる感光性樹脂と、光重合開始剤及び/又は光増感剤とを含む感光性樹脂組成物が開示されている。この文献には、デザイン性、視認性、フォトレジストのハレーション防止の目的で着色剤を添加できることが記載されているが、ブラックマトリックスを形成するための着色剤は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−189947号公報(特許請求の範囲、段落[0035][0080]、実施例)
【特許文献2】特許第4733231号公報(特許請求の範囲、段落[0063])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、高いパターン精度でブラックマトリックスを形成できるブラックマトリックス用感光性樹脂組成物及びこの組成物の硬化物で形成されたブラックマトリックスを備えたカラーフィルターを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、カーボンブラックを用いても、均一なブラックマトリックスを形成できるブラックマトリックス用感光性樹脂組成物及びこの組成物の硬化物で形成されたブラックマトリックスを備えたカラーフィルターを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、高い生産性でブラックマトリックスを形成できるブラックマトリックス用感光性樹脂組成物及びこの組成物の硬化物で形成されたブラックマトリックスを備えたカラーフィルターを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、基板に対する密着性に優れたブラックマトリックス用感光性樹脂組成物及びこの組成物の硬化物で形成されたブラックマトリックスを備えたカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のフルオレン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応物にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを付加した感光性樹脂と遮光剤とを組み合わせることにより、高いパターン精度でブラックマトリックスを形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、下記式(1)で表されるフルオレン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応物にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを付加した感光性樹脂及び遮光剤を含む。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、環Zはアレーン環、Aはアルキレン基、R及びRは置換基、m及びpは0以上の整数、nは1以上の整数、kは0〜4の整数である)。
【0015】
前記遮光剤はカーボンブラックであってもよい。前記感光性樹脂は、ヒドロキシル基を有する単官能(メタ)アクリレート及びヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種の封鎖剤で末端封鎖されていてもよい。前記封鎖剤は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートは、下記式(2)で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートであってもよい。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、AはC2−4アルキレン基、Rは水素原子又はメチル基、qは0以上の整数である)。
【0018】
前記テトラカルボン酸二無水物は芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。前記感光性樹脂の酸価は90mgKOH/g以上であってもよい。前記感光性樹脂の重量平均分子量は1000〜10000程度である。前記式(1)において、Zがベンゼン環、nは1であってもよい。本発明の組成物は、さらに光重合開始剤及び/又は光増感剤を含んでいてもよい。
【0019】
さらに、本発明は、前記組成物で形成されたブラックマトリックスを備えたカラーフィルターも含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、特定のフルオレン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応物にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを付加した感光性樹脂と遮光剤とを組み合わせているため、高いパターン精度でブラックマトリックスを形成できる。また、カーボンブラックを用いても、均一なブラックマトリックスを形成できる。さらに、速やかにパターンを形成できるため、高い生産性でブラックマトリックスを形成できる。しかも、基板(例えば、ガラス基板)に対する密着性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[感光性樹脂]
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は感光性樹脂を含む。この感光性樹脂は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応物にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを付加して得られる。
【0022】
(式(1)で表されるフルオレン化合物)
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
【0023】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン(例えば、ナフタレンなどの縮合二環式C10−16アレーン)環、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
【0024】
環集合アレーン環としては、ビアレーン環、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環など;テルアレーン環、例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環などが例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6−10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
【0025】
フルオレンの9位に置換する2つの環Zは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環(密着性を向上できる観点から、特にベンゼン環)などが好ましい。
【0026】
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
【0027】
アルキレン基Aには、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2−3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などの分岐鎖状C3−6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3−4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。
【0028】
オキシアルキレン基(AO)の繰り返し数(平均付加モル数)を示すmは、0又は1以上の整数(例えば0〜15、好ましくは0〜10程度)の範囲から選択でき、例えば0〜8(例えば1〜8)、好ましくは0〜5(例えば1〜5)、さらに好ましくは0〜4(例えば1〜4)、特に0〜3(例えば1〜3)程度であってもよく、ブラックマトリックスの機械的強度(硬さ又は剛直性)や耐熱性を向上できる観点から、通常、0〜2(例えば0又は1、特に1)程度であってもよい。また、現像性やブラックマトリックスの柔軟性を向上できる観点からは、通常、3〜8(例えば4〜7、特に5〜6)程度であってもよい。なお、mが2以上である場合、アルキレン基Aの種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、アルキレン基Aの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0029】
環Zに置換した基−[O−(AO)−H]の個数を示すnは、0以上であり、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1又は2(特に1)であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0030】
基−[O−(AO)−H]は、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2−,3−,4−位(特に、3−位及び/又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係(特にnが1である場合、2,6−位の関係)で基−[O−(AO)−H]が置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基−[O−(AO)−H]の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの4−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、基−[O−(AO)−H]の置換位置は、2−,3−,2’−,3’−,4’−位のいずれであってもよく、通常、2−,3’−,4’−位、好ましくは2−,4’−位(特に、2−位)に置換していてもよい。
【0031】
置換基Rとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
【0032】
これらの置換基Rのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)が好ましい。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
【0033】
置換基Rの係数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば、0〜2)の整数、さらに好ましくは0又は1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
【0034】
置換基Rとして、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。
【0035】
これらの置換基Rのうち、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(特に、メチル基などのC1−3アルキル基)、カルボキシル基又はC1−2アルコキシ−カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0〜4(例えば0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
【0036】
好ましいフルオレン化合物としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−10アリール)フルオレンなどが挙げられる。なかでも、密着性を向上できる観点から、環Zがベンゼン環である化合物、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(モノ乃至ヘキサ)C2−3アルコキシ−フェニル]フルオレンなどが好ましい。これらのフルオレン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
(テトラカルボン酸二無水物)
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロへプタンテトラカルボン酸二無水物、ノルボルナンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無二水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物などの脂環族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルプロパンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、機械的特性や耐熱性などの点から、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などの脂環族テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、なかでも、芳香族テトラカルボン酸二無水物[例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)などの環集合式アレーンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物などの単環式アレーンテトラカルボン酸二無水物など]が特に好ましい。
【0039】
テトラカルボン酸二無水物の割合は、前記フルオレン化合物1モルに対して、例えば0.5〜1.5モル、好ましくは0.7〜1.3モル、さらに好ましくは0.8〜1.2モル程度であり、フルオレン化合物と略当モルであってもよい。
【0040】
(エポキシ基含有(メタ)アクリレート)
前記式(2)において、アルキレン基Aには、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が含まれる。直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基などが挙げられる。分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などの分岐鎖状C3−6アルキレン基などが挙げられる。これらのうち、直鎖状C2−4アルキレン基が好ましく、直鎖状C3−4アルキレン基(特にブチレン基)が特に好ましい。
【0041】
オキシアルキレン基(AO)の繰り返し数(平均付加モル数)を示すqは、0又は1以上の整数(例えば0〜10程度)の範囲から選択でき、例えば0〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2(特に1)程度である。なお、qが2以上である場合、アルキレン基Aの種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
基Rは、水素原子、メチル基のいずれであってもよいが、感光性に優れる点で、水素原子が好ましい。
【0043】
好ましいエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートグリコールエーテル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートの割合は、前記テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、例えば0.1〜1モル、好ましくは0.3〜0.8モル、さらに好ましくは0.4〜0.6モル(特に0.45〜0.55モル)程度である。エポキシ基含有(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、感光性が低下する虞があり、多すぎると、遮光剤(特にカーボンブラック)の分散性が低下する虞がある。
【0045】
(封鎖剤)
前記感光性樹脂の末端は、封鎖されていなくてもよいが、現像性(又は紫外線に対する感受性、感光性)を向上させ、感光性樹脂の分子量の上昇を抑制できる点から、封鎖剤で封鎖(末端の酸無水物基が開環反応により封鎖)されているのが好ましい。
【0046】
封鎖剤としては、前記フルオレン化合物と前記テトラカルボン酸二無水物との反応物の末端を封鎖できれば特に限定されないが、簡便に、重合性基を導入して末端を封鎖できる点から、酸無水物基に対する反応性基を有する単官能又は多官能(メタ)アクリレートが好ましく、なかでも、ヒドロキシル基を有する単官能(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)及びヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の封鎖剤を含むのが特に好ましい。
【0047】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどのポリオールのポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのヒドロキシ(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0049】
これらの封鎖剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することもできる。これらのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのうち、ゲル化し難く、感光性樹脂を容易に調製できる観点からは、ヒドロキシル基(特に1つのヒドロキシル基)を有する単官能(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−4アルキル(メタ)アクリレートなどが汎用される。また、感光性樹脂の硬化性及び硬化物における機械的強度を向上できる観点からは、ヒドロキシル基(特に1つのヒドロキシル基)を有する多官能(メタ)アクリレート、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのポリオールのジ乃至テトラ(メタ)アクリレートなどが汎用される。2つ以上のヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む場合、感光性樹脂を調製する際にゲル化する虞がある。
【0050】
封鎖剤の割合は、前記テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、例えば0.05〜0.8モル、好ましくは0.1〜0.5モル、さらに好ましくは0.2〜0.4モル(特に0.3〜0.35モル)程度である。封鎖剤の割合が少なすぎると、感光性樹脂の分子量の上昇が抑制できない虞があり、多すぎると、分子量の低下によりパターン(組成物の硬化物)の機械的強度が低下する虞がある。
【0051】
(感光性樹脂の特性)
感光性樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の共重合性単位を含んでいてもよい。他の共重合性単位としては、例えば、フルオレン骨格を有さないジオール単位(例えば、エチレングリコールなどのアルカンジオール単位)、ジカルボン酸無水物単位(無水マレイン酸などのアルカンジカルボン酸無水物、無水フタルなどのアレーンジカルボン酸無水物単位など)などが挙げられる。他の共重合性単位の割合は、対応する単量体100重量部に対して10重量部以下(例えば0.1〜10重量部)であってもよい。
【0052】
感光性樹脂はアルカリ可溶性であり、エポキシ基含有(メタ)アクリレートや封鎖剤の割合により酸価を調整できる。感光性樹脂の酸価(固形分酸価)は、20〜200mgKOH/g(例えば30〜200mgKOH/g)程度の範囲から選択でき、例えば50〜180mgKOH/g、好ましくは70〜150mgKOH/g(例えば80〜150mgKOH/g)、さらに好ましくは100〜130mgKOH/g程度であり、遮光剤(特にカーボンブラック)の分散性に優れる点から、70mgKOH/g以上、特に90mgKOH/g以上(例えば90〜150mgKOH/g)であってもよい。また、漏れ電流などを抑制してディスプレイのコントラスト低下を有効に防止できる点から、感光性樹脂の酸価は、例えば、20〜70mgKOH/g(特に30〜50mgKOH/g)程度であってもよい。酸価が小さすぎると、パターン精度が低下する虞がある。また、酸価が高すぎると、現像が過剰となりパターンが剥離する虞があるとともに、漏れ電流などを抑制し難くなる虞がある。なお、本願明細書及び特許請求の範囲では、酸価は、JIS K0070に準拠して測定できる。
【0053】
感光性樹脂の重量平均分子量は、特に制限されず、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにおいて、ポリスチレン換算で、例えば1000〜10000、好ましくは1500〜8000(例えば2000〜6000)、さらに好ましくは3000〜5000(特に3500〜4500)程度である。分子量が大きすぎると、現像性が低下する虞があり、低すぎると、パターンの機械的強度が低下する虞がある。感光性樹脂の分子量分布Mw/Mnは、例えば1〜5、好ましくは1.2〜3、さらに好ましくは1.5〜2程度であってもよい。
【0054】
(感光性樹脂の製造方法)
前記式(1)で表されるフルオレン化合物と前記テトラカルボン酸二無水物との反応(エステル化反応)は溶媒の非存在下で行ってもよく、反応に不活性な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ホルムアミド、N−メチル−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなど)、カルビトールアセテート類(エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなど)、エーテル−エステル類(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル−エステル類が好ましい。
【0055】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、前記フルオレン化合物及び前記テトラカルボン酸二無水物の合計100重量部に対して、例えば25〜300重量部、好ましくは50〜200重量部、さらに好ましくは100〜150重量部程度である。
【0056】
エステル化反応は触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用の触媒、例えば、脂肪族アミン(例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、1,2,2’,6,6’−ペンタメチルピペリジン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、4−メチルモルホリン、4−エチルモルホリン、2,6−ジメチルピペラジンなどの脂肪族第三級アミン)、芳香族アミン(例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどの芳香族第3級アミンなど)、複素環式アミン[ピリジン、ルチジン、コリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−ピロリジノピリジン、イミダゾール系化合物(イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなど)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンなど)など]、第4級アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイドなど)、ホスフィン類(例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなど)、ホスホニウム塩(例えば、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなど)などが挙げられる。これらの触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの触媒のうち、ジアザビシクロウンデセンなどの複素環式アミンが好ましい。
【0057】
触媒の割合は、前記フルオレン化合物及び前記テトラカルボン酸二無水物の合計100重量部に対して、例えば0.01〜2重量部、好ましくは0.03〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部程度である。
【0058】
感光性樹脂を末端封鎖する場合、封鎖剤は、エステル化後の反応物の末端を封鎖してもよいが、反応物の分子量の上昇を抑制できる点から、前記フルオレン化合物及びテトラカルボン酸二無水物と一括して仕込んでもよく、エステル化の反応途中に添加してもよい。これらのうち、分子量の抑制効果が大きい点から、反応初期から添加する方法(特に、前記フルオレン化合物及びテトラカルボン酸二無水物と一括して仕込む方法)が好ましい。
【0059】
封鎖剤が重合性基を有する場合(例えば、封鎖剤として、ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどの酸無水物基に対する反応性基を有する(メタ)アクリレートを使用する場合)、封鎖剤自身の重合を抑制する点から、重合禁止剤を封鎖剤とともに添加するのが好ましい。重合禁止剤としては、慣用のラジカル重合禁止剤、例えば、ハイドロキノン、メトキノン(p−メトキシフェノール)、ピロガロール、t−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの重合禁止剤のうち、メトキノンなどが汎用される。
【0060】
重合禁止剤の割合は、封鎖剤100重量部に対して、例えば0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部、さらに好ましくは1〜2重量部程度である。
【0061】
エステル化反応の反応温度は、例えば60〜220℃、好ましくは90〜160℃、さらに好ましくは100〜150℃程度である。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。なお、反応は、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。
【0062】
得られた反応物とエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの開環エーテル化反応の反応温度及び反応時間も前記エステル化反応温度及び反応時間と同一の範囲から選択できる。
【0063】
反応終了後、得られた感光性樹脂は、必要により、慣用の方法、例えば、貧溶媒での沈殿、濾過、濃縮、抽出、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
【0064】
[遮光剤]
前記遮光剤としては、ブラックマトリックスに利用される慣用の遮光剤を利用でき、各種の黒色染顔料を利用できる。
【0065】
黒色染顔料としては、例えば、アゾ系染顔料、アニリンブラック、硫化染料、ペリレン化合物などの有機系黒色染顔料;カーボンブラック、グラファイト、チタン酸窒化物(チタンブラック)、鉄系複合酸化物、バナジウム酸窒化物などの無機系黒色染顔料などが挙げられる。
【0066】
これらの遮光剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの遮光剤のうち、黒色顔料が好ましく、感光性樹脂に対する分散性の向上効果が大きく、安価である点から、カーボンブラックが特に好ましい。
【0067】
カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、被覆カーボンブラック、グラフトカーボンブラックなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0068】
なお、カーボンブラックは、黒色度を高めるため、少量の補色剤、例えば、フタロシアニンブルーなどの青色顔料を併用してもよい。
【0069】
遮光剤の割合は、感光性樹脂100重量部に対して1重量部以上であってもよく、例えば1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部、さらに好ましくは3〜50重量部程度である。本発明では、組成物中における遮光剤(特にカーボンブラック)の濃度が低くても、遮光剤を均一に分散できるため、均一な遮光性を実現できる。そのため、遮光剤(特にカーボンブラック)の割合は、感光性樹脂100重量部に対して0.5〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは1.5〜25重量部程度であってもよく、例えば、2〜5重量部、好ましくは3〜4.5重量部、さらに好ましくは3.5〜4.2重量部程度であってもよい。さらに、遮光剤の濃度を低減できるため、光硬化性にも優れ、ブラックマトリックスの生産性も向上できる。
【0070】
[光重合開始剤及び光増感剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなど)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤の割合は、感光性樹脂100重量部に対して、例えば1〜10重量部(例えば、2〜8重量部)、好ましくは3〜7重量部(例えば、4〜6.5重量部)程度であってもよい。
【0071】
光重合開始剤は、慣用の光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)などのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなど}などの慣用の光増感剤などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
光重合開始剤及び光増感剤の総量は、感光性樹脂100重量部に対して、例えば1〜50重量部、好ましくは5〜45重量部、さらに好ましくは5〜40重量部(特に5.5〜35重量部)程度であってもよく、例えば、3〜7.5重量部、好ましくは4〜7重量部、さらに好ましくは5〜6.5重量部程度であってもよい。
【0073】
[他の添加剤]
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合性モノマーを含んでいてもよい。他の重合性モノマーとしては、例えば、慣用の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。他の重合性モノマーの割合は、感光性樹脂100重量部に対して100重量部以下であってもよく、例えば0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部程度である。
【0074】
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、さらに希釈剤を含んでいてもよい。希釈剤としては、反応性希釈剤、非反応性希釈剤(溶媒)が含まれる。反応性希釈剤としては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸アミドなどの重合性単量体などが挙げられる。反応性希釈剤の割合は、感光性樹脂100重量部に対して、例えば1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度である。溶媒としては、感光性樹脂の製造で用いられた溶媒から選択できる。溶媒の割合は、例えば、感光性樹脂100重量部に対して10〜5000重量部、好ましくは100〜3000重量部、さらに好ましくは300〜2000重量部(特に500〜1500重量部)程度であってもよく、例えば、100〜10000重量部、好ましくは500〜5000重量部、さらに好ましくは1000〜3000重量部(特に1500〜2500重量部)程度であってもよい。
【0075】
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0076】
[カラーフィルター]
本発明のカラーフィルターは、前記ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物の硬化物で形成されたブラックマトリックス(格子状パターン)を備えている。このブラックマトリックスは、感光性樹脂組成物の塗膜を、所定のパターンで露光し、現像することにより、ネガ型パターンの硬化物を生成できる。より具体的には、スピンコート、ロールコート、ディップコート、バーコートなどのコーティング方法を利用して、感光性樹脂組成物を基板上にコーティングし、必要であれば、乾燥させた後、ネガマスクを通じて活性光線を照射して硬化させ、未露光部をアルカリ現像剤で現像(又は溶出)することにより、所定のパターンに形成された硬化物を生成させてもよい。
【0077】
活性光線としては、例えば、紫外線、X線、電子線などの活性光線を利用できる。光照射処理(露光処理)において、光照射エネルギー量は、用途、塗膜の膜厚などによって異なるが、通常、0.1〜10000mJ/cm、好ましくは1〜8000mJ/cm、さらに好ましくは10〜5000mJ/cm(例えば、100〜1000mJ/cm)程度であってもよい。硬化は、空気中又は不活性ガス雰囲気(例えば、窒素、希ガスなど)で行ってもよい。
【0078】
さらに、必要であれば、所定のパターンを加熱して後硬化させてもよい。アルカリ現像剤としては、例えば、無機塩基の水溶液(アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの水溶液など)、有機塩基の水溶液(トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキサイドなどの水溶液など)などが例示でき、温度10〜50℃(例えば、20〜35℃)程度で現像してもよい。なお、現像に際して、超音波洗浄機などを利用してもよい。
【0079】
パターン(又は薄膜)の厚みは、例えば0.1〜100μm、好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは1〜5μm程度であってもよい。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に、使用した感光性樹脂原料及び評価方法を示す。
【0081】
[感光性樹脂原料]
(フルオレン化合物)
BPEF:大阪ガスケミカル(株)製、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン
BNEF:大阪ガスケミカル(株)製、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン
BPEF−9EO:大阪ガスケミカル(株)製、BPEF 1モルに対して、平均値で9モルのオキシエチレン基(又はエチレンオキシド)が付加した付加体
(テトラカルボン酸二無水物)
BPDA:宇部興産(株)製、3,3’−4,4’ビフェニルテトラカルボン酸無水物
PMDA:関東化学(株)製、ピロメリット酸無水物
(封鎖剤)
HEA:東京化成工業(株)製、2−ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:関東化学(株)製、2−ヒドロキシエチルメタクリレート
4HBA:関東化学(株)製、4−ヒドロキシブチルアクリレート
PE−3A:共栄社化学(株)製、「ライトアクリレートPE−3A」、ペンタエリスリトールトリアクリレート
(エポキシ基含有(メタ)アクリレート)
4HBAGE:日本化成(株)製、「4HBAGE」、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル。
【0082】
[平均分子量及び分子量分布]
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn(ポリスチレン換算)並びに分子量分布Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製「HLC−8320GPC型」、溶離液:10%の濃度で酢酸を含むテトラヒドロフラン溶液)により測定した。なお、分析試料は、10%酢酸/テトラヒドロフラン溶液に試料を濃度0.1%で溶解し、メンブランフィルター(0.45μm)でろ過して用いた。検出器には、示差屈折計、紫外可視検出器(254nm)を使用し、測定流量は1.00mL/分とした。
【0083】
[固形分濃度:重量%]
ハロゲン水分計(メトラー・トレド(株)製「HG53」)にて、乾燥温度200℃で加熱残分を測定することにより、固形分濃度を測定した。
【0084】
[粘度:mPa・s]
実施例で得られた樹脂溶液の粘度(25℃)を、TV−22形粘度計(コーンプレートタイプ、東機産業(株)製「TVE−22L」)を用い、オプションロータ(01:1゜34×R24)を選択し、回転数0.5rpmで測定した。
【0085】
[固形分酸価:mgKOH/g]
各試料(実施例で得られた樹脂溶液)をJIS K0070に記載された中和滴定法に準拠して酸価を測定し、固形分換算の酸価を算出した。
【0086】
[現像性及び密着性の評価]
ガラス基板上に感光性樹脂組成物をパスツールピペットで1滴垂らし、スピンコート(1000〜1800rpm、30s)し、2〜3μmの薄膜を作製した。その後、80℃のホットプレートで3分間乾燥し、UV照射器にてUV照射(積算光量200又は500mJ/cm)し、未露光部、露光部を形成させた。作製した未露光部、露光部を有する硬化塗膜を30℃の0.1又は1wt%炭酸ナトリウム水溶液に所定時間(30〜1800秒)浸漬し、現像挙動を目視で確認して、現像性と、浸漬後の基板に対する密着性とを以下の基準により評価した。
【0087】
(現像性)
○:均一に現像される(残渣がない)
△:部分的に現像される(残渣がある)
×:現像がほとんど進行しない
(密着性)
A:拭いても塗膜がはがれない
B:拭くと未露光部(残渣)がはがれる
C:拭くと露光部及び未露光部(残渣)双方がはがれる。
【0088】
実施例1
(感光性樹脂の製造)
攪拌機と冷却管とを備えたフラスコに、BPEF 80.8g、BPDA 54.2g、HEA 7.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)160g、p−メトキシフェノール(東京化成工業(株)製、MEHQ)0.1g、ジアザビシクロウンデセン(関東化学(株)製、DBU)0.1gを入れ、攪拌しながら120℃のマントルヒーターで4時間加熱した。その後、4HBAGE 18.4gを加え、更に120℃で4時間加熱攪拌し、淡黄色透明粘稠性の感光性樹脂Aを含む樹脂溶液を得た。
【0089】
得られた樹脂溶液について、粘度、GPCによるスチレン換算重量平均分子量、固形分濃度及び固形分酸価を測定したところ、粘度1400mPa・s/25℃、GPCによるスチレン換算重量平均分子量Mw3800、数平均分子量Mn2200、分子量分布Mw/Mn1.73、固形分濃度52.4重量%、固形分酸価119.5mgKOH/gであった。感光性樹脂Aの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0090】
(感光性樹脂組成物の作製)
得られた感光性樹脂Aを含む樹脂溶液100重量部に対し、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製:Irgacure184)3重量部、カーボンブラック(東海カーボン(株)製:8500F)2重量部を混合し、原液を作製した。原液のままでは粘度が高く、薄膜が形成できないため原液をPGMEAで10倍希釈して、カーボンブラックを分散させた感光性樹脂組成物とした。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0091】
実施例2
(感光性樹脂の製造)
4HBAGEを73.7g、MEHQを0.2g使用し、添加後の加熱攪拌時間を8時間に変更する以外は、実施例1と同様にして黄色粘稠性の感光性樹脂Bを含む樹脂溶液を調製した。感光性樹脂Bの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0092】
(感光性樹脂組成物の作製)
感光性樹脂Aを含む樹脂溶液に代えて、感光性樹脂Bを含む樹脂溶液100重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0093】
実施例3
(感光性樹脂の製造)
HEAに代えて、HEMA 7.9gを用いる以外は、実施例1と同様にして黄色粘稠性の感光性樹脂Cを含む樹脂溶液を調製した。感光性樹脂Cの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0094】
(感光性樹脂組成物の作製)
感光性樹脂Aを含む樹脂溶液に代えて、感光性樹脂Cを含む樹脂溶液100重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0095】
実施例4
(感光性樹脂の製造)
BPEFに代えて、BNEF 99.1gを用いる以外は、実施例1と同様にして淡黄色粘稠性の感光性樹脂Dを含む樹脂溶液を調製した。感光性樹脂Dの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0096】
(感光性樹脂組成物の作製)
感光性樹脂Aを含む樹脂溶液に代えて、感光性樹脂Dを含む樹脂溶液100重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0097】
実施例5
(感光性樹脂の製造)
BPEFに代えて、BNEF 99.1gを用い、4HBAGEを73.7g、MEHQを0.2g使用し、4HBAGE添加後の加熱攪拌時間を8時間に変更する以外は、実施例1と同様にして淡黄色粘稠性の感光性樹脂Eを含む樹脂溶液を調製した。感光性樹脂Eの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0098】
(感光性樹脂組成物の作製)
感光性樹脂Aを含む樹脂溶液に代えて、感光性樹脂Eを含む樹脂溶液100重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0099】
実施例6
(感光性樹脂の製造)
BPEFに代えて、BPEF−9EO 153.6gを用い、HEAに代えて、4HBA 8.8gを用い、4HBAGEを73.7g、MEHQを0.4g使用し、4HBAGE添加後の加熱攪拌時間を11時間に変更する以外は、実施例1と同様にして淡黄色粘稠性の感光性樹脂Fを含む樹脂溶液を調製した。感光性樹脂Fの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0100】
(感光性樹脂組成物の作製)
感光性樹脂Aを含む樹脂溶液に代えて、感光性樹脂Fを含む樹脂溶液100重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0101】
実施例7
(感光性樹脂の製造)
BPDAに代えて、PMDA 40.1gを用いる以外は、実施例6と同様にして淡黄色粘稠性の感光性樹脂Gを含む樹脂溶液を調製した。感光性樹脂Gの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0102】
(感光性樹脂組成物の作製)
感光性樹脂Aを含む樹脂溶液に代えて、感光性樹脂Gを含む樹脂溶液100重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0103】
実施例8
(感光性樹脂の製造)
4HBAに代えて、PE−3A 18.1gを用い、MEHQを0.5g使用し、4HBAGE添加後の加熱攪拌時間を8時間とする以外は、実施例7と同様にして淡黄色粘稠性の感光性樹脂Hを含む樹脂溶液を調製した。感光性樹脂Hの仕込み比及び評価結果を表1に示す。
【0104】
(感光性樹脂組成物の作製)
感光性樹脂Aを含む樹脂溶液に代えて、感光性樹脂Hを含む樹脂溶液100重量部を用いる以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物の現像性及び密着性の評価結果を表2に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
表1及び2から明らかなように、実施例では、高いパターン精度でブラックマトリックスを形成できた。
【0108】
実施例2の固形分酸価は48mgKOH/gであり、実施例1の120mgKOH/gより酸価が低いため、現像時間が遅くなった。
【0109】
実施例1のBPEFに代えて、BNEFを用いた実施例4及び5では、原因は不明であるが基板に対する密着性が低下し、アルカリ液浸後、剥がれ易くなった。更に、酸価の高い実施例4の方がその傾向が大きかった。
【0110】
実施例1のBPEFに代えて、BPEF−9EOを用いた実施例6は、固形分酸価が37mgKOH/gと低いにも関わらず、意外にも実施例1及び3と同等に現像性が良好であった。このことは、親水性を有するオキシエチレン基で現像性が確保できたものと推測される。
【0111】
実施例7の4HBAに代えて、PE−3Aを用いた実施例8では、実施例7と比較すると、UV照射光量を500mJ/cmから200mJ/cmに低減しても、硬化が十分に進行し、かつ現像性も確保することができた。
【0112】
また、BPEFを用いた実施例1〜3(特に、実施例1)は、現像性や密着性に加えて、機械的強度(硬さ又は剛直さ)及び耐熱性のバランスにも優れていた。一方、BPEF−9EOを用いた実施例6〜8(特に、実施例8)は、柔軟性が高く、このような特性が要求される画像表示装置(フレキシブルディスプレイなど)におけるブラックマトリックスとして、有効に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は、液晶表示装置などの画像表示装置を構成するカラーフィルターのブラックマトリックスを形成するためのインキとして利用できる。