(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875958
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20210517BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20210517BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
B01J19/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-161273(P2017-161273)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-37450(P2019-37450A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真也
【審査官】
中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−063410(JP,A)
【文献】
特開2010−275840(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0000913(US,A1)
【文献】
特開2018−023923(JP,A)
【文献】
特開2017−060668(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1120870(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/10、
C02F1/32、
B01J10/00−12/02、
B01J14/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象の流体が流れる処理流路と、
前記処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源と、
前記光源と前記処理流路の間に設けられ、前記光源からの紫外光が入射する入射面と、前記処理流路内に向けて紫外光が出射する出射面と、前記入射面と前記出射面の間に位置する側面とを有する窓部材と、
前記窓部材の前記側面から出射する紫外光を受光するよう配置される受光部と、を備えることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項2】
殺菌対象の流体が流れる処理流路と、
前記処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源と、
前記光源と前記処理流路の間に設けられ、前記光源からの紫外光が入射する入射面と、前記処理流路内に向けて紫外光が出射する出射面とを有する窓部材と、
前記出射面にて前記窓部材の内側に向けて反射され、前記出射面とは異なる面から出射する紫外光を受光するよう配置される受光部と、を備えることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項3】
殺菌対象の流体が流れる処理流路と、
前記処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源と、
前記光源と前記処理流路の間に設けられ、前記光源からの紫外光が入射する入射面と、前記処理流路内に向けて紫外光が出射する出射面と、前記出射面の外周に位置し、前記出射面に対して傾斜する傾斜面とを有する窓部材と、
前記窓部材の前記傾斜面で反射され、前記出射面とは異なる面から出射する紫外光を受光するよう配置される受光部と、を備えることを特徴とする流体殺菌装置。
【請求項4】
前記窓部材は、前記傾斜面に設けられる反射層をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記傾斜面と接するように配置されるシール部材をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
前記受光部は、前記入射面から出射する紫外光を受光するよう配置されることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【請求項7】
前記受光部は、前記光源と同一の基板上に設けられることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【請求項8】
前記処理流路内の流体中を通過した紫外光を受光するよう配置される別の受光部をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関し、特に、紫外光を照射して流体を殺菌する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外光には殺菌能力があることが知られており、医療や食品加工の現場などでの殺菌処理に紫外光を照射する装置が用いられている。また、水などの流体に紫外光を照射することで、流体を連続的に殺菌する装置も用いられている。このような装置として、例えば、処理槽の内部に直管状の紫外線ランプと円筒状のランプスリーブとを設け、処理槽内の被処理水に紫外線を照射する紫外線照射装置が挙げられる。紫外線ランプの照度は紫外線モニタを用いて計測され、紫外線モニタと紫外線ランプの間に石英ガラス等で形成される透過窓が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−183295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線モニタで計測される光量は、処理槽内の流体の紫外線透過率やモニタ前方の透過窓への汚れの付着による透過率低下などの影響を受けてしまい、光源自体の光強度を適切に測定することが難しい場合がある。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、光源のモニタリング精度を高めた流体殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の流体殺菌装置は、殺菌対象の流体が流れる処理流路と、処理流路内の流体に向けて紫外光を照射する光源と、光源と処理流路の間に設けられ、光源からの紫外光が入射する入射面と、処理流路内に向けて紫外光が出射する出射面とを有する窓部材と、窓部材の出射面とは異なる面から出射する紫外光を受光するよう配置される受光部と、を備える。
【0007】
この態様によると、窓部材の出射面とは異なる面から出射する紫外光を受光するように受光部が配置されるため、処理流路内の流体の状態の影響を受けにくい態様で紫外光を計測できる。また、処理流路内に受光部が配置されて処理流路の一部が受光部の陰になることを防ぐことができ、受光部を設けることによる殺菌能力の低下を防ぐことができる。
【0008】
窓部材は、入射面と出射面の間に位置する側面を有してもよい。受光部は、側面から出射する紫外光を受光するよう配置されてもよい。
【0009】
受光部は、入射面から出射する紫外光を受光するよう配置されてもよい。
【0010】
受光部は、光源と同一の基板上に設けられてもよい。
【0011】
受光部は、出射面にて窓部材の内側に向けて反射された紫外光を受光するよう配置されてもよい。
【0012】
窓部材は、出射面の外周に位置し、出射面に対して傾斜する傾斜面を有してもよい。受光部は、傾斜面で反射された紫外光を受光するよう配置されてもよい。
【0013】
窓部材は、傾斜面に設けられる反射層をさらに有してもよい。
【0014】
傾斜面と接するように配置されるシール部材をさらに備えてもよい。
【0015】
処理流路内の流体中を通過した紫外光を受光するよう配置される別の受光部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光源のモニタリング精度を高めた流体殺菌装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】変形例に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】別の変形例に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0019】
図1は、実施の形態に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す図である。流体殺菌装置10は、処理流路12と、光源14と、第1受光部16と、第2受光部17と、制御装置18と、窓部材30とを備える。流体殺菌装置10は、筐体20の内部に区画される処理流路12を流れる流体に紫外光を照射して殺菌処理を施すために用いられる。
【0020】
筐体20は、第1端部21と、第2端部22と、側壁23と、流出管26と、流入管27とを有する。側壁23は、第1端部21から第2端部22に向けて軸方向に延びる。第1端部21の近傍には流出管26が設けられ、第2端部22の近傍には流入管27が設けられる。流出管26および流入管27は、側壁23から径方向外側に延びる。
【0021】
筐体20の材質は特に問わないが、少なくとも筐体20の内面25が紫外光に対する耐久性および反射率が高い材料であることが好ましい。筐体20の内面25は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂やアルミニウム(Al)などの金属材料で構成されることが好ましい。
【0022】
光源14は、第1端部21に設けられる。光源14は、基板15に実装され、筐体20の軸方向に紫外光を照射するように配置される。光源14からの紫外光の大部分は、窓部材30の入射面31に入射し、窓部材30を通過して出射面32から出射される。窓部材30を介して照射される紫外光Aは、筐体20の内面25で反射されながら筐体20の軸方向に処理流路12の内部を進む。
【0023】
光源14は、紫外光を発する発光素子であり、いわゆるUV−LED(Ultra Violet-Light Emitting Diode)である。光源14は、発光の中心波長またはピーク波長が約200nm〜350nmの範囲に含まれ、殺菌効率の高い波長である260nm〜290nm付近の紫外光を発することが好ましい。このような紫外光LEDとして、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いたものが知られている。
【0024】
第1受光部16および第2受光部17は、光源14からの紫外光を受光する。第1受光部16および第2受光部17は、例えば、紫外光の強度計測が可能なフォトダイオードなどの光量センサを含み、受光した紫外光の光量に関する情報を制御装置18に送信する。
【0025】
第1受光部16は、窓部材30の出射面32とは異なる面から出射する紫外光の一部を計測するように配置され、窓部材30の側面33からの紫外光Bを計測可能となる位置に配置される。第2受光部17は、窓部材30の出射面32から出射された後、処理流路12を流れる流体を通過した紫外光Aの一部を計測するよう配置される。第2受光部17は、第2端部22に設けられ、筐体20の第2端部22に到達する紫外光を計測可能となる位置に配置される。第2受光部17は、側壁23に設けられてもよい。
【0026】
窓部材30は、処理流路12と光源14の間に設けられる。窓部材30は、第1端部21の近傍の凹部24に嵌め込まれ、シール部材28により凹部24との隙間が密閉される。窓部材30は、紫外光の透過率が高い材料で構成されることが好ましく、石英(SiO
2)やサファイア(Al
2O
3)、非晶質のフッ素系樹脂などで構成される。
【0027】
窓部材30は、入射面31と、出射面32と、側面33とを有する。入射面31は、光源14に対向する主面であり、光源14からの紫外光Aが入射する。出射面32は、入射面31と反対側の主面であり、窓部材30を透過した紫外光Aが処理流路12に向けて出射する。側面33は、入射面31と出射面32の間に位置し、筐体20の凹部24に接する。
【0028】
窓部材30の入射面31には、光源14からの紫外光の反射を防ぐための反射防止膜(ARコート)が設けられてもよい。また、窓部材30の出射面32の一部には、窓部材30を透過した紫外光の一部を第1受光部16に向けて反射させるための部分反射膜(HRコート)が設けられてもよい。部分反射膜は、出射面32の中央付近を避けて設けられることが好ましく、出射面32の外周付近であって第1受光部16に向かって紫外光が反射する箇所に限定的に設けられることが好ましい。
【0029】
制御装置18は、第1受光部16および第2受光部17からの光量情報をモニタする。制御装置18は、例えば、第1受光部16からの光量情報が所定の閾値を下回る場合、光源14の出力強度が閾値以上となるように光源14の駆動電流を増加させる。制御装置18は、第2受光部17からの光量に基づいて光源14の駆動電流を調整してもよく、第2受光部17の光量情報が所定の閾値以上となるように光源14の駆動電流を調整してもよい。制御装置18は、光源14の駆動電流を増加させたにも拘わらず、依然として所定の閾値を下回る場合、所望の殺菌効果が実現できない旨を示すアラート情報を出力してもよい。
【0030】
以上の構成によれば、流体殺菌装置10は、処理流路12を流れる流体に紫外光を照射して殺菌処理を施す。光源14からの紫外光は、第1受光部16および第2受光部17により受光され、制御装置18によりモニタされる。第1受光部16により受光される紫外光は、窓部材30の内部を伝搬して側面33から出射される紫外光Bであり、例えば、出射面32において窓部材30の内側に反射される内部反射光である。第1受光部16は、主に処理流路12を通過しない紫外光を検知するため、処理流路12の流体に影響を受けにくい態様で紫外光をモニタする。一方、第2受光部17は、処理流路12を通過した紫外光を検知するため、処理流路12の流体に影響される態様で紫外光をモニタする。
【0031】
本実施の形態によれば、第1受光部16および第2受光部17を設けることにより、流体の影響を受けていない紫外光と、流体の影響を受けた紫外光の双方を検知でき、流体殺菌装置10のモニタリング精度を高めることができる。第1受光部16の検出結果は、1)窓部材30の透過率変化、2)窓部材30の表面反射率変化、3)光源14の出力低下、4)受光素子の受光感度変化の影響を受ける。一方、第2受光部17の検出結果は、上述の1)〜4)に加えて、5)処理流路12を流れる流体の透過率変化と、6)筐体20の内面25の反射率変化の影響を受ける。したがって、第1受光部16と第2受光部17の検出結果を比較することで、上述の5)および6)の影響を切り分けることができ、処理流路12を流れる流体の状態や内面25の汚れの状態等を検出できる。また、処理流路12の途中に受光部が配置されない構成を実現できるため、処理流路12の一部が受光部の陰となって照射効率が低下するのを防ぐことができる。
【0032】
図2は、変形例に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す断面図である。本変形例では、第1受光部16が光源14と同一の基板15に実装され、窓部材30の入射面31から出射される紫外光Bを受光するように配置される点で上述の実施の形態と相違する。本変形例において、第1受光部16は、出射面32において窓部材30の内側に反射された後、入射面31から出射する紫外光Bを受光するように配置される。入射面31の全面に反射防止膜が設けられてもよいし、出射面32の一部であって第1受光部16に向かって紫外光が反射する箇所に部分的に反射膜が設けられてもよい。
【0033】
第1受光部16は、入射面31にて反射された紫外光を受光してもよい。この場合、第1受光部16に向かって紫外光が反射する入射面31の一部に部分反射膜が設けられ、入射面31の他の部分に反射防止膜が設けられてもよい。その他、第1受光部16に向かう紫外光が反射する入射面31の一部に反射防止膜を設けず、入射面31のそれ以外の部分に反射防止膜を設けてもよい。本変形例においても、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0034】
図3は、別の変形例に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す断面図である。本変形例では、窓部材30に傾斜面34が設けられ、傾斜面34で反射された紫外光を第1受光部16が受光するように配置される点で上述の実施の形態と相違する。
【0035】
窓部材30は、傾斜面34を有する。傾斜面34は、出射面32の外周に位置し、出射面32と側面33で構成される角部を隅切りすることで形成可能である。傾斜面34は、出射面32に対して傾斜しており、その傾斜角は20〜70度程度であり、典型的には30〜60度程度である。傾斜面34は、図示する例において出射面32の全周にわたって形成されるが、出射面32の外周の一部にのみ形成されてもよい。側面33が設けられず、入射面31と出射面32の間に傾斜面34のみが形成されてもよい。
【0036】
傾斜面34には反射層36が設けられる。反射層36は、紫外光に対して高反射となるように構成され、例えば、アルミニウム薄膜や誘電体多層膜などで構成される。反射層36を設けることにより、第1受光部16に向かう紫外光の光量を増やし、計測精度を高めることができる。
【0037】
シール部材28は、窓部材30の傾斜面34と接するように配置される。その結果、シール部材28は、光源14から見て傾斜面34の反射層36の裏側に隠れるように配置される。シール部材28を反射層36の裏側に配置することにより、光源14からシール部材28に向かう紫外光を反射層36で遮蔽し、紫外光によるシール部材28の劣化を軽減できる。
【0038】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0039】
上述の実施の形態では、光源14が配置される第1端部21を流出側とし、反対側の第2端部22を流入側とした。さらなる変形例においては、第1端部21を流入側とし、第2端部22を流出側としてもよい。
【0040】
上述の実施の形態では、第1受光部16と第2受光部17を組み合わせる構成とした。さらなる変形例では、第2受光部17を設けずに第1受光部16のみを設ける構成としてもよい。
【0041】
上述の変形例では、窓部材30の傾斜面34に反射層36を設ける構成とした。さらなる変形例においては、傾斜面34に反射層36を設けず、傾斜面34の界面における屈折率差を利用して紫外光を第1受光部16に向けて反射させるよう構成してもよい。
【0042】
上述の実施の形態では、水などの流体に紫外光を照射して殺菌処理を施すための装置として説明した。変形例においては、紫外光の照射により流体に含まれる有機物を分解させる浄化処理に本装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…流体殺菌装置、12…処理流路、14…光源、15…基板、16…第1受光部、17…第2受光部、28…シール部材、30…窓部材、31…入射面、32…出射面、33…側面、34…傾斜面、36…反射層。