(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875994
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ミノサイクリン塩基の新規な多形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 237/26 20060101AFI20210517BHJP
C07C 231/24 20060101ALI20210517BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20210517BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20210517BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
C07C237/26CSP
C07C231/24
A61K31/65
A61P29/00
A61P31/04
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-542003(P2017-542003)
(86)(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公表番号】特表2018-506539(P2018-506539A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】GB2016050340
(87)【国際公開番号】WO2016128760
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】108223
(32)【優先日】2015年2月13日
(33)【優先権主張国】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】メンデス,ジタ
(72)【発明者】
【氏名】カセラ,コンスタンサ
(72)【発明者】
【氏名】テン フィガス,グロリア
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス カサーレス,アナ
【審査官】
神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−519247(JP,A)
【文献】
特表2011−520988(JP,A)
【文献】
特表2008−545702(JP,A)
【文献】
特開昭64−047747(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101693669(CN,A)
【文献】
国際公開第2008/066935(WO,A1)
【文献】
塩酸ミノサイクリン,第十四改正 日本薬局方解説書,2001年,p.975-980
【文献】
Stephen BYRN et al,Pharmaceutical Solids: A Strategic Approach to Regulatory Considerations,Pharmaceutical Research,1995年 7月,Vol.12, No.7,p.945-954
【文献】
平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.17-23,37-40,45-51,57-65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8.3, 13.46, 14.1, 21.3, 16.62,±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とするミノサイクリン塩基の結晶形態IV。
【請求項2】
7.06, 8.3, 10.3, 11.18, 13.46, 14.1, 14.94, 16.62, 20.62, 21.3,± 0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とする請求項1に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態IV。
【請求項3】
図1に示すピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする請求項1または2に記載のミノサイクリン塩基
の結晶形態IV。
【請求項4】
TGA測定によるSTDA信号によって、146℃での吸熱を示す請求項1,2または3に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態IV。
【請求項5】
ミノサイクリン塩基を炭素原子数が6以下の脂肪族ケトンに溶解させ、続けて、形態IVを沈殿させ、必要に応じて単離させることを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態IVの製造方法。
【請求項6】
前記脂肪族ケトンは、メチルエチルケトン(MEK)である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
溶解/単離温度が、20℃から25℃の間である請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
溶液を少なくとも30分撹拌する請求項5乃至7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
2.9, 5.34, 7.9, 12.94, 15.06, 16.74, 18.22, 19.78, 21.06, 22.26, 23.02, 25.42±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とするミノサイクリン塩基の結晶形態V。
【請求項10】
図4に示すピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする請求項9に記載のミノサイクリン塩基
の結晶形態V。
【請求項11】
TGA測定によるSTDA信号によって、140℃での吸熱を示す請求項9または10に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態V。
【請求項12】
ミノサイクリン塩基を2−メチルテトラヒドロフラン(THF)に懸濁させ、且つ、結晶化のための熱サイクル温度プロファイルを適用する請求項9乃至11のいずれか1項に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態Vの製造方法。
【請求項13】
前記熱サイクル温度プロファイルは、懸濁液を40℃(+/−5℃)まで3回加熱し、毎回5度(+/−5℃)まで冷却することを含む請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態IVを含む、または、請求項9乃至11のいずれか1項に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態Vを含む医薬組成物。
【請求項15】
さらに、1以上の医薬上許容される医薬品添加物を含む請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬に使用される請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
抗菌剤、または、抗炎症剤として使用される請求項14,15または16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ミノサイクリンの酸付加塩を生成するための請求項1乃至4のいずれか1項に記載の形態ミノサイクリン塩基の結晶形態IV、または、請求項9乃至11のいずれか1項に記載のミノサイクリン塩基の結晶形態Vの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された可溶性プロファイル(solubility profiles)及び好ましいlog Pを有する、2つの新規な結晶性ミノサイクリン塩基(crystalline minocycline base)の多形体(polymorphic forms)、並びに、多形体の結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法を提供するものである。これらの特性によって、医薬製剤にこれら新規な多形体を使用することがより適切になる。
【背景技術】
【0002】
ミノサイクリンは、広域スペクトルのテトラサイクリン系抗生物質(tetracycline antibiotics)のメンバーであり、こうした化合物群の他のメンバーより広いスペクトルを有する。
【0003】
ミノサイクリンは、主に、一日一回100mgの用量で、ざ瘡(acne)及び酒さ(rosacea)を治療する、療法に広く用いられている。
【0004】
ミノサイクリンの製造は、米国特許3148212号明細書;米国特許3226436号明細書及び米国特許4849136号明細書に開示されている。
【0005】
一般的に、ミノサイクリンは、それ自体塩基として、或いは、例えば、酸付加塩(acid addition salt)として使用できる。2008年まで、ミノサイクリン塩基は、アモルファス形態しか知られていなかった。
【0006】
国際公開第2008/102161号には、従来知られていたアモルファス製品よりも安定した、3つの結晶性の形態のミノサイクリン塩基が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許3148212号明細書
【特許文献2】米国特許3226436号明細書
【特許文献3】米国特許4849136号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/102161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々は、改善した可溶性プロファイル、及び、好ましいlog Pを有する、さらに新たな結晶性形態を見出した。これら形態は、さらに、生物学的利用能(バイオアベイラビリティ[bioavailability])を向上させ、また、処方を容易にすることも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、本明細書に記載の形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基(crystalline minocycline base form IV)を提供する。形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基は、特に、8.3; 13.46; 14.1, 21.3; 16.62±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターン(X-ray powder diffraction pattern)を特徴とする。形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基は、7.06, 8.3, 10.3, 11.18, 13.46, 14.1, 14.94, 16.62, 20.62, 21.3,±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴としてもよい。
【0010】
形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基は、適切に、
図1に示すピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0011】
本発明の形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基は、本明細書に記載のTGA測定によるSTDA信号によって、146℃での吸熱(endotherm)を示すことが好ましい。
【0012】
本発明は、本発明の形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基から生成された、または、得られる酸付加塩も提供する。
【0013】
他の態様において、本発明は、本発明による形態IVのミノサイクリン塩基の製造方法を提供する。製造方法は、ミノサイクリン塩基を炭素原子数が6以下の脂肪族ケトン(aliphatic ketone)に溶解させ、続けて、形態IVを沈殿させ(precipitation)、必要に応じて単離させること(isolation)を含む。我々は、脂肪族第2級ケトン(aliphatic secondary ketones)を使用することを好む。炭素原子数が4である脂肪族ケトンが好ましい。好ましい脂肪族ケトンの1つは、3メチルエチルケトン(3 methyl ethyl ketone)(MEK)である。
【0014】
本発明による形態IVのミノサイクリン塩基の製造方法は、溶解/単離温度が、20℃から25℃の間であることが好ましい。単離する前に、溶液を少なくとも30分撹拌する。沈殿物(precipitate)の収量(yield)を増やすため、溶液を、例えば5時間まで、または、10時間まで撹拌してもよい。
【0015】
本発明の他の態様では、形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基(crystalline minocycline base form V)を提供する。形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基は、特に、5.34, 16.74, 21.06, 23.02, 22.26±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする。形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基は、2.9, 5.34, 7.9, 12.94, 15.06, 16.74, 18.22, 19.78, 21.06, 22.26, 23.02, 25.42±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターンをさらに特徴とする。
【0016】
形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基は、適切に、
図4に示すピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0017】
本発明の形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基は、本明細書に記載のTGA測定によるSTDA信号によって、140℃での吸熱を示すことが好ましい。
【0018】
本発明は、本発明の形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基から生成された、または、得られる酸付加塩も提供する。
【0019】
本発明は、本発明による形態Vのミノサイクリン塩基の製造方法も提供する。製造方法は、ミノサイクリン塩基を2−メチルテトラヒドロフラン(2 -methyl tetrahydrofuran)(THF)に懸濁させ、且つ、結晶化のための熱サイクル温度プロファイル(thermocycling temperature profile)を適用し、必要に応じて結晶を単離させる。
【0020】
熱サイクル温度プロファイルは、懸濁液を約40℃(+/−5℃)まで3回加熱し、毎回約5度(+/−5℃)まで冷却することを含むことが好ましい。
図8に示す熱サイクル・プロファイルは、適切なレジーム(regime)を示す。
【0021】
本発明は、本発明による形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基若しくはその酸付加塩を含む、そして、必要に応じて1以上の医薬上許容される医薬品添加物(pharmaceutically acceptable excipients)を含む医薬組成物(pharmaceutical composition)も提供する。
【0022】
本発明は、本発明による形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基若しくはその酸付加塩を含む、そして、必要に応じて1以上の医薬上許容される医薬品添加物を含む医薬組成物も提供する。医薬上許容される医薬品添加物、及び、ミノサイクリンの送達に適した製剤のタイプは、この技術分野に精通している者には公知である。
【0023】
本発明は、医薬(medicine)に使用される本明細書に記載の医薬組成物も提供する。医薬組成物は、抗菌剤(antibacterial agent)、または、抗炎症剤(anti-inflammatory agent)として使用されることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、2つの新規な結晶性ミノサイクリン塩基の形態について記載する。驚くべきことに、本発明の発明者らは、ミノサイクリン塩基を、改善したバイオアベイラビリティを有し、及び、処方が容易である、新たな安定した結晶性形態で提供することができることを見出した。
【0026】
一態様において、多形形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基を提供する。これはミノサイクリン塩基の新規な結晶性形態であり、改善したバイオアベイラビリティを有し、及び、処方が容易である。
【0027】
結晶性形態IVのミノサイクリン塩基は、
図1に示したX線回折パターン、
図2に示した(フーリエ変換赤外分光法[Fourier Transform Infrared spectroscopy]によって測定した)FTIRスペクトル、
図7に示したTGA/SDTA(熱重量分析[Thermogravimetric analysis])の特徴を有している。SDTA信号は、サンプルを直接測定して得た温度と、モデル参照温度との温度差である。
【0028】
本発明のため、LynxEyeソリッドステート検出器(solid-state detector)を備えたD8 Advanceシステムで、高分解能のX線粉末回折パターンを収集した。データ収集に用いた放射線は、ゲルマニウム結晶により単色化(monochromatized)されたCuKα1(λ=1.54056Å)である。パターンは、さらなる処理なしに、0.016°2θのステップで、4〜50°2θの範囲で収集した。全てのパターンは、約295Kで収集した。
【0029】
データ収集は、室温において、単色CuKα放射線を用いて、XRPDパターンの最も特徴を有する部分である1.5°から41.5°の範囲の2θ領域で行った。各ウェル(well)の回折パターンを2つの2θ範囲(第1フレームとして1.5°≦2θ≦21.5°、及び、第2フレームとして19.5℃≦2θ≦41.5°)で収集した。露光時間は、各フレームについて90sである。XPRDパターンには、バックグラウンド差分(background subtraction)やカーブの平滑化(curve smoothing)は適用していない。
【0030】
XRPD分析の間使用されるキャリア材(carrier material)は、X線を透過し、且つ、バックグラウンドにわずかしか寄与しない。
【0031】
本発明において、結晶からの溶媒または水分損失に起因する質量損失(mass loss)は、TGA/SDTAによって決定された。TGA/SDTA 851e装置(Mettler−Toledo GmbH,スイス)で加熱している間、サンプルの重量を監視すると、重量対温度カーブ(weight vs. temperature curve)の結果になった。TGA/SDTA 851eは、インジウム及びアルミニウムを用いて温度較正してある。サンプルの重量を計って、100μlのアルミニウム坩堝(crucibles)に入れ、密封した。シールにピンホールをあけ、10℃min
-1の割合で、25から300℃まで、坩堝をTGAで加熱した。パージ(purging)には、ドライN
2ガスを使用した。
【0032】
本発明のFTIRでは、FTIRスペクトルは、4000 a 18000cm−1である。
【0033】
結晶性形態IVは、
図1に示すように、7.06, 8.3, 10.3, 11.18, 13.46, 14.1, 14.94, 16.62, 20.62, 21.3,±0.2°2θにピークを有するX線粉末解析パターンをさらに特徴としている。また、
図2に示したFTIRスペクトルを特徴としており、また、TGA測定によるSTDA信号が、146℃での吸熱を示すことを特徴としている。
【0034】
XRPD結果は、以下の通りである
XRPDピーク表
形態IV
角度(2θ) D−間隔 強度
7.06 12.51 18.99
8.3 10.64 85.38
10.3 8.58 21.8
11.18 7.9 19.28
13.46 6.57 46.64
14.1 6.27 27.28
14.94 5.92 15.2
16.62 5.33 21.33
20.62 4.3 9.24
21.3 4.17 28.75 。
【0035】
他の態様において、本発明は、多形形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法を提供する。製造方法は、ミノサイクリン塩基をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、続けて、形態IVとして結晶化させることを含む。製造方法は、ミノサイクリン塩基をメチルエチルケトンに溶解させ、溶液を30℃から35℃の間の温度まで、好ましくは20℃から25℃の間の温度まで冷却し、反応混合物から形態IVを単離することが好ましい。
【0036】
形態IVは、例えば、ミノサイクリン塩基をアセトニトリル/イソプロピル・アルコール(50:50混合物)に溶解させ、蒸発させる(evaporating)ことによっても得ることができる。
【0037】
結晶性形態IVは、
図3に示した等温吸湿脱湿曲線(Adsorption/Desorption Isotherm)をさらに特徴とする。この図は、相対的な湿度変化に対する重量変化を示している。
【0038】
結晶性形態Vは、
図4に示したX線回折パターン、
図5に示したFTIRスペクトル、
図9に示したTGA/SDTAの特徴を有している。
【0039】
結晶性形態Vは、
図4に示すように、2.9, 5.34, 7.9, 12.94, 15.06, 16.74, 18.22, 19.78, 21.06, 22.26, 23.02, 25.42±0.2°2θにピークを有するX線粉末解析パターンをさらに特徴としている。また、
図5に示したFTIRスペクトルを特徴としており、また、TGA測定によるSTDA信号が、140℃での吸熱を示すことを特徴としている。
【0040】
XRPD結果は、以下の通りである
XRPDピーク表
形態V
角度(2θ) D−間隔 強度
2.9 30.43 15.6
5.34 16.53 64.63
7.9 11.18 21.42
12.94 6.83 60.3
15.06 5.88 23.17
16.74 5.29 44.26
18.22 4.86 12.36
19.78 4.48 33.21
21.06 4.21 14.73
22.26 3.99 53
23.02 3.86 15.72
25.42 3.5 9.9 。
【0041】
他の態様において、本発明は、多形形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基の製造方法を提供する。製造方法は、ミノサイクリン塩基を2−メチルTHF(2−メチルテトラヒドロフラン)に懸濁させ、続けて、形態Vとして結晶化させることを含む。
【0042】
製造方法は、ミノサイクリン塩基を2−メチルTHFに懸濁させ、且つ、結晶化のための熱サイクル温度プロファイルを適用することが好ましい。
【0043】
熱サイクル温度プロファイルは、溶液を約40℃(+/−5℃)まで3回加熱し、毎回約5度(+/−5℃)まで冷却することを含むことが好ましい。
【0044】
上述の製造方法によって得られる形態IV及び形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基は、既知の結晶性形態よりもよい可溶性プロファイル及びより好ましいlog Pを有する。
【0045】
結晶性形態Vは、
図6に示した等温吸湿脱湿曲線(adsorption/Desorption Isotherm)をさらに特徴とする。この図は、相対的な湿度変化に対する重量変化を示している。
【0046】
新規な多形形態IV及び形態Vの可溶性と、既知の形態III(WO2008102161)の可溶性を比較し、比較結果を表1に示した。この値は、新規な多形体が、よりよい可溶性を有していることを示している。
【0047】
可溶性の測定は、温度37℃で、pH=1.2、pH=4.5、pH=6.8に調整した緩衝溶液(buffered solutions)を用いて行った。
【0048】
【表1】
Log P値(すなわち、2つの液相の間のミノサイクリン塩基の分配係数(partition coefficient)に基づく;Log Pは、液相中の溶質(solute)の濃度の比の対数である)は、有機相と水相(オクタノール/水)との間のミノサイクリン塩基の分布を示し、表2に示した。表2では、新規な多形形態IV及び形態Vと、既知の形態III(WO2008102161)を比較した。この値は、新規な多形体が、水に対して、よりよい可溶性を有していることを示している。Log Pの測定は、25℃、pH=7.4のオクタノール/水で、バッチモード(batch mode)にて行った。246nmでのUV測定値に基づいて濃度を計算した。
【0049】
【表2】
本発明において、ミノサイクリンは、それ自体塩基として、或いは、例えば、酸付加塩として使用できる。酸付加塩は無毒性(non-toxic)であり、例えば、スルホン酸(sulfonic acid)、トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid)または塩酸(hydrochloric acid)等の適切な有機酸(organic acid)または無機酸(inorganic acids)を用いて生成されることが好ましい。他の適切な酸を用いてもよい。
【0050】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0051】
実施例1 − 形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基の製造
不活性雰囲気(inert atmosphere)中で、20℃から25℃の温度で、ミノサイクリン塩基(WO2008102161に記載の形態IIを5g)をメチルエチルケトン(50ml)に溶解する;
得られた溶液を20℃から25℃の間の温度で撹拌した;
30分後、形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基は、溶液から沈殿する(precipitates);
懸濁液を約10時間撹拌し、生成物を濾過し、真空下、約45℃で乾燥させ、形態IVの結晶性ミノサイクリン塩基を3.2g得る;
3.2gのミノサイクリン塩基−結晶性形態IV−を得た。
【0052】
新規な結晶性形態IVは、
図7に示すように、TGA測定によるSDTA信号によって、約146℃での吸熱を示す。
【0053】
実施例2 − 形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基の製造
不活性雰囲気中で、20℃から25℃の温度で、ミノサイクリン塩基(WO2008102161に記載の形態IIを5g)を2メチルTHF(50ml)にゆっくり付加する;
懸濁液を得て、
図8に示した熱サイクル温度プロファイルを適用する;
生成物を濾過し、真空下、約45℃で乾燥させ、形態Vの結晶性ミノサイクリン塩基を3.1g得る。
【0054】
新規な結晶性形態Vは、
図9に示すように、TGA測定によるSDTA信号によって、約140℃での吸熱を示す。