【文献】
「パタノール点眼液0.1%」の承認に係る審議結果報告書,2006年,URL,http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1319752Q
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)グリチルリチン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を混合して、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する水性組成物を得る、請求項1に記載の方法。
(B)成分がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、濃度の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
【0013】
本明細書において、特に記載の無い限り、略号「POE」はポリオキシエチレンを意味する。本明細書において、特に記載の無い限り、略号「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
【0014】
本実施形態に係る水性組成物は、(A)オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、(B)非イオン性界面活性剤、及び(C)メントール、カンフル、ボルネオール及びシネオールからなる群から選択される少なくとも1種のテルペノイドを含有し、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレンナフタレート製、ポリプロピレン製、ポリアリレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリカーボネート製及びガラス製からなる群から選択されるいずれかの容器に収容される。
【0015】
(A)成分
オロパタジンは、化学名が(Z)−11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]−オキセピン−2−酢酸である公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0016】
オロパタジンの塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩としては、例えば、無機酸との塩[例えば、塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム−オルトリン酸塩、カリウム水素硫酸塩等]や、有機酸との塩[例えば、酢酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸塩、桂皮酸塩、サリチル酸塩、2−フェノキシ安息香酸塩等]が挙げられる。
【0017】
これらのオロパタジン及び/又はその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。水性組成物におけるオロパタジンの安定性を向上させるという効果の観点から、(A)成分としては、オロパタジン又はその無機酸との塩が好ましく、塩酸オロパタジンがより好ましい。
【0018】
本実施形態に係る水性組成物における、(A)成分の濃度は特に限定されず、(A)成分の種類、併用する(B)及び(C)成分の種類及び濃度、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分の濃度としては、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準として、(A)成分の総濃度が、0.002〜1w/v%であることが好ましく、0.005〜0.5w/v%であることがより好ましく、0.01〜0.22w/v%であることが更に好ましく、0.01〜0.11w/v%であることが特に好ましい。上記(A)成分の濃度は、水性組成物におけるオロパタジンの安定性を向上させるという効果の観点から好適である。
【0019】
(B)成分
非イオン性界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような非イオン性界面活性剤として、具体的には、モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE硬化ヒマシ油5、POE硬化ヒマシ油10、POE硬化ヒマシ油20、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油100等のPOE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油3、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35等のPOEヒマシ油;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポロキサミン等のエチレンジアミンのPOE−POPブロックコポリマー付加物;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0020】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本実施形態に係る水性組成物は、(B)成分として、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましく、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油及びモノステアリン酸ポリエチレングリコールがより好ましく、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油35及びステアリン酸ポリオキシル40が更に好ましく、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油35及びステアリン酸ポリオキシル40が特に好ましい。
【0022】
本実施形態に係る水性組成物における、(B)成分の濃度は特に限定されず、(B)成分の種類、併用する(A)及び(C)成分の種類及び濃度、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(B)成分の濃度としては、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準として、(B)成分の総濃度が、0.001〜5.0w/v%であることが好ましく、0.005〜3.0w/v%であることがより好ましく、0.01〜2.0w/v%であることが更に好ましく、0.05〜1.5w/v%であることが特に好ましい。
【0023】
また、本実施形態に係る水性組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.01〜500質量部であることが好ましく、0.05〜200質量部であることがより好ましく、0.1〜70質量部であることが更に好ましく、0.45〜30質量部であることが特に好ましい。上記(A)成分に対する(B)成分の含有比率は、水性組成物におけるオロパタジンの安定性をより向上させるという観点から好適である。
【0024】
(C)成分
(C)成分のテルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよい。ただし、シネオールには光学異性体が存在しない。また、本実施形態に係る水性組成物において、上記テルペノイドを含有する精油又は植物抽出物を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ペパーミント油、ハッカ油等が挙げられる。また、クールミントNo.71212等を用いてもよい。
【0025】
これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。オロパタジンの安定性を向上させるという観点から、l−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、d−ボルネオール及びシネオールが好ましく、l−メントール、d−カンフル、dl−カンフル及びシネオールがより好ましく、l−メントールが更に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る水性組成物における、(C)成分の濃度は特に限定されず、(C)成分の種類、併用する(A)及び(B)成分の種類及び濃度、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(C)成分の濃度として、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準に、(C)成分の総濃度が、0.00001〜1.0w/v%であることが好ましく、0.0005〜0.5w/v%であることがより好ましく、0.001〜0.1w/v%であることが更に好ましく、0.004〜0.1w/v%であることが特に好ましい。なお、(C)成分を含む精油を使用する場合は、水性組成物中に含有される精油中の(C)成分が上記濃度を満たすように設定することができる。上記(C)成分の濃度は、オロパタジンの安定性を向上させるという観点から好適である。
【0027】
また、本実施形態に係る水性組成物における、(A)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(C)成分の種類、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が、0.0005〜100重量部であることが好ましく、0.001〜50質量部であることがより好ましく、0.005〜20質量部であることが更に好ましく、0.04〜10質量部であることが特に好ましい。上記(A)成分に対する(C)成分の含有比率は、水性組成物におけるオロパタジンの安定性をより向上させるという観点から好適である。
【0028】
本実施形態に係る水性組成物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリエチレンナフタレート(PEN)製、ポリプロピレン(PP)製、ポリアリレート(PAR)製、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製、ポリカーボネート(PC)製及びガラス製からなる群から選択されるいずれかの容器に収容される。好ましくは、PET製、PEN製、PP製、PAR製、PC製及びガラス製であり、さらに好ましくは、PET製、PP製及びガラス製である。
【0029】
本明細書において、容器とは、主としてオロパタジン含有水性組成物を直接収容する容器(一次容器)を意味する。また、容器は、容器本体部に蓋部や抽出口部が付随されていることもある。上記の材質は、主として容器本体部の材質を意味する。
【0030】
本実施形態に係る水性組成物を収容する容器が合成樹脂製である場合、容器は単一の合成樹脂のみから成形されていてもよく、また、複数の合成樹脂を組み合わせて成形されていてもよい。複数の合成樹脂を組み合わせる場合、上記合成樹脂同士(PET、PEN、PP、PAR、PBT及びPC)を組み合わせてもよく、上記合成樹脂に加えて通常、合成樹脂製容器を成形するのに用いられる合成樹脂を組み合わせてもよい。かかる合成樹脂として、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系、硬質塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等)、セルロースアセテート類等の樹脂が挙げられる。また、複数の合成樹脂を組み合わせる場合は、その方法は限定されず、これらの合成樹脂の共重合体でもよく、これらの合成樹脂を単に混合してもよく、また共重合体を混合してもよい。共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれでもよい。
【0031】
本実施形態に係る水性組成物を収容する容器が合成樹脂製容器の場合、容器の構成材質全体の重量に対する、PET、PEN、PP、PAR、PBT及びPCの合計重量は特に限定されないが、好ましくは容器の構成材質全体の重量に対し、PET、PEN、PP、PAR、PBT及びPCの合計重量が50w/w%以上であり、より好ましくは65w/w%以上であり、特に好ましくは80w/w以上%である。より好ましい実施形態では、PET、PEN、PP、PAR、PBT及びPCのいずれか一つの合成樹脂の重量が、容器の構成材質全体の重量に対し、50w/w%以上、65w/w%以上又は80w/w%以上である。
【0032】
本実施形態に係る水性組成物を収容する容器は、紫外線遮断剤が添加またはコーティングされた容器であっても良い。例えば、樹脂に紫外線遮断剤を添加した後に成形した容器、または樹脂をシート状に加工してから紫外線遮断剤をコーティングしその後成型した容器、さらには、樹脂を最終容器形状に成型した後に紫外線遮断剤をコーティングした容器等が挙げられる。また、紫外線遮断剤が添加またはコーティングされたシート状樹脂を、成型後の容器にシュリンクやラベル包装等をしてもよい。
【0033】
紫外線遮断剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、トリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、置換アクリロニトリル系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ニッケル錯体系化合物;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、グアイアズレン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、パラヒドロキシアニソール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシル、ヒンダードアミン、リボフラビン、アントラキノン系色素(1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、アントラキノン系イエロー等)、フタロシアニン系色素(フタロシアニンブルー(C.I. Pigment Blue 15;C.I. 74160;青色404号)、フタロシアニングリーン(C.I. Pigment Green 7)等)等が挙げられる。
【0034】
紫外線遮断剤としては、好ましくは酸化亜鉛、酸化チタン、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシルが挙げられる。酸化亜鉛、酸化チタンはさらにシリカ、シリコン、ケイ酸亜鉛等で被覆されていてもよい。
【0035】
本実施形態に係る水性組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。ここで「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0036】
本実施形態に係る水性組成物は、さらに(D)グリチルリチン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0037】
(D)成分
グリチルリチン酸は20β−カルボキシ−11−オキソ−30−ノルオレアナ−12−エン−3β−イル−2−O−β−D−グルコピラヌロノシル−α−D−グルコピラノシドウロン酸とも称される公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。
【0038】
グリチルリチン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、(A)成分がとり得る塩と同形態のものが例示される。これらの塩の中でも、好ましくは無機塩基との塩、より好ましくは、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩、更に好ましくはナトリウム塩、カリウム塩及び/又はアンモニウム塩、特に好ましくはカリウム塩が挙げられる。これらのグリチルリチン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0039】
グリチルリチン酸及びその塩の中でも、より高い安定性向上効果が得られるという観点から、グリチルリチン酸、そのアルカリ金属塩及び/又はそのアンモニウム塩が好ましく、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸三カリウム及び/又はグリチルリチン酸モノアンモニウムがより好ましく、グリチルリチン酸二カリウムが特に好ましい。
【0040】
本実施形態に係る水性組成物における、(D)成分の濃度は特に限定されず、(D)成分の種類、併用する(A)(B)及び(C)成分の種類及び濃度、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(D)成分の濃度としては、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準として、(D)成分の総濃度が、0.001〜2w/v%であることが好ましく、0.005〜1w/v%であることがより好ましく、0.01〜0.5w/v%であることが更に好ましく、0.01〜0.25w/v%であることが特に好ましい。上記(D)成分の濃度は、オロパタジンの安定性を向上させるという観点から好適である。
【0041】
また、本実施形態に係る水性組成物における、(A)成分に対する(D)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(D)成分の種類、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(D)成分の含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(D)成分の総含有量が、0.005〜100質量部であることが好ましく、0.01〜50質量部であることがより好ましく、0.05〜25質量部であることが更に好ましく、0.5〜25質量部であることが特に好ましい。上記(A)成分に対する(D)成分の含有比率は、水性組成物におけるオロパタジンの安定性をより向上させるという観点から好適である。
【0042】
本実施形態に係る水性組成物は、更に緩衝剤を含有することができる。これにより、水性組成物のpHを調整できる。緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、イプシロン−アミノカプロン酸等が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組合せ等)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ等)が好ましく、ホウ酸緩衝剤がさらに好ましい。
【0043】
本実施形態に係る水性組成物が緩衝剤を含有する場合、その濃度は、緩衝剤の種類、他の含有成分の種類及び濃度、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。緩衝剤の濃度としては、例えば、本発明の水性組成物の総量を基準として、緩衝剤の総濃度が、0.01〜15w/v%であることが好ましく、0.05〜10w/v%であることがより好ましく、0.1〜7.5w/v%であることが更に好ましく、0.5〜5w/v%であることが特に好ましい。
【0044】
本実施形態に係る水性組成物は、更に粘稠剤を含有することができる。これにより、本実施形態に係る水性組成物の粘度を調整できる。粘稠剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90等)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体[メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910等)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等]、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガント、デキストラン(40、70等)、ブドウ糖、ソルビトール等が例示でき、好ましくはポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90)、カルボキシビニルポリマー、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910)、カルボキシメチルセルロース又はその塩等)、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール6000等)、デキストラン(70)であり、さらに好ましくはポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90)、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2208、2906、2910)、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール6000)、デキストラン(70)である。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本実施形態に係る水性組成物が粘稠剤を含有する場合、その濃度は、粘稠剤の種類、他の含有成分の種類及び濃度、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。粘稠剤の濃度としては、例えば、本発明の水性組成物の総量を基準として、粘稠剤の総濃度が、0.0001〜5w/v%であることが好ましく、0.0005〜3w/v%であることがより好ましく、0.001〜1w/v%であることが更に好ましく、0.01〜0.2w/v%であることが特に好ましい。
【0046】
また、本実施形態に係る水性組成物は、更に等張化剤を含有することができる。等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような等張化剤の具体例として、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの等張化剤の中でも、グリセリン、プロピレングリコール、ブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムが好ましく、塩化ナトリウム又はグリセリンがより好ましく、塩化ナトリウムが更に好ましい。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0047】
本実施形態に係る水性組成物が等張化剤を含有する場合、その濃度は、等張化剤の種類、他の含有成分の種類及び濃度、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。等張化剤の濃度としては、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準として、等張化剤の総濃度が、0.01〜10w/v%であることが好ましく、0.05〜5w/v%であることがより好ましく、0.1〜3w/v%であることが更に好ましい。
【0048】
本実施形態に係る水性組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されない。水性組成物のpHとしては、例えば、4.0〜9.5であることが好ましく、5.0〜9.0であることがより好ましく、5.5〜8.5であることが更に好ましい。
【0049】
また、本実施形態に係る水性組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。水性組成物の浸透圧比としては、例えば、0.5〜5.0であることが好ましく、0.6〜3.0であることがより好ましく、0.7〜2.0であることが更に好ましく、0.9〜1.55であることが特に好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール、又は糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0050】
本実施形態に係る水性組成物の粘度については、生体に許容される範囲内であれば特に制限されない。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34’xR24)で測定した25℃における粘度が、例えば、0.01〜1000mPa・sであることが好ましく、0.05〜100mPa・sであることがより好ましく、0.1〜10mPa・sであることが更に好ましい。
【0051】
また、本実施形態に係る水性組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。かかる成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版(薬事審査研究会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤:例えば、フマル酸ケトチフェン、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ペミロラストカリウム、クロモグリク酸ナトリウム等。
充血除去剤:塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl−塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピン等。
殺菌剤:例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等。
ビタミン類:フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール等。
アミノ酸類:アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸等。
消炎剤:例えば、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、グリチルレチン酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アズレンスルホン酸ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、リゾチーム、甘草、プラノプロフェン等。
その他:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、ベンダザック、ピロキシカム、ケトプロフェン、フェルビナク、紫根、セイヨウトチノキ、及びこれらの塩等。
【0052】
また、本実施形態に係る水性組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有していてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはD体、L体及びDL体のいずれでもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
安定化剤:トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
香料:メントン、ゲラニオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、ベルガモット油、スペアミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等。
【0053】
本実施形態に係る水性組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに必要に応じて(D)成分及び他の含有成分を所望の濃度となるように担体に添加することにより調製される。例えば、眼科用組成物の場合、精製水で上記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。上記(C)成分、及びその他疎水性の高い成分の溶解に関しては、予め界面活性剤((B)成分も含む)等の溶解補助作用のある成分とあわせて攪拌を行なってから、さらに精製水を加えて溶解又は懸濁させてもよい。
【0054】
本実施形態において水性組成物とは、水の濃度が、水性組成物の総量に対して、85w/v%以上の組成物を意味する。水性組成物における水の濃度は、90w/v%以上であることが好ましく、92w/v%以上であることがより好ましく、94w/v%以上であることが更に好ましく、96w/v%以上であることが特に好ましい。本実施形態に係る水性組成物に用いられる水としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。また本実施形態における水性組成物の剤型については、特に制限されないが、液剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられ、液状であることが好ましい。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
【0055】
また、本実施形態に係る水性組成物は、(A)成分に基づく薬理作用が発現できるため、また、水性組成物が(D)成分も含有する場合には、その薬理作用をも発現できるため、抗炎症、抗アレルギー等の用途に有効であり、とりわけ、外眼部及び前眼部の炎症性疾患(眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症)の対症療法、並びに、アレルギー性結膜炎及び春季カタルの治療等の用途で、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用できる。
【0056】
本実施形態に係る水性組成物は、医薬品及び医薬部外品等の製剤として使用でき、例えば、粘膜適用組成物(眼科用組成物及び鼻腔用組成物等)、経口用組成物、点耳用組成物、皮下投与用組成物、及び皮膚外用組成物等の様々な用途で使用することができる。
【0057】
本実施形態に係る水性組成物は、角膜及び結膜等の眼粘膜、口腔粘膜、鼻腔粘膜、並びに、咽頭部粘膜等に適用される粘膜適用組成物として有用である。
【0058】
本実施形態に係る粘膜適用組成物としては、具体的には、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう。また、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む)、眼軟膏剤等の眼科用組成物;コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等];点鼻剤、鼻洗浄液等の鼻腔用組成物;口腔咽頭薬、含嗽薬(含嗽用剤)等の口腔用組成物;点耳薬等として用いることができる。(A)及び(D)成分の薬理作用を鑑みれば、本実施形態に係る水性組成物が眼科用組成物であることが好ましく、点眼剤であることがより好ましい。
【0059】
なお、上記コンタクトレンズ用組成物は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。また、ソフトコンタクトレンズとは、イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(以下、SHCLと略記することもある。)及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(シリコーンハイドロゲルレンズでは無いソフトコンタクトレンズ)の双方を包含する。
【0060】
本実施形態は、別の観点から、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレンナフタレート製、ポリプロピレン製、ポリアリレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリカーボネート製及びガラス製からなる群から選択されるいずれかの容器に収容され、(A)成分と(B)成分とを含有する水性組成物における(A)成分を安定化する方法であって、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合して、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する水性組成物を得る方法を提供するものである。(A)成分、(B)成分及び(C)成分はいかなる順序で混合してもよく、最終的に得られる水性組成物が(A)成分、(B)成分及び(C)成分を有している限り、(A)成分は安定化される。上記方法において、好ましくは(D)成分も混合して、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する水性組成物を得る。(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分はいかなる順序で混合してもよく、最終的に得られる水性組成物が(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を有している限り、(A)成分は安定化される。
また、本実施形態は、別の観点から、水性組成物中に(A)成分と(B)成分と(C)成分とを含有させ、該水性組成物をポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレンナフタレート製、ポリプロピレン製、ポリアリレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリカーボネート製及びガラス製からなる群から選択されるいずれかの容器に収容することによる、(A)成分が安定化された水性組成物の製造方法を提供するものである。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。なお、プラスチック容器を用いて試験を行なう際には、保存前と保存後に試料の重量を測定し蒸散率を求め、蒸散による濃度変化を補正した。
【0062】
[試験例1 安定性に関する試験(1)]
下記表1に従って水性組成物を調製し、オロパタジン又はその塩の安定性を評価した。
【0063】
まず、表1に示す各水性組成物を常法により調製した。次いで、調製した水性組成物をポリエチレンテレフタレート製容器(PET;容量15mL)、ポリプロピレン製容器(PP;容量15mL)、ポリエチレン製容器(PE;容量10mL)及びポリスチレン製容器(PS;容量15mL)に5mLずつ充填して密封し、50℃の恒温機内で遮光下において保存した。保存開始から14日後に、各試験液を取り出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて水性組成物における塩酸オロパタジンの含有量を定量し、下記式(I)に従い、塩酸オロパタジンの残存率を算出した。
式(I)
残存率(%)=(保存後の塩酸オロパタジン含有量)/(保存前の塩酸オロパタジン含有量)×100
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示す通り、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物をポリエチレンテレフタレート製の容器に保存した場合、水性組成物が非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80を含有していると、塩酸オロパタジンの残存率が低下し、塩酸オロパタジンの安定性が低下することが認められた(参考例1−1及び比較例1−1)。ところが、水性組成物がさらにテルペノイドであるl−メントールを含有していると、塩酸オロパタジンの残存率が増加し、塩酸オロパタジンの安定性が向上した(実施例1−1)。同様の現象は、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物をポリプロピレン製の容器に保存した場合でも認められた(参考例1−2、比較例1−2及び実施例1−2)。
【0066】
一方、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物をポリエチレン製の容器に保存した場合には、水性組成物がポリソルベート80を含有していても、塩酸オロパタジンの残存率はほとんど低下せず、塩酸オロパタジンの安定性はほとんど低下しなかった(参考例1−3〜1−5)。同様の現象は、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物をポリスチレン製の容器に保存した場合でも認められた。
【0067】
[試験例2 安定性に関する試験(2)]
下記表2に従って水性組成物を調製し、オロパタジン又はその塩の安定性を評価した。水性組成物をガラス製ヘッドスペースバイアル(容量10mL)に充填したこと以外は、上記試験例1と同様にして、塩酸オロパタジンの残存率を求めた。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示す通り、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物をガラス製の容器に保存した場合、水性組成物がポリソルベート80を含有していると、塩酸オロパタジンの残存率が低下し、塩酸オロパタジンの安定性が低下することが認められた(参考例2及び比較例2)。また、水性組成物がさらにl−メントールを含有していると、塩酸オロパタジンの残存率が増加し、塩酸オロパタジンの安定性が向上した(実施例2)。
【0070】
[試験例3 安定性に関する試験(3)]
下記表3に従って水性組成物を調製し、オロパタジン又はその塩の安定性を評価した。保存温度を50℃から70℃に変更したこと、及び水性組成物をガラス製ヘッドスペースバイアル(容量10mL)に充填したこと以外は、上記試験例1と同様にして、塩酸オロパタジンの残存率を求めた。なお、70℃における14日間の保存は、室温における約3年間の保存に相当する。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示す通り、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物を70℃において保存した場合も、水性組成物がポリソルベート80を含有していると、塩酸オロパタジンの残存率が低下し、塩酸オロパタジンの安定性が低下することが認められた(参考例3及び比較例3−1)。また、水性組成物がさらにl−メントールを含有していると、塩酸オロパタジンの残存率が増加し、塩酸オロパタジンの安定性が向上した(実施例3−1−1)。水性組成物がl−メントールに加えてグリチルリチン酸二カリウムを含有していると、水性組成物がl−メントールを含有している場合よりも安定性がさらに向上した(実施例3−1−2)。
また、非イオン性界面活性剤としてステアリン酸ポリオキシル40を含有している場合も同様に、塩酸オロパタジンの残存率が低下し、さらにl-メントールを含有していると、塩酸オロパタジンの残存率が増加し、安定性が向上した(比較例3−2、実施例3−2)
【0073】
[試験例4 安定性に関する試験(4)]
下記表4に従って水性組成物を調製し、オロパタジン又はその塩の安定性を評価した。保存温度を50℃から60℃に変更したこと、保存期間を14日間から7日間に変更したこと、水性組成物をガラス製ヘッドスペースバイアル(容量10mL)に充填したこと以外は、上記試験例1と同様にして、塩酸オロパタジンの残存率を求めた。
【0074】
【表4】
【0075】
塩酸オロパタジンを含有する水性組成物が、テルペノイドであるd−ボルネオール又はシネオールを含有している場合も、l−メントールを含有している場合と同様に、非イオン性界面活性剤を含有していることにより低下した塩酸オロパタジンの安定性が向上した(比較例4、実施例4−1、実施例4−3)。また、水性組成物がテルペノイドであるd−ボルネオールを含有している場合に、グリチルリチン酸二カリウムをさらに含有していると、塩酸オロパタジンの安定性がさらに向上した(実施例4−1、実施例4−2)。
【0076】
[試験例5 安定性に関する試験(5)]
下記表5に従って水性組成物を調製し、オロパタジン又はその塩の安定性を評価した。保存温度を50℃から70℃に変更したこと、水性組成物をポリエチレンテレフタレート製容器(容量15mL)に充填したこと以外は、上記試験例1と同様にして、塩酸オロパタジンの残存率を求めた。
【0077】
【表5】
【0078】
表5に示す通り、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物が、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油35を含有している場合も、試験例1〜4と同様に、テルペノイドを含有している場合には、非イオン性界面活性剤を含有していることにより低下した塩酸オロパタジンの安定性が向上した。
【0079】
[試験例6 安定性に関する試験(6)]
下記表6に従って水性組成物を調製し、オロパタジン又はその塩の安定性を評価した。水性組成物をガラス製ヘッドスペースバイアル(容量10mL)に充填したこと以外は、上記試験例1と同様にして、塩酸オロパタジンの残存率を求めた。
【0080】
【表6】
【0081】
表6に示す通り、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物が、テルペノイドであるd−ボルネオール又はシネオールを含有している場合も、l−メントールを含有している場合と同様に、非イオン性界面活性剤を含有していることにより低下した塩酸オロパタジンの安定性が向上した(比較例6−1、実施例6−1、実施例6−2)。
【0082】
[試験例7 安定性に関する試験(7)]
下記表7に従って水性組成物を調製し、オロパタジン又はその塩の安定性を評価した。保存温度を60℃としたこと、保存期間を14日間から30日間に変更したこと、水性組成物をガラス製ヘッドスペースバイアル(容量10mL)に充填したこと以外は、上記試験例1と同様にして、塩酸オロパタジンの残存率を求めた。
【0083】
【表7】
【0084】
表7に示す通り、塩酸オロパタジンを含有する水性組成物が、テルペノイドであるd−ボルネオール又はシネオールを含有している場合も、l−メントールを含有している場合と同様に、非イオン性界面活性剤を含有していることにより低下した塩酸オロパタジンの安定性が向上した(比較例7−1、実施例7−1、実施例7−2)。
【0085】
[試験例8 安定性に関する試験(8)]
上記試験例1〜7と同様の試験を行い、ポリソルベート80の濃度が0.05w/v%である水性組成物でも、塩酸オロパタジンの安定性が低下し、さらにテルペノイドを含有している場合には、安定性が向上することが確認できた。
【0086】
[製剤例]
下記表8〜表9の処方例1〜13に従って水性組成物を作成し、ポリエチレンテレフタレート製容器に充填したもの(点眼剤または洗眼剤)を製剤例1〜13とし、ポリプロピレン製容器に充填したもの(点眼剤または洗眼剤)を製剤例14〜26とした。なお、表8−1の続きが表8−2、表9−1の続きが表9−2である。
【0087】
【表8-1】
【0088】
【表8-2】
【0089】
【表9-1】
【0090】
【表9-2】