(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載され車両の走行に関するデータを取得する走行データ取得装置と、前記走行データ取得装置により取得された走行に関するデータを解析してドライバーの運転を評価する運転評価装置と、を備えた運転評価システムであって、
前記走行データ取得装置は、車両の挙動が所定条件を満たす場合に警報を発する警報手段と、前記警報手段による警報の発生を禁止したり禁止を解除したりする警報制御手段と、
を備え、
前記運転評価装置は、前記警報制御手段が警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とのどちらの状態にするかの設定が可能な設定手段を備え、
前記設定手段は、前記運転評価装置において運転を評価されたことがない新規のドライバーが運転を行う場合に警報の発生を禁止する状態に自動設定し、又は当該禁止する状態となるようにアナウンスを行う初期設定機能部を有する
ことを特徴とする運転評価システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る運転評価システムを示す構成図である。
図1に示すように、運転評価システム5は、デジタルタコグラフ(走行データ取得装置)10と、事務所PC(運転評価装置)30とを備えて構成されている。デジタルタコグラフ10は、複数の車両それぞれに搭載され、それぞれの車両の運行データ(走行に関するデータ)等を取得するものである。事務所PC30は、事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成され、デジタルタコグラフ10により取得された走行に関するデータを解析してドライバーの運転を評価するものである。なお、運転評価システム5は、デジタルタコグラフ10に代えてドライブレコーダ等の他の運行記録を行う装置であってもよい。
【0012】
ここで、本実施形態においてデジタルタコグラフ10と事務所PC30とは、ネットワーク70を介して接続されている。しかし、これに限らず、デジタルタコグラフ10と事務所PC30とはネットワーク70を介して接続されていなくてもよい。接続されていない場合、事務所PC30は、メモリカード65を介して、デジタルタコグラフ10で計測された運行データを読み込むこととなる。
【0013】
ネットワーク70は、デジタルタコグラフ10と広域通信を行う無線基地局8や事務所PC30が接続されるインターネット等の通信網であり、デジタルタコグラフ10と事務所PC30との間で行われるデータ通信を中継する。なお、事務所PC30は、事務所敷地内等の限られたエリアにおいて無線通信可能な無線LAN等によってデジタルタコグラフ10と通信可能とされていてもよい。
【0014】
次に、デジタルタコグラフ10及び事務所PC30の詳細を説明する。
【0015】
デジタルタコグラフ10は、車両に搭載され、出入庫時刻、走行距離、走行時間、走行速度、速度オーバー、エンジン回転数オーバー、急発進、急加速、急減速等の運行データを記録するものである。このデジタルタコグラフ10は、CPU11、揮発メモリ26B、不揮発メモリ26A、記録部17、カードI/F18、音声I/F19、RTC(時計IC)21、SW入力部22及び表示部27を有する。
【0016】
CPU11は、デジタルタコグラフ10の各部を統括的に制御するものである。不揮発メモリ26Aは、CPU11によって実行される動作プログラム等を格納するものである。
【0017】
記録部17は、運行データや映像等のデータを記録するものである。カードI/F18は、ドライバーが所持するメモリカード65が挿抜自在に接続されるものである。CPU11は、カードI/F18に接続されたメモリカード65に対して、運行情報(運行データ、映像等のデータを含む)及び車間警報イベント等を書き込む。音声I/F19は、内蔵スピーカ(警報手段)20が接続されるものである。内蔵スピーカ20は、警報等の音声を発する警報手段として機能する。
【0018】
RTC21は、現在時刻を計時するものである。SW入力部22は、出庫ボタン、入庫ボタン等の各種ボタンが操作されたときに発せられるON/OFF信号を入力するものである。表示部27は、LCD(Liquid Crystal Display)で構成され、通信や動作の状態の他、警報等を表示するものである。
【0019】
また、デジタルタコグラフ10は、速度I/F12A、エンジン回転I/F12B、外部入力I/F13、センサ入力I/F14、アナログ入力I/F29、GPS受信部15、カメラI/F16、通信部24及び電源部25を有している。
【0020】
速度I/F12Aは、車両の速度を検出する車速センサ51が接続されるものであり、車速センサ51からの速度パルスを入力するものである。車速センサ51は、デジタルタコグラフ10にオプションとして設けられてもよいし、デジタルタコグラフ10とは別の装置として設けられてもよい。エンジン回転I/F12Bには、エンジン回転数センサ(図示せず)からの回転パルスが入力される。外部入力I/F13には、外部機器(図示せず)が接続される。
【0021】
センサ入力I/F14は、加速度(G値)を検知する(衝撃を感知する)加速度センサ(Gセンサ)28が接続されるものであり、Gセンサ28からの加速度信号を入力するものである。アナログ入力I/F29は、エンジン温度(冷却水温)を検知する温度センサ(図示せず)、燃料量を検知する燃料量センサ(図示せず)等の信号を入力するものである。CPU11は、これらのI/F12A,12B,13,14,29を介して入力される情報を基に、各種の運転状態を検出する。
【0022】
GPS受信部15は、GPS衛星から送信される電波をGPSアンテナ15aを介して受信して現在位置情報(GPS情報)を取得するものである。
【0023】
カメラI/F16は、カメラ23によって撮像される車両の周辺(例えば前方)の画像データを入力するものである。カメラ23は、例えばCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサで構成されてもよいし、CCD(電荷結合素子)センサで構成されてもよい。デジタルタコグラフ10は、カメラ23で撮像された、前方車両を含む撮像画像に基づいて車間距離を求める。撮像画像を用いて車間距離を求める方法は、例えば特開2010−198552号公報、特開2011−96048号公報、特許第3522317号公報等に記載されるように、公知の技術である。カメラ23で撮像された映像(画像データ)は、記録部17に時系列に記録される。なお、カメラ23は、可視光を撮像する以外に、夜間でも撮像可能なように、赤外線カメラを備えてもよい。
【0024】
通信部24は、無線基地局8及びネットワーク70を介して、事務所PC30と通信を行うものである。なお、通信部24は、無線LAN等の社内無線ネットワークによって事務所PC30と通信するようになっていてもよい。電源部25は、イグニッションスイッチのオン等によりデジタルタコグラフ10の各部に電力を供給するものである。
【0025】
事務所PC30は、運転評価装置として機能し、CPU31、通信部32、表示部(表示手段)33、記憶部34、カードI/F35、操作部36、出力部37、音声I/F38及び外部I/F48を有する。
【0026】
CPU31は、事務所PC30の各部を統括的に制御するものである。通信部32は、ネットワーク70等を介してデジタルタコグラフ10と通信可能であるものである。また、通信部32は、ネットワーク70に接続された各種のデータベース(図示せず)とも接続可能であり、必要なデータを取得可能となっている。
【0027】
表示部33は、ドライバーの運転評価を表す運転評価画面等を表示するものである。記憶部34は、デジタルタコグラフ10で計測された運行データに基づいて、運転評価を行う運転評価プログラム等を格納するものである。
【0028】
カードI/F35は、ドライバーが所持するメモリカード65が挿抜自在に接続されるものであって、メモリカード65が挿入されると、デジタルタコグラフ10によって計測された運行データを入力する。操作部36は、キーボードやマウス等によって構成され、事務所PC30の管理者からの操作を受け付ける部位である。出力部37は、各種データを出力するものであって、例えば印刷によりデータを出力する印刷部が該当する。音声I/F38は、マイク41及びスピーカ42が接続されるものである。事務所PC30の管理者は、マイク41及びスピーカ42を用いて例えばデジタルタコグラフ10が搭載される車両のドライバーに音声通話を行うことも可能である。外部I/F48には、外部記憶装置(図示せず)等が接続可能である。
【0029】
図2は、
図1に示したデジタルタコグラフ10のCPU11の機能を示すブロック図である。
図2に示すように、デジタルタコグラフ10のCPU11は、内部プログラムが実行されることで、警報判断部11aと警報制御部(警報制御手段)11bとが機能する。警報判断部11aは、車両の挙動に基づいて警報を発するか否かを判断するものであり、車両の挙動が所定条件(例えば所定以上の速度、所定以上の加速度及び所定以下の車間時間等)を満たす場合に警報を発すべきと判断する。警報は上述したように内蔵スピーカ20から出力される。警報制御部11bは、内蔵スピーカ20からの警報の発生を禁止したり、禁止を解除したりするものである。
【0030】
デジタルタコグラフ10は、このような構成を備えるため、警報判断部11aにより車両の挙動が所定条件を満たすと判断され、且つ、警報制御部11bにより警報の発生の禁止が解除されている場合に、警報を出力することとなる。一方、警報判断部11aにより車両の挙動が所定条件を満たすと判断された場合であっても、警報制御部11bにより警報の発生が禁止されているときには、警報は発せられないこととなる。特に、警報の発生が禁止されている状態においてはドライバーへの注意喚起が行われないことからドライバーが普段の運転を行うこととなる。よって、本実施形態に係るデジタルタコグラフ10は普段の運転傾向を把握し易い構成となっている。
【0031】
図3は、
図1に示した事務所PC30のCPU31の機能ブロック図である。
図3に示すように、事務所PC30のCPU31は、内部プログラムが実行されることで、設定部(設定手段)31aが機能する。設定部31aは、デジタルタコグラフ10の警報制御部11bの状態を設定する機能部である。この設定部31aにより、警報制御部11bは、警報の発生を禁止する状態とされたり、禁止を解除する状態とされたりする。このように事務所PC30が設定部31aを備えることで、警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とをデジタルタコグラフ10において変更できないようにしている。すなわち、警報制御部11bの状態変更を事務所PC30でしかできないようにすることで、車両のドライバーがデジタルタコグラフ10を操作して状態を変更できないようにしている。
【0032】
さらに、設定部31aは、初期設定機能部31bと、自動遷移部31cとを備えている。初期設定機能部31bは、新規のドライバーが運転を行う場合に警報の発生を禁止する状態に自動設定し、又は当該禁止する状態となるようにアナウンスするものである。ここで、新規ドライバーとは、事務所PC30において運転を評価されたことがないドライバーである。このため、例えば事務所PC30が設置される会社において乗務員として初めて運転を行うドライバーが新規ドライバーに該当する。また、上記のアナウンスとは、例えば「新規ドライバーなので警報鳴動を禁止してください。」と表示部33又はスピーカ42から出力されるものであってもよいし、「□新規ドライバー(チェックすると一定期間警報鳴動が禁止されます)」等の乗務員カード(メモリカード65)の新規発行時における表示部33上での設定補助のアナウンスであってもよい。
【0033】
自動遷移部31cは、警報の発生を禁止する状態に設定してから、所定時間経過したこと、又は所定距離車両走行されたことを検出した場合に、警報の発生を禁止する状態から禁止を解除する状態に自動的に遷移させるものである。自動遷移部31cは、通信やメモリカード65を通じて得られた経過時間や走行距離に基づいて、所定時間経過したか否かや所定距離車両走行したか否かを判断することとなる。
【0034】
次に、本実施形態に係る運転評価システム5の動作を、1)デジタルタコグラフ10側の処理、及び、2)事務所PC30側の処理の順に説明する。
【0035】
図4は、
図1に示したデジタルタコグラフ10側の処理を示すフローチャートである。なお、
図4では、車間時間に基づく警報処理、及び、その際の記録処理を示している。
【0036】
まず、
図4に示すように、デジタルタコグラフ10内のCPU11は、速度I/F12Aを介して車速センサ51から入力される信号に基づいて車速を計測すると共に、カメラ23で撮像された画像に基づいて前方車両との車間距離を計測する(S1)。さらに、ステップS1において、CPU11は、車間距離を車速で除することで車間時間(前方車両が停止し、ブレーキ操作しなかった場合に前方車両に追突するまでの時間)を算出する(S1)。
【0037】
次に、CPU11は、自車両と前方車両との間に別の車両が入り込む割り込まれが発生したか否かを判断する(S2)。この処理においてCPU11は、前回のステップS1において算出した車間時間が急激(所定値以上)に減少した場合に、割り込まれが発生したと判断する。他車両による割り込まれが発生した場合、前方の注視を怠る運転操作が行われた場合の車間時間の変化に比べて車間時間が急激に変化(減少)するためである。よって、CPU11は、車間時間が所定値以上急激に変化(減少)したか否かに基づいて、他車両による割り込まれが発生したか否かを判断することができる。
【0038】
CPU11は、割り込まれが発生しなかったと判断した場合(S2:NO)、車間時間が警報に該当するか否かを判断する(S3)。具体的にCPU11は、ステップS1において算出した車間時間が車間閾値以下となる場合に、車間時間が警報に該当する(車両の挙動が所定条件を満たす場合の一例)と判断する(S3:YES)。なお、本実施形態においてCPU11は、車間時間を車間閾値と比較することによって警報に該当するか否かを判断しているが、これに限らず、車間距離を閾値と比較することによって警報に該当するか否かを判断してもよい。
【0039】
CPU11により車間時間が警報に該当しないと判断された場合(S3:NO)、処理はステップS1に移行する。
【0040】
CPU11は、車間時間が警報に該当すると判断した場合(S3:YES)、デジタルタコグラフ10の警報制御部11bが警報鳴動を禁止している状態であるかを判断する(S4)。CPU11が警報制御部11bが警報鳴動を禁止している状態であると判断した場合(S4:YES)、処理はステップS6に移行する。
【0041】
一方、CPU11は、警報制御部11bが警報鳴動を禁止している状態でないと判断した場合、すなわち、警報鳴動の禁止を解除している状態であると判断した場合(S4:NO)、内蔵スピーカ20による警報の鳴動を開始する(S5)。
【0042】
その後、CPU11は、ステップS1と同様にして車間時間の算出を継続し、車間時間が警報範囲外(所定値を超えた状態)となったかを判断する(S6)。CPU11は、車間時間が警報範囲外となっていないと判断した場合(S6:NO)、車間時間が警報範囲外となるまで、この処理を繰り返す。
【0043】
CPU11は、車間時間が警報範囲外となったと判断した場合(S6:YES)、警報を発している場合には警報の鳴動を終了させる(S7)。その後、CPU11は、カードI/F18を介してメモリカード65に車間警報イベントを記録する(S8)。そして、処理はステップS1に移行する。なお、車間警報イベントとして記録される情報は、イベントの発生日時、発生時の車速、警報種別、警報継続時間、警報継続時間中の最短車間時間、割り込まれフラグFの値等が該当する。警報種別は、スピーカが鳴動する警報の種類(警報鳴動禁止時においては鳴動するはずであった警報の種類)である。警報継続時間は、ステップS5で警報の鳴動が開始されてからステップS7で警報の鳴動が終了するまでの期間(警報鳴動禁止時においてはステップS4で「YES」と判断されてからステップS7の処理に至るまでの期間)である。最短車間時間は、走行中に最も短くなった車間時間であり、車間閾値とのかい離の大きさに相当する。
【0044】
ところで、CPU11は、割り込まれが発生したと判断した場合(S2:YES)、割り込まれフラグFを値1にセットし(S9)、割り込まれた時点で車間時間が警報に該当するか否かを判断する(S10)。この処理においてCPU11は、ステップS3と同様にして車間時間が車間閾値以下となる場合に、車間時間が警報に該当すると判断する。
【0045】
CPU11により車間時間が警報に該当しないと判断された場合(S10:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、CPU11は、車間時間が警報に該当すると判断した場合(S10:YES)、処理をステップS4に進める。
【0046】
以降、
図4に示す処理は、例えば車両が事務所の敷地内に戻り入庫処理を完了させるまで、繰り返し実行される。
【0047】
図5は、
図1に示した事務所PC30側の処理を示すフローチャートである。まず、
図5に示すように、事務所PC30の設定部31aは、新規ドライバーのためのメモリカード65の発行処理が実行されているかを判断する(S21)。設定部31aにより新規ドライバーのための発行処理が実行されていないと判断された場合(S21:NO)、処理はステップS23に移行する。
【0048】
一方、設定部31aにより新規ドライバーのための発行処理が実行されていると判断された場合(S21:YES)、初期設定機能部31bはメモリカード65に対して警報鳴動を禁止する設定を自動的に書き込む(S22)。この書き込みがされたメモリカード65がデジタルタコグラフ10に挿入されると、デジタルタコグラフ10の警報制御部11bは、警報鳴動を禁止する状態に設定される。警報制御部11bが警報鳴動を禁止する状態に設定されると、
図4に示したステップS4の処理において「YES」と判断され、警報が出力されないこととなる。なお、ステップS22の処理ではメモリカード65に対して警報鳴動を禁止する設定を自動的に書き込む場合に限らず、メモリカード65に対して警報鳴動を禁止する設定を書き込むように促すアナウンスを行ってもよい。
【0049】
その後、事務所PC30のCPU31は車両の出庫を確認する(S23)。車両の出庫は、デジタルタコグラフ10からの無線信号によって確認されてもよいし、事務所PC30の管理者又は車両ドライバーが事務所PC30に対し出庫操作を行うことで確認されてもよい。
【0050】
次に、CPU31は、デジタルタコグラフ10から無線通信で送られてくる運行データを受信し、車両の運行を管理する(S24)。運行データとしては、例えば車両のGPS情報、速度、エンジン回転数、G値等のデータが挙げられる。事務所PC30の表示部33は、これらの情報を基に、マップ上に車両の現在位置、運転状態等を表示する。
【0051】
CPU31は、車両の入庫を確認する(S25)。車両の入庫は、デジタルタコグラフ10からの無線信号によって確認されてもよいし、事務所PC30の管理者又は車両ドライバーが事務所PC30に対し入庫操作を行うことで確認されてもよい。
【0052】
車両の入庫後、ドライバーがメモリカード65を事務所PC30に挿入すると、CPU31は、メモリカード65に記録された各種情報を読み込み、記憶部34に記憶する(S26)。
【0053】
次いで、自動遷移部31cは、ステップS22において警報の鳴動を禁止する状態に設定してから、所定時間経過したかを判断する(S27)。なお、この処理においては、警報の鳴動を禁止する状態に設定してから所定距離車両走行されたかが判断されてもよい。
【0054】
自動遷移部31cは、警報の鳴動を禁止する状態に設定してから所定時間経過したと判断した場合(S27:YES)、メモリカード65に対して禁止を解除する設定を書き込む(S28)。この書き込みがされたメモリカード65がデジタルタコグラフ10に挿入されると、デジタルタコグラフ10の警報制御部11bは、禁止を解除する状態に設定される。警報制御部11bが警報鳴動の禁止を解除する状態に設定されると、
図4に示したステップS4の処理において「NO」と判断され、警報が出力されることとなる。さらに、禁止を解除する設定がメモリカード65に書き込まれると、事務所PC30は、次回から警報が出力される旨を運転日報画面や印刷物に出力し、ドライバーや管理者にその旨を通知することとなる。
【0055】
一方、自動遷移部31cは、警報の鳴動を禁止する状態に設定してから所定時間経過していないと判断した場合(S27:NO)、設定を書き換えることなく、警報鳴動を禁止する設定を維持したままとし、処理はステップS29に移行する。
【0056】
次に、CPU31は、ステップS26において読み込んだ車間警報イベントの記録データを基に、数式(1)に従って、車間警報イベント毎に危険度指標を算出する(S29)。
【数1】
ここで、警報閾値は、前方車両に追突する危険性があると判断される時間であり、例えば3秒等に設定される。
【0057】
その後、CPU31は指定期間で危険度指標を集計する(S30)。指定期間は、ドライバーに対する車間距離の運転傾向の評価に適した期間であり、例えば1日、1週間、1ヶ月等である。集計後、CPU31は、第1の分析手法及び第2の分析手法でドライバーの運転傾向を分析する(S31)。ただし、第1の分析手法及び第2の分析手法を用いる際、割り込まれフラグFが値1である時に発生した車間警報イベントは除外される。
【0058】
第1の分析手法では、警報継続時間に対する危険度指標が分析される。
図6は、第1の分析手法によって得られたドライバーの運転傾向の一例を示すグラフである。縦軸は危険度指標を示し、横軸は警報継続時間(秒)を示している。グラフ中の各プロットは車間警報イベントの発生を表している。
【0059】
図6に示すグラフでは、破線gに示すように、危険度指標が高く警報継続時間が長くなるほど危険な運転であるといえ、破線f内の領域が最も危険な運転であることを示す。この例では、左下の領域にプロットが多く集まり、右上の領域には殆どプロットが無く、比較的安全な運転傾向である分析結果が示されている。
【0060】
第2の分析手法では、警報中の最短車間時間に対する危険度指標が分析される。
図7は、第2の分析手法によって得られたドライバーの運転傾向の一例を示すグラフである。縦軸は危険度指標を示し、横軸は警報中の最短車間時間(秒)を示している。グラフ中の各プロットは車間警報イベントの発生を示している。
【0061】
図7に示すグラフでは、破線iに示すように、警報中の最短車間時間が短く、かつ、危険度指標が大きくなるほど危険な運転であるといえ、破線h内の領域が最も危険な運転であることを示す。この例では、中央から右下の領域にプロットが多く集まり、左上の領域には殆どプロットが無く、比較的安全な運転傾向である分析結果が示される。
【0062】
再度
図5を参照する。CPU31は、
図6及び
図7に示す分析を行った後(S31の後)、ドライバーの運転を評価すると共に、他のドライバーと比較する(S32)。この処理においてCPU31は、ドライバー毎に走行距離が異なることを考慮し、単位総距離当たりの車間警報イベントで運転評価を行う。また、CPU31は、他のドライバーとの比較にあたり、第1の分析手法及び第2の分析手法による分析結果を用いて他のドライバーとの比較を行う。その後、
図5に示す処理は終了する。
【0063】
図8は、第1の分析手法によって得られたドライバーdA〜dEの運転傾向を示すグラフであり、(A)は第1ドライバーdAの運転傾向を示し、(B)は第2ドライバーdBの運転傾向を示し、(C)は第3ドライバーdCの運転傾向を示し、(D)は第4ドライバーdDの運転傾向を示し、(E)は第5ドライバーdEの運転傾向を示し、(F)はドライバー全員の運転傾向を示している。
【0064】
図8(A)のグラフに示すように、第1の分析手法においては、車間警報イベントを表すプロットが付与されるプロット領域が、6つに分けられている。なお、事務所PC30は、操作部36を介した操作が行われることで、領域数、領域の形状、領域の広さ等を任意に設定可能となっている。
【0065】
CPU31は、6つの各領域に含まれるプロット数に対し重み付けを行い、重み付けされた全てのプロット数を点数加算し、加算点数を運転評価とする。詳細に説明すると、例えば6つの領域R1a,R1b,R1c,R1d,R1e,R1fそれぞれに対して、重み付け係数α1,β1,γ1,δ1,ε1,ζ1が設定されている。6つの領域R1a,R1b,R1c,R1d,R1e,R1fのそれぞれのプロット数が例えば「6」「3」「2」「1」「2」「3」であるとすると、加算点数は、例えば6α1+3β1+2γ1+δ1+2ε1+3ζ1となる。
【0066】
ここで、前述したように、グラフ上の右上にプロットが集まっていると、危険な運転と判断される。従って、領域R1aにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くなるように、重み付け係数α1を大きな値とする。また、左下の領域R1dにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くならないように、重み付け係数δを小さな値とする。また、領域R1fでは、デジタルタコグラフ10が車間警報イベントを誤認識した場合にプロットとして現れ易いため、このプロットを評価に加えないように、例えば重み付け係数ζ1を値0に設定して評価に加えないようにしてもよい。
【0067】
なお、ここで示した重み付けの方法は一例であり、重み付け係数α1,β1,γ1,δ1,ε1,ζ1の値は、管理者等によって適宜変更できるようにされていてもよい。また、例えば領域R1aに含まれるプロットに対して重み付けを行うが、その他の領域R1b,R1c,R1d,R1e,R1fに含まれるプロットに対して重み付けを行わないようにすること等も可能である。
【0068】
さらには、
図8(F)に示す全てのドライバーdA〜dEのプロットに基づいて、ドライバー全員の運転評価を算出するようにしてもよい。
【0069】
図9は、第2の分析手法によって得られたドライバーdA〜dEの運転傾向を示すグラフであり、(A)は第1ドライバーdAの運転傾向を示し、(B)は第2ドライバーdBの運転傾向を示し、(C)は第3ドライバーdCの運転傾向を示し、(D)は第4ドライバーdDの運転傾向を示し、(E)は第5ドライバーdEの運転傾向を示し、(F)はドライバー全員の運転傾向を示している。
【0070】
図9(A)のグラフに示すように、第2の分析手法においては、車間警報イベントを表すプロットが付与されるプロット領域が、4つに分けられている。なお、事務所PC30は、操作部36を介した操作が行われることで、領域数、領域の形状、領域の広さ等を任意に設定可能となっている。
【0071】
CPU31は、4つの各領域に含まれるプロット数に対し重み付けを行い、重み付けされた全てのプロット数を点数加算し、加算点数を運転評価とする。詳細に説明すると、例えば4つの領域R2a,R2b,R2c,R2dそれぞれに対して、重み付け係数α2,β2,γ2,δ2が設定されている。4つの領域それぞれR2a,R2b,R2c,R2dのプロット数が例えば「6」「3」「2」「1」であるとすると、加算点数は、例えば6α2+3β2+2γ2+δ2となる。
【0072】
ここで、前述したように、グラフ上の左上にプロットが集まっていると、危険な運転と判断される。従って、領域R2dにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くなるように、重み付け係数δ2を大きな値とする。また、右下の領域R2aにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くならないように、重み付け係数α2を小さな値とする。また、第1の分析手法では領域R1fに含まれるプロットを評価に加えないようにしたが、第2の分析手法においても同様の領域を設けてもよい。
【0073】
なお、ここで示した重み付けの方法は一例であり、重み付け係数α2,β2,γ2,δ2の値は、管理者等によって適宜変更できるようにされていてもよい。また、例えば領域R2dに含まれるプロットに対して重み付けを行うが、その他の領域R2a,R2b,R2cに含まれるプロットに対して重み付けを行わないようにすること等も可能である。
【0074】
さらには、
図9(F)に示す全てのドライバーdA〜dEのプロットに基づいて、ドライバー全員の運転評価を算出するようにしてもよい。
【0075】
図10は、本実施形態に係るドライバー評価の長期的な流れを示す概念図である。
図10に示すように、ドライバーには、まず評価期間1が設定される。この評価期間1は、警報音声が発せられない期間であり、ステップS27において説明した所定時間と同じ長さの期間である。このような評価期間1は例えば10日間程度に設定される。
【0076】
評価期間2は、評価期間1の後に設定される期間であり、ステップS27において所定時間が経過して、警報制御部11bが警報鳴動の禁止を解除する状態となったときに開始する期間である。この評価期間2は例えば15日間程度に設定される。
【0077】
評価間隔は、評価期間2の後に一定間隔で設けられる期間である。例えば、評価間隔の後半部分に評価期間3が設定される。評価期間3は例えば20日程度に設定される。
【0078】
図11は、本実施形態に係る事務所PC30におけるドライバー評価画面の一例を示す概念図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。
【0079】
図5に示したステップS32においては、
図11(a)に示す画像表示が可能となっている。すなわち、事務所PC30のCPU31は、警報鳴動が禁止された評価期間1におけるドライバー個人の評価と、警報鳴動の禁止が解除された評価期間2又は評価期間3におけるドライバー個人の評価とを表示部33の同一画面上に表示させる。これにより、ドライバー個人について、運転評価システム5を導入した効果を一見して把握可能とすることができる。
【0080】
さらに、
図5に示したステップS32においては、
図11(b)に示す画像表示が可能となっている。すなわち、事務所PC30のCPU31は、警報鳴動が禁止された評価期間1におけるドライバー複数人(例えば事務所全員等)の評価と、警報鳴動の禁止が解除された評価期間2又は評価期間3におけるドライバー複数人の評価とを表示部33の同一画面上に表示させる。これにより、複数人にわたるドライバーについて、運転評価システム5を導入した効果を一見して把握可能とすることができる。
【0081】
なお、上記では、評価期間1における評価と、評価期間2又は評価期間3における評価とを同一画面上に表示する例を示したが、これに限らず、評価期間1〜3の全て等の評価を同一画面上に表示するようにしてもよい。また、評価期間3における評価については、直近のものを採用する等種々のものを表示可能である。
【0082】
このようにして、本実施形態に係る運転評価システム5によれば、車両の挙動が所定条件を満たす場合に警報を発する内蔵スピーカ20を備えると共に、内蔵スピーカ20による警報の発生を禁止したり禁止を解除したりする警報制御部11bを備えるため、警報の発生を禁止した状態において、ドライバーの普段の走行に関するデータを取得でき、普段の運転傾向を把握することができる。従って、普段の運転傾向との比較が可能となり、どの程度安全運転に貢献しているのかをユーザに把握させ易くすることができる。
【0083】
また、警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態との設定が可能な設定部31aを事務所PC30に備えるため、ドライバーが自らデジタルタコグラフ10を操作して、警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態とを切り替えてしまうことを防止し、普段の運転に基づくデータを取得できなくなってしまう可能性を低減することができる。
【0084】
また、運転を評価されたことがない新規のドライバーが運転を行う場合に警報の発生を禁止する状態に自動設定し、又はアナウンスを行う初期設定機能部31bを有するため、新規のドライバーというデジタルタコグラフ10から警報を発することを知らない可能性が高いドライバーに対して普段の運転傾向を把握するようにでき、より一層普段の運転傾向を把握し易くすることができる。
【0085】
また、警報の発生を禁止する状態に設定してから所定時間経過したこと、又は所定距離車両走行されたことを検出した場合に、禁止を解除する状態に自動的に遷移させる自動遷移部31cを有するため、禁止の解除を忘れたまま、警報を発しない状態でデジタルタコグラフ10が継続的に使用されてしまう可能性を低減させることができる。
【0086】
また、警報の発生を禁止する状態と禁止を解除する状態との双方の評価を同一画面上に表示させるため、両者を対比させることが可能となり、どの程度安全運転に貢献しているのかをより一層把握し易くすることができる。
【0087】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術(公知技術や周知技術を含む)を組み合わせてもよい。
【0088】
例えば、上記実施形態においては、車間時間に基づく車間警報が発する例を詳細に説明したが、発せられる警報は車間時間に基づくものに限らず、速度超過、急旋回、急減速、急発進、エンジン回転数オーバー、交差点進入速度オーバー、ウインカータイミング等、他の要素の警報であってもよい。また、上記実施形態において警報制御部11bは、全ての警報について発生を禁止したり禁止を解除したりするものを想定しているが、これに限らず、特定の警報のみについて発生を禁止したり禁止を解除したりするものであってもよい。
【0089】
さらに、上記実施形態においては、車間時間に基づく分析及び運転評価を行う例を詳細に説明したが、これに限らず、速度、加速度、エンジン回転数、交差点進入速度、ウインカータイミング等に基づく、分析及び運転評価を行うようになっていてもよい。加えて、同一画面上に表示される評価は、これらのいずれか1つ以上であってもよいし、全体的な評価であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態においては、新規ドライバーが運転評価を行う場合に、警報制御部11bが警報の発生を禁止する状態となる例を説明したが、これに限らず、定期的に又は不定期に、警報制御部11bが警報の発生を禁止する状態となるように構成されていてもよい。さらには、運転評価の結果、所定の安全運転基準値よりも安全運転が行われている期間が所定期間継続した場合に、警報制御部11bが警報の発生を禁止する状態となるように構成されていてもよい。
【0091】
また、上記実施形態においては、メモリカード65を通じて警報制御部11bの状態を変更する例を説明したが、これに限らず、事務所敷地内に車両が存在する場合には、無線LAN等を利用して状態を変更するようにしてもよい。また、事務所敷地外に車両が存在する場合には、ネットワーク70を利用して、警報制御部11bの状態を変更するようにしてもよい。
【0092】
加えて、上記実施形態において設定部31aは初期設定機能部31bや自動遷移部31cを備えているが、初期設定機能部31bや自動遷移部31cを備えることなく、管理者等による手動設定のみが行われるようになっていてもよい。
【0093】
さらに上記実施形態においては説明を省略しているが、各ドライバーには運転評価の結果に応じた教育が施されることはいうまでもない。