特許第6876012号(P6876012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876012
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】シールセグメント及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/447 20060101AFI20210517BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20210517BHJP
   F01D 11/02 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   F16J15/447
   F01D25/00 M
   F01D11/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-26749(P2018-26749)
(22)【出願日】2018年2月19日
(65)【公開番号】特開2019-143680(P2019-143680A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亜積
(72)【発明者】
【氏名】上原 秀和
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 昂平
(72)【発明者】
【氏名】西本 慎
(72)【発明者】
【氏名】古庄 達郎
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−203469(JP,A)
【文献】 特開平04−318232(JP,A)
【文献】 特開2000−154874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/40−15/453
F01D 11/02
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の径方向内側に向かうにしたがって該回転軸の回転方向前方側に傾斜して延びるとともに前記回転軸の周方向に複数積層された薄板シール片を有するシール体と、
該シール体を前記回転軸の軸方向の両側から覆うように周方向に延びる一対のサイドプレートと、
前記シール体を前記径方向内側に突出させながら収容するとともに、前記一対のサイドプレートの少なくとも一部を収容するハウジング本体、及び、該ハウジング本体の前記周方向の端部に設けられて、前記径方向内側に向かって前記シール体の前記周方向の端面に沿って延びる延出部を有するハウジングと、
を備えるシールセグメント。
【請求項2】
前記延出部が、前記径方向内側に向かうにしたがって前記回転軸の回転方向前方側に傾斜して延びる請求項1に記載のシールセグメント。
【請求項3】
前記延出部が、前記径方向に対し、予圧を与えた時の前記シール体の前記周方向の端面よりも傾斜して延びる請求項1又は請求項2に記載のシールセグメント。
【請求項4】
前記延出部が、前記径方向に対し、前記サイドプレートの前記周方向の端面よりも傾斜して延びる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシールセグメント。
【請求項5】
前記ハウジングが、前記ハウジング本体の前記周方向の両側に、それぞれ前記延出部を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシールセグメント。
【請求項6】
前記ハウジングが、前記ハウジング本体の前記周方向の両側のうち、一方だけに前記延出部を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシールセグメント。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のシールセグメントを複数備え、
前記複数のシールセグメントが、前記周方向に沿って並んでいる回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールセグメント及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン、蒸気タービン等の回転機械におけるロータの周囲には、高圧側から低圧側に流れる作動流体の漏れ量を少なくするために、軸シール装置が設けられている。この軸シール装置の一例として、例えば、以下の特許文献1に開示された軸シール装置が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された軸シール装置は、ハウジングと、ハウジングに係合された多数の薄板シール片を有する。特許文献1に開示された軸シール装置は、回転面の周りに設けられることによって、回転面の周りをシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−261498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転面の周りに設けられる場合、軸シール装置は、周方向に向かって分割された複数のセグメント構造とされる場合がある。
この場合、各シールセグメントの間において、流体の流れが変化し、薄板シール片においてフラッタリングが発生することがある。
【0006】
本発明は、薄板シール片に発生するフラッタリングを抑制できるシールセグメント及び回転機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様のシールセグメントは、回転軸の径方向内側に向かうにしたがって該回転軸の回転方向前方側に傾斜して延びるとともに前記回転軸の周方向に複数積層された薄板シール片を有するシール体と、該シール体を前記回転軸の軸方向の両側から覆うように周方向に延びる一対のサイドプレートと、前記シール体を前記径方向内側に突出させながら収容するハウジング本体、及び、該ハウジング本体の前記周方向の端部に設けられて、前記径方向内側に向かって前記シール体の前記周方向の端面に沿って延びる延出部を有するハウジングと、を備える。
【0008】
本態様では、ハウジングは、径方向内側に向かって、シール体の周方向端面に沿って傾斜して延びる延出部を有する。このため、シール体の周方向端面への流体の漏れ込みが抑制される。したがって、シールセグメントは、流体の漏れ込みにより薄板シール片に発生するフラッタリングを、抑制できる。
【0009】
第2の態様のシールセグメントは、前記延出部が、前記径方向内側に向かうにしたがって前記回転軸の回転方向前方側に傾斜して延びる第1の態様のシールセグメントである。
【0010】
本実施形態では、延出部がシール体と同方向に傾斜しているので、延出部とシール体との間の隙間を小さくすることができる。このため、シール体の周方向端面への流体の漏れ込みが抑制される。したがって、シールセグメントは、流体の漏れ込みにより薄板シール片に発生するフラッタリングを、さらに抑制できる。
【0011】
第3の態様のシールセグメントは、前記延出部が、前記径方向に対し、予圧を与えた時の前記シール体の前記周方向の端面よりも傾斜して延びる第1又は第2の態様のシールセグメントである。
【0012】
本実施形態では、延出部が、径方向に対し、予圧を与えた時の前記シール体の前記周方向の端面よりも傾斜していることで、延出部の延出端が、シール体の周方向端面に接触しにくい構造となっている。このため、延出部の延出端がシール体の周方向端面に接触することにより引き起こされる薄板シール片の剛性増加が抑制される。したがって、シールセグメントは、薄板シール片の摩耗を抑制することができる。
【0013】
第4の態様のシールセグメントは、前記延出部が、前記径方向に対し、前記サイドプレートの前記周方向の端面よりも傾斜して延びる第1から第3のいずれかの態様のシールセグメントである。
【0014】
本実施形態では、延出部が、径方向に対し、サイドプレートの周方向の端面よりも傾斜していることで、延出部の延出端が、シール体の周方向端面に接触しにくい構造となっている。このため、延出部の延出端がシール体の周方向端面に接触することにより引き起こされる薄板シール片の剛性増加が抑制される。したがって、シールセグメントは、薄板シール片の摩耗を抑制することができる。
【0015】
第5の態様のシールセグメントは、前記ハウジングが、前記ハウジング本体の前記周方向の両側に、それぞれ前記延出部を有する第1から第4のいずれかの態様のシールセグメントである。
【0016】
本実施形態では、ハウジングが、ハウジング本体の周方向の両側に、それぞれ延出部を有することで、シール体の周方向両端面への流体の漏れこみが抑制される。このため、周方向に隣り合うシールセグメントとの間に隙間があったとしても、シールセグメントは、ハウジング本体の周方向の両側において、流体の漏れ込みにより薄板シール片に発生するフラッタリングを、抑制できる。
【0017】
第6の態様のシールセグメントは、前記ハウジングが、前記ハウジング本体の前記周方向の両側のうち、一方だけに前記延出部を有する第1から第5のいずれかの態様のシールセグメントである。
【0018】
本実施形態では、ハウジングの一方だけに延出部を設けるので、簡単な構造でありながら、シールセグメントは、ハウジング本体の前記周方向の両側のうち、少なくとも一方において、流体の漏れ込みにより薄板シール片に発生するフラッタリングを、抑制できる。さらに、周方向に複数のシールセグメントを並べた場合、シールセグメントは、ハウジング本体の周方向の両側において、流体の漏れ込みにより薄板シール片に発生するフラッタリングを、抑制できる。
【0019】
第7の態様の回転機械は、第1から第6のいずれかの態様のシールセグメントを複数備え、前記複数のシールセグメントが、前記周方向に沿って並んでいる。
【0020】
本実施形態では、各シールセグメントは、径方向内側に向かって、シール体の周方向端面に沿って傾斜して延びる延出部を有する。このため、各シールセグメント間への流体の漏れ込みが抑制される。したがって、回転機械は、流体の漏れ込みにより薄板シール片に発生するフラッタリングを、抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、薄板シール片に発生するフラッタリングを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係るガスタービン(回転機械)の概略全体構成図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る軸シール装置の概略構成図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るシールセグメントの周方向の断面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るシールセグメントの要部斜視図である。
図5】本発明の第一実施形態に係るシールセグメントの要部側面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係るシールセグメントの要部側面図である。
図7】本発明の各実施形態の変形例に係るシールセグメントの周方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る各種実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について、図1図5に沿って説明する。
なお、本実施形態においては、軸シール装置10をガスタービン(回転機械)1に適用した例を示す。
【0025】
図1に示すガスタービン1は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する圧縮機2と、圧縮機2にて圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させる燃焼器3と、を有している。ガスタービン1は、さらに、回動するタービン4と、該タービン4の回動する動力の一部を圧縮機2に伝達して圧縮機2を回動させるロータ5(回転軸)とを有している。
タービン4は、燃焼器3で発生させた燃焼ガスがその内部に導入されるとともに燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換して回動する。
なお、以下の説明においては、ロータ5の軸線Axの延びる方向を「軸方向Da」と、ロータ5の周方向を「周方向Dc」と、ロータ5の径方向を「径方向Dr」、ロータ5の回転方向を「回転方向Bc」とする。
【0026】
上述のような構成のガスタービン1では、タービン4は、ロータ5に設けられた動翼7に燃焼ガスを吹き付けることで燃焼ガスの熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生する。タービン4には、ロータ5側の複数の動翼7の他に、タービン4のケーシング8側に複数の静翼6が設けられるとともに、これら動翼7と静翼6とが、軸方向Daに交互に配列されている。
動翼7は軸方向Daに流れる燃焼ガスの圧力を受けて軸線回りにロータ5を回転させ、ロータ5に与えられた回転エネルギーは軸端から取り出されて利用される。静翼6とロータ5との間には、高圧側から低圧側に漏れる燃焼ガスの漏れ量を低減するための軸シールとして、軸シール装置10が設けられている。
【0027】
圧縮機2はロータ5にてタービン4と同軸で接続されており、タービン4の回転を利用して外気を圧縮して圧縮空気を燃焼器3に供給する。タービン4と同様に、圧縮機2においてもロータ5に複数の動翼7と、圧縮機2のケーシング9側に複数の静翼6が設けられており、動翼7と静翼6とが軸方向Daに交互に配列されている。さらに、静翼6とロータ5との間においても、高圧側から低圧側に漏れる圧縮空気の漏れ量を低減するための軸シール装置10が設けられている。
【0028】
加えて、圧縮機2のケーシング9がロータ5を支持する軸受け部9a、及びタービン4のケーシング8がロータ5を支持する軸受け部8aにおいても、高圧側から低圧側に圧縮空気又は燃焼ガスが漏れるのを防止する軸シール装置10が設けられている。
【0029】
ここで、本実施形態に係る軸シール装置10は、ガスタービン1への適用に限定されるものではない。例えば、軸シール装置10は、蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の大型流体機械のように、軸の回転と流体の流動によりエネルギーを仕事に変換する回転機械全般に広く採用することができる。この場合、軸シール装置10は、軸方向Daの流体の流動を抑えるために広く用いることも可能である。
【0030】
次に、上述のように構成されるガスタービン1に設けられる軸シール装置10の構成について、図面を参照して説明する。図2は、軸方向Daから見た図である。図2に示すように、この軸シール装置10は、周方向Dcに沿って並んでいる複数(本実施形態では8つ)のシールセグメント11を備える。複数のシールセグメント11は、ロータ5の周面を囲んでいる。複数のシールセグメント11は、それぞれ円弧状に延びており、周方向Dcに沿って環状に配置されている。
本実施形態において、互いに隣り合うシールセグメント11の周方向端部12,12同士は、隙間なく配置されている。
【0031】
各シールセグメント11の構成について、図3を参照して説明する。図3に示すシールセグメント11の断面の切断位置は、図2のシールセグメント11に示したIII−III線の位置に対応する。
各シールセグメント11は、ハウジング30を備える。
各シールセグメント11は、ロータ5と静翼6との間に設けられる。各シールセグメント11は、ロータ5と静翼6との間の環状空間における作動流体の漏れを抑制するために設置される。
各シールセグメント11は、ロータ5と動翼7との間にも設けられる。各シールセグメント11は、ロータ5と動翼7との間の環状空間における作動流体の漏れを抑制するために設置される。
各シールセグメント11は、ロータ5と軸受け部8aとの間、ロータ5と軸受け部9aとの間にもそれぞれ設けられる。各シールセグメント11は、ロータ5と軸受け部8aとの間、ロータ5と軸受け部9aとの間のそれぞれの環状空間における作動流体の漏れを抑制するために設置される。
【0032】
シールセグメント11は、さらに、シール体13と、リテーナ21,22と、一対のサイドプレート25を備える。本実施形態においてシールセグメント11は、一対のサイドプレート25として、高圧側側板23と、低圧側側板24と有する。
シール体13、リテーナ21,22、及びサイドプレート25は、ハウジング30内に収容されている。
シール体13は、周方向Dcに沿って互いに微小間隔を空けて多重に配列された、金属製の部材である複数の薄板シール片20を備える。当該複数の薄板シール片20は、ロータ5の周方向Dcの一部領域において、周方向Dc(回転方向Bc)に沿って積層されており、軸方向Daからみて全体として円弧帯形状を有する。
リテーナ21,22は、薄板シール片20の外周側基端27において薄板シール片20を両側から挟持するように構成されている。リテーナ21,22の周方向Dcおける断面は略C字型に形成されている。また、リテーナ21,22の軸方向Daおける断面は円弧帯形状に形成されている。
高圧側側板23は、薄板シール片20の高圧側領域に対向する高圧側の縁端とリテーナ21とによって挟持されている。よって、高圧側側板23は、複数の薄板シール片20の高圧側側面を、軸方向Daの高圧側から覆うように径方向Dr及び周方向Dcに延びている。
低圧側側板24は、薄板シール片20の低圧側領域に対向する低圧側の縁端とリテーナ22とによって挟持されている。よって、低圧側側板24は、複数の薄板シール片20の低圧側側面を、軸方向Daの低圧側から覆うように径方向Dr及び周方向Dcに延びている。
【0033】
上述のように構成されたシール体13において、薄板シール片20は外周側基端27の幅(軸方向Daの幅)に比べて内周側の幅(軸方向Daの幅)が小さくなる略T字型の薄い鋼板によって構成されている。その両方の側縁には、その幅が小さい位置において切り欠き部20a,20bが形成されている。
隣接する複数の薄板シール片20は、外周側基端27において、例えば溶接によって互いに固定連結されている。
【0034】
薄板シール片20は、周方向Dcにおいて、板厚に基づく所定の剛性を有している。さらに、回転方向Bcに向かって、薄板シール片20とロータ5の周面との間に形成される角が鋭角となるように、薄板シール片20は、リテーナ21,22に固定されている。
したがって、薄板シール片20は、径方向Dr内側に向かうにしたがって、回転方向Bc前方側に延出している。
【0035】
このように構成されたシールセグメント11においては、ロータ5が静止している際には各薄板シール片20の先端がロータ5と接触している。ロータ5が回転すると該ロータ5の回転によって生じる動圧効果により、薄板シール片20の先端がロータ5の外周から浮上してロータ5と非接触状態となる。このため、このシールセグメント11では、各薄板シール片20の磨耗が抑制され、シール寿命が長くなる。
【0036】
高圧側側板23は、外周側に嵌込段差部23aを有する。嵌込段差部23aの軸方向Daの幅は、内周側における高圧側側板23の軸方向Daの幅よりも大きい。
低圧側側板24は、外周側に嵌込段差部24aを有する。嵌込段差部24aの軸方向Daの幅は、内周側における低圧側側板24の軸方向Daの幅よりも大きい。
嵌込段差部23a,24aは、それぞれ薄板シール片20の切り欠き部20a,20bに嵌め込まれている。
【0037】
さらに、リテーナ21は、複数の薄板シール片20の外周側基端27における一方の側縁(高圧側の側縁)に対面する面に、凹溝21aを有している。リテーナ22は、複数の薄板シール片20の外周側基端27における他方の側縁(低圧側の側縁)に対面する面に、凹溝22aを有している。切り欠き部20a,20bには、高圧側側板23の嵌込段差部23a、低圧側側板24の嵌込段差部24aが嵌め込まれている。嵌込段差部23a及び嵌込段差部24aが嵌め込まれた複数の薄板シール片20に対し、その外周側における一方の側縁(高圧側の側縁)がリテーナ21の凹溝21aに嵌め込まれている。さらに、その外周側における他方の側縁(低圧側の側縁)がリテーナ22の凹溝22aに嵌め込まれている。このような構成により、各薄板シール片20がリテーナ21,22に固定される。
【0038】
ハウジング30の内周壁面には、環状の凹溝31が形成されている。環状の凹溝31は、ロータ5の軸方向において外周側の幅が内周側の幅よりも大きくなるように、薄板シール片20の一方の側縁(高圧側の側縁)及び他方の側縁(低圧側の側縁)に対向する側面に段差が設けられた形状とされている。この段差における外周側を向く面にリテーナ21,22の内周側を向く面が当接するようにして、ハウジング30の凹溝31内に、薄板シール片20、リテーナ21,22、高圧側側板23及び低圧側側板24が嵌め込まれている。薄板シール片20の内周側端部26が高圧側側板23よりもロータ5側に突出している。一方で、薄板シール片20の内周側端部26は低圧側側板24よりもロータ5側に突出しているが、その突出量は高圧側よりも大きく設定されている。すなわち、薄板シール片20は高圧側よりも低圧側において作動流体Gに対してより大きく露出している。言い換えると、高圧側側板23は薄板シール片20の側面におけるより広い範囲を作動流体Gから遮蔽している。
【0039】
高圧側側板23は、作動流体Gの流れによる圧力によって、薄板シール片20の側面20cに密着することで、作動流体Gが複数の薄板シール片20間の隙間に大きく流れ込むことを抑制する。よって、高圧側側板23は、複数の薄板シール片20間の隙間部分において、内周側端部26から外周側基端27へ向かう上向き流れを作り出し、流体力で薄板シール片20の内周側端部26を浮上させ、非接触化させている。
また、低圧側側板24は、高圧側側板23と薄板シール片20により押されてハウジング30の内周壁面の低圧側壁面32に密着する。低圧側側板24は、高圧側側板23よりも内径が大きいため、複数の薄板シール片20間の隙間の流れを浮上しやすい流況にしている。
【0040】
図3及び図4に示すように、ハウジング30は、軸方向Daについて、第一部材30aと第二部材30bとに分割されている分割構造を有する。ハウジング30は、軸方向Da高圧側に第一部材30a、軸方向Da低圧側に第二部材30bを有する。
軸方向Da両側からシール体13を挟むように第一部材30aと第二部材30bとが合わせられることによって、ハウジング30は、シール体13を収容している。
本実施形態において、ハウジング30は、平面30cで分割されている。
ハウジング30を説明する都合上、図4では、1つのシールセグメント11のうち、ハウジング30及びシール体13のみが便宜上示されている。
【0041】
本実施形態のハウジング30について図5を参照して詳しく説明する。
図5に示すように、ハウジング30は、ハウジング本体34と、延出部35とを有する。本実施形態では、ハウジング30は、上記のとおり、第一部材30aと第二部材30bとに分割されているので、第一部材30a、第二部材30bがそれぞれ、ハウジング本体34と、延出部35とを有する。
ハウジング30の構造を説明する都合上、図5では、シールセグメント11のうち、ハウジング30の第一部材30aが外された状態の構成が示されている。
ハウジング本体34と延出部35とは、一体成型されている。本実施形態では、ハウジング30は、上記のとおり、第一部材30a、第二部材30bに分割されているので、第一部材30a、第二部材30bそれぞれにおいて、ハウジング本体34を構成する部分と延出部35を構成する部分とが、一体成型されている。
【0042】
ハウジング本体34は、シール体13を径方向Dr内側に突出させながら収容している。
延出部35は、ハウジング本体34の周方向Dcの端部に設けられている。
延出部35は、径方向Dr内側に向かって、シール体13の周方向Dcの端面に沿って延びている。本実施形態では、延出部35は、径方向Dr内側に向かうにしたがって、回転方向Bc前方側に傾斜して延びている。特に本実施形態では、延出部35は、径方向Drに対し、シール体13の周方向Dcの端面と同じ傾斜角度で傾斜している。
【0043】
本実施形態では、ハウジング30は、ハウジング本体34の周方向Dcの両側に、それぞれ延出部35を有する。すなわち、ハウジング30は、回転方向Bc前方側に第一延出部35fを有し、回転方向Bc後方側に第二延出部35bを有する。
第一延出部35fと第二延出部35bとは、径方向Drに対し、互いに同じ傾斜角度で傾斜している。このため、複数のシールセグメント11が、周方向Dcに沿って環状に配置されると、延出部35は、隣のシールセグメント11の延出部35と全体に亘って面接触する。
【0044】
本実施形態の作用、効果について説明する。
本実施形態では、ハウジング30は、径方向Dr内側に向かって、シール体13の周方向Dc端面に沿って延びる延出部35を有する。このため、シール体13の周方向Dc端面への流体の漏れ込みが抑制される。したがって、シールセグメント11は、流体の漏れ込みにより薄板シール片20に発生するフラッタリングを、抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、延出部35がシール体13と同方向に傾斜しているので、延出部35とシール体13との間の隙間を小さくすることができる。このため、シール体13の周方向Dc端面への流体の漏れ込みがさらに抑制される。
【0046】
また、本実施形態では、ハウジング30が、ハウジング本体34の周方向Dcの両側に、それぞれ延出部35を有することで、シール体13の周方向Dc両端面への流体の漏れこみがさらに抑制される。このため、周方向Dcに隣り合うシールセグメント11との間に隙間があったとしても、シールセグメント11は、ハウジング本体34の周方向の両側において、流体の漏れ込みを抑制できる。
【0047】
特に、ガスタービン1へ組み込まれる場合、軸シール装置10は、複数のシールセグメント11のように、周方向Dcに分割された分割構造を取ることが多い。
軸シール装置10を分割構造とすると、分割箇所ではサイドプレート25も分割されるため、サイドプレート25がシール体13に密着しにくい箇所ができ、シール体13内部の流れが変化し、適正な浮上力とならないことがある。浮上特性が低下すれば、シール体13の摩耗が進む。
さらに、分割箇所では、サイドプレート25がシール体13側面を覆わない箇所を有することがあるため、シール体13内部に軸方向Daの流体の流れができる。このため、フラッタが発生しやすい。
【0048】
これに対し、本実施形態では、ハウジング30の周方向端部12の形状が、シール体13の形状と合わせ、径方向に対し斜めにカットされた形状を有する。さらに分割箇所をハウジング30が埋めている。このため、分割箇所への流体の漏れ込みが抑制される。
したがって、軸シール装置10は、分割箇所への漏れ込みによる予期しない圧力バランスを抑制でき、分割箇所の摩耗を低減することができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、シールセグメント11同士の合わせ面まで延出部35が延びている。このため、たとえ、複数のシールセグメント11を並べる時にサイドプレート25から周方向Dcに薄板シール片20が飛び出していても、延出部35によって、飛び出している薄板シール片20が、隣のシールセグメント11の薄板シール片20と接触することを抑制できる。
【0050】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態について、図6を参照して説明する。
第一実施形態に対し、第二実施形態のシールセグメント111の延出部が、径方向Drに対し、さらに傾斜している点が異なる。他の点については、第一実施形態と同様である。
【0051】
図6に示すように、シールセグメント111は、ハウジング130を備える。
ハウジング130は、ハウジング本体134と、延出部135とを有する。
延出部135は、径方向Drに対し、予圧を与えた時のシール体13の周方向Dcの端面よりも大きな角度で傾斜して延びている。その際、予圧を与えた時のシール体13の周方向Dcの端面の傾斜角度が予め求められることによって、延出部135は構成される。
【0052】
本実施形態の作用、効果について説明する。
延出部が、径方向Drに対し、シール体13の周方向Dcの端面と同じ傾斜角度で傾斜していると、シール体13に予圧を与えた場合に、延出部がシール体13に接触する。このため、シール体13の剛性が大きくなることがある。
このような場合、延出部が、径方向Drに対し、シール体13の周方向Dcの端面より予め大きな角度で傾斜していれば、接触による剛性上昇を防ぐことが考えられる。
【0053】
そこで、本実施形態では、図6に示すように、延出部135は、径方向Drに対し、予圧を与えた時のシール体13の周方向Dcの端面よりも傾斜して延びるように構成される。
本実施形態によれば、予圧を与えた時であっても、延出部135は、シール体13の周方向Dc端面に接触しにくい。
したがって、延出部135のシール体13への接触が抑制される。
【0054】
本実施形態の変形例として、径方向Drに対し、サイドプレート25の周方向Dcの端面より、延出部135の傾斜角度が大きくなるように構成されてもよい。
通常、サイドプレート25は、シール体13の周方向Dcの側面を覆う形状を有している。このため、径方向Drに対し、サイドプレート25の周方向Dcの端面よりも、延出部135が傾斜していれば、シール体13に予圧を与えた場合であっても、延出部135は、シール体13の周方向Dc端面に接触しにくい。
したがって、この場合も同様に、延出部135は、シール体13の周方向Dc端面に接触しにくく、延出部135のシール体13への接触が抑制される。
【0055】
<変形例>
上記各実施形態では、ハウジング本体は、シール体を径方向Dr内側に突出させながら収容している。変形例として、ハウジング本体は、さらにサイドシールを径方向Dr内側に突出させながら収容してもよい。
【0056】
上記各実施形態では、ハウジングは、ハウジング本体の周方向Dcの両側に、それぞれ延出部を有する。変形例として、ハウジングは、ハウジング本体の周方向の両側のうち、一方側だけに延出部を有してもよい。すなわち、ハウジングは、回転方向Bc前方側だけに延出部を有してもよいし、回転方向Bc後方側だけに延出部を有してもよい。
【0057】
上記各実施形態では、隣り合うシールセグメントの周方向端部同士は、隙間なく配置されている。変形例として、隣り合うシールセグメントの周方向端部は、隙間を開けて配置されてもよい。この場合、延出部は、隣のシールセグメントの延出部と面接触せず、隙間を有することとなる。
【0058】
上記各実施形態では、第一延出部と第二延出部とは、径方向Drに対し、互いに同じ傾斜角度で傾斜している。変形例として、第一延出部と第二延出部とは、径方向Drに対し、互いに異なる傾斜角度で傾斜していてもよい。この場合、延出部は、隣のシールセグメントの延出部と全体に亘って面接触せず、部分的に接触することとなる。
【0059】
上記各実施形態では、ハウジング本体と延出部とは、一体成型されている。
変形例として、一体成型とせず、ハウジング本体に延出部が取り付けられてもよい。例えば、ろう付けや溶接によって、ハウジング本体に延出部が取り付けられてもよい。
他の変形例として、一体成型とせず、ハウジング本体に延出部が脱着可能に取り付けられてもよい。例えば、ハウジング本体と延出部とが互いにねじ止めできるように構成されてもよいし、ハウジング本体に延出部が嵌め込まれるように構成されてもよい。
【0060】
上記各実施形態では、ハウジングは、平面で、第一部材と第二部材とに分割されているが、変形例としてハウジング230のように構成されてもよい。
図7に示すように、ハウジング230は、段差面230cで、第一部材230aと第二部材230bとに分割されている。このため、第一部材230aと第二部材230bとは、段差面230cにおいて、互いに嵌め合わせられる。したがって、本変形例のシールセグメントは、第一部材230aと第二部材230bとがずれにくい構造を有する。さらに、本変形例のシールセグメントは、第一部材230aと第二部材230bとを組み立てやすい。
【符号の説明】
【0061】
1:ガスタービン(回転機械)
2:圧縮機
3:燃焼器
4:タービン
5:ロータ
6:静翼
7:動翼
8:ケーシング
8a:軸受け部
9:ケーシング
9a:軸受け部
10:軸シール装置
11:シールセグメント
12:周方向端部
13:シール体
20:薄板シール片
20a:切り欠き部
20b:切り欠き部
20c:側面
21:リテーナ
21a:凹溝
22:リテーナ
22a:凹溝
23:高圧側側板
23a:嵌込段差部
24:低圧側側板
24a:嵌込段差部
25:サイドプレート
26:内周側端部
27:外周側基端
30:ハウジング
30a:第一部材
30b:第二部材
30c:平面
31:凹溝
32:低圧側壁面
34:ハウジング本体
35:延出部
35b:第二延出部
35f:第一延出部
111:シールセグメント
130:ハウジング
134:ハウジング本体
135:延出部
230:ハウジング
230a:第一部材
230b:第二部材
230c:段差面
Ax:軸線
Bc:回転方向
Da:軸方向
Dc:周方向
Dr:径方向
G:作動流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7