特許第6875952号(P6875952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875952ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875952
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20210517BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20210517BHJP
   C08K 5/527 20060101ALI20210517BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20210517BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L67/02
   C08K5/527
   C08K5/3472
   C08K5/3492
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-149551(P2017-149551)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2019-26784(P2019-26784A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四之宮 忠司
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−089162(JP,A)
【文献】 特開2008−285529(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0117804(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0000917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 5/3472
C08K 5/3492
C08K 5/527
C08L 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)60〜80重量%及びジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B)20〜40重量% からなる主要樹脂成分100重量部に対して、リン系酸化防止剤(C)0.02〜1重量部および紫外線吸収剤(D)0.05〜2重量部を含有することを特徴とする、透明ポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記紫外線吸収剤(D)が、ベンゾトリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選択される1種もしくは2種以上である、透明ポリカーボネート樹脂組成物
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂(B)が、テレフタル酸及びテレフタル酸誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上のテレフタル酸系重縮合成分と、1、4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%以上含有するグリコール系重縮合成分とを重縮合させたポリエステル樹脂である、請求項1記載の透明ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記リン系酸化防止剤(C)が、下記一般式1に示す化合物である、請求項1記載の透明ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式1:
【化1】
(一般式1中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、a及びbは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜の何れか一項に記載の透明ポリカーボネート樹脂組成物を含む、樹脂成形品。
【請求項5】
前記樹脂成形品が電気電子機器に使用される筐体又は製品保護カバーである、請求項記載の樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し、耐候性や耐薬品性に優れ、かつ熱加工時の加熱による色調悪化を防止出来ることにより、電気電子機器に使用される筐体材料として好適に用いられるポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は透明性を有し、優れた機械的強度、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂であることから、電気機器や電子機器の筐体等広く工業的に利用されている。近年、スマートフォン等の携帯端末は、その製品を持ち歩きすることから製品筐体の強度が要望されている。又、製品の表示部を保護する目的で製品カバーが使用されている。
【0003】
従来のポリカーボネート樹脂は耐候性や耐薬品性が不十分なことから、光の暴露による色調面での不具合や薬品の接触により製品が損傷するといった不具合を発生しやすいといった問題点があった。
【0004】
又、ポリカーボネート樹脂の耐薬品性を向上させる為にポリエステル樹脂を添加させる方法は過去から多く報告されている。更にポリエステル樹脂を含有するポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性を改良する方法がいくつか報告されている。
【0005】
例えば、特許文献1は、ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合して得られたポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂との混合樹脂100重量部に対し、アルキルハイドロゲンホスファイト又はアリールハイドロゲンホスファイトを添加することで混合樹脂の熱加工時の着色を改善させようとしている。しかしながら、この樹脂組成物の熱加工により得られる成形品の黄色度(以下、YIと略す場合がある)は大きく、又、光の暴露後や繰り返しの熱加工後の黄変度が大きいことからこれらの黄色度や、黄変度の改良余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−175823号公報
【0007】
従来、上記のような透過性に優れ、かつ熱安定性、耐薬品性、耐候性にも優れたポリエステル樹脂を含有するポリカーボネート樹脂組成物は得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、透明性などポリカーボネート樹脂本来の特性を損なうことなく、熱加工時の熱安定性、耐薬品性及び耐候性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂を含有するポリカーボネート樹脂に、特定の酸化防止剤、および特定の紫外線吸収剤を配合することにより、ポリカーボネート樹脂が有する種々の優れた性能を損なうことなく、熱加工時の熱安定性、耐薬品性さらには耐候性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)60〜80重量%及びジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B)20〜40重量%からなる主要成分100重量部に対して、リン系酸化防止剤(C)0.02〜1重量部および紫外線吸収剤(D)0.05〜2重量部を含有することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれを含む電気電子機器の筐体等の樹脂成形体を提供するものである。
【0011】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を含む電気電子機器の筐体等を成形する方法には射出成形や押出成形方法が用いられる。射出成形では射出成形機のシリンダー内で加熱溶融した本発明のポリカーボネート樹脂組成物を射出し、要望される電気電子筐体やカバーの形状が得られる金型内で冷却固化し製品を得ることが出来る。射出成形は複雑な形状の物でも大量生産が可能であることから広く普及されている。又、押出成形では本発明のポリカーボネート樹脂組成物を押出機の加熱シリンダー中で溶融流動化させ、スクリューで連続的に前進させスクリューの回転と内圧でダイを通って連続的に押出することでシートを得ることが出来る。得られるシートは一般的には0.15〜2mmの厚さを有する。得られたシートを電気電子器のカバーに用いる。又、必要に応じてハードコートやアクリル樹脂等他樹脂成分を被覆したり、それらシートを用いて賦形することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性(透明性や耐熱性等)を損なうことなく、熱加工時の熱安定性、耐薬品性さらには耐候性にも優れるため、屋外においても使用可能な電気電子機器の筐体やカバー用の樹脂組成物として好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られたことの詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0014】
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0015】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる樹脂成形品の用途としては、例えば、電気電子機器用の筐体等があり、ハウジング、ケーシング、製品保護カバー、又は内部シャーシ等をも含んだ用途を意味するものとする。特に、携帯用の電子機器の薄肉筐体、ハウジング等が好ましい例として挙げられる。より具体的には、ノート型パソコン、スマートフォン等の携帯情報端末、ビデオカメラ、デジタルカメラ、スマートメーター等の薄肉筐体、ハウジング、ケーシング、内部シャーシに用いる金属製品の代替品等がある。
【0016】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0017】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0018】
更に、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0019】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは15000〜30000、さらに好ましくは19000〜29000の範囲である。又、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0020】
本発明にて使用されるジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B)は、例えば、テレフタル酸及びテレフタル酸誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上のテレフタル酸系重縮合成分と、1、4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%以上含有するグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得るポリエステル樹脂が挙げられる。グルコール系重縮合成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%以上含有することから、ポリエステル樹脂の屈折率がポリカーボネート樹脂の屈折率に近似することで優れた透明性が得られる。
【0021】
本発明にて使用されるジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B)の含有量はポリカーボネート樹脂(A)60〜80重量部に対し、20〜40重量部であり、25〜40重量部が好ましく、25〜35重量部がより好ましい。ジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B)の含有量が20重量部より少ないと耐薬品性に劣り、40重量部より多いと耐熱性が低下し、夏期、車中内で本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる電気電子機器の筐体が熱により変形するといった不具合が発生しやすくなる。例えば、市販品としてはSKケミカル社製SKY GREEN JN200等が商業的に入手可能である。
【0022】
本発明の樹脂組成物においては、リン系酸化防止剤(C)が使用され、その配合量はポリカーボネート樹脂(A)60〜80重量部、ジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B)20〜40重量部あたり、0.02〜1重量部である。配合量が0.02重量部未満では、熱安定性が劣るため好ましくない。又、1重量部を超えると成形加工中の滞留時に熱安定性が不十分となり、黄変するために好ましくない。より好ましくは0.05〜0.3重量部である。
【0023】
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤としては、下記一般式1で示される化合物が挙げられる。
一般式1
【0024】
【化1】
(一般式1中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、a及びbは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
【0025】
一般式1で表される化合物としては、例えば、ADEKA社製のアデカスタブPEP−24、PEP−36、PEP−45(「アデカスタブ」は登録商標)、Dover Chemical社製のDoverphos S−9228が商業的に入手可能である。
【0026】
本発明にて使用される紫外線吸収剤(D)としては、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系、ベンゾフェノン系化合物からなる群から選択される紫外線吸収剤が挙げられ、これらを1種で使用もしくは2種以上で併用して使用することができる。なかでも、ベンゾトリアゾール系化合物が好適に使用できる。
【0027】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−hydroxy−5−methylphenyl)−2H−benzotriazole、2−(3−tert−butyl−2−hydroxy−5−methylphenyl)−5−chloro−2H−benzotriazole、2−(3,5−di−tert−pentyl−2−hydroxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2H−benzotriazole−2−yl)−4−methyl−6−(3,4,5,6−tetrahydrophthalimidylmethyl)phenol、2−(2−hydroxy−4−octyloxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2−hydroxy−5−tert−octylphenyl)−2H−benzotriazole、2−[2’−hydroxy−3,5−di(1,1−dimethylbenzyl)phenyl]−2H−benzotriazole、2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]などが挙げられる。なかでも、熱成形加工時の蒸散性が良好なことから2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]が好適に使用される。
【0028】
トリアジン系化合物としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノールなどが挙げられる。
【0029】
ベンゾフェノン系化合物としては、2、4−dihydroxybenzophenone、2−hydroxy−4−n−octoxybenzophenoneなどが挙げられる。
【0030】
紫外線吸収剤(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)60〜80重量%及びジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B)20〜40重量%あたり、0.05〜2重量部である。配合量が0.05重量部未満では、耐候性が劣るため好ましくない。2重量部を越えると成形加工時にガスが多く発生する等により金型を汚染する等熱安定性に劣り好ましくない。好ましい配合量は0.15〜1重量部、更に好ましくは0.15〜0.4重量部である。
【0031】
本発明の各種配合成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の配合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸又は二軸押出機等で容易に溶融混練することができる。又、これらの配合順序についても特に制限はない。
【0032】
又、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば離型剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)等を配合することができる。
【0033】
充填剤としては、例えばガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、タルク粉、クレー粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミウィスカー、ワラストナイト粉、シリカ粉等が挙げられる。マイカとしては、白雲母、黒雲母、金雲母、人工金雲母などが挙げられる。
【0034】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0036】
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート(株)製 SDポリカ 200−3、粘度平均分子量:28300(以下、「PC」と略記))
【0037】
2.ジカルボン酸系重縮合成分とグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得られるポリエステル樹脂(B):テレフタル酸系重縮合成分と、1、4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%以上含有するグリコール系重縮合成分とを重縮合させて得るポリエステル樹脂:ポリサイクロヘキシレンジメチレンテレフタレート−グリコールコポリエステル
(SKケミカル社製 SKY GREEN JN200(以下、「PCTG」と略記)
【0038】
3.酸化防止剤(C):
3−1.以下の式で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカ
【0039】
【化2】
アデカスタブPEP−36(商品名、ADEKA社製、以下「C1」と略記)
【0040】
3−2.フェノール系酸化防止剤
オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(アデカ社製 アデカスタブ AO−50(以下「AO2」と略記)
【0041】
4.紫外線吸収剤(D):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]
(BASF社製 TINUVIN329(以下「UVA」と略記))
【0042】
前述の各種原料を表1〜2に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(東芝機械製TEM−37SS)を用いて、溶融温度290℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いて各種試験片を加工し、下記方法により各種データを採取した。それぞれの評価結果を表1〜2に示した。
【0043】
(成形品の全光線透明性、ヘーズの評価)
得られた各種ペレットを120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後に、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いてシリンダー設定温度290℃にて耐候性評価用試験片(縦80mm、横50mm、厚み2mm)を作成した。得られた試験片を用いてJISK7136に準じ、村上色彩研究所社製HR−100により試験片厚み2mmの全光線透過率とヘーズを測定した。
【0044】
(成形品のYIの評価)
得られた各種ペレットを120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後に、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いてシリンダー設定温度290℃にて黄色度評価用試験片(縦80mm、横50mm、厚み2mm)を作成した。得られた試験片を用いてJIS7361に準じ、村上色彩研究所社製CMS−35SPにより試験片厚み2mmのYIを測定した。YIが小さい程、成形品の着色が少なく、良好な外観が得られる。YIの評価の基準としては、YIの値が2未満であるものを良好(○)、2以上であるものを不良(×)とした。
【0045】
(2)熱安定性
得られた各種ペレットを、それぞれ二軸押出機(東芝機械製TEM−37SS)を用いて溶融温度290℃にて繰り返し3回混練した。3回繰り返し混練りを行ったペレットを120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いて、シリンダー設定温度290℃の条件にて平板試験片(縦80mm、横50mm、厚み2mm)を作成した。得られた試験片を用いてJIS7361に準じ、村上色彩研究所社製CMS−35SPにより、YIの変化(△YI)を測定した。△YIとは、再混練り前後の黄味の程度の差を表し、△YIが小さい程、変色は小さく熱安定性に優れている。△YIの評価の基準としては、△YIの値が2未満であるものを良好(○)、2以上であるものを不良(×)とした。
【0046】
(3)耐候性
得られた各種ペレットを120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後に、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いてシリンダー設定温度290℃にて耐候性評価用試験片(縦80mm、横50mm、厚み2mm)を作成した。得られた試験片を、キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75)に装着し、放射照度50W/m、湿度50%RH、ブラックパネル温度50℃の設定で100時間照射試験を行い、村上色彩研究所社製CMS−35SPにより、YIの変化(△YI)を測定した。△YIとは、照射試験前後の黄味の程度の差を表し、△YIが小さい程、変色は小さく耐候性に優れている。△YIの評価の基準としては、△YIの値が2未満であるものを良好(○)、2以上であるものを不良(×)とした。
【0047】
(成形品の耐薬品性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度290℃にて試験片(縦127mm、横13mm、厚み3.2mm)を作成した。得られた試験片を片持ち梁の耐薬品性・耐溶剤試験治具(下式参照)を用いて任意の歪みをかけて、試験片の中央部に下記薬剤をそれぞれ塗布した。
評価用薬剤
花王社製 住宅用強力洗剤 マジックリン
上記の薬品塗布後の試験片を23℃の雰囲気下で48時間放置し、試験片上の割れやヒビの位置から臨界歪み(%)を次式により求めた。
【0048】
(式)
【0049】
上記式にて求めた臨界歪みから、耐薬品性を下記基準にて判定し、臨界歪みが0.7%以上「(○)を合格とした。
耐薬品性・耐溶剤性の判定:
○:臨界歪みが0.7%以上
△:臨界歪みが0.5%以上〜0.7%未満
×:臨界歪みが0.5%未満
【0050】
(成形品のノッチ付きシャルピー衝撃強度および荷重たわみ温度の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ120℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度290℃にてISO試験法に準じた試験片を作成し、得られた試験片を用いてISO 179−2、ISO 75−2に準じノッチ付きシャルピー衝撃強さ及び荷重たわみ温度を測定し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度が7KJ/m以上、および、荷重たわみ温度が95℃以上(表中「○」)を合格とした。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1のとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を全て満足する場合(実施例1〜3)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0054】
一方、表2で示したとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は、PCの配合量が規定量より多い場合で、耐薬品性に劣っていた。
比較例2は、UVAの配合量が規定量より少ない場合で、耐候性に劣っていた。
比較例3は、AOがフェノール系酸化防止剤である場合で、黄変度、及び熱安定性に劣っていた。
比較例4は、AOの配合量が規定量より少ない場合で、黄変度、及び熱安定性に劣っていた。
比較例5は、PCTGの配合量が規定量より多い場合で、ノッチ付きシャルピー強度、
及び耐熱性に劣っていた。
【0055】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。
そのために、詳細な説明を提供した。
【0056】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0057】
又、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性(透明性や耐熱性等)を損なうことなく、熱加工時の熱安定性、耐薬品性さらには耐候性にも優れるため、屋外においても使用可能な電気電子機器の筐体やカバー用の樹脂組成物として好適に利用でき極めて工業的利用価値が高い。