特許第6875941号(P6875941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875941
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】衝撃吸収装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/34 20060101AFI20210517BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20210517BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B60R19/34
   B60R19/04 M
   F16F7/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-120405(P2017-120405)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-6129(P2019-6129A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八並 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】北 恭一
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
(72)【発明者】
【氏名】金谷 庸平
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−7511(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/044035(WO,A1)
【文献】 特開2006−341677(JP,A)
【文献】 特開2017−47818(JP,A)
【文献】 特開2010−254213(JP,A)
【文献】 特開2012−153252(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0040398(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105667435(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0011081(KR,A)
【文献】 独国特許出願公開第102014114349(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/34
B60R 19/04
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる筒状に形成された左右一対の衝撃吸収部材と、
車幅方向に延設され、その延設方向における両端部が前記左右一対の衝撃吸収部材の前端面にそれぞれ取り付けられたバンパーリインフォースメントと、を備えた衝撃吸収装置であって、
前記衝撃吸収部材は、
車両前後方向に延びる筒状部と、
前記筒状部の前端を塞ぐ板状の蓋部と、
を有し、
前記バンパーリインフォースメントは、
車幅方向に延設され、前記衝撃吸収部材よりも車両高さ方向の寸法が小さく設定され、前記蓋部の前面に固定された本体部と、
前記蓋部及び前記本体部とは別体として形成され、前記本体部の上面又は下面に固定された左右一対の補強部であって、前記左右一対の衝撃吸収部材の前端面のうち、前記本体部よりも上方又は下方に位置する部分に沿ってそれぞれ延設された補強部と、
を備えた、衝撃吸収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃吸収装置において、
前記本体部及び前記補強部のうち、車室とは反対側へそれぞれ向けられた面である前面が同一面内に位置している、衝撃吸収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の衝撃吸収装置において、
前記本体部及び前記補強部のうち、車室側へそれぞれ向けられた面である後面が同一面内に位置している、衝撃吸収装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の衝撃吸収装置において、
前記衝撃吸収部材は、車両前後方向に延びる複数の壁部から構成され、
前記バンパーリインフォースメントの前方から見て、前記衝撃吸収部材における隣接する2つの壁部の交差部と、前記補強部の少なくとも一部分とが重なっている、衝撃吸収装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載の衝撃吸収装置において、
前記バンパーリインフオースメントを構成する壁部のうちの少なくとも1つの壁部と、前記衝撃吸収部材を構成する少なくとも1つの壁部とが平行であり、且つ両壁部を前方から見て、それらの壁厚方向における少なくとも一部の領域が重なっている、衝撃吸収装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝撃吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載されているように、車両の衝突時に変形して衝撃を吸収する衝撃吸収部材を備えた車両は知られている。この車両は、車両前後方向にそれぞれ延設された左右一対のサイドメンバと、前記左右一対のサイドメンバの前方にて車幅方向に延設されたバンパーリインフォースメントとを備えている。バンパーリインフォースメントは、左右一対の衝撃吸収部材を介して、サイドメンバに取り付けられる。この衝撃吸収部材は車両前後方向に延びる筒状に形成されている。衝撃吸収部材の後端部がサイドメンバの前端部に接続され、衝撃吸収部材の前端部がバンパーリインフォースメントの車幅方向端部に接続される。車両の前端に物体が衝突したとき、衝撃吸収部材がその軸線方向(車両前後方向)に圧縮されるように変形することにより、前記衝突による衝撃が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−153252号公報
【発明の概要】
【0004】
一般に、バンパーリインフォースメントの後方には、ラジエータが配置されている。例えば、アルミニウム合金材を押出加工して一体的に形成されたバンパーリインフォースメントを用いる場合、ラジエータへの空気の流れを妨げないように、バンパーリインフォースメントの車幅方向中間部の一部(例えば上側部分(図16における斜線部))をトリミングしなければならない場合がある。この場合、製造コストが高くなる。例えば、図17及び図18に示すように、バンパーリインフォースメントの車両高さ方向の幅を全体的(すなわち、右端から左端に亘って)に小さくすれば、上記のトリミング工程を省略できる。しかし、バンパーリインフォースメントの車両高さ方向の寸法が衝撃吸収部材の車両高さ方向の寸法よりも小さい場合、次に説明するように、衝突時に衝撃があまり吸収されない。例えば、図17及び図18に示す例においては、バンパーリインフォースメントの後面が衝撃吸収部材の前端面における下側部分に対面するような位置に取り付けられている。この例においては、図19A及び図19Bに示すように、衝突時に、衝撃吸収部材の下側部分のみが破壊され、上側部分があまり破壊されずに残る。言い換えれば、衝撃吸収部材の先端部が下方へ折れ曲がる。したがって、この場合の衝撃吸収量は、衝撃吸収部材がその軸線方向に圧縮されるように変形した場合に比べて小さい。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、車両高さ方向の寸法が比較的小さいバンパーリインフォースメントを備えた衝撃吸収装置であって、衝撃吸収性能を向上させることができる衝撃吸収装置を提供することにある。また、車両高さ方向の寸法が比較的小さいバンパーリインフォースメントであって、車両の衝撃吸収性能を向上させることができるバンパーリインフォースメントを提供することにある。なお、「車両高さ方向の寸法が比較的小さい」とは、バンパーリインフォースメントの車両高さ方向の寸法が、バンパーリインフォースメントを支持する衝撃吸収部材の車両高さ方向の寸法よりも小さいことを意味する。また、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両前後方向に延びる筒状に形成された左右一対の衝撃吸収部材(10L,10R)と、車幅方向に延設され、その延設方向における両端部が前記左右一対の衝撃吸収部材の前端面にそれぞれ取り付けられたバンパーリインフォースメント(20)と、を備えた衝撃吸収装置(1)であって、前記衝撃吸収部材は、車両前後方向に延びる筒状部(11)と、前記筒状部の前端を塞ぐ板状の蓋部(13)と、を有し、前記バンパーリインフォースメントは、車幅方向に延設され、前記衝撃吸収部材よりも車両高さ方向の寸法が小さく設定され、前記蓋部の前面に固定された本体部(21)と、前記蓋部及び前記本体部とは別体として形成され、前記本体部の上面又は下面に固定された左右一対の補強部(22L,22R)であって、前記左右一対の衝撃吸収部材の前端面のうち、前記本体部よりも上方又は下方に位置する部分に沿ってそれぞれ延設された補強部と、を備えた、衝撃吸収装置としたことにある。
【0008】
この場合、前記本体部及び前記補強部のうち、車室とは反対側へそれぞれ向けられた面である前面が同一面内に位置しているとよい。
【0009】
また、この場合、前記本体部及び前記補強部のうち、車室側へそれぞれ向けられた面である後面が同一面内に位置しているとよい。
【0010】
さらに、この場合、前記衝撃吸収部材は、車両前後方向に延びる複数の壁部(111,112,113,114,115)から構成され、前記バンパーリインフォースメントの前方から見て、前記衝撃吸収部材における隣接する2つの壁部の交差部と、前記補強部の少なくとも一部分とが重なっているとよい。また、この場合、前記バンパーリインフオースメントを構成する壁部のうちの少なくとも1つの壁部(211,222)と、前記衝撃吸収部材を構成する少なくとも1つの壁部(111,112)とが平行であり、且つ両壁部を前方から見て、それらの壁厚方向における少なくとも一部の領域が重なっているとよい。
【0011】
本発明においては、バンパーリインフォースメントの本体部の車両高さ方向の寸法が、衝撃吸収部材の車両高さ方向の寸法よりも小さく設定されている。したがって、衝撃吸収部材の前端面に本体部が固定された状態において、衝撃吸収部材の上端部及び下端部の少なくとも一方は、本体部よりも上方又は下方に位置している。補強部は、衝撃吸収部材のうち、本体部よりも上方又は下方に位置する部分の前方に位置している。すなわち、補強部は、衝撃吸収部材の前端面のうち、本体部よりも上方又は下方に位置する部分に沿って延設されている。言い換えれば、バンパーリインフォースメントの前方から見て、補強部の前面(後面)と、衝撃吸収部材の前端面のうち、本体部よりも上方又は下方に位置する部分とが重なっている(図15参照)。また、補強部は、本体部に固定されている。
【0012】
したがって、車両の前方から物体が衝突したとき、バンパーリインフォースメント20の前面に対して後方へ向かう荷重が作用すると、本体部と補強部とが一体となって、衝撃吸収部材を後方へ押圧する。つまり、衝撃吸収部材の前面の前面に均等に荷重が作用する。そのため、衝撃吸収部材が、その前端側から後端側に向かって圧縮されるように変形していく。
【0013】
すなわち、本発明に係る衝撃吸収装置(又はバンパーリインフォースメント)によれば、図19A及び図19Bに示す従来例のように、衝撃吸収部材の先端部が下方へ折れ曲がることが抑制され、衝撃吸収部材がその軸線方向に圧縮されるように変形していく。言い換えれば、衝撃吸収部材のうち、破壊されずに残る部分がほとんど存在しない。したがって、本発明に係る衝撃吸収装置の衝撃吸収性能は、図17及び図18に示す従来の衝撃吸収装置に比べて高い。すなわち、ラジエータの冷却性能を出来るだけ高く保つために、本体部の車両高さ方向の寸法を、衝撃吸収部材の車両高さ方向の寸法よりも小さく設定したとしても、衝撃吸収装置の衝撃吸収性能が損なわれない。
【0014】
また、図16に示す例のように、バンパーリインフォースメントの中間成形体の車両高さ方向の寸法を衝撃吸収部材の車両高さ方向の寸法と同等にしておき、ラジエータの前方に位置する部分の一部(図16における斜線部)をトリミングすればよいとも考えられる。しかし、この場合、トリミングされる部分の材料が無駄である。これに比べ、バンパーリインフォースメントの製造においてトリミングされる部分は少ないので、バンパーリインフォースメントの製造コストは、図16に示すバンパーリインフォースメントに比べて安い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る衝撃吸収装置が適用された車両の平面図である。
図2A】衝撃吸収装置を左斜め前方から見た斜視図である。
図2B】衝撃吸収装置を左斜め後方から見た斜視図である。
図3】衝撃吸収部材を左斜め前方から見た斜視図である。
図4】衝撃吸収部材の本体部の前後方向に垂直な断面を前方から見た断面図である。
図5A】バンパーリインフォースメントの本体部を左斜め前方から見た斜視図である。
図5B】バンパーリインフォースメントの本体部を左斜め後方から見た斜視図である。
図6】バンパーリインフォースメントの本体部の延設方向に垂直な断面図である。
図7A】補強部材を左斜め上方から見た斜視図である。
図7B】補強部材を左斜め下方から見た斜視図である。
図8】補強部の延設方向に垂直な断面図である。
図9】補強部の平面図である。
図10】補強部の中間成形体の平面図である。
図11A】衝撃吸収装置を左斜め前方から見た分解斜視図である。
図11B】衝撃吸収装置を左斜め後方から見た分解斜視図である。
図12】バンパーリインフォースメントの延設方向に垂直な断面であって、本体部と補強部との締結部を示す断面図である。
図13】衝撃吸収装置の左端部の車両高さ方向に垂直な断面図である。
図14】バンパーリインフォースメント及び衝撃吸収部材の車幅方向に垂直な断面である。
図15】衝撃吸収装置を前方から見た正面図である。
図16】従来のバンパーリインフォースメント及び衝撃吸収部材を右斜め後方から見た斜視図である。
図17】従来の他の例に係るバンパーリインフォースメント及び衝撃吸収部材を右斜め後方から見た斜視図である。
図18図17の衝撃吸収部材が適用された車両におけるバンパーリインフォースメントと衝撃吸収部材との締結部の断面図である。
図19A図17のバンパーリインフォースメント及び衝撃吸収部材が適用された車両に物体が衝突する前の状態を示す側面図である。
図19B図17のバンパーリインフォースメント及び衝撃吸収部材が適用された車両に物体が衝突した後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る衝撃吸収装置1について説明する。まず、衝撃吸収装置1が適用された車両Vの概略について説明する。車両Vは、図1に示すように、左右一対のサイドメンバS,S及び衝撃吸収装置1を備える。
【0017】
サイドメンバS,Sは、車幅方向に間隔をおいて配置されている。サイドメンバS,Sは、車両前後方向にそれぞれ延設されている。サイドメンバS,Sの前端部には、板状のフランジ部が設けられている。このフランジ部に、衝撃吸収装置1が締結されている。また、サイドメンバSとサイドメンバSとの間の空間の前方に、ラジエータRDが配置されている。
【0018】
つぎに、衝撃吸収装置1の構成について説明する。図2A及び図2Bに示すように、衝撃吸収装置1は、左右一対の衝撃吸収部材10,10と、バンパーリインフォースメント20と、を備える。衝撃吸収部材10,10と、バンパーリインフォースメント20とは別体であり、後述するように、衝撃吸収部材10,10にバンパーリインフォースメント20が締結される。
【0019】
つぎに、衝撃吸収部材10,10の構成について説明する。衝撃吸収部材10の形状と衝撃吸収部材10の形状とは左右対称である。そこで、以下、衝撃吸収部材10の構成について説明し、衝撃吸収部材10の構成についての説明を省略する。衝撃吸収部材10は、図3に示すように、本体部11、ブラケット部12及び蓋部13を有する。本体部11は、車両前後方向に延びる角筒状に形成されている。すなわち、本体部11の車両前後方向に垂直な断面は、図4に示すように、車両高さ方向に延びる長方形を呈する。本体部11の前端及び後端は開放されている。本体部11の後端面は、車両前後方向に対して垂直である。一方、本体部11の前端面は、車両前後方向に対して傾斜している。すなわち、前端面のうちの車幅方向における内側部分(右端部)よりも外側部分(左端部)が後方に位置している(図13参照)。
【0020】
具体的には、本体部11は、図4に示すように、上壁部111、下壁部112、左壁部113及び右壁部114を有する。上壁部111及び下壁部112は、車両高さ方向に垂直な板状に形成されている。本体部11の平面視において、上壁部111及び下壁部112は略台形を呈する(図13参照)。下壁部112は上壁部111の下方に配置されている。
【0021】
左壁部113及び右壁部114は、車幅方向に垂直な板状に形成されている。左壁部113は、上壁部111及び下壁部112の左端に沿って延殺されている。左壁部113の上端が上壁部111の左端部に接続され、左壁部113の下端が下壁部112の左端部に接続されている。また、右壁部114は、上壁部111及び下壁部112の右端に沿って延殺されている。右壁部114の上端が上壁部111の右端部に接続され、右壁部114の下端が下壁部112の右端部に接続されている。左壁部113の外側面(左面)及び右壁部114の外側面(右面)には、車両高さ方向に延びる複数の凹部RPが形成されている(図2A及び図2B参照)。
【0022】
また、本体部11は、リブ115を有する。リブ115は、車幅方向に垂直な板状に形成されている。リブ115の上端が上壁部111の車幅方向における中央部に接続され、リブ115の下端が下壁部112の車幅方向における中央部に接続されている。
【0023】
本体部11は、次のようにして製造される。まず、アルミニウム合金材を押出加工して角筒状の中間成形体が製造される。前記アルミニウム合金材の押出方向は車両前後方向に一致している。中間成形体の押出方向に垂直な断面の形状と、本体部11の延設方向に垂直な断面の形状とが同一である。つぎに、中間成形体の前端部が、上記のような本体部11の形状になるようにトリミングされる。つまり、前端面における右端部よりも左端部が後方に位置するように、前記中間成形体の前端部がカットされる。そして、中間成形体の側面に、凹部RPがプレス加工される。このようにして、本体部11が製造される。
【0024】
ブラケット部12は、矩形の平板状に形成されている。ブラケット部12は、本体部11の後端面に溶接されて、本体部11の後端を塞ぐ。ブラケット部12が本体部11に取り付けられた状態において、ブラケット部12の外周縁部は、本体部11の外周面よりも外側へ張り出している。この張り出し部分に、複数の貫通孔TH12が形成されている(図3参照)。
【0025】
蓋部13は、矩形の平板状に形成されている。蓋部13は、本体部11の前端面に溶接されて、本体部11の前端を塞ぐ。蓋部13が本体部11に取り付けられた状態において、蓋部13の外周縁部は、本体部11の外周面よりも外側へ僅かに張り出している。蓋部13には、その前面から後面へ貫通する4つの貫通孔TH13が形成されている(図3参照)。蓋部13の前面(後面)における右上部及び左上部に貫通孔TH13がそれぞれ形成されている。さらに、蓋部13の右端部の車両高さ方向における略中央部、及び蓋部13の左端部の車両高さ方向における略中央部に貫通孔TH13がそれぞれ形成されている。各貫通孔TH13に対しナットNT13が設けられている。すなわち、ナットNT13と貫通孔TH13とが同軸配置されている。ナットNT13は、蓋部13の後面に取り付けられている。つまり、ナットNT13は、本体部11の内部に位置している。
【0026】
つぎに、バンパーリインフォースメント20の構成について説明する。バンパーリインフォースメント20は、本体部21と左右一対の補強部22,22とを備える。本体部21と補強部22,22とは別体であり、後述するように、補強部22,22が本体部21の左右の端部に締結される。
【0027】
本体部21は、図5A及び図5Bに示すように、車幅方向に延びる角筒状に形成されている。図6に示すように、本体部21の長手方向に垂直な断面の外形は、車両高さ方向に延びる長方形を呈する。本体部21の長手方向における一端から他端に亘って、前記断面の形状及び大きさが一定である。本体部21は、その平面視において、弓状に湾曲している。ただし、本体部21の車幅方向における中間部21C(ラジエータRDの前方に位置する部分)が湾曲形成されているのであって、本体部21の左端部21L及び右端部21Rは、衝撃吸収部材10及び衝撃吸収部材10の前端面(蓋部13の前面)にそれぞれ沿うように直線状に形成されている(図1参照)。なお、本体部21の中間部21Cの曲率は、車両の前端部のデザイン(バンパーカバーの形状)に応じて決定されている。また、本体部21の車両高さ方向の寸法H21は、衝撃吸収部材10,10の本体部11の車両高さ方向の寸法H11よりも小さい(図14参照)。
【0028】
本体部21は、上壁部211、下壁部212、前壁部213、後壁部214及びリブ215を有する。上壁部211、下壁部212及びリブ215は、車両高さ方向に垂直な板状に形成されている。上壁部211、下壁部212及びリブ215の形状は同一である。リブ215は、上壁部211と下壁部212との間に配置されている。前壁部213及び後壁部214は、上壁部211、下壁部212及びリブ215に対して垂直な板状に形成されている。前壁部213は、上壁部211、下壁部212及びリブ215の前端に沿って延設されている。また、後壁部214は、上壁部211、下壁部212及びリブ215の後端に沿って延設されている。上壁部211、下壁部212、前壁部213、後壁部214及びリブ215のうち、中間部21Cを構成する部分は、上記のように弓状に湾曲形成されている。また、上壁部211、下壁部212、前壁部213、後壁部214及びリブ215のうち、左端部21L及び右端部21Rを構成する部分は、上記のように直線状にそれぞれ形成されている。
【0029】
また、前壁部213のうちの左端部21L及び右端部21Rを構成する部分であって、バンパーリインフォースメント20が衝撃吸収部材10,10に締結された状態において衝撃吸収部材10及び衝撃吸収部材10の前方に位置する部分に、4つの貫通孔TH213がそれぞれ形成されている(図5A参照)。また、後壁部214のうちの左端部21L及び右端部21Rを構成する部分であって、バンパーリインフォースメント20が衝撃吸収部材10,10に締結された状態において衝撃吸収部材10及び衝撃吸収部材10の前方に位置する部分に、4つの貫通孔TH214がそれぞれ形成されている(図5B参照)。貫通孔TH213及び貫通孔TH214は、蓋部13の貫通孔TH13に対応している。すなわち、貫通孔TH213、貫通孔TH214及び貫通孔TH13が同軸配置されるように、貫通孔TH213及び貫通孔TH214の位置が設定されている(図13参照)。貫通孔TH214の内径は、貫通孔TH13の内径と同一である。貫通孔TH213の内径は貫通孔TH214の内径よりも少し大きい。貫通孔TH213の内径は、本体部21(バンパーリインフォースメント20)を衝撃吸収部材10,10に固定するためのボルトBT21のヘッド部の外径より少し大きい。
【0030】
また、下壁部212のうちの左端部21Lを構成する部分であって、衝撃吸収部材10の前方に位置する部分には、2つの貫通孔TH212が形成されている。前記2つの貫通孔TH212のうちの一方は、左壁部113とリブ115との間の空間の前方に位置し、前記2つの貫通孔TH212のうちの他方は、右壁部114とリブ115との間の空間の前方に位置している(図13参照)。各貫通孔TH212に対しナットNT212が設けられている。すなわち、ナットNT212と貫通孔TH212とが同軸配置されている。ナットNT212は、下壁部212の上側の面に取り付けられている。下壁部212のうちの右端部21Rを構成する部分にも、貫通孔TH212及びナットNT212が設けられている。
【0031】
本体部21は、次のようにして製造される。まず、アルミニウム合金材を押出加工することにより直線状に延びる筒状の中間成形体が製造される(押出工程)。前記アルミニウム合金材の押出方向は車幅方向に一致している。前記中間成形体の押出方向に垂直な断面の形状と、本体部21の軸線方向に垂直な断面の形状とが同一である。そして、前記中間成形体が車両Vの前端部のデザインに合致するように曲げ加工される(曲げ工程)。そして、前記中間成形体の左端部及び右端部に貫通孔TH212,TH213,TH214が形成される(孔加工工程)。つぎに、ナットNT212が、下壁部212の上側の面に取り付けられる。このようにして、本体部21が製造される。
【0032】
つぎに、補強部22,22の構成について説明する。補強部22,22は、本体部21の左端部21L及び右端部21Rのうち、衝撃吸収部材10及び衝撃吸収部材10の前方に位置する部分にそれぞれ沿うように直線状に延設されている。補強部22と補強部22とは、左右対称である。そこで、以下、補強部22の構成について説明し、補強部22の説明を省略する。
【0033】
補強部22は、図7A及び図7Bに示すように、本体部21の左端部21Lの延設方向に平行に延びる角筒状に形成されている。図8に示すように、補強部22の延設方向に垂直な断面は略矩形を呈する。補強部22の左端面及び右端面は、車幅方向に垂直である。補強部22,22の左端面及び右端面は、開放されている。
【0034】
補強部22は、上壁部221、下壁部222、前壁部223及び後壁部224を有する。上壁部221及び下壁部222は、車両高さ方向に垂直な板状に形成されている。補強部22Lの平面視において、上壁部221及び下壁部222は、図9に示すように、車幅方向に延びる平行四辺形を呈する。上壁部221及び下壁部222の長辺(前端及び後端の辺)は、本体部21の左端部21Lの延設方向に平行である。上壁部221及び下壁部222の短辺(右端及び左端の辺)は、車幅方向に垂直である。
【0035】
前壁部223及び後壁部224は、上壁部221及び下壁部222に対して垂直な板状に形成されている。前壁部223は、上壁部221及び下壁部222の前端に沿って延設されている。また、後壁部224は、上壁部221及び下壁部212の後端に沿って延設されている。前壁部223の上端及び後壁部224の上端は、上壁部221の上面と同一の高さに位置している。一方、前壁部223の下端及び後壁部224の下端は、下壁部222の下面よりも少し下方に位置している(図8参照)。
【0036】
上壁部221及び下壁部222の延設方向(補強部22の延設方向)における両端部には、貫通孔TH221及び貫通孔TH222がそれぞれ形成されている。貫通孔TH221及び貫通孔TH222は、本体部21の貫通孔TH212に対応している。すなわち、貫通孔TH221、貫通孔TH222及び貫通孔TH212が同軸配置されている(図13参照)。貫通孔TH221の内径は、貫通孔TH214の内径と同一である。貫通孔TH222の内径は貫通孔TH221の内径よりも少し大きい。貫通孔TH222の内径は、補強部22を本体部21に固定するためのボルトBT22のヘッド部の外径より少し大きい。
【0037】
補強部22の車幅方向の寸法W22(右端面と左端面との距離)は、衝撃吸収部材10の本体部11の車幅方向の寸法W11より少し大きい(図15参照)。補強部22の車両高さ方向の寸法H22は、衝撃吸収部材10の本体部11の車両高さ方向の寸法H11と、本体部21の車両高さ方向の寸法H21との差ΔH(=H11−H21)と略同一である(図14参照)。補強部22の車両高さ方向及び中心軸方向に垂直な方向の寸法D22(前面と後面との距離)は、本体部21の左端部21Lの車両高さ方向及び中心軸方向に垂直な方向の寸法D21と略同一である(図13参照)。
【0038】
補強部22は、次のようにして製造される。まず、アルミニウム合金材を押出加工することにより直線状に延びる筒状の中間成形体M22図10参照)を製造する(押出工程)。前記アルミニウム合金材の押出方向は補強部22の延設方向に一致している。中間成形体M22の押出方向に垂直な断面の形状と、補強部22の延設方向に垂直な断面の形状とが同一である。つぎに、中間成形体M22の延設方向における両端部を、上記のような補強部22の形状になるようにトリミングする。つまり、中間成形体M22の左右の端面が車幅方向に垂直になるように、前記両端部をカットする。そして、中間成形体M22の延設方向における両端部に貫通孔TH221,TH222を形成する(孔加工工程)。このようにして、補強部22が製造される。
【0039】
補強部22は次のようにして本体部21に締結される。図11A図11B及び図12に示すように、貫通孔TH222から補強部22内にボルトBT22が挿入される。そして、ボルトBT22の先端が貫通孔TH222及び貫通孔TH214に挿入されて、ナットNT214に締結される。これにより、補強部22が本体部21に締結される。本体部21の左端部21Lには、補強部22と同様に、補強部22が締結される。このようにしてバンパーリインフォースメント20が製造される。なお、本体部21の上下を逆にして載置しておき、補強部22,22を上方から本体部21に取り付けると作業し易い。
【0040】
つぎに、サイドメンバS,Sへの衝撃吸収装置1の取り付け手順について説明する。まず、衝撃吸収部材10,10のブラケット部12の貫通孔TH12に図示しないボルトが挿入される。これらのボルトによって、衝撃吸収部材10,10がサイドメンバS,Sのフランジ部に締結される。
【0041】
つぎに、衝撃吸収部材10,10の前端面にバンパーリインフォースメント20が締結される。具体的には、貫通孔TH213から本体部21内にボルトBT21が挿入される。そして、ボルトBT21の先端が貫通孔TH214及び貫通孔TH13に挿入されて、ナットNT13に締結される(図13参照)。これにより、バンパーリインフォースメント20が衝撃吸収部材10,10の前端面に締結される。なお、補強部22,22は本体部21に予め締結されている。
【0042】
図13に示すように、衝撃吸収装置1がサイドメンバS,Sに取り付けられた状態において、本体部21の左端部21Lの前面と補強部22の前面とが同一平面内に位置している。また、本体部21の左端部21Lの後面と補強部22の後面とが同一平面内に位置している。また、本体部21の右端部21Rの前面と補強部22の前面とが同一平面内に位置している。また、本体部21の右端部21Rの後面と補強部22の後面とが同一平面内に位置している。
【0043】
また、本体部21の上壁部211の上面と、本体部11の上面とが略同一平面内に位置している。補強部22,22の下壁部222の下面と、本体部11の下壁部112の下面とが略同一平面内に位置している(図14参照)。
【0044】
上記のように、本実施形態では、本体部21の車両高さ方向の寸法H21が、本体部11の車両高さ方向の寸法H11よりも小さく設定されている。したがって、衝撃吸収部材10,10の下端部は、本体部21の下面よりも下方に位置している。補強部22,22は、衝撃吸収部材10,10のうち、本体部21の下面よりも下方に位置する部分の前方に位置している。すなわち、補強部22,22は、衝撃吸収部材10,10の前端面のうち、本体部21よりも下方に位置する部分に沿って延設されている。言い換えれば、バンパーリインフォースメント20の前方から見て、補強部22,22の前面(後面)と、衝撃吸収部材10,10の前端面のうち、本体部21よりも下方に位置する部分とが重なっている(図15参照)。なお、補強部22,22は、本体部21の下面に固定されている。
【0045】
したがって、車両Vの前方から物体が衝突したとき、バンパーリインフォースメント20の前面に対して後方へ向かう荷重が作用すると、本体部11と補強部22,22とが一体となって、本体部11を後方へ押圧する。つまり、本体部11の前面に均等に荷重が作用する。そのため、本体部11が、その前端側から後端側に向かって圧縮されるように変形していく。上記のように本体部11の右壁部113及び左壁部114には、複数の凹部RPが形成されているが、各凹部RPが節(起点)となり、本体部11の変形が進行していく。なお、本体部11が変形していく過程において、バンパーリインフォースメント20は、ほとんど変形しない。
【0046】
すなわち、衝撃吸収装置1によれば、図19A及び図19Bに示す従来例のように、本体部21の先端部が下方へ折れ曲がることが抑制され、本体部11がその軸線方向に圧縮されるように変形していく。言い換えれば、本体部11のうち、破壊されずに残る部分がほとんど存在しない。したがって、衝撃吸収装置1の衝撃吸収性能は、図17及び図18に示す衝撃吸収装置に比べて高い。すなわち、ラジエータRDの冷却性能を出来るだけ高く保つために、本体部21の車両高さ方向の寸法H21を、本体部11の車両高さ方向の寸法H11よりも小さく設定したとしても、衝撃吸収装置1の衝撃吸収性能が損なわれない。
【0047】
また、図16に示す例のように、バンパーリインフォースメントの中間成形体の車両高さ方向の寸法を衝撃吸収部材の車両高さ方向の寸法と同等にしておき、ラジエータRDの前方に位置する部分の一部(図16における斜線部)をトリミングすればよいとも考えられる。しかし、この場合、トリミングされる部分の材料が無駄である。これに比べ、バンパーリインフォースメント20の製造においてトリミングされる部分は少ないので、バンパーリインフォースメント20の製造コストは、図16に示すバンパーリインフォースメントに比べて安い。
【0048】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態においては、本体部21を衝撃吸収部材10,10の前端面における上側に寄せて取り付けている。これに代えて、本体部21を衝撃吸収部材10,10の前端面における下側に寄せて取り付けてもよい。この場合、上記実施形態とは反対に、補強部22,22が本体部21の上面に取り付けられればよい。また、本体部21を、衝撃吸収部材10,10の前端面における中間部に取り付けてもよい。この場合、補強部22,22が本体部21の上面及び下面に取り付けられればよい。すなわち、本体部11の前端面のうち、本体部21の上面よりも上方に位置する部分、及び本体部21の下面よりも下方に位置する部分の前方に位置する部分に沿って補強部22,22が設けられれば良い。さらに、本体部11を構成する各壁部のうち、隣り合う2つの壁部同士の交差部の前方に、補強部22,22の少なくとも一部が配置されていればよい。言い換えれば、バンパーリインフォースメント20の前方から見て、本体部11における隣接する2つの壁部の交差部と、補強部22,22の少なくとも一部分とが重なっていればよい。
【0050】
また、本体部21の左端部21L(21R)の前面と補強部22(22)の前面とが同一平面内に位置している。また、本体部21の左端部21L(21R)の後面と補強部22(22)の後面とが同一平面内に位置している。しかし、左端部21L(21R)の前面と補強部22(22)の前面とが車両前後方向に多少ずれていてもよい。また、本体部21の左端部21L(21R)の後面と補強部22(22)の後面とが車両前後方向に多少ずれていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・・衝撃吸収装置、10,10・・・衝撃吸収部材、11・・・本体部、12・・・ブラケット部、13・・・蓋部、20・・・バンパーリインフォースメント、21・・・本体部、22,22・・・補強部、RD ラジエータ、S,S・・・サイドメンバ、V・・・車両
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B